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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188421
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】スイッチ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/66 20060101AFI20221214BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221214BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01H13/66
G03B17/02
H04N5/225 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096434
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴志
【テーマコード(参考)】
2H100
5C122
5G206
【Fターム(参考)】
2H100AA14
2H100BB01
2H100BB11
5C122EA12
5C122FL06
5C122GE11
5C122HA75
5G206AS10H
5G206AS10M
5G206FS23H
5G206GS07
5G206JU22
5G206KS06
5G206KS09
5G206KU13
5G206MS00
(57)【要約】
【課題】電子機器を大型化させることなく、2段の押下操作の検出位置を簡単に調整することが可能なスイッチを提供する。
【解決手段】電子機器の一例である撮像装置1のレリーズボタン3の少なくとも2段の押下操作を検出するスイッチモジュール20は、導電部21aを有する移動部材21と、移動部材21をレリーズボタン3の押下方向へ移動可能に保持する保持部材26と、信号パターン25c,25dが形成されたフレキシブル基板25と、信号パターン25cと導電部21aとを電気的に接続するコイルバネ22と、信号パターン25dと導電部21aとを電気的に接続可能なコイルバネ23と、レリーズボタン3が押下されたときの移動部材21の押下方向の位置を検出する透過型フォトセンサ27を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部を有する移動部材と、
前記移動部材を第1の方向へ移動可能に保持する保持部材と、
第1の信号パターンと第2の信号パターンが形成された基板と、
常に前記第1の信号パターンと接触し、且つ、前記移動部材が初期位置にある状態で前記導電部に接触する第1の弾性部材と、
常に前記第2の信号パターンと接触し、且つ、前記移動部材が前記初期位置にある状態では前記導電部と接触せずに前記移動部材が前記第1の方向へ移動して第1の位置に到達した際に前記導電部と接触する第2の弾性部材と、
前記移動部材が前記第1の方向へ移動した際の、前記第1の位置とは異なる第2の位置を検出する第1の検出手段と、を備えることを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記第1の検出手段は、前記移動部材が前記第1の方向へ移動した際の前記第2の位置とは異なる第3の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材は前記第1の方向に沿って伸縮可能であり、且つ、前記第1の方向において前記第1の弾性部材は前記第2の弾性部材よりも長く、
前記第1の位置は、前記移動部材によって前記第1の弾性部材が圧縮されることにより前記導電部が前記第2の弾性部材に接触する位置であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記第1の検出手段は、透過型フォトセンサ、反射型フォトセンサおよび磁気センサのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記第1の検出手段は、前記第1の方向における前記移動部材の位置に応じた信号を連続的に出力することを特徴とする請求項4に記載のスイッチ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のスイッチと、
前記第1の弾性部材、前記導電部および前記第2の弾性部材を介した前記第1の信号パターンと前記第2の信号パターンの電気的な接続を検出することにより前記第1の位置を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段による前記移動部材の検出位置を設定する設定手段と、を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
