(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018841
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ロータリーダンパ及び自動車用ブレーキペダル
(51)【国際特許分類】
F16F 9/12 20060101AFI20220120BHJP
B60T 7/06 20060101ALI20220120BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20220120BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20220120BHJP
【FI】
F16F9/12
B60T7/06 G
G05G1/30 E
G05G5/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122225
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 良太
【テーマコード(参考)】
3D124
3J069
3J070
【Fターム(参考)】
3D124AA33
3D124BB01
3D124CC31
3D124CC46
3D124DD21
3D124DD27
3J069AA41
3J069BB10
3J069DD26
3J070AA32
3J070BA17
3J070CB02
3J070CD12
3J070DA01
(57)【要約】
【課題】シリンダー又はローターの回転に従ってシリンダー又はローターの回転に作用する抵抗を変化させる。
【解決手段】本発明は、シリンダー51、前記シリンダー51に固定されるプレート52、前記プレート52の上面と向かい合う下面を有するローター53、前記プレート52の上面と前記ローター53の下面との間隙に存する粘性体、及び前記ローター53に圧力を加えて前記ローター53と前記粘性体との間に摩擦を発生させる加圧手段を備え、前記加圧手段の圧力が前記シリンダー51又は前記ローター53の一方向の回転に従って減少するロータリーダンパ50を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー、前記シリンダーに固定されるプレート、前記プレートの上面と向かい合う下面を有するローター、前記プレートの上面と前記ローターの下面との間隙に存する粘性体、及び前記ローターに圧力を加えて前記ローターと前記粘性体との間に摩擦を発生させる加圧手段を備え、前記加圧手段の圧力が前記シリンダー又は前記ローターの一方向の回転に従って減少するロータリーダンパ。
【請求項2】
前記加圧手段が、ピストン、前記ピストンと前記ローターとの間に存する弾性体、及び前記シリンダー又は前記ローターの回転運動を前記ピストンの直線運動に変換する変換手段を備える請求項1に記載のロータリーダンパ。
【請求項3】
前記ローター及び前記ピストンのいずれか一方に形成される凹部、前記ローター及び前記ピストンのいずれか他方に形成され、前記凹部と嵌合する凸部、並びに前記凹部と前記凸部との間隙に存する粘性体を備える請求項2に記載のロータリーダンパ。
【請求項4】
前記粘性体が半固体である請求項1又は3に記載のロータリーダンパ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のロータリーダンパを備える自動車用ブレーキペダル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパ及びロータリーダンパを備える自動車用ブレーキペダルに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、自動車の停止状態を維持するパーキングブレーキのブレーキペダル(以下、停止用ブレーキペダルという。)を開示している。この停止用ブレーキペダルは、停止用ブレーキペダルの復帰速度を減速させるためのロータリーダンパを備えている。ロータリーダンパは、内筒の周りで回転する外筒、内筒と外筒との間隙に存する粘性体、及び外筒に外力を伝達して外筒を回転させる伝達手段を備えている。
【0003】
しかしながら、このロータリーダンパでは、停止用ブレーキペダルが復帰するときに外筒に作用する伝達手段の圧力が外筒と伝達手段との摩擦を発生させるために利用されているに過ぎない。したがって、外筒の回転動作に作用する抵抗は、粘性体の粘性抵抗及び剪断抵抗であり、これらの抵抗は、外筒に作用する伝達手段の圧力とは無関係に、外筒の回転によって一定の大きさで発生する。それ故、停止用ブレーキペダルの復帰動作がその開始から終了まで一定の速度で為されるので、停止用ブレーキペダルの復帰が遅いという問題がある。
