(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188390
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】射出成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20221214BHJP
B29C 45/40 20060101ALI20221214BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/40
B29C45/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096386
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】山守 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大島 佑介
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AG01
4F202AH25
4F202AM33
4F202AM34
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK52
4F202CM03
4F202CM07
(57)【要約】
【課題】溶融樹脂の圧力を上げてもキャビティとコアとの合わせ面が開くのを抑制できる射出成形装置を提供する。
【解決手段】射出成形装置1は、キャビティ2と、キャビティ2との間で成形空間6を形成するコア3とを備える。コア3は、コア本体4とコア分割部5とを備える。コア分割部5は、成形空間6の外周全周を取り囲んで成形空間6の面の一部を形成するととともに、型閉じ状態のときにキャビティ2の面22と合わさる合わせ面51を有する。コア分割部5の、上記合わせ面51と反対側の面52に、溶融樹脂を成形空間6に導入する通路75が形成される。コア分割部5は、成形空間6に導入された溶融樹脂によりキャビティ2から離れる方向に力が作用する第1作用面と、通路75を流れる溶融樹脂によりキャビティ2に接近する方向に力が作用する第2作用面59とを有する。第2作用面59の面積は第1作用面の面積以上に設定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと、
前記キャビティに対して開閉可能に設けられ、型閉じ状態において前記キャビティとの間で樹脂成形体を射出成形するための成形空間を形成するコア本体と、
前記コア本体側に設けられ、前記キャビティと前記コア本体との開閉方向から見て前記成形空間の外周全周を取り囲んで前記成形空間の面の一部を形成するとともに、型閉じ状態のときに前記キャビティの面と合わさる合わせ面を有したコア分割部と、
射出成形後の型開き状態のときに前記コア分割部を前記コア本体から離す制御部とを備え、
前記コア分割部の、前記合わせ面と反対側の面に、溶融樹脂を前記成形空間に導入する通路が形成されており、
前記コア分割部は、
前記成形空間を構成する面であって、前記成形空間に導入された溶融樹脂により前記キャビティから離れる方向に力が作用する第1作用面と、
前記通路を構成する面であって、前記通路を流れる溶融樹脂により前記キャビティに接近する方向に力が作用する第2作用面とを有しており、
前記第2作用面の面積は前記第1作用面の面積以上である、
射出成形装置。
【請求項2】
前記コア分割部は、射出成形後の型開き状態において前記コア本体から離れる方向に移動するに伴い前記樹脂成形体を前記コア本体から押し出す成形体押出部である請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記通路は、下流側の端部が前記成形空間に繋がる第1通路と、下流側の端部が閉じた第2通路とを有し、
前記第2通路の幅は前記第1通路の幅より小さい請求項1又は2に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記コア分割部は前記成形空間の外周に沿って複数に分割されており、
前記通路は、一部の前記コア分割部の前記反対側の面に形成されており、
前記通路が形成された前記コア分割部である通路有分割部と、前記通路が形成されていない前記コア分割部である通路無分割部とは、前記キャビティに接近する方向に作用する力を前記通路有分割部から前記通路無分割部に伝達させる力伝達部を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【請求項5】
前記通路に残留した樹脂が冷却固化されることにより形成される樹脂残留体が前記コア本体から押し出されるのを妨げる形状を有し、前記樹脂成形体が前記コア本体から押し出されるのに伴い前記樹脂残留体を前記樹脂成形体から分離させる押出阻止部と、
前記押出阻止部によって前記樹脂成形体から分離された前記樹脂残留体を前記押出阻止部とともに前記コア本体から押し出す残留体押出部と、
前記コア本体から押し出された前記樹脂残留体を前記押出阻止部から外れる方向に回転させる回転部と、
をさらに備える請求項1~4のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【請求項6】
前記回転部は複数設けられており、
前記通路は2つの前記回転部の間を繋ぐ回転部間通路を有しており、
前記樹脂残留体は前記回転部間通路に形成される回転部間残留体を含み、
前記残留体押出部を第1残留体押出部として、
前記樹脂残留体が前記押出阻止部により押し出しが阻止されている状態で、前記回転部間残留体を前記コア本体から押し出して切断させる第2残留体押出部を備え、
前記第1残留体押出部は、前記回転部間残留体が切断された後に前記樹脂残留体を前記コア本体から押し出し、
前記回転部は、前記回転部間残留体が切断された後の前記樹脂残留体を回転させる請求項5に記載の射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形においては金型のキャビティとコアの間に形成される成形空間に溶融樹脂が導入されて、その溶融樹脂が冷却固化されることにより樹脂成形体が得られる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形においては樹脂成形体の外観品質を向上させるために溶融樹脂の圧力を上げる場合がある。しかし、溶融樹脂の圧力を上げると、キャビティとコアとの合わせ面(パーティングライン)が開いてしまい、樹脂成形体にバリが形成されてしまうおそれがある。バリを抑制するために、溶融樹脂の圧力を下げると、樹脂成形体に面歪、ヒケなどが生じてしまい、外観品質が低下する。
【0005】
本開示は上記問題に鑑みてなされ、溶融樹脂の圧力を上げてもキャビティとコアとの合わせ面が開くのを抑制できる射出成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の射出成形装置は、
キャビティと、
前記キャビティに対して開閉可能に設けられ、型閉じ状態において前記キャビティとの間で樹脂成形体を射出成形するための成形空間を形成するコア本体と、
前記コア本体側に設けられ、前記キャビティと前記コア本体との開閉方向から見て前記成形空間の外周全周を取り囲んで前記成形空間の面の一部を形成するとともに、型閉じ状態のときに前記キャビティの面と合わさる合わせ面を有したコア分割部と、
射出成形後の型開き状態のときに前記コア分割部を前記コア本体から離す制御部とを備え、
前記コア分割部の、前記合わせ面と反対側の面に、溶融樹脂を前記成形空間に導入する通路が形成されており、
前記コア分割部は、
前記成形空間を構成する面であって、前記成形空間に導入された溶融樹脂により前記キャビティから離れる方向に力が作用する第1作用面と、
前記通路を構成する面であって、前記通路を流れる溶融樹脂により前記キャビティに接近する方向に力が作用する第2作用面とを有しており、
前記第2作用面の面積は前記第1作用面の面積以上である。
【0007】
