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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188414
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 5/30 20060101AFI20221214BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20221214BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B41J5/30 Z
B41J2/525
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096420
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前平 洋利
【テーマコード(参考)】
2C056
2C187
2C262
【Fターム(参考)】
2C056EB58
2C056EC79
2C056EE17
2C056EE18
2C056FA10
2C056HA44
2C187AC08
2C187AD20
2C187BF14
2C187CD04
2C187DB18
2C187DB21
2C187FB11
2C187GA05
2C262AA02
2C262AA24
2C262BA02
2C262BA14
2C262BC17
2C262DA18
2C262GA12
2C262GA29
(57)【要約】
【課題】メモリ容量を低減できると共に各レイヤーのパッチ画像を選択的に被印刷媒体へ印刷することが可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、被印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、制御装置とを備え、制御装置は、複数のレイヤーが含まれる印刷データを用いて被印刷媒体に画像を印刷させるように印刷部を制御し、更に、複数のレイヤーのそれぞれの重みに関する重み情報に基づいて複数のレイヤーのうちの一部のレイヤーを決定し、決定された一部のレイヤーに基づいて印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいてパッチ画像を被印刷媒体へ印刷させるように印刷部を制御する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
複数のレイヤーが含まれる印刷データを用いて被印刷媒体に画像を印刷させるように前記印刷部を制御し、
更に、
前記複数のレイヤーのそれぞれの重みに関する重み情報に基づいて前記複数のレイヤーのうちの一部のレイヤーを決定し、
決定された前記一部のレイヤーに基づいて印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいてパッチ画像を被印刷媒体へ印刷させるように前記印刷部を制御する、印刷装置。
【請求項2】
前記制御装置は、決定された前記一部のレイヤー中の各色から色占有率が閾値以上である色を抽出し、抽出した前記色に基づいて印刷データを生成してパッチ画像を被印刷媒体へ印刷させるように前記印刷部を制御する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記複数のレイヤーは、文字を表す前景レイヤーである文字レイヤー、および文字以外の背景を表す背景レイヤーを含み、
前記重み情報は、前記重みを数値で示す重み値であり、
前記文字レイヤーは前記背景レイヤーよりも前記重み値が高く、
前記制御装置は、前記一部のレイヤーを決定する場合に、前記文字レイヤーに基づいて印刷データを生成してパッチ画像を被印刷媒体へ印刷させるように前記印刷部を制御する、請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷部は、被印刷媒体にクリアインクを吐出するクリアインクノズルを有し、
前記複数のレイヤーは、画像を表す画像レイヤー、および前記画像レイヤーよりも上層に位置付けられる保護層を表すオーバーコート指示レイヤーを含み、
前記重み情報は、前記重みを数値で示す重み値であり、
前記画像レイヤーにより表される画像の印刷データは、前記オーバーコート指示レイヤーにおいて前記クリアインクノズルから前記クリアインクを吐出する指令が示されている設定領域に対応するオンピクセル画像データと、前記重み値が前記オンピクセル画像データよりも低く、前記指令が示されていない設定領域に対応するオフピクセル画像データとを含み、
前記制御装置は、前記オンピクセル画像データに基づいて印刷データを生成してパッチ画像を被印刷媒体へ印刷させるように前記印刷部を制御する、請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記オンピクセル画像データ中の各色から色占有率が閾値以上である色を抽出し、抽出した前記色に基づいて印刷データを生成してパッチ画像を被印刷媒体へ印刷させるように前記印刷部を制御する、請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記重み情報は、前記重みを数値で示す重み値であり、
ユーザが前記画像レイヤーにより表される印刷データのうちの一部に前記重み値を設定するための画像選択設定部をさらに備える、請求項4又は5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記重み情報は、前記重みを数値で示す重み値であり、
