(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188338
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】水系耐油剤、耐油紙
(51)【国際特許分類】
D21H 21/14 20060101AFI20221214BHJP
D21H 19/18 20060101ALI20221214BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20221214BHJP
D21H 19/28 20060101ALI20221214BHJP
C09D 123/30 20060101ALI20221214BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20221214BHJP
C09D 191/06 20060101ALI20221214BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
D21H21/14 Z
D21H19/18
D21H19/20 A
D21H19/28
C09D123/30
C09D175/04
C09D191/06
C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096286
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】美邉 翔
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝介
【テーマコード(参考)】
4J038
4L055
【Fターム(参考)】
4J038BA212
4J038CB181
4J038DG001
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA04
4J038PB04
4J038PC10
4L055AG34
4L055AG51
4L055AG58
4L055AG70
4L055AG71
4L055AG85
4L055AG89
4L055AH24
4L055BE08
4L055EA29
4L055EA32
4L055FA11
4L055FA14
4L055FA30
4L055GA48
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた耐油性及び通気性を有する耐油紙を与える水系耐油剤を提供する。
【解決手段】下記の(A1)及び(A2)からなる群より選ばれる1種以上の樹脂(A)、並びにパラフィンワックス(B)を含む水系耐油剤。
・(A1)全炭素数4以上のモノオレフィン類(a1-1)及びα,β-不飽和カルボン酸(a1-2)を必須の反応成分とする重合体であるオレフィン系樹脂
・(A2)ポリオール(a2-1)、ポリイソシアネート(a2-2)及び鎖伸長剤(a2-3)を必須の反応成分とする重合体であるウレタン系樹脂
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A1)及び(A2)からなる群より選ばれる1種以上の樹脂(A)、並びにパラフィンワックス(B)を含む水系耐油剤。
・(A1)全炭素数4以上のモノオレフィン類(a1-1)及びα,β-不飽和カルボン酸(a1-2)を必須の反応成分とする重合体であるオレフィン系樹脂
・(A2)ポリオール(a2-1)、ポリイソシアネート(a2-2)及び鎖伸長剤(a2-3)を必須の反応成分とする重合体であるウレタン系樹脂
【請求項2】
(a1-1)成分が、全炭素数4~10のモノオレフィン(I)及び全炭素数12~20のモノオレフィン(II)である請求項1に記載の水系耐油剤。
【請求項3】
樹脂(A1)をなす反応成分が、更にα,β-不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(a1-3)を含む請求項1又は2に記載の水系耐油剤。
【請求項4】
(a2-3)成分が、ジアルカノールアルカン酸を含む請求項1~3のいずれかに記載の水系耐油剤。
【請求項5】
(A)成分及び(B)成分の不揮発分重量での含有比率が、(A)/(B)=10/90~90/10である請求項1~4のいずれかに記載の水系耐油剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の水系耐油剤を原紙に塗工してなる耐油紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系耐油剤、耐油紙に関する。
【背景技術】
【0002】
耐油紙は、フライドチキンやハンバーガー、焼魚等の油分や水分を多く含む調理済み食品やチョコレート等の油脂を多く含む食品に対する包装用紙、包装容器や食品トレイ等の紙製敷物、乾燥剤や脱酸素剤用の包装紙、ペットフード用袋、製粉用重袋、建材用紙等として汎用されている。また、紙に耐油性を付与する薬品を耐油剤という。
【0003】
耐油剤としては、従来からフッ素樹脂系のものが使用されており、例えば、フッ素樹脂系耐油剤を紙基材の表面に塗工する、又は、紙基材に含浸もしくはパルプスラリーに内添する方法等が採られている。しかしながら、当該耐油剤を使用して得た耐油紙は、加熱時にパーフルオロ化合物を発生しうる場合があり、環境負荷の面から好ましくなく、近年はフッ素系樹脂を含まない耐油剤(非フッ素樹脂系耐油剤)が要求されている。
【0004】
