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特開2022-188431超音波トランスデューサ及び非接触触覚提示デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188431
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ及び非接触触覚提示デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096453
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岸本 純明
(72)【発明者】
【氏名】濤川 雄一
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA25
5D019BB03
5D019BB13
5D019EE01
5D019FF01
(57)【要約】
【課題】良好な音圧特性と安定した周波数特性を有し、小型化及び低背化に適した構造を有する超音波トランスデューサ及び非接触触覚提示デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明に係る超音波トランスデューサ及は、筐体と、長超音波振動子とを具備する。上記筐体は、第1の主面と、上記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する振動板であって、内周領域と、上記内周領域を囲む外周領域と、上記内周領域と上記外周領域の間に位置する中間領域とを有し、上記中間領域は、上記振動板を貫通する複数の開口部と、上記複数の開口部の間に位置し、上記内周領域と上記外周領域を接続する梁部を有する振動板を備え、上記振動板の上記第1の主面側に上記複数の貫通孔により外部空間と連通する内部空間を形成する。上記超音波振動子は上記第1の主面の上記内周領域に接合され、上記内部空間に収容されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する振動板であって、内周領域と、前記内周領域を囲む外周領域と、前記内周領域と前記外周領域の間に位置する中間領域とを有し、前記中間領域は、前記振動板を貫通する複数の開口部と、前記複数の開口部の間に位置し、前記内周領域と前記外周領域を接続する梁部を有する振動板を備え、前記振動板の前記第1の主面側に前記複数の貫通孔により外部空間と連通する内部空間を形成する筐体と、
前記第1の主面の前記内周領域に接合され、前記内部空間に収容された超音波振動子と
を具備する超音波トランスデューサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波トランスデューサであって、
前記第1の主面に対向し、前記筐体に接合され、前記筐体と共に前記内部空間を形成する基板と、
前記基板の、前記第1の主面とは反対側の面に設けられ、前記超音波振動子に電気的に接続された外部端子と
をさらに具備する超音波トランスデューサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の超音波トランスデューサであって、
前記超音波振動子は、前記第1の主面に接合される接合面に設けられた正極外部電極子と負極外部電極を有し、
前記振動板は、前記内周領域に設けられ、前記振動板を貫通し、前記正極外部電極及び前記負極外部電極を前記振動板から離間させる絶縁孔をさらに有する
超音波トランスデューサ。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の超音波トランスデューサであって、
超音波共振子を具備しない
超音波トランスデューサ。
【請求項5】
複数の超音波トランスデューサを備え、
前記超音波トランスデューサは、第1の主面と、前記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する振動板であって、内周領域と、前記内周領域を囲む外周領域と、前記内周領域と前記外周領域の間に位置する中間領域とを有し、前記中間領域は、前記振動板を貫通する複数の開口部と、前記複数の開口部の間に位置し、前記内周領域と前記外周領域を接続する梁部を有する振動板を備え、前記振動板の前記第1の主面側に前記複数の貫通孔により外部空間と連通する内部空間を形成する筐体と、前記第1の主面の前記内周領域に接合され、前記内部空間に収容された超音波振動子とを具備する