前記設定手段は、ユーザにより操作されるボタンおよび/またはタッチパネルを備え、
前記電子機器の動作を制御する制御手段は、前記ボタンおよび前記タッチパネルの少なくとも一方からの入力にしたがって前記検出位置を設定することを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第2の検出手段により前記第1の位置が検出されたことをトリガとして、前記第1の検出手段を起動することを特徴とする請求項7に記載の電子機器。
【請求項9】
前記移動部材に当接した状態で前記第1の方向へ移動可能に配置され、ユーザによる操作にしたがって前記移動部材と共に移動する操作部材を有し、
前記保持部材は、前記操作部材と当接することにより前記操作部材の前記第1の方向への移動量を規制するストッパ部を有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押下操作方式のスイッチと、このスイッチを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置のレリーズスイッチには、レリーズボタンの1段目の押下操作と2段目の押下操作を検出する2段スイッチが広く用いられている。そして、撮像装置は一般的に、レリーズスイッチにより1段目の押下操作が検出されると測光動作や焦点検出動作を行い、レリーズスイッチにより2段目の押下操作が検出されると撮像動作(画像の記録)が行われるよう構成されている。
【0003】
ここで、レリーズスイッチが2段目の押下操作を検出した後にレリーズボタンがそれ以上は押し込まれない構成では、レリーズボタンを押下する力が撮像装置本体に伝わることで撮像装置全体が揺れてしまい、例えば、像ぶれが発生してしまうことがある。
【0004】
この問題に対して、例えば特許文献1は、互いに絶縁された導電体からなる3つの板バネ状の電気接片がレリーズボタンの押下方向へ重なり合うように配置されたレリーズスイッチを開示している。特許文献1のレリーズスイッチでは、1段目の押下操作は第1接片と第2接片が接触することで検出され、2段目の押下操作は第2接片と第3の接片が接触することで検出され、2段目の押下操作後もレリーズボタンを更に押し込むことが可能となっている。
【0005】
ここで、1段目と2段目の検出位置の最適な間隔は、意思に反した撮影動作を防止する観点から長くしたい場合と、シャッタチャンスを逃さないようにするために短くしたい場合とで異なる。そこで、同レリーズスイッチでは、ユーザの好みに応じて、1段目と2段目の検出位置の間隔調整を、ビス(調整部材)の締め付けによって行うことが可能な構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-49151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたレリーズスイッチでは、1段目と2段目の検出位置の間隔を調整するためには、撮像装置の内部の調整ビスを締め直す必要がある。そして、ユーザが調整ビスの位置を調整することができるようにするためには、例えば、電池室の空間から調整ビスに対してドライバを挿入するためのスペースを確保する必要があり、撮像装置が大型化してしまう。また、撮影者にとっては、2段目の押下操作ではクリック感のない方が操作性の観点からは望ましい。
【0008】
本発明は、クリック感のある押下操作とクリック感のない押下操作を検出可能なスイッチであって、電子機器に組み込んだ状態で電子機器を大型化させることなく、2段階の押下操作の検出位置を簡単に調整することが可能なスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るスイッチは、導電部を有する移動部材と、前記移動部材を第1の方向へ移動可能に保持する保持部材と、第1の信号パターンと第2の信号パターンが形成された基板と、常に前記第1の信号パターンと接触し、且つ、前記移動部材が初期位置にある状態で前記導電部に接触する第1の弾性部材と、常に前記第2の信号パターンと接触し、且つ、前記移動部材が前記初期位置にある状態では前記導電部と接触せずに前記移動部材が前記第1の方向へ移動して第1の位置に到達した際に前記導電部と接触する第2の弾性部材と、前記移動部材が前記第1の方向へ移動した際の、前記第1の位置とは異なる第2の位置を検出する第1の検出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クリック感のある押下操作とクリック感のない押下操作を検出可能なスイッチにおいて、電子機器に組み込んだ状態で電子機器を大型化させることなく、2段階の押下操作の検出位置を簡単に調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の外観斜視図である。