このような耐油剤の技術としては、例えば、疎水性基を含有する澱粉とワックスを配合した耐油剤の層を有する耐油紙が公知である(特許文献1)。しかしながら、非フッ素系耐油剤の場合、油脂成分のしみ出しを防止しながら耐油性を発現させるため、当該耐油剤の量が多くなってしまう。そうすると、耐油性が高まる一方、通気性が不十分となり(透気抵抗度が上昇)、食品の風味や保存安定性の低下を招きやすくなる。特許文献1でも通気性が向上しているものの、更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた耐油性及び通気性を有する耐油紙を与える水系耐油剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討したところ、特定の樹脂及びパラフィンワックスを含む水系耐油剤が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の水系耐油剤、耐油紙に関する。
【0008】
1. 下記の(A1)及び(A2)からなる群より選ばれる1種以上の樹脂(A)、並びにパラフィンワックス(B)を含む水系耐油剤。
・(A1)全炭素数4以上のモノオレフィン類(a1-1)及びα,β-不飽和カルボン酸(a1-2)を必須の反応成分とする重合体であるオレフィン系樹脂
・(A2)ポリオール(a2-1)、ポリイソシアネート(a2-2)及び鎖伸長剤(a2-3)を必須の反応成分とする重合体であるウレタン系樹脂
【0009】
2.(a1-1)成分が、全炭素数4~10のモノオレフィン(I)及び全炭素数12~20のモノオレフィン(II)である前項1に記載の水系耐油剤。
【0010】
3.樹脂(A1)をなす反応成分が、更にα,β-不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(a1-3)を含む前項1又は2に記載の水系耐油剤。
【0011】
4.(a2-3)成分が、ジアルカノールアルカン酸を含む前項1~3のいずれかに記載の水系耐油剤。
【0012】
5.(A)成分及び(B)成分の不揮発分重量での含有比率が、(A)/(B)=10/90~90/10である前項1~4のいずれかに記載の水系耐油剤。
【0013】
6.前項1~5のいずれかに記載の水系耐油剤を原紙に塗工してなる耐油紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水系耐油剤によれば、優れた耐油性及び通気性を有する耐油紙を与える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水系耐油剤は、特定のオレフィン系樹脂(A1)及びウレタン系樹脂(A2)からなる群より選ばれる1種以上の樹脂(A)、並びにパラフィンワックス(B)を含むものである。
【0016】
まず、オレフィン系樹脂(A1)(以下、樹脂(A1)という。)について説明する。
【0017】
樹脂(A1)は、全炭素数4以上のモノオレフィン類(a1-1)(以下、(a1-1)成分という。)及びα,β-不飽和カルボン酸(a1-2)(以下、(a1-2)成分という。)を必須の反応成分とする重合体であり、水性耐油剤の被膜に優れた耐油性を付与する成分である。
【0018】
(a1-1)成分は、全炭素数4以上のモノオレフィン類である。
【0019】
(a1-1)成分としては、例えば、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、イソオクテン、1-デセン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、1-ドデセン、2-ドデセン、3-ドデセン、1-テトラデセン、2-テトラデセン、3-テトラデセン、1-ヘキサデセン、2-ヘキサデセン、3-ヘキサデセン、1-オクタデセン、2-オクタデセン、3-オクタデセン、1-エイコセン、1-テトラコセン、1-トリアコンテン等の直鎖型オレフィン;2-メチルプロペン(イソブテン)、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、2,4,4-トリメチル-2-ペンテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテンと2,4,4-トリメチル-2-ペンテンとの混合物(これらをジイソブチレンともいう。)、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン(イソペンテン)、2-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン(イソヘキセン)、2-エチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、2-メチル-3-エチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ヘキセン、3-メチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、2-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、2-メチル-1-オクテン、3-メチル-1-オクテン等の分岐型オレフィン;シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、4-ビニルシクロヘキセン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン等の環状オレフィン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、これらのオレフィンの異性体(cis体、trans体)も特に限定なく使用できる。中でも、全炭素数4~20のモノオレフィンが好ましく、さらに親水性/疎水性のバランスから得られる耐油剤が水溶性となり、かつ優れた耐油性を示す点から、全炭素数4~10のモノオレフィン及び全炭素数12~20のモノオレフィンを組み合わせることがより好ましく、全炭素数6~8のモノオレフィン及び全炭素数15~20のモノオレフィンを組み合わせることがさらに好ましい。
【0020】