非接触触覚提示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を放出する超音波トランスデューサ及び非接触触覚提示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波トランスデューサは、車両接近感知センサや物体距離のトラッキング用センサとして用いられている。また、超音波トランスデューサは超音波を用いる非接触触感提示デバイスにおいても超音波発生源として用いられている。例えば、特許文献1乃至3には、各種構成を有する超音波トランスデューサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-063351号公報
【特許文献2】国際公開第2015/011956号
【特許文献3】国際公開第2016/104414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1乃至3に記載のような超音波トランスデューサは、基板、振動子、振動板及びホーン等を組み合わせることで、優れた音圧特性を得られるように構成されている。しかしながら、そのような構成では部材が多く必要であり、製造にも多くのプロセスが必要である。さらに組み立てによる音圧のロスや、共振周波数のずれが生じるおそれもある。また、超音波トランスデューサの筐体に直接振動子を貼り付ける構成の場合、筐体の剛性が高いため、共振周波数が所望の周波数より高くなりやすく、筐体のサイズが大きくなりやすい。さらに、振動子の貼り付け位置によっては、振動子を構成する圧電材料は実装時の熱処理の影響等によって脱分極を生じ、性能が低下するおそれがある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、良好な音圧特性と安定した周波数特性を有し、小型化及び低背化に適した構造を有する超音波トランスデューサ及び非接触触覚提示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る超音波トランスデューサは、筐体と、長超音波振動子とを具備する。
上記筐体は、第1の主面と、上記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する振動板であって、内周領域と、上記内周領域を囲む外周領域と、上記内周領域と上記外周領域の間に位置する中間領域とを有し、上記中間領域は、上記振動板を貫通する複数の開口部と、上記複数の開口部の間に位置し、上記内周領域と上記外周領域を接続する梁部を有する振動板を備え、上記振動板の上記第1の主面側に上記複数の貫通孔により外部空間と連通する内部空間を形成する。
上記超音波振動子は上記第1の主面の上記内周領域に接合され、上記内部空間に収容されている。
【0007】
上記超音波トランスデューサは、上記第1の主面に対向し、上記筐体に接合され、上記筐体と共に上記内部空間を形成する基板と、
上記基板の、上記第1の主面とは反対側の面に設けられ、上記超音波振動子に電気的に接続された外部端子と
をさらに具備してもよい。
【0008】
上記超音波振動子は、上記第1の主面に接合される接合面に設けられた正極外部電極子と負極外部電極を有し、
上記振動板は、上記内周領域に設けられ、上記振動板を貫通し、上記正極外部電極及び上記負極外部電極を上記振動板から離間させる絶縁孔をさらに有してもよい。
【0009】
上記超音波トランスデューサは、超音波共振子を具備しないものであってもよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る非接触触覚提示デバイスは、複数の超音波トランスデューサを備える。
上記超音波トランスデューサは、第1の主面と、上記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する振動板であって、内周領域と、上記内周領域を囲む外周領域と、上記内周領域と上記外周領域の間に位置する中間領域とを有し、上記中間領域は、上記振動板を貫通する複数の開口部と、上記複数の開口部の間に位置し、上記内周領域と上記外周領域を接続する梁部を有する振動板を備え、上記振動板の上記第1の主面側に上記複数の貫通孔により外部空間と連通する内部空間を形成する筐体と、上記第1の主面の上記内周領域に接合され、上記内部空間に収容された超音波振動子とを具備する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、良好な音圧特性と安定した周波数特性を有し、小型化及び低背化に適した構造を有する超音波トランスデューサ及び非接触触覚提示デバイスを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図である。
図2】上記超音波トランスデューサが備える筐体の断面図である。
図3】上記超音波トランスデューサが備える筐体の斜視図である。
図4】上記超音波トランスデューサが備える筐体の斜視図である。
図5】上記超音波トランスデューサが備える振動板の平面図である。
図6】上記超音波トランスデューサが備える振動板の領域を示す平面図である。
図7】上記超音波トランスデューサが備える超音波振動子の断面図である。