これによれば、キャビティとの間で成形空間を形成するコアがコア本体とコア分割部とを含んで構成される。コア分割部は成形空間の外周全周を取り囲んで、型閉じ状態でキャビティと合わさる合わせ面を有する。コア分割部の、前記合わせ面と反対側の面に、溶融樹脂を成形空間に導入する通路が形成されるので、その溶融樹脂の圧力によりコア分割部にはキャビティに接近する方向の力が作用する。そして、コア分割部の、前記通路を構成する第2作用面の面積は、溶融樹脂によりキャビティから離れる方向に力が作用する第1作用面の面積以上であるので、溶融樹脂の圧力を上げてもコア(コア分割部)とキャビティとの合わせ面が開いてしまうのを抑制できる。また、コア分割部は、制御部により、射出成形後の型開き状態のときにコア本体から離されるので、コア分割部とコア本体との間に残留した樹脂残留体を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】射出成形装置の、
図1のII-II線での断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線での断面図であって、通路有分割部と通路無分割部との嵌合状態を示す図である。
【
図5】
図1のV-V線での断面図であって、溶融樹脂の通路のうちの回転部間通路の断面図である。
【
図6】コア分割部の裏側に形成される裏側通路のうちのゲート導通通路の断面図であって、
図1のVI-VI線での断面図である。
【
図7】コア分割部の裏側に形成される裏側通路のうちの閉鎖通路の断面図であって、
図2のB部の拡大図である。
【
図9】成形体の、
図8のIX-IX線での断面図である。
【
図12】射出成形装置の断面図において溶融樹脂の射出中の状態を示す図である。
【
図13】射出成形後の型開き状態でのコア側の断面図である。
【
図14】射出成形後の型開き状態での回転部間通路及びそこに形成される樹脂残留体(回転部間残留体)の断面図である。
【
図15】
図13の状態に続いて、成形体がコア本体から押し出されている状態を示す断面図である。
【
図16】
図14の状態に続いて、回転部間残留体の中間部がコア本体から押し出されている状態を示す断面図である。
【
図17】
図15の状態に続いて、樹脂残留体がコア本体から押し出されている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態を図面を参照しつつ説明する。先ず、
図8~
図11を参照して、本実施形態の射出成形装置で成形される成形体について説明する。
図8~
図11に示す成形体30は、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS樹脂等の樹脂により形成される。成形体30は、例えば車両に組み付けられる部品(例えば車両のバックドアに設けられる部品)である。成形体30は、板状の本体部301と、その本体部301の外周縁から本体部301の裏面側に屈曲する形で延び出す屈曲部302とを有する。本体部301は、
図8の平面視で見て、
図8の紙面の左右方向に長い形状を有する。
【0010】
屈曲部302は、本体部301の外周縁の全周にわたって連続して形成されている。
図10に示すように、屈曲部302の端面303には、射出成形金型におけるゲート位置を示す複数(本実施形態では3つ)のゲート痕304が形成されている。また端面303には、後述の複数のコア分割部5の境界線を示す痕305が形成されている。痕305はコア分割部5の個数分形成されている。本実施形態では、コア分割部5は4つ設けられるので、痕305も4つ形成されている。各痕305は、端面303の外周線と内周線との間を繋ぐように形成されている。
【0011】
また、
図11に示すように、屈曲部302の外側側面には、後述するキャビティ2とコア分割部5との合わせ面(言い換えればパーティングライン)の位置を示す痕306が形成されている。痕306は、外側側面の周方向に沿って線状に形成され、かつ周方向の全周にわたって連続して形成されている。また屈曲部302の外側側面には、複数のコア分割部5の境界線を示す痕307が形成されている(
図11参照)。痕307はコア分割部5の個数分、すなわち4つ形成されている。痕307は、周方向に延びた痕306と、端面303の外周線との間を繋ぐように形成されている。
【0012】
次に、成形体30を射出成形するための射出成形装置の構成を説明する。
図1、
図2の射出成形装置1は、金型を備えており、その金型は固定型としてのキャビティ2と可動型としてのコア3とを備えている。キャビティ2は、射出成形装置1の型開き動作又は型閉じ動作の際に位置が変化しない型板である。またキャビティ2は、成形後に射出成形装置1(コア3)が型開き動作するに伴い、成形体30が離れていく側の型板である。キャビティ2は、型閉じ状態においてコア3との間で成形体30を射出成形するための成形空間6を形成する。成形空間6は、成形体30の形状に対応する形状に形成されている。具体的には、成形空間6は、成形体30の本体部301に対応する本体部空間61と、屈曲部302に対応する屈曲部空間62とを有する(
図2、
図3参照)。本実施形態では、本体部空間61は、金型(キャビティ2、コア3)の開閉方向に直角な方向に対して若干傾斜した方向に延びるように形成されているが、前記直角な方向に延びるように形成されてもよい。屈曲部空間62は、本体部空間61の外周縁からコア3側に屈曲するように形成される。屈曲部空間62の端面53a(
図3参照)は、成形体30の屈曲部302の端面303に対応しており、金型(キャビティ2、コア3)の開閉方向にほぼ平行な方向におけるコア3側からキャビティ2側の方向を向いている。
【0013】
キャビティ2の、コア3に対向した面には、成形体30の表面(意匠面)に対応する凹形状21が形成されている。凹形状21は成形空間6の内壁面の一部を構成している。具体的には、
図3に示すように、凹形状21は、成形体30の本体部301の表面に対応する部分21aと、成形体30の屈曲部302の外側側面の一部に対応する部分21bとを含んで構成されている。
【0014】
また、
図1に示すように、成形空間6は、1台の射出成形装置1あたりに2つ形成されている。つまり、射出成形装置1は、同時に2つの成形体30を射出成形できるように構成されている。2つの成形空間6a、6bは、キャビティ2とコア3との開閉方向に直角な水平方向に並ぶように配置されている。また、2つの成形空間6a、6bは、
図1の水平面上の点Oに関して180°回転対称形状に形成されている。すなわち、一方の成形空間6aを、点Oを通る、
図1の紙面に直角な軸線(言い換えれば、キャビティ2とコア3との開閉方向に平行な軸線)回りに180°回転させると他方の成形空間6bに一致する。点Oは、
図1の平面視で見て成形空間6の長手方向の中間を通る、成形空間6の短手方向に延びた仮想直線L1上の点である。なお、キャビティ2の、一方の成形空間6a側を構成する部分と他方の成形空間6b側を構成する部分とは一体化されている。
【0015】
コア3は、キャビティ2に対して開閉可能に設けられる。すなわち、コア3は、キャビティ2のパーティングライン(PL)を規定する面22にコア3のパーティングラインを規定する面32が突き合わされた状態でキャビティ2に締め付けられる型閉じ状態(
図2の状態)と、キャビティ2の面22から離間した型開き状態との間で移動可能に設けられる。コア3の型閉じ動作又は型開き動作の方向は、パーティングラインに直角な方向(
図2の紙面の上下方向)である。またコア3は、成形後に射出成形装置1(コア3)が型開き動作するに伴い、成形体30が張り付いた状態となる側の型板である。コア3は、型閉じ状態においてキャビティ2との間で上記成形空間6を形成する。コア3の、キャビティ2に対向した面には、成形体30の裏面に対応する凸形状31が形成されている。凸形状31は成形空間6の内壁面の一部を構成している。具体的には、凸形状31は、
図3に示すように、成形体30の本体部301の裏面に対応する部分42aと成形体30の屈曲部302の内側側面に対応する部分42bと、屈曲部302の端面303に対応する部分53aと、屈曲部302の外側側面の一部に対応する部分53bとを含んで構成されている。
【0016】
コア3はコア本体4とコア分割部5とを備えている。コア本体4は、凸形状31の大部分を形成し、具体的には
図3に示すように、成形体30の本体部301の裏面に対応する部分42aと成形体30の屈曲部302の内側側面に対応する部分42bとを形成する。また、
