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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188361
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】焼入れ装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/63 20060101AFI20221214BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
C21D1/63
C21D1/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096330
(22)【出願日】2021-06-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 彰
(72)【発明者】
【氏名】大下 修
【テーマコード(参考)】
4K034
【Fターム(参考)】
4K034AA02
4K034FA04
4K034FB11
(57)【要約】
【課題】 加熱されたワークを保持したワーク保持部材を冷却液中に浸漬させてワークを焼入れするにあたり、冷却液中においてワークを均一に冷却させて焼入れできるようにする。
【解決手段】 加熱されたワークWを保持したワーク保持部材Hを、昇降装置20により焼入れ室11の下に設けた冷却液槽12に収容された冷却液X中に浸漬させて焼入れするにあたり、昇降装置によって冷却液中に浸漬されたワーク保持部材を保持する回転受台36と、回転受台が回転可能に取り付けられる回転アーム34と、回転アームを回転させて回転受台に保持されたワーク保持部材を冷却液槽内で周回軌道に沿って公転させる回転機構と、回転アームに回転可能に取り付けられた回転受台を自転させる自転機構とを備えるようにした。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されたワークをワーク保持部材に保持させて、焼入れ室の下部に設けられた冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させ、ワーク保持部材に保持されたワークを冷却液中で冷却させて焼入れする焼入れ装置において、前記のワーク保持部材を焼入れ室内で昇降させて、ワーク保持部材に保持された加熱されたワークを保持した冷却液槽における冷却液中に浸漬させる一方、冷却液中に浸漬されて冷却されたワークを冷却液中から引き上げる昇降装置と、前記の昇降装置によって冷却液中に浸漬されたワーク保持部材を保持する回転受台と、前記の回転受台が回転可能に取り付けられる回転アームと、前記の回転アームを回転させて回転受台に保持された前記のワーク保持部材を冷却液槽内で周回軌道に沿って公転させる回転機構と、回転アームに回転可能に取り付けられた前記の回転受台を自転させる自転機構とを備えたことを特徴とする焼入れ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワークの焼入処理装置において、前記のワーク保持部材に複数のワークを保持させたことを特徴とする焼入れ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワークの焼入処理装置において、回転アームに回転可能に取り付けられた回転受台を自転させる自転機構として、前記の回転アームを回転可能に保持させる固定軸と、回転アームに回転可能に取り付けられた前記の回転受台との間に回転伝達部材を設けたことを特徴とする焼入れ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のワークの焼入処理装置において、前記の回転伝達部材として、前記の固定軸と回転受台とにそれぞれスプロケットを設けると共に、固定軸に設けたスプロケットと回転受台に設けたスプロケットとにチェーンをかけ渡すように設けたことを特徴とする焼入れ装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載のワークの焼入処理装置において、前記の回転機構により回転アームを冷却液槽内で水平方向に回転させて、回転受台に保持されたワーク保持部材を冷却液槽内で水平方向の周回軌道に沿って公転させることを特徴とする焼入れ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉において加熱されたワークをワーク保持部材に保持させ、このワーク保持部材を焼入れ室の下部に設けられた冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させ、ワーク保持部材に保持されたワークを冷却させて焼入れする焼入れ装置に関するものである。特に、前記のようにしてワーク保持部材に保持されたワークを焼入れするにあたり、冷却液中においてワークを均一に冷却させて焼入れできるようにし、ワーク保持部材に複数のワークを保持させて焼入れする場合においても、各ワークが冷却液中において均一に冷却できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱処理炉において加熱されたワークを、焼入れ室の下部に設けられた冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させ、ワークを冷却させて焼入れすることが行われている。