ユーザが前記重み値を設定するための重み値設定部をさらに備える、請求項1乃至6の何れか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタやレーザープリンタ等の印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のレイヤーが含まれる印刷データを用いた印刷を行う印刷装置が知られている。例えば、特許文献1には下地レイヤーとしてのパッチ画像である白インクパッチ画像と、当該白インクパッチ画像に対して上層の画像であるカラーパッチ画像とを被印刷媒体へ印刷する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-042543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の印刷装置では、下地レイヤーにより表される白インクパッチ画像、および当該下地レイヤーに対して上層に位置付けられる上レイヤーにより表されるカラーパッチ画像の双方を被印刷媒体へ印刷するため、印刷装置のメモリ容量を低減することが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、メモリ容量を低減できると共に各レイヤーのパッチ画像を選択的に被印刷媒体へ印刷することが可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の印刷装置は、被印刷媒体に画像を印刷する印刷部と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、複数のレイヤーが含まれる印刷データを用いて被印刷媒体に画像を印刷させるように前記印刷部を制御し、更に、前記複数のレイヤーのそれぞれの重みに関する重み情報に基づいて前記複数のレイヤーのうちの一部のレイヤーを決定し、決定された前記一部のレイヤーに基づいて印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいてパッチ画像を被印刷媒体へ印刷させるように前記印刷部を制御するものである。
【0007】
本発明に従えば、従来のように全レイヤーのパッチ画像を被印刷媒体へ印刷するのではなく、決定された一部のレイヤーに基づいてパッチ画像が被印刷媒体へ印刷される。そのため、メモリ容量を低減できると共に、パッチ画像を選択的に印刷することができる。これにより、ユーザが例えば優先色を決めてパッチ画像を印刷したい場合に選択的な印刷を実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メモリ容量を低減できると共に各レイヤーのパッチ画像を選択的に被印刷媒体へ印刷することが可能な印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る印刷装置の一例を示す斜視図である。
図2図1の印刷装置に設けられる液滴吐出装置の一例を示す平面図である。
図3図2の液体吐出装置における吐出ヘッドおよび紫外線照射装置の一例を示す平面図である。
図4図3の吐出ヘッドの構成を示す断面図である。
図5図1の印刷装置の構成要素を示すブロック図である。
図6】(a)はオーバーコート指示レイヤーおよび画像レイヤーのイメージを示す図であり、(b)は文字レイヤーおよび背景レイヤーのイメージを示す図である。
図7】(a)はオーバーコート指示レイヤーの具体例を示す図であり、(b)は画像レイヤーの具体例を示す図である。
図8】各レイヤーの重み値を示す重みマップである。
図9図1の印刷装置によるパッチ画像印刷のメインルーチンを示すフローチャートである。
図10図9のパッチ画像印刷処理に係るサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る印刷装置について図面を参照して説明する。以下に説明する印刷装置は本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0011】
図1は本発明の実施形態に係る印刷装置1を示す斜視図である。図1には、印刷装置1がインクジェットプリンタである場合を一例として示したが、印刷装置1はインクジェットプリンタに限定されるものではなく、例えばレーザープリンタ等の他の印刷装置であってもよい。図1において、互いに直交する方向を上下方向、左右方向および前後方向とする。左右方向が主走査方向Dsであり、前後方向が副走査方向Dfである。主走査方向Dsのうち印刷装置1に向かって左の方向が左方向Ds1であり、右の方向が右方向Ds2である。また、副走査方向Dfのうち印刷装置1の後述のプラテン6の方を前方向Df1とし、当該プラテン6の逆の方向を後方向Df2とする。印刷装置1は例えば印刷用紙、布帛、又はスマホケース等の樹脂ケース等の被印刷媒体Wへの印刷を行うことができるものである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の印刷装置1は、筐体2と、操作キー4と、表示部5と、被印刷媒体Wが配置されるプラテン6と、上部カバー7とを備える。また、印刷装置1は後述の液滴吐出装置1a(図2)およびコントローラユニット19(図5)を備える。
【0013】
筐体2は箱状に形成されている。筐体2は前面に開口部2aを有すると共に背面に図略の開口部を有している。筐体2の右側前方の位置には操作キー4が設けられている。操作キー4は重み値設定部4aおよび画像選択設定部4bを含む。重み値設定部4aおよび画像選択設定部4bの詳細については後述する。また、操作キー4の後方の位置には表示部5が設けられている。操作キー4はユーザによる操作入力を受け付ける。表示部5は例えばタッチパネルで構成され、所定情報を表示する。表示部5の一部は所定のタイミングで操作キーとしても機能する。コントローラユニット19は、操作キー4からの入力又は図略の通信インタフェースを介する外部入力に基づき印刷機能を実現すると共に表示部5の表示を制御する。
【0014】