【0004】
このような特性は、自動車の走行速度を減速するブレーキのブレーキペダル(以下、減速用ブレーキペダルという。)には不向きである。減速用ブレーキペダルは、素速く復帰することが求められるからである。しかしながら、減速用ブレーキペダルでは、減速用ブレーキペダルの復帰が速いために、共に減速用ブレーキペダルを構成するアームとストッパが減速用ブレーキペダルの復帰動作の終点で衝突したときに異音が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、シリンダー又はローターの回転に従ってシリンダー又はローターの回転に作用する抵抗を変化させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、シリンダー、前記シリンダーに固定されるプレート、前記プレートの上面と向かい合う下面を有するローター、前記プレートの上面と前記ローターの下面との間隙に存する粘性体、及び前記ローターに圧力を加えて前記ローターと前記粘性体との間に摩擦を発生させる加圧手段を備え、前記加圧手段の圧力が前記シリンダー又は前記ローターの一方向の回転に従って減少するロータリーダンパ及びそのようなロータリーダンパを備える自動車用ブレーキペダルを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリンダー、前記シリンダーに固定されるプレート、前記プレートの上面と向かい合う下面を有するローター、前記プレートの上面と前記ローターの下面との間隙に存する粘性体を備えるため、前記粘性体の粘性抵抗及び剪断抵抗が前記シリンダー又は前記ローターの回転によって前記プレートの上面と前記ローターの下面との間隙で発生する。また、本発明によれば、前記ローターに圧力を加えて前記ローターと前記粘性体との間に摩擦を発生させる加圧手段を備えるため、前記粘性体の粘性抵抗及び剪断抵抗に加えて摩擦抵抗が発生する。さらに、本発明によれば、前記加圧手段の圧力が前記シリンダー又は前記ローターの一方向の回転に従って減少するため、前記摩擦抵抗が前記シリンダー又は前記ローターの一方向の回転に従って小さくなる。よって、本発明によれば、前記シリンダー又は前記ローターの回転に従って前記シリンダー又は前記ローターの回転に作用する抵抗を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例に係るブレーキペダルの側面図である。
【
図2】
図2は、実施例で採用したロータリーダンパの縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施例で採用したローターの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例で採用したローターの縦断面図である。
【
図5】
図5は、実施例で採用したピストンの斜視図である。
【
図6】
図6は、実施例で採用したピストンの縦断面図である。
【
図7】
図7は、実施例で採用した変換手段の斜視図である。
【
図8】
図8は、実施例で採用した変換手段の縦断面図である。
【
図9】
図9は、実施例で採用したロータリーダンパの動作を説明するための縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。なお、本発明に係る自動車用ブレーキペダルは、減速用ブレーキペダル及び停止用ブレーキペダルの両方を含む。
【実施例0011】
実施例に係る自動車用ブレーキペダルは、減速用ブレーキペダルであり、
図1に示したように、アーム10、シャフト20、ブラケット30、パッド40、付勢手段(図示せず)、ストッパ(図示せず)及びロータリーダンパ50を備えている。
【0012】
アーム10は、付勢手段によって、後方に回転するように付勢されている。アーム10は、アーム10の下端部に連結されたパッド40を足で踏むことによって、ブラケット30に支持されたシャフト20を中心として前方に回転する。前方に回転したアーム10は、パッド40から足を離す又は踏力が低下することによって、シャフト20を中心として後方に回転する。
【0013】
シャフト20は、アーム10の上端部に連結されている。
【0014】
ストッパは、アーム10の後方への回転を所定位置で停止させるために設置されている。後方へ回転するアーム10は、ストッパに衝突することによって停止する。