図2】スイッチモジュールの斜視図、分解斜視図、保持部材に対する移動部材の組み込み状態を示す底面図である。
図3】スイッチモジュールの第1の矢視B-B断面図である。
図4】スイッチモジュールの第2の矢視B-B断面図である。
図5】移動部材の移動量と透過型フォトセンサの出力値の関係を示す図である。
図6】移動部材の移動量と荷重の関係を示した図である。
図7】第2実施形態に係るゲーム機の外観を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<第1実施形態>
第1実施形態では、本発明に係るスイッチを備える電子機器として撮像装置を取り上げることとし、本発明に係るスイッチを撮像装置のレリーズボタンと組み合わせた構成について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の外観斜視図である。撮像装置1は、本体部2Aと、本体部2Aに設けられたレンズ部2Bを有する。レンズ部2Bは、撮像光学系を備え、本体部2Aの内部に配置された不図示の撮像素子に被写体からの光を結像させる。本体部2Aの上面には、操作部材として、撮像実行時に押下操作されるレリーズボタン3が配置されている。また、焦点距離を変更する際に操作されるズームレバー4が、レリーズボタン3を中心として回転可能に配置されている。本体部2Aの上面には更に、撮像装置1の電源のオン/オフを切り替えるための操作部材である電源ボタン6が配置されている。本体部2Aは、撮像素子や制御基板等の内部構造物を保護するための外装カバー5によって覆われている。
【0015】
図2は、レリーズボタン3と組み合わされて撮像装置1に実装されるスイッチモジュール20の構成を説明する図である。図2(a)はスイッチモジュール20の斜視図である。図2(b)は、スイッチモジュール20の分解斜視図である。図2(c)は、スイッチモジュール20を構成する保持部材26の底面図であり、移動部材21が組み込まれた状態で示されている。なお、レリーズボタン3とスイッチモジュール20によりレリーズユニットが構成される。
【0016】
図2(a)~(c)には、説明の便宜上、及び、各図の対応を明らかにするために、三次元直交軸(XYZ軸)が示されている。レリーズボタン3の押下方向は、図2(a)に矢印Aで示されている。矢印A方向はZ方向と平行であり、以下に説明するように、スイッチモジュールを構成する移動部材21の移動方向とコイルバネ22,23の伸縮方向は共にZ方向となる。そこで、これらの部材の移動又は変位の方向を表す際には「Z方向」の文言を用いることとし、必要に応じて、「+Z方向(矢印A方向)」及び「-Z方向(矢印A方向の反対方向)」の文言を用いて、移動又は変位の向きを表す。
【0017】
スイッチモジュール20は、図2(a)に示されるように組み立てられた状態では、移動部材21、保持部材26及びフレキシブル基板25が外観に露出する。図2(b)に示されるように、スイッチモジュール20は、保持部材26、移動部材21、第1の弾性部材としての2本のコイルバネ22、第2の弾性部材としての2本のコイルバネ23(、透過型フォトセンサ27及びフレキシブル基板25を有する。
【0018】
コイルバネ22,23は、導電性を有する材料(具体的には金属材料)からなり、レリーズボタン3の押下方向と平行なZ方向に伸縮可能である。本実施形態では、レリーズボタン3の押下方向の反対方向への付勢力は、コイルバネ23の方がコイルバネ22よりも大きくなるように設計されている。なお、説明の便宜上、コイルバネ22,23のフレキシブル基板25側(+Z側)の端を「下端」と称呼し、その反対側(-Z側)の端を「上端」と称呼する。
【0019】
フレキシブル基板25は、本体部2Aの内部に実装された不図示の制御基板に電気信号を伝達する基板である。フレキシブル基板25においてコイルバネ22,23のそれぞれの下端22a,23aに対向する位置には、信号パターン25c,25dが形成されている。透過型フォトセンサ27は、フレキシブル基板25において信号パターン25c,25dが形成されている面と同じ面に実装されている。図2(b)では、透過型フォトセンサ27での発光部から受光部への光(例えば、赤外線)の受送信経路27aが、直方体で模式的に表されている。透過型フォトセンサ27は、受光部が受光した光量(赤外線強度)に応じた電圧を制御基板(不図示)へ出力する。
【0020】
移動部材21は、金属製の板状部材で略十字形状をなしており、フレキシブル基板25に対する電気的接続を取るためにX方向に延在する導電部21aを有する。なお、コイルバネ22,23及び導電部21aを介した信号パターン25c,25d間の電気的接続については、図3乃至図5を参照して後述する。移動部材21において-Z側に延びる延長部21bの先端は、レリーズボタン3(図2に不図示)と接触している(図3(a)参照)。レリーズボタン3が押下されると、移動部材21はレリーズボタン3と共に+Z方向へ移動し、その移動量に応じてコイルバネ22,23の伸縮量(全長)が変化すると共に、移動部材21による受送信経路27aの遮断量(遮断面積)が変化する。その詳細についても、図3乃至図5を参照して後述する。
