(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188411
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】位相シフタ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/025 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
G02F1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096415
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 清太
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA17
2K102BA01
2K102BB04
2K102BC05
2K102BD09
2K102CA00
2K102DA04
2K102DC08
2K102DD03
2K102EA02
2K102EA16
2K102EA17
(57)【要約】
【課題】導波路のピッチを小さくすることが可能な位相シフタを提供する。
【解決手段】光導波領域1aとコンタクト領域1bとは、交互に並んでおり、光導波領域1aは、第1、第2導波路18a、18bを含み、コンタクト領域1bは、第1導波路18aにキャリアを注入するための第1p型コンタクト部20aおよび第1n型コンタクト部22aと、第2導波路18bにキャリアを注入するための第2p型コンタクト部20bおよび第2n型コンタクト部22bと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(11)に形成された導波路(18)にキャリアを蓄積することにより、前記導波路を伝搬する光の位相を変調する位相シフタであって、
前記導波路を含む複数の光導波領域(1a)と、
キャリアを前記導波路に注入するための電極に前記導波路を接続するコンタクト部(20、22)を含む複数のコンタクト領域(1b)と、
前記導波路と前記コンタクト部とを電気的に接続する配線部(13、16)と、を備え、
前記光導波領域は、2つの前記導波路を含み、
前記導波路の長手方向をx方向とし、
前記x方向に垂直でかつ前記基板の表面に平行な方向をy方向として、
前記光導波領域と前記コンタクト領域とは、前記y方向において交互に並んでおり、
前記光導波領域に含まれる2つの前記導波路のうち、前記コンタクト領域に前記y方向の一方側から隣接する導波路を第1導波路(18a)とし、前記コンタクト領域に前記y方向の他方側から隣接する導波路を第2導波路(18b)として、
前記コンタクト領域は、
前記第1導波路にキャリアを注入するための電極に接続された、p型半導体で構成された第1p型コンタクト部(20a)、および、n型半導体で構成された第1n型コンタクト部(22a)と、
前記第2導波路にキャリアを注入するための電極に接続された、p型半導体で構成された第2p型コンタクト部(20b)、および、n型半導体で構成された第2n型コンタクト部(22b)と、を含む位相シフタ。
【請求項2】
前記コンタクト領域は、前記第1p型コンタクト部、前記第1n型コンタクト部、前記第2p型コンタクト部、前記第2n型コンタクト部をそれぞれ複数含み、
前記第1p型コンタクト部と前記第1n型コンタクト部とは、前記x方向において交互に一列に並んでおり、
前記第2p型コンタクト部と前記第2n型コンタクト部とは、前記x方向において交互に一列に並んでいる請求項1に記載の位相シフタ。
【請求項3】
前記第1p型コンタクト部、前記第1n型コンタクト部、前記第2p型コンタクト部、前記第2n型コンタクト部は、前記x方向において、前記第1p型コンタクト部、前記第2p型コンタクト部、前記第1n型コンタクト部、前記第2n型コンタクト部の順に、一列に並んでいる請求項1に記載の位相シフタ。
【請求項4】
前記第1p型コンタクト部と前記第2p型コンタクト部とは、前記x方向において交互に一列に並んでおり、
前記第1n型コンタクト部は、前記第1導波路と、前記第1p型コンタクト部および前記第2p型コンタクト部の列との間に配置されており、
前記第2n型コンタクト部は、前記第2導波路と、前記第1p型コンタクト部および前記第2p型コンタクト部の列との間に配置されており、
前記第1n型コンタクト部および前記第2n型コンタクト部は、前記第1導波路および前記第2導波路よりも前記基板から遠い位置に配置されている請求項1に記載の位相シフタ。
【請求項5】
前記第1n型コンタクト部と前記第2n型コンタクト部とは、前記x方向において交互に一列に並んでおり、
前記第1p型コンタクト部は、前記第1導波路と、前記第1n型コンタクト部および前記第2n型コンタクト部の列との間に配置されており、
