(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188435
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
E02F9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096458
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】山崎 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】北原 訓
(72)【発明者】
【氏名】鬼束 講介
(57)【要約】
【課題】建設機械において、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、機体から延出したケーブルを機体に対して収納することを可能とする。
【解決手段】掘削作業機1において、上部旋回体20Aと、上部旋回体20Aを支持する下部走行体20Bと、上部旋回体20Aから延出された給電ケーブル52と、上部旋回体20Aの後部に設けられ、給電ケーブル52を機体の背面視で周回形態をなすように巻回させた状態で収納するケーブル収納部120とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部装置と、
前記上部装置を支持する下部走行体と、
前記上部装置から延出されたケーブルと、
前記上部装置の後部に設けられ、前記ケーブルを機体の背面視で周回形態をなすように巻回させた状態で収納するケーブル収納部と、を備えた
建設機械。
【請求項2】
前記ケーブル収納部は、
前記上部装置に対して支持された支持基部と、
前記支持基部から後側に向けて突設され、前記ケーブルの巻回を受けて前記ケーブルの周回形態を保持する複数のケーブル保持部と、を有する
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ケーブル収納部は、
前記複数のケーブル保持部として、第1ケーブル保持部と、前記第1ケーブル保持部よりも下方の位置に設けられた第2ケーブル保持部と、を有する
請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記第1ケーブル保持部および前記第2ケーブル保持部のうち、一方のケーブル保持部は、左右両側の2箇所に設けられており、他方のケーブル保持部は、1箇所に設けられている
請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記ケーブル収納部は、前記支持基部を前傾させた状態で設けられている
請求項2~4のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項6】
前記ケーブルは、先端部にコネクタを有し、
前記上部装置に設けられた運転席と前記ケーブル収納部との間に、前記コネクタを収納するコネクタ収納部が設けられている
請求項1~5のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば外部から電力の供給を受けるための電力供給線等のケーブルを有する建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば掘削作業機等の建設機械として、外部から電力の供給を受けるための電力供給線である給電用のケーブルを有する電動式の建設機械がある。電動式の建設機械は、例えば、駆動源として、ガソリンを燃料とするエンジンの代わりに電動モータを備える。
【0003】
ケーブルに関し、例えば特許文献1には、掘削装置において、給電ケーブル等として用いられるケーブル(テザー)を引き出したり巻き取ったりするための巻取り装置であるスプールを機体の後端に配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成において、スプールは、機体の左右方向を回転軸方向として回転可能に設けられており、機体の前後方向にケーブルを巻き取るように構成されている。このため、例えば小型の旋回作業車等の比較的小型の建設機械において特許文献1に開示されたような構成を採用した場合、スプールが機体の後端からはみ出しやすくなる。
【0006】
スプールが機体の後端からはみ出した場合、例えば建設機械をトラック等で輸送する際、スプールが邪魔になり運搬性が損なわれるという問題がある。また、機体の後端からはみ出した部分が存在することは、機体のコンパクト化を妨げ、作業性を損なう原因となり得る。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、機体から延出したケーブルを機体に対して収納することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建設機械は、上部装置と、前記上部装置を支持する下部走行体と、前記上部装置から延出されたケーブルと、前記上部装置の後部に設けられ、前記ケーブルを機体の背面視で周回形態をなすように巻回させた状態で収納するケーブル収納部と、を備えたものである。
