(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188355
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ボルト軸力測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
G01N29/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096324
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 絢子
(72)【発明者】
【氏名】奥村 雅彦
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AC07
2G047BA03
2G047BB01
2G047BC02
2G047EA14
2G047GE01
2G047GG02
2G047GG20
2G047GG30
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、正確にボルトの軸力を求めることを可能とする。
【解決手段】ボルト軸力測定装置100は、測定機構10と情報処理装置20を備える。測定機構10は、ボルト13の頭部から底面に向けて超音波を発振する超音波探触子11を備える。受信部31は、ボルト13の底面で反射した反射信号を受信する。ボルト受信波形判定部34は、受信部31によって受信された反射信号の波形が、確からしい波形であるか否かを判定する。受信波形判定部34は、確からしい波形であると判定した複数の受信波形について、測定点を設定する。受信時間算出部36は、設定された測定点を利用して受信時間差を求め、求めた受信時間に基づき受信時間を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を利用してボルトの軸力を決定するボルト軸力測定装置であって、
前記ボルトに関わるボルト情報を記憶するボルト情報記憶部と、
超音波探触子から発振された前記超音波が前記ボルトの底面で反射され、前記超音波探触子に戻ってくる反射信号を受信する受信部と、
前記ボルト情報を利用して、受信した反射信号から所定区間の受信波形を取得する受信波形取得部と、
前記受信波形がノイズ等ではない正常な反射信号の波形であるか否かを判定する受信波形判定部と、
前記正常な反射信号の波形であると判定された2つ以上の受信波形を選択する受信波形選択部と、
選択された前記2つ以上の受信波形の各測定点に基づき、受信時間を算出する受信時間算出部と
を具備することを特徴とするボルト軸力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト軸力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトの頭部からボルトの底面に向けて発振した超音波を利用して、ボルトの軸力を測定するボルト軸力測定方法が知られている。かかる方法では、超音波探触子をボルトの頭部に密着させて超音波を発振する必要があるが、各ボルトの頭部は、平坦度にバラツキがあるため、超音波の測定精度が低くなりがちである。
このような問題を解消するために、例えば特許文献1には、超音波探触子(プローブ)とボルトの頭部との間に一定のギャップを形成することで、超音波の測定精度の向上を図る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術では、上記ギャップを形成するために複雑な固定機構が必要になる。
また、何らかの理由でボルト底面から反射される反射信号の波形にノイズ等が重畳されると、正確にボルトの軸力を求めることが難しい、という問題もある。
【0005】
本発明は、以上説明した事情を鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら、正確にボルトの軸力を求めることが可能な技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るボルト軸力測定装置は、超音波を利用してボルトの軸力を決定するボルト軸力測定装置であって、ボルトに関わるボルト情報を記憶するボルト情報記憶部と、超音波探触子から発振された超音波がボルトの底面で反射され、超音波探触子に戻ってくる反射信号を受信する受信部と、ボルト情報を利用して、受信した反射信号から所定区間の受信波形を取得する受信波形取得部と、受信波形がノイズ等ではない正常な反射信号の波形であるか否かを判定する受信波形判定部と、正常な反射信号の波形であると判定された2つ以上の受信波形を選択する受信波形選択部と、選択された2つ以上の受信波形の各測定点に基づき、受信時間を算出する受信時間算出部とを具備することを要旨とする。
