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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188385
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20221214BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20221214BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20221214BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20221214BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20221214BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20221214BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20221214BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M50/186
H01M50/193
H01G11/84
H01G13/00 381
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096379
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】衣川 達哉
(72)【発明者】
【氏名】山路 智也
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H011
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078LA02
5E082MM07
5E082MM24
5H011AA09
5H011FF01
5H011GG01
5H011HH02
5H011JJ25
5H011KK01
5H028AA05
5H028BB05
5H028BB17
5H028CC08
5H028CC26
5H028EE06
5H028HH06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029BJ12
5H029CJ05
5H029CJ30
5H029DJ03
5H029EJ12
5H029HJ04
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】電極積層体の角部に位置する樹脂枠の入熱不良を抑制できる製造装置を提供する。
【解決手段】蓄電モジュールの製造装置1は、集電体21と、樹脂枠23とを積層してなる電極積層体2において、集電体21の縁部21eよりも外側に張り出す張出部分23a同士を溶着する。製造装置1は、電極積層体2において集電体21及び樹脂枠23の積層方向Dに延在する各側面2cに対して配置される一又は複数の非接触ヒータ5を備える。非接触ヒータ5は、電極積層体2の各側面2cに沿って配置される本体部51と、電極積層体2において隣り合う側面2cによって画成される角部2dのそれぞれに対応して配置される離間部52と、を有している。本体部51と本体部51が対向する側面2cとの間を第1距離D1とし、離間部52と離間部52に対向する角部2dとの間を第2距離D2とすると、第2距離は第1距離よりも大きくなっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の集電体と、前記集電体の縁部に沿う樹脂枠とを積層してなる電極積層体において、前記樹脂枠の前記集電体の縁部よりも外側に張り出す張出部分同士を溶着する蓄電モジュールの製造装置であって、
前記電極積層体において前記集電体及び前記樹脂枠の積層方向に延在する各側面に対して配置される一又は複数の非接触ヒータを備え、
前記非接触ヒータは、前記電極積層体の前記各側面に沿って配置される本体部と、前記電極積層体において隣り合う側面によって画成される角部のそれぞれに対応して配置される離間部と、を有し、
前記本体部と前記本体部が対向する側面との間を第1距離とし、前記離間部と前記離間部に対向する角部との間を第2距離とすると、前記第2距離は前記第1距離よりも大きくなっている、
蓄電モジュールの製造装置。
【請求項2】
前記離間部は、前記本体部から前記側面と反対側へ屈曲し、
前記離間部と前記離間部に対向する前記側面との距離は、前記本体部に連続する一端から前記角部に対向する位置にかけて、前記第1距離から前記第2距離へと徐々に大きくなっている、請求項1記載の蓄電モジュールの製造装置。
【請求項3】
前記非接触ヒータは、当該非接触ヒータに電力を供給する外部電源に電気的に接続されるコネクタ部をさらに含み、
前記コネクタ部は、前記離間部のうち前記本体部に連続する一端とは反対側の他端に取り付けられている、請求項1又は請求項2記載の蓄電モジュールの製造装置。
【請求項4】
