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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188424
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】夾雑物除去スクリーン装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 5/08 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
E02B5/08 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096443
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢二
(72)【発明者】
【氏名】松村 学
(57)【要約】
【課題】効率的に夾雑物を移送できる夾雑物除去スクリーン装置を提供する。
【解決手段】生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6は、厚さ方向に距離をあけて配置され、夾雑物Xの移送方向に複数の第1段部611が設けられ上方および下方に繰り返し移動する複数の第1稼働スクリーン部材61と、第1稼働スクリーン部材61どうしの間に配置され、夾雑物Xの移送方向に複数の第2段部621が設けられ上方および下方に繰り返し移動する複数の第2稼働スクリーン部材62とを備え、第1稼働スクリーン部材61は、第2稼働スクリーン部材62とは異なるタイミングで上方および下方に向かって移動するものである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水に含まれる夾雑物を上方に向けて移送する夾雑物除去スクリーン装置において、
厚さ方向に距離をあけて配置され、夾雑物の移送方向に複数の段部が設けられ上方および下方に繰り返し移動する複数の第1稼働スクリーン部材と、
前記第1稼働スクリーン部材どうしの間に配置され、夾雑物の移送方向に複数の段部が設けられ上方および下方に繰り返し移動する複数の第2稼働スクリーン部材とを備え、
前記第1稼働スクリーン部材は、前記第2稼働スクリーン部材とは異なるタイミングで上方および下方に向かって移動するものであることを特徴とする夾雑物除去スクリーン装置。
【請求項2】
前記第1稼働スクリーン部材および前記第2稼働スクリーン部材それぞれを上方および下方に移動させる共通のアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項1に記載の夾雑物除去スクリーン装置。
【請求項3】
前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材は、交互に配置されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の夾雑物除去スクリーン装置。
【請求項4】
前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材の間の間隔を維持する間隔維持部材を備えていることを特徴とする請求項3に記載の夾雑物除去スクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水に含まれる夾雑物を上方に向けて移送する夾雑物除去スクリーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理システムでは、一般的に、沈砂池、最初沈殿池、反応タンクおよび最終沈殿池の記載順に、下水からなる汚水が流れて浄化されていく。この中で、例えば、最初沈殿池では、池底部に沈殿した汚泥を含んだ汚水(生汚泥)が、汚泥ポンプ等によって最初沈殿池の外部に移送され、濃縮、脱水されたのち焼却される。ここで、生汚泥には、し渣等の夾雑物が含まれているため、一般的に、濃縮、脱水される前に、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置によって生汚泥から夾雑物が除去される。また、最初沈殿池の水面付近に浮いている夾雑物のスカムを含んだ汚水(スカム水)は、スカムピットに集められ、その後、スカムピットからスカムポンプによって最初沈殿池の外部に移送される。最初沈殿地の外部に移送されたスカム水は、スカム用夾雑物除去スクリーン装置によってスカムが除去されたのち下水処理場内に返水される。これらの夾雑物除去スクリーン装置は、最初沈殿池から生汚泥やスカム水を受け入れた水槽に配置される(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1および特許文献2に記載された夾雑物除去スクリーン装置は、複数の固定スクリーン部材と、これら複数の固定スクリーン部材の間に配置された稼働スクリーン部材とを備えている。固定スクリーン部材は、斜め上方に向かってそれぞれ延在し、最上部が水槽の水面から突出している。また、固定スクリーン部材は、複数の固定段部が延在方向に並んで設けられた階段状をしている。稼働スクリーン部材も、斜め上方に向かって延在し、複数の稼働段部が延在方向に並んで設けられた階段状をしている。稼働スクリーン部材は、固定スクリーン部材に対して上方および下方に繰り返し移動することによって固定スクリーン部材の最上部に向けて夾雑物を移送するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-114574号公報
【特許文献2】特開2015-017462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載された夾雑物除去スクリーン装置は、稼働スクリーン部材が上方および下方に1サイクル移動することで、固定スクリーン部材の固定段部の1段上に夾雑物を移送するものである。このため、固定スクリーン部材の最上部まで夾雑物を移送するためには、稼働スクリーン部材を多数サイクル移動させる必要がある。しかしながら、近年ではさらに効率的に夾雑物を移送できる夾雑物除去スクリーン装置が求められている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、効率的に夾雑物を移送できる夾雑物除去スクリーン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の夾雑物除去スクリーン装置は、汚水に含まれる夾雑物を上方に向けて移送する夾雑物除去スクリーン装置において、
厚さ方向に距離をあけて配置され、夾雑物の移送方向に複数の段部が設けられ上方および下方に繰り返し移動する複数の第1稼働スクリーン部材と、
前記第1稼働スクリーン部材どうしの間に配置され、夾雑物の移送方向に複数の段部が設けられ上方および下方に繰り返し移動する複数の第2稼働スクリーン部材とを備え、