【0009】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記ケーブル収納部は、前記上部装置に対して支持された支持基部と、前記支持基部から後側に向けて突設され、前記ケーブルの巻回を受けて前記ケーブルの周回形態を保持する複数のケーブル保持部と、を有するものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記ケーブル収納部は、前記複数のケーブル保持部として、第1ケーブル保持部と、前記第1ケーブル保持部よりも下方の位置に設けられた第2ケーブル保持部と、を有するものである。
【0011】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記第1ケーブル保持部および前記第2ケーブル保持部のうち、一方のケーブル保持部は、左右両側の2箇所に設けられており、他方のケーブル保持部は、1箇所に設けられているものである。
【0012】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記ケーブル収納部は、前記支持基部を前傾させた状態で設けられているものである。
【0013】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記ケーブルは、先端部にコネクタを有し、前記上部装置に設けられた運転席と前記ケーブル収納部との間に、前記コネクタを収納するコネクタ収納部が設けられているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、機体から延出したケーブルを機体に対して収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の左前方からの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る掘削作業機が備える装置構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の上部旋回体の左後方からの斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るケーブル収納部の構成を示す左側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るケーブル収納部の構成を示す背面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るケーブル収納部の構成を示す平面断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るケーブル収納部に給電ケーブルを収納した状態を示す左側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るケーブル収納部に給電ケーブルを収納した状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、例えば外部から電力の供給を受けるための電力供給線等のケーブルを有する構成において、機体に対してケーブルを収納するためのケーブル収納構造を工夫することにより、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、ケーブルを良好な位置状態に収納しようとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本発明の実施の形態では、本発明に係る建設機械として、旋回作業車である掘削作業機(ショベル)を例にとって説明する。ただし、本発明に係る建設機械は、掘削作業機に限らず、例えば、ブルドーザ、クレーン作業機、コンパクトトラックローダ、スキッドステアローダ、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用可能である。
【0018】
本実施形態に係る掘削作業機1の全体構成について、
図1、
図2および
図3を用いて説明する。
図1および
図2に示すように、掘削作業機1は、比較的小型のいわゆるミニショベルであり、自走可能な走行車体と、走行車体に取り付けられた作業部としての掘削装置3とを備える。
【0019】
掘削作業機1は、左右一対のクローラ式の走行部5,5と、左右の走行部5,5を支持する基台としてのトラックフレーム6と、トラックフレーム6上に設けられた旋回フレーム7とを有する。
【0020】