前記離間部は、前記電極積層体において隣り合う側面にそれぞれ対向した前記本体部の少なくとも一対を連結する連結部を有する、請求項1~3のいずれか一項記載の蓄電モジュールの製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールの製造方法として、特許文献1に記載の製造方法がある。特許文献1の製造方法では、矩形状の集電体の縁部の全周にわたって樹脂枠を接合した樹脂枠付き電極箔を準備する。樹脂枠には、集電体の縁部よりも外側に張り出す張出部分を形成する。この樹脂枠付き電極箔をセパレータを介して積層し、電極積層体を形成する。その後、電極積層体の側面に加熱治具を押し当てることで、電極箔の積層方向に隣り合う樹脂枠の張出部分同士を溶着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-140860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した隣り合う樹脂枠の張出部分同士の溶着にあたっては、樹脂枠の全周にわたって一度に溶着することが生産性向上のために好ましい。この場合、樹脂枠の全周に一度に加熱治具を押し当てることは困難であるため、電極積層体の各側面を囲むように非接触ヒータを配置し、電極積層体の各側面における樹脂枠の張出部分同士を同時に溶着する手法が採用され得る。しかしながら、単純に非接触ヒータを電極積層体の各側面に対応して配置すると、電極積層体の隣り合う側面によって画成される角部において、各側面に対応して配置されるヒータからの入熱が重なり入熱量の制御が難しくなるという問題が生じる。例えば、角部に対して入熱が過剰に加わると、電極積層体を構成するセパレータに変形等の不具合が生じたり、電極積層体の外形が崩れたりするおそれがある。また、角部に対する入熱が不足すると、樹脂枠同士の溶着強度が確保できなかったり、溶着深さが不均一になったりするおそれがある。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、電極積層体の角部に位置する樹脂枠の入熱不良を抑制できる製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電モジュールの製造装置は、矩形状の集電体と、集電体の縁部に沿う樹脂枠とを積層してなる電極積層体において、樹脂枠の集電体の縁部よりも外側に張り出す張出部分同士を溶着する蓄電モジュールの製造装置であって、電極積層体において集電体及び樹脂枠の積層方向に延在する各側面に対して配置される一又は複数の非接触ヒータを備える。非接触ヒータは、電極積層体の各側面に沿って配置される本体部と、電極積層体において隣り合う側面によって画成される角部のそれぞれに対応して配置される離間部と、を有している。本体部と本体部が対向する側面との間を第1距離とし、離間部と離間部に対向する角部との間を第2距離とすると、第2距離は第1距離よりも大きくなっている。
【0007】
この蓄電モジュールの製造装置では、電極積層体の各側面に対して配置された非接触ヒータからの入熱により、電極積層体における各電極箔集電体の縁部より外側に張り出す樹脂枠の全周の張出部分同士を一度に溶着できる。また、この蓄電モジュールの製造装置では、各側面への非接触ヒータの配置にあたり、電極積層体において隣り合う側面によって画成される角部に対向して離間部が配置されている。さらに、本体部から側面までの第1距離が、離間部から角部までの第2距離よりも小さくなっているため、角部を画成する2つの側面にそれぞれ対向する非接触ヒータからの入熱が重なる角部において、局所的に非接触ヒータとの距離を大きくして角部への入熱が過剰になることを抑制している。これにより、電極積層体の角部に位置する樹脂枠の入熱不良を抑制できる。
【0008】
離間部は、本体部から側面と反対側へ屈曲し、離間部と離間部に対向する側面との距離は、本体部に連続する一端から角部に対向する位置にかけて、第1距離から前記第2距離へと徐々に大きくなっていてもよい。この場合、一の側面と別の側面とにより形成される角部周辺について、一の側面に対応する非接触ヒータの離間部と、別の側面に対応する非接触ヒータの離間部の双方が各側面から徐々に離間するように設けられるため、離間部同士の入熱が重なる角部周辺にわたって入熱が過剰になることを抑制している。したがって、電極積層体の角部に位置する樹脂枠の入熱不良を一層容易に抑制できる。
【0009】
非接触ヒータは、当該非接触ヒータに電力を供給する外部電源に電気的に接続されるコネクタ部をさらに含んでもよい。コネクタ部は、離間部のうち本体部に連続する一端とは反対側の他端に取り付けられていてもよい。この場合、樹脂枠の張出部分への入熱に寄与しないコネクタ部の位置を電極積層体の角部から最も離間させることができるため、電極積層体の角部に位置する樹脂枠の入熱不良を一層容易に抑制できる。
【0010】
離間部は、電極積層体において隣り合う側面にそれぞれ対向した本体部の少なくとも一対を連結する連結部を有していてもよい。これにより、コネクタ部の設置数を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電極積層体の角部に位置する樹脂枠の入熱不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電極積層体の一例を示す概略的な断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る蓄電モジュールの製造装置の要部を示す模式図である。
