IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子制御装置 図1
  • 特開-電子制御装置 図2
  • 特開-電子制御装置 図3
  • 特開-電子制御装置 図4
  • 特開-電子制御装置 図5
  • 特開-電子制御装置 図6
  • 特開-電子制御装置 図7
  • 特開-電子制御装置 図8
  • 特開-電子制御装置 図9
  • 特開-電子制御装置 図10
  • 特開-電子制御装置 図11
  • 特開-電子制御装置 図12
  • 特開-電子制御装置 図13
  • 特開-電子制御装置 図14
  • 特開-電子制御装置 図15
  • 特開-電子制御装置 図16
  • 特開-電子制御装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188388
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/467 20060101AFI20221214BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L23/46 C
H05K7/20 H
H05K7/20 B
H05K7/20 G
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096382
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】寺西 美波
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AB01
5E322BA01
5E322BA03
5E322BB03
5E322EA10
5E322FA04
5F136BA04
5F136BA22
5F136CA03
5F136DA41
5F136FA02
(57)【要約】
【課題】複数の電子部品を同時に放熱可能とする冷却技術を提供することにある。
【解決手段】電子制御装置は、フィンを備えた筐体と、フィン上には、冷媒の流路を形成するためのフィンカバーを有する冷却機構と、を備え、筐体内の回路基板上には、第1の電子部品と第2の電子部品とが伝熱部材を介して筐体のベース面と接していて、筐体は、第1の電子部品を有する領域Aと、第2の電子部品を有する領域Bと、を含み、流路は前記領域Aより前記領域Bの方が長く、領域Aの前記フィンカバーの内側は凸形状の突起部を有し、流路は櫛歯状に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィンを備えた筐体と、
前記フィンの上には、冷媒の流路を形成するためのフィンカバーを有する冷却機構と、を備え、
前記筐体内の回路基板上には、
第1の電子部品と第2の電子部品とが伝熱部材を介して前記筐体のベース面と接していて、
前記筐体は、前記第1の電子部品を有する領域Aと、前記第2の電子部品を有する領域Bと、を含み、
前記流路は前記領域Aより前記領域Bの方が長く、
前記領域Aの前記フィンカバーの内側は凸形状の突起部を有し、前記流路は櫛歯状に形成されている、電子制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記領域Aの流路断面において、前記フィンの根元と前記凸形状の突起部の先端との間は、前記流路の方向に平行な前記フィンの側面と前記凸形状の突起部の側面との間の隙間よりも大きい、電子制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記領域Aの前記フィンカバーの前記凸形状の突起部において、前記フィンの根元と前記凸形状の突起部の先端との間は、前記第1の電子部品の上側に配置される流路の方が、前記第1の電子部品の上側から離れた位置に配置される流路より大きい、電子制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載において、
前記領域Aの各流路内に形成される前記フィンカバーの前記凸形状の突起部は、
上面から見て、少なくとも前記第1の電子部品が配置されている領域に形成されている、電子制御装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記筐体の前記流路は前記領域Aと前記領域Bが等しく、
前記第2の電子部品の発熱量は、前記第1の電子部品の発熱量よりも大きい、電子制御装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記フィンカバーは、前記筐体の前記フィンの先端と少なくとも一か所で接している、電子制御装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記筐体は、空冷用のファンを備えた強制空冷構造である、電子制御装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記筐体は、前記ファンの直下に第3の電子部品を有し、