走行部5は、トラックフレーム6を構成する所定のフレーム部分に支持された複数のスプロケット等の回転体に履帯を巻回した構成を有する。走行部5は、後端部に回転体としての駆動スプロケット5aを有する。トラックフレーム6は、左右の走行部5,5間に位置するセンターフレーム部6aと、センターフレーム部6aの左右両側に設けられたサイドフレーム部6bとを有する。
【0021】
旋回フレーム7は、平面視略円形状に構成され、トラックフレーム6に対して、トラックフレーム6の上側に設けられた旋回支持部であり旋回ベアリング6cにより、上下方向の軸線回りに左右いずれの方向にも旋回可能に設けられている。旋回フレーム7の後下部には、カウンタウエイト7aが設けられている。また、旋回フレーム7は、左右の走行部5,5の左右幅内、つまり左側の走行部5の左外側縁端と右側の走行部5の右側縁端との間の幅内で旋回可能に構成されている。これにより、掘削作業機1による小旋回作業が可能となっている。
【0022】
旋回フレーム7上には、運転部10が設けられている。運転部10の右側には、タンク部9が設けられている。タンク部9には、掘削作業機1が有する油圧シリンダ等の油圧アクチュエータに供給される作動油を収容する作動油タンクが設けられている。運転部10の床部8の左側が、運転部10に対するオペレータの乗降口となっている。また、旋回フレーム7上の後部には、駆動源として、原動機である電動モータ12が設けられている。
【0023】
運転部10は、走行車体および掘削装置3を運転・操作するためのものである。旋回フレーム7上には、運転部10に対してキャノピ13が設けられている。キャノピ13は、いわゆる4柱キャノピであり、旋回フレーム7の後部上方に立設された左右一対の後支柱部36,36と、床部8の前端部に立設された左右一対の前支柱部37,37と、前後の支柱部間に設けられたキャノピルーフ部38とを有する。キャノピルーフ部38は、運転部10を上方から覆っている。左右それぞれの後支柱部36および前支柱部37は、キャノピルーフ部38の左右の縁部を形成する略水平状の部分を介して連続した一体のパイプ状の部材により形成されている。
【0024】
運転部10においては、床部8の後側にシートマウントである運転席支持台14が設けられており、運転席支持台14上に運転席15が設けられている。運転席15の前方には、左右一対の走行レバー16が、床部8から上方へ向けて延出した状態で設けられている。床部8上における走行レバー16の左右両側には、作業用の複数の操作ペダル17が配設されている。また、運転部10において、運転席15の周囲には、掘削装置3等の作業部を操作するための作業操作レバーや、スイッチ等の各種操作部を有する操作パネル部等が設けられている。
【0025】
掘削作業機1は、トラックフレーム6およびその左右両側に支持された走行部5,5を含む構成を下部装置である下部走行体20Bとし、下部走行体20Bに対して旋回可能に支持された機体として、上部装置である上部旋回体20Aを備える。上部旋回体20Aは、機体を構成するフレームである旋回フレーム7と、旋回フレーム7上に設けられた運転部10とを含む構成である。
【0026】
上部旋回体20Aは、その外装をなすカバー部として、旋回フレーム7の右側に設けられタンク部9の作動油タンク等を覆う右カバー部31と、運転席支持台14の左後側を覆う左カバー部32と、旋回フレーム7の後側を覆う後カバー部33とを含む。後カバー部33は、カウンタウエイト7aの上側に設けられており、左右の一側がヒンジ部によって回動可能に支持され、開閉可能に設けられている。
【0027】
掘削装置3は、掘削作業機1の前側に設けられたフロント作業装置である。旋回フレーム7の前端の左右中央部には、掘削装置3を支持する支持ブラケット18が前方に向けて突設されている。支持ブラケット18に、掘削装置3の基端部をなすブーム支持ブラケット19が、上下方向を回動軸方向として回動可能に支持させている。掘削装置3は、ブーム支持ブラケット19と旋回フレーム7との間に設けられたスイング用油圧シリンダ(図示せず)により、旋回フレーム7に対して左右にスイングするように設けられている。
【0028】
掘削装置3は、側面視でブーメラン状に屈曲した形状を有し掘削装置3の基部側の部分を構成するブーム21と、ブーム21の先端側に連結されたアーム22と、アーム22の先端部に取り付けられたバケット23とを有する。掘削装置3は、ブーム21を回動動作させるブームシリンダ26と、アーム22を回動動作させるアームシリンダ27と、バケット23を回動動作させる作業具シリンダ28とを有する。これらのシリンダは、いずれも油圧シリンダである。掘削装置3においては、作業内容に応じてバケット23に替えてグラップルやブレーカ等の他の装置が装着される。
【0029】