図8】上記超音波トランスデューサが備える、超音波振動子が接合された筐体の斜視図である。
図9】上記超音波トランスデューサの動作を示す模式図である。
図10】上記超音波トランスデューサが備える、他の形状を有する開口部を備える振動板の平面図である。
図11】上記超音波トランスデューサが備える振動板の領域を示す平面図である。
図12】上記超音波トランスデューサが備える、他の形状を有する開口部を備える振動板の平面図である。
図13】上記超音波トランスデューサが備える振動板の領域を示す平面図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図である。
図15】上記超音波トランスデューサが備える筐体の断面図である。
図16】上記超音波トランスデューサが備える筐体の斜視図である。
図17】上記超音波トランスデューサが備える筐体の斜視図である。
図18】上記超音波トランスデューサが備える振動板の平面図である。
図19】上記超音波トランスデューサが備える振動板の領域を示す平面図である。
図20】上記超音波トランスデューサが備える超音波振動子の断面図である。
図21】上記超音波トランスデューサが備える、超音波振動子が接合された筐体の斜視図である。
図22】上記超音波トランスデューサの動作を示す模式図である。
図23】上記超音波トランスデューサが備える、他の形状を有する絶縁孔を備える振動板の平面図である。
図24】上記超音波トランスデューサが備える、他の形状を有する絶縁孔を備える振動板の平面図である。
図25】上記超音波トランスデューサが備える、他の形状を有する絶縁孔を備える振動板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る超音波トランスデューサについて説明する。
【0014】
[超音波トランスデューサの構成]
図1は、本実施形態に係る超音波トランスデューサ100の断面図である。同図に示すように、超音波トランスデューサ100は、筐体101、基板102、超音波振動子103、正極配線104、負極配線105、正極外部端子106及び負極外部端子107を備える。
【0015】
筐体101は超音波トランスデューサ100の振動板を構成し、かつ基板102と共に内部空間Rを形成する。図2は、筐体101の断面図である。同図に示すように筐体101は振動板121と側壁部122を有する。振動板121は平板状であり、図2に示すように第1主面121aと第2主面121bを有する。第1主面121aと第2主面121bは互いに振動板121の反対側の主面である。
【0016】
図3及び図4は筐体101の斜視図である。図3は筐体101を第1主面121a側から見た斜視図であり、図4は筐体101を第1主面121a側から見た斜視図である。図2図3及び図4におけるA-A線での断面図である。図5は振動板121の平面図であり、振動板121を第2主面121b側からみた図である。図6は振動板121おける領域を示す模式図であり、振動板121を第2主面121b側からみた図である。
【0017】
図6に示すように振動板121は、内周領域131、外周領域132及び中間領域133を有する。内周領域131は振動板121の中央部に位置する領域であり、矩形形状を有する。外周領域132は、振動板121の外周部に位置し、内周領域131を囲む領域である。中間領域133は、内周領域131と外周領域132の間に位置する領域である。なお、第1主面121aも第2主面121bと同様に内周領域131、外周領域132及び中間領域133を有する。
【0018】
図5及び図6に示すように、中間領域133には開口部134及び梁部135が設けられている。開口部134は図2に示すように振動板121を貫通する孔であり、複数が設けられている。梁部135は中間領域133のうち開口部134が設けられていない部分であり、開口部134の間に位置する。図5に示すように、内周領域131と外周領域132は開口部134によって離間され、梁部135によって互いに接続されている。
【0019】
側壁部122は、振動板121の周縁から第1主面121aに対して垂直方向に延伸する壁状部分である。側壁部122は、図3に示すように振動板121の全周にわたって設けられ、図1に示すように振動板121と基板102の間を閉塞する。筐体101の材料は特に限定されないが、アルミニウム、アロイ、銅等の一般に振動板として利用される材料からなる。
【0020】
基板102は筐体101に接合され、筐体101と共に内部区間を形成する。基板102は図1に示すように、側壁部122の端部に接合され、振動板121、側壁部122及び基板102に囲まれた内部空間Rが形成される。基板102は、第1主面102a及び第2主面102bを有する。第1主面102aは振動板121の第1主面121a(図2参照)と対向する主面であり、第2主面102bは第1主面102aとは反対側の主面である。
【0021】