図2に示すように、コア本体4の、キャビティ2に対向した面41には、コア分割部5を配置するための凹部43が形成されている。凹部43は、成形空間6の外周全周を取り囲むように形成される。なお、成形空間6の外周全周とは、
図1の平面視(キャビティ2とコア3との開閉方向)で見たときの成形空間6の外周全周を言う。
【0017】
なお、成形空間6は2つ設けられているが、コア本体4は成形空間6ごとに分割されているわけではない。すなわち、コア本体4の、一方の成形空間6a側を構成する部分と他方の成形空間6b側を構成する部分とは一体化されている。
【0018】
コア分割部5は、型閉じ状態において上記凹部43に設けられ、換言すれば
図1に示すように成形空間6の外周全周を取り囲むように設けられる。また、コア分割部5は、型閉じ状態において成形空間6の内壁面の一部53(
図3参照)を形成する。具体的には、
図3に示すように、コア分割部5が形成する内壁面53は、成形空間6のうちの屈曲部空間62を構成する面の一部であり、より具体的には、成形体30の屈曲部302の端面303に対応する部分53aと、屈曲部303の外側側面の一部に対応する部分53bとを含んでいる。なお、本実施形態では、屈曲部302の端面303に対応する部分53aの幅d9(
図3参照)の全範囲がコア分割部5で構成されているが、該幅d9の一部がコア分割部5で構成され、残部がコア本体4で構成されてもよい。
【0019】
コア分割部5は、
図2に示すように、キャビティ2に対向した表面51とその反対側の裏面52と、これら表面51、裏面52の間を繋ぐように形成される側面とを有した形状に形成される。表面51及び裏面52は互いに平行に設けられる。また表面51及び裏面52はキャビティ2とコア本体4とのパーティングライン(PL)に平行に設けられる。
【0020】
コア分割部5の表面51は、型閉じ状態のときにキャビティ2の面22と合わさる合わせ面として機能する。合わせ面51は、成形空間6の外周全周にわたって形成されている。なお、コア本体4の、キャビティ2の面22に合わさる合わせ面41(
図2参照)は、コア分割部5の合わせ面51の外側(成形空間6から離れた側)に形成されている。コア本体4の合わせ面41とコア分割部5の合わせ面51とで、コア3のパーティングラインを規定する面32が構成される。
【0021】
コア分割部5は、成形空間6の外周に沿って複数に分割されており、具体的には4つに分割されている。
図1に示すように、4つのコア分割部5は、成形空間6の外周線のうち成形空間6の長手方向に延びた第1の長手方向外周線63を規定する(第1の長手方向外周線63に隣接して設けられる)第1のコア分割部5aと、成形空間6の長手方向に延びた第2の長手方向外周線64を規定する(第2の長手方向外周線64に隣接して設けられる)第2のコア分割部5bと、成形空間6の短手方向に延びた第1の短手方向外周線65を規定する(第1の短手方向外周線65に隣接して設けられる)第3のコア分割部5cと、成形空間6の短手方向に延びた第2の短手方向外周線66を規定する(第2の短手方向外周線66に隣接して設けられる)第4のコア分割部5dとを含む。第1、第2のコア分割部5a、5bは成形空間6を間に挟んで対向している。第3、第4のコア分割部5c、5dは成形空間6を間に挟んで対向している。
【0022】
各コア分割部5a~5dは、隣りに位置する他のコア分割部5a~5dに嵌合する形態で設けられる。その嵌合部は、隣り合う2つのコア分割部の境界部54(
図1参照)に設けられる。後述するように、第1、第2のコア分割部5a、5bの裏側には、成形空間6に溶融樹脂を導入する通路が形成される一方で、第3、第4のコア分割部5c、5dの裏側には該通路が形成されない。ここで、裏側に該通路が形成される第1、第2のコア分割部5a、5bを通路有分割部5Xといい、裏側に該通路が形成されない第3、第4のコア分割部5c、5dを通路無分割部5Yという。
図4は、通路有分割部5Xと通路無分割部5Yとの嵌合状態を例示している。通路有分割部5Xと通路無分割部5Yとの境界部54は、通路有分割部5Xの側面55と、それに接触する通路無分割部5Yの側面56とで構成される。通路有分割部5Xの側面55に凸部57が設けられ、通路無分割部5Yの側面56には凹部58が設けられる。これら凸部57と凹部58が嵌合している。
【0023】
より具体的には、凸部57は、例えば通路有分割部5Xの裏面52(キャビティ2に対向する面51と反対側の面)に連続するように形成されるが、側面55における表面51と裏面52の中間の位置に形成されてもよい。凹部58は、例えば通路無分割部5Yの裏面52を切り欠いた形態で形成されるが、側面56における表面51と裏面52の中間の位置に形成されてもよい。凸部57の、表面51側を向いた面57aと、凹部58の、裏面52側を向いた面58aとが少なくとも接触している。これら凸部57、凹部58の嵌合により、キャビティ2に接近する方向に作用する力が通路有分割部5Xから通路無分割部5Yに伝達される。なお、凸部57及び凹部58は本開示の力伝達部に相当する。
【0024】
力伝達部としての凸部57及び凹部58は、
図1に示す複数の境界部54のそれぞれに形成されている。すなわち、凸部57及び凹部58は、第1のコア分割部5aと第3のコア分割部5cとの境界部54、第2のコア分割部5bと第3のコア分割部5cとの境界部54、第2のコア分割部5bと第4のコア分割部5dとの境界部54、及び第1のコア分割部5aと第4のコア分割部5dの境界部54のそれぞれに形成されている。
【0025】
図1に示すように、コア分割部5は、2つの成形空間6a、6bごとに設けられる。すなわち、コア分割部5は、一方の成形空間6aを取り囲むように設けられるコア分割部5Aと、他方の成形空間6bを取り囲むように設けられるコア分割部5Bとを含む。一方のコア分割部5Aと他方のコア分割部5Bとは互いに分離した形で設けられる。また、コア分割部5A、5Bはそれぞれ上記第1~第4のコア分割部5a~5dに分割されている。コア分割部5A、5Bは
図1の水平面上の点Oに関して180°回転対称形状に形成されている。すなわち、一方のコア分割部5Aを、点Oを通る、
図1の紙面に直角な軸線回りに180°回転させると他方のコア分割部5Bに一致する。
【0026】
射出成形装置1は、溶融樹脂を射出する樹脂射出部(図示外)を備える。その樹脂射出部はキャビティ2側に設けられる。
図1、
図2に示すように、キャビティ2及びコア3(コア本体4、コア分割部5)には、樹脂射出部から射出された溶融樹脂を成形空間6まで案内するための通路7(スプルー、ランナー及びゲート)が形成されている。通路7は、
図2に示すように、キャビティ2の内部においてコア本体4側に向かうように形成されるキャビティ側通路71と、後述する回転軸線Z(
図2参照)上かつキャビティ2とコア本体4との合わせ面22、41上に形成される回転中心部72と、回転中心部72から合わせ面22、41の面内方向に延びるように形成される表側通路73とを含む。さらに、通路7は、表側通路73の端部からコア分割部5の側面に沿ってコア分割部5の裏面52の方に延びるように形成される側面上流側通路74と、側面上流側通路74の端部からコア分割部5の裏面52に沿って形成される裏側通路75と、裏側通路75の端部からコア分割部5の側面に沿ってコア分割部5の表面51の方に延びるように形成される側面下流側通路76とを含む。
【0027】
キャビティ側通路71がスプルーとして機能する。表側通路73、側面上流側通路74、裏側通路75、及び側面下流側通路76がランナーとして機能する。側面下流側通路76の端部77がゲートとして機能する。
【0028】
通路7の各部71~76は2つの成形空間6a、6bごとに形成されるが、一方の成形空間6aのための通路7の各部71~76と他方の成形空間6bのための通路7の各部71~76とは、
図1における水平面上の点Oに関して180°回転対称となる位置、形状(幅、長さ)及び個数に形成されている。
【0029】
図1に示すように、回転中心部72は、1つの成形空間6当たりに複数(具体的には4つ)設けられる。各回転中心部72は、
図1の平面視で見て、金型開閉方向に直角な水平面における成形空間6の外側かつコア分割部5の外側に設けられる。また、各回転中心部72は、成形空間6の長手方向幅の範囲内に位置している。
【0030】