前記第1稼働スクリーン部材は、前記第2稼働スクリーン部材とは異なるタイミングで上方および下方に向かって移動するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の夾雑物除去スクリーン装置によれば、前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材それぞれが夾雑物を上方に向けて移送するので、効率的に夾雑物を移送できる。
【0009】
ここで、前記第1稼働スクリーン部材は、前記第2稼働スクリーン部材が下方に移動しているときに上方に移動し、該第2稼働スクリーン部材が上方に移動しているときに下方に移動するものであってもよい。また、前記第1稼働スクリーン部材および前記第2稼働スクリーン部材それぞれは、円軌道で移動するものであってもよい。さらに、前記第1稼働スクリーン部材に設けられた段部を第1段部とし、前記第2稼働スクリーン部材に設けられた段部を第2段部とした場合、該第1稼働スクリーン部材は、該第1段部から該第1段部よりも上方の該第2段部に夾雑物を移送するものであり、該第2稼働スクリーン部材は、該第2段部から該第2段部よりも上方の該第1段部に夾雑物を移送するものであってもよい。
【0010】
また、本発明の夾雑物除去スクリーン装置において、前記第1稼働スクリーン部材および前記第2稼働スクリーン部材それぞれを上方および下方に移動させる共通のアクチュエータを備えた態様であってもよい。
【0011】
この態様によれば、前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材のうち一方が上方に移動し、他方が下方に移動しているときは、該第1稼働スクリーン部材の重量と該第2稼働スクリーン部材の重量が相殺されるので、この夾雑物除去スクリーン装置を省電力化できる。また、前記アクチュエータを増設する必要がないので、この夾雑物除去スクリーン装置を安価に構成できる。
【0012】
さらに、本発明の夾雑物除去スクリーン装置において、前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材は、交互に配置されたものであってもよい。
【0013】
こうすることで、固定スクリーン部材を省略して夾雑物除去スクリーン装置を小型化できる。
【0014】
加えて、本発明の夾雑物除去スクリーン装置において、前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材の間の間隔を維持する間隔維持部材を備えていてもよい。
【0015】
前記間隔維持部材によって、前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材の間隔を一定間隔に維持できる。また、前記第1稼働スクリーン部材と前記第2稼働スクリーン部材が接触してしまうことを確実に防止できる。
【0016】
ここで、前記間隔維持部材は、前記第1稼働スクリーン部材または前記第2稼働スクリーン部材に着脱可能に取り付けられ、交換可能なものであってもよい。また、前記間隔維持部材は樹脂製のものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、効率的に夾雑物を移送できる夾雑物除去スクリーン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】下水処理場の中の一部の施設を模式的に示す図である。
図2】本実施形態の生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置が設けられた生汚泥用スクリーンユニットの正面図である。
図3図2に示す生汚泥用スクリーンユニットのA-A断面図である。
図4図2に示す生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置の正面図である。
図5】第1間隔保持用スペーサおよび第2間隔保持用スペーサの周囲を切断して示す部分拡大断面図である。
図6】第1稼働スクリーン部材と第2稼働スクリーン部材の動作を段階的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、下水処理場の中の一部の施設を模式的に示す図である。この図1には、沈殿池1と、生汚泥用スクリーンユニット2と、スカムピット3と、スカム用スクリーンユニット4が示されている。
【0021】
図1に示す沈殿池1は、長手方向の一端側(図1では左側)から、汚水(下水)を受け入れ、受け入れた汚水に含まれる汚泥を池底部に沈殿させ、他端側(図1では右側)から排水する。以下、図1における左方向を上流と称し、図1における右方向を下流と称する。この沈殿池1の上流側の池底部には、汚泥ピット11が設けられており、下流側の水面付近には排水樋12が設置されている。沈殿池1では、池底部に沈殿した汚泥を、不図示の汚泥掻寄機によって汚泥ピット11に集める。汚泥ピット11に集められた汚泥は、汚泥ポンプ13によって沈殿池1の外部に設置された生汚泥用スクリーンユニット2に送られる。汚泥ピット11に集められた汚泥には、し渣等の夾雑物が含まれている。以下、汚泥ピット11から生汚泥用スクリーンユニット2に送られる、汚泥を含んだ汚水を、生汚泥と称することがある。生汚泥用スクリーンユニット2には、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6が設けられている。詳しくは後述するように、この生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6によって、生汚泥に含まれている夾雑物が除去される。生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6によって夾雑物が除去された生汚泥は、その後、汚泥濃縮処理設備や汚泥脱水処理設備に送られる。また、沈殿池1では、水面付近に浮いているスカムを、不図示のスカム掻寄機によって排水樋12まで掻き寄せる。排水樋12は、スカムピット3に接続しており、スカムを含んだ汚水(スカム水)は、スカムピット3に集められ、その後、スカムピット3からスカムポンプ31によって沈殿池1の外部に設置されたスカム用スクリーンユニット4に送られる。スカムピット3に集められたスカム水にも、し渣等の夾雑物が含まれている。スカム用スクリーンユニット4にはスカム用夾雑物除去スクリーン装置7が設けられている。このスカム用夾雑物除去スクリーン装置7によって、スカム水に含まれている夾雑物であるスカムが除去される。このスカム用夾雑物除去スクリーン装置7によってスカムが除去された汚水は、下水処理場内に返水される。
【0022】
続いて、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6が設けられた生汚泥用スクリーンユニット2を例にあげて説明するが、スカム用夾雑物除去スクリーン装置7が設けられたスカム用スクリーンユニット4についても同様である。これら生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6およびスカム用夾雑物除去スクリーン装置7は、何れも夾雑物除去スクリーン装置の一例に相当する。また、生汚泥用スクリーンユニット2およびスカム用スクリーンユニット4は、何れもスクリーンユニットの一例に相当する。