【0015】
ロータリーダンパ50は、アーム10及びシャフト20に連結されている。
【0016】
実施例で採用したロータリーダンパ50は、
図2に示したように、シリンダー51、プレート52、ローター53、粘性体及び加圧手段を備えている。
【0017】
シリンダー51は、
図1に示したように、アーム10に連結されるフランジ51aを有している。
【0018】
プレート52は、シリンダー51に固定されている。プレートは、例えば、シリンダーの端壁として、シリンダーと一体に成形されたものであってもよい。プレート52は、
図2に示したように、ローター53の下面53aと向かい合う上面52aを有する大径部52b、大径部52bより小さい外径を有する小径部52c及びプレート52を貫通する孔部52dを有している。
【0019】
ローター53は、プレート52の上面52aと向かい合う下面53aを有している。ローター53は、
図3及び
図4に示したように、下面53aと交わる外周面を有する大径部53b、大径部53bより小さい外径を有する小径部53c、ローター53を貫通する孔部53d及びプレート52の小径部52cと嵌合する環状溝53eを有している。大径部53bは、共に上面に形成される環状の凹部53f及び環状の溝53gを有している。ローター53は、シリンダー51の中で回転できるように設置されるが、実施例では、ローター53が孔部53dに挿入されるシャフト20に連結されるため、使用時にローター53は回転しない。実施例では、ローター53に代えてアーム10に連結されるシリンダー51がローター53の周りで回転する。
【0020】
粘性体は、プレート52の上面52aとローター53の下面53aとの間に存在している。実施例で採用した粘性体は、グリースである。グリースは、半固体であり、外部に漏れ難いという利点がある。半固体状の粘性体に代えて液状の粘性体(例えば、オイル)を採用してもよい。粘性体としてオイルを使用した場合には、外部に漏れ易いという問題がある。これを防止するため、Oリング等のシールが適所に配置される。しかしながら、シールの寿命がブレーキペダルの寿命と比較して短いため、シールを使用してもブレーキペダルの長期間の使用によってオイル漏れが発生するおそれがある。それ故、ブレーキペダルに適用されるロータリーダンパでは、シールを使用しなくても外部に漏れ難いグリースのような半固体状の粘性体を採用することが好ましい。
【0021】
加圧手段は、ローター53に圧力を加えてローター53の下面53aと粘性体との間に摩擦を発生させる手段である。加圧手段の構造は、そのような作用をもたらす構造である限り、例示の構造に限定されない。
【0022】
実施例で採用した加圧手段は、
図2に示したように、ピストン54、弾性体55及び変換手段56を備えている。
【0023】
ピストン54は、シリンダー51の中にあって直線的に往復運動する部材である。実施例で採用したピストン54は、
図5及び
図6に示したように、大径部54a、大径部54aより小さい外径を有する小径部54b、大径部54aの上端に形成されるカム受け面54c、大径部54aの下端から突出する環状の凸部54d、大径部54aの下端に形成される溝54e、大径部54aの周囲に形成される突起54f及びピストン54を貫通する孔部54gを有している。
【0024】
突起54fは、シリンダー51の内周面に形成される案内溝(図示せず)に嵌め込まれ、それにより、ピストン54は、シリンダー51と一緒に回転するようになっている。
【0025】
ピストン54に形成された凸部54dは、ローター53に形成された凹部53fに嵌合する。なお、ローターに凸部を形成し、ピストンに凹部を形成してもよい。凹部53fと凸部54dとの間隙には、粘性体が存在している。粘性体は、半固体であることが好ましい。実施例では、粘性体としてグリースを用いている。液状の粘性体を採用する場合には、粘性体が移動できるように、ピストンなどに流路が形成される。
【0026】
弾性体55は、圧縮の荷重を受けて弾力を発生する部材であり、ピストン54とローター53との間に設置される。実施例で採用した弾性体55は、コイルの内径がピストン54の小径部54bの外径より大きい圧縮コイルばねである。弾性体55のコイルの中には、ローター53の小径部54bが挿入されている。弾性体55の一端は、ローター53に形成された溝53gの底に接触し、弾性体55の他端は、ピストン54に形成された溝54eの底に接触している。
【0027】
変換手段56は、シリンダー51又はローター53の回転運動をピストン54の直線運動に変換する手段である。実施例で採用した変換手段56は、
図7及び