【0021】
保持部材26は、コイルバネ22,23をZ方向に伸縮可能に収納するバネ収納部26c,26dと、透過型フォトセンサ27を収納するセンサ収納部26hを有する。また、保持部材26は、移動部材21をX方向及びY方向への変位(ぶれ)を抑制しながらZ方向に移動可能に保持するためのガイド部26f1,26f2,26f3及び通路溝26gを有する。より詳しくは、移動部材21の導電部21aが保持部材26の通路溝26gに挿入されてガイド部26f2によりガイドされると共に、移動部材21の延長部21bがガイド部26f1,26f3によりガイドされる。
【0022】
スイッチモジュール20において移動部材21が+Z方向に外力を受けていない状態(以下「初期状態」という)では、コイルバネ22の下端22aは信号パターン25cに接触している。また、初期状態では、移動部材21は、コイルバネ22の付勢力を受けて、その上端22bがコイル中心で導電部21aに接触している。一方、初期状態において、コイルバネ23の下端23aは信号パターン25dに接触し、上端23bは保持部材26に設けられた当接面26d1に当接している。レリーズボタン3が押下されて移動部材21が+Z方向へ移動すると、移動部材21の導電部21aはコイルバネ23の上端23bのコイル中心に当接する。保持部材26では当接面26d1が移動部材21の通路溝26gを跨いで両側(Y方向側)に配置されているため、コイルバネ22,23の付勢力をバランスよく移動部材21で受けることが可能となっている。
【0023】
保持部材26とフレキシブル基板25は、不図示の位置決めピンと穴で位置決めされており、これによってコイルバネ22,23のフレキシブル基板25に対する位置精度が確保されている。また、保持部材26とフレキシブル基板25は、本体部2Aのフレーム(不図示)等に対して穴26mと穴25mを利用してビスにより締結される。そのため、コイルバネ22,23のコイル径を小さくすると共に移動部材21に薄い板材を用いた場合であっても、移動部材21をバランスよく保持することができ、スイッチモジュール20の小型化を図ることが可能となっている。
【0024】
なお、従来技術として前掲した特許文献1(特開2010-49151号公報)では、板バネ状の電気接片を重ねる構成を採用しており、その場合には、組立工程においてフレキシブル基板を折り曲げる等の作業が必要となる。これに対して、スイッチモジュール20では、各部品を一方向に順番に組み付けるだけでよく、簡単に組み立てることが可能となっている。
【0025】
スイッチモジュール20は、レリーズボタン3の2段の押下操作を検出することができ、その検出動作について以下に詳細に説明する。図3(a),(b)及び図4(a),(b)はそれぞれ、図2(a)中に示す矢視B-Bでの断面図である。図3(a),(b)及び図4(a),(b)では、移動部材21の+Z方向への移動量が異なっている。図5は、移動部材21のZ方向での移動量と透過型フォトセンサ27の出力値の関係を示す図である。図6は、移動部材21のZ方向での移動量と、移動部材21の移動に必要な荷重(レリーズボタン3の押下に必要な力)の関係を示す図である。
【0026】
図3(a)は、スイッチモジュール20の初期状態を示している。初期状態のスイッチモジュール20では、コイルバネ22は常に下端22aが信号パターン25cに接触すると共に上端22bが移動部材21の導電部21aに接触した状態で圧縮されており、-Z方向に移動部材21を付勢した状態となっている。よって、信号パターン25cと移動部材21(導電部21a)は、コイルバネ22を介して電気的に接続されている。
【0027】
一方、初期状態においてコイルバネ23は、前述したように、下端23aが信号パターン25dに接触すると共に上端23bは保持部材26の当接面26d1に当接している。そのため、コイルバネ23の上端23bと移動部材21の導電部21aの間にはZ方向に所定のクリアランスが形成されており、信号パターン25dは導電部21aとは電気的に接続されていない。よって、初期状態では、信号パターン25c,25d同士は電気的に接続されていない。
【0028】
前述したように、移動部材21は、延長部21bが保持部材26のガイド部26f1,26f3に挟持されると共に導電部21aがガイド部26f2に挟持されることで、X方向及びY方向へのぶれが抑制された状態でZ方向に進退可能となっている。なお、初期状態における移動部材21の位置を初期位置と称呼する。
【0029】
透過型フォトセンサ27の受送信経路27aは、Z方向において上端27a1から下端27a2までの一定幅を有している。初期状態では、受送信経路27aは移動部材21により全く遮断されていないため、図5に示されるように透過型フォトセンサ27の出力値は最大値P0を示す。
