(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188380
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】包装材用フィルム、これを備える包装材、包装袋及び包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20221214BHJP
B65D 75/26 20060101ALI20221214BHJP
C08K 7/22 20060101ALI20221214BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20221214BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20221214BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D75/26
C08K7/22
C08L23/26
C08L23/00
B32B27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096374
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】永井 暁
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA04
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4F100AK03A
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4J002BB031
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4J002GG02
(57)【要約】
【課題】加熱処理によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる包装材用フィルム等を提供すること。
【解決手段】樹脂及び多孔質フィラーを含む第一の樹脂層を備え、樹脂が、ポリオレフィンと、シリル化ポリオレフィンとを含み、多孔質フィラーの吸油量が100~380mL/100gである、包装材用フィルム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及び多孔質フィラーを含む第一の樹脂層を備え、
前記樹脂が、ポリオレフィンと、シリル化ポリオレフィンとを含み、
前記多孔質フィラーの吸油量が100~380mL/100gである、包装材用フィルム。
【請求項2】
前記第一の樹脂層において、前記シリル化ポリオレフィンの添加量が、前記ポリオレフィン100質量%を基準として、0.1~20質量%である、請求項1に記載の包装材用フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィンと、前記シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位とが非相溶であり、
前記第一の樹脂層が、前記ポリオレフィンと相溶する第1相溶部位と、前記シリル化ポリオレフィンの少なくとも一部と相溶する第2相溶部位とを有する相溶化剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の包装材用フィルム。
【請求項4】
前記シリル化ポリオレフィンに対する前記相溶化剤の質量比が0.05~20である、請求項3に記載の包装材用フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の包装材用フィルムを含む包装材。
【請求項6】
請求項5に記載の包装材を用いてなり、前記第一の樹脂層が内側に配置されている、包装袋。
【請求項7】
水中油分散型の内容物を収容するために用いられる請求項6に記載の包装袋。
【請求項8】
請求項7に記載の包装袋と、
前記包装袋内に封入された水中油分散型の内容物とを備える包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装材用フィルム、これを備える包装材及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カレーなどの水中油分散型内容物を封入した包装体が知られている。このような包装体においては、包装体を開封して内容物を排出させる際に、内容物を全て使い切ることができずに無駄が生じることや、内容物の付着により汚れが生じること、内容物の排出作業に手間がかかることなどの問題が指摘されている。
【0003】
そのため、包装体には、その開封時に、内容物を滑落しやすくすること、すなわち、内容物に対して優れた滑落性を付与することが求められている。
【0004】
例えば特許文献1には、平均粒径D50が10~50μmであり且つ融点が100~180℃のポリオレフィン系粒子を含み、表面粗さRaが1.00~7.00μmのヒートシール層を備える包装シートを用いた包装体により内容物表面をより付着しにくくして内容物を包装体から容易に排出させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の包装体は、以下に示す課題を有していた。
すなわち、上記特許文献1に記載の包装体は、開封時の内容物の排出容易性、すなわち滑落性の点で改善の余地を有していた。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加熱処理によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる包装材用フィルム、これを備える包装材、包装袋及び包装体を提供することを目的とする。
【0008】
なお、本開示において、水中油分散型の内容物とは、水と脂質とを含有し、水の含有量が脂質の含有量よりも多い内容物を意味する。「脂質」は20℃(常温)において液状である油と、20℃において固体である脂とを包含する概念である。以下、水中油分散型の内容物に含まれる上記油と、上記脂であって本開示に係る包装材用フィルムに施される加熱処理によって液状となる脂とをまとめて「油分」と称する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本開示は、樹脂及び多孔質フィラーを含む第一の樹脂層を備え、前記樹脂が、ポリオレフィンと、シリル化ポリオレフィンとを含み、前記多孔質フィラーの吸油量が100~380mL/100gである、包装材用フィルムである。