【0023】
図2は、本実施形態の生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置が設けられた生汚泥用スクリーンユニットの正面図である。
【0024】
図2示すように、生汚泥用スクリーンユニット2は、水槽5と、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6とを備えている。図2に示す生汚泥用スクリーンユニット2は、図の左側から生汚泥を受け入れる(図中の太い矢印参照)。以下、図2における左側を上流側と称し、右側を下流側と称する。また、図2において紙面に直交する方向を幅方向と称する。生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6は、詳しくは後述するスクリーン体60を備えている。図2では、スクリーン体60の上流側面のみを太い破線で示している。
【0025】
図2に示す水槽5の上流側の側壁の下側略半分には、底部5aに向かうほど下流側に傾斜した傾斜部51が設けられており、下流側の側壁の下側略半分には、底部5aに向かうほど上流側に傾斜した傾斜部52が設けられている。したがって、水槽5は、底部5a側が狭くなった形状のものである。この水槽5は、図1に示す汚泥ピット11に集められた汚泥を、生汚泥として受け入れるものである。水槽5の上流側には、流入管53が設けられている。生汚泥は、汚泥ポンプ13を駆動することによって流入管53に供給され、この流入管53の先端部531から水槽5内に流入し、下流側に向けて流れていく(図中の多数の細い矢印参照)。なお、流入管53の先端部531は、上方から見ると下流側に向かうに従って拡がった扇状に形成されている。また、生汚泥に含まれている、し渣等の夾雑物Xは、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6が備えているスクリーン体60に遮られ、スクリーン体60の上流側における水面付近に溜まった状態になっている。スクリーン体60は、制御部66によって制御されるモータ654によって駆動される。このモータ654は、アクチュエータの一例に相当する。モータ654にはギヤボックス655が取り付けられている。そのギヤボックス655は、水槽5の下流側上端部分に形成された載置台56に固定されている。
【0026】
生汚泥用スクリーンユニット2には、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6におけるスクリーン体60よりも上流側に非常用オーバーフローユニット54が設けられている。また、スクリーン体60よりも下流側に排水用オーバーフローユニット55が設けられている。非常用オーバーフローユニット54も排水用オーバーフローユニット55も、排水枡541,551と、堰板542,552とを有している。これらの排水枡541,551は、いずれも水槽5の幅方向外側に張り出すように設けられている。排水用オーバーフローユニット55の堰板552は、水槽5内と排水枡551内との境界部分に設けられ、水槽5内と排水枡551内は、堰板552よりも上の部分でつながっており、堰板552の上端よりも下の部分ではつながっていない。水槽5の水位が、堰板552の上端の高さ位置を越えると、水槽5内の汚水は、堰板552を越えて、排水枡551内に流れ込む。ここにいう水槽5内の汚水は、スクリーン体60を通過した生汚泥、すなわち、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6によって夾雑物Xが除去された汚泥を含んだ汚水であり、この汚水は、後処理工程の設備である汚泥濃縮処理設備や汚泥脱水処理設備に送られる。このように、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6に設けられたスクリーン体60を通過した生汚泥は、排水用オーバーフローユニット55によって、生汚泥用スクリーンユニット2の外に排水される。
【0027】
非常用オーバーフローユニット54の構造も、排水用オーバーフローユニット55の構造と同じであるが、非常用オーバーフローユニット54は排水用オーバーフローユニット55よりも高い位置に設けられている。生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6が故障した場合など、水槽5の水位が通常の水位から上昇し、非常用オーバーフローユニット54の堰板542を越えると、非常用オーバーフローユニット54の排水枡541内に水槽5内の生汚泥が流れ込む。ここにいう水槽5内の生汚泥は、スクリーン体60を通過する前の生汚泥、すなわち、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6によって夾雑物が除去される前の汚泥を含んだ汚水であり、この汚水は、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の上流端に返水される。
【0028】
続いて、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6について説明する。生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6は、スクリーン体60と、ベースフレーム64と、駆動機構65と、制御部66と、シュート67とを有している。スクリーン体60は、ベースフレーム64の内部に配置されており、ベースフレーム64上流端の上側部分は、取っ手6411の付いたフロントカバー641によって覆われている。このフロントカバー641は、ベースフレーム64に対して着脱自在なものである。ベースフレーム64は、水槽5の縁に固定された一対の支持脚59に取り付けられている。なお、図2には一対の支持脚59のうちの一方が示されているが、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を幅方向に挟んで他方の支持脚59が水槽5の反対側の縁に固定されている。ベースフレーム64は、支持軸59aによって回転可能に支持脚59に連結されており、不図示のボルトにより図2に示した角度で固定されている。ベースフレーム64の構成については後にさらに説明する。
【0029】
スクリーン体60は、下部が水槽5の上流側に位置し、上部が下流側に位置するように、傾斜した姿勢で水槽5内に配置されている。このスクリーン体60の最上部は、非常用オーバーフローユニット54の堰板542よりも上方に位置している。詳しくは後述するように、スクリーン体60が上方および下方に繰り返し移動することで、夾雑物Xは、スクリーン体60の最上部に移送される。そして、スクリーン体60の最上部に到達した夾雑物Xは、シュート67内に投下される。シュート67は、排出口671が生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の外に開口している。シュート67内に投下された夾雑物Xは、その排出口671から排出される。