プラテン6は被印刷媒体Wを載置可能に構成されている。プラテン6は所定の厚みを有し、例えば副走査方向Dfを長手方向とする矩形状の板材により構成される。プラテン6は図略のプラテン支持台により、取り外し可能に支持されている。プラテン支持台は搬送モータ33(図5)の駆動により被印刷媒体Wへの印刷を実行する印刷位置と被印刷媒体Wをプラテン6から取り外す着脱位置との間で副走査方向Dfに移動可能に構成される。これにより、プラテン6は被印刷媒体Wの被吐出面を後述の吐出ヘッド10に対して副走査方向Dfに相対移動させる。上記印刷位置とはプラテン6が吐出ヘッド10に対向する位置であり、上記着脱位置とはプラテン支持台が筐体2の外側に配置される位置であって被印刷媒体Wをプラテン6上に載置可能な位置である。印刷時には、プラテン6が副走査方向Dfに移動するので、プラテン6上に載置された被印刷媒体Wは副走査方向Dfに搬送される。
【0015】
上部カバー7は、その前部を持ち上げると上方へ回動するように構成されている。これにより、筐体2の内部が露出するようになっている。
【0016】
図2に示すように、液滴吐出装置1aは、貯留タンク62、例えば2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの紫外線照射装置40(40A,40B)が搭載されたキャリッジ3、および、一対のガイドレール67を備える。印刷部に相当する吐出ヘッド10としては、液体として例えば紫外線硬化型のインクを吐出するシリアル方式のインクジェットヘッドを用いることができる。また、紫外線照射装置40は、紫外線を発光する複数の発光ダイオードチップを有し、吐出ヘッド10により吐出されたインクを硬化させるための紫外線を当該インクに対して照射する。なお、図2では2つの吐出ヘッド10および2つの紫外線照射装置40を設けることにしたが、これに限定されるものではなく、1つの吐出ヘッド10と1つの紫外線照射装置40を設けるようにしてもよい。また、液体として紫外線硬化型のインクを採用しない場合には、紫外線照射装置40は不要である。
【0017】
キャリッジ3は、主走査方向Dsに延在する一対のガイドレール67に支持され、当該ガイドレール67に沿って主走査方向Dsに往復動する。これにより、2つの吐出ヘッド10(10A,10B)と2つの紫外線照射装置40(40A,40B)は主走査方向Dsに往復動可能になっている。また、吐出ヘッド10はチューブ62aを介して貯留タンク62に接続される。貯留タンク62にはインクが貯留されている。貯留タンク62はインクの種類ごとに設けられている。貯留タンク62は、例えば6つ設けられ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ、ホワイト、およびクリアのインクがそれぞれ貯留される。
【0018】
図3に示すように、吐出ヘッド10Aおよび吐出ヘッド10Bは副走査方向Dfに沿って並んで配置されている。吐出ヘッド10Bは吐出ヘッド10Aの前方に配置されている。また、紫外線照射装置40Aおよび紫外線照射装置40Bは副走査方向Dfに沿って並んで配置されている。紫外線照射装置40Bは紫外線照射装置40Aの前方に配置されている。吐出ヘッド10Aおよび紫外線照射装置40Aは主走査方向Dsに沿って並んで配置されている。紫外線照射装置40Aは吐出ヘッド10Aの左方に配置されている。また、吐出ヘッド10Bおよび紫外線照射装置40Bは主走査方向Dsに沿って並んで配置されている。紫外線照射装置40Bは吐出ヘッド10Bの左方に配置されている。なお、吐出ヘッド10Aと紫外線照射装置40Aとを主走査方向Dsにおいて逆に配置してもよく、吐出ヘッド10Bと紫外線照射装置40Bとを主走査方向Dsにおいて逆に配置してもよい。
【0019】
本実施形態において印刷処理の1パス時にはキャリッジ3は右方向Ds2に移動する。これにより、印刷処理において吐出ヘッド10および紫外線照射装置40は右方向Ds2に移動する。この場合、吐出ヘッド10は右方向Ds2に移動しつつ被印刷媒体Wにインクを吐出し、紫外線照射装置40は主走査方向Dsの右方向Ds2に移動しつつ被印刷媒体Wに着弾したインクに紫外線を照射する。これによって、印刷処理時のキャリッジ3の移動方向において吐出ヘッド10よりも後方側に紫外線照射装置40が位置されるので、被印刷媒体Wに着弾した直後のインクに対して紫外線を照射することができる。
【0020】
また、印刷処理の1パスが終了すると、キャリッジ3は左方向Ds1に移動して所定位置に戻る。これにより、吐出ヘッド10および紫外線照射装置40は左方向Ds1に移動する。この場合、吐出ヘッド10はインクを吐出することなく左方向Ds1に移動し、紫外線照射装置40は左方向Ds1に移動しつつ、印刷処理時に吐出されたインクに対して紫外線を照射する。これにより、インクに対して紫外線を十分に照射することができ、それ故インクの硬化性を向上することができる。
【0021】
本実施形態において、例えば、吐出ヘッド10Aは、カラーインクと総称されることがあるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のインクを吐出する。吐出ヘッド10Aは、イエローインクを吐出する複数のイエローインクノズル121Yを含むノズル列NL、マゼンタインクを吐出する複数のマゼンタインクノズル121Mを含むノズル列NL、シアンインクを吐出する複数のシアンインクノズル121Cを含むノズル列NL、およびブラックインクを吐出する複数のブラックインクノズル121Kを含むノズル列NLを備える。各ノズル列NLはそれぞれ副走査方向Dfに沿って延在する。以上の4色のインクが被印刷媒体Wに吐出されることで当該被印刷媒体Wにカラー画像が印刷される。なお、イエローインクノズル121Yを含むノズル列NL、マゼンタインクノズル121Mを含むノズル列NL、シアンインクノズル121Cを含むノズル列NL、およびブラックインクノズル121Kを含むノズル列NLの主走査方向Dsにおける並び順は上記に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0022】