【0010】
この包装材用フィルムによれば、加熱処理によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる。
【0011】
本開示の包装材用フィルムによって上記効果が得られる理由は、以下の通りではないかと推察される。
【0012】
すなわち、第一の樹脂層中の樹脂に含まれるポリオレフィンは、レトルト処理又はボイル処理の温度条件下において、油分を吸収することが可能である。このため、例えば包装材用フィルムを、水中油分散型の内容物を封入した包装体の包装材に用い、水中油分散型の内容物を包装材用フィルムの第一の樹脂層の表面に接触させた状態でレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理を行うと、内容物中の油分の一部が第一の樹脂層に吸収され、第一の樹脂層の親油性が向上する。一方、第一の樹脂層は多孔質フィラーを含むため、第一の樹脂層の表面に凹凸が形成され、第一の樹脂層と水中油分散型の内容物との接触面積、すなわち油分の通過面積を増加させることが可能となる。また、多孔質フィラーは、特定範囲の吸油量を有するため、油分を効果的に吸着することが可能であり、油分の吸着により水中油分散型の内容物に含まれている油分の第一の樹脂層への吸収を促進するとともに、適度な吸油により第一の樹脂層の表面において油膜を容易に形成させることができる。その結果、第一の樹脂層の表面と内容物との間に油膜が安定して形成される。このため、包装体を開封して内容物を落下させる際、表層部が水で構成される内容物は、撥水性を有する油膜に対して滑りやすくなる。しかし、それでも、内容物と油膜との間には摩擦が生じる。そのため、仮に、第一の樹脂層と油膜との間の摩擦が大きく、第一の樹脂層に対して油膜が滑落しにくい場合には、内容物は滑落しにくくなる。その点、本開示の包装材用フィルムは、第一の樹脂層において樹脂中にシリル化ポリオレフィンを含むことで、第一の樹脂層と油膜との間の摩擦が低下し、第一の樹脂層に対して油膜が滑落しやすくなり、水中油分散型の内容物が油膜とともに容易に滑落する。こうして、本開示の包装材用フィルムによって上記効果が得られるのではないかと推察される。
【0013】
上記第一の樹脂層において、前記シリル化ポリオレフィンの添加量が、前記ポリオレフィン100質量%を基準として、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0014】
この場合、第一の樹脂層において、ポリオレフィン100質量%を基準としたシリル化ポリオレフィンの添加量が0.1質量%未満である場合に比べて、第一の樹脂層と油膜との間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層に対して油膜を容易に滑落させることができる。また、第一の樹脂層において、ポリオレフィン100質量%を基準としたシリル化ポリオレフィンの添加量が20質量%を超える場合に比べて、加熱処理によって、第一の樹脂層の表面に油膜をより容易に形成できる。
【0015】
上記包装材用フィルムにおいて、前記ポリオレフィンと、前記シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位とが非相溶であり、前記第一の樹脂層が、前記ポリオレフィンと相溶する第1相溶部位と、前記シリル化ポリオレフィンの少なくとも一部と相溶する第2相溶部位とを有する相溶化剤をさらに含むことが好ましい。
ここで、「非相溶」とは、ポリオレフィンと、シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位とをブレンドした場合に、ポリオレフィン部位がポリオレフィンに対して均一に分散せず、海島構造を形成することをいう。
【0016】
ポリオレフィンとシリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位とが非相溶である場合、第一の樹脂層が相溶化剤を含むことで、相溶化剤の第1相溶部位がポリオレフィンと相溶することが可能となり、相溶化剤の第2相溶部位がシリル化ポリオレフィンの少なくとも一部と相溶することが可能となる。このため、シリル化ポリオレフィン同士の凝集がより抑制され、第一の樹脂層と油膜との間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層に対して油膜を容易に滑落させることができる。
【0017】
上記包装材用フィルムにおいて、前記シリル化ポリオレフィンに対する前記相溶化剤の質量比が0.05~20であることが好ましい。
【0018】
この場合、上記質量比が0.05未満である場合に比べて、第一の樹脂層においてシリル化ポリオレフィンの凝集がより抑制され、第一の樹脂層と油膜との間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層に対して油膜を容易に滑落させることができる。
また、上記質量比が20を超える場合に比べて、相溶化剤によるシリル化ポリオレフィンの被覆が抑制され、第一の樹脂層においてシリル化ポリオレフィンの凝集がより抑制され、第一の樹脂層と油膜との間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層に対して油膜を容易に滑落させることができる。
【0019】
また、本開示は、上述した包装材用フィルムを含む包装材である。
【0020】
この包装材は、上記包装材用フィルムを含むため、第一の樹脂層の表面に水中油分散型の内容物を接触させた状態で包装材を加熱処理することによって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる。
【0021】
本開示は、上述した包装材を用いてなり、前記第一の樹脂層が内側に配置されている、包装袋である。
【0022】
この包装袋によれば、包装材に含まれる包装材用フィルムが、加熱処理によって、第一の樹脂層と接触する水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる。このため、水中油分散型の内容物を包装袋内に封入して包装体を得た後、当該包装体に対してレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理が行われると、包装体の開封後に包装体から水中油分散型の内容物を排出させる際に、その水中油分散型の内容物を容易に滑落させることができる。このため、水中油分散型の内容物の残液量を低減させることができ、内容物の無駄を防止でき、内容物の付着による汚れを防止できるとともに、内容物の排出作業を効率よく行うことができる。