前記第2p型コンタクト部は、前記第2導波路と、前記第1n型コンタクト部および前記第2n型コンタクト部の列との間に配置されており、
前記第1p型コンタクト部および前記第2p型コンタクト部は、前記第1導波路および前記第2導波路よりも前記基板から遠い位置に配置されている請求項1に記載の位相シフタ。
【請求項6】
前記配線部のうち、前記導波路と前記第1p型コンタクト部、前記第2p型コンタクト部とを接続する部分は、p型シリコンまたはp型SiGeで構成されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の位相シフタ。
【請求項7】
前記配線部のうち、前記導波路と前記第1n型コンタクト部、前記第2n型コンタクト部とを接続する部分は、n型のIII-V族半導体で構成されている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の位相シフタ。
【請求項8】
前記配線部のうち、前記導波路と前記第1n型コンタクト部、前記第2n型コンタクト部とを接続する部分は、InPまたはInGaAsPで構成されている請求項7に記載の位相シフタ。
【請求項9】
前記配線部のうち、前記導波路と前記第1n型コンタクト部、前記第2n型コンタクト部とを接続する部分は、n型シリコンで構成されている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の位相シフタ。
【請求項10】
前記導波路はリブ導波路とされている請求項1ないし9のいずれか1つに記載の位相シフタ。
【請求項11】
前記導波路を分割するクラッド層(14)はエアクラッドとされている請求項10に記載の位相シフタ。
【請求項12】
前記導波路は、p型半導体およびn型半導体と、該p型半導体およびn型半導体の間に配置された絶縁層(15)とで構成されている請求項1ないし11のいずれか1つに記載の位相シフタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の位相を変調する位相シフタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数並んだ導波路から出射する光の位相をそれぞれ調整して、全体での光の指向性を制御するLiDAR等のレーザ装置では、例えば、導波路の屈折率を変化させることによって光の位相を調整する位相シフタが用いられる。LiDARはLight Detection And Rangingの略である。このような位相シフタを用いたレーザ装置では、導波路のピッチが小さいほど、出射角度の上限が大きくなる。
【0003】
例えば特許文献1では、導波路に接続された電極に電圧を印加することにより、導波路にキャリアを蓄積させて、導波路の屈折率を変化させる位相シフタが提案されている。この位相シフタでは、導波路を含む導波領域と、電極および電極を導波路に接続するためのコンタクト部を含むコンタクト領域とが交互に並んでいる。そして、複数の導波領域にはそれぞれ導波路が1つのみ形成されており、各コンタクト領域では電極が導波路に沿って一列に並んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導波路と電極との距離は、導波路を伝搬する光が隣接する電極に吸収されるのを抑制するために、ある程度大きくする必要がある。したがって、このように導波路と電極とが交互に並んだ構成では、導波路のピッチが大きくなり、出射角度の上限が小さくなる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、導波路のピッチを小さくすることが可能な位相シフタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基板(11)に形成された導波路(18)にキャリアを蓄積することにより、導波路を伝搬する光の位相を変調する位相シフタであって、導波路を含む複数の光導波領域(1a)と、キャリアを導波路に注入するための電極に導波路を接続するコンタクト部(20、22)を含む複数のコンタクト領域(1b)と、導波路とコンタクト部とを電気的に接続する配線部(13、16)と、を備え、光導波領域は、2つの導波路を含み、導波路の長手方向をx方向とし、x方向に垂直でかつ基板の表面に平行な方向をy方向として、光導波領域とコンタクト領域とは、y方向において交互に並んでおり、光導波領域に含まれる2つの導波路のうち、コンタクト領域にy方向の一方側から隣接する導波路を第1導波路(18a)とし、コンタクト領域にy方向の他方側から隣接する導波路を第2導波路(18b)として、コンタクト領域は、第1導波路にキャリアを注入するための電極に接続された、p型半導体で構成された第1p型コンタクト部(20a)、および、n型半導体で構成された第1n型コンタクト部(22a)と、第2導波路にキャリアを注入するための電極に接続された、p型半導体で構成された第2p型コンタクト部(20b)、および、n型半導体で構成された第2n型コンタクト部(22b)と、を含む。