図3図2に示した蓄電モジュールの製造装置の概略的な平面図である。
図4】蓄電モジュールの製造装置の変形例を示す概略的な平面図である。
図5】蓄電モジュールの製造装置の別の変形例を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る蓄電モジュールの製造装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本開示の一実施形態に係る蓄電モジュールの製造装置は、蓄電モジュールの構成要素である電極積層体を封止する工程で用いられる装置である。製造される蓄電モジュールの種類に特に限定はないが、ここではリチウムイオン二次電池を例示する。まず、蓄電モジュールの製造装置でのワークとなる電極積層体の構成について説明する。図1の例では、電極積層体2は、複数の樹脂枠付き電極箔20を積層方向Dに積層することによって構成される。図1の例では、封止する前の状態の電極積層体2を示している。各樹脂枠付き電極箔20は、集電体21と、樹脂枠23と、集電体21の一方面21aに設けられた正極活物質層25と、集電体21の他方面21bに設けられた負極活物質層26とを有している。隣り合う樹脂枠付き電極箔20の間には、セパレータ13が設けられている。集電体21は、いずれも樹脂枠付き電極箔20の積層方向Dから見て矩形状をなしている。
【0015】
同一の樹脂枠付き電極箔20では、正極活物質層25と負極活物質層26とが互いに対向するように配置されている。本実施形態では、正極活物質層25及び負極活物質層26は、いずれも矩形状に形成されている。負極活物質層26は、積層方向Dから見て正極活物質層25よりも一回り大きく形成されている。積層方向Dから見た場合に、正極活物質層25の形成領域の全体は、負極活物質層26の形成領域内に位置している。
【0016】
各樹脂枠付き電極箔20は、集電体21と、正極活物質層25と、負極活物質層26とを有している。これにより、各樹脂枠付き電極箔20は、バイポーラ電極10を構成している。
【0017】
集電体21は、蓄電装置の放電又は充電の間、正極活物質層25及び負極活物質層26に電流を供給するための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体21を構成する材料としては、例えば金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等が挙げられる。導電性樹脂材料としては、例えば導電性高分子材料、或いは非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。
【0018】
集電体21は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えていてもよい。集電体21の表面には、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層が形成されていてもよい。集電体21は、例えば板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態であってもよい。集電体21を金属箔とする場合、例えばアルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、ステンレス鋼箔等を用いることができる。
【0019】
集電体21として、銅箔、アルミ箔、ステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301等)を用いた場合、集電体21の機械的強度を容易に確保できる。集電体21は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。
【0020】
正極活物質層25は、電荷担体を吸蔵及び放出可能である正極活物質を含んで構成されている。正極活物質としては、例えば層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物などが挙げられる。2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態では、正極活物質層25は、複合酸化物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)を含んで構成されている。
【0021】
負極活物質層26は、電荷担体を吸蔵及び放出可能である負極活物質を含んで構成されている。負極活物質は、単体、合金、化合物のいずれであってもよい。負極活物質としては、例えば炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素、若しくはその化合物などが挙げられる。炭素としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態では、負極活物質層26は、炭素系材料としての黒鉛を含んで構成されている。
【0022】
セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布であってもよい。セパレータ13の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。セパレータ13は、単層構造又は多層構造を有していてもよい。多層構造は、例えば、接着層又は耐熱層としてのセラミック層等を有していてもよい。
【0023】
樹脂枠23は、絶縁材料を含み、積層方向Dに隣り合う集電体21と集電体21との間を絶縁することによって、集電体21間の短絡を防止する。樹脂枠23を構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、変性ポリプロピレン、AS樹脂といった種々の樹脂材料が挙げられる。
【0024】
本実施形態において、樹脂枠23は、平面視で矩形の枠状に形成され、平面視で矩形状に形成された正極活物質層25又は負極活物質層26の周囲を取り囲むように集電体21の縁部21eに沿って延在している。上述したセパレータ13の縁部13aは、樹脂枠23の内壁部分に埋設されている。これにより、セパレータ13は、樹脂枠23によって保持された状態となっている。
【0025】
樹脂枠23は、集電体21の縁部21eよりも外側に張り出す張出部分23aを有している。複数の樹脂枠23の張出部分23aが積層方向Dに拘束された状態で、それら樹脂枠23の張出部分23aが加熱・溶融されることにより、電極積層体2の積層方向Dに隣り合う張出部分23a,23a同士が互いに溶着されてなる溶着部Wが、電極積層体2の側面2cに形成される。
【0026】
溶着後の樹脂枠23は、隣り合う各バイポーラ電極10の間の収容空間Sをそれぞれ封止する。この収容空間Sには、後工程にて電解液が収容される。本実施形態において、溶着後の樹脂枠23は、収容空間Sに収容された電解液が外部に漏出することを防止する機能を有すると共に、蓄電装置の外部から収容空間S内への水分の侵入を防止する機能を有する。また、溶着後の樹脂枠23は、例えば充放電反応等によって各バイポーラ電極10から発生したガスが蓄電装置の外部に漏出することを防止する機能を有する。
【0027】
なお、樹脂枠23の構成はこれに限られない。例えば、樹脂枠23は、集電体21に接合された第1樹脂枠と、集電体21に接合されていない第2樹脂枠とを含んでもよい。この場合、電極積層体2において、集電体21に接合されていない第2樹脂枠は、積層方向Dに隣り合う樹脂枠付き電極箔20に挟持される。そして、第1樹脂枠及び第2樹脂枠のそれぞれが有する張出部分23aが互いに溶着されてなる溶着部Wが形成される。
【0028】
図2は、本開示の一実施形態に係る蓄電モジュールの製造装置の要部を示す模式図である。蓄電モジュールの製造装置1は、拘束部材3と、一又は複数の非接触ヒータ5と、を備えている。電極積層体2は、積層方向Dの一方面2a及び他方面2bと、一方面2aと他方面2bとを結ぶように積層方向Dに延在する4つの側面2cとを有している。
【0029】
拘束部材3は、電極積層体2を積層方向Dに挟み込んで保持する部材であり、非接触ヒータ5に対する耐熱性を有している。拘束部材3は、例えば積層方向Dから見て電極積層体2と同じ大きさの矩形状の拘束板31,32を有している。拘束部材3は、張出部分23aの外周を含む電極積層体2の全体を積層方向Dに挟持し、電極積層体2に対して積層方向Dに拘束荷重F1を付加する。
【0030】
非接触ヒータ5は、例えば、石英ガラスの中にフィラメントが設けられた発熱体を含んで構成される。フィラメントには、カーボン、タングステン等が用いられる。このようなフィラメントを用いたヒータは、セラミックの中にニクロム線が設けられた従来の電熱ヒータ等と比較して、ヒータ形状の自由度を高めることができる。非接触ヒータ5は、電極積層体2における各側面2cに沿って、側面2cのそれぞれから離間して配置されている。非接触ヒータ5には、外部電源(不図示)から電力が供給される。非接触ヒータ5は、通電することでフィラメントが電気抵抗により発熱し、光Hを放射する。非接触ヒータ5から発せられる光Hは、例えば近赤外線である。非接触ヒータ5は、電極積層体2の側面2cに向けて光Hを照射することにより、張出部分23aを加熱して、積層方向Dに隣り合う張出部分23a同士を溶着させる。
【0031】
続いて、上述した蓄電モジュールの製造装置1における非接触ヒータ5の構成について、更に詳細に説明する。図3は、図2に示した蓄電モジュールの製造装置1の概略的な平面図である。図3では、拘束部材3の図示を省略している。本実施形態では、電極積層体2の各側面2cに対してそれぞれに対応するように4体の非接触ヒータ5が配置されている。非接触ヒータ5のそれぞれは、本体部51と、一対の離間部52と、コネクタ部53とを有している。
【0032】
本体部51及び一対の離間部52は、電気抵抗により発熱し、光H(図2参照)を放射する部分である。本体部51は、電極積層体2の側面2cと対向するように当該側面2cから離間して配置されている。電極積層体2の平面視において、本体部51は、側面2cに沿って略平行に延伸している。電極積層体2の平面視における本体部51の長さは、当該本体部51が対向する側面2cの長さよりも僅かに短くなっている。このため、平面視においては、本体部51は、側面2cのみと対向し、隣り合う側面2c,2cによって画成される角部2dとは対向しない状態となっている。すなわち、本体部51が対向する側面2cの直交方向から見たとき、本体部51は角部2d周辺を除く側面2cの中央領域を覆っている。