一方、吐出ヘッド10Bは、ホワイト(W)のインクおよびクリア(Cr)のインクを吐出する。被印刷媒体Wとしての例えば布帛にカラー画像を印刷する際には、当該布帛の色や布帛の材質への影響を低減するために、下地インクとして白インクが先に吐出され、当該白インクの上にカラーインクが吐出される。また、クリアインクは光沢を付与する場合や印刷部分の保護を行う場合に吐出される。このような吐出ヘッド10Bは、ホワイトインクを吐出する複数のホワイトインクノズル121Wを含むノズル列NL、およびクリアインクを吐出する複数のクリアインクノズル121Crを含むノズル列NLを備える。各ノズル列NLはそれぞれ副走査方向Dfに沿って延在する。なお、ホワイトインクノズル121Wを含むノズル列NL、およびクリアインクノズル121Crを含むノズル列NLの主走査方向Dsにおける並び順は上記に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0023】
また、図2に示すように、液滴吐出装置1aはさらにパージ部50およびワイプ部54を備える。パージ部50およびワイプ部54は、キャリッジ3の移動領域に重なるように一対のガイドレール67のうち主走査方向Dsの一端側に配置されている。
【0024】
パージ部50は、キャップ51、吸引ポンプ52および昇降機構53を有している。吸引ポンプ52は、キャップ51に接続されている。昇降機構53は、吸引位置と待機位置との間でキャップ51を昇降する。待機位置では、ノズル面NM(図4)はキャップ51から離間する。一方、吸引位置では、ノズル面NMがキャップ51に覆われ、密閉空間が形成される。キャップ51が吸引位置にあるとき、吸引ポンプ52が駆動されると、上記密閉空間が吸引されて、後述のノズル孔121a(図4)からインクが排出される。このようにして、ノズル121から強制的にインクを排出させるパージ処理を実行してもよい。
【0025】
ワイプ部54は、2つのワイパー55,56、および移動機構57を有している。2つのワイパー55,56は移動機構57に支持されている。ノズル面NMがこれらのワイパー55,56に対向する位置に配置された状態で移動機構57が副走査方向Dfに移動する。これにより、2つのワイパー55,56は副走査方向Dfに移動しつつワイプ動作(つまりノズル面NMの払拭)を行う。
【0026】
次に、吐出ヘッド10の断面構造について図面を参照しつつ説明する。図4に示すように、吐出ヘッド10は貯留タンク62からのインクを用いてインク滴を吐出する複数のノズル121を有する。吐出ヘッド10は流路形成体と容積変更部の積層体を有している。流路形成体には、その内部にインク流路が形成され、その下面であるノズル面NMに複数のノズル孔121aが開口している。また、上記の容積変更部は、駆動されてインク流路の容積を変更する。このとき、ノズル孔121aではメニスカスが振動してインクが吐出される。以下、吐出ヘッド10の構成について詳細に説明する。
【0027】
吐出ヘッド10の上述の流路形成体は複数のプレートの積層体であり、容積変更部は振動板155およびアクチュエータ(圧電素子)160を含む。振動板155の上には絶縁膜156が接続されており、当該絶縁膜156の上には後述の共通電極161が接続されている。
【0028】
複数のプレートは、下から順に、ノズルプレート146、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、第6流路プレート153、および第7流路プレート154を含んで積層されている。
【0029】
各プレートには大小種々の孔および溝が形成されている。各プレートが積層された流路形成体の内部では孔および溝が組み合わされて、複数のノズル121、複数の個別流路164およびマニホールド122がインク流路として形成されている。
【0030】
ノズル121はノズルプレート146を積層方向(図4の主走査方向Dsと副走査方向Dfに直交する方向)に貫通し形成されている。ノズルプレート146のノズル面NMには、ノズル121の先端である複数のノズル孔121aが副走査方向Dfに複数並んでノズル列NLを形成している。
【0031】
マニホールド122は、インクの吐出圧力が付与される圧力室128に対してインクを供給する。マニホールド122は、副走査方向Dfに延在しており、複数の個別流路164の各一端にそれぞれ接続されている。すなわち、マニホールド122はインクの共通流路として機能する。マニホールド122は、第1流路プレート148~第4流路プレート151を積層方向に貫通した貫通孔および第5流路プレート152の下面から窪んだ窪みが積層方向に重なって形成されている。
【0032】
ノズルプレート146はスペーサプレート147の下方に配置されている。そのスペーサプレート147は例えばステンレス鋼材で形成される。スペーサプレート147は、例えばハーフエッチングによりノズルプレート146側の面からスペーサプレート147の厚み方向に凹むことで、ダンパ部147aを成す薄肉部分とダンパ空間147bとが形成される凹部145を有している。このような構成により、マニホールド122とノズルプレート146との間には、バッファー空間としてのダンパ空間147bが形成される。
【0033】
マニホールド122には供給ポート122aが連通している。供給ポート122aは例えば筒状に形成され、副走査方向Dfの一端に設けられている。なお、マニホールド122と供給ポート122aとは図略の流路により繋がっている。
【0034】