以上のような構成を備えた掘削作業機1においては、運転席15に着座したオペレータにより走行レバー16や作業操作レバー等が適宜操作されることで、所望の動作・作業が行われる。具体的には、例えば、走行レバー16の操作により、掘削作業機1の前後直進走行や左右旋回走行が行われる。また、作業操作レバーの操作により、掘削装置3による掘削作業等が行われる。
【0030】
本実施形態に係る掘削作業機1は、電力の供給を受けて駆動する電動機である電動モータ12を駆動源として備えた電動式の建設機械である。
図3に示すように、電動モータ12は、油圧ポンプ41を駆動させるポンプ駆動用モータである。電動モータ12は、例えば三相交流モータであり、交流電力の供給を受けて駆動する。油圧ポンプ41は、電動モータ12により駆動させられてタンク部9の作動油タンク内の作動油を、コントロールバルブ42を介してアクチュエータ43に供給するためのものである。
【0031】
アクチュエータ43は、掘削作業機1が備える各種の油圧アクチュエータの総称である。アクチュエータ43は、例えば、ブームシリンダ26、アームシリンダ27、作業具シリンダ28、スイング用油圧シリンダその他の油圧シリンダ等である。
【0032】
コントロールバルブ42は、アクチュエータ43としての各油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する。コントロールバルブ42は、各油圧アクチュエータに対応した複数の方向切替弁を含んで構成されており、方向切替弁の動作制御等により、油圧ポンプ41の駆動によって作動油タンク内から供給される圧油の量と供給先を制御する。アクチュエータ43への圧油の供給制御により、掘削装置3の動作や上部旋回体20Aの旋回動作等が行われる。
【0033】
電動モータ12は、旋回フレーム7の後下部において、駆動軸の軸方向を左右方向とした横向きで設置されている。油圧ポンプ41は、上部旋回体20Aにおいて例えば電動モータ12の左側に設けられている。油圧ポンプ41は、その回転軸を、カップリングを介して電動モータ12の駆動軸に連結させており、電動モータ12の駆動軸の回転にともなって駆動し、作動油を送り出す。コントロールバルブ42は、上部旋回体20Aにおいて例えば旋回フレーム7上の前部の左側の位置に設けられている。
【0034】
また、掘削作業機1は、左右一対の走行用油圧モータ44,44を有する(
図1、
図2参照)。走行用油圧モータ44は、コントロールバルブ42からの圧油の供給を受けることで駆動するアクチュエータであり、各走行部5において、トラックフレーム6のサイドフレーム部6b等の所定の部位に取り付けられた状態で設けられており、駆動スプロケット5aを回転駆動させる。左右の走行用油圧モータ44,44がそれぞれ走行部5を駆動させることで、掘削作業機1の前後直進走行や左右旋回走行が行われる。
【0035】
図3に示すように、掘削作業機1は、電動モータ12に直接的にまたは間接的に電気的に接続された構成として、電動モータ12に外部から電力を供給するための給電器46と、電動モータ12に電力を供給するためのバッテリであるバッテリユニット47と、電動モータ12を制御するインバータ装置48とを備える。
【0036】
図3に示すように、給電器46は、外部電力供給用の電力供給線50により、外部電源である商用電源49に電気的に接続される。給電器46は、電力供給線50により、外部電源である商用電源49からの電力を機体内の回路に取り込む。また、給電器46は、バッテリユニット47およびインバータ装置48のそれぞれに対して電気的に接続されており、給電器46からの電力は、バッテリユニット47およびインバータ装置48のそれぞれに分岐して供給される。
【0037】
給電器46は、商用電源49から供給される交流電力(交流電圧)を直流電力(直流電圧)に変換してインバータ装置48に出力する機能と、商用電源49から供給される交流電力を直流電力に変換してバッテリユニット47に出力する機能と、バッテリユニット47からの直流電力をインバータ装置48に出力させる機能とを有する。給電器46は、モードの切換えによって発揮する機能を切り換えるように構成されている。給電器46は、供給された電力の電流と電圧の値を制御する。
【0038】
掘削作業機1は、例えば運転部10に設けられたモード切換スイッチの操作によって切り換えられるモードとして、次の3つの給電モードを有する。すなわち、掘削作業機1は、電動モータ12への給電がバッテリユニット47のみにより行われるバッテリ給電モードと、電動モータ12への給電が給電器46により外部の商用電源49から行われる外部給電モードと、給電器46により外部の商用電源49からの電力をバッテリユニット47に蓄電する蓄電モードとを有する。
【0039】