【0008】
導波路間の光結合による光損失は、電極への光吸収による光損失に比べて小さいため、導波路間の距離は導波路と電極との距離よりも小さくすることが可能である。したがって、このように2つの導波路が隣接するように導波路、p型コンタクト部、n型コンタクト部を並べることで、1つの導波路あたりのピッチを小さくすることが可能となる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態にかかる位相シフタの上面図である。
【
図5】縦型の比較例における
図4のV-V断面図である。
【
図6】横型の比較例における
図4のV-V断面図である。
【
図7】第2実施形態にかかる位相シフタの上面図である。
【
図10】第3実施形態にかかる位相シフタの上面図である。
【
図13】他の実施形態における位相シフタの断面図である。
【
図14】他の実施形態における位相シフタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態の位相シフタ1は、導波路にキャリアを蓄積することによって導波路の屈折率を変化させ、導波路を伝搬する光の位相を調整するものであって、LiDAR等のレーザ装置において射出光の向きを調整するために用いられる。
【0013】
位相シフタ1は、シリコン基板上に、光を伝搬させる導波路と、導波路にキャリアを注入するための電極とが形成された構成とされている。
図1に示すように、位相シフタ1は、導波路が形成された光導波領域1aと、該電極に導波路を接続するためのコンタクト部が形成されたコンタクト領域1bとを備えている。
【0014】
図2、
図3に示すように、位相シフタ1は、基板11、絶縁層12、p型半導体層13、クラッド層14、絶縁層15、n型半導体層16、絶縁層17、導波路18、p電極19、p型コンタクト部20、n電極21、n型コンタクト部22を備えている。
【0015】
基板11は、シリコンで構成されている。基板11の上面には、SiO2等で構成された絶縁層12が形成されている。絶縁層12の上面には、p型半導体層13が形成されている。p型半導体層13は、シリコンにp型不純物をドープすることで形成されたp型シリコンで構成されている。あるいは、p型半導体層13は、p型のSiGe(シリコンゲルマニウム)で構成されている。
【0016】
p型半導体層13は、間にクラッド層14を挟んで複数の領域に分割されており、p型半導体層13の各領域は、基板11の上面に平行な一方向(以下、x方向という)に延設されている。クラッド層14は、エアクラッドとされている。
【0017】
p型半導体層13の各領域には、x方向に垂直な断面が矩形状とされたリブが設けられている。
図2に示す断面では、p型半導体層13の各領域の両端部にリブが形成されている。両端のリブのうち、一方のリブはx方向に延設されており、他方のリブはx方向に沿って点在するように形成されている。この一方のリブをリブ13aとし、他方のリブをリブ13bとする。p型半導体層13の上面には、リブ13a、リブ13bに支持されるように絶縁層15が形成されている。絶縁層15は例えばAl
2O
3で構成されている。
【0018】
絶縁層15の上面には、n型半導体層16が形成されている。n型半導体層16は、n型のIII-V族半導体で構成されている。例えば、n型半導体層16は、InP(インジウムリン)またはInGaAsP(インジウムガリウムヒ素リン)で構成されている。あるいは、n型半導体層16は、n型シリコンで構成されている。
【0019】
n型半導体層16は、p型半導体層13に対応して複数の領域に分割されており、絶縁層15の上面の一部は、n型半導体層16から露出している。n型半導体層16の上面および側面と、n型半導体層16から露出した絶縁層15の上面には、SiO2等で構成された絶縁層17が形成されており、n型半導体層16の各領域は、絶縁層17によって絶縁されている。n型半導体層16の各領域は、絶縁層15を挟んでp型半導体層13の各領域に対向しており、x方向に延設されている。
【0020】
図2に示すように、n型半導体層16の一部は、絶縁層15を挟んでリブ13aに対向している。そして、リブ13aと、リブ13aとn型半導体層16とに挟まれた絶縁層15と、n型半導体層16のうちリブ13aに対向する部分とによって、光が伝搬する導波路18が、x方向が長手方向となるように構成されている。このように、導波路18は、リブ13aによって構成されたリブ導波路とされている。
【0021】
絶縁層15のうちリブ13bの上部に位置する部分には、リブ13bを露出させる開口部が形成されている。絶縁層17には、この開口部を露出させるトレンチが形成されている。このトレンチにはアルミニウム等の導電性材料が充填されており、これによりp電極19が形成されている。