前記第3の電子部品の発熱量は、前記第1の電子部品および前記第2の電子部品の発熱量よりも大きい、電子制御装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記フィンカバーは、金属もしくは樹脂材料により形成される、電子制御装置。
【請求項10】
第1の電子部品と、
第2の電子部品と、
ベース面と、前記ベース面の上側に設けられた複数のフィンとを有する上部筐体と、
前記上部筐体の前記複数のフィンの上側を覆うように設けられたフィンカバーと、
前記第1の電子部品を冷却するための冷媒を流すための複数の第1流路を有する第1領域と、
前記第2の電子部品を冷却するための冷媒を流すための複数の第2流路を有する第2領域と、を有する筐体を含み、
前記フィンカバーは、下面と、前記下面の前記第1の電子部品の上側の領域に対応するように設けられた複数の突起部を有し、
前記複数の第1流路の断面のおのおのは、1対の前記フィンと、前記ベース面と、前記フィンカバーの前記下面と、前記複数の突起部の1つとによって構成され、
前記複数の第2流路の断面のおのおのは、1対の前記フィンと、前記ベース面と、前記フィンカバーの前記下面とによって構成される、電子制御装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記複数の第1流路の経路長は、
前記複数の第2流路の経路長と比較して短い、または、
前記複数の第2流路の経路長と同じである、電子制御装置。
【請求項12】
請求項10において、
前記複数の突起部の長さは、
前記第1流路を構成する前記複数のフィンの長さと同じ、または、
前記第1流路を構成する前記複数のフィンの長さより短い、電子制御装置。
【請求項13】
請求項10において、
前記第1領域の各流路断面において、前記フィンの根元と前記突起部の先端との間の隙間は、前記冷媒の流路方向に平行な前記フィンの側面と前記突起部の側面との間の隙間よりも大きい、電子制御装置。
【請求項14】
請求項10において、
前記フィンカバーの前記複数の突起部において、前記フィンの根元と前記突起部の先端との間は、前記複数の第1流路の前記第1の電子部品の上側に配置される流路の方が、前記複数の第1流路の前記第1の電子部品の上側から離れた位置に配置される流路より大きい、電子制御装置。
【請求項15】
請求項10において、
前記複数の第1流路および前記複数の第2流路に前記冷媒として空気を流すためのファンを有する、電子制御装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記第1の電子部品の発熱量は、
前記第2の電子部品の発熱量と同じ、または
前記第2の電子部品の発熱量より少ない、電子制御装置。
【請求項17】
請求項15において、
前記筐体は、前記ファンの下側の領域に第3の電子部品を有し、
前記第3の電子部品の発熱量は、前記第1の電子部品および前記第2の電子部品の発熱量よりも大きい、電子制御装置。
【請求項18】
請求項10において、
前記フィンカバーは、前記複数のフィンの先端と少なくとも一か所で接する、電子制御装置。
【請求項19】
請求項10において、
前記フィンカバーは、金属もしくは樹脂材料により形成される、電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置に関し、特に、熱を発する複数の半導体素子を備える電子制御装置に適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、例えば、エンジン制御用、モータ制御用、自動変速機制御用等の電子制御装置(ECUとも言う)が搭載される。電子制御装置には、高熱を発する半導体素子(IC)を備えている装置もある。このような高熱を発する半導体素子などの電子部品は、通常、回路基板(プリント基板とも言う)と放熱用のフィンを有する筐体との間に配置される。筐体を金属等の熱伝導率が高い材料で形成して、空冷ファンにより筐体に設けた放熱用のフィン間に冷媒としての冷却風を流し、電子部品で生じた熱を冷却する構造が知られている。
【0003】
半導体素子などの電子部品を冷却する提案として、特開2013-131520号公報、特開2019-47028号公報、特開平06-314759号公報、特開2018-32710号公報などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-131520号公報