(a1-1)成分の使用量としては、不揮発分重量で、樹脂(A1)をなす全反応成分を100重量%として、通常は20~70重量%、好ましくは30~60重量%である(以下同様)。
【0021】
(a1-2)成分は、α,β-不飽和カルボン酸である。
【0022】
(a1-2)成分としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、ムコン酸、シトラコン酸等のα,β-不飽和ジカルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα,β-不飽和モノカルボン酸;前記不飽和ジカルボン酸の酸無水物、前記不飽和モノカルボン酸の酸無水物、前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキルアミド等が挙げられる。
【0023】
前記モノアルキルエステル、前記モノアルキルアミドのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、(2-エチルヘキシル)基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ドコシル基等が挙げられる。
【0024】
これらの(a1-2)成分は単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、得られた反応中に生成する重合体が、水に対して溶解又は分散しやすくする点から、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0025】
(a1-2)成分としては、これらのα,β-不飽和カルボン酸の中和塩を使用しても良い。中和塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。
【0026】
前記中和塩を調整する際には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、炭酸アンモニウム等の無機アミン;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン等のアルキルアミン;シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン;アニリン等の芳香族アミン等を使用できる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0027】
(a1-2)成分の使用量としては、樹脂(A1)をなす全反応成分を100重量%として、通常は10~50重量%、好ましくは20~40重量%である。
【0028】
樹脂(A1)をなす反応成分には、更にα,β-不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(a1-3)(以下、(a1-3)成分という。)を含んでも良い。
【0029】
α,β-不飽和モノカルボン酸としては、例えば、前段落で記載したものが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、n-ドコシル基等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0030】
(a1-3)成分の使用量としては、樹脂(A1)をなす全反応成分を100重量%として、通常は20重量%以下、好ましくは1~10重量%である。
【0031】
樹脂(A1)をなす反応成分には、(a1-1)~(a1-3)成分以外の重合性モノマー(a1-4)(以下、(a1-4)成分という。)を含んでも良い。
【0032】
(a1-4)成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、クロルビニルトルエン等のスチレン類;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノブチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル類;
スチレンスルホン酸、α-メチルスチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルアミド-N-メチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドフェニルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、(メタ)アクリル酸スルホ2-ヒドロキシプロピル等のスルホ基を有するモノマー;
アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、N-アリル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドグリコール酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルアミン、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリラート等の芳香族ポリビニル;
アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0033】
(a1-4)成分の使用量としては、樹脂(A1)をなす全反応成分を100重量%として、通常は10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0034】
樹脂(A1)は、(a1-1)成分及び(a1-2)成分、必要に応じて、(a1-3)成分、(a1-4)成分を仕込み、溶媒を加えて、重合開始剤の存在下で反応させることにより得られる。
【0035】