【0030】
図3(b)は、レリーズボタン3が押下されたことによって移動部材21が初期位置から+Z方向へ移動量S1だけ移動した状態を示している。レリーズボタン3が移動量S1だけ押下されると、移動部材21がコイルバネ22を圧縮しながら同じ移動量S1だけ+Z方向へ移動し、移動部材21の導電部21aがコイルバネ23の上端23bに接触する。換言すれば、移動量S1は、初期状態においてコイルバネ23の上端23bと移動部材21の導電部21aの間に形成されるZ方向のクリアランスと言うことができる。これにより、フレキシブル基板25の信号パターン25dと移動部材21が、コイルバネ23を介して接続される。よって、フレキシブル基板25の信号パターン25cと信号パターン25dが、コイルバネ22,23及び移動部材21を介して電気的に接続された状態となる。
【0031】
撮像装置1の本体部2Aに設けられた不図示の制御手段(マイクロコンピュータ)は、信号パターン25c,25dが電気的に接続されたことを検出すると、レリーズボタン3の1段目の押下操作が行われたものと判断し、撮影準備動作を開始する。換言すれば、レリーズボタン3の押下によって移動部材21が初期位置から移動量S1だけ+Z方向に移動した位置(第1の位置)へ到達すると、撮影準備動作が開始される。撮影準備動作は、測光動作や焦点検出動作を含む。
【0032】
レリーズボタン3を押下したユーザは、レリーズボタン3が押下されて移動部材21の導電部21aがコイルバネ23の上端23bに当接すると、レリーズボタン3の押し込みが妨げられる(障害物に突き当たる)感覚(クリック感)を覚える。言い替えれば、ユーザは、撮影準備動作を行うためには、レリーズボタン3がクリック感が得られるまでレリーズボタン3を押下すればよい。
【0033】
図3(b)の1段目の押下状態での透過型フォトセンサ27の出力は、透過型フォトセンサ27の受送信経路27aの一部が移動部材21の凸部21cによって遮られるため、図3(a)の初期状態よりも低下する。具体的には図5に示されるように、移動部材21が移動量S1で受送信経路27aの一部を遮った状態では、透過型フォトセンサ27の出力は、最大値P0より小さい出力値P1を示す。また、図3(b)の1段目の押下状態では、コイルバネ22がS1だけ圧縮されることにより、図6に示されるように、移動部材21はコイルバネ22から荷重F1を受けている状態となる。
【0034】
移動部材21を図3(b)の1段目の押下状態から更に+Z方向へ移動させるためには、コイルバネ22に加えてコイルバネ23を圧縮する必要がある。つまり、コイルバネ23の付勢力Faより大きい押圧力を移動部材21に加える必要がある。コイルバネ23が圧縮され始める際の移動部材21の移動量Smでは、移動部材21を押下するために必要な荷重Fmは、荷重F1に付勢力Faを加えた力となる。
【0035】
図4(a)は、図3(b)の1段目の押下状態からレリーズボタン3が更に押下されたことによって移動部材21が初期位置から+Z方向へS2(>S1)だけ移動した状態を示している。図4(a)の状態は、レリーズボタン3の2段目の押下操作が検出される状態を示している。
【0036】
移動部材21の初期位置からの移動量がS2となった状態では、図5に示されるように移動部材21の凸部21cが受送信経路27aを遮る面積が図3(b)の1段目の押下状態よりも大きくなるため、透過型フォトセンサ27の出力値はP2へ低下する。制御手段は、透過型フォトセンサ27の出力値がP2に低下したことを検出すると、レリーズボタン3の2段目の押下操作が行われたものと判断し、撮影動作(撮像素子に対する所定時間の露光、画像データの生成、保存に至る一連の処理)を実行する。
【0037】
図6に示されるように、移動部材21の移動量がS2となるまでレリーズボタン3を押し込むために必要な荷重は、F2となる。スイッチモジュール20は、2段目の押下操作が行われた後、レリーズボタン3(移動部材21)を更に+Z方向へ押し込むことができるよう構成されている。そのため、撮影動作が行われる(シャッタが切られる)際に、レリーズボタン3を押下する力が撮像装置1に伝達され難くなって撮像装置1に振動やぶれが発生し難くなることで、像ぶれ等の発生が抑制されて画質の高い画像を得ることが可能となる。
【0038】
2段目の押下操作での透過型フォトセンサ27の出力値P2は、‘P2=P1×k’、で表される。係数kは、2段目の押下操作の位置を決めるために、0~1の範囲で定められる。図5に示すように、例えば、係数がk1で透過型フォトセンサ27の出力がP2である場合に、係数kをk2(>k1)とすると出力はP2c(>P2)と大きくなり、このときの移動部材21の移動量はS2からS2c(<S2)へと小さくなる。逆に、係数kをk1より小さくすると、透過型フォトセンサ27の出力は小さくなり、移動部材21の移動量は大きくなる。例えば、図5に示されるように、係数kをk3(<k1)とすると透過型フォトセンサ27の出力がP3(<P2)となり、移動部材21の移動量がS3(>S2)となる。このように、係数kの値を変更することによって、2段目の押下操作の検出位置を変更することが可能となる。