複数の個別流路164はマニホールド122にそれぞれ接続されている。個別流路164は、その上流端がマニホールド122に接続され、その下流端がノズル121の基端に接続されている。個別流路164は、第1連通孔125、個別絞り路である供給絞り路126、第2連通孔127、圧力室128、およびディセンダ129で構成されており、これらの構成要素はこの順で配置される。
【0035】
第1連通孔125は、その下端がマニホールド122の上端に接続し、マニホールド122から積層方向の上方に延び、第5流路プレート152における上側部分を積層方向に貫通している。
【0036】
供給絞り路126の上流端は第1連通孔125の上端に接続されている。供給絞り路126は、例えばハーフエッチングにより形成され、第6流路プレート153の下面から窪んだ溝により構成されている。また、第2連通孔127は、その上流端が供給絞り路126の下流端に接続され、供給絞り路126から積層方向の上方に延び、第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。
【0037】
圧力室128は、その上流端が第2連通孔127の下流端に接続されている。圧力室128は、第7流路プレート154を積層方向に貫通して形成されている。
【0038】
ディセンダ129は、スペーサプレート147、第1流路プレート148、第2流路プレート149、第3流路プレート150、第4流路プレート151、第5流路プレート152、および第6流路プレート153を積層方向に貫通して形成されている。ディセンダ129は、その上流端が圧力室128の下流端に接続され、下流端がノズル121の基端に接続されている。ノズル121は、例えば積層方向においてディセンダ129に重なり、幅方向においてディセンダ129の中央に配置されている。
【0039】
振動板155は、第7流路プレート154の上に積層されており、圧力室128の上端開口を覆っている。
【0040】
アクチュエータ160は、共通電極161、圧電層162および個別電極163を含み、これらはこの順で配置されている。共通電極161は、絶縁膜156を介して振動板155の全面を覆っている。圧電層162は、圧力室128ごとに設けられ、当該圧力室128に重なるように共通電極161上に配置されている。個別電極163は、圧力室128ごとに設けられ、圧電層162上に配置されている。1つの個別電極163、共通電極161および両電極で挟まれた部分の圧電層162により1つのアクチュエータ160が構成される。
【0041】
個別電極163はドライバICに電気的に接続されている。このドライバICは、後述の制御装置20から制御信号を受けて、駆動信号(電圧信号)を生成し、個別電極163に印加する。これに対し、共通電極161は常にグランド電位に保持されている。このような構成において、圧電層162の活性部が駆動信号に応じて共通電極161および個別電極163と共に面方向に伸縮する。これに応じて、振動板155が協働して変形し、圧力室128の容積を増減する方向に変化する。これにより、インクをノズル121から吐出させる吐出圧力が圧力室128に付与される。
【0042】
以上のような吐出ヘッド10において、インクは、供給ポート122aを介してマニホールド122に流入すると、当該マニホールド122から第1連通孔125を介して供給絞り路126に流入し、供給絞り路126から第2連通孔127を介して圧力室128に流入する。その後、インクはディセンダ129を流れ、ノズル121に流入する。ここで、アクチュエータ160により圧力室128に吐出圧力が付与されると、インクはノズル孔121aから吐出される。
【0043】
次に、本実施形態の印刷装置1の各構成要素についてブロック図を参照しつつ説明する。図5に示すように、印刷装置1は、上述した構成要素の他に、読取装置26、モータドライバIC30,31、ヘッドドライバIC32,35、搬送モータ33、キャリッジモータ34、照射装置ドライバIC36,37、パージドライバIC38、およびワイプドライバIC39を備えている。
【0044】
上述したコントローラユニット19は、制御装置20、記憶部(ROM21、RAM22、EEPROM23、HDD24)、およびASIC25を有している。制御装置20は、上記記憶部に接続されると共に各ドライバIC30~32,35~39および表示部5を制御する。
【0045】
制御装置20は、ROM21に記憶された所定の処理プログラムを実行することにより種々の機能を実行する。制御装置20は、例えば、RGB色空間の印刷データをCMYK色空間の印刷データに変換する色変換処理、ハーフトーン処理、およびラスタライズ処理を実行する。このような制御装置20は、コントローラユニット19に1つのプロセッサとして実装されていてもよいし、互いに協働する複数のプロセッサとして実装されていてもよい。処理プログラムは、コンピュータ読取可能な光磁気ディスク等又はUSBフラッシュメモリ等の記録媒体KBから読取装置26で読み出されてROM21に記憶される。RAM22には、外部から受信した印刷データおよび制御装置20の演算結果等が記憶される。上記印刷データの一例としては、RGB値の各々が256段階の値を有するデータが挙げられる。EEPROM23にはユーザが入力した各種の初期設定情報が格納されている。HDD24には特定情報などが記憶される。
【0046】
ASIC25には、モータドライバIC30,31と、ヘッドドライバIC32,35と、照射装置ドライバIC36,37と、パージドライバIC38と、ワイプドライバ39が接続されている。制御装置20は印刷ジョブを受け付けると、処理プログラムに基づいて画像記録指令をASIC25へ出力する。ASIC25は、画像記録指令に基づいて各ドライバIC30~32,35~39を駆動する。制御装置20は、モータドライバIC30により搬送モータ33を駆動することでプラテン6を副走査方向Dfに移動させる。制御装置20は、モータドライバIC31によりキャリッジモータ34を駆動することでキャリッジ3を主走査方向Dsに移動させる。制御装置20は、ヘッドドライバIC32,35により吐出ヘッド10からインクを吐出させる。制御装置20は、照射装置ドライバIC36,37により紫外線照射装置40A,40Bの発光ダイオードチップから紫外線を照射させる。制御装置20は、パージドライバIC38によりパージ部50の吸引ポンプ52および昇降機構53を駆動する。制御装置20は、ワイプドライバIC39によりワイプ部54の移動機構57を駆動する。