【0030】
図3は、図2に示す生汚泥用スクリーンユニットのA-A断面図である。また、図4は、図2に示す生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置の正面図である。なお、図3では、ベースフレーム64の一部を図示省略している。また、図4では、図2に示したモータ654とギヤボックス655を図示省略している。
【0031】
図3に示すように、スクリーン体60は、複数の第1稼働スクリーン部材61と、複数の第2稼働スクリーン部材62とから構成されている。第1稼働スクリーン部材61は、厚さ方向である幅方向に距離をあけて配置され、第2稼働スクリーン部材62は、第1稼働スクリーン部材61どうしの間に配置されている。換言すれば、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62は、その厚さ方向に交互に並んで配置されている。本実施形態では、第1稼働スクリーン部材61の数は、第2稼働スクリーン部材62よりも1つ多い。ただし、第1稼働スクリーン部材61の数と第2稼働スクリーン部材62の数は同数であってもよい。また、第1稼働スクリーン部材61の数は、第2稼働スクリーン部材62よりも1つ少なくてもよい。第1稼働スクリーン部材61および第2稼働スクリーン部材62それぞれは、上方に向かうに従って下流側に位置するように傾斜して配置された長尺状のステンレス製の部材である。ただし、第1稼働スクリーン部材61および第2稼働スクリーン部材62は、生汚泥に対する耐食性と耐久性に優れていれば、他の金属や樹脂などで構成されていてもよく、それぞれ異なる材質で構成されていてもよい。第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の厚さはそれぞれ2mmである。この厚みは、スクリーン部材の長さ、除去する夾雑物の特性などに応じて2mm以上9mm以下に設定される。また、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62幅方向の間隔Wは2mmである。この間隔Wは、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を通過する生汚泥の流量と装置の大きさのバランスから設定された、上流側と下流側をつなぐ隙間であり、除去する夾雑物の特性などに応じて0.5mm以上25mm以下に設定される。
【0032】
図4に示すように、第1稼働スクリーン部材61には、長手方向に間隔をあけて4箇所に、厚さ方向両側に突出した第1間隔保持用スペーサ612が設けられている。なお、第1稼働スクリーン部材61に設けられる第1間隔保持用スペーサ612の数は、第1稼働スクリーン部材61の長手方向の長さなどに応じて設定すればよく任意の数で構わない。また、第2稼働スクリーン部材62には、長手方向に間隔をあけた4箇所に、厚さ方向両側に突出した第2間隔保持用スペーサ622が設けられている。なお、第2稼働スクリーン部材62に設けられる第2間隔保持用スペーサ622の数は、第2稼働スクリーン部材62の長手方向の長さなどに応じて設定すればよく任意の数で構わない。これら第1間隔保持用スペーサ612および第2間隔保持用スペーサ622は、間隔保持部材の一例に相当する。これらの第1間隔保持用スペーサ612および第2間隔保持用スペーサ622と、固定最上段部63によって、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62との間隔Wが維持されている。第1間隔保持用スペーサ612、第2間隔保持用スペーサ622および固定最上段部63の構成については後に詳述する。生汚泥に含まれている夾雑物X(図2参照)のうち、間隔Wを通過できなかった夾雑物Xは、スクリーン体60の上流側でこの間隔Wを塞ぐようにしてスクリーン体60に捕捉される。なお、図3では、図面を簡略化するために、第1稼働スクリーン部材61、複数の第2稼働スクリーン部材62および固定最上段部63の一部を省略している。また、図3では、第1稼働スクリーン部材61、複数の第2稼働スクリーン部材62および固定最上段部63の厚さおよび第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62との間隔Wが誇張して示されている。
【0033】
第1稼働スクリーン部材61の上流側には、第1稼働スクリーン部材61の長手方向に沿って第1段部611が複数設けられている。また、第2稼働スクリーン部材62の上流側には、第2稼働スクリーン部材62の長手方向に沿って第2段部621が複数設けられている。ここで、第1稼働スクリーン部材61の長手方向および第2稼働スクリーン部材62の長手方向は、後述するように、夾雑物を移送する移送方向になる。すなわち、第1稼働スクリーン部材61および第2稼働スクリーン部材62は、いずれも夾雑物の移送方向に並んだ階段状の段部(ステップ)が設けられたものである。また、第1稼働スクリーン部材61および第2稼働スクリーン部材62の最上部近傍には、固定最上段部63が設けられている。固定最上段部63は、生汚泥の水面よりも上方に位置している。固定最上段部63は、櫛歯状をしており、歯部分631が第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62との間に挿入されている。また、固定最上段部63の根本部分632は、一対のサイドフレーム642間に掛け渡され、一対のサイドフレーム642それぞれにねじによって着脱可能に取り付けられている。この固定最上段部63は、最上段部まで移送されてきた夾雑物Xを第1稼働スクリーン部材61または第2稼働スクリーン部材から相対的にすくい上げてシュート67内に投下するためのものである。
【0034】
図3に示すように、ベースフレーム64は、一対のサイドフレーム642と、一対の軸受643と、不図示のクロスプレートと、不図示の一対のサイドカバーとを有している。一対のサイドフレーム642は、水槽5の幅方向の両端側部分それぞれに水槽5の側壁面5bに沿って水槽5の底部5aから水槽5の上端よりも上方まで延在している。サイドフレーム642どうしは幅方向に450mm離間している。なお、サイドフレーム642どうしの間隔は水槽5の大きさや、生汚泥用スクリーンユニット2に送られてくる生汚泥の量などに応じて設定すればよく任意の間隔で構わない。サイドフレーム642どうしの幅方向の離間距離は、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の夾雑物の処理能力と、水槽5に流入してくる生汚泥の量と質に応じて適宜決定される。軸受643は、サイドフレーム642それぞれに固定されている。クロスプレートは、幅方向に延在し、サイドフレーム642どうしを連結する板状の部材である。これら軸受643およびクロスプレートは、水槽5よりも上方に配置されている。一対のサイドカバーは、サイドフレーム642それぞれに取り付けられている。このサイドカバーは、幅方向端側にゴムシールを有するステンレス製の板材である。このサイドカバーは、水槽5の幅方向両端部分で、サイドフレーム642の上流側端部と水槽の側壁面5bの間を塞いでいる。上流側からサイドカバーに向かって流れてきた生汚泥は、サイドカバーによって幅方向中央側に寄せ集められて一対のサイドフレーム642の間を流れていく。