外部給電モードには、給電器46を介した商用電源49からの給電によるバッテリユニット47の充電、およびバッテリユニット47から電動モータ12への給電の少なくともいずれかが行われる場合が含まれる。すなわち、電動モータ12は、バッテリ給電モードでは、バッテリユニット47からの給電によって駆動し、外部給電モードでは、商用電源49からの給電によって駆動するとともに、場合によってはバッテリユニット47から駆動用の電力の供給を受ける。なお、商用電源49またはバッテリユニット47から供給される電力は、DC/DCコンバータにより電圧が降圧されてから電動モータ12等に供給される。
【0040】
例えば、給電器46からインバータ装置48に対する電力の供給経路には、インバータ装置48に対する電力の供給を遮断するためのスイッチが設けられており、スイッチの切替えによりインバータ装置48に対する電力の供給が遮断されると、給電器46からの電力はすべてバッテリユニット47の充電に充てられる。また、給電器46からの電力の供給が遮断されると、電動モータ12は、バッテリユニット47から供給される電力のみで駆動することになる。
【0041】
バッテリユニット47は、掘削作業機1が備える電源である。バッテリユニット47は、複数のバッテリモジュールをユニット化した構成のものである。バッテリモジュールは、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の二次電池からなる。バッテリユニット47は、インバータ装置48に直流電流を供給する。バッテリユニット47は、旋回フレーム7の後部において、電動モータ12の上方の位置に設置されている(
図1参照)。
【0042】
インバータ装置48は、電動モータ12に対して出力する電力を制御することで、電動モータ12の出力を制御する。具体的には、インバータ装置48は、バッテリ給電モードにおいて、バッテリユニット47から供給される直流電力を交流電力に変換して電動モータ12に供給する。また、インバータ装置48は、外部給電モードにおいて、給電器46を介して商用電源49から供給される直流電力を交流電力に変換して所定の電圧として電動モータ12に供給する。インバータ装置48は、旋回フレーム7における所定の位置に設けられている。
【0043】
電力供給線50は、
図3に示すように、上部旋回体20Aにおいて旋回フレーム7の内部に設けられた内部の給電ケーブル51と、内部の給電ケーブル51に対して一端側を接続させた外部の給電ケーブル52と、給電ケーブル52と商用電源49との間の電源側ケーブル53とを有する。
【0044】
給電ケーブル51は、旋回フレーム7の内部において、給電器46から延出され、旋回フレーム7の外側に設けられたケーブル接続部54に電気的に接続されている。ケーブル接続部54は、旋回フレーム7において、運転席15の後方かつ後カバー部33の上縁部の前側に設けられた棚状の平面部である後上面部7bの右側の部分に筒状に突設されている(
図4参照)。ケーブル接続部54は、右側の後支柱部36の左後方に位置している。
【0045】
ケーブル接続部54に、外部の給電ケーブル52の一端側が接続されている。つまり、給電ケーブル52は、ケーブル接続部54を介して給電ケーブル51に電気的に接続されており、ケーブル接続部54に接続されることで、上部旋回体20Aの後部から延出した態様で設けられている。給電ケーブル52の長さは、例えば10m程度である。給電ケーブル52の他端側の端部には筒状のコネクタ55が設けられている。コネクタ55は、高圧電流用のコネクタであり、商用電源49側の電源側ケーブル53に設けられたコネクタ受部56に連結されて電気的に接続される。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る掘削作業機1は、上部旋回体20Aと、上部旋回体20Aを支持する下部走行体20Bとを備えるとともに、上部旋回体20Aから延出されたケーブルとして、電力供給線50の一部をなす給電ケーブル52を備える。給電ケーブル52は、掘削作業機1が外部から電動モータ12に供給するための電力の供給を受けるための電力供給線となる。
【0047】
掘削作業機1は、例えばバッテリ給電モードのように、電力供給線50を商用電源49に接続させず、給電ケーブル52を使用しない状態での作業を行う際に、給電ケーブル52を収納するための構成として、ケーブル収納部120を備えている。ケーブル収納部120は、上部旋回体20Aの後部に設けられ、給電ケーブル52を機体の背面視で周回形態をなすように巻回させた状態で収納する。ケーブル収納部120について、
図4から
図9を用いて説明する。
【0048】
図4から
図9に示すように、ケーブル収納部120は、キャノピ13を構成する左右の後支柱部36間に架設された横架フレーム60に対して設けられている。左右の後支柱部36は、後上面部7bの左右両端部に設けられている。
【0049】