【0023】
上記包装袋は、水中油分散型の内容物を収容するために用いられることが有効である。
【0024】
本開示は、上述した包装袋と、前記包装袋内に封入された水中油分散型の内容物とを備える包装体である。
【0025】
この包装体によれば、包装材に含まれる包装材用フィルムが、加熱処理によって、第一の樹脂層と接触する水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる。このため、包装体に対してレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理が行われると、包装体の開封後に包装体から水中油分散型の内容物を排出させる際に、その水中油分散型の内容物を容易に滑落させることができる。このため、水中油分散型の内容物の残液量を低減させることができ、内容物の無駄を防止でき、内容物の付着による汚れを防止できるとともに、内容物の排出作業を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、加熱処理によって、水中油分散型に対して優れた滑落性を付与できる包装材用フィルム、これを備える包装材及び包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本開示に係る包装材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)~
図2(c)は、本開示に係る包装材によって、水中油分散型の内容物に対する優れた滑落性を付与できるメカニズムを説明する一連の模式図である。
【
図3】
図3は本開示に係る包装体の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(e)は、包装材について、内容物の滑落性の評価方法を説明する一連の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
<包装材>
まず本開示の包装材の一実施形態について
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、本開示に係る包装材の一実施形態を模式的に示す断面図、
図2(a)~
図2(c)は、本開示に係る包装材によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できるメカニズムを説明する一連の模式図である。
【0030】
図1に示す包装材100は、水中油分散型の内容物を収容するための包装袋の形成に用いられるものである。水中油分散型の内容物とは、水と油分とを含有し、水の含有量が油分の含有量よりも多い内容物である。水中油分散型の内容物に含まれる油分の量は、例えば、0.1質量%以上50質量%未満であり、0.5~40質量%又は1~20質量%であってもよい。水中油分散型の内容物の具体例としては、カレー、ハヤシ、パスタソース(例えば、ミートソース)及びペットフードが挙げられる。なお、カレーに含まれる油分の量は、例えば、0.2~15質量%程度であり、カレーに含まれる水分の量は、例えば、70~90質量%程度である。
【0031】
包装材100は、基材10と、基材10上に設けられる包装材用フィルム20と、基材10及び包装材用フィルム20を接着する接着剤層30とを備えている。
【0032】
包装材用フィルム20は、第一の樹脂層21と、第二の樹脂層22とを備えており、第二の樹脂層22は、第一の樹脂層21と基材1との間に配置されている。すなわち、第一の樹脂層21のうち基材10と反対側の表面Sは露出されている。この第一の樹脂層21の表面Sは、包装材100を用いて包装袋(例えば、レトルトパウチ)を形成した場合に、包装袋の内面となるものである。
【0033】
第一の樹脂層21は、樹脂組成物21aと、樹脂組成物21a中に分散している多孔質フィラー21bとを含有する。樹脂組成物21aは、樹脂を含有しており、樹脂は、ポリオレフィンと、シリル化ポリオレフィンとを含む。また多孔質フィラー21bの吸油量は100~380mL/100gである。
【0034】
上記包装材100によれば、包装材用フィルム20の第一の樹脂層21中に含まれるポリオレフィンは、レトルト処理又はボイル処理の温度条件下(80℃以上)において、油分を吸収することが可能である。このため、包装材100を、水中油分散型の内容物Cを封入した包装体に用い、水中油分散型の内容物Cを包装材用フィルム20の第一の樹脂層21の表面Sに接触させた状態とし(
図2(a)参照)、この状態で、レトルト処理又はボイル処理などの加熱処理(80℃以上の加熱処理)を行うと、内容物Cに含まれている油分C
Oの一部が第一の樹脂層21に吸収され(
図2(b)参照)、第一の樹脂層21の親油性が向上する。
【0035】
一方、第一の樹脂層21は多孔質フィラー21bを含むため、第一の樹脂層21の表面Sに凹凸が形成され、第一の樹脂層21と水中油分散型の内容物Cとの接触面積、すなわち油分の通過面積を増加させることが可能となる。また、多孔質フィラー21bは、100~380mL/100gの吸油量を有するため、油分COを効果的に吸着することが可能であり、油分COの吸着により水中油分散型の内容物Cに含まれている油分COの第一の樹脂層21への吸収を促進するとともに、適度な吸油により第一の樹脂層21の表面Sにおいて油膜FOを容易に形成させることができる。
【0036】
その結果、第一の樹脂層21の表面Sと内容物Cとの間に油膜F
Oが安定して形成される。このため、表層部が水で構成される内容物Cは、撥水性を有する油膜F
Oに対して滑りやすくなり、
図2(c)に示すように、水中油分散型の内容物Cは、包装材100の表面Sを傾斜させるだけで油膜F
O上を滑りやすくなる。しかし、それでも、内容物Cと油膜F
Oとの間には摩擦が生じるため、仮に、第一の樹脂層21と油膜F
Oとの間の摩擦が大きく、第一の樹脂層21に対して油膜F
Oが滑落しにくい場合には、内容物Cは滑落しにくくなる。その点、第一の樹脂層21が樹脂中にシリル化ポリオレフィンを含むことで、第一の樹脂層21と油膜F
Oとの間の摩擦が低下し、第一の樹脂層21に対して油膜F
Oが滑落しやすくなり、水中油分散型の内容物Cが油膜F
Oとともに容易に滑落する。その結果、包装材100は、加熱処理によって、水中油分散型の内容物Cに対して優れた滑落性を付与できる。
【0037】