【特許文献2】特開2019-47028号公報
【特許文献3】特開平06-314759号公報
【特許文献4】特開2018-32710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高性能な自動運転(AD:Autonomous Driving)および先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)用ECUの実現のため、ECUのプリント基板上には高発熱のICが複数個搭載される場合がある。これら複数のICを1つの冷却用のファンで冷却する場合、各ICとファンの位置関係や筐体形状によってフィン間流路(圧力損失)が異なるため、複数のICにおいて放熱性に偏りが生じることが分かった。
【0006】
また、低コスト化のため放熱用のフィンはADC(アルミダイカスト:aluminium die cast)一体成型が用いられる場合がある。この場合、設計制約からフィン間流路を狭めることができず、複数のICにおいて放熱性が悪化することも分かった。
【0007】
本開示の課題は、複数の電子部品を同時に放熱可能とする冷却技術を提供することにある。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0010】
一実施の形態によれば、電子制御装置は、フィンを備えた筐体と、フィン上には、冷媒の流路を形成するためのフィンカバーを有する冷却機構と、を備え、筐体内の回路基板上には、第1の電子部品と第2の電子部品とが伝熱部材を介して筐体のベース面と接していて、筐体は、第1の電子部品を有する領域Aと、第2の電子部品を有する領域Bと、を含み、流路は前記領域Aより前記領域Bの方が長く、領域Aの前記フィンカバーの内側は凸形状の突起部を有し、流路は櫛歯状に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
上記一実施の形態によれば、放熱性に偏りが生じることなく、複数の電子部品を同時に放熱可能とする冷却技術を提供できる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る電子制御装置の外観斜視図。
図2図1に示した電子制御装置のフィンカバーを取った外観斜視図。
図3図2に示した電子制御装置の上面図。
図4図1に示した電子制御装置のI-I線に沿う断面図。
図5図1に示した電子制御装置のII―II線に沿う断面図。
図6図4に示した電子制御装置のR部の拡大図であり、第1の構成例に係るフィンカバーを説明する断面図。
図7図4に示した電子制御装置のR部の拡大図であり、第2の構成例に係るフィンカバーを説明する断面図。
図8図1に示した電子制御装置のフィンカバーの上面図。
図9図1に示した電子制御装置のフィンカバーの変形例の上面図。
図10図9のフィンカバーが取り付けられた電子制御装置において、図9に示したIII―III線に沿う電子制御装置の断面図。
図11】変形例1に係る電子制御装置の上面図。
図12】変形例2に係る電子制御装置の上面図。
図13】シミュレーションに用いた圧力損失の式を示す図。
図14】シミュレーションに用いる実施の形態に係る電子制御装置の説明図。
図15】シミュレーションに用いる比較例に係る電子制御装置の説明図。
図16】シミュレーション結果を説明する比較図。
図17】シミュレーション結果の具体的な数値例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0014】
(実施の形態)
以下、図1図7を参照して、実施の形態を説明する。図1は、実施の形態に係る電子制御装置の外観斜視図である。図2は、図1に示した電子制御装置のフィンカバーを取った外観斜視図である。図3は、図2に示した電子制御装置の上面図である。図4は、図1のI-I線に沿う電子制御装置の断面図である。図5は、図1のII―II線に沿う電子制御装置の断面図である。図6は、図4に示した電子制御装置のR部の拡大図であり、第1の構成例に係るフィンカバーを説明する断面図である。図7は、図4に示した電子制御装置のR部の拡大図であり、第2の構成例に係るフィンカバーを説明する断面図である。
【0015】
電子制御装置100は、上部筐体1と下部筐体2とを含む筐体20と、上部筐体1に設けられた放熱フィン6の上側を覆うように設けられフィンカバー8と、上部筐体1に取り付けられた冷却用の空冷ファン10と、を有する。筐体は、空冷ファン10を備えた強制空冷構造とされている。空冷ファン10は、冷媒である空気を循環させるための冷媒循環装置と見なすことができる。
【0016】