【0039】
ユーザは、不用意に撮影動作が実行される(シャッタが切られる)ことを避けたい場合には、係数kを小さくして、1段目の押下操作位置と2段目の押下操作位置との間の距離を大きくすることができる。一方、ユーザは、撮影準備動作後に速やかに撮影動作に移りたい(シャッタチャンスを逃したくない)場合には、比率kを大きくして、1段目の押下操作位置と2段目の押下操作位置との間の距離を小さくすることができる。
【0040】
撮像装置1は、撮像装置1に設けられるメニュー画面(不図示)に対するユーザの操作(メニュー操作)によって係数kを変更し、設定することができるよう構成される。メニュー操作は、公知の技術を用いて、撮像装置1の表示部(不図示)に表示されたメニュー画面に対するタッチ操作や各種の操作ボタン(不図示)の操作により行うことができる。その際、係数kの設定は、ユーザにとってわかりやすいく、より簡単に行うことができることが望ましい。例えば、タッチパネルを備える表示部に撮影準備動作の開始位置から撮影動作の開始位置までの距離を表すレベルゲージを一端を「短」とし、他端を「長」として表示する。また、レベルゲージに対して両端間を移動可能なマーカーを表示し、「短」には「と「長」にそれぞれ設定した場合のメリットデメリットをメッセージ表示する。ユーザは、タッチ操作又はボタン操作によってマーカーを所望の位置に移動させて、SETボタン等を押下する等の入力操作を行うことにより、所望の位置に撮影動作の開始位置を設定することができる。つまり、移動量がS2となる位置(1段目の押下操作の検出位置から2段目の押下操作の検出位置までのレリーズボタン3(移動部材21)の移動量)を自由に変更することができる。
【0041】
なお、透過型フォトセンサ27の出力は、部品個体差や経年劣化、温度依存性等が原因となって、撮像装置1の個体ごとにばらつくことがある。しかし、ユーザは、実際に使用する際に係数kを設定することによって、2段目の押下操作の検出位置を所望の位置に設定することができる。
【0042】
図4(b)は、レリーズボタン3が最大押下位置まで押し込まれた状態を示している。レリーズボタン3が2段目の押下操作の検出位置から更に+Z方向へ押し込まれると、コイルバネ22,23が更に圧縮され、レリーズボタン3の下端3aが保持部材26の上端のストッパ部26kに当接することで、レリーズボタン3の押下が規制される。最大押下位置とは、こうしてレリーズボタン3をそれ以上は押し込むことができなくなる位置を指す。レリーズボタン3が最大押下位置に到達した状態では、透過型フォトセンサ27の受送信経路27aは全体が移動部材21によって遮られている。そのため、移動部材21の初期位置からの移動量がSfとなる最大押下位置では、図5に示されるように、透過型フォトセンサ27の出力値は0(ゼロ)となっている。
【0043】
なお、上記説明から明らかなようにスイッチモジュール20では、1段目の押下操作を、コイルバネ22,23及び導電部21aを介して信号パターン25c,25dを電気的に接続することにより検出している。つまり、透過型フォトセンサ27からの出力がS1になったことをトリガとして1段目の押下操作を検出しているわけではないため、撮像装置1では、撮影待機状態では透過型フォトセンサ27を起動しておく必要はない。よって、1段目の押下操作が検出された際に、撮影準備動作を行うと共に透過型フォトセンサ27を起動するよう構成してもよく、これにより消費電力を低減させることができる。なお、撮影待機状態とは、撮像装置1の電源がオンされた状態で、レリーズボタン3が操作されていない状態を指す。
【0044】
ここまで、1段目の押下操作から2段目の押下操作までのレリーズボタン3のストロークを調整する方法について説明した。続いて、透過型フォトセンサ27の出力値に対する閾値を更に多く設けることにより、スイッチモジュール20を3段以上の多段スイッチとして用いる例について説明する。
【0045】
例えば、1段目の押下操作で測光動作を行い、2段目の押下操作で焦点検出動作を行い、3段目の押下操作で撮影動作を行う。この場合、撮影待機状態において透過型フォトセンサ27は電源の供給を受けて動作しているものとする。そして、透過型フォトセンサ27の出力値の閾値として、出力値P0より小さく、且つ、出力値P1より大きい値を設定する。レリーズボタン3が押下されて透過型フォトセンサ27の出力値が閾値まで低下すると、1段目の押下操作が検出されて測光動作が開始される。レリーズボタン3が更に押下されて移動部材21がコイルバネ23に当接し、信号パターン25c,25dが電気的に接続されることをトリガとして焦点検出動作が行われる。レリーズボタン3が更に押下されて、透過型フォトセンサ27の出力値がS2c(S2又はS3でもよい)に低下すると撮影動作が行われる。