基板102は、図1に示すように正極内部配線141及び負極内部配線142を備える。正極内部配線141は、第1主面102aに接続された正極配線104と第2主面102bに設けられた正極外部端子106を電気的に接続する。負極内部配線142は第1主面102aに接続された負極配線105と第2主面102bに設けられた負極外部端子107を電気的に接続する。正極内部配線141及び負極内部配線142は基板102に形成されたスルーホールを介して設けられている。
【0022】
超音波振動子103は超音波振動を発生し、振動板121を振動させる。図7は超音波振動子103の断面図である。同図に示すように超音波振動子103は単板型構造を有し、圧電体層151、正極152及び負極153を備える。圧電体層151はニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)又はチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO-PbTiO)等の圧電材料からなる。正極152及び負極153はNi、Cu又はNi合金等の金属材料からなり、圧電体層151を介して対向する。
【0023】
超音波振動子103では、正極152と負極153の間に電圧を印加すると、圧電体層151において逆圧電効果が生じ、超音波振動が発生する。超音波振動子103は図1に示すように振動板121に接合される。超音波振動子103の表面のうち負極153側の面が振動板121に接合される面であり、以下この面を接合面103aとする。この接合により、負極153は振動板121に電気的に接続される。図8は振動板121に接合された超音波振動子103を示す斜視図である。同図に示すように超音波振動子103は第1主面121aの内周領域131に接合される。なお、超音波振動子103は図8に示すように、接合面103aから見て正方形とすることができるが、円形やその他の形状であってもよい。
【0024】
正極配線104(図1参照)は正極152と正極内部配線141に接続され、これらを電気的に接続する。負極配線105(図1参照)は、振動板121と負極内部配線142に接続され、振動板121を介して負極153と負極内部配線142を電気的に接続する。
【0025】
正極外部端子106は超音波振動子103の正極用端子であり、基板102の第2主面102bに設けられている。正極外部端子106は正極内部配線141及び正極配線104を介して正極152に電気的に接続されている。負極外部端子107は超音波振動子103の負極用端子であり、基板102の第2主面102bに設けられている。負極外部端子107は負極内部配線142、負極配線105及び振動板121及びを介して負極153に電気的に接続されている。
【0026】
超音波トランスデューサ100は、図示しない実装対象基板の表面に設けられた端子に正極外部端子106及び負極外部端子107を接合することにより、実装対象基板に対する表面実装が可能である。
【0027】
超音波トランスデューサ100は以上のような構成を有する。上記のように、筐体101及び基板102により内部空間R(図1参照)が形成され、超音波振動子103はこの内部空間Rに収容されている。内部空間Rは振動板121に設けられた開口部134を介して外部空間Sと連通する。
【0028】
なお、上記説明において超音波振動子103は負極153が振動板121と電気的に接続されるとしたが、正極152が振動板121と電気的に接続されてもよい。この場合、正極配線104は振動板121を介して正極内部配線141に接続され、負極配線105負極153と負極内部配線142を直接に接続する。
【0029】
[超音波トランスデューサの動作及び効果]
超音波トランスデューサ100では、正極外部端子106及び負極外部端子107を介して超音波振動子103の正極152及び負極153に電圧を印加すると、超音波振動子103が超音波振動を生じる。これにより、振動板121が所定の共振周波数で振動し、超音波を生成する。図9は、内部空間R内における超音波の伝搬を示す模式図である。同図に矢印で示すように、生成された超音波は内部空間R内を伝搬し、内部空間Rから開口部134を通過して外部空間Sに放出される。
【0030】
この開口部134の作用により、超音波トランスデューサ100では音圧を向上することができる。また、開口部134の位置及びサイズにより、振動板121の共振周波数を所望の周波数に制御することができる。さらに開口部134により筐体101の剛性が低下するため、高い剛性により共振周波数が高くなりすぎる問題を回避し、所望の共振周波数を小型の筐体101にて実現することができる。
【0031】
また、超音波トランスデューサ100はホーン等の超音波共振子を有さず、低背化に適した構造を有する。したがって、超音波トランスデューサ100は良好な音圧特性と安定した周波数特性を実現することができると共に、小型化及び低背化に適した構造を有する。また、超音波振動子103を直接筐体101に接合する構成により、部品点数及び組み立て工数を抑え、安価に超音波トランスデューサ100を実現することができる。