上部筐体1と下部筐体2は、不図示のねじ等の締結部材により固定されている。筐体の内部には、回路基板(基板)3と、データ処理装置やマイクロプロセッサ等の半導体素子を含む複数の電子部品4(図3、4参照:第1の電子部品4a、第2の電子部品4b)と、グリースなどの伝熱材(伝熱部)5等、が収容されている。図1、4に示すように、フィンカバー8の一部分において、その内側(下側)には、下側向きに形成され凸形状の複数の突起部9が設けられている。複数の突起部9は、くし歯状の一連の平行な突起部9をもつ構造とされ、一対(2つ)のフィン6の間に1つの突起部9が配置される様に構成されている。
【0017】
上部筐体1は、アルミニウム(例えば、ADC12)等の熱伝導性に優れた金属材料により形成されている。上部筐体1は、鉄などの板金、あるいは樹脂材料やCFRP等の非金属材料により形成し、低コスト化および軽量化を図ることもできる。図1、2、4に示されるように、上部筐体1は、周囲に側壁を有し、下面側(回路基板3側)が開放されたボックス状に形成されている。上部筐体1には、回路基板3側に突出する複数のボス部7が設けられている(図4参照)。回路基板3は、不図のねじにより上部筐体1に固定されている。上部筐体1の上面には、上方に向けて突出する板状の複数の放熱フィン6が設けられている。放熱フィン6およびボス部7は、ダイキャスト等の鋳造により上部筐体1に一体に形成される。但し、放熱フィン6、ボス部7を上部筐体1とは別部材として作製して、上部筐体に取り付けるようにしてもよい。
【0018】
図4に示すように、回路基板3上には、電子部品4a、4bが実装されており、上部筐体1の上部内面には、回路基板3側に向けて突出するボス部7が形成されている。上部筐体1のボス部7と電子部品4a、4bとの間には伝熱材(伝熱部材)5が設けられており、電子部品4a、4bが伝熱材5を介して上部筐体1のベース面1Aの下側(下面)と接している。これにより、電子部品4a、4bの熱が、伝熱材5、ボス部7を介して、上部筐体1のベース面1Aの上側(上面)に設けた放熱フィン6から放熱できるように構成されている。
【0019】
下部筐体2は、上部筐体1と同様に、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属材料により形成されている。下部筐体2は、上部筐体1と同様に、鉄などの板金、あるいは樹脂材料等の非金属材料により形成し、低コスト化および軽量化を図ることもできる。
【0020】
フィンカバー8は、上部筐体1と同様に、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属材料により形成されている。フィンカバー8は、上部筐体1と同様に、鉄などの板金、あるいは樹脂材料等の非金属材料により形成し、低コスト化および軽量化を図ることもできる。フィンカバー8は、フィン6の上に設けられて、冷媒の流路を形成するための冷却機構を構成する。
【0021】
図1、2、3に示すように、電子制御装置100の筐体20(上部筐体1、下部筐体2)は、上面から見た場合(上面視において)、矩形形状とされている。この例では、筐体20(上部筐体1、下部筐体2)は、4辺を有する四角形状の矩形とされている。筐体20(上部筐体1、下部筐体2)は、図3に示すように、第1辺S1と、第1辺S1と対向する第2辺S2と、第1辺S1と第2辺S2との間に設けられた第3辺S3と、第3辺S3と対向する第4辺S4と、を有する。図3の例では、第1辺S1の長さは第2辺S2と同じとされ、第3辺S3および第4辺S4の長さより短くされている。言い換えると、第3辺S3の長さは第4辺S4と同じとされ、第1辺S1および第2辺S2との長さより長くされている。第1辺S1と第2辺S2とは第1方向Xに設けられ、第3辺S3と第4辺S4とは第1方向Xと異なる第2方向Yに設けられている。
【0022】
冷却用のファン10は、上面から視た場合に、矩形形状とされている。図1、2、3の例では、冷却用のファン10は、上面から視た場合に、正方形形状とされている。冷却用のファン10は、矩形形状の上部筐体1の1つの角部領域、つまり、第1辺S1と第3辺S3とが交際する角部領域CNに実装されている。ファン10は、冷媒である空気を用いて2つの電子部品4a、4bを同時に冷却するために利用される。電子部品4aの冷却用空気は、電子部品4aの上側に設けられた複数の放熱フィン6の形成方向に基づいて、領域A(第1領域とも言う)において、第1方向X(第1流路方向とも言う)に、距離LAの第1経路長を流れる。電子部品4bの冷却用空気は、電子部品4bの上側に設けられた複数の放熱フィン6の形成方向に基づいて、領域B(第2領域とも言う)において、第1方向Xと異なる第2方向Y(第2流路方向Yとも言う)に、距離LAより長い距離LBの経路長を流れる(LB>LA)。ここで、距離LAは領域Aにおける放熱フィン6の長さに対応し、距離LBは領域Bにおける放熱フィン6の長さに対応するということができる。また、図3の例では、第1方向Xと第2方向Yは交差する方向であり、より具体的には、第1方向Xと第2方向Yとは直交する方向とされている。