【0035】
駆動機構65は、第1フレーム651と、第2フレーム652と、駆動軸653と、モータ654(図2参照)と、ギヤボックス655と、軸継手656とを備えている。第1フレーム651は、第1右フレーム651Rと、第1左フレーム651Lと、2本の第1稼働スクリーン用横材6511とを備えている。第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lは、水槽5の側壁面5bの幅方向内側であって一対のサイドフレーム642の幅方向外側に配置されている。図4に示すように、第1右フレーム651Rは、略三角形状をした三角状部分と、その三角状部分から下方に向かって延びた2つのアーム部とが一体に形成された板状の部材である。第1左フレーム651Lは、水槽5の幅方向中央を対称面として第1右フレーム651Rと面対称形状をしている。また、図3に示すように、2本の第1稼働スクリーン用横材6511は、第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lの間に掛け渡されている。2本の第1稼働スクリーン用横材6511は、幅方向の両端部が第1右フレーム651Rのアーム部と第1左フレーム651Lのアーム部にそれぞれ固定されている。従って、2本の第1稼働スクリーン用横材6511は、第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lとを連結している。すべての第1稼働スクリーン部材61は、2本の第1稼働スクリーン用横材6511の上流側面に、互いに幅方向に距離をあけて固定されている。
【0036】
第2フレーム652は、第2右フレーム652Rと、第2左フレーム652Lと、2本の第2稼働スクリーン用横材6521とを備えている。第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lは、水槽5の側壁面5bの幅方向内側であって第1右フレーム651Rと第1左フレーム651Lの幅方向外側に配置されている。図4に示すように、第2右フレーム652Rは、略三角形状をした三角状部分と、その三角状部分から下方に向かって延びた2つのアーム部とが一体に形成された板状の部材である。第2左フレーム652Lは、水槽5の幅方向中央を対称面として第2右フレーム652Rと面対称形状をしている。また、図3に示すように、2本の第2稼働スクリーン用横材6521は、第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lと間に掛け渡されている。2本の第2稼働スクリーン用横材6521は、幅方向の両端部が第2右フレーム652Rのアーム部と第2左フレーム652Lのアーム部にそれぞれ固定されている。従って、2本の第2稼働スクリーン用横材6521は、第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lとを連結している。すべての第2稼働スクリーン部材62は、2本の第2稼働スクリーン用横材6521の上流側面に、互いに幅方向に距離をあけて固定されている。
【0037】
駆動軸653は、スクリーン体60よりも上流側で、幅方向に延在した軸である。駆動軸653は、一対のサイドフレーム642それぞれを貫通し、一対の軸受643によって回動自在にサイドフレーム642に支持されている。駆動軸653の一端は、軸継手656に接続されている。軸継手656には、ギヤボックス655の出力軸655aも接続されている。ギヤボックス655は、モータ654(図2参照)によって発生した駆動力(回転力)と駆動方向(回転方向)を変換するものである。モータ654の駆動力は、ギヤボックス655と軸継手656を介して駆動軸653に伝達され、駆動軸653を回転させる力として作用する。なお、モータ654の出力軸の軸方向が幅方向と一致するようにモータ654を配置し、ギヤボックス655を用いずにモータ654の出力軸と駆動軸653を直接連結してもよい。
【0038】
駆動軸653の、一対のサイドフレーム642よりも幅方向外側にある両端部分それぞれには、第1偏心カム6531と、第2偏心カム6532が固定されている。第1偏心カム6531は、駆動軸653の軸心である駆動軸心653aに対して偏心した位置に中心を有する厚肉円盤状のカムである。第2偏心カム6532は、第1偏心カム6531と同一形状をしている。ただし、第2偏心カム6532の中心は、第1偏心カム6531の中心に対して駆動軸心653aをはさんで反対側に配置されている。すなわち、第1偏心カム6531と第2偏心カム6532とは駆動軸653を回転中心として180度位相がずれた位置に固定されている。駆動軸653は、図2に示すモータ654の回転力を受けて軸周りに回転する。その結果、駆動軸653を回転中心にして第1偏心カム6531と第2偏心カム6532は、幅方向から見て180度ずれた姿勢で回転運動を行う。
【0039】
第1右フレーム651Rおよび第1左フレーム651Lは、第1偏心カム6531に設けられた不図示の軸に回動自在に支持されている。また、第2右フレーム652Rと第2左フレーム652Lは、第2偏心カム6532に設けられた不図示の軸に回動自在に支持されている。第1偏心カム6531に設けられた軸と第2偏心カム6532に設けられた軸は、それぞれ駆動軸心653aから等距離離間し、駆動軸653を回転中心として180度ずれた位置に配置されている。このため、図2に示すモータ654の回転力を受けて第1偏心カム6531と第2偏心カム6532が回転すると、第1フレーム651と第2フレーム652は、幅方向から見て180度位相がずれた状態で円軌道を描いて移動する。これにより、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62は、異なるタイミングで上方および下方に繰り返し移動する。
【0040】
図5は、第1間隔保持用スペーサおよび第2間隔保持用スペーサの周囲を切断して示す部分拡大断面図である。
【0041】