【0033】
一対の離間部52は、それぞれ本体部51の両端に連続し、本体部51が対向する側面2cの両端の角部2dのそれぞれに対応して配置されている。離間部52は、電極積層体2の平面視において、本体部51から側面2cと反対側へ屈曲して直線状に延びている。このため、平面視においては、離間部52は、側面2c及び角部2dと対向しつつ、本体部51に連続する一端から他端52aに向かうにつれて側面2cとの間の離間距離が徐々に大きくなっている。すなわち、本体部51が対向する側面2cの直交方向から見たとき、各離間部52は角部2dを含む側面2cの両端領域を覆っている。本実施形態では、離間部52の長さは、本体部51の長さよりも短くなっている。一の非接触ヒータ5における離間部52は、平面視において、当該一の非接触ヒータ5の本体部51が対向する側面2cと直交する側面2cの延長線上に位置している。一の側面2cにおいて、角部2d周辺を除く側面2cの中央領域は、当該側面2cに対応する非接触ヒータ5の本体部51によって加熱される。一方、角部2d周辺は、一の側面2cに対応する非接触ヒータ5の離間部52と、当該角部2dを画成する別の側面2cに対応する非接触ヒータ5の離間部52とによって加熱される。
【0034】
本体部51と本体部51に対向する側面2cとの間を第1距離D1として、当該本体部51に連続する離間部52と当該離間部52に対向する角部2dとの間を第2距離D2とすると、第2距離D2は第1距離D1よりも大きくなっている。第1距離D1は、平面視において、本体部51と側面2cとを最短距離で結ぶ距離(すなわち、本体部51が対向する側面2cの直交方向における距離)である。第2距離D2は、平面視において、離間部52と角部2dとを最短距離で結ぶ距離(すなわち、離間部52が連続する本体部51が対向する側面2cの直交方向における距離)である。第1距離D1は、側面2cごとに異なっていてもよい。例えば、電極積層体2の平面視における長辺に沿う本体部51と側面2cとの間の第1距離D1は、平面視における短辺に沿う本体部51と側面2cとの間の第1距離D1と異なっていてもよい。離間部52と当該離間部52に対向する側面2cとの距離は、本体部51に連続する一端から角部2dに対向する位置に向かうにつれて、第1距離D1から第2距離D2へと徐々に大きくなっている。すなわち、離間部52は非接触ヒータ5のうち、本体部51から側面2cと反対側へ屈曲し、対向する側面2cとの間の距離が第1距離D1よりも大きい距離となっている部分である。
【0035】
コネクタ部53は、非接触ヒータ5に電力を供給する外部電源(不図示)に電気的に接続される部分である。コネクタ部53は、各非接触ヒータ5に対して一対設けられている。図3の例では、コネクタ部53は、離間部52のうち本体部51に連続する一端とは反対側の他端52aにそれぞれ取り付けられており、外部電源とコネクタ部53との接続部分は電極積層体2の側面2cとは反対側に向けられている。
【0036】
以上説明したように、蓄電モジュールの製造装置1では、電極積層体2の各側面2cに対して配置された非接触ヒータ5からの入熱により、電極積層体2における各電極箔の集電体21の縁部21eより外側に張り出す樹脂枠23の全周の張出部分23a同士を一度に溶着できる。また、蓄電モジュールの製造装置1では、各側面2cへの非接触ヒータ5の配置にあたり、電極積層体2において隣り合う側面2cによって画成される角部2dに対向して離間部52が配置されている。さらに、本体部51から側面2cまでを第1距離D1とし、離間部52から角部2dまでを第2距離D2とすると、第2距離D2は第1距離D1よりも大きくなっているため、角部2dを画成する2つの側面2cにそれぞれ対向する非接触ヒータ5からの入熱が重なる角部2dにおいて、局所的に非接触ヒータ5との距離を大きくして角部2dへの入熱が過剰になることを抑制している。これにより、電極積層体2の角部2dに位置する樹脂枠23の入熱不良を抑制できる。
【0037】
本実施形態では、離間部52と当該離間部52に対向する側面2cとの距離は、本体部51に連続する一端から角部2dに対向する位置にかけて、第1距離D1から第2距離D2へと徐々に大きくなっている。この場合、一の側面2cと別の側面2cとにより形成される角部2d周辺について、一の側面2cに対応する非接触ヒータ5の離間部52と、別の側面2cに対応する非接触ヒータ5の離間部52の双方が各側面2cから徐々に離間するように設けられるため、離間部52同士の入熱が重なる角部2d周辺にわたって入熱が過剰になることを抑制している。。したがって、電極積層体2の角部2dに位置する樹脂枠23の入熱不良を一層容易に抑制できる。
【0038】
本実施形態では、非接触ヒータ5は、当該非接触ヒータ5に電力を供給する外部電源に電気的に接続されるコネクタ部53をさらに含む。コネクタ部53は、離間部52のうち本体部51に連続する一端とは反対側の他端52aに取り付けられている。この場合、樹脂枠23の張出部分23aへの入熱に寄与しないコネクタ部53の位置を電極積層体2の角部2dから最も離間させることができるため、電極積層体2の角部2dに位置する樹脂枠23の入熱不良を一層容易に抑制できる。