【0023】
言い換えると、筐体20は、上面から視た場合に、筐体20の第1辺S1に沿ってファン10と領域Aとが配置され、筐体20の第3辺S3に沿ってファン10と領域Bとが配置されている。領域Aは、電子部品4aを冷却するための複数の放熱フィン6を有する。領域Aに形成された複数の放熱フィン6は、第1辺S1に平行に設けられており、第1方向Xに設けられている。領域Aに形成された複数の放熱フィン6のおのおのは、距離LAの経路長を有する。領域Bは、電子部品4bを冷却するための複数の放熱フィン6を有する。領域Bに形成された複数の放熱フィン6は、第3辺S3に平行に設けられており、第2方向Yに設けられている。領域Bに形成された複数の放熱フィン6のおのおのは、距離LAより長い距離LBの経路長を有する。
【0024】
図4に示すように、フィンカバー8の電子部品4aの上側に位置する部分には凸形状の複数の突起部9が設けられており、電子部品4aの上側に設けられた複数の放熱フィン6の間には、フィンカバー8に設けられた凸形状の突起部9がそれぞれ配置されている。一方、図5に示すように、フィンカバー8の電子部品4bの上側に位置する部分には凸形状の複数の突起部9が設けられていないので、電子部品4bの上側に設けられた複数の放熱フィン6の間には、突起部9は配置されていない。
【0025】
図6を用いて、領域Aの流路断面について説明する。先に説明したように、領域Aのフィンカバー8の内側(下側)は凸形状の複数の突起部9を有し、冷媒である空気が流れる櫛歯状の流路が形成されている。領域Aの1つの流路断面の面積は、1対のフィン6、6とフィンカバー8の下面と上部筐体1のベース面1Aの上面とに囲まれた領域の面積から突起部9の面積を引いた面積となる。領域Aの1つの流路断面において、フィン6の根元(フィン6の形成されていない上部筐体1の上面)と突起部9の先端との間の隙間の長さ9aは、流路方向に平行なフィン6の側面との突起部9の側面との間の隙間の長さ9bよりも大きい(9a>9b)。また、隙間の長さ9a、9bは等しくてもよい(9a=9b)。つまり、隙間の長さ9aと9bとの関係は、9a≧9bとされてもよい。9a>9bとすることにより、フィン6の根元と突起部9の先端との間の隙間に、より効率的に空気を流すことができるので、電子部品4aの放熱性を向上できる。
【0026】
一方、図5に示されるように、領域Bの1つの流路断面の面積は、領域Bのフィンカバー8の内側(下側)は突起部9が設けられていないので、1対のフィン6、6とフィンカバー8の下面と上部筐体1のベース面1Aの上面とに囲まれた領域となる。
【0027】
したがって、領域Aの1つの流路断面の面積は、領域Bの1つの流路断面の面積より、突起部9の面積分、小さくなっている。これにより、フィン6の表面積を変えることなく、領域Aの圧力損失を増加させ、領域Aと領域Bの圧力損失差を低減することができる。これにより、第2の電子部品4bの放熱性が向上できる。また、領域Aにおいて、熱源である電子部品4aに近いフィン6根元に積極的に冷却用空気の風が流れることで放熱性が向上できる。言い換えると、各電子部品4a、4b上に形成されたフィン6間流路において、流路が短い領域A(電子部品4aの領域)のフィンカバー8の内側を凸形状の突起部9にして流路を櫛歯状にすることで、流路が長い領域B(電子部品4bの領域)との圧力損失差を低減することができる。これにより、電子部品4a、4bにおいて、放熱性の偏りを防止しつつ、電子部品4a、4bを同時に効率的に放熱することができる。
【0028】
次に、フィンカバーに設けた複数の突起部9の上下方向の長さについて、図6、7を用いて説明する。
【0029】
図6には、複数の突起部9の第1の構成例が示されており、各突起部9の長さが同一となっている。したがって、各突起部9において、フィン6の根元(フィン6の形成されていない上部筐体1の上面)と突起部9の先端との間の隙間の長さ9aが同一となっている。
【0030】
一方、図7には、複数の突起部9の第2の構成例が示されてり、複数の突起部9(91,92,93)の長さが異なるように構成されている。図7では、電子部品4aの上側に設けられた2本の突起部91の長さは一番短くされている。突起部91の左右に設けられた突起部92の長さは突起部91の長さより長くされ、突起部92の隣に設けられた突起部93の長さは突起部92の長さより長くされている。つまり、フィン6の根元(フィン6の形成されていない上部筐体1の上面)と突起部91の先端との間の隙間の長さ9a’がフィン6の根元(フィン6の形成されていない上部筐体1の上面)と突起部93の先端との間の隙間の長さ9aより、長くされている(9a‘>9a)。したがって、領域Aにおいて、電子部品4aの直上(または上側)の位置に配置する流路より、電子部品4aの直上(または上側)から離れた位置に配置される流路のほうが、突起部9が長い(流路断面積が小さい)。これにより、電子部品4a上のフィン6間の流路に積極的に冷却用空気の風が流れるため、放熱性が向上する。