図8に示したように、大径部56a、大径部56aより小さい外径を有する小径部56b、大径部56aに形成されるカム56c、小径部56bの周囲に形成され、ピストン54の小径部54bと嵌合する環状溝56d及び変換手段56を貫通する孔部56eを有している。
【0028】
カム56cは、ピストン54に形成されたカム受け面54cと接触することによって、ピストン54を上下動させるものである。実施例では、弾性体55の弾力によって、カム56cがカム受け面54cに常に接触している。ローターが回転する場合には、カムが回転運動する。しかしながら、実施例では、変換手段56が孔部56eに挿入されるシャフト20に連結されるため、使用時に変換手段56は回転しない。したがって、カム56cは回転運動しないが、ピストン54の回転によってカム受け面54cがカム56cに接触しながら回転する。それにより、シリンダー51が一方向へ回転するときは、その回転に従って、ピストン54が上昇(ピストン54がローター53から離れる方向へ直線的に移動)し、シリンダー51が逆方向へ回転するときは、その回転に従って、ピストン54が下降(ピストン54がローター53に接近する方向へ直線的に移動)する。
【0029】
実施例に係る自動車用ブレーキペダルは、以下のように動作する。すなわち、自動車を減速させるために、足でパッド40を踏むと、アーム10が初期位置から前方へ回転する。アーム10の回転角度は、最大で約40°である。このとき、ロータリーダンパ50のシリンダー51が一方向へ回転する。シリンダー51の回転によってプレート52が回転するため、粘性体の粘性抵抗及び剪断抵抗がプレート52の上面52aとローター53の下面53aとの間隙で発生する。また、アーム10が初期位置にあるときは、弾性体55によってローター53が強く押されているため、シリンダー51の回転にローター53の下面と粘性体との間で発生する摩擦が抵抗として作用する。しかしながら、ロータリーダンパ50の変換手段56によってピストン54が上昇し、これに伴い弾性体55の弾力が低下する、すなわち、加圧手段の圧力がシリンダー51の一方向の回転に従って減少するため、シリンダー51の回転に従って摩擦抵抗が低下し、その結果、シリンダー51に作用する抵抗が変化する。また、アーム10が初期位置にあるときは、ピストン54の凸部54dがローター53の凹部53fに深く進入しているため、凸部54dと凹部53fとの間隙で粘性体の粘性抵抗及び剪断抵抗が発生する。しかしながら、ロータリーダンパ50の変換手段56によってピストン54が上昇し、これに伴い凸部54dの凹部53fへの進入が浅くなるため、シリンダー51の回転に従って凸部54dと凹部53fとの間隙で発生する粘性体の粘性抵抗及び剪断抵抗が低下し、その結果、シリンダー51に作用する抵抗が変化する。
図9は、ピストン54が最も上昇したときのロータリーダンパ50の内部構造を示している。実施例で採用したロータリーダンパ50によれば、シリンダー51の回転に従ってシリンダー51の回転に作用する抵抗を上記のように変化させることができるので、アーム10の前方への回転に従ってアーム10に作用する抵抗を小さくできる。
【0030】
一方、パッド40から足を離す又は踏力が低下すると、アーム10が後方へ回転する。このとき、ロータリーダンパ50のシリンダー51が逆方向へ回転する。シリンダー51の回転によってプレート52が回転するため、粘性体の粘性抵抗及び剪断抵抗がプレート52の上面とローター53の下面との間隙で発生する。また、変換手段56によってピストン54が下降し、これに伴い弾性体55の弾力が増大する、すなわち、加圧手段の圧力がシリンダー51の逆方向の回転に従って増大するするため、シリンダー51の回転に従って摩擦抵抗が増大し、その結果、シリンダー51に作用する抵抗が変化する。また、凸部54dの凹部53fへの進入が深くなるため、シリンダー51の回転に従って凸部54dと凹部53fとの間隙で発生する粘性体の粘性抵抗及び剪断抵抗が増大し、その結果、シリンダー51に作用する抵抗が変化する。実施例で採用したロータリーダンパ50によれば、シリンダー51の回転に従ってシリンダー51の回転に作用する抵抗を上記のように変化させることができるので、アーム10の後方への回転に従ってアーム10に作用する抵抗を大きくできる。このようにアーム10が復帰する際の抵抗が一定でないため、アーム10は初期位置に素速く復帰できる。一方、アーム10は、初期位置に復帰するときにストッパに衝突するが、アーム10に作用する抵抗は、アーム10がストッパに衝突する直前に最大となるため、衝突時の異音の発生を抑えることができる。