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、安息香酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール等のアルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;イオン交換水、精製水、水道水、軟水、硬水、工業用用水等の水等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、これらの溶媒は反応途中で追加しても良い。さらに、水以外の溶媒を使用した場合には、最終的には反応系から減圧蒸留等で溶媒を留去しておくことが好ましい。
【0036】
溶媒の使用量としては、反応濃度が10~80重量%となるように調整することが好ましい。
【0037】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’-アゾビス[2(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、前記重合開始剤と併用して、例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤を使用しても良く、反応系をレドックスとしても良い。
【0038】
重合開始剤の使用量としては、樹脂(A1)をなす全反応成分100重量部に対して、通常は0.01~5重量部程度、好ましくは0.05~3重量部程度である。
【0039】
前記の反応条件としては、例えば、反応温度が、通常は40~150℃であり、好ましくは60~120℃である。また反応時間が、通常は1~10時間であり、好ましくは1~3時間である。
【0040】
前記の反応には、更に連鎖移動剤を加えても良い。連鎖移動剤としては、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;2-メルカプトベンゾチアゾール、ブロモトリクロロメタン、α-メチルスチレンダイマ-等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0041】
連鎖移動剤の使用量としては、樹脂(A1)をなす全反応成分100重量部に対して、通常は5重量部以下、好ましくは3重量部以下である。
【0042】
前記反応においては、反応前、反応中に後述する(B)成分を加えても良い。
【0043】
前記反応においては、反応前、反応中、反応後に、必要に応じて、硫酸、リン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、炭酸アンモニウム等の無機アミン;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン等のアルキルアミン;シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン;アニリン等の芳香族アミン等を加えても良い。また、反応系は窒素雰囲気下にすることが好ましい。
【0044】
得られた(A1)成分には、顔料、保水剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤、着色剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、分散剤、フィラー等の添加剤を含んでも良い。
【0045】
得られた樹脂(A1)の物性としては、例えば、重量平均分子量が、通常は1000~500000程度であり、好ましくは5000~50000である。ここでの“重量平均分子量”は、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法でポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0046】
また、温度25℃における不揮発分濃度20重量%の樹脂(A1)の溶液の粘度が、通常は5~50000mPa・sであり、好ましくは10~10000mPa・sである。ここでの“粘度”は、B型粘度計で測定した値をいう。
【0047】
さらに、樹脂(A1)のpHが、通常は5~11であり、好ましくは6~10である。ここでの“pH”は、市販のpH測定機で測定した値をいう。
【0048】
次に、ウレタン系樹脂(A2)(以下、樹脂(A2)という。)について説明する。
【0049】
樹脂(A2)は、ポリオール(a2-1)(以下、(a2-1)成分という。)、ポリイソシアネート(a2-2)(以下、(a2-2)成分という。)及び鎖伸長剤(a2-3)(以下、(a2-3)成分という。)を必須の反応成分とする重合体であり、水性耐油剤の被膜に優れた耐油性を付与する成分である。
【0050】
(a2-1)成分は、分子内に2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0051】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレン-ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレン-ポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。なお、ポリエーテルポリオールは、その構造がランダム型のものでもブロック型のものでも使用できる。
【0052】
ポリエーテルポリオールの市販品としては、『アデカポリエーテルP-400』、『アデカポリエーテルG-400』、『アデカポリエーテルT-400』、『アデカポリエーテルAM-302』、『アデカポリエーテルP1000』、『アデカポリエーテルP2000』(以上、(株)ADEKA製);『ポリエチレングリコール#1,540』(ナカライテスク(株)製);『ジプロピレングリコール』、『ポリプロピレングリコール400』(以上、純正化学(株)製);『PEG#200』、『PEG#300』、『PEG#400』、『PEG#600』、『PEG#1000』、『PEG#1500』、『PEG#2000』、『PEG#4000』、『ユニオールD-200』、『ユニオールD-700』、『ユニオールD-1000』、『ユニオールD-1200』、『ユニオールD-2000』、『ユニオールD-4000』、『ユニオールPB-500』、『ユニオールPB-700』、『ユニオールPB-1000』、『ユニオールPB-2000』、『ポリセリンDC-1100』、『ポリセリンDC-1800E』、『ポリセリンDC-3000E』、『ポリセリンDCB-1000』、『ポリセリンDCB-2000』、『ポリセリンDCB-4000』(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