【0032】
さらに、超音波トランスデューサ100は基板102の第2主面102bに設けられた正極外部端子106及び負極外部端子107によって実装対象基板に表面実装される。第2主面102bは、正極外部端子106及び負極外部端子107に対するリフローや半田付け等で最も熱処理の影響を受けるが、超音波振動子103は第2主面102bから内部空間Rによって隔てられているため、熱処理による影響を低減することが可能である。
【0033】
[開口部の他の形状について]
開口部134の形状は上述のものに限られない。図10は他の形状を有する開口部134を備える振動板121を第2主面121b側から見た図である。図11はこの振動板121おける領域を示す模式図である。図11に示すように、振動板121は矩形形状の内周領域131を有し、図10に示すように開口部134はより単純化された直線状形状を有するものであってもよい。この構成では、単純化により加工面でコストを下げることができる。また、振動板121の剛性がさらに低下するため、振動板121の共振周波数をより低域に調整ですることができる。
【0034】
また、図12はさらに他の形状を有する開口部134を備える振動板121を第2主面121b側から見た図である。図13はこの振動板121おける領域を示す模式図である。図13に示すように、振動板121は円形形状の内周領域131を有し、図12に示すように開口部134は円環形状を有するものであってもよい。この構成では、特異周波数における音圧を低下させ、共振周波数でのピークスプリットをさらに改善することが可能である。
【0035】
(第2の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る超音波トランスデューサについて説明する。
【0036】
[超音波トランスデューサの構成]
図14は、本実施形態に係る超音波トランスデューサ200の断面図である。同図に示すように、超音波トランスデューサ200は、筐体201、基板202、超音波振動子203、正極配線204、負極配線205、正極外部端子206及び負極外部端子207を備える。
【0037】
筐体201は超音波トランスデューサ200の振動板を構成し、かつ基板202と共に内部空間Rを形成する。図15は、筐体201の断面図である。同図に示すように筐体201は振動板221と側壁部222を有する。振動板221は平板状であり、図15に示すように第1主面221aと第2主面221bを有する。第1主面221aと第2主面221bは互いに振動板221の反対側の主面である。
【0038】
図16及び図17は筐体201の斜視図である。図16は筐体201を第1主面221a側から見た斜視図であり、図17は筐体201を第2主面221a側から見た斜視図である。図15図16及び図17におけるB-B線での断面図である。図18は振動板221の平面図であり、振動板221を第2主面221b側からみた図である。図19は振動板221おける領域を示す模式図であり、振動板221を第2主面221b側からみた図である。
【0039】
図19に示すように振動板221は、内周領域231、外周領域232及び中間領域233を有する。内周領域231は振動板221の中央部に位置する領域であり、矩形形状を有する。外周領域232は、振動板221の外周部に位置し、内周領域231を囲む領域である。中間領域233は、内周領域231と外周領域232の間に位置する領域である。なお、第1主面221aも第2主面221bと同様に内周領域231、外周領域232及び中間領域233を有する。
【0040】
図18及び図19に示すように、中間領域233には開口部234及び梁部235が設けられている。開口部234は図15に示すように振動板221を貫通する孔であり、複数が設けられている。梁部235は中間領域233のうち開口部234が設けられていない部分であり、開口部234の間に位置する。図18に示すように、内周領域231と外周領域232は開口部234によって離間され、梁部235によって互いに接続されている。
【0041】
また、図18及び図19に示すように、内周領域231には絶縁孔236が設けられている。絶縁孔236は図15に示すように振動板221を貫通する孔であり、2つが設けられている。絶縁孔236は後述するように超音波振動子203を振動板221から絶縁するための孔である。
【0042】
側壁部222は、振動板221の周縁から第1主面221aに対して垂直方向に延伸する壁状部分である。側壁部222は、図16に示すように振動板221の全周にわたって設けられ、図14に示すように振動板221と基板202の間を閉塞する。筐体201の材料は特に限定されないが、アルミニウム、アロイ、銅等の一般に振動板として利用される材料からなる。