【0031】
次に、フィンカバーに設けた複数の突起部9の上面視における長さについて、図8、9、10を用いて説明する。図8は、図1に示した電子制御装置のフィンカバーの上面図である。図9は、図1に示した電子制御装置のフィンカバーの変形例を示す上面図である。図10は、図9のフィンカバーが取り付けられた電子制御装置において、図9に示したIII―III線に沿う電子制御装置の断面図である。
【0032】
図8に示すように、フィンカバー8に設けた複数の突起部9のおのおのは、上面視(平面視)において、領域Aには、第1方向Xに距離LAの長さで設けられている。
【0033】
一方、図9に示すように、変形例に係るフィンカバー8Aに設けた複数の突起部94のおのおのは、上面視(平面視)において、第1方向Xに、距離LAより短い距離L94の長さで設けられている(L94<LA)。つまり、上面から見て、少なくとも電子部品4aが配置されている領域に形成されている。また、図10に示すように、領域Aにおいて、突起部94の逆台形型の凸形状は少なくとも電子部品4aの直上の流路に形成されている。電子部品4aが配置されている領域の上側にのみ、突起部94の凸形状を設けることで、電子部品4aが配置されている領域の上側の流路断面積を小さくして、電子部品4aの直上の流路における冷却用空気の流速を局所的に増大させることができる。これにより、放熱性を向上できる。
【0034】
なお、図10では、電子部品4aの上側全域に、突起部94の凸形状を設ける構成例を示したが、これに限定されない。電子部品4aの上側の少なくとも一部分に突起部94の凸形状が配置されていればよい。この構成でも、上記と同様に、放熱性を向上できる。
【0035】
次に、圧力損失のシミュレーションについて図13図17を用いて説明する。図13は、シミュレーションに用いた圧力損失の式を示す図である。図14は、シミュレーションに用いる実施の形態に係る電子制御装置の説明図である。図15は、シミュレーションに用いる比較例に係る電子制御装置の説明図である。図16は、シミュレーション結果を説明する比較図である。図17は、シミュレーション結果の具体的な数値例を示す図である。
【0036】
圧力損失(ΔPloss)は、ファン10からの冷媒である空気がフィン6間を通り抜ける際に、流体(空気)と流路壁面(フィン6)との間で摩擦が発生する摩擦圧力損失であり、図13に記載の式130、式131、式132によって表される。圧力損失のシミュレーションでは、これらの式を利用した。
【0037】
図14は、シミュレーションに用いる実施の形態に係る電子制御装置100であり、電子制御装置100は図3で説明した上部筐体1の上に、図8で説明した複数の突起部9を有するフィンカバー8を被せた構成である。図15は、シミュレーションに用いる比較例に係る電子制御装置100Rであり、図3で説明した上部筐体1の上に、突起部9の無いフィンカバー8Rを被せた構成である。シミュレーションで用いた主な数値は、以下である。
【0038】
電子制御装置100、100Rのサイズ:200mm×120mm
ファン10のサイズ:50mm×50mm
領域Aのサイズ:50mm×63mm (経路長LA:63mm)
領域Bのサイズ:50mm×143mm (経路長LB:143mm)
フィン6の間隔:5.0mm
フィン6の厚さ:2.0mm
フィン6の高さ:14mm(電子制御装置100の場合)、15mm(電子制御装置100Rの場合)
9a:1.5mm
9b:2.0mm
ここで、式130、式131、式132のシミュレーションにおいては、図17に記載した数値を用いて圧力損失(ΔPloss)の計算を行った。
【0039】
図16には、比較例に係る電子制御装置100Rと実施の形態に係る電子制御装置100とにおいて、領域Aの断面図と、領域Bの断面図と、およびフィン間の圧力損失(ΔPloss)とを記載している。なお、図16では、圧力損失ΔPlossをΔPとして簡単化して表記する。
【0040】