【0053】
(a2-2)成分としては、例えば、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸が有するカルボキシル基をイソシアネート基に置換したダイマージイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4´-ジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
リジンジイソシアネート等のアミノ酸ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、樹脂(A2)としては、これらのヌレート体、アダクト体又はビウレット体を使用しても良い。
【0054】
(a2-1)成分及び(a2-2)成分の使用比率は、通常は(a2-2)成分のイソシアネート基のモル数(NCO(a2-2))と(a2-1)成分のヒドロキシ基のモル数(OH(a2-1))との比率(NCO(a2-2)/OH(a2-1))で1.1/1~8/1程度にすることが好ましい。
【0055】
(a2-3)成分は、鎖伸長剤である。
【0056】
(a2-3)成分としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ダイマージアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等のジアミン;
ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン等のトリアミン;
トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン等のテトラミン;
N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-イソプロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-イソブチルジエタノールアミン、N-オレイルジエタノールアミン、N-ステアリルジエタノールアミン、N-メチルジイソプロパノールアミン、N-エチルジイソプロパノールアミン、N-プロピルジイソプロパノールアミン、N-ブチルジイソプロパノールアミン等のN-アルキルジアルカノールアミン;
ヒドラジン又はそのヒドラジン誘導体(アジピン酸ヒドラジド等);
グリセリン酸、ジオキシマレイン酸、ジオキシフマル酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘキサン酸等のジアルカノールアルカン酸;
4,4-ジ(ヒドロキシフェニル)ブタン酸、4,4-ジ(ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、2,6-ジオキシ安息香酸等の芳香族系ヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。中でも、生成する重合体が、水に対して溶解、又は分散しやすくする点から、ジアルカノールアルカン酸が好ましい。
【0057】
なお、前記のジアルカノールアミンは、その4級化塩を使用しても良い。当該4級化塩とは、前記のジアルカノールアミンが4級化剤と反応したものを意味し、4級化剤としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ジメチル硫酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸;メチルクロライド、ベンジルクロライド、エピクロロヒドリン等の有機ハロゲン等が挙げられる。
【0058】
また、前記のジアルカノールアルカン酸及び芳香族系ヒドロキシカルボン酸は、そのカルボキシル基が中和剤で中和されていても良い。
【0059】
前記中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン等の有機アミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0060】
(a2-3)成分の使用量としては、樹脂(A2)をなす反応成分を100重量%に対して、通常は1~30重量%であり、好ましくは3~20重量%である。
【0061】
本発明の樹脂(A2)には、反応成分として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(a2-4)(以下、(a2-4)成分という。)を含んでも良い。
【0062】
(a2-4)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシn-プロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシn-プロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシn-ブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシn-ブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシn-ヘキシル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0063】