【0047】
続いて、本実施形態の印刷装置1によるパッチ画像印刷について説明する。印刷装置1の吐出ヘッド10により印刷される色は必ずしもユーザの望む色になるとは限らないため、ユーザによって調整することがある。この場合、パッチ印刷をして測色することで色校正を行う。本実施形態において、制御装置20は、パッチ印刷を実行する際にまず複数のレイヤーのそれぞれの重みに関する重み情報に基づいて複数のレイヤーのうちの一部のレイヤーを決定する。そして、制御装置20は、決定した上記一部のレイヤーに基づいて印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させるように吐出ヘッド10を制御する。以下、詳細に説明する。
【0048】
図6(a)はオーバーコート指示レイヤーL1および画像レイヤーL2のイメージを示す図であり、同図(b)は文字レイヤーL3および背景レイヤーL4のイメージを示す図である。また、図7(a)はオーバーコート指示レイヤーL1の具体例を示す図であり、同図(b)は画像レイヤーL2の具体例を示す図である。印刷データ(原データ)には例えばオーバーコート指示レイヤーL1および画像レイヤーL2が含まれることがある。また、印刷データには例えば文字レイヤーL3および背景レイヤーL4が含まれることがある。
【0049】
図6(a)の画像レイヤーL2は画像を表すレイヤーである。画像レイヤーL2により表される画像はRGB色空間の256階調のカラー画像である。画像レイヤーL2により表される画像の印刷データは、図7(b)に示すように、オンピクセル画像データONDおよびオフピクセル画像データOFDを含んでいる。オンピクセル画像データONDは、オーバーコート指示レイヤーL1においてクリアインクノズル121Crからクリアインクを吐出する指令が示されている設定領域SR1に対応する画像データである。オンピクセル画像データONDにより表される画像は、例えば社名や会社ロゴ等である。
【0050】
一方、オフピクセル画像データOFDは、後で詳述する重み値がオンピクセル画像データONDよりも低く、クリアインクを吐出する指令が示されていない設定領域SR2に対応する画像データである。オフピクセル画像データOFDにより表される画像は、例えばグラフや風景写真等である。
【0051】
図6(a)のオーバーコート指示レイヤーL1は、画像レイヤーL2よりも上層に位置付けられる保護層を表すレイヤーであって、例えば図7(a)に示すような態様となる。図7(a)に示すオーバーコート指示レイヤーL1は、同図(b)におけるオンピクセル画像データONDにより表される画像(文字「A」)を保護する保護層を実現する。図6(b)の文字レイヤーL3は文字を表すレイヤーであって、前景レイヤーとも呼ばれる。図6(b)の背景レイヤーL4は上記文字以外の背景を表すレイヤーである。
【0052】
本実施形態では、上記のような文字レイヤーL3、背景レイヤーL4、画像レイヤーL2のオンピクセル画像データOND、および画像レイヤーL2のオフピクセル画像データOFDには、それぞれ予め重み情報が設定されている。重み情報は例えば重みを数値で示す重み値である。以下、重み値について説明する。
【0053】
図8は文字レイヤーL3、背景レイヤーL4、画像レイヤーL2のオンピクセル画像データOND、および画像レイヤーL2のオフピクセル画像データOFDの各重み値をそれぞれ示す重みマップWDである。重みマップWDは予めROM21やHDD24に記憶されている。図8に示すように、重みマップWDにおいて、文字レイヤーL3の重み値をWD1とし、背景レイヤーL4の重み値をWD2とする。この場合、文字レイヤーL3の重み値WD1は背景レイヤーL4の重み値WD2よりも高く設定されている。また、画像レイヤーL2におけるオンピクセル画像データONDの重み値をWD3とし、画像レイヤーL2におけるオフピクセル画像データOFDの重み値をWD4とする。この場合、画像レイヤーL2におけるオンピクセル画像データONDの重み値WD3は、画像レイヤーL2におけるオフピクセル画像データOFDの重み値WD4よりも高く設定されている。
【0054】
ここで、操作キー4は重み値設定部4aおよび画像選択設定部4bを含む。重み値設定部4aはユーザが重み値を設定するために操作され、画像選択設定部4bは画像レイヤーL2により表される印刷データのうちの一部に重み値を設定するために操作される。文字レイヤーL3および背景レイヤーL4の各重み値については、操作キー4に設けられた重み値設定部4aによりユーザが予め任意に設定することができる。また、画像レイヤーL2におけるオンピクセル画像データOND、および画像レイヤーL2におけるオフピクセル画像データOFDの各重み値については、操作キー4に設けられた画像選択設定部4bによりユーザが予め任意に設定することができる。このような重み値設定部4aによって、上述とは逆に、すなわち背景レイヤーL4の重み値WD2を文字レイヤーL3の重み値WD1はよりも高く設定することもできる。同様に、画像選択設定部4bによって、画像レイヤーL2におけるオフピクセル画像データOFDの重み値WD4を画像レイヤーL2におけるオンピクセル画像データONDの重み値WD3よりも高く設定することもできる。
【0055】