また、ポリオレフィンは熱融着性を有しているため、第一の樹脂層21はシーラントフィルムの役割も果たすことができる。従って、包装材100は、包装体を形成する際に、第一の樹脂層21を内側に向けて第一の樹脂層21同士を熱融着させることで容易に包装体を形成することができる。
【0038】
以下、包装材100を構成する第一の樹脂層21、第二の樹脂層22、基材10及び接着剤層30について説明する。
【0039】
(第一の樹脂層)
第一の樹脂層21は、水中油分散型の内容物Cと接した状態で加熱処理(例えば、レトルト処理及びボイル処理)が施されることにより、水中油分散型の内容物Cに対して優れた滑落性を付与する層である。
【0040】
(A)ポリオレフィン
ポリオレフィンは、シリル化されていないポリオレフィンであればよく、このようなポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレンなどが挙げられる。中でも、耐熱性に優れることから、ポリプロピレンが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体、及び変性ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリプロピレンとして、ブロックポリプロピレン及びランダムポリプロピレンを組み合わせて用いる場合、ブロックポリプロピレンと、ランダムポリプロピレンとの質量比(ブロックポリプロピレン/ランダムポリプロピレン)は、20/80~80/20であることが好ましく、40/60~60/40であることが更に好ましい。上記以外でも、ポリオレフィンは、ポリノルボルネンなどの環状ポリオレフィンであってもよい。また、上記ポリオレフィンとしては、シール性及び強度物性(引張強度、衝撃強度など)の観点から、線状ポリオレフィンが好ましく、線状ポリオレフィンは直鎖状でも分岐状でもよい。
【0041】
エチレン-αオレフィン共重合体及びプロピレン-αオレフィン共重合体におけるαオレフィン成分としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0042】
変性ポリプロピレンは、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等から導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で、ポリプロピレンをグラフト変性することで得られる。また、ポリプロピレンとして、水酸基変性ポリプロピレンやアクリル変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレンを使用することもできる。プロピレン系共重合体を得るために用いられるαオレフィン成分としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。
【0043】
(C)シリル化ポリオレフィン
シリル化ポリオレフィンは、ポリオレフィンをシリル化したものであり、ポリオレフィン部位とシリコーン部位とを含む。
【0044】
シリル化ポリオレフィンとしては、例えば、PE-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品、PE-Si-PEのトリブロック共重合体として三井化学ファイン株式会社製のイクスフォーラ、PP-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。ここで、PE-Si-PEのトリブロック共重合体のポリオレフィン部位はポリエチレン(PE)であり、シリコーン部位はSiである。
【0045】
シリル化ポリオレフィンとしては、グラフト共重合体よりもブロック共重合体の方が好ましい。これは、ブロック共重合体の方が、第一の樹脂層21からブリードアウトし難い傾向にあるためである。
【0046】
上述したシリル化ポリオレフィンは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
第一の樹脂層21において、シリル化ポリオレフィンの添加量は、ポリオレフィン100質量%を基準として、0質量%より大きければ特に制限されるものではないが、0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、3~7質量%であることが特に好ましい。
【0048】
この場合、第一の樹脂層21において、ポリオレフィン100質量%を基準としたシリル化ポリオレフィンの添加量が0.1質量%未満である場合に比べて、第一の樹脂層21と油膜FOとの間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層21に対して油膜FOを容易に滑落させることができる。また、第一の樹脂層21において、ポリオレフィン100質量%を基準としたシリル化ポリオレフィンの添加量が20質量%を超える場合に比べて、加熱処理によって、第一の樹脂層21の表面Sに油膜FOをより容易に形成できる。
【0049】
(D)相溶化剤
第一の樹脂層21に含まれる樹脂組成物21aは、ポリオレフィンとシリル化ポリオレフィンとを相溶化させる相溶化剤を含んでいても含んでいなくてもよいが、ポリオレフィンとシリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位とが非相溶である場合には、ポリオレフィンとシリル化ポリオレフィンとを相溶化させる相溶化剤をさらに含むことが好ましい。
【0050】
ポリオレフィンとシリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位とが非相溶である場合、第一の樹脂層21が相溶化剤を含むことで、ポリオレフィンとシリル化ポリオレフィンとを相溶化させることが可能となる。このため、シリル化ポリオレフィンの凝集がより抑制され、第一の樹脂層21と油膜FOとの間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層21に対して油膜FOを容易に滑落させることができる。
【0051】
相溶化剤は、ポリオレフィンと相溶する第1相溶部位と、シリル化ポリオレフィンの少なくとも一部と相溶する第2相溶部位とを有する相溶化剤を含むことがより好ましい。
【0052】
この場合、相溶化剤の第1相溶部位がポリオレフィンと相溶することが可能となり、相溶化剤の第2相溶部位がシリル化ポリオレフィンの少なくとも一部と相溶することが可能となる。このため、シリル化ポリオレフィンの凝集がより抑制され、第一の樹脂層21と油膜FOとの間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層21に対して油膜FOを容易に滑落させることができる。