これにより、受信時間を正確に把握することによって、ボルトの軸力に対応するボルトの伸び量の変化を正確に把握することができる。そのため、正確にボルトの軸力を求めることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構成でありながら、正確にボルトの軸力を求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るボルト軸力測定装置の概略構成を示す図である。
【
図2】確からしい波形であるか否かの判定動作を説明するための説明図である。
【
図3】測定点の設定動作を説明するための説明図である。
【
図4】受信波形の選択動作を説明するための説明図である。
【
図5】ボルト軸力測定装置によって実行される処理の流れを示す図である。
【
図6】変形例1に係る受信波形の選択動作を説明するための説明図である。
【
図7】変形例2に係る受信時間の算出動作を説明するための説明図である。
【
図8】変形例3に係る測定点の設定動作を説明するための説明図である。
【
図9】変形例4に係るゼロクロス点間隔とボルトの軸力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
A.本実施形態
A-1.構成
図1は、本実施形態に係るボルト軸力測定装置100の概略構成を示す図である。
ボルト軸力測定装置100は、測定機構10と、情報処理装置20とを備えている。
本実施形態では、ボルト13とナット15によって部品14が締結されており、ボルト軸力測定装置100は、ボルト13の軸力を測定する。
【0011】
測定機構10は、超音波探触子11を備えている。超音波探触子11は、超音波測定用の接触媒質12を介してボルト13の頭部に配置されている。接触媒質12は、例えば粘着性の強い液体、ゲルのほか、水、潤滑油、グリースなどを利用することができる。
【0012】
超音波探触子11は、計測対象となるボルト13の頭部から底面に向けて超音波を発振(送信)する一方、発振された超音波がボルト13の底面で反射され、戻ってくる反射信号を受信する。超音波探触子11は、例えば5~20MHz程度の超音波を生成するものを用いることができるが、これに限る趣旨ではなく、様々な周波数に対応した探触子を利用することができる。
【0013】
情報処理装置20は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末などであり、制御部30と、記憶部40と、通信部50と、入力部60と、出力部70とを備えている。
【0014】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えており、装置各部を中枢的に制御する(詳細は後述する)。
【0015】
記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)及び/又はeMMC(embedded Multi Media Card)等のストレージを備え、各種データやプログラムを記憶する。
【0016】
通信部50は、様々な通信インタフェースを備え、外部機器(例えば、超音波探触子11など)との間で様々な信号やデータを授受する。
【0017】
入力部60は、キーボード、タッチパネル、マウス及び/又はマイク等を備え、様々なデータを入力する。
【0018】
出力部70は、ディスプレイ及び/又はスピーカ等を備え、様々なデータを出力する。
【0019】
制御部30は、受信部31、ボルト情報記憶部32、受信波形取得部33、受信波形判定部34、受信波形選択部35、受信時間算出部36、ボルト軸力決定部37と、を含む。
【0020】
受信部31は、超音波探触子11によって受信された(多重)反射信号を、通信部50を介して受信する。
ボルト情報記憶部32は、ボルト13の長さや材質などをあらわすボルト情報を記憶する。
受信波形取得部33は、ボルト情報を利用して、受信部31によって受信された反射信号にゲートを設定し、所定区間の受信波形を取得する。
受信波形判定部34は、取得された受信波形のそれぞれについて、ノイズ等ではない正常な反射信号の波形であるか否かを判定する。なお、以下では、説明の便宜上、ノイズ等ではない正常な反射信号の波形を「確からしい波形」と呼ぶ。