図5において、クロスハッチングが施された2つの部材は第1稼働スクリーン部材61であり、その間に配置された左下がりのハッチングが施された部材が第2稼働スクリーン部材62である。第1間隔保持用スペーサ612と第2間隔保持用スペーサ622とは、取り付けられる位置と取り付けられる対象が異なる以外、同一の構成をしており同様の作用を奏するものである。以下の説明では、主に第1間隔保持用スペーサ612の構成と作用について説明し、第2間隔保持用スペーサ622については説明を省略する。第1間隔保持用スペーサ612は、第1雄部612mと第1雌部612fが組み合わさったものである。第1雄部612mは、半球状の頭部612mhと、その頭部612mhから突出したボス部612mbと、ボス部612mbの突出端に設けられた係止部612mlを有する。ボス部612mbは、第1稼働スクリーン部材61の厚さ以上の突出長を有している。このボス部612mbが、第1稼働スクリーン部材61に設けられた第1取付孔61hに差し込まれ、第1稼働スクリーン部材61を貫通している。第1雌部612fは、第1雄部612mの係止部612mlが入り込む係止穴612fhを有する半球状のものである。第1雌部612fの係止穴612fhを画定する縁部と、第1雄部612mの係止部612mlは、係止穴612fhに係止部612mlを入れ込む際に互いに弾性変形し、係止穴612fhに係止部612mlが入り込んだ後は、係止穴612fhの縁部に係止部612mlが係止されることで、間隔保持用スペーサ6212は第1稼働スクリーン部材61に固定される。第1間隔保持用スペーサ612の頭部612mhが第2稼働スクリーン部材62に接触することで、その第1間隔保持用スペーサ612が取り付けられた第1稼働スクリーン部材61と、頭部612mhが接触する第2稼働スクリーン部材62との間隔Wが維持される。また、第1間隔保持用スペーサ612の第1雌部612fが第2稼働スクリーン部材62に接触することで、その第1間隔保持用スペーサ612が取り付けられた第1稼働スクリーン部材61と第1雌部612fが接触する第2稼働スクリーン部材62との間隔Wが維持される。同様に、第2間隔保持用スペーサ622によっても、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62との間隔Wが維持される。
【0042】
次に、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6における第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の動作について説明する。
【0043】
図6は、第1稼働スクリーン部材と第2稼働スクリーン部材の動作を段階的に示す図である。この図6は、第1稼働スクリーン部材と第2稼働スクリーン部材を幅方向から見た図である。図6では、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62それぞれの動作が分かりやすいように、第1稼働スクリーン部材61は細い破線を用いて示している。なお、図6では、図の左側が上流側になり、図の右側が下流側になる。
【0044】
図6(a1)には、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62がホームポジションにある様子が示されている。制御部66(図2参照)は、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62がホームポジションに位置するようにモータ654(図2参照)を停止させる。これにより、モータ654を駆動していないときには、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62は、このホームポジションで待機することになる。ホームポジションでは、第1稼働スクリーン部材61の最下段と第2稼働スクリーン部材62の最上段とを除いて第1稼働スクリーン部材61の第1段部611と第2稼働スクリーン部材62の第2段部621とは、幅方向から見てほぼ重なった状態になっている。また、図6(a1)に示す第1稼働スクリーン部材61における下から11段目の第1段部611から隣の第2稼働スクリーン部材62の同じく下から10段目になる第2段部621にかけて夾雑物Xが引っ掛かっている。なお、多くの場合、夾雑物Xは、複数の第1段部611と複数の第2段部621に幅方向にまたがって引っ掛かっている。図6(a1)に示す第1稼働スクリーン部材61の下から11段目になる第1段部611の高さ位置と、第2稼働スクリーン部材62の下から10段目になる第2段部621の高さ位置はほぼ一致している。
【0045】
上述したように、図2に示したモータ654を駆動すると、図3に示した駆動軸653、第1偏心カム6531および第2偏心カム6532が回転して第1フレーム651と第2フレーム652は回転運動をする。第1フレーム651と第2フレーム652が回転することにより、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62は、幅方向から見た傾斜角度を維持したまま幅方向から見て円軌道で移動する。すなわち、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62は、上流側と下流側への移動を伴いつつ、上方および下方へ繰り返し移動する。
【0046】
図6(a2)には、図6(a1)の位置から図6における時計回りに駆動軸653が45度回転したときの様子が示されている。図6(a2)に示すように、第1稼働スクリーン部材61は、図6(a1)の位置に対して上流側上方へ移動している。第1稼働スクリーン部材61とともに夾雑物Xも下から11段目の第1段部611に載って上流側上方へ移動している。また、第2稼働スクリーン部材62は、図6(a1)の位置に対して下流側下方へ移動している。すなわち、図6(a1)の位置から図6(a2)の位置への移動において、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を上方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を下方に移動させている。
【0047】
図6(a3)には、図6(a2)の位置から駆動軸653がさらに図6における時計回りに45度回転したときの様子が示されている。図6(a3)に示すように、第1稼働スクリーン部材61は、図6(a2)の位置に対して下流側上方へ移動している。そして、第1稼働スクリーン部材61とともに夾雑物Xも下流側上方へ移動している。また、第2稼働スクリーン部材62は、図6(a2)の位置に対して上流側下方へ移動している。この図6(a2)の位置から図6(a3)の位置への移動においても、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を上方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を下方に移動させている。
【0048】
図6(a4)には、図6(a3)の位置から駆動軸653がさらに図6における時計回りに45度回転したときの様子が示されている。図6(a4)に示すように、第1稼働スクリーン部材61は、図6(a3)の位置に対してさらに下流側上方へ移動している。そして、第1稼働スクリーン部材61とともに夾雑物Xもさらに下流側上方へ移動している。また、第2稼働スクリーン部材62は、図6(a3)の位置に対してさらに上流側下方へ移動している。この図6(a3)の位置から図6(a4)の位置への移動においても、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を上方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を下方に移動させている。