複数の回転中心部72のうちの第1、第2の回転中心部72a、72bは、第1成形空間6aと第2成形空間6bの間の位置に設けられる。また、第1、第2の回転中心部72a、72bは、成形空間6の外周線63~65のうち第1、第2の回転中心部72a、72bに対向した位置にある線分64(第2の長手方向外周線64)が延びた方向(つまり成形空間6の長手方向)に沿って間隔をあけて設けられている。第1、第2の回転中心部72a、72bの第1成形空間6aからの距離と、第2成形空間6bからの距離は同じである。第1の回転中心部72aと点O(
図1参照)との距離と、第2の回転中心部72bと点Oとの距離は同じである。第1、第2の回転中心部72a、72bから、第1成形空間6a側に向かう通路と第2成形空間6b側に向かう通路とに分岐されている。
【0031】
複数の回転中心部72のうちの第3、第4の回転中心部72c、72dは、成形空間6及びコア分割部5を間に挟んで第1、第2の回転中心部72a、72bが位置する側の反対側に位置している。第3、第4の回転中心部72c、72dは、成形空間6の外周線63~65のうち第3、第4の回転中心部72c、72dに対向した位置にある線分63(第1の長手方向外周線63)が延びた方向(つまり成形空間6の長手方向)に沿って間隔をあけて設けられている。
【0032】
キャビティ側通路71(
図2参照)は、型閉じ状態において回転中心部72又は表側通路73に導通するように設けられる。具体的には本実施形態では、キャビティ側通路71は、第1~第3の回転中心部72a~72cに導通するように設けられる。換言すれば、第1~第3の回転中心部72a~72cに対峙する位置にキャビティ側通路71の開口が位置する。一方で、第4の回転中心部72dにはキャビティ側通路71が直接には導通しておらず、換言すれば、第4の回転中心部72dに対峙する位置にはキャビティ側通路71の開口は形成されていない。
【0033】
表側通路73は、
図1に示すように、回転中心部72からコア分割部5の方に向かって形成される第1の表側通路731と、複数の回転中心部72a~72dのうちの1つと他の1つとを繋ぐ第2の表側通路732とを有する。なお、以下では、第2の表側通路732を回転部間通路という場合がある。キャビティ2の合わせ面22とコア本体4の合わせ面41の一方又は双方には第1の表側通路731を構成する溝が形成される。
【0034】
第2の表側通路732(回転部間通路)は、具体的には、第3の回転中心部72cと第4の回転中心部72dとを繋ぐ。
図5に示すように、第2の表側通路732は、一端が一方の回転中心部72cに接続される第1部分732aと、一端が他方の回転中心部72dに接続される第2部分732bと、第1部分732aと第2部分732bの間に接続される第3部分732cとを有する。第1部分732aと第3部分732cの境界には、第1部分732aから第3部分732cへと形状変化を与える形状変化部732dを有し、この形状変化部732dが第1部分732aと第3部分732cとの接続部となる。また、第2部分732bと第3部分732cの境界には、第2部分732bから第3部分732cへと形状変化を与える形状変化部732eを有し、この形状変化部732eが第2部分732bと第3部分732cとの接続部となる。このように、第2の表側通路732は、途中に形状変化部732d、732eを有する。
【0035】
形状変化部(接続部)732d、732eの形状や幅(第1部分732aと第3部分732cの重複部分の幅、第1部分732aと第3部分732cの重複部分の幅)は、第2の表側通路732に対応する樹脂残留体510(
図14参照)の中間部513(第2の表側通路732の第3部分732cに対応する部分)を押出部材17(
図14参照)で押したときに、形状変化部732d、732eに対応する部分514、515(
図14参照)で切断されるように、設定されている。
【0036】
図5に示すように、第3部分732cの側面732fは抜き勾配が設定されている。具体的には、第3部分732cの、キャビティ2の方を向いた下面732gから、コア本体4の方を向いた上面732hへ接近するにしたがって次第に、側面732f間の幅が小さくなるように、側面732fに勾配が設定されている。言い換えれば、第3部分732cは、
図5の断面で見て、下面732gの幅が上面732hの幅よりも大きい略台形状に形成されている。
【0037】
図1に示すように、裏側通路75は、第1、第2のコア分割部5a、5bの裏側に形成される一方で、第3、第4のコア分割部5c、5dの裏側には形成されていない。また、裏側通路75は、下流側の端部が側面下流側通路76(
図2参照)を介して成形空間6の導入口であるゲート77(
図1、
図2参照)に繋がるゲート導通通路751と、下流側の端部が閉じた閉鎖通路752とを有する。なお、ゲート導通通路751は、裏側通路75のうち、仮にこの通路751が無いとしたならば、成形空間6への溶融樹脂の導入が不能になる通路をいう。また、閉鎖通路752は、裏側通路75のうちゲート導通通路751以外の通路をいい、換言すれば、仮にこの通路752が無いとしても、成形空間6への溶融樹脂の導入が可能である通路をいう。
【0038】
ゲート導通通路751は、
図6に示すように、コア本体4とコア分割部5との合わせ面に形成されている。
図6では、コア本体4の面にゲート導通部751の溝が形成される例を示しているが、コア分割部5の面に該溝が形成されてもよい。ゲート導通通路751は、
図6の断面で見て、側面7512に抜き勾配が設定されている。具体的には、ゲート導通通路751の、コア本体4の方を向いた上面7510から、コア分割部5の方を向いた下面7511へ接近するにしたがって次第に側面7512間の幅が小さくなるように、側面7512に勾配が設定されている。言い換えれば、ゲート導通通路751は、
図6の断面で見て、上面7510の幅が下面7511よりも大きい略台形状に形成されている。
【0039】
ゲート導通通路751の、コア3とキャビティ2の開閉方向と該通路751が延びた方向の双方に直角な方向における最大幅d4(
図6参照)は、閉鎖通路752の、前記開閉方向と該通路752が延びた方向の双方に直角な方向における最大幅d8(
図7参照)と同じである。ただし、ゲート導通通路751の幅d4は、閉鎖通路752の幅d8より大きくてもよい。
【0040】
さらに、ゲート導通通路751は、コア本体4とコア分割部5との合わせ面の位置における幅方向(
図6の左右方向)の端部に、側方(合わせ面に平行な方向)に突出した小幅部7513を有する。小幅部7513はゲート導通通路751の、幅方向における両方の端部に形成されている。小幅部7513は、小幅部7513を流れる溶融樹脂を速やかに固めることで、コア本体4とコア分割部5との合わせ面が射出成形中に開いてしまうのを抑制するための部分である。小幅部7513の、合わせ面に直角な方向における幅d2は、ゲート導通通路751の、該直角な方向における最大幅d1よりも小さい。幅d2は、最大幅d1よりも小さいという条件下で、小幅部7513を流れる溶融樹脂が速やかに固まり、なおかつコア本体4とコア分割部5との合わせ面が開かないように適宜に設定される。また、小幅部7513の、合わせ面に平行な方向における幅d3も、幅d2と同様に、小幅部7513を流れる溶融樹脂が速やかに固まり、なおかつコア本体4とコア分割部5との合わせ面が開かないように適宜に設定される。
【0041】
本実施形態では、1つの成形空間6当たりに、3つのゲート導通通路751が形成されている。つまり、本実施形態では、ゲート77(
図1、
図2参照)が1つの成形空間6当たりに3つ形成されている。上記第1~第3の回転中心部72a~72cの下流に各ゲート導通通路751が設けられる。一方、第4の回転流心部72dの下流にはゲート導通通路751は設けられていない。各ゲート導通通路751は、
図1の平面視で見て、成形空間6の長手方向(長手方向外周線63、64)に交差する方向に延びるように形成されている。
【0042】
閉鎖通路752は、
図7に示すように、コア本体4とコア分割部5との合わせ面に形成されている。
図7では、コア本体4の面に閉鎖通路752の溝が形成される例を示しているが、コア分割部5の面に該溝が形成されてもよい。閉鎖通路752は、ゲート導通通路751と同様に、
図7の断面で見て、側面7522に抜き勾配が設定されており、すなわち上面7520の幅が下面7521よりも大きい略台形状に形成されている。
【0043】