【0053】
ポリオレフィンと相溶する第1相溶部位としては、ポリオレフィンと相溶可能なポリオレフィン部位が挙げられる。第1相溶部位は、ポリオレフィンに対してより良好な相溶性が得られ易いことから、ポリオレフィンと同種のポリオレフィン部位が好ましい。すなわち、ポリオレフィンがポリエチレンである場合、第1相溶部位はポリエチレン部位であることが好ましく、ポリオレフィンがポリプロピレンである場合、第1相溶部位はポリプロピレン部位であることが好ましい。また、ポリオレフィンがエチレン-αオレフィン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等の2種以上のオレフィンからなる共重合体である場合、第1相溶部位は、上記共重合体を構成するオレフィンのうち主成分となるオレフィンと同種のオレフィンを重合又は共重合させた構造を少なくとも有する部位であることが好ましい。
【0054】
シリル化ポリオレフィンの少なくとも一部と相溶する第2相溶部位としては、シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位と相溶可能なポリオレフィン部位が挙げられる。第2相溶部位は、シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位に対してより良好な相溶性が得られ易いことから、シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位と同種のポリオレフィン部位が好ましい。すなわち、シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位がポリエチレン部位である場合、第2相溶部位はポリエチレン部位であることが好ましく、シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位がポリプロピレン部位である場合、第2相溶部位はポリプロピレン部位であることが好ましい。また、シリル化ポリオレフィンのポリオレフィン部位がエチレン-αオレフィン共重合体部位、プロピレン-αオレフィン共重合体部位等の2種以上のオレフィンからなる共重合体部位である場合、第2相溶部位は、上記共重合体部位を構成するオレフィンのうち主成分となるオレフィンと同種のオレフィンを重合又は共重合させた構造を少なくとも有する部位であることが好ましい。
【0055】
例えばポリオレフィンとしてポリプロピレンを使用し、シリル化ポリオレフィンとしてPE-Si-PEのトリブロック共重合体を使用した場合、相溶化剤としては、PP-PEブロック共重合体を用いることができる。このとき、相溶化剤において、第1相溶部位はPP(ポリプロピレン)部位であり、第2相溶部位は、PE(ポリエチレン)部位である。
【0056】
シリル化ポリオレフィンに対する相溶化剤の質量比は特に制限されるものではないが、0.05~20であることが好ましく、0.1~10であることがより好ましく、0.5~5であることが特に好ましい。
【0057】
この場合、上記質量比が0.05未満である場合に比べて、第一の樹脂層21においてシリル化ポリオレフィンの凝集がより抑制され、第一の樹脂層21と油膜FOとの間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層21に対して油膜FOを容易に滑落させることができる。また、上記質量比が20を超える場合に比べて、相溶化剤によるシリル化ポリオレフィンの被覆が抑制され、第一の樹脂層21においてシリル化ポリオレフィンの凝集がより抑制され、第一の樹脂層21と油膜FOとの間の摩擦を効果的に低下させることができ、第一の樹脂層21に対して油膜FOを容易に滑落させることができる。
【0058】
(B)多孔質フィラー
多孔質フィラー21bは、加熱処理において、水中油分散型の内容物Cから第一の樹脂層21に吸収された油分COを吸着させるものであり、本体部を含む。多孔質フィラー21bに含まれる本体部は、無機物でも有機物でもよい。有機物としては、ポリオレフィン及びアクリル樹脂等が挙げられる。アクリル樹脂としては、架橋ポリメタクリル酸メチルなどの架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。無機物としては、シリカ、タルク、セラミック、ガラスビーズ、炭酸カルシウム等のミネラルフィラー、カーボンブラック、ガラス繊維、セラミック繊維及び炭素繊維等が挙げられる。これらも、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機物からなる多孔質フィラー21bとしては、例えば、積水化成品工業株式会社製のテクポリマーMBPシリーズ、積水化成品工業株式会社製のテクポリマーACPシリーズ等が挙げられる。無機物からなる多孔質フィラー21bとしては、例えば、富士シリシア化学株式会社製のサイロホービックシリーズ、AGCエスアイテック株式会社製のサンスフェアシリーズなどが挙げられる。
【0059】
多孔質フィラー21bは、本体部の少なくとも一部を被覆する被覆部をさらに備えてもよい。被覆部は、親水性材料で構成されても疎水性材料で構成されてもよいが、疎水性材料で構成されることが好ましい。ここで、疎水性材料とは、DBA(ジ-n-ブチルアミン)値が200mEq/kg以下である材料をいい、DBA値とは、本体部の表面に吸着したDBAの量をいう。DBA値は、DBAが本体部表面の水酸基に吸着される量に対応するものであり、DBA値が小さいほど、水酸基が少ないこと(疎水性が高いこと)を意味する。
【0060】
本体部及び被覆部で構成される多孔質フィラー21bは、例えば本体部と、疎水性材料の原料とを化学的に反応させることによって、すなわち、本体部を疎水化処理することによって得ることができる。疎水性材料の原料としては、例えば有機ケイ素化合物などが挙げられる。中でも、疎水性材料の原料としては、有機ケイ素化合物が好ましい。
【0061】
多孔質フィラー21bの吸油量は、100~380mL/100gである。ここで、「吸油量」とは、JIS K5101-13(顔料試験法-第13部:吸油量)に準拠して測定される吸油量をいう。
【0062】