(a2-4)成分の使用量としては、樹脂(A2)をなす反応成分を100重量%に対して、通常は10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下である。
【0064】
(a2-4)成分を用いる場合には、更にヒドロキシル基を有さない(メタ)アクリル酸モノアルキルエステル(a2-5)(以下、(a2-5)成分という。)を更に反応させても良い。
【0065】
(a2-5)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸イソミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0066】
(a2-5)成分の使用量としては、樹脂(A2)をなす反応成分を100重量%に対して、通常は50重量%以下であり、好ましくは30重量%以下である。
【0067】
前記反応成分には、更に鎖伸長停止剤(a2-6)(以下、(a2-6)成分という。)を含んでも良い。(a2-6)成分としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のモノアルコール;エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジn-プロピルアミン、ジn-ブチルアミン等のモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールモノアミン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0068】
(a2-6)成分の使用量としては、樹脂(A2)をなす反応成分を100重量%に対して、通常は5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下である。
【0069】
樹脂(A2)は、例えば、(a2-1)成分と(a2-2)成分とを反応させてウレタンプレポリマーを製造し、次いで、ウレタンプレポリマー及び(a2-3)成分、必要に応じて(a2-4)~(a2-6)成分を反応させることにより得られる。
【0070】
ウレタンプレポリマーを得る工程の反応条件としては、温度が通常は40~150℃程度であり、好ましくは60~100℃程度である。また、時間が通常は1~20時間程度であり、好ましくは1~10時間程度である。
次いで、ウレタンプレポリマーに、(a2-3)成分、必要に応じて(a2-4)~(a2-6)成分を反応させる際の条件としては、温度が通常は20~100℃程度であり、好ましくは30~80℃程度である。また、時間が通常は1~10時間程度であり、好ましくは1~5時間程度である。なお、各成分の混合方法、混合順序は特に限定されない。
【0071】
これらの樹脂(A2)の製造は、無溶剤下でも、溶媒の存在下で行っても良い。
【0072】
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-デカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、安息香酸メチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール等のアルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;N-メチルピロリドン等のアミン;イオン交換水、精製水、水道水、軟水、硬水、工業用水等の水;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、反応終了後には前記溶媒を減圧下等で留去しても良い。
【0073】
溶媒の使用量としては、反応濃度が10重量%以上となるように調整することが好ましい。
【0074】
また前記の反応においては、後述する(B)成分を加えても良い。
【0075】
樹脂(A2)には、更に顔料、保水剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤、着色剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、分散剤、フィラー等を含んでも良い。
【0076】
得られた樹脂(A2)の重量平均分子量は、5000~500000である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)でポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0077】
また、温度25℃における不揮発分濃度35重量%の樹脂(A2)の溶液の粘度が、通常は5~20000mPa・sであり、好ましくは10~10000mPa・sである。ここでの“粘度”は、B型粘度計で測定した値をいう。
【0078】
(B)成分は、パラフィンワックスであり、水性耐油剤の被膜に優れた耐油性を付与する成分である。
【0079】
パラフィンワックスは、原油を減圧蒸留し、得られた留出油から結晶性の良い炭化水素を分離・精製したものであり、主として直鎖状の炭化水素(ノルマルパラフィン)で構成されている。
【0080】
(B)成分の物性としては、例えば、融点が、好ましくは45~80℃であり、より好ましくは55~80℃ある。
【0081】
本発明においては、(B)成分は、分散剤を用いて水性エマルジョンにしたものを使用することが好ましい。分散剤としては、例えば、特開2013-237941号公報に記載されたノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