続いて、制御装置20は、上述のような複数のレイヤーの重み値(重み値の高さ)に基づいて、当該複数のレイヤーのうちの一部のレイヤーを、パッチ画像を被印刷媒体Wに印刷すべきレイヤーとして決定する。具体例を説明すると、原データである印刷データに文字レイヤーL3および背景レイヤーL4が含まれる場合には、制御装置20は、背景レイヤーL4に基づく印刷データは作成せず、文字レイヤーL3のみに基づいて印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させるように吐出ヘッド10を制御する。要するに、制御装置20は、重み値の高いレイヤーのみに基づいて印刷データを生成し、重み値の低いレイヤーについては印刷データを生成しない。この場合、制御装置20は、決定した一部のレイヤーである文字レイヤーL3中の各色から色占有率が閾値以上である色を抽出し、抽出した色に基づいて印刷データを生成してパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させるように吐出ヘッド10を制御する。
【0056】
また、原データにオーバーコート指示レイヤーL1および画像レイヤーL2が含まれる場合には、制御装置20は画像レイヤーL2におけるオンピクセル画像データONDに基づいて印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させるように吐出ヘッド10を制御する。この場合、制御装置20は、オンピクセル画像データOND中の各色から色占有率が閾値以上である色を抽出し、抽出した色に基づいて印刷データを生成してパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させるように吐出ヘッド10を制御する。
【0057】
図9は本実施形態の印刷装置1によるパッチ画像印刷のメインルーチンを示すフローチャートであり、図10図9のパッチ画像印刷処理に係るサブルーチンを示すフローチャートである。
【0058】
図9に示すように、制御装置20は、印刷データに含まれる複数のレイヤーについて、ROM21やHDD24に記憶されている各重み値を参照し、当該重み値に基づいて複数のレイヤーのうちの一部のレイヤーを決定する(ステップS1)。
【0059】
次に、制御装置20は、決定した上記一部のレイヤーの上に位置付けられたオーバーコート指示レイヤーL1が有るか否かを判別する(ステップS2)。一部のレイヤーの上に位置付けられたオーバーコート指示レイヤーL1が有る場合(ステップS2でYES)、制御装置20はオンピクセル画像データONDおよびオフピクセル画像データOFDを生成する(ステップS3)。ここで、オンピクセル画像データONDとは、上述した図7(b)における設定領域SR2を全白にし、設定領域SR1における画像のみ残したデータである。一方、オフピクセル画像データOFDとは、図7(b)における設定領域SR1を全白にし、設定領域SR2における画像のみを残したデータである。
【0060】
次いで、制御装置20はオンピクセル画像データONDにおけるRGB値の各出願頻度をピクセルごとに取得してRAM22又はHDD24に格納する(ステップS4)。そして、制御装置20はオフピクセル画像データOFDにおけるRGB値の各出願頻度をピクセルごとに取得してRAM22又はHDD24に格納する(ステップS5)。その後、制御装置20はパッチ画像印刷処理を実行する(ステップS6)。
【0061】
一方、上記一部のレイヤーの上に位置付けられたオーバーコート指示レイヤーL1が無い場合(ステップS2でNO)、制御装置20は決定した上記一部のレイヤーにおけるRGB値の出現頻度をピクセルごとに取得してRAM22又はHDD24に格納する(ステップS7)。その後、制御装置20はパッチ画像印刷処理を実行する(ステップS6)。
【0062】
以下、パッチ画像印刷処理について説明する。図10に示すように、制御装置20は所定条件に基づき対象カラーを抽出する(ステップS11)。この場合、オーバーコート指示レイヤーL1が有る場合には、制御装置20は、上記所定条件として、オンピクセル画像データOND中の各色から色占有率が閾値以上である色(つまり占有面積が比較的大きい色)を抽出することができる。また、オーバーコート指示レイヤーL1が無い場合には、制御装置20は、上記所定条件として、決定した一部のレイヤー(例えば文字レイヤーL3)中の各色から色占有率が閾値以上である色(つまり占有面積が比較的大きい色)を抽出することができる。
【0063】
次に、制御装置20は、所定数分(例えば100パッチ)の対象カラーを抽出したか否かを判別する(ステップS12)。所定数分の対象カラーを抽出した場合(ステップS12でYES)、制御装置20はパッチ印刷対象となる後位の印刷データが有るか否かを判別する(ステップS13)。なお、RGB色空間からCMYK色空間の印刷データに変換する際の色の歪みを抑制すべく、抽出すべき対象カラーの所定数は最大100であることが望ましい。
【0064】
パッチ印刷対象となる後位の印刷データが有る場合、つまり、原データである印刷データに3つ以上のレイヤーが含まれている場合で且つ後位の印刷データがパッチ印刷の対象となるものである場合には(ステップS13でYES)、制御装置20はステップS11の処理に戻る。
【0065】
一方、パッチ印刷対象となる後位の印刷データが無い場合、つまり、原データである印刷データに2つのレイヤーしか含まれていない場合又は原データである印刷データに3つ以上のレイヤーが含まれている場合でも後位の各印刷データがパッチ印刷の対象にならない場合には(ステップS13でNO)、制御装置20はステップS14の処理に進む。
【0066】