多孔質フィラー21bの吸油量が上記範囲内にあると、吸油量が100mL/100g未満である場合に比べて、包装材100の加熱処理時において、油分COを効果的に吸着することが可能であり、水中油分散型の内容物Cに含まれている油分COの第一の樹脂層21への吸収を促進することができるため、包装材用フィルム20が、包装体に封入された水中油分散型内容物Cに対して、優れた滑落性を効果的に付与することができる。また、吸油量が380mL/100gを超える場合に比べて、多孔質フィラー21bが適度に油分を吸着することで、第一の樹脂層21の表面Sにおいて油膜FOを形成しやすくなるため、包装材用フィルム20が、包装体に封入された水中油分散型内容物Cに対して、より優れた滑落性を付与することができる。
【0063】
多孔質フィラー21bの吸油量は、より好ましくは110mL/100g以上であり、特に好ましくは120mL/100g以上である。
【0064】
但し、多孔質フィラー21bの吸油量は、300mL/100g以下であることが好ましい。この場合、多孔質フィラー21bがより適度に油分を吸着することで、第一の樹脂層21の表面Sにおいて油膜FOをより形成しやすくなるため、包装材用フィルム20が、包装体に封入された水中油分散型内容物Cに対して、より優れた滑落性を付与することができる。
【0065】
多孔質フィラー21bの平均粒子径(Yμm)は、フィラーの種類に応じて以下の方法によって求められる。
(レーザー回折式粒度分布測定による算出方法)
(1)多孔質フィラー21bを分散媒中に分散させる。分散媒は、例えば、水又は有機溶剤であり、フィラーの種類に応じて適切なものを選択する。
(2)レーザー回折式粒度分布測定装置(製品名:「MT3300EX II」、マイクロトラックベル社製)を用い、レーザー回折・散乱法にて多孔質フィラー21bの平均粒子径を算出する。
(顕微鏡観察による算出方法)
上記レーザー回折式粒度分布測定が適さない場合又は困難である場合、走査型電子顕微鏡(SEM)又はレーザー顕微鏡等の光学顕微鏡を用いて多孔質フィラー21bの平均粒子径を求めてもよい。
顕微鏡観察により観察される視野内における任意の粒子について、粒子の最長径と最短径の長さを測定し、その和を2で割った値を粒子径とする。複数の粒子について粒子径を測定及び算出し、その平均値を平均粒子径とみなす。上記任意の粒子の数は、10個以上であることが好ましい。
【0066】
多孔質フィラー21bの平均粒子径(Yμm)は、特に制限されるものではないが、好ましくは5μm以上である。この場合、多孔質フィラー21bの適度な添加量で第一の樹脂層21の表面Sに適度な凹凸を付与することができるため、シール強度低下などの包装材用フィルム20の物性への影響を低減しながら、内容物Cの滑落性を効果的に向上させることができる。
【0067】
多孔質フィラー21bの平均粒子径(Yμm)は、より好ましくは3μm以上であり、特に好ましくは7μm以上である。
【0068】
但し、多孔質フィラー21bの平均粒子径(Yμm)は、30μm以下であることが好ましい。この場合、多孔質フィラー21bの平均粒子径(Yμm)が30μmを超える場合に比べて、第一の樹脂層21の表面Sにおいて油膜FOをより形成しやすくなり、包装材用フィルム20が、包装体に封入された水中油分散型内容物Cに対して、より優れた滑落性を付与することができる。
【0069】
多孔質フィラー21bの平均粒子径(Yμm)は、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
【0070】
第一の樹脂層21において、多孔質フィラー21bの添加量は、ポリオレフィン100質量%に対し、例えば、0.5~10質量%であり、好ましくは1~8質量%であり、より好ましくは2~8質量%である。多孔質フィラー21bの添加量が上記範囲内にあることで第一の樹脂層21の表面Sに適度な凹凸を付与することができる。
【0071】
第一の樹脂層21の厚さ(Xμm)は、以下のようにして求められる値をいう。
(1)まず、包装材用フィルム20を、包埋樹脂(アクリル樹脂)で固定して構造体を準備する。
(2)ミクロトームにて構造体から断面観察用の試料の切り出しを行う。
(3)切り出した断面観察用の試料の断面をマイクロスコープ(製品名:VHX-1000、株式会社キーエンス製)で観察する。
(4)第一の樹脂層21の厚さ方向に沿って多孔質フィラー21bが存在しない3箇所における厚さを測定し、これらの3箇所の厚さの平均値を第一の樹脂層21の厚さ(Xμm)として算出する。
【0072】
第一の樹脂層21の厚さ(Xμm)は、例えば、2~100μmであり、好ましくは4~70μmであり、より好ましくは6~50μmであり、更に好ましは8~30μmである。第一の樹脂層21の厚さが上記範囲内にあることで内容物Cの滑落性とヒートシール性の両方を高水準に達成できる。ここで、ヒートシール性とは、一例として、100~200℃、0.1~0.3MPa、1~3秒間の条件にてヒートシールが可能である性質をいう。
【0073】
(第二の樹脂層)
第二の樹脂層22は、第一の樹脂層21と基材10との間に設けられる層である。包装材100が第二の樹脂層22を更に備えることで、第二の樹脂層22の持つ機能(ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性、酸素・水蒸気バリア性等)に応じた機能を包装材100に付与することができる。例えば、ヒートシール性の向上の観点から、第二の樹脂層22は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂の具体例として、ポリオレフィン、エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのエステル化物又はイオン架橋物、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物、ポリ酢酸ビニル又はそのケン化物、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、フラン樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
第二の樹脂層22の厚さは、包装材100の用途に応じて適宜設定できる。第二の樹脂層22の厚さは、例えば、1~300μmであり、好ましくは2~200μmであり、より好ましくは5~150μmであり、更に好ましくは10~100μmである。
【0075】
(基材)