(B)成分の市販品としては、固形状のものでは、例えば、「パラフィン115」、「パラフィン120」、「パラフィン125」、「パラフィン130」、「パラフィン135」、「パラフィン140」、「パラフィン145」、「パラフィン150」、「パラフィン155」、「HNP-51」(以上、日本精蝋(株)製)等が挙げられる。また、水性エマルジョンのものでは、例えば、「サイズパインW-116H」(荒川化学工業(株)製)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0083】
(A)成分と(B)成分との不揮発分重量での含有比率としては、水性耐油剤の被膜が優れた耐油性を示す点から、(A)/(B)=10/90~90/10が好ましく、(A)/(B)=20/80~80/20がより好ましい。
【0084】
本発明の水系耐油剤は、(A)成分及び(B)成分、必要に応じて、水を混合して得られる。混合条件としては、例えば、温度が10~90℃(好ましくは20~80℃)である。また、各成分の混合順序や混合方法、混合時間は特に限定されない。
【0085】
本発明の水系耐油剤は、更に、顔料、保水剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、レベリング剤、着色剤等の添加剤を含んでも良い。
【0086】
得られた水系耐油剤の物性としては、不揮発分濃度が、通常は5~50重量%であり、好ましくは10~40重量%である。
【0087】
また、温度25℃における不揮発分濃度10重量%の水系耐油剤の溶液の粘度が、通常は5~100mPa・sであり、好ましくは10~80mPa・sである。
【0088】
本発明の耐油紙は、前記水系耐油剤を原紙に塗工してなるものである。
【0089】
原紙としては、例えば、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;DIP、マーセル化処理を施したパルプ、古紙パルプ等を用いて、各種抄紙機で抄紙されたもの等が挙げられ、より具体的には、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、加工原紙、板紙、白板紙、ライナー、セミグラシン紙、グラシン紙、パーチメント紙等が挙げられる。また、前記パルプには、硫酸アルミニウム、硫酸や水酸化ナトリウム等のpH調整剤;サイズ剤、澱粉やポリアクリルアミド等の紙力増強剤、湿潤紙力剤等の製紙用薬品;タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、炭酸カルシウム等の填料等が含まれたものを使用しても良い。
【0090】
水系耐油剤の塗工方法としては、例えば、バーコーター、ナイフコーター、サイズプレスコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エアーナイフコーター、キャレンダー、ゲートロールコーター、ブレードコーター、2ロールサイズプレスやロッドメタリング等が挙げられる。また、塗工液の塗布量(不揮発分換算)も特に限定されないが、通常、0.1~10g/m2程度、好ましくは1~6g/m2程度である。
【0091】
塗工した後の原紙は、熱で乾燥させる。熱源としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線ヒーター、回転ドライヤー等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば、温度が80~180℃(好ましくは100~150℃)であり、時間が0.1~180分(好ましくは0.5~60分)である。
【実施例0092】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0093】
製造例1
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び2本の滴下ロートを備えた反応容器に窒素を導入しながら、無水マレイン酸98部およびトルエン75.2部を仕込み、窒素気流下に攪拌しながら反応系を110℃まで昇温した。次いで、滴下ロート(1)にジイソブチレン(2,2,4-トリメチル-1-ペンテンの含有率76%)73.7部、1-ヘキサデセン112部、アクリル酸n-ブチル12部、また滴下ロート(2)にt-ブチルパーオキシベンゾエート6.6部、トルエン35部を仕込み、それぞれ1.5時間かけて容器内に滴下した。還流下に2時間保温した後、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.6部およびトルエン15部を30分かけて滴下し、更に同温度で1時間保温した。水酸化ナトリウム16部、28%アンモニア水85部および所定量の水を加えて撹拌し、減圧下にトルエンを留去し、不揮発分濃度20%、粘度80mPa・s、pH9.0のオレフィン系樹脂(A1-1)を得た。
【0094】
製造例2
製造例1と同様の反応容器に窒素を導入しながら、マレイン酸98部およびトルエン75.2部を仕込み、窒素気流下に攪拌しながら反応系を110℃まで昇温した。次いで、滴下ロート(1)にジイソブチレン(2,2,4-トリメチル-1-ペンテンの含有率76%)197.7部、また滴下ロート(2)にt-ブチルパーオキシベンゾエート6.6部、トルエン35部を仕込み、それぞれ1.5時間かけて容器内に滴下した。還流下に2時間保温した後、t-ブチルパーオキシベンゾエート2.6部およびトルエン15部を30分かけて滴下し、更に同温度で1時間保温した。水酸化ナトリウム16部、28%アンモニア水85部および所定量の水を加えて撹拌し、減圧下にトルエンを留去し、不揮発分濃度20%、粘度100mPa・s、pH9.0のオレフィン系樹脂(A1-2)を得た。
【0095】
製造例3