【0003】
そして、このように加熱されたワークを、焼入れ室の下部に設けられた冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させて焼入れするにあたり、従来においては、加熱処理されたワークを焼入れ室内に設けられた支持部材の上に載置させ、この支持部材を昇降手段により下降させて、この支持部材の上に載置させたワークを焼入れ室の下部に設けた冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させ、冷却液槽内における冷却液を循環させてワークを冷却させて焼入するようにしている。
【0004】
ここで、このように冷却液槽内における冷却液を循環させてワークを冷却させるにあたっては、ワークを冷却させる速度を高めると共に、冷却されるワークの歪を少なくすることが好ましい。
【0005】
そして、前記のように冷却液槽内における冷却液を循環させてワークを冷却させるにあたり、加熱されたワークを速やかに冷却させるために、冷却液を循環させる速度を速くすると、冷却液の流速が不均一になりやすく、また冷却液の流れ方向との接触側となるワークの片側のみが速く冷却されることにより、ワークに発生する歪が増加するという問題があった。
【0006】
また、従来においては、加熱されたワークを保持したワーク保持部材を冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させ、このワーク保持部材を冷却液槽における冷却液中で冷却液槽の周壁に沿った周回軌道で公転させ、ワーク保持部材に保持されたワークを冷却液と接触させる距離を長くして、ワークを冷却させることが行われている。
【0007】
しかし、前記のようにワーク保持部材を冷却液中で冷却液槽の周壁に沿った周回軌道で公転させて、ワーク保持部材に保持されたワークを冷却液と接触させるようにした場合、周回軌道の内周側における速度よりも外周側における速度か速くなって、ワーク保持部材に保持されたワークの内周側より外周側が速く冷却されるようになり、またワーク単体においても、ワークの進行方向の前側のみ速く冷却され、ワークの冷却が不均一になってワークに歪が発生する等の問題があった。
【0008】
また、従来においては、特許文献1に示されるように、ワークを一定の姿勢で個別に保持する複数のワーク保持体を水平面に沿った周回軌道上に所定のピッチで配列させ、加熱されたワークを保持した各ワーク保持体をワーク投入領域で昇降機構により下方に移動させて、各ワーク保持体に保持された各ワークを冷却液槽内に貯留された冷却液に浸漬させ、前記の各ワーク保持体を移動機構により周回軌道に沿って循環(公転)させて、各ワーク保持体に保持されたワークを冷却液槽内に貯留された冷却液にたくさん接触させることによって冷却させ、ワークが冷却されたワーク保持体をワーク引上領域で昇降機構により上方に移動させて取り出すようにしたものが提案されている。
【0009】
さらに、この特許文献1においては、ワーク保持体に保持されたワークを冷却させるにあたり、各ワーク保持体に保持されたワークに対して、個別に噴射部材から焼入れ油を噴射させることが示されている。
【0010】
しかし、この特許文献1にされるものにおいては、ワークを保持した各ワーク保持体を個別に昇降させる昇降装置や、各ワーク保持体に保持されたワークに噴射部材から個別に焼入れ油を噴射させるための装置が必要になって、多くの装置が必要になると共に、各装置の制御が非常に複雑になってコストが高くつき、さらに各ワーク保持体に保持されたワークを個別に冷却させるため、複数のワークを効率よく冷却させることは困難であった。
【0011】
さらに、特許文献2においては、焼入れ室に注入された焼入れ油内に加熱されたワークを浸漬させてワークを冷却させるにあたり、焼入れ油内に浸漬させたワークを、ワーク昇降装置により焼入れ油内で上下動させて冷却させるようにしたものが示されている。
【0012】
しかし、特許文献2に示されるように、焼入れ油内に浸漬させたワークを焼入れ油内で上下動させる場合、上下動させる距離が限られると共に、上下動させる速度にも限界があり、さらに上下動の切換え時には、上昇端と下降端とでワークが一瞬停止された状態になって、加熱されたワークを速やかに冷却させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第5616728号公報