【0046】
この例では、焦点検出動作を行う前に測光動作を行いたい場合であっても、レリーズボタン3に対する押下操作で測光動作を行うことができるため、別途に測光開始を指示するための操作ボタンを設ける必要がなくなる。そして、レリーズボタン3のみで、測光動作、焦点検出動作及び撮影動作を連続的に行うことが可能となり、ユーザビリティを向上させることができる。
【0047】
3段の押下操作のそれぞれにどのような動作を割り当てるかは、上記の例に限られるものではなく、スイッチモジュール20を3段の押下操作を検出可能な構成とすることにより、ユーザのニーズに広く対応することが可能となる。また、スイッチモジュール20では、透過型フォトセンサ27の受送信経路27aの全域(上端27a1~下端27a2)に対応する出力範囲(P0~0)に、複数の検出位置を自由に設定することができる。これにより、ユーザは、4段以上の多段スイッチを構成して、押下操作に伴って起動する処理を細分化させることも可能である。
【0048】
<第2実施形態>
図7は、スイッチモジュール20を備えるゲーム機30の上面図である。ゲーム機30は、表示部31、操作ボタン32、多段スイッチボタン33及び外装カバー34を有する。表示部31は、ゲーム映像等を映し出す液晶ディスプレイ等である。2カ所に設けられた操作ボタン32は、ゲームを行う際にユーザが操作するタクトスイッチである。多段スイッチボタン33は、第1実施形態で説明したスイッチモジュール20(不図示)と組み合わされて、多段スイッチボタン33が押下された際の移動量に応じて所定の動作がおこなわれるようにするための操作部材である。つまり、多段スイッチボタン33は、第1実施形態に係る撮像装置1のレリーズボタン3に相当する部材である。外装カバー34は、制御基板や電源部を内包する筐体(不図示)の外側を覆って、筐体を保護している。
【0049】
スイッチモジュール20の動作については、上記第1実施形態での説明の通りであり、押下操作での多段スイッチボタン33の押下量(移動部材21の移動量)に応じて、透過型フォトセンサ27からの出力は連続的に、且つ、略直線的に変化する(図5参照)。これを利用して、多段スイッチボタン33を、タクトスイッチとは異なる用途、例えば、ゲーム中のリニアな操作に用いることが可能になる。
【0050】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、移動部材21に金属製の板状部材を用いているが、延長部21b及び凸部21cに限っては、非導電性(誘電性)の材料で形成されていてもよい。また、フレキシブル基板25に信号パターン25c,25dを設けずに、移動部材21がコイルバネ23に当接するタイミング(移動部材21の移動量S1)で、透過型フォトセンサ27の出力値P1をトリガとして撮影準備動作を行うようにしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、初期状態では透過型フォトセンサ27の受送信経路27aが解放されている構成としたが、逆に、初期状態では透過型フォトセンサ27の受送信経路27aが移動部材21により遮蔽された構成としてもよい。この場合、移動部材21が+Z方向へ移動するに伴って受送信経路27aが解放される構成としてもよい。この場合、例えば、移動部材21の所定位置に所定の形状(受送信経路27aと同様の長方形)の穴を設ければよい。この場合も、透過型フォトセンサ27の出力値に応じた多段での押圧操作を検出することが可能である。
【0053】
上記実施形態では、移動部材21の位置検出手段として透過型フォトセンサ27を使用した構成を取り上げたが、透過型フォトセンサ27に代えて、反射型フォトセンサや磁気センサを用いることも可能である。反射型フォトセンサを用いた場合には移動部材21を反射部材として使用した構成とすればよく、磁気センサを用いた場合には移動部材21に磁石を取り付けた構成とすればよい。
【0054】
上記実施形態では、本発明に係るスイッチを撮像装置のレリーズボタン及びゲーム機の操作ボタンに適用した構成について説明したが、本発明はこれらに限られず、その他の各種の電子機器に設けられる2段スイッチに適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 撮像装置
3 レリーズボタン
20 スイッチモジュール
21 移動部材
22,23 コイルバネ
25 フレキシブル基板
25c,25d 信号パターン
26 保持部材
27 透過型フォトセンサ
33 多段スイッチボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7