【0022】
p電極19は、p型半導体層13を図示しない電源に接続するためのものであり、この電源からp電極19に電圧が印加されることにより、導波路18に正孔が蓄積される。p型半導体層13のうち、リブ13bと、リブ13bの下部は、p型不純物が高濃度にドープされたp型コンタクト部20とされている。p型コンタクト部20は、導波路18をp電極19に接続するためのものである。p型半導体層13のうち導波路18とp型コンタクト部20とを接続する部分は、これらを電気的に接続する配線部とされている。
【0023】
図3に示すように、絶縁層17には、n型半導体層16の一部を露出させるトレンチが形成されている。このトレンチにはアルミニウム等の導電性材料が充填されており、これによりn電極21が形成されている。n電極21は、基板11上のp電極19から離された部分に形成されている。
【0024】
n電極21は、n型半導体層16を図示しない電源に接続するためのものであり、この電源からn電極21に電圧が印加されることにより、導波路18に電子が蓄積される。n型半導体層16のうちn電極21の下部に位置する部分は、n型不純物が高濃度にドープされたn型コンタクト部22とされている。n型コンタクト部22は、導波路18をn電極21に接続するためのものである。n型半導体層16のうち導波路18とn型コンタクト部22とを接続する部分は、これらを電気的に接続する配線部とされている。
【0025】
このような構成の位相シフタ1では、p電極19とn電極21とに電圧を印加すると、導波路18において、リブ13aのうち絶縁層15に接する部分と、n型半導体層16のうち絶縁層15に接する部分に、それぞれ正孔と電子が蓄積される。これにより、導波路18の屈折率が変化し、導波路18を伝搬する光の位相が変化する。
【0026】
図1に示すように、位相シフタ1は、導波路18を含む光導波領域1aと、p電極19、p型コンタクト部20、n電極21、n型コンタクト部22を含むコンタクト領域1bとを、それぞれ複数備えている。なお、
図1では、絶縁層17、p電極19、n電極21等の図示を省略している。
【0027】
複数の光導波領域1aは、それぞれ、平行に並んだ2つの導波路18を備えている。光導波領域1aとコンタクト領域1bは、基板11の上面に平行でかつx方向に垂直な方向(以下、y方向という)において、交互に並んでいる。
【0028】
光導波領域1aが備える2つの導波路18のうち、y方向においてコンタクト領域1bに一方側から隣接する導波路18を第1導波路18aとし、y方向においてコンタクト領域1bに他方側から隣接する導波路18を第2導波路18bとする。
【0029】
第1導波路18aにキャリアを蓄積するためのp電極19、n電極21に接続されたp型コンタクト部20、n型コンタクト部22を、それぞれ第1p型コンタクト部20a、第1n型コンタクト部22aとする。第2導波路18bにキャリアを蓄積するためのp電極19、n電極21に接続されたp型コンタクト部20、n型コンタクト部22を、それぞれ第2p型コンタクト部20b、第2n型コンタクト部22bとする。
【0030】
図1において、導波路18上の丸印は、光が変調される領域を示している。また、この領域とp型コンタクト部20、n型コンタクト部22とを結ぶ矢印は、キャリアの流れを示している。
【0031】
複数のコンタクト領域1bは、それぞれ、第1p型コンタクト部20a、第2p型コンタクト部20b、第1n型コンタクト部22a、第2n型コンタクト部22bを備えている。
【0032】
コンタクト領域1bは、第1p型コンタクト部20a、第2p型コンタクト部20b、第1n型コンタクト部22a、第2n型コンタクト部22bをそれぞれ複数備えている。そして、1つのコンタクト領域1bにおいて、第1p型コンタクト部20aと第1n型コンタクト部22aとは、x方向において交互に一列に並んでいる。また、第2p型コンタクト部20bと第2n型コンタクト部22bとは、第1p型コンタクト部20aおよび第1n型コンタクト部22aの列にy方向の上記他方側から隣接するように、x方向において交互に一列に並んでいる。
【0033】
本実施形態の効果について説明する。
図4に示す比較例の位相シフタ100では、複数の光導波領域100aがそれぞれ1つの導波路118を備えている。また、1つのコンタクト領域100bにおいて、p型コンタクト部120、n型コンタクト部122が交互に一列に並んでいる。そして、1つの導波路118に対応するp型コンタクト部120とn型コンタクト部122が、それぞれ該導波路118の一方側と他方側に配置されている。
【0034】
このような光導波領域100aおよびコンタクト領域100bの配置では、
図5、
図6に示す構造が可能である。