【特許文献2】特許第6533146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、熱処理炉において加熱されたワークをワーク保持部材に保持させ、このワーク保持部材を焼入れ室の下部に設けられた冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させ、ワーク保持部材に保持されたワークを冷却させて焼入れする場合における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0015】
そして、本発明においては、前記のように加熱されたワークをワーク保持部材に保持させ、このワーク保持部材を焼入れ室の下部に設けられた冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させ、ワーク保持部材に保持されたワークを冷却させて焼入れするにあたり、冷却液中においてワーク保持部材に保持されたワークを均一に冷却させて焼入れできるようにし、特に、ワーク保持部材に複数のワークを保持させて焼入れする場合においても、各ワークが冷却液中において均一に冷却できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る焼入れ装置においては、前記のような課題を解決するため、加熱されたワークをワーク保持部材に保持させて、焼入れ室の下部に設けられた冷却液槽に収容された冷却液中に浸漬させ、ワーク保持部材に保持されたワークを冷却液中で冷却させて焼入れする焼入れ装置において、前記のワーク保持部材を焼入れ室内で昇降させて、ワーク保持部材に保持された加熱されたワークを保持した冷却液槽における冷却液中に浸漬させる一方、冷却液中に浸漬されて冷却されたワークを冷却液中から引き上げる昇降装置と、前記の昇降装置によって冷却液中に浸漬されたワーク保持部材を保持する回転受台と、前記の回転受台が回転可能に取り付けられる回転アームと、前記の回転アームを回転させて回転受台に保持された前記のワーク保持部材を冷却液槽内で周回軌道に沿って公転させる回転機構と、回転アームに回転可能に取り付けられた前記の回転受台を自転させる自転機構とを備えるようにした。
【0017】
そして、本発明の焼入れ装置においては、加熱されたワークを保持したワーク保持部材を、昇降装置により冷却液槽における冷却液中に浸漬させて回転受台の上に保持させ、この回転受台が回転可能に取り付けられた回転アームを回転機構により回転させて、回転受台に保持された前記のワーク保持部材を冷却液槽内で周回軌道に沿って公転させると共に、この回転受台を自転機構により自転させるようにする。このようにすると、回転機構によって回転される回転アームにより冷却液槽内で周回軌道に沿って公転される回転受台に保持されたワーク保持部材が、回転受台の自転に伴って回転受台と一緒に回転して、公転されるワーク保持部材の内周側の位置と外周側の位置とが変化し、このワーク保持部材に保持されたワークの各位置が冷却液槽における冷却液と接触して回転する距離が均等化され、またワークが回転するので、冷却液と強く接触する位置が連続して変化するようになり、ワーク単体を全周より均一に冷却できるので、ワーク保持部材に保持されたワークが、冷却液中において均等に冷却されるようになる。
【0018】
ここで、本発明に係る焼入れ装置においては、前記のワーク保持部材に複数のワークを保持させるようにすることができる。そして、このようにワーク保持部材に複数のワークを保持させた場合においても、前記のように回転機構によって回転される回転アームにより冷却液槽内で周回軌道に沿って公転される回転受台に保持されたワーク保持部材が、回転受台の自転に伴って回転受台と一緒に回転して、公転されるワーク保持部材の内周側の位置と外周側の位置とが変化し、ワーク保持部材に保持された複数の各ワークにおいて冷却液槽における冷却液と接触して回転する距離が均等化され、またワークが回転するので、冷却液と強く接触する位置が連続して変化するようになり、ワーク単体を全周より均一に冷却できるので、ワーク保持部材に保持された各ワークが冷却液中において均等に冷却されるようになる。
【0019】
また、本発明における焼入れ装置において、前記のように回転アームに回転可能に取り付けられた回転受台を自転させるにあたり、この自転機構としては、例えば、前記の回転アームを回転可能に保持させる固定軸と、回転アームに回転可能に取り付けられた前記の回転受台との間に回転伝達部材を設けるようにすることができる。
【0020】
そして、前記の回転伝達部材としては、例えば、前記の回転受台と固定軸とにそれぞれスプロケットを設けると共に、固定軸に設けたスプロケットと回転受台に設けたスプロケットとにチェーンをかけ渡すように設けることができる。