基材10は、支持体となるものであり且つレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理に対する耐久性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、樹脂フィルム及び金属箔等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロースアセテート、セロファン樹脂の少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。このフィルムは延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよい。金属箔としては、例えばアルミ箔、ニッケル箔等が挙げられる。基材10は、材質の異なる複数の基材を積層したものであってもよく、コート層や金属蒸着層を含むものであってもよい。
【0076】
基材10の厚さは、包装材100の用途に応じて適宜設定できる。基材10の厚さは、例えば、1~500μmであり、10~100μmであってもよい。
【0077】
(接着剤層)
接着剤層30は、包装材用フィルム20(第一の樹脂層21と第二の樹脂層22の積層体)と基材10とを接着するものである。接着剤層30を構成する接着剤は、包装材用フィルム20と基材10とを接着させることができるものであれば特に制限されるものでなく、このような接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。各種ポリオールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
接着剤層30は、接着促進を目的として、上述のポリウレタン樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などを配合してもよい。接着剤層30に求められる性能に応じて、上述のポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0079】
接着剤層30の厚さは、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmであり、3~7μmであってもよい。
【0080】
基材10には、接着性プライマー(アンカーコート)を設けることも可能であり、その材料として、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアリルアミン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素-酢酸ビニル系樹脂などを用いることが可能である。接着性プライマーには、必要に応じて、接着剤として使用可能な各種硬化剤や添加剤を配合してもよい。
【0081】
<包装材の製造方法>
次に、上述した包装材100の製造方法について説明する。
【0082】
包装材100は、包装材用フィルム20と基材10とを接着剤でラミネートすることにより得ることができる。基材10と包装材用フィルム20とを貼り合わせる方法としては、例えば、接着剤によるラミネート法、及び、熱処理によるラミネート法が挙げられる。
【0083】
接着剤によるラミネート方法としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ノンソルベントラミネート法などの各種公知のラミネート方法を用いることができる。
【0084】
熱処理によるラミネート方法としては、大別して以下の(1)~(4)の方法が挙げられる。
(1)接着性樹脂を、あらかじめ作製した包装材用フィルム20と基材10との間に押出し、ラミネートする方法
(2)包装材用フィルム20と接着性樹脂とを共押出しし、接着性樹脂を基材10側に向けて基材10とラミネートする方法
(3)上記(1)又は(2)の方法で得られたラミネート体を、更に熱ロールで加熱しながら加圧することにより接着させる方法
(4)上記(1)又は(2)の方法で得られたラミネート体を、更に高温雰囲気下で保管する、あるいは高温雰囲気下の乾燥・焼付け炉を通過させる方法
【0085】
<包装袋及び包装体>
次に、本開示の包装体の一実施形態について
図3を参照しながら説明する。
図3は、本開示の包装体の一実施形態を示す断面図である。
【0086】
図3に示すように、包装体300は、包装袋200と、包装袋200内に封入される水中油分散型の内容物Cとを備える。包装体300においては、包装袋200の包装材用フィルム20の第一の樹脂層21が内側に配置されており、水中油分散型の内容物Cに接触している。
【0087】
上記包装体300によれば、包装袋200を形成する包装材100に含まれる包装材用フィルム20が、加熱処理によって、第一の樹脂層21と接触する水中油分散型の内容物Cに対して優れた滑落性を付与できる。このため、包装体300に対してレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理が行われると、包装体300の開封後に包装体300から水中油分散型の内容物Cを排出させる際に、その水中油分散型の内容物Cを容易に滑落させることができる。このため、水中油分散型の内容物Cの残液量を低減させることができ、内容物Cの無駄を防止でき、内容物Cの付着による汚れを防止できるとともに、内容物Cの排出作業を効率よく行うことができる。
【0088】
上記包装体300は、包装材100を用いて包装袋200を形成し、包装袋200内に水中油分散型の内容物Cを封入することによって得ることができる。
【0089】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、包装材用フィルム20が第一の樹脂層21及び第二の樹脂層22で構成されているが、包装材用フィルム20は、第一の樹脂層21のみで構成されていてもよいし、1つ以上の樹脂層をさらに備えてもよい。
【0090】
また、上記包装材100は、包装材用フィルム20と基材10とを接着する接着剤層30を備えているが、包装材用フィルム20と基材10とを直接融着させることができるならば、接着剤層30は省略することが可能である。
【0091】
さらに、包装材100は、必ずしも基材10を有していなくてもよい。
【実施例0092】
以下、実施例及び比較例を挙げながら本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
実施例及び比較例で使用される材料は以下の通りである。
(A)ポリオレフィン
(A1)PP1
プロピレン-エチレンランダム共重合体(商品名「F744NP」、株式会社プライムポリマー製)とプロピレン-エチレンブロック共重合体(商品名「ノバテックBC5FA」、日本ポリプロ株式会社製)とを1:1(質量比)で混合してなる混合物
(A2)PP2