【0021】
図2は、確からしい波形であるか否かの判定動作を説明するための説明図である。
図2には、理想的な信号波形(以下、「理想信号波形」ともいう。)Wiと、受信波形取得部33によって取得される反射信号の受信波形Wrが示されている。
を示す。
【0022】
受信波形判定部34は、ボルト情報に基づき設定される任意のゲートGにおいて、ゲートG内に存在する受信波形Wrの複数のゼロクロス点(振幅がゼロとなる点)の間隔が、全て規定範囲内である場合に確からしい波形であると判定する。
【0023】
図2を参照して説明すると、受信波形判定部34には、ゲートG内での理想信号波形Wiのゼロクロス点間隔Δtdが、規定値として設定されている。
受信波形判定部34は、ゲートG内で検出された受信波形Wrのゼロクロス点の間隔Δtd1’、Δtd2’、Δtd3’…Δtd(n-1)’が、全て規定範囲(規定値Δtd-βよりも大きく、規定値Δtd+α+βよりも小さい)に収まっている場合に、確からしい波形であると判定する。ここで、αは、あらかじめ規定した許容幅であり、βは、軸力の測定精度から規定されるゼロクロス点間隔の許容幅である。なお、受信波形判定部34は、前提として、ゲートG内に存在する受信波形Wrが、設定された下限閾値wthlを超えているか否かを判定し、受信波形Wrが、設定された下限閾値wthlを超えている場合にのみ、上述したゲートG内のゼロクロス点間隔を求めるようにしてもよい(詳細は後述)。
【0024】
さらに、受信波形判定部34は、確からしい波形と判定した受信波形について、測定点を設定する。
図3は、測定点の設定動作を説明するための説明図である。
受信波形判定部34は、ゲートG内に存在する受信波形Wrの複数のゼロクロス点のうち、予め設定された閾値wthを超えた直後のゼロクロス点を、測定点tmとして設定する。なお、測定点の設定方法は、これに限る趣旨でなく、様々な方法を採用することができる。
【0025】
受信波形選択部35は、受信波形判定部34によって、確からしい波形と判定された2つ以上の受信波形を選択する。
図4は、受信波形の選択動作を説明するための説明図である。
図4では、反射信号の1波目W1と3波目W3が、受信波形判定部34によって確からしい波形であると判定されているため(
図4に示す「確からしさ:〇」参照)、受信波形選択部35は、反射信号の1波目W1と3波目W3を、受信波形として選択する。
【0026】
受信時間算出部36は、選択された2つ以上の受信波形に設定された測定点での受信時間差を求め、求めた受信時間差に基づき、受信時間を算出する。
図4を参照して具体的に説明すると、
図4では、1波目W1と3波目W3が、受信波形として選択されているため、受信時間算出部36は、1波目W1と3波目W3の測定点tm1、tm3を利用して受信時間t(=(tm3-tm1)/2)を求める。一般化すると、選択された受信波形が、a波目とb波目であり、測定点がそれぞれtma、tmbである場合、受信時間算出部36は、下記式(1)を利用して受信時間tを算出する。
t=(tmb-tma)/(b-a) ・・・(1)
【0027】
ボルト軸力決定部37は、受信時間tを用いてボルトの軸力を決定(導出)する。一例として、ボルト軸力決定部37は、ボルト情報に示されるボルト13の長さや受信時間tなどに基づき、ボルト13の伸びを求め、これに軸力係数を乗じることでボルトの軸力を決定する方法が挙げられるが、これに限る趣旨ではなく、他の方法でボルトの軸力を決定してもよい。
【0028】
このように、本実施形態によれば、ボルトの頭部から超音波を送信し、ボルトの底面で反射した反射信号を受信することでボルトの軸力を決定するボルト軸力測定方法において、ボルトの頭部と底面の間で多重反射した反射信号のうち、確からしい波形であると判定した複数の受信波形に測定点を設定し、設定した測定点を利用して受信時間差を求め、求めた受信時間に基づき受信時間を算出する構成とした。これにより、ノイズ等により受信波形が乱れた場合でも、ノイズ等の影響を受けることなく受信時間を正確に算出することが可能となる。
また、超音波探触子とボルトの頭部との間に一定のギャップ等を形成するといった複雑な機構は不要であり、信号処理のみでボルトの軸力を導出することが可能となる。
【0029】
A-2.動作
以下、ボルト軸力測定装置100によって実行される処理の流れについて、
図5を参照しながら説明する。
ユーザは、計測対象となるボルト13の頭部に超音波探触子11を設置し、タッチパネル等を操作してボルト13の軸力の測定開始指示を入力する。