撹拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジメチロールブタン酸59.4部、ポリセリンDCB-2000(ポリオキシテトラメチレン-ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量2000、日油(株)製)489.9部、イソホロンジイソシアネート200.8部を仕込み、窒素気流下85℃にて5時間反応を行い、ウレタンプレポリマー750部を得た。次いで、水1208部、イソプロピルアルコール225部、トリエチルアミン40.5部、アジピン酸ジヒドラジド43.3部からなる水溶液中に、撹拌下に前記ウレタンプレポリマーを添加し分散させた。50℃にて3時間反応させ、さらに所定量の水を加えて、不揮発分濃度35%、粘度800mPa・s/25℃、pH8.0のウレタン系樹脂(A2-1)を得た。
【0096】
製造例4
撹拌機、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジメチロールブタン酸59.4部、PTMG1000(ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量1000、三菱ケミカル(株)製)489.9部、イソホロンジイソシアネート275.5部を仕込み、窒素気流下85℃にて5時間反応を行い、ウレタンプレポリマー824部を得た。次いで、水1340部、イソプロピルアルコール225部、トリエチルアミン40.5部、アジピン酸ジヒドラジド43.3部からなる水溶液中に、撹拌下に前記ウレタンプレポリマーを添加し分散させた。50℃にて3時間反応させ、さらに所定量の水を加えて、不揮発分濃度35%、粘度800mPa・s、pH8.0のウレタン系樹脂(A2-2)を得た。
【0097】
実施例1
オレフィン系(A1-1)250.0部(不揮発分50部)、パラフィンワックス(商品名:「サイズパインW-116H」、荒川化学工業(株)製)166.7部(不揮発分50部)及びイオン交換水583.3部を混合して水系耐油剤を得た。
【0098】
実施例2~7、比較例1~9
表1に示す組成及び含有量に変えた以外は、実施例1と同様に行い、水系耐油剤をそれぞれ得た。
【0099】
(耐油紙の作製)
市販の加工原紙(坪量50g/m2、ステキヒトサイズ度12秒、透気抵抗度80秒)に水系耐油剤を任意の番手のワイヤーバーで塗工後、120℃に設定した熱風乾燥機で5分間乾燥し、耐油紙を得た。
【0100】
(耐油性)
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.41:2000(キット法)によって塗工面を測定した。耐油紙として使用可能なキット耐油度は4級以上であることが好ましく、その値を示したときの水系耐油剤の塗布量が5g/m2以下のものを良好とした。
【0101】
(通気性)
JIS P8117によって透気抵抗度を測定した。高通気性の耐油紙としては、1000秒以下であることが好ましい。
【0102】
【表1】
※1:各成分の重量部は、不揮発分での重量で表す。
【0103】
表1に記号は、以下の化合物を表す。
(樹脂)
・A1-1:製造例1のオレフィン系樹脂
・A1-2:製造例2のオレフィン系樹脂
・A2-1:製造例3のウレタン系樹脂
・A2-2:製造例4のウレタン系樹脂
・C-1:炭素数2のオレフィン系樹脂(商品名:「ケミパールS100」、三井化学(株)製)
・C-2:スチレン系樹脂(商品名:「ポリマロン1383」、荒川化学工業(株)製)
・C-3:ポリビニルアルコール(商品名:「クラレポバール11-98」、(株)クラレ製)
(ワックス)
・B-1:パラフィンワックス(商品名:「サイズパインW-116H」、荒川化学工業(株)製)
・D-1:ポリエチレンワックス(商品名:「ケミパールW401」、三井化学(株)製)
・D-2:AKD系エマルジョン(商品名:「サイズパインK-924」、荒川化学工業(株)製)
・D-3:脂肪酸系エマルジョン(商品名:「サイズパインCA-956」、荒川化学工業(株)製)
(a1-4)成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、クロルビニルトルエン等のスチレン類;
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジエチルアミノブチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル類;
スチレンスルホン酸、α-メチルスチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルアミド-N-メチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドフェニルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、(メタ)アクリル酸スルホ2-ヒドロキシプロピル等のスルホ基を有するモノマー;
アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、N-アリル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドグリコール酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;
ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルアミン、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリラート等の芳香族ポリビニル;
アクリロニトリル等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
樹脂(A2)は、ポリオール(a2-1)(以下、(a2-1)成分という。)、ポリイソシアネート(a2-2)(以下、(a2-2)成分という。)及び鎖伸長剤(a2-3)(以下、(a2-3)成分という。)を必須の反応成分とする重合体であり、水系耐油剤の被膜に優れた耐油性を付与する成分である。