図16の比較例に係る電子制御装置100Rにおいて、領域Aおよび領域Bの断面図で分かるように、フィンカバー8Rには突起部9が設けられていない構成である。シミュレーションの結果は、領域Aの圧力損失が5.8Paであり、領域Bの圧力損失が13.2Paである。したがって、領域Bの圧力損失(13.2Pa)は、領域Aの圧力損失(5.8Pa)の約2.3倍となり、圧力損失差が比較的大きい。よって、領域Aの冷却用空気の流量が大きく、領域Bの冷却用空気の流量が小さくなる。このため、領域Aの電子部品4aは効率的に放熱されるが、領域Bの電子部品4bは効率的に放熱ができないことになる。つまり、領域Aの電子部品4aと領域Bの電子部品4bとでは、放熱性に偏りが生じる。
【0041】
一方、図16の実施の形態に係る電子制御装置100において、領域Aおよび領域Bの断面図で分かるように、領域Aのフィンカバー8には突起部9が設けられており、領域Bのフィンカバー8には突起部9が設けられていない構成である。シミュレーションの結果は、領域Aの圧力損失が15.3Paであり、領域Bの圧力損失が13.2Paである。したがって、領域Bの圧力損失(13.2Pa)は、領域Aの圧力損失(15.3Pa)の約0.9倍となり、圧力損失差が比較的小さくなる。よって、領域Aの冷却用空気の流量は比較例の領域Aの冷却用空気の流量より減るが、領域Bの冷却用空気の流量は比較例の領域Bの冷却用空気の流量より大きくなる。このため、領域Aの電子部品4a、4bの両方は、放熱性に偏りが生じることなく、効率的に放熱されることになる。つまり、実施の形態に係る電子制御装置100は、フィン9間流路の圧力損失を制御することで、1つのファン10で、複数の電子部品4a、4bを同時に放熱可能な構成である。
【0042】
(変形例)
次に、変形例について説明する。
【0043】
(変形例1)
図11は、変形例1に係る電子制御装置の上面図である。
【0044】
上面視における電子制御装置100の形状は、図1~3で示すような長方形の様な矩形形状に限定されない。図11に示すように、上面視における電子制御装置100Aの形状は、正方形のような矩形形状とされてもよい。つまり、第1流路方向Xの距離LAと第2流路方向Yの距離LYとは同じ長さ(LA=LB)とされてもよい。この場合、電子部品4aは低発熱量であり、電子部品4bは電子部品4aの発熱量と比較して高発熱量である。図示しないが、フィンカバー8の領域Aに対応する部分には、実施の形態で説明したと同様に、複数の突起部(9または94)が設けられる。
【0045】
低発熱量の電子部品4aと高発熱量の電子部品4bとが設けられた電子制御装置100Aにおいて、1つの冷却用のファン10で電子部品4a、4bを、放熱性の偏りを防止しつつ、同時に放熱することができる。
【0046】
(変形例2)
図12は、変形例2に係る電子制御装置の上面図である。
【0047】
電子制御装置100に実装される電子部品の個数は、電子部品4a、4bの2つに限定されない。図12の電子制御装置100Bに示すように、3つの電子部品4a、4b、4cが設けられてもよい。図12図3と異なる点は、図12の電子制御装置100Bにおいて、冷却用のファン10の下側の領域に、第3の電子部品4cが実装されている点である。この場合、第3の電子部品4cの発熱量は、電子部品4a、4bの発熱量より大きい。冷却用のファン10の下側は、放熱性の良好な領域であるので、発熱量の大きい第3の電子部品4cを実装する場所として最適である。1つの冷却用のファン10で3つの電子部品4a、4b、4cを、放熱性の偏りを防止しつつ、同時に放熱することができる。
【0048】
(変形例3)
上記の説明では、上部筐体1に形成された複数のフィン6の先端とフィンカバー8とが離間しているように描かれているが、これに限定されない。上部筐体1に形成された複数のフィン6の先端とフィンカバー8とは、少なくとも一か所または全面で接しているように構成してよい。この構成によれば、電子部品4a、4bの放熱経路として、冷却用の空気による第1の放熱経路に、フィン6-フィンカバー8による第2の放熱経路を追加できる。これにより、第1および第2の放熱経路により、効率的に電子部品4a、4bの熱を放熱できる。
【0049】
(変形例4)
上記の説明では、冷媒が空気の場合(空冷)を説明したが、これに限定されない。冷媒は水であってもよい(水冷)。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
100:電子制御装置
A:領域A
B:領域B
1:上部筐体(冷却機構)
1A:上部筐体のベース面
2:下部筐体
3:回路基板
4a:第1の電子部品
4b:第2の電子部品
4c:第3の電子部品
5:伝熱材
6:放熱フィン
7:ボス
8:フィンカバー
9:フィンカバーの凸形状の突起部
9a:凸形状先端と放熱フィン根元との間の隙間の長さ
9b:凸形状側面とフィン側面との間の隙間の長さ
10:ファン
20:筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17