【0030】
制御部30は、測定開始指示が入力されると、ボルト情報記憶部32からボルト情報を取得し(ステップS1)、受信波形取得部33に送る。受信波形取得部33は、ボルト情報を利用して、反射信号の1波目、2波目…n波目の各受信時間を予測し、ゲートGを設定する(ステップS2)。
【0031】
その後、超音波探触子11は、計測対象となるボルト13の頭部から底面に向けて超音波を発振(送信)するとともに、ボルト13の底面で反射されて戻ってくる反射信号を受信する。受信部31は、超音波探触子11によって受信された(多重)反射信号を、通信部50を介して受信する。
【0032】
受信波形取得部33は、受信部31によって受信される反射信号から、ゲートGが設定された各区間の受信波形を取得する(ステップS3)。なお、以下では、便宜上、1波目、…a波目(a>1)、…b波目(b>a)の受信波形を処理する場合について説明する。
【0033】
受信波形判定部34は、ゲートGが設定された各区間の受信波形が、何番目の波形であるのかを特定する(ステップS4、S4a、S4b)。受信波形判定部34は、何番目の受信波形(例えば、1波目、…a波目、…b波目の受信波形など)であるかを特定すると、各受信波形が、設定された下限閾値wthlを超えているか否かを判断する(ステップS5、S5a、S5b)。
【0034】
受信波形判定部34は、受信波形が、下限閾値wthlを超えていないと判断すると(ステップS6、S6a、S6b;NO)、処理を終了する。
一方、受信波形判定部34は、受信波形が、下限閾値wthlを超えていると判断すると(ステップS6、S6a、S6b;YES)、ゲートG内に存在する受信波形の複数のゼロクロス点を取得する(ステップS7、S7a、S7b)。そして、受信波形判定部34は、取得した複数のゼロクロス点の間隔が、全て規定範囲(規定値Δtd-βよりも大きく、規定値Δtd+α+βよりも小さい)に入っているか、別言すればゼロクロス点の間隔が適正であるか否かを判断する(ステップS8、S8a、S8b)。
【0035】
受信波形判定部34は、例えば取得したゼロクロス点の間隔の中に、規定範囲外のものがあることから、取得した複数のゼロクロス点の間隔は適正でないと判断すると(ステップS8、S8a、S8b;NO)、処理を終了する。
一方、受信波形判定部34は、例えば、取得したゼロクロス点の間隔が、全て規定範囲に収まっていることから、取得した複数のゼロクロス点の間隔は適正であると判断すると(ステップS8、S8a、S8b;YES)、この受信波形は、確からしい波形であると判定する。そして、受信波形判定部34は、確からしい波形と判定した受信波形について、設定された閾値wthを超えた直後のゼロクロス点を、測定点tmとして設定する(ステップS9、S9a、S9b)。
【0036】
受信波形選択部35は、受信波形判定部34によって、確からしい波形と判定された受信波形が2つ以上あるか否か、別言すれば測定点tmが2つ以上あるか否かを判断する(ステップS10)。受信波形選択部35は、受信波形(すなわち、測定点tm)が1つしかないと判断すると(ステップS10;NO)、処理を終了する。一方、受信波形選択部35は、受信波形(すなわち、測定点tm)が2つ以上あると判断すると、複数の受信波形の中から、受信時間の算出に利用する2つ以上の受信波形を選択する(ステップS11)。なお、選択する受信波形の数は、2つであってもよいが、3つ以上であってもよい。
【0037】
受信時間算出部36は、選択された2つ以上の受信波形に設定された測定点tmでの受信時間差を求め、求めた受信時間差に基づき、受信時間を算出する(ステップS12)。例えば、a波目とb波目の受信波形が選択された場合であれば、受信時間算出部36は、各受信波形に設定された測定点tma、tmbを利用して、受信時間t=(tmb-tma)/(b-a)を求める。
【0038】
ボルト軸力決定部37は、受信時間算出部によって算出された受信時間tを用いて、ボルトの軸力を決定し(ステップS13)、処理を終了する。
【0039】
B.変形例
本発明は、上述した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、または並列に実行することができる。
【0040】
<変形例1>
受信波形選択部35は、確からしい波形と判定された受信波形が3つ以上ある場合、信号としての信頼性が高い、多重反射の反射回数がより少ない2つの受信波形を選択するようにしてもよい。
【0041】