【0043】
基板202は筐体201に接合され、筐体201と共に内部区間を形成する。基板202は図14に示すように、側壁部222の端部に接合され、振動板221、側壁部222及び基板202に囲まれた内部空間Rが形成される。基板202は、第1主面202a及び第2主面202bを有する。第1主面202aは振動板221の第1主面221a(図15参照)と対向する主面であり、第2主面202bは第1主面202aとは反対側の主面である。
【0044】
基板202は、図14に示すように正極内部配線241及び負極内部配線242を備える。正極内部配線241は、第1主面202aに接続された正極配線204と第2主面202bに設けられた正極外部端子206を電気的に接続する。負極内部配線242は第1主面202aに接続された負極配線205と第2主面202bに設けられた負極外部端子207を電気的に接続する。正極内部配線241及び負極内部配線242は基板202に形成されたスルーホールを介して設けられている。
【0045】
超音波振動子203は超音波振動を発生し、振動板121を振動させる。図20は超音波振動子203の断面図である。同図に示すように超音波振動子203は積層構造を有し、圧電体層251、正極内部電極252、負極内部電極253、正極外部電極254及び負極外部電極255を備える。圧電体層251はニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)又はチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO-PbTiO)等の圧電材料からなる。圧電体層251は第1主面251a及び第1主面251aの反対側の第2主面251bを有する。また、圧電体層251の側面の一つを第1側面251cとし、第1側面251cの反対型の側面を第2側面251dとする。
【0046】
正極内部電極252及び負極内部電極253は、Ni、Cu又はNi合金等の金属材料からなり、圧電体層151を介して交互に配置されている。正極内部電極252は圧電体層251の第1側面251cに端面が露出し、第2側面251dから離間するように形成されている。負極内部電極253は圧電体層251の第2側面251dに端面が露出し、第1側面251cから離間するように形成されている。正極外部電極254は第1側面251c上と第1主面251a及び第2主面251b上の第1側面251c近傍に設けられ、正極内部電極252と電気的に接続されている。負極外部電極255は第2側面251d上と第1主面251a及び第2主面251b上の第2側面251d近傍に設けられ、負極内部電極253と電気的に接続されている。
【0047】
超音波振動子203では、正極内部電極252と負極内部電極253の間に電圧を印加すると、圧電体層251において逆圧電効果が生じ、超音波振動が発生する。超音波振動子203は図14に示すように振動板121に接合される。超音波振動子203の表面のうち第1主面251a側の面が振動板121に接合される面であり、以下この面を接合面203aとする。図21は振動板121に接合された超音波振動子103を示す斜視図である。同図に示すように超音波振動子103は第1主面121aの内周領域131に接合される。
【0048】
接合面203aには正極外部電極254及び負極外部電極255が露出するが、振動板221には絶縁孔236内が設けられており、正極外部電極254及び負極外部電極255は図14に示すように絶縁孔236内に位置し、振動板221とは離間する。即ち、絶縁孔236によって正極外部電極254及び負極外部電極255は振動板221と絶縁されている。なお、超音波振動子203は図21に示すように、接合面203aから見て正方形とすることができるが、円形やその他の形状であってもよい。
【0049】
正極配線204(図14参照)は正極外部電極254と正極内部配線241に接続され、これらを電気的に接続する。負極配線205(図14参照)は、正極外部電極254と負極内部配線242に接続され、これらを電気的に接続する。
【0050】
正極外部端子206は超音波振動子203の正極用端子であり、基板202の第2主面202bに設けられている。正極外部端子206は正極内部配線241及び正極配線204を介して正極外部電極254に電気的に接続されている。負極外部端子207は超音波振動子203の負極用端子であり、基板202の第2主面202bに設けられている。負極外部端子207は負極内部配線242及び負極配線205を介して負極外部電極255に電気的に接続されている。
【0051】
超音波トランスデューサ200は、図示しない実装対象基板の表面に設けられた端子に正極外部端子206及び負極外部端子207を接合することにより、実装対象基板に対する表面実装が可能である。
【0052】