後支柱部36は、旋回フレーム7の後上面部7b上において、後支柱部36の下端部にフランジ状に設けられた固定板部61を、固定ボルト62により後上面部7bに対して固定させた状態で立設されている。固定板部61は、後支柱部36を支持する部分から左右内側に向けて延出した延出部を有し、この延出部が固定ボルト62により2箇所で固定されている。固定板部61と後支柱部36の下端部との間には、略三角形状の支持板63が設けられている。右側の固定板部61の後側に、給電ケーブル52の基端部が接続されるケーブル接続部54が位置している。
【0050】
横架フレーム60は、所定の屈曲形状を有するパイプ部材により構成されており、左右の後支柱部36の下部間に水平状に架設されている。横架フレーム60は、左右方向について対称または略対称な形状を有する。横架フレーム60は、上下方向について、運転席15の上端に対してわずかに上方の高さに位置するように、左右の後支柱部36に対して支持されている。
【0051】
横架フレーム60は、パイプ部材により構成されたフレーム本体部64を有し、フレーム本体部64について、平面視で後側に膨出した形態をなす屈曲形状を有する。フレーム本体部64は、平面視での屈曲形状をなす部分として、左右方向に沿う中間部64aと、中間部64aの左右両側の傾斜部64bとを有する。傾斜部64bは、中間部64aとともに鈍角をなすように屈曲形成された部分であり、左右方向に対して、左右外側から内側にかけて徐々に前側から後側に向かうように傾斜している。
【0052】
横架フレーム60は、フレーム本体部64の両端部に設けられたクランプ部65により後支柱部36を挟持した状態で、後支柱部36に固定支持されている。クランプ部65は、フレーム本体部64の端部に固定された固定側挟持片部65aと、固定側挟持片部65aに対してヒンジ部65cを介して連結された可動側挟持辺部65bとを有する。
【0053】
固定側挟持片部65aおよび可動側挟持辺部65bは、いずれも凹形状をなす屈曲板状の部分であり、凹側同士を対向させて互いの間に後支柱部36を挟持している。固定側挟持片部65aおよび可動側挟持辺部65bは、一側の縁部同士をヒンジ部65cにおいて開閉可能に連結させており、他端側に形成された合わせ面部同士を重ね、ボルト66aにより2箇所で締結固定された状態で、後支柱部36を挟持している。ボルト66aは、両挟持片部の合わせ面部を貫通し、一方の(本実施形態では、固定側挟持片部65aの)合わせ面部に設けられたナット部66bに螺挿されている。
【0054】
このように、横架フレーム60は、左右の後支柱部36に対して、左右のクランプ部65により着脱可能に設けられている。後支柱部36に対するクランプ部65の固定状態において、例えば、ボルト66aを緩めることで、クランプ部65が後支柱部36に対して移動可能となり、横架フレーム60の高さ調整が可能となる。
【0055】
ケーブル収納部120は、上部旋回体20Aに対して支持された支持基部としての本体枠部121と、本体枠部121から後側に向けて突設された複数のケーブル保持部(131,132)とを有する。複数のケーブル保持部(131,132)は、給電ケーブル52の巻回を受けて後面視での給電ケーブル52の周回形態を保持する。
【0056】
ケーブル収納部120は、上部旋回体20Aに設けられた横架フレーム60に対して設けられている。ケーブル収納部120は、本体枠部121および複数のケーブル保持部(131,132)の各部となる部分を有する一体のケーブル保持部材を、横架フレーム60のフレーム本体部64に対して溶接等によって固定することにより設けられている。
【0057】
ケーブル収納部120は、フレーム本体部64の左右中間部から下側に垂れ下がった状態で設けられている。ケーブル収納部120は、左右方向について、フレーム本体部64の全長に対して1/3~1/2程度の幅の範囲で設けられている。また、ケーブル収納部120は、上下方向について、フレーム本体部64と後上面部7bとの間の間隔の半分以上の範囲で設けられている。ただし、ケーブル収納部120の大きさは特に限定されるものではない。また、ケーブル収納部120は、左右対称または略左右対称に構成されている。
【0058】
ケーブル収納部120は、複数のケーブル保持部として、第1ケーブル保持部である上係止部131と、上係止部131よりも下方の位置に設けられた第2ケーブル保持部である下係止部132とを有する。上係止部131および下係止部132のうち、一方のケーブル保持部である上係止部131は、左右両側の2箇所に設けられており、他方のケーブル保持部である下係止部132は、1箇所に設けられている。以下、ケーブル収納部120の各部について具体的に説明する。
【0059】
本体枠部121は、円形の横断面形状を有する棒状またはパイプ状の部材を略U字状に屈曲させた形態を有する。本体枠部121は、全体的に一定または略一定の外径を有する。本体枠部121は、上側を開放側として後面視で略U字状をなすように設けられている。本体枠部121は、略U字状をなす部分として、互いに平行な左右一対の縦棒部122と、一対の縦棒部122の下端部間を繋ぐ横棒部123とを有する。