図6は、変形例1に係る受信波形の選択動作を説明するための説明図である。
図6に示す例では、1波目と、3波目と、4波目の3つの受信波形W1、W3、W4が、確からしい波形と判定されている。この場合、受信波形選択部35は、反射回数がより少ない1波目と、3波目の2つの受信波形W1、W3を選択する一方、受信時間算出部36は、1波目と3波目の測定点tm1、tm3を利用して、受信時間t=t(m3-m1)=(tm3-tm1)/2を求めるようにしてもよい。
【0042】
<変形例2>
受信時間算出部36は、確からしい波形と判定された受信波形が3つ以上ある場合、それぞれの受信波形から検出される測定点tmを組み合わせて複数の受信時間を算出し、これらの平均値を受信時間として用いてもよい。
【0043】
図7は、変形例2に係る受信時間の算出動作を説明するための説明図である。
図7に示す例では、1波目と、3波目と、4波目の3つの受信波形が、確からしい波形と判定されている。この場合、受信波形選択部35は、1波目、3波目、4波目の3つの受信波形を選択する。一方、受信時間算出部36は、1波目と3波目の測定点tm1、tm3を利用して、受信時間t=t(m3-m1)=(tm3-tm1)/2を求めるとともに、3波目と4波目の測定点tm3、tm4を利用して、受信時間t=t(m4-m3)=tm4-tm3を求める。受信時間算出部36は、このように求めた2つの受信時間の平均値を、受信時間t=t(m3-m1)+t(m4-m3)/2として用いてもよい。
【0044】
<変形例3>
本実施形態では、ゲートG内に存在する受信波形Wrの複数のゼロクロス点のうち、予め設定された閾値wthを超えた直後のゼロクロス点を、測定点tmとして設定したが、例えば
図8に示すように、ゲートG内に存在する受信波形Wrの複数のピーク点のうち、予め設定された閾値wthを超えた直後のピーク点を、測定点tmとしてもよい。なお、閾値wthを超えた最大のピーク点を、測定点tmとしてもよい。
【0045】
<変形例4>
本実施形態では、理想信号波形Wiを想定してゼロクロス点間隔の規定範囲を設定したが、これに限る趣旨ではない。基準ボルトを利用してゼロクロス点間隔の規定範囲を設定してもよい。
【0046】
図9は、ゼロクロス点間隔とボルトの軸力の関係を示す図であり、縦軸にゼロクロス点間隔、横軸にボルト軸力を示す。
図9において、Δtdは、基準ボルト締結前のゼロクロス点間隔であり、Δtd+αは、基準ボルト締結後のボルトの軸力が最大(=Fmax)となったときのゼロクロス点間隔である。また、βは、すでに説明したように、軸力の測定精度から規定されるゼロクロス点間隔の許容幅である。このように、基準ボルトを利用して実験的に求めたゼロクロス点間隔Δtd-β、Δtd+α+βを、ゼロクロス点間隔の規定範囲として設定してもよい。
【0047】
その他、例えば超音波の送信周波数から定まる送信波形のゼロクロス点間隔Δtdと、基準ボルト締結後のボルトの軸力が最大(=Fmax)となったときのゼロクロス点間隔Δtd+αと、軸力の測定精度から規定されるゼロクロス点間隔の許容幅βから、Δtd-β、Δtd+α+βを、ゼロクロス点間隔の規定範囲として設定してもよい。
【0048】
C.その他
また、本明細書において、「部」とは、単に物理的構成を意味するものではなく、その「部」が実行する処理をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」が実行する処理を2つ以上の物理的構成や装置により実現されても、2つ以上の「部」が実行する処理を1つの物理的手段や装置により実現されてもよい。
【0049】
本明細書において説明した各処理を実施するプログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、情報処理装置20を構成するコンピュータに、上記プログラムをインストールすることができる。ここで、上記プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体は特に限定されないが、例えば、CD-ROM等の記録媒体であっても良い。
【符号の説明】
【0050】
100…ボルト軸力測定装置、10…測定機構、11…超音波探触子、12…接触媒質、13…ボルト、14…部品、15…ナット、20…情報処理装置、30…制御部、31…受信部、32…ボルト情報記憶部、33…受信波形取得部、34…受信波形判定部、35…受信波形選択部、36…受信時間算出部、37…ボルト軸力決定部、40…記憶部、50…通信部、60…入力部、70…出力部