また、閉鎖通路752の幅(閉鎖通路752が延びた方向に直角な方向における幅)はゲート導通通路751の幅(ゲート導通通路751が延びた方向に直角な方向における幅)よりも小さい。より具体的には、閉鎖通路752の、コア本体4とコア分割部5との合わせ面に直角な方向における幅d5(
図7参照)は、ゲート導通通路751の前記直角な方向における幅d1(
図6参照)よりも小さい。なお、幅d1、d5は、
図6、
図7の紙面の上下方向における幅であって、コア3とキャビティ2の開閉方向に平行な方向における幅である。なお、幅d5は幅d1と同じであってもよい。
【0044】
閉鎖通路752の、コア3とキャビティ2の開閉方向と該通路752が延びた方向の双方に直角な方向における幅d8(
図7参照)は、ゲート導通通路751の、前記開閉方向と該通路751が延びた方向の双方に直角な方向における幅d4(
図6参照)と同じである。ただし、これに限定されず、閉鎖通路752の幅d8は、ゲート導通通路751の幅d4よりも小さくてもよいし、反対に大きくてもよい。
【0045】
さらに、閉鎖通路752は、コア本体4とコア分割部5との合わせ面の位置における幅方向(
図7の左右方向)の端部に、側方(合わせ面に平行な方向)に突出した小幅部7523を有する。小幅部7523は閉鎖通路752の、幅方向における両方の端部に形成されている。閉鎖通路752は、小幅部7523を流れる溶融樹脂を速やかに固めることで、コア本体4とコア分割部5との合わせ面が射出成形中に開いてしまうのを抑制するための部分である。小幅部7523の、合わせ面に直角な方向における幅d6は、閉鎖通路752の、該直角な方向における最大幅d5よりも小さい。幅d6は、最大幅d5よりも小さいという条件下で、小幅部7523を流れる溶融樹脂が速やかに固まり、なおかつコア本体4とコア分割部5との合わせ面が開かないように適宜に設定される。また、小幅部7523の、合わせ面に平行な方向における幅d7も、幅d6と同様に、小幅部7523を流れる溶融樹脂が速やかに固まり、なおかつコア本体4とコア分割部5との合わせ面が開かないように適宜に設定される。なお、小幅部7523の幅d6、d7は、ゲート導通通路51の小幅部7513(
図6参照)の幅d2、d3と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
閉鎖通路752は、
図1に示すように、ゲート導通通路751から分岐する形態で設けられる第1の閉鎖通路752aと、ゲート導通通路751を介さずに直接に上記側面上流側通路74(
図2参照)に繋がる第2の閉鎖通路752bとを有する。第2の閉鎖通路752bは、上記第4の回転流心部72dの下流に設けられている。
【0047】
また、裏側通路75は、
図1の平面視で見て、回転中心部72を中心とした円における径方向に延びる径方向通路を有する。上記ゲート導通通路751が径方向通路に設定されている。以下、ゲート導通通路751を径方向通路という場合がある。さらに、裏側通路75は、
図1の平面視で見て、成形空間6の外周に沿った方向に延びる周方向通路を有する。上記第1の閉鎖通路752aが周方向通路に設定されている。また上記第2の閉鎖通路752bの一部が周方向通路に設定されている。以下では、閉鎖通路752を周方向通路という場合がある。周方向通路752は、成形空間6の長手方向に沿って延びている。
【0048】
閉鎖通路752は、1つの径方向通路751から異なる方向に分岐する複数の周方向通路752c、752dを有する。本実施形態では、複数の周方向通路752c、752dが分岐する径方向通路751として、第3の回転中心部72cの下流に設けられるゲート導通通路751が設定される。
【0049】
金型2、3の開閉方向に直角な水平面における領域を径方向通路751を境に第1領域と第2領域とに分けたときに、一方の周方向通路752cは、径方向通路751から第1領域の側(
図1において径方向通路751よりも左側)に分岐している。他方の周方向通路752dは、径方向通路751から第2領域の側(
図1において径方向通路751よりも右側)に分岐している。
【0050】
後述するように、第1~第4の回転中心部72a~72dにはそれぞれ回転軸10(
図2、
図5参照)が接続される。周方向通路752c、752dの上流に位置する第3の回転中心部72cに接続される回転軸10は上昇時に
図1の紙面で時計回りに回転する。その回転方向の前側(径方向通路751よりも前側)に設けられる周方向通路752cは、回転方向の後側に設けられる周方向通路752dよりも長い。
【0051】
また、周方向通路752c、752d以外の周方向通路752(第1、第2、第4の回転中心部72a、72b、72dに繋がる周方向通路)は、回転軸10の回転方向の前側に設けられる。
【0052】
裏側通路75の内壁面のうち、コア分割部5の裏面52の一部を構成する内壁面59(
図2、
図6、
図7参照)の面積S1は、成形空間6の屈曲部空間62の端面53a(
図3参照)の面積S2以上に設定されている。好ましくは、面積S1は面積S2よりも大きい。なお、面積S1は、4つのコア分割部5a~5dの各内壁面59の面積の合計値である。また内壁面59は、ゲート導通通路751又は閉鎖通路752の上面7510、7520(
図6、
図7参照)である。また、面積S2は、4つのコア分割部5a~5dの各端面53aの面積の合計値である。
【0053】
例えば、端面53aの幅d9(
図3参照)が2.5mm、成形空間6の周方向における端面53aの長さが1340mmとすると、端面53aの面積S2は2.5mm×1340mm=3350mm
2となる。内壁面59の面積S2は、裏側通路75(内壁面59)の幅d4、d8(
図6、
図7参照)と、裏側通路75の長さとから定まる。したがって、面積S2が3350mm
2以上となるように、裏側通路75の幅d4、d8及び長さが設定されている。例えば、裏側通路75の幅d4、d8が9mmとすると、裏側通路75の長さは、3350mm
2÷9=372.22mm以上に設定される。本実施形態では、閉鎖通路752(周方向通路)の内壁面59の面積が、端面53aの面積S1以上に設定される。すなわち、閉鎖通路752の面積がS1以上となるように、閉鎖通路752の幅d8及び長さが設定されている。
【0054】
なお、端面53aは、成形空間6に導入された溶融樹脂によりキャビティ2から離れる方向に力が作用する第1作用面として機能する。また、内壁面59は、裏側通路75を流れる溶融樹脂によりキャビティ2に接近する方向に力が作用する第2作用面として機能する。
【0055】
側面下流側通路76(
図2参照)は、裏側通路75のうちのゲート導通通路751に接続されている。側面下流側通路76の、ゲート導通通路751が接続される反対側の端部77が、成形空間6への導入口となるゲートに設定されている。
【0056】
射出成形装置1は、上述の金型2、3に加えて、射出成形後の型開き状態においてコア3に張り付いた成形体30をコア3から押し出すための成形体押出棒状部8、9を備えている(
図2参照)。コア本体4には棒状部8、9が挿通配置される貫通穴が形成されている。棒状部8、9は、コア本体4に引っ込んだ状態(
図2参照)と、コア本体4から突き出た状態(
図15参照)との間で移動可能に設けられる。上記貫通穴は、棒状部8、9の昇降移動をガイドするガイド面として機能する。また、棒状部8、9の一端側は、コア本体4の貫通穴からコア本体4の裏側に突き出ている。
【0057】
棒状部8、9は、コア3側に設けられ、コア分割部5を押し出す(コア分割部5を介して成形体30を押し出す)第1の棒状部8と、成形体30を直接に押し出す第2の棒状部9とを有する。第1の棒状部8は、金型2、3の開閉方向に平行に延びた棒状に形成されている。第1の棒状部8の一端側がコア分割部5の裏面52にボルト、ナット等の締結部材によって固定され、他端側が後述の押出プレート19に接触している。第1の棒状部8は、コア分割部5a~5dごとに設けられている(
図1参照)。具体的には、成形空間6の長手方向に延びた第1、第2のコア分割部5a、5bにあっては、1つのコア分割部5a、5b当たりに2箇所(コア分割部5a、5bの長手方向における両端側)に第1の棒状部8が設けられている。他方、成形空間6の短手方向に延びた第3、第4のコア分割部5c、5dにあっては、1つのコア分割部5c、5d当たりに1箇所に第1の棒状部8が設けられている。
【0058】