図5に示す比較例は、本実施形態と同様に、導波路にキャリアを蓄積させて導波路の屈折率を変化させる縦型の位相シフタである。この位相シフタ100は、基板111、絶縁層112、p型半導体層113、クラッド層114、絶縁層115、n型半導体層116、絶縁層117、導波路118、p電極119、p型コンタクト部120、n電極121、n型コンタクト部122を備えている。
【0035】
絶縁層112は基板111の上面に形成されており、絶縁層112の上面にはp型半導体層113が形成されている。p型半導体層113は、間にクラッド層114を挟んで複数の領域に分割されており、各領域は、基板111の上面に平行な一方向に延設されている。p型半導体層113の各領域には、リブ113a、113bが形成されている。p型半導体層113の上面には、リブ113a、113bに支持されるように絶縁層115が形成されている。
【0036】
絶縁層115の上面には、n型半導体層116が形成されている。n型半導体層116は、p型半導体層113に対応して複数の領域に分割されている。n型半導体層116の上面および側面と、n型半導体層116から露出した絶縁層115の上面には、絶縁層117が形成されており、n型半導体層116の各領域は、絶縁層117によって絶縁されている。n型半導体層116の各領域は、絶縁層115を挟んでp型半導体層113の各領域に対向しており、上記一方向に延設されている。リブ113aと、リブ113aとn型半導体層116とに挟まれた絶縁層115と、n型半導体層116のうちリブ113aに対向する部分とによって、導波路118が構成されている。
【0037】
リブ113bの上部にはp電極119が形成されている。p型半導体層113のうち、リブ113bと、リブ113bの下部は、p型コンタクト部120とされている。基板111上のp電極119から離された部分には、n電極121が形成されている。n型半導体層116のうちn電極121の下部に位置する部分は、n型コンタクト部122とされている。
【0038】
図6に示す比較例は、導波路からキャリアを引き抜いて導波路の屈折率を変化させる横型の位相シフタである。この位相シフタ100では、p型半導体層113およびn型半導体層116が絶縁層112上に形成されている。p型半導体層113、n型半導体層116はそれぞれ複数の領域に分割されており、p型半導体層113、n型半導体層116の各領域は、それぞれ基板111の上面に平行でかつ上記一方向に垂直な他方向の両端にリブを備えている。
【0039】
p型半導体層113の一方のリブとn型半導体層116の一方のリブは連結されており、この連結部によって導波路118が形成されている。p型半導体層113のうち導波路118とは反対側に形成されたリブの上部にはp電極119が形成されており、このリブの一部はp型コンタクト部120とされている。n型半導体層116のうち導波路118とは反対側に形成されたリブの上部にはn電極121が形成されており、このリブの一部はn型コンタクト部122とされている。
【0040】
このような構成の位相シフタでは、図示しない電源によってp電極119とn電極121とに電圧を印加すると、導波路118からキャリアが引き抜かれる。これにより、導波路118の屈折率が変化し、導波路118を伝搬する光の位相が変化する。
【0041】
図5および
図6のいずれにおいても、導波路のピッチTは、T=2d
1+Mとなる。d
1は上記他方向における導波路と電極との距離であり、位相シフタ100では、d
1は導波路118とp電極119またはn電極121との距離である。Mは上記他方向における電極の幅であり、位相シフタ100では、Mはp電極119およびn電極121の幅である。
【0042】
これに対して、本実施形態では、1つの導波路18あたりのピッチTは、T=d1+M+(d2+Δ)/2となる。本実施形態では、d1はy方向における導波路18とp電極19またはn電極21との距離である。d2は、1つの光導波領域1aに含まれる第1導波路18aと第2導波路18bとのy方向における距離である。Δは、1つのコンタクト領域1bに含まれる第1p型コンタクト部20a上のp電極19または第1n型コンタクト部22a上のn電極21と、第2p型コンタクト部20b上のp電極19または第2n型コンタクト部22b上のn電極21とのy方向における距離である。
【0043】
距離d1は、導波路を伝搬する光が隣接する電極に吸収されるのを抑制するために、ある程度大きくする必要があり、例えば1000nm程度とされる。一方、導波路間の光結合による光損失は、電極への光吸収による光損失に比べて小さいため、距離d2は距離d1よりも小さくすることが可能であり、例えば800nm程度とされる。また、距離Δは、プロセス要因で下限が定まるが、これも距離d1より小さくすることが可能であり、例えば数100nmとされる。幅Mは、プロセス要因で下限が定まり、例えば100nm程度とされる。
【0044】