【0021】
また、本発明における焼入れ装置においては、回転受台に保持されたワーク保持部材を前記の回転アームにより冷却液槽内で周回軌道に沿って公転させるにあたり、前記の回転機構により回転アームを冷却液槽内で水平方向に回転させて、回転受台に保持されたワーク保持部材を冷却液槽内で水平方向の周回軌道に沿って公転させるようにすることができる。なお、前記の回転機構により回転アームを冷却液槽内で垂直方向に回転させて、回転受台に保持されたワーク保持部材を冷却液槽内で垂直方向の周回軌道に沿って公転させるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明における焼入れ装置においては、前記のように加熱されたワークを保持したワーク保持部材を、昇降装置により冷却液槽における冷却液中に浸漬させて回転受台の上に保持させ、この回転受台が回転可能に取り付けられた回転アームを回転機構により回転させて、回転受台に保持された前記のワーク保持部材を冷却液槽内で周回軌道に沿って公転させると共に、この回転受台を自転機構により自転させるようにしたため、回転機構によって回転される回転アームにより冷却液槽内で周回軌道に沿って公転される回転受台に保持されたワーク保持部材が、回転受台の自転に伴って回転受台と一緒に回転して、公転されるワーク保持部材の内周側の位置と外周側の位置とが変化し、このワーク保持部材に保持されたワークの各位置が冷却液槽における冷却液と接触して回転する距離が均等化され、ワーク保持部材に保持されたワークが、冷却液中において均等に冷却されるようになる。
【0023】
この結果、本発明における焼入れ装置においては、冷却液中においてワーク保持部材に保持されたワークを均一に冷却させて焼入れできるようになり、特に、ワーク保持部材に複数のワークを保持させて焼入れする場合においても、各ワークを冷却液中において均一に冷却させて焼入れできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る焼入れ装置において、熱処理炉において加熱された複数のワークをワーク保持部材に保持させ、このワーク保持部材を焼入れ室における抽出室と対向する位置に導いた状態を示した上から見た断面説明図である。
図2】前記の実施形態に係る焼入れ装置において、加熱された複数のワークを保持したワーク保持部材を、熱処理炉から焼入れ室における抽出室内に導いて、昇降装置により昇降される一対の昇降受け部の上に保持させた状態を示した側面側の断面説明図である。
図3】前記の実施形態に係る焼入れ装置において、ワーク保持部材を保持させた一対の昇降受け部を、昇降装置により下降させて冷却液槽に収容された冷却液中に導入させ、一対の昇降受け部に保持されたワーク保持部材を、回転軸部を中心にして水平方向に回転される回転アームの端部に設けられた回転受台の上に保持させた状態を示した側面側の断面説明図である。
図4】前記の実施形態に係る焼入れ装置において、ワーク保持部材を保持させた一対の昇降受け部を、昇降装置により下降させて冷却液槽に収容された冷却液中に導入させ、一対の昇降受け部に保持されたワーク保持部材を、回転軸部を中心にして水平方向に回転される回転アームの端部に設けられた回転受台の上に保持させた状態を示した正面側の断面説明図である。
図5】前記の実施形態に係る焼入れ装置において、(A)~(D)は、前記の回転アームを水平方向に回転させて、回転受台に保持されたワーク保持部材を冷却液槽の冷却液中で水平方向に周回軌道に沿って1公転させる間に、回転受台の上に保持されたワーク保持部材を回転受台の回転支軸を中心にして公転方向とは逆方向に1回転自転させる状態を上から見た断面説明図である。
図6】前記の実施形態に係る焼入れ装置において、前記の固定軸に設けたスプロケットと回転受台の回転軸部に設けたスプロケットのギア比を変更させた変更例であって、(A)~(D)は、前記の回転アームを水平方向に回転させて、回転受台に保持されたワーク保持部材を冷却液槽の冷却液中で水平方向に周回軌道に沿って1公転させる間に、回転受台の上に保持されたワーク保持部材を回転受台の回転支軸を中心にして公転方向とは逆方向に2回転自転させる状態を上から見た断面説明図である。
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る焼入れ装置を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る焼入れ装置は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0026】
ここで、この実施形態における焼入れ装置においては、図1に示すように、熱処理炉1において加熱された複数のワークW(Wa~Wd)をワーク保持部材Hに保持させ、このワーク保持部材Hを焼入れ室10における抽出室11に導き、図2に示すように、熱処理炉1の扉1aを開けて、熱処理炉1から焼入れ室10における抽出室11内に導くようにしている。なお、ワーク保持部材Hの上に保持させるワークWの数は限定されず、1つであっても、さらに多くのワークWを保持させるようにすることもできる。