第2の棒状部9は、金型2、3の開閉方向に平行に延びた棒状に形成されている。第2の棒状部9の一端は、
図2に示す型閉じ状態において、成形空間6のコア3側の面31の一部を構成する。第2の棒状部9の他端側は押出プレート19に接触している。
【0059】
また、射出成形装置1はコア3側に回転軸10を備えている(
図2、
図5参照)。回転軸10は、金型2、3の開閉方向に平行に延びた軸線Zを有した棒状に形成されている。回転軸10は、その軸線Zが通路7の回転中心部72を交差する位置に設けられる。回転軸10は回転中心部72a~72dごとに設けられる。コア本体4には回転軸10が挿通配置される貫通穴が形成されている。回転軸10は、コア本体4に引っ込んだ状態(
図2参照)と、コア本体4から突き出た状態(
図17参照)との間で移動可能に設けられる。上記貫通穴は、回転軸10の昇降移動をガイドするガイド面として機能する。また、回転軸10の一端側は、コア本体4の貫通穴からコア本体4の裏側に突き出ている。
【0060】
回転軸10の先端が、
図2、
図5に示す型閉じ状態において回転中心部72の内壁面の一部を形成する。さらに、回転軸10の先端には、軸線Zの方向に突出する突出部11が設けられる。突出部11は、先細りする角柱状(例えば四角柱状)に形成されている。突出部11は、
図2、
図5に示す型閉じ状態において、回転中心部72内の空間に位置する。回転軸10の他端は、
図2に示す型閉じ状態において、間隔eをあけて押出プレート19の上面に対面している。回転軸10の他端側は後述の連結部材18に固定されている。
【0061】
さらに、回転軸10の側面には、軸線Zの方向に沿ってガイド溝12が形成されている。ガイド溝12は、上側(突出部11が設けられる側)から、軸線Zに平行に直線状に形成される第1直線部12aと、第1直線部12aの下端に連続して形成される方向変化部12bと、方向変化部12bの下端に連続するとともに軸線Zに平行に直線状に形成される第2直線部12cとを有する。方向変化部12bは、後述のガイド凸部13が、第1直線部12aから方向変化部12bに移行するに伴い、回転軸10を軸線Z回りに所定角度(例えば90°)だけ回転させるように形成される。すなわち、ガイド溝12は、途中の位置(方向変化部12bの位置)にて、軸線Z回りの回転方向に所定角度だけ位置が変わるように形成される。
【0062】
後述するように、回転軸10は、回転軸10がガイド溝12に沿って上昇するに伴い軸線Z回りの方向に回転するが、その上昇時回転方向は、上記周方向通路752(閉鎖通路)が該回転方向の前側の位置するように定められる。具体的には、第1の回転中心部72aの位置に設けられる回転軸10の回転方向は
図1の紙面で時計回りの方向に定められる。第2の回転中心部72bの位置に設けられる回転軸10の回転方向は
図1の紙面で時計回りの方向に定められる。第3の回転中心部72cの位置に設けられる回転軸10の回転方向は、1つの径方向通路751から互いに反対側に分岐する複数の周方向通路752c、752dのうちの長い方の通路752cが該回転方向の前側に位置するように定められ、具体的には
図1の紙面で時計回りの方向に定められる。第4の回転中心部72dの位置に設けられる回転軸10の回転方向は
図1の紙面で反時計回りの方向に定められる。各回転軸10に形成されるガイド溝12の方向変化部12bは、
図1の紙面で時計回りの方向又は反時計回りの方向のうち予め定められた方向に回転軸10を回転させるように形成される。
【0063】
射出成形装置1はコア3側にガイド凸部13を備えている。ガイド凸部13は、コア本体4の裏面側に固定されている。ガイド凸部13は上記ガイド溝12に嵌合しており、具体的には型閉じ状態において第1直線部12aに嵌合している。
【0064】
また、射出成形装置1は、コア3側に、先端部15がアンダーカット形状に形成された第1の残留体押出棒状部14を備えている。棒状部14は、その軸線が金型2、3の開閉方向に平行となるように設けられる。コア本体4には棒状部14が挿通配置される貫通穴が形成されている。棒状部14は、コア本体4に引っ込んだ状態(
図2参照)と、コア本体4から突き出た状態(
図17参照)との間で移動可能に設けられる。上記貫通穴は、棒状部14の昇降移動をガイドするガイド面として機能する。また、棒状棒14の一端側は、コア本体4の貫通穴からコア本体4の裏側に突き出ている。
【0065】
棒状部14の先端部15は、
図2に示す型閉じ状態において裏側通路75に侵入しており、より具体的には、例えばゲート77に繋がる側面下流側通路76と裏側通路75(ゲート導通通路751)との境界部に位置する。棒状部14は、例えば、ゲート77の直下位置に設けられる。ここで、ゲート77の直下位置とは、ゲート77を通る、金型2、3の開閉方向に延びた仮想直線上に棒状部14が位置することをいう。棒状部14は、ゲート77の個数分設けられており、本実施形態では3箇所に設けられている。
【0066】
先端部15は、アンダーカット形状として、棒状部14の軸線に直角な方向における先端部15の幅が、先端部15の先端面に近づくにしたがって徐々に大きくなる楔形状に形成される。棒状部14の他端は、
図2に示す型閉じ状態において、間隔eをあけて押出プレート19の上面に対面している。棒状部14と押出プレート19との間隔eは、回転軸10と押出プレート19との間隔eと同じである。なお、先端部15が本開示の押出阻止部に相当する。
【0067】
射出成形装置1は、
図2に示すように、棒状部14の他端側に接続されたばね部材16を備えている。ばね部材16は、棒状部14がキャビティ2に接近する方向に力を受けたときに、その逆の方向(キャビティ2から離れる方向)に棒状部14を引き込むように付勢する。ばね部材16及び棒状部14は連結部材18に連結されている。
【0068】
上記回転軸10及び棒状部14を第1残留体押出部としたとき、射出成形装置1は、第1残留体押出部10、14に加えて、コア3側に、第2残留体押出部として機能する第2の残留体押出棒状部17(
図5参照)を備えている。棒状部17は、その軸線が金型2、3の開閉方向に平行となるように設けられる。棒状部17は、第2の表側通路732(回転部間通路)の中間部732c(
図5参照)をコア本体4から押し出すための部材である。
図5に示す型閉じ状態において、棒状部17の先端が中間部732cのコア本体4側の内壁面の一部を構成する。コア本体4には棒状部17が挿通配置される貫通穴が形成されている。棒状部17は、コア本体4に引っ込んだ状態(
図5参照)と、コア本体4から突き出た状態(
図16参照)との間で移動可能に設けられる。上記貫通穴は、棒状部17の昇降移動をガイドするガイド面として機能する。また、棒状棒17の一端側は、コア本体4の貫通穴からコア本体4の裏側に突き出て、押出プレート19(
図2参照)に接触している。
【0069】
射出成形装置1は、
図2に示すように、連結部材18と押出プレート19と駆動部20とをさらに備えている。連結部材18は、コア本体4の裏面と押出プレート19の間に配置されて、上記回転軸10、棒状部14及びばね部材16に連結される。押出プレート19は、コア本体4の裏側に配置されて、上記の成形体押出棒状部8、9及び残留体押出部10、14、17をキャビティ2側に押し出すための部材である。押出プレート19は、金型2、3の開閉方向に平行な方向に昇降可能に設けられる。駆動部20は、押出プレート19を昇降させるための部材であり、例えばエアシリンダ、油圧シリンダ等である。
【0070】
なお、第1の成形体棒状部8、押出プレート19及び駆動部20が本開示の制御部に相当する。ゲート導通通路751が第1通路に相当する。閉鎖通路752が第2通路に相当する。また、第1の残留体押出棒状部14、回転軸10、押出プレート19及び駆動部20が第1残留体押出部に相当する。また、回転軸10、ガイド溝12、ガイド凸部13、押出プレート19及び駆動部20が回転部に相当する。また、第2の残留体押出棒状部17、押出プレート19及び駆動部20が第2残留体押出部に相当する。
【0071】
次に、射出成形装置1の動作を説明する。先ず、キャビティ2とコア3とが型閉じ状態(
図2の状態)となる。次に、通路7を介して各成形空間6a、6bに溶融樹脂を射出する。このとき、溶融樹脂は、上流側から通路7のキャビティ側通路71、回転中心部72、表側通路73、側面上流側通路74、裏側通路7、側面下流側通路76、及びゲート77を通って成形空間6に導入される。