ステップS14では、制御装置20は一部のレイヤーに基づいて印刷データを生成する。そして、制御装置20は、生成した印刷データに基づきパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させるように吐出ヘッド10を制御する(ステップS15)。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置1によれば、従来のように全レイヤーのパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷するのではなく、決定された一部のレイヤーに基づいてパッチ画像が被印刷媒体Wへ印刷される。そのため、メモリ容量を低減できると共に、パッチ画像を選択的に印刷することができる。これにより、ユーザが例えば優先色を決めてパッチ画像を印刷したい場合に選択的な印刷を実現することができる。
【0068】
また、本実施形態では、決定した一部のレイヤーである文字レイヤーL3中の各色から色占有率が閾値以上である色を抽出し、抽出した色に基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させる。これにより、文字レイヤーL3において占有面積が比較的大きい色に基づいたパッチ画像を得ることができる。
【0069】
また、本実施形態では、原データに文字レイヤーL3および背景レイヤーL4が含まれる場合に、制御装置20は文字レイヤーL3に基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させる。これにより、背景画像よりも視覚的な注目度の高いことが多い文字画像のパッチ画像を選択的に被印刷媒体Wへ印刷することができる。
【0070】
また、本実施形態では、原データにオーバーコート指示レイヤーL1および画像レイヤーL2が含まれる場合に、制御装置20は画像レイヤーL2におけるオンピクセル画像データONDに基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させる。これにより、オフピクセル画像データOFDよりも視覚的な注目度の高いことが多いオンピクセル画像データONDの画像を選択的に被印刷媒体Wへ印刷することができる。
【0071】
また、本実施形態では、オンピクセル画像データOND中の各色から色占有率が閾値以上である色を抽出し、抽出した色に基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wへ印刷させる。これにより、オンピクセル画像データONDにおいて占有面積が比較的大きい色に基づいたパッチ画像を得ることができる。
【0072】
また、本実施形態では、文字レイヤーL3および背景レイヤーL4の各重み値を重み値設定部4aにより設定することができる。これにより、ユーザは文字レイヤーL3および背景レイヤーL4の視覚的な注目度に基づき所望の重み値を任意に設定することができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、画像レイヤーL2におけるオンピクセル画像データOND、および画像レイヤーL2におけるオフピクセル画像データOFDの各重み値を画像選択設定部4bにより設定することができる。これにより、ユーザはオンピクセル画像データONDおよびオフピクセル画像データOFDの視覚的な注目度に基づき所望の重み値を任意に設定することができる。
【0074】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば以下の通りである。
【0075】
上記実施形態では、制御装置20は、2つのレイヤーのうち、その一部である1つのレイヤーに基づいて印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wに印刷させるようにしたが、これに限定されるものではない。制御装置20は、例えば3つのレイヤーのうち、その一部である2つ又は1つのレイヤーに基づいて印刷データを生成し、生成した印刷データに基づいてパッチ画像を被印刷媒体Wに印刷させるようにしてもよい。すなわち、本発明においては、制御装置20は複数のレイヤーのうちの一部のレイヤーに基づいてパッチ画像を印刷させるものであって、複数のレイヤーのうちの全部のレイヤーに基づいてパッチ画像を印刷させるものではない。
【0076】
また、上記実施形態では、決定した一部のレイヤー(例えば文字レイヤーL3)中の各色から色占有率が閾値以上である色(つまり占有面積が大きい色)を抽出することとした。また、オンピクセル画像データOND中の各色から色占有率が閾値以上である色(つまり占有面積が大きい色)を抽出することとした。しかし、これに限定されるものではなく、ユーザが所望する色を予め指定できるように構成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、シリアル方式の吐出ヘッド10を採用することとしたが、これに限らず、ライン方式の吐出ヘッドを採用してもよい。
【0078】
さらに、上記実施形態では、アクチュエータ160として圧電素子を採用したが、これに限定されるものではなく、膜沸騰方式でインク滴を吐出するためのヒータ等の他のアクチュエータを採用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 印刷装置
4 操作キー
4a 重み値設定部
4b 画像選択設定部
10,10A,10B 吐出ヘッド
20 制御装置
121 ノズル
121Cr クリアインクノズル
L1 オーバーコート指示レイヤー
L2 画像レイヤー
L3 文字レイヤー
L4 背景レイヤー
OFD オフピクセル画像データ
OND オンピクセル画像データ
SR1 クリアインクを吐出する指令が示されている設定領域
SR2 クリアインクを吐出する指令が示されていない設定領域
W 被吐出媒体
WD1 文字レイヤーの重み値
WD2 背景レイヤーの重み値
WD3 オンピクセル画像データの重み値
WD4 オフピクセル画像データの重み値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10