【0027】
ここで、この実施形態における焼入れ装置においては、前記の焼入れ室10における抽出室11の下部に冷却液Xが収容された冷却液槽12を設けており、前記のように焼入れ室10における抽出室11を導かれたワーク保持部材Hを、焼入れ室10に設けられた昇降装置20により昇降される一対の昇降受け部21の上に保持させるようにしている。なお、この一対の昇降受け部21は所要間隔を介して設けられており、各昇降受け部21は、抽出室11を導かれたワーク保持部材Hを移動させるチェーンコンベアで構成されている。
【0028】
そして、前記のように加熱された複数のワークWが保持されたワーク保持部材Hを保持させた一対の昇降受け部21を、図3及び図4に示すように、前記の昇降装置20により下降させて、加熱された複数のワークW(Wa~Wd)が保持されたワーク保持部材Hを冷却液槽12に収容された冷却液X中に浸漬させるようにする。
【0029】
ここで、この実施形態における焼入れ装置においては、冷却液槽12の上に電動モーター等の回転装置31を設け、この回転装置31によって回転される回転軸32を冷却液槽12に収容された冷却液X中に浸漬させると共に、冷却液槽12の底部から上方に向けて設けられた固定軸33を、回転アーム34の回転軸部34a内に相通させて、回転アーム34を固定軸33に回転可能に保持させるようにしている。
【0030】
そして、前記の回転アーム34を前記の回転軸部34aを中心にして水平方向に回転させる回転機構として、この実施形態においては、前記の回転装置31によって回転される回転軸32と、回転アーム34の回転軸部34aとにそれぞれスプロケット32a,34bを設けると共に、これらのスプロケット32a,34bの間にチェーン35をかけ渡すようにし、前記の回転装置31により回転軸32を回転させ、前記のスプロケット32a,34bとチェーン35とにより、回転アーム34を前記の回転軸部34aを中心にして水平方向に回転させるようにしている。
【0031】
また、この実施形態における焼入れ装置においては、前記の回転アーム34における回転軸部34aから半径方向に延出された回転アーム34の端部に上方に突出した支軸部34cを設け、この支軸部34cに回転受台36の回転軸部36aを回転可能に保持させて、回転受台36を回転アーム34の端部に回転可能に保持させている。
【0032】
そして、この回転軸部36aを中心にして前記の回転受台36を自転させる自転機構として、前記の回転アーム34の回転軸部34aを挿通して上方に突出した固定軸33の端部と、前記の回転受台36の回転軸部36aとにそれぞれスプロケット33a,36bを設けると共に、固定軸33の端部と回転受台36の回転軸部36aとに設けたスプロケット33a,36bにチェーン37をかけ渡している。
【0033】
ここで、この実施形態における焼入れ装置において、前記のように加熱された複数のワークWを保持したワーク保持部材Hを冷却液槽12における冷却液X中に浸漬させて、加熱された複数のワークW(Wa~Wd)を焼入れするにあたっては、前記の図3及び図4に示すように、前記のワーク保持部材Hを一対の昇降受け部21の上に保持させて前記の昇降装置20により下降させて冷却液槽12に収容された冷却液X中に浸漬させ、一対の昇降受け部21の上に保持されたワーク保持部材Hを、前記の回転アーム34の一方の端部に設けた前記の回転受台36の上に保持させ、さらに前記の昇降受け部21を前記の回転アーム34よりも下方の位置に下降させて、前記のように回転軸部34aを中心にして水平方向に回転する回転アーム34等と衝突しないようにしている。
【0034】
また、前記のようにワーク保持部材Hを保持した一対の昇降受け部21を下降させて、昇降受け部21の上に保持されたワーク保持部材Hを回転受台36の上に保持させるにあたっては、一対の昇降受け部21間の幅を回転受台36の幅よりも広くし、ワーク保持部材Hを回転受台36の上に保持させる際に、この一対の昇降受け部21が回転受台36に衝突しないようにしている。
【0035】
そして、このようにワーク保持部材Hを一対の昇降受け部21から回転受台36の上に保持させた後は、図5(A)~(D)に示すように、前記のように回転装置31により回転軸32を回転させ、この回転軸32に設けたスプロケット32aと、回転アーム34の回転軸部34aに設けたスプロケット34bとにかけ渡したチェーン35を介して、回転軸部34aを中心にして回転アーム34を水平方向に回転させ、この回転アーム34の端部に回転可能に設けた前記の回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hを、冷却液槽12に収容された冷却液X中で水平方向の周回軌道に沿って公転させるようにする。