図12は溶融樹脂40の射出中の状態を示している。次に、射出空間6に充填された溶融樹脂40を冷却して、
図8~
図11に示す成形体30にする。また、その冷却に伴い、通路7には樹脂残留体が形成される。
【0072】
次に、コア3側の各部材4、5、8、9、10、13、14、16、17、18、19がキャビティ2から離れる方向に移動することで型開き状態となる。
図13、
図14は型開き状態を示している。型開き状態では、成形体30及び樹脂残留体500はコア3に張り付いた状態となる。成形体30と樹脂残留体500とはゲート77の位置で繋がっている。なお、
図13の状態では、第1の残留体押出棒状部14の先端部15(アンダーカット形状部)が樹脂残留体500に食い込んでいる。また、回転軸10の先端突出部11が樹脂残留体500に侵入している。
【0073】
また、樹脂残留体500のうち、2つの回転中心部72c、72d間に形成される部分510(
図14参照)を回転部間残留体として、回転部間残留体510は、一方の回転中心部72cに接続される第1部分511と、他方の回転中心部72dに接続される第2部分512と、これらを繋ぐ中間部513とを含む。第1、第2部分511、512はコア本体4側の溝により形成され、中間部513はキャビティ2側の溝により形成される。
【0074】
次に、駆動部20によって押出プレート19がキャビティ2に接近する方向(
図13の紙面の上方向)に移動する。この移動に伴い、これに当接する成形体押出棒状部8、9(
図13参照)及び第2の残留体押出棒状部17(
図14参照)がキャビティ2に接近する方向(
図13、
図14の紙面の上方向)に同時に移動する。第1の成形体押出棒状部8が上昇することで、これに取り付けられたコア分割部5は、キャビティ2に接近する方向(
図13の紙面の上方向)に移動し、換言すればコア本体4から押し出される。第2の成形体押出棒状部9及びコア分割部5が上昇することで、成形体30はコア本体4から押し出される。また、第2の残留体押出棒状部17が上昇することで、棒状部17に当接する回転部間残留体510の中間部513(
図14参照)はコア本体4から押し出される。
【0075】
一方で、回転軸10及び第1の残留体押出棒状部14は、押出プレート19の上昇開始の時点において押出プレート19との間で距離eが設けられているので、押出プレート19の上昇距離が距離eになるまでは停止したままである。そのため、
図14に示す一部513を除く樹脂残留体500は、第1の残留体押出棒状部14のアンダーカット形状部15及びこの棒状部14を付勢するばね部材16によって、押出プレート19の上昇距離が所定距離eになるまでは、コア本体4から押し出されるのを阻止されて、コア本体4に張り付いたままとなる。これにより、成形体30と樹脂残留体500とは、ゲート77の位置で切断(ゲートカット)される。
図15は、成形体30がコア本体4から押し出され、成形体30から切り離された樹脂残留体500がコア本体4に張り付いた状態を示している。
【0076】
また、
図14に示す回転部間残留体510のうちの中間部513に当接する棒状部17は成形体30(言い換えれば成形体押出棒状部8、9及びコア分割部5)の上昇に同期して上昇する。また回転部間残留体510の両側の部分511、512に接続される回転軸10は、成形体30の押し出し開始時点では停止したままである。したがって、中間部513には棒状部17により押し出し方向に力が作用する一方で、両側の部分511、512は回転軸10に保持されることで、
図16に示すように、中間部513は、両側の部分511、512から切断されて、コア本体4から押し出される。
【0077】
なお、棒状部17の上昇に伴い、回転部間残留体510の両側の部分511、512が回転軸10から外れて、中間部513と一体に押し出されてしまう場合には、両側の部分511、512の押し出しを阻止する部材(例えば第1の残留体押出棒状部14と同様の形状の部材)を、ゲート77付近に設けられる第1の残留体押出棒状部14とは別に設けてもよい。
【0078】
回転軸10及び第1の残留体押出棒状部14は、成形体30の押し出し開始から遅れて押出プレート19に当接することで上昇する。なお、ばね部材16及び連結部材18も、回転軸10及び第1の残留体押出棒状部14とともに上昇する。これにより、樹脂残留体500は、棒状部14のアンダーカット形状部15(先端部)が嵌合した状態でコア本体4から押し出される(
図17参照)。
【0079】
回転軸10は、ガイド凸部13がガイド溝12の第1直線部12aに嵌合しているときには、回転を伴わないで上昇する。その後、回転軸10は、ガイド凸部13がガイド溝12の方向変化部12bに進入したときに、その軸線Z回りの方向に所定角度だけ回転しながら上昇する。この回転に伴い、樹脂残留体500も回転する。この回転に伴い、樹脂残留体500はアンダーカット形状部15から外れる。なお、アンダーカット形状部15は、回転軸10の回転により樹脂残留体500が外れる形状に形成されている。
【0080】
また、樹脂残留体500の全体がコア本体4のパーティングライン(合わせ面)よりもキャビティ2側に押し出されたときに回転軸10が回転するように、方向変化部12bの位置が設定されている。これにより、樹脂残留体500が回転する際に樹脂残留体500とコア本体4とが接触してしまうのを抑制できる。
【0081】
その後、ガイド凸部13が方向変化部12bから第2直線部12cに進入すると、回転軸10は回転を止めた状態で上昇する。
【0082】
コア本体4から押し出された成形体30及び樹脂残留体500はロボットアームなどで回収される。
【0083】
以下本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、成形空間6の外周全周を取り囲むようにコア分割部5が設けられ、このコア分割部5の裏面に溶融樹脂を成形空間に導入するための通路75(裏側通路)が設けられるので、溶融樹脂の射出中に裏側通路75を流れる溶融樹脂の圧力P1(
図12参照)をコア分割部5に作用させることができる。この圧力P1は、コア分割部5に対してキャビティ2側の方向に作用する。これにより、コア分割部5とキャビティ2との合わせ面が射出中に開いてしまうのを抑制できる。よって、成形体30の、コア分割部5とキャビティ2との合わせ面に対応する位置に、バリが形成されてしまうのを抑制できる。また、バリの発生を抑制できることで、溶融樹脂の圧力を上げることができる。これにより、成形体30に面歪、ヒケなどが生じてしまうのを抑制でき、成形体30の外観品質を向上できる。
【0084】
なお、コア分割部5には、成形空間6に導入された溶融樹脂によって、キャビティ2から離れる方向の圧力P2(
図12参照)も作用する。この圧力P2は成形空間6の端面53a(
図3参照)に作用する。しかし、キャビティ2に接近する方向の圧力P1が作用する面積S1は、キャビティ2から離れる方向の圧力P2が作用する面積S2以上に設定されるので、コア分割部5に対してキャビティ2に接近する方向に作用する荷重F1(=P1×S1)を、キャビティ2から離れる方向に作用する荷重F2(=P2×S2)と同等以上にできる。これにより、コア分割部5とキャビティ2との合わせ面が射出中に開いてしまうのをより一層抑制できる。なお、一般的に、溶融樹脂の圧力は下流よりも上流のほうが大きい。つまり、圧力P2が作用する成形空間6の端面53a(
図3参照)よりも、圧力P1が作用する裏側通路75の面のほうが上流に位置するので、圧力P1は圧力P2よりも大きいと予想できる。この場合、圧力P1が作用する面積S1と、圧力P2が作用する面積S2とが同じであったとしても、上記荷重F1は上記荷重F2よりも大きくなる。
【0085】
また、射出成形中にコア分割部5とキャビティ2との合わせ面が開いてしまうのを抑制できることで、射出成形装置1の型締め力を抑えることができ、型締め力が小さい(換言すればサイズが小さい)射出成形装置1を採用できる。または、成形空間6の個数が複数(本実施形態では2つ)の射出成形装置1を採用できる。
【0086】
また、裏側通路75は複数に分割されたコア分割部5a~5dの一部5a、5bに形成され、残部5c、5dには形成されないので、裏側通路75を含む通路7の構成を簡素化できる。
【0087】