【0049】
図6(a5)には、図6(a4)の位置から駆動軸653がさらに図6における時計回りに45度回転したときの様子が示されている。図6(a5)に示すように、第1稼働スクリーン部材61は、図6(a4)の位置に対して下流側下方へ移動している。そして、第1稼働スクリーン部材61とともに夾雑物Xも下流側下方へ移動している。また、第2稼働スクリーン部材62は、図6(a4)の位置に対して上流側上方へ移動している。この図6(a5)の位置では、図6(a1)の位置に対して、幅方向に見て第1稼働スクリーン部材61の第1段部611と第2稼働スクリーン部材62の第2段部621とがちょうど入れ替わった配置になる。そして、夾雑物Xは、図6(a1)の位置に対して一段分上方へ移動している。この図6(a4)から図6(a5)への移動においては、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を下方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を上方に移動させている。
【0050】
図6(a6)には、図6(a5)の位置から駆動軸653がさらに図6における時計回りに45度回転したときの様子が示されている。図6(a6)に示すように、第1稼働スクリーン部材61は、図6(a5)の位置に対してさらに下流側下方へ移動している。また、第2稼働スクリーン部材62は、図6(a5)の位置に対して上流側上方へ移動している。そして、夾雑物Xは、第1稼働スクリーン部材61の下から11段目の第1段部611から第2稼働スクリーン部材62の下から12段目の第2段部621に受け渡され、第2稼働スクリーン部材62とともに上流側上方へ移動している。この図6(a5)の位置から図6(a6)の位置への移動においても、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を下方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を上方に移動させている。
【0051】
図6(a7)には、図6(a6)の位置から駆動軸653がさらに図6における時計回りに45度回転したときの様子が示されている。図6(a7)に示すように、第1稼働スクリーン部材61は、図6(a6)の位置に対して上流側下方へ移動している。また、第2稼働スクリーン部材62は、図6(a6)の位置に対して下流側上方へ移動している。そして、第2稼働スクリーン部材62とともに夾雑物Xは下流側上方へ移動している。この図6(a6)の位置から図6(a7)の位置への移動においても、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を下方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を上方に移動させている。
【0052】
図6(a8)には、図6(a7)の位置から駆動軸653がさらに図6における時計回りに45度回転したときの様子が示されている。図6(a8)に示すように、第1稼働スクリーン部材61は、図6(a7)の位置に対してさらに上流側下方へ移動している。また、第2稼働スクリーン部材62は、図6(a7)の位置に対してさらに下流側上方へ移動している。そして、第2稼働スクリーン部材62とともに夾雑物Xは下流側上方へ移動している。この図6(a7)の位置から図6(a8)の位置への移動においても、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を下方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を上方に移動させている。
【0053】
図6(a8)の位置から駆動軸653がさらに図6における時計回りに45度回転すると、第1稼働スクリーン部材61は、図6(a8)の位置に対して上流側上方へ移動する。また、第2稼働スクリーン部材62は、図6(a8)の位置に対して下流側下方へ移動する。そして、第2稼働スクリーン部材62とともに夾雑物Xは下流側下方へ移動する。これにより、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62は、図6(a1)に示したホームポジションに戻る。そして、夾雑物Xは図6(a1)に二点鎖線で示すように、駆動機構65の回転開始前の位置から第1段部611および第2段部621における2段上に持ち上げられている。この図6(a8)の位置から図6(a1)の位置への移動においては、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を上方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を下方に移動させている。
【0054】
駆動軸653の回転前における図6(a1)の位置から駆動軸653が一回転して図6(a1)の位置に戻るスクリーン体60の1サイクルの駆動は、例えば、1分間に13サイクル程度の速さで、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の段数等に応じた所定の稼働期間中、繰り返し実施される。
【0055】
以上説明したようにして、稼働期間中、スクリーン体60に補足された夾雑物Xは、スクリーン体60の上流側で、1サイクルごとに2段上方へ移送され、最終的には、図4に示した最上段部63からシュート67に向かって滑り落ち、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の外に排出される。
【0056】