したがって、本実施形態では、ピッチTを、比較例におけるピッチTよりも小さくすることができる。複数並んだ導波路から出射する光の位相をそれぞれ調整して、全体での光の指向性を制御するLiDAR等のレーザ装置では、光の出射角度の上限をψとし、光の波長をλとすると、sinψ=λ/2Tとなる。すなわち、ピッチTが小さいほど、出射角度の上限ψが大きくなるため、本実施形態では、比較例に比べて上限ψを大きくすることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態では、1つの光導波領域1aが、平行に並んだ2つの導波路18を含んでいる。また、1つのコンタクト領域1bが、第1p型コンタクト部20a、第2p型コンタクト部20b、第1n型コンタクト部22a、第2n型コンタクト部22bを含んでいる。このように、2つの導波路18が隣接するように導波路18、p型コンタクト部20、n型コンタクト部22を並べることで、1つの導波路18あたりのピッチTを小さくすることが可能となり、光の射出角度の範囲を広げることができる。
【0046】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
(1)コンタクト領域1bは、第1p型コンタクト部20a、第2p型コンタクト部20b、第1n型コンタクト部22a、第2n型コンタクト部22bをそれぞれ複数備えている。そして、第1p型コンタクト部20aと第1n型コンタクト部22aとは、x方向において交互に一列に並んでおり、第2p型コンタクト部20bと第2n型コンタクト部22bとは、x方向において交互に一列に並んでいる。例えばこのような構成により、2つの導波路18を隣接するように並べることが可能となる。
【0048】
(2)導波路18と第1p型コンタクト部20a、第2p型コンタクト部20bとを接続するp型半導体層13は、p型SiGeで構成されている。これにより、高速変調が可能となる。
【0049】
(3)導波路18と第1n型コンタクト部22a、第2n型コンタクト部22bとを接続するn型半導体層16は、n型のIII-V族半導体、具体的には、InPまたはInGaAsPで構成されている。これにより、n型半導体層16をシリコンで構成する場合に比べて、光損失を低減し、変調効率を向上させることができる。
【0050】
あるいは、n型半導体層16は、n型シリコンで構成されている。これにより、量産性を向上させることができる。
【0051】
(4)導波路18はリブ導波路とされている。そして、導波路18を複数の導波路に分割するクラッド層14はエアクラッドとされている。クラッド層14をエアクラッドとすることにより、導波路18からの光漏れを低減することができる。
【0052】
(5)導波路18は、p型半導体で構成されたp型半導体層13と、n型半導体で構成されたn型半導体層16と、p型半導体層13およびn型半導体層16の間に配置された絶縁層15とで構成されている。このように、導波路18にキャリアを蓄積することで導波路18の屈折率を変化させる構成により、位相シフタ1の消費電力を低減することができる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対しp電極19、p型コンタクト部20、n電極21、n型コンタクト部22の配置を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0054】
図7に示すように、本実施形態では、1つのコンタクト領域1bにおいて、第1p型コンタクト部20a、第2p型コンタクト部20b、第1n型コンタクト部22a、第2n型コンタクト部22bは、x方向において、この順に、一列に並んでいる。
【0055】
そして、
図7~
図9に示すように、第1導波路18aと第2導波路18bとが、y方向において1つの電極を挟むように配置されている。このような構成により、1つの導波路18あたりのピッチTは、T=d
1+M/2+d
2/2となり、第1実施形態のピッチTよりも小さくなる。
【0056】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0058】
(1)第1、第2p型コンタクト部20a、20b、第1、第2n型コンタクト部22a、22bは、x方向において、第1p型コンタクト部20a、第2p型コンタクト部20b、第1n型コンタクト部22a、第2n型コンタクト部22bの順に、一列に並んでいる。これにより、ピッチTをさらに小さくすることができる。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対してp電極19、p型コンタクト部20、n電極21、n型コンタクト部22の配置を変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図10に示すように、本実施形態では、第1p型コンタクト部20aと第2p型コンタクト部20bとは、x方向において、交互に一列に並んでいる。