ブロックポリプロピレン(プロピレン-エチレンブロック共重合体、商品名「ノバテック BC3HF」、日本ポリプロ株式会社製)
(A3)PE
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、商品名「ノバテックLL UF442」、日本ポリプロ株式会社製)
【0094】
(B)多孔質フィラー
(B1)多孔質シリカフィラー
平均粒子径:20μm、吸油量:150mL/100g、疎水化処理:なし、商品名「サンスフェアH-201」、AGCエスアイテック株式会社製
(B2)多孔質シリカフィラー
平均粒子径:12μm、吸油量:300mL/100g、疎水化処理:なし、商品名「サンスフェアH-122」、AGCエスアイテック株式会社製
(B3)多孔質シリカフィラー
平均粒子径:7μm、吸油量:120mL/100g、疎水化処理:なし、商品名「サンスフェアL-71-N」、AGCエスアイテック株式会社製
(B4)多孔質シリカフィラー
平均粒子径:4.1μm、吸油量:170mL/100g、DBA値:65mEq/kg、商品名「サイロホービック702」、富士シリシア化学株式会社製
(B5)多孔質シリカフィラー
平均粒子径:6.7μm、吸油量:50mL/100g、DBA値:200mEq/kg、商品名「サイロホービック603」、富士シリシア化学株式会社製
(B6)多孔質シリカフィラー
平均粒子径:5μm、吸油量:400mL/100g、疎水化処理:なし、商品名「サンスフェアH-53」、AGCエスアイテック株式会社製
【0095】
(C)シリル化ポリオレフィン
PE-Si-PEのトリブロック共重合体:商品名「イクスフォーラ」、三井化学ファイン株式会社製
【0096】
(D)相溶化剤
ポリプロピレン-ポリエチレンブロック共重合体
【0097】
<包装材の作製>
(実施例1~19及び比較例1~5)
共押出機を用いて、表1~2に示す組成の第一の樹脂層と、表1~2に示す組成の第二の樹脂層とを備える二層構成の包装材用フィルム(シーラントフィルム)を作製した。なお、表1及び表2において、「添加量(質量%)」は、ポリオレフィン100質量%に対して添加された量である。
【0098】
次に、得られた包装材用フィルムと、基材である厚さ38μmのPETフィルム(商品名「エンブレット」、ユニチカ株式会社製)とを、ポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてドライラミネートし、50℃で5日間エージングして、包装材を得た。なお、実施例及び比較例において、第一の樹脂層及び第二の樹脂層は、第一の樹脂層と第二の樹脂層の合計の厚さが60μmとなるように製膜した。
【0099】
<内容物の滑落性評価>
(レトルト処理後の残液評価)
実施例及び比較例で得られた包装材について、
図4(a)~
図4(e)に示した方法により、レトルト処理後の内容物の滑落性の評価を行った。
【0100】
まず、縦150mm×横138mmにカットした包装材を二枚用意した。そして、二枚の包装材を、それぞれの第一の樹脂層が内側となるように重ねた状態とし、ヒートシーラーを使用して三辺をシールした。こうして、
図4(a)に示すように、三辺にシール部200aが形成され、一辺が開口しているパウチで構成される包装袋200を作製した。このとき、三辺のヒートシールは、190℃、0.03MPa、2秒の条件で実施し、シール部200aの幅は10mmとした。
【0101】
次に、
図4(b)に示すように、包装袋200の開口部から内容物Cとしてのカレー(商品名「ボンカレーゴールド 中辛」、脂質量7.0g/180g、大塚食品株式会社製)180gを注液した。
【0102】
その後、ヒートシーラーを使用して開口部(残りの一辺)をシールし、
図4(c)に示すように、残りの一辺にシール部200bを形成した。こうして、四辺がシールされ且つ内容物Cが封入された包装体300を作製した。このとき、開口部のヒートシールは、190℃、0.03MPa、2秒の条件で実施し、シール部200bの幅は10mmとした。
【0103】
こうして作製された包装体300について、高温高圧調理殺菌装置(日立キャピタル株式会社製)に投入して高温の水蒸気でレトルト処理を行った。レトルト処理は以下の条件で実施した。
・圧力:0.2MPa
・温度121℃
・処理時間:30分間
【0104】
レトルト処理後、包装体300を100℃で5分間にわたって湯煎処理した。その後、
図4(d)に示すように、包装体300の上部を切断して注ぎ口を形成した。次いで、
図4(e)に示すように、パウチを逆さにし、注ぎ口を水平面から45°傾けた状態で10秒間保持し、容器400内に内容物Cを排出させて、秤500により排出量を秤量した。そして、秤量した排出量から、下記式により残液率(%)を求めた。
残液率(%)={(180-排出量)/180}×100
同様の測定を、包装体300を代えて3回行い、3回の残液率の平均値を平均残液率として算出した。また、平均残液率に基づいて下記評価基準により内容物の滑落性の評価を行った。平均残液率及び内容物の滑落性の評価の結果を表1~2に示す。
A:平均残液率が6.5%未満
B:平均残液率が6.5%以上8.0%未満
C:平均残液率が8.0%以上10.0%未満
D:平均残液率が10.0%以上
【0105】
(レトルト処理後の外観評価)
上記のようにして残液率を測定する際に、パウチ内から内容物(カレー)Cを排出した際の内容物Cの排出挙動を目視にて観察し、下記評価基準により外観評価も行った。結果を表1~2に示す。
A:内容物が綺麗に滑落する様子が見られ、包装材用フィルムへの内容物の付着がほぼない。
B:内容物が滑落する様子が見られ、包装材用フィルムへの内容物の付着量が少ない。
C:内容物が滑落する様子が見られるが、包装材用フィルムへの内容物の付着量が多い。
D:内容物が滑落する様子が見られない。
【0106】
【0107】
表1~2に示す結果より、実施例1~19で得られた包装体では、平均残液率が小さく、外観上も、内容物が滑落する様子が見られた。これに対し、比較例1~5で得られた包装体では、平均残液率が大きく、外観上も内容物が滑落する様子が見られなかった。
【0108】
以上のことから、本開示の包装材用フィルムによれば、加熱処理によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できることが確認された。
10…基材、20…包装材用フィルム、21…第一の樹脂層、21a…樹脂組成物、21b…多孔質フィラー、30…接着剤層、100…包装材、200…包装袋、300…包装体、C…内容物、CO…油分、S…第一の樹脂層の表面、FO…油膜。