また、裏側通路75を有した通路有分割部5X(5a、5b)と、裏側通路75が無い通路無分割部5Y(5c、5d)とは
図4に示すように嵌合しているので、通路有分割部5Xに作用する上記荷重F1を、通路無分割部5Yにも作用させることができる。これにより、成形空間6の外周全周に亘ってコア分割部5とキャビティ2との合わせ面が射出中に開いてしまうのを抑制できる。よって、成形体30の外周全周に対してバリの発生を抑制できる。
【0088】
また、裏側通路75は、ゲート77に導通したゲート導通通路751の他に、一端が閉鎖した閉鎖通路752を有するので、コア分割部5の裏側の広範囲に溶融樹脂の圧力を作用させることができる。これにより、コア分割部5とキャビティ2との合わせ面が開いてしまうのをより一層抑制できる。
【0089】
また、閉鎖通路752は、成形空間6の周方向に沿って延びるように形成されるので、成形空間6の周方向の広範囲にわたって、溶融樹脂の圧力をコア分割部5に作用させることができる。これにより、成形空間6の周方向における部分的にコア分割部5とキャビティ2との合わせ面が開いてしまうのを抑制できる。
【0090】
また、ゲート導通通路751及び閉鎖通路752はそれぞれ、通路有分割部5a、5b、1つ当たりに複数箇所に設けられるので、通路有分割部5a、5bの広範囲に溶融樹脂の圧力を作用させることができる。これにより、コア分割部5とキャビティ2との合わせ面が開いてしまうのをより一層抑制できる。
【0091】
また、閉鎖通路752は、1つのゲート導通通路751から異なる方向に分岐した複数の通路752c、752dを有するので(
図1参照)、コア分割部5の広範囲に溶融樹脂の圧力を作用させることができる。これにより、コア分割部5とキャビティ2との合わせ面が開いてしまうのをより一層抑制できる。
【0092】
また、閉鎖通路752の幅d5(
図7参照)はゲート導通通路751の幅d1(
図6参照)よりも小さいので、通路7を流れる溶融樹脂の量を抑えることができる。また樹脂残留体500の重量を抑えることができる。
【0093】
また、通路7は、2つの回転中心部72c、72d間に形成される回転部間通路732を有しているので(
図1、
図5参照)、その回転部間通路732を経由して裏側通路75を複数箇所に分散させることができる。これにより、コア分割部5の広範囲に溶融樹脂の圧力を作用させることができる。また、1つの回転軸10で回転させる樹脂残留体500が長くなりすぎてしまうのを抑制でき、回転時に樹脂残留体500が射出成形装置1の部材(成形体押出棒状部9など)に接触してしまうのを抑制できる。
【0094】
また、樹脂残留体500のうち、回転部間通路732に対応する樹脂残留体510の中間部513は先にコア本体4から押し出されるので(
図16参照)、回転前に樹脂残留体510を切断でき、樹脂残留体510の両側に位置する2つの回転軸10を回転させることができる。
【0095】
図5に示すように、回転部間通路732の両側の部分732a、732bはコア本体4側に形成される一方で、中間部732cはキャビティ2側に形成されることで、両側の部分732a、732bと中間部732cとの境界に形状変化部732d、732eが形成される。中間部732cに残留した樹脂残留体513(
図14参照)を棒状部17で押し出すときに、形状変化部732d、732eに応力を集中させることができ、この形状変化部732d、732eの位置で樹脂残留体513を切断できる。
【0096】
また、回転部間通路732の中間部732cは抜き勾配が形成されているので、射出成形後にコア3がキャビティ2から型開きする際に、中間部732cに残留した樹脂残留体513がキャビティ2に張り付いたままとなるのを抑制できる。
【0097】
また、樹脂残留体500はコア本体4から押し出された後に回転軸10で回転されるので、樹脂残留体500に食い込んだアンダーカット形状部15を外すことができ、その後の樹脂残留体500の回収が容易となる。また、樹脂残留体500が回転することで、水平方向におけるコア分割部5の外側に樹脂残留体500を位置させることができ、その後の樹脂残留体500の回収が容易となる。
【0098】
また、各回転軸10の回転方向は、樹脂残留体500のうちの周方向通路(閉鎖通路)752に対応する部分が回転方向の前側となるように設定されるので、回転軸10の回転時に、樹脂残留体500の、周方向通路752に対応する部分を速やかにコア分割部5の外側に退避させることができ、該部分が、成形体押出棒状部9(
図2参照)などの部材に接触してしまうのを抑制できる。
【0099】
また、互いに反対側に延びた閉鎖通路752c、752dに対応する樹脂残留体500を1つの回転軸10で回転させるので、回転軸10の個数を抑えることができる。また、閉鎖通路752c、752dに対応する樹脂残留体500を回転させる回転軸10の回転方向は、長い方の閉鎖通路752cが回転方向前側に位置するように定められるので、回転時に樹脂残留体500が成形体押出棒状部9(
図2参照)などの部材に接触してしまうのを抑制できる。
【0100】
また、
図6、
図7に示すように、裏側通路75(ゲート導通通路751及び閉鎖通路752)の端部に小幅部7513、7523が形成されるので、小幅部7513、7523を流れる溶融樹脂が速やかに固まり、この固化した樹脂がシールとなることで、コア本体4とコア分割部5との合わせ面が開いてしまうのを抑制でき、樹脂残留体500にバリが発生するのを抑制できる。
【0101】
また、成形体30をコア本体4から押し出すときには、コア分割部5が直接に成形体30を押すので、成形体30の押し出し中にゲートカットを行うことができる。また、コア分割部5は、ゲート77が位置する成形体30の端面303(
図9、
図10参照)を押すので、ゲート77に直近の位置を押すことができ、成形体30と樹脂残留体500とをゲート77の位置で切断しやすくできる。
【0102】
また、回転軸10に形成されたガイド溝12とこれに嵌合するガイド凸部13により回転軸10を回転させるので、モータ等の電動部を設けなくても回転軸10を回転させることができ、射出成形装置1の電気的構成を簡素化できる。
【0103】
なお、本開示は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。上記実施形態では、複数に分割されたコア分割部5a~5dの一部5a、5bに裏側通路75が形成された例を示したが、全部5a~5dに裏側通路75が形成されてもよい。またこの場合には、
図4に示す嵌合部57、58が形成されなくてもよい。これによっても、コア分割部5とキャビティ2との合わせ面が開いてしまうのを抑制できる。
【0104】
また、上記実施形態では、コア分割部5が4つに分割された例を示したが、何個に分割されてもよいし、分割されずに単一のコア分割部で成形空間6の外周全周を取り囲んでもよい。
【0105】
また、ゲートカットの方法や樹脂残留体500をコア本体4から取り出す方法は上記実施形態に限定されずにいずれの方法でもよい。例えば上記実施形態では、コア分割部5及び成形体押出棒状部9により成形体30を押し出すとともに、棒状部14の先端のアンダーカット形状部15及びこれを付勢するばね部材16で樹脂残留体500の押し出しを阻止することでゲートカットを行っていたが、以下のようにゲートカットを行ってもよい。すなわち、成形体30の押し出しを成形体押出棒状部9のみで行い、成形体30の押し出し開始時にはコア分割部5を停止させておくことで、コア分割部5で樹脂残留体500の押し出しを阻止する。これによっても、成形体30の押し出し中にゲートカットを行うことができる。この場合、ゲートカット後に、コア分割部5をコア本体4から退避させることで、樹脂残留体500をコア本体4から取り出すことができる。
【0106】
また、上記実施形態では、回転軸10に形成されたガイド溝12とこれに嵌合するガイド凸部13により回転軸10を回転させていたが、モータ等の電動部で回転軸10を回転させてもよい。
【0107】
また上記実施形態では、2つの成形空間6を有した射出成形装置1を例示したが、成形空間の個数は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 射出成形装置
2 キャビティ
3 コア
4 コア本体
5 コア分割部
6 成形空間
7 通路
75 裏側通路
8 第1の成形体押出棒状部
19 押出プレート
20 駆動部