【0061】
そして、第1n型コンタクト部22aは、第2p型コンタクト部20bにy方向の一方側から隣接するように、第1導波路18aと、第1p型コンタクト部20aおよび第2p型コンタクト部20bの列との間に配置されている。
【0062】
また、第2n型コンタクト部22bは、第1p型コンタクト部20aにy方向の他方側から隣接するように、第2導波路18bと、第1p型コンタクト部20aおよび第2p型コンタクト部20bの列との間に配置されている。
【0063】
また、
図11、
図12に示すように、第1n型コンタクト部22aおよび第2n型コンタクト部22bは、第1導波路18aおよび第2導波路18bよりも基板11から遠い位置に配置されている。具体的には、n型半導体層16のうち導波路18とは反対側の端部には、リブ16aが形成されており、このリブ16aの上面に第1、第2n型コンタクト部22a、22bが形成されている。
【0064】
このような構成では、
図10に示すように1つのコンタクト領域1bにおけるコンタクト部の配置が3列になる。しかしながら、
図11、
図12に示すように、n型コンタクト部22を導波路18の上部であって導波路18とp型コンタクト部20との間に位置する部分に配置することで、ピッチTを第2実施形態と同様にT=d
1+M/2+d
2/2とすることができる。
【0065】
さらに、コンタクト部の配置を3列にすることで、1組の第1p型コンタクト部20a、第2p型コンタクト部20b、第1n型コンタクト部22a、第2n型コンタクト部22bのx方向の幅を、第2実施形態の半分程度に縮小することができる。
【0066】
本実施形態は、第1、第2実施形態と同様の構成および作動からは第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0068】
(1)第1p型コンタクト部20aと第2p型コンタクト部20bとは、x方向において交互に一列に並んでいる。そして、第1n型コンタクト部22aは、第1導波路18aと、第1p型コンタクト部20aおよび第2p型コンタクト部20bの列との間に配置されている。また、第2n型コンタクト部22bは、第2導波路18bと、第1p型コンタクト部20aおよび第2p型コンタクト部20bの列との間に配置されている。また、第1n型コンタクト部22aおよび第2n型コンタクト部22bは、第1導波路18aおよび第2導波路18bよりも基板11から遠い位置に配置されている。
【0069】
このように、n型コンタクト部22を導波路18の上部に配置することで、導波路18とn電極21との距離を長くして電極への光吸収による光損失を低減しつつ、1組のp型コンタクト部20、n型コンタクト部22のx方向の幅を縮小して位相シフタ1を小型化することができる。
【0070】
なお、n型半導体層16のy方向の幅は、例えば500~1000nmとされ、厚さは例えば100~250nmとされる。このようにn型半導体層16の横幅に対して厚さが薄い場合にも、リブ16aを形成し、リブ16a上にn型コンタクト部22を形成することで、導波路18とn電極21との距離を長くすることができる。
【0071】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0072】
第1~第3実施形態において、p型半導体層13、p電極19、p型コンタクト部20と、n型半導体層16、n電極21、n型コンタクト部22の配置が逆になっていてもよい。すなわち、絶縁層12の上面にn型半導体層16が形成され、絶縁層15の上面にp型半導体層13が形成されていてもよい。この場合、第3実施形態においては、第1n型コンタクト部22aと第2n型コンタクト部22bとが、x方向において交互に一列に並ぶ。そして、第1p型コンタクト部20aは、第1導波路18aと、第1n型コンタクト部22aおよび第2n型コンタクト部22bの列との間に配置される。また、第2p型コンタクト部20bは、第2導波路18bと、第1n型コンタクト部22aおよび第2n型コンタクト部22bの列との間に配置される。また、第1p型コンタクト部20aおよび第2p型コンタクト部20bは、第1導波路18aおよび第2導波路18bよりも基板11から遠い位置に配置される。
【0073】
第3実施形態において、n型半導体層16にリブ16aが形成されていなくてもよい。すなわち、
図13、
図14に示すように、n型半導体層16のうち導波路18とは反対側の端部の上面が平坦な形状とされ、この端部にn型コンタクト部22が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1a 光導波領域
1b コンタクト領域
13 p型半導体層
16 n型半導体層
18a 第1導波路
18b 第2導波路
20a 第1p型コンタクト部
20b 第2p型コンタクト部
22a 第1n型コンタクト部
22b 第2n型コンタクト部