超音波トランスデューサ200は以上のような構成を有する。上記のように、筐体201及び基板202により内部空間R(図14参照)が形成され、超音波振動子203はこの内部空間Rに収容されている。内部空間Rは振動板221に設けられた開口部234を介して外部空間Sと連通する。
【0053】
[超音波トランスデューサの動作及び効果]
超音波トランスデューサ200では、正極外部端子206及び負極外部端子207を介して超音波振動子203の正極内部電極252及び負極内部電極253に電圧を印加すると、超音波振動子203が超音波振動を生じる。これにより、振動板221が所定の共振周波数で振動し、超音波を生成する。図22は、内部空間R内における超音波の伝搬を示す模式図である。同図に矢印で示すように、生成された超音波は内部空間R内を伝搬し、内部空間Rから開口部234を通過して外部空間Sに放出される。
【0054】
この開口部234の作用により、超音波トランスデューサ200では音圧を向上することができる。また、開口部234の位置及びサイズにより、振動板221の共振周波数を所望の周波数に制御することができる。さらに開口部234により筐体201の剛性が低下するため、高い剛性により共振周波数が高くなりすぎる問題を回避し、所望の共振周波数を小型の筐体101にて実現することができる。
【0055】
また、超音波トランスデューサ200はホーン等の超音波共振子を有さず、低背化に適した構造を有する。したがって、超音波トランスデューサ200は良好な音圧特性と安定した周波数特性を実現することができると共に、小型化及び低背化に適した構造を有する。また、超音波振動子203を直接筐体201に接合する構成により、部品点数及び組み立て工数を抑え、安価に超音波トランスデューサ200を実現することができる。
【0056】
さらに、超音波トランスデューサ200は基板202の第2主面202bに設けられた正極外部端子206及び負極外部端子207によって実装対象基板に表面実装される。第2主面202bは、正極外部端子206及び負極外部端子207に対するリフローや半田付け等で最も熱処理の影響を受けるが、超音波振動子203は第2主面202bから内部空間Rによって隔てられているため、熱処理による影響を低減することが可能である。
【0057】
また、超音波振動子203は積層構造(図20参照)を備えるが、積層構造を形成する際にスルーホールなど形成が困難な技術を用いずとも、コンデンサの様にシンプルな構造とすることができる。正極外部電極254及び負極外部電極255は絶縁孔236によって絶縁され、振動板221による短絡が防止されている。超音波振動子203を積層構造とすることにより、さらに音圧を向上させることが可能である。
【0058】
[開口部の他の形状について]
開口部234の形状は上述のものに限られず、第1の実施形態と同様に、単純化された直線状形状(図10参照)や円環形状(図12参照)を有するものとすることができる。
【0059】
[絶縁孔の他の形状について]
絶縁孔236の形状も上述のものに限られない。図23乃至図25は、他の形状を有する絶縁孔236を備える振動板221を第2主面221b側から見た図である。上述のように超音波振動子203は正極外部電極254及び負極外部電極255備えるが、これらの外部電極は超音波振動子203の角部にのみ設けられてもよい。この場合、図23乃至図25に示すように、絶縁孔236は超音波振動子203の角部に対向する位置に設けられてもよい。
【0060】
正極外部電極254及び負極外部電極255を超音波振動子203の角部にのみ設けることにより、正極外部電極254及び負極外部電極255の材料を削減することができる。また、絶縁孔236を図23乃至図25に示す形状とすることにより、筐体201の中心対称性を向上させ、共振周波数近傍でのスプリットの影響を回避し、共振周波数における音圧ロスを抑制することができる。
【0061】
(非接触触覚提示デバイス)
本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態に係る超音波トランスデューサにより非接触触覚提示デバイスを構成することが可能である。具体的には複数の超音波トランスデューサを平面状に配列し、触覚を提示したい空間上の位置で超音波が強め合うように各超音波トランスデューサの位相を制御することにより、当該位置において触覚を提示することができる。
【符号の説明】
【0062】
100、200…超音波トランスデューサ
101、201…筐体
102、202…基板
103、203…超音波振動子
104、204…正極配線
105、205…負極配線
106、206…正極外部端子
107、207…負極外部端子
121、221…振動板
122、221…側壁部
131、231…内周領域
132、232…外周領域
133、233…中間領域
134、234…開口部
135、235…梁部
236…絶縁孔
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