この実施形態によれば、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62を厚さ方向に交互に並べて複数配置し、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62とをそれぞれ異なるタイミングで上方および下方に移動しているので、夾雑物Xを1サイクルで2段上方に移動させることができる。すなわち、固定スクリーン部材と稼働スクリーン部材とを組み合わせた従来の夾雑物除去スクリーン装置と比較して、2倍の速さで効率的に夾雑物Xを移送できる。これにより、モータ654の稼働期間を短縮できるので、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の省電力化が可能になる。また、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の合計の個数を、例えば従来の夾雑物除去スクリーン装置の固定スクリーン部材と稼働スクリーン部材の合計の個数の半分にしても従来と同等の移送能力が得られるので、スクリーン体60が配置されている部分の幅方向を狭くでき、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を小型化できる。また、その結果、水槽5も小さくできるので、生汚泥用スクリーンユニット2を小型化できる。さらに、共通のモータ654を用いて、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62をそれぞれ異なるタイミングで上方および下方に移動させているので、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62のうち一方が上方に移動し他方が下方に移動しているときは、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の重量による負荷が相殺されるので、モータ654の負荷を減少できる。これによっても、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を省電力化できる。また、駆動機構65の駆動における負荷が減少するので、駆動機構65の耐久性が高まる。さらに、1サイクルにおける第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の重量による負荷の抑揚が減少するので回転動作が滑らかになり、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6の振動を抑制できる。しかも、この実施形態では、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61を上方に移動させているときに第2稼働スクリーン部材62を下方に移動させ、第2稼働スクリーン部材62を上方に移動させているときに第1稼働スクリーン部材61を下方に移動させている。このため、第1稼働スクリーン部材61の重量と第2稼働スクリーン部材62の重量とをほぼ完全に相殺することができ、駆動機構65の駆動における負荷はより減少する。換言すれば、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の一方が上方に移動しているときに、他方の重量が駆動機構65の駆動を補助する力として働いているので、駆動機構65の駆動における負荷を大きく減少させることができる。これにより、より少ない電力で生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6を駆動できる。また、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の重量による駆動機構65への荷重のバランスがほぼ均一になるので駆動機構65による回転運動が滑らかになり、駆動による振動がより減少する。さらに、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62を交互に配置し、従来設けられていた固定スクリーン部材を省略しているので、生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6をより小型化できる。加えて、第1間隔保持用スペーサ612および第2間隔保持用スペーサ622によって第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の間の間隔Wが維持されているので、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の間隔Wを一定間隔に維持できる。また、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62が接触してしまうことを確実に防止できる。
【0057】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、上述の実施形態では、生汚泥用スクリーンユニット2に設けられた生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置6およびスカム用スクリーンユニット4に設けられたスカム用夾雑物除去スクリーン装置7を例にあげて説明したが、本発明は、下水処理施設に限らず、工業用水や農業用水等の水を処理する施設でも適用することができる。また、上述の実施形態では、水槽5に設置した夾雑物除去スクリーン装置を例にあげて説明したが、夾雑物除去スクリーン装置は、流路を流れる汚水中に設置するものであってもよい。さらに、駆動機構65は、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62を幅方向から見て円軌道で移動させる例で説明したが、リンク機構等を用いて矩形移動などの多角形移動や楕円移動をするように構成してもよい。またさらに、本実施形態では、スクリーン体60を、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の2つで構成していたが、それぞれ異なるタイミングで移動する3つ以上の稼働スクリーン部材で構成してもよい。この場合、異なるタイミングで移動する各稼働スクリーン部材を1つづつ厚さ方向に並べたものを一組として、厚さ方向に複数組を並べて配置することが好ましい。また、この場合、各稼働スクリーン部材を上方へ移動させるタイミングは、稼働スクリーン部材を駆動するフレームとそのフレームに取り付けられた稼働スクリーン部材の総重量を考慮して駆動機構65の駆動負荷が1サイクルの中で均一になるように設定するが好ましい。こうすることで、消費電力削減効果および振動抑制効果を高めることができる。加えて、第1稼働スクリーン部材61と第2稼働スクリーン部材62の間それぞれに、ベースフレーム64に固定されて移動しない固定スクリーン部材を配置してもよい。この場合、第1稼働スクリーン部材61と固定スクリーン部材の間隔および第2稼働スクリーン部材62と固定スクリーン部材の間隔は、除去する夾雑物の特性などに応じてそれぞれ0.5mm以上25mm以下に設定される。さらに、第1稼働スクリーン部材61の最下段部に、その厚さ方向に張り出し、厚さ方向の隙間を低減する隙間低減部材を設けてもよい。こうすることで、スクリーン体60が図6(a1)に示したホームポジションにあるときに、第1稼働スクリーン部材61どうしの最下段部における厚さ方向の隙間から夾雑物Xが下流側にすり抜けてしまうことを抑制できる。またさらに、第1間隔保持用スペーサ612および第2間隔保持用スペーサ622の少なくとも一方は省略してもよい。
【0058】
なお、以上説明した各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
6 生汚泥用夾雑物除去スクリーン装置(夾雑物除去スクリーン装置)
61 第1稼働スクリーン部材
62 第2稼働スクリーン部材
611 第1段部
621 第2段部
X 夾雑物
図1
図2
図3
図4
図5
図6