【0039】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、非接触ヒータ5の配置は様々な変形が可能である。図4は、蓄電モジュールの製造装置の変形例を示す概略的な平面図である。変形例に係る蓄電モジュールの製造装置1Aは、非接触ヒータ5Aにおいて、複数の本体部51が複数の連結部55によって連結されている点で、上記実施形態と相違している。
【0040】
非接触ヒータ5Aの本体部51は、上記実施形態と同様に、電極積層体2の平面視において、側面2cに沿って略平行に延伸している。電極積層体2の平面視における本体部51の長さは、当該本体部51が対向する側面2cの長さよりも僅かに短くなっている。各連結部55は、電極積層体2の3つの角部2dに対応する位置にそれぞれ配置されている。そして、隣り合う側面2cの一方に対向する一方の本体部51に連続し、本体部51から側面2cと反対側に円弧状に屈曲し、隣り合う側面2cの他方に対向する他方の本体部51に連続して、隣り合う本体部51を連結している。本体部51と本体部51に対向する側面2cとの間を第1距離D1とし、連結部55と連結部55に対向する角部2dとの間を第2距離D2とすると、第2距離D2は第1距離D1よりも大きくなっている。具体的には、隣り合う側面2cの一方に対向する一方の本体部51と側面2cの一方との間を第1距離D1とし、当該一方の本体部51に連続する連結部55と側面2cの一方における角部2dとの間を第2距離D2とすると、第2距離D2は第1距離D1よりも大きくなっている。そして、連結部55と当該連結部55に対向する側面との距離は、本体部51に連続する一端から角部2dに対向する位置に向かうにつれて、第1距離D1から第2距離D2へと徐々に大きくなっている。すなわち、連結部55は離間部の一形態である。電極積層体2の残りの1つの角部2dに対応する位置には、一対の離間部52Aが配置されている。一対の離間部52Aは、上記1つの角部を画成する側面2cに対向する本体部51にそれぞれ連続している。各離間部52Aは、本体部51から側面2cと反対側に円弧状に屈曲している。各離間部52Aの本体部51に連続する一端と反対側の他端52aには、コネクタ部53がそれぞれ取り付けられている。
【0041】
このような非接触ヒータ5Aを有する蓄電モジュールの製造装置1Aにおいても、角部2dを画成する2つの側面2cにそれぞれ対向する非接触ヒータ5からの入熱が重なる角部2dにおいて、局所的に非接触ヒータ5との距離を大きくして角部2dへの入熱が過剰になることを抑制している。このため、電極積層体2の角部2dに位置する樹脂枠23の入熱不良を抑制できる。また、樹脂枠23の張出部分23aへの入熱に寄与しないコネクタ部53を離間部52Aの他端52aに取り付けることで、電極積層体2の角部2dに位置する樹脂枠23に対する不均一な入熱も抑制できる。
【0042】
図5は、蓄電モジュールの製造装置の別の変形例を示す概略的な平面図である。別の変形例に係る蓄電モジュールの製造装置1Bは、非接触ヒータ5Bにおいて、連結部55及び離間部52Aによる本体部51の連結箇所が上記変形例と相違している。連結部55は、本体部51に連続し、電極積層体2において一方の対角をなす2つの角部2dに対応する位置にそれぞれ配置され、本体部51から側面2cと反対側に円弧状に屈曲し、隣り合う本体部51を連結している。一対の離間部52Aは、電極積層体2において他方の対角をなす2つの角部2dに対応する位置にそれぞれ配置されている。各離間部52Aは、本体部51から側面2cと反対側に円弧状に屈曲し、各離間部52Aの他端52aには、コネクタ部53がそれぞれ取り付けられている。
【0043】
このような非接触ヒータ5Bを有する蓄電モジュールの製造装置1Bにおいても、角部2dを画成する2つの側面2cにそれぞれ対向する非接触ヒータ5からの入熱が重なる角部2dにおいて、局所的に非接触ヒータ5との距離を大きくして角部2dへの入熱が過剰になることを抑制している。このため、電極積層体2の角部2dに位置する樹脂枠23の入熱不良を抑制できる。また、樹脂枠23の張出部分23aへの入熱に寄与しないコネクタ部53を離間部52Aに取り付けることで、電極積層体2の角部2dに位置する樹脂枠23に対する不均一な入熱も抑制できる。
【0044】
図4及び図5の例では、非接触ヒータ5A,5Bは、隣り合う本体部51の少なくとも一対が連結部55によって連結されている。これにより、コネクタ部53の設置数を低減できる。なお、連結部55の形状は、円弧状に限られず、矩形状、三角形状、楕円状等の他の形状を取り得る。
【0045】
その他、上記実施形態では、非接触ヒータ5が近赤外線である光Hを張出部分23aに照射すると説明したが、非接触ヒータ5は高周波加熱により張出部分23aを加熱してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,1A,1B…製造装置、2…電極積層体、5,5A,5B…非接触ヒータ、2c…側面、2d…角部、20…樹脂枠付き電極箔、21…集電体、21e…縁部、23…樹脂枠、23a…張出部分、51…本体部、52,52A…離間部、53…コネクタ部、55…連結部、D…積層方向。

図1
図2
図3
図4
図5