【0036】
また、このように回転軸部34aを中心にして回転アーム34を水平方向に回転させて、前記の回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hを水平方向の周回軌道に沿って公転させた場合、回転アーム34の回転軸部34aに挿通させた固定軸33は回転しないため、回転軸部34aから突出した固定軸33の端部に設けたスプロケット33aと、回転アーム34の端部に回転可能に設けられた回転受台36の回転軸部36aに設けたスプロケット36bとにかけ渡したチェーン37により、回転アーム34の回転に伴って、回転受台36が回転アーム34と逆方向に回転されて、この回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hが、回転受台36の回転軸部36aを中心にして前記の公転方向とは逆方向に自転するようになる。
【0037】
ここで、この実施形態においては、前記の固定軸33に設けたスプロケット33aと前記の回転受台36の回転軸部36aに設けたスプロケット36bとのギア比が1:1になっており、回転アーム34が水平方向に1回転させて、回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hを水平方向の周回軌道に沿って1公転させる間に、回転受台36が回転軸部36aを中心にして公転方向とは逆方回に1回転し、図5(A)~(D)に示すように、回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hが、回転軸部36aを中心にして公転方向とは逆方回に1回転自転して、ワーク保持部材Hの内周側の位置と外周側の位置とが変化しながら1回転して変化し、ワーク保持部材Hに保持された各ワークWa~Wdが冷却液X中で回転しながら、冷却液Xと接触して冷却さる距離が均等化され、ワーク保持部材Hに保持された各ワークWa~Wdが冷却液X中において均等に冷却されるようになる。
【0038】
なお、この実施形態においては、固定軸33に設けたスプロケット33aと前記の回転受台36の回転軸部36aに設けたスプロケット36bとのギア比が1:1にしたが、固定軸33に設けたスプロケット33aと前記の回転受台36の回転軸部36aに設けたスプロケット36bとのギア比を変化させることによって、回転アーム34により回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hが周回軌道に沿って1公転する間に、この回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hを自転させる数を変化させることができる。
【0039】
例えば、固定軸33に設けたスプロケット33aに対して、回転受台36の回転軸部36aに設けたスプロケット36bのギア比を半分にすると、図6(A)~(D)に示すように、回転アーム34の回転により、回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hが水平方向の周回軌道に沿って1公転する間に、回転受台36の上に保持されたワーク保持部材Hが、回転軸部36aを中心にして公転方向とは逆方回に2回転自転するようになる。
【0040】
また、この実施形態においては、前記の固定軸33を挿通させた回転アーム34の回転軸部34aから、回転アーム34を半径方向片側にだけ延出させて、この回転アーム34の端部に回転受台36を1つ回転可能に保持させるようにしただけであるが、回転軸部34aから延出させる回転アーム34の数は特に限定されない。図示していないが、例えば、回転軸部34aから回転アーム34を半径方向両側に延出させて、両側に延出された各回転アーム34の端部にそれぞれ回転受台36を回転可能に保持させて、回転アーム34をバランスよく回転させたり、焼入れするワークWの数を増やして、生産量を向上させたりすることもできる。
【0041】
また、図示していないが、回転受台36を自転させるために、チェーン37やスプロケット33a、36b等の回転伝達部材を設けずに、回転受台36の回転軸部36aを直接回転させる回転装置(図示せず)を回転アーム34に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 :熱処理炉
1a :扉
10 :焼入れ室
11 :抽出室
12 :冷却液槽
20 :昇降装置
21 :昇降受け部
31 :回転装置
32 :回転軸
32a :スプロケット
33 :固定軸
33a :スプロケット
34 :回転アーム
34a :回転軸部
34b :スプロケット
34c :支軸部
35 :チェーン
36 :回転受台
36a :回転軸部
36b :スプロケット
37 :チェーン
H :ワーク保持部材
W(Wa~Wd) :ワーク
X :冷却液
図1
図2
図3
図4
図5
図6