【0060】
ケーブル収納部120は、ケーブル保持部材における左右の縦棒部122の上端部(先端部)を、フレーム本体部64の左右中間部に対して下側から溶接等により固定することで設けられている。左右の縦棒部122の上端部は、フレーム本体部64において中間部64aと左右の傾斜部64bとにより形成された屈曲部64cまたはその近傍部分の下側に位置している。
【0061】
本体枠部121において、左右の縦棒部122は、後面視で、フレーム本体部64から鉛直状に下方に向けて延伸しており、横棒部123は、左右方向に沿うように水平状に延伸している。左右の縦棒部122と横棒部123とによる角部124は、湾曲状のR形状となっている。
【0062】
本体枠部121をなす左右の縦棒部122および横棒部123は、各部の中心軸が共通の仮想平面上に位置するように設けられている。縦棒部122の長さは、横棒部123の長さよりもやや短く、左右の縦棒部122および横棒部123は、後面視において、フレーム本体部64の左右中間部(中間部64a)とともに、やや横長矩形状の枠状部分を形成している。なお、縦棒部122が横棒部123より長くてもよく、また、縦棒部122および横棒部123が互いに同じ長さであってもよい。
【0063】
左右の上係止部131は、本体枠部121の左右の縦棒部122それぞれの上部から後側に延出するように設けられている。上係止部131は、断面円形の棒状またはパイプ状の部材を湾曲または屈曲させた形態を有する。上係止部131は、本体枠部121と略同じ外径を有し、全体的に一定または略一定の外径を有する。上係止部131は、所定の湾曲形状または屈曲形状を有する棒状の部材を、左右の縦棒部122の上下中央より上側寄りの位置に溶接等によって固定することで設けられている。
【0064】
上係止部131は、側面視において、直線状をなす本体枠部121の縦棒部122に対して垂直状に後側に向けて延出されるとともに先端側を上側に向けて反った形状を有する。具体的には、上係止部131は、側面視で縦棒部122から垂直状に延出した部分である基部131aと、基部131aから湾曲部131cを介して斜め後上方に延出した傾斜部131bとを有する。傾斜部131bの端部が、上係止部131の先端部となる。上係止部131は、傾斜部131bの端部を、縦棒部122の上端部よりも低い高さに位置させている。
【0065】
下係止部132は、本体枠部121の横棒部123の左右中央部から後側に延出するように設けられている。下係止部132は、断面円形の棒状またはパイプ状の部材を湾曲または屈曲させた形態を有する。下係止部132は、本体枠部121と略同じ外径を有し、全体的に一定または略一定の外径を有する。下係止部132は、側面視で上係止部131と上下に略対称な形状を有する。下係止部132は、所定の湾曲形状または屈曲形状を有する棒状の部材を、横棒部123の左右中央の位置に溶接等によって固定することで設けられている。
【0066】
下係止部132は、側面視において、直線状をなす本体枠部121の縦棒部122に対して垂直状に後側に向けて延出されるとともに先端側を下側に向けて反った形状を有する。具体的には、下係止部132は、側面視で縦棒部122から垂直状に延出した部分である基部132aと、基部132aから湾曲部132cを介して斜め後下方に延出した傾斜部132bとを有する。傾斜部132bの端部が、下係止部132の先端部となる。下係止部132は、傾斜部132bの端部を、縦棒部122の下端部の高さ、つまり横棒部123の高さよりも低い高さに位置させている。
【0067】
以上のように上段の左右2箇所の上係止部131と、下段の左右中央1箇所の下係止部132とを設けた構成において、これらの係止部は、本体枠部121に対する接続基部を、後面視で逆三角形の頂点に位置するように配置されている。
【0068】
ケーブル収納部120は、本体枠部121を前傾させた状態で設けられている。上述のとおり、本体枠部121において左右の縦棒部122および横棒部123は、中心軸を共通の仮想平面上に位置させるように設けられており、ケーブル収納部120は、その仮想平面が側面視で直線L1として表れるように設けられている(
図5参照)。
【0069】
そして、
図5に示すように、ケーブル収納部120は、直線L1が上下方向に沿う鉛直線L0に対して角度θ1をなして前傾した直線となるように設けられている。つまり、ケーブル収納部120は、側面視で直線L1に沿う本体枠部121の延伸方向を下側から上側にかけて後側から前側に向かうように上下方向(鉛直線L0)に対して角度θ1傾斜させた状態で設けられている。
【0070】
このようにケーブル収納部120を前傾状に設けた構成においては、側面視で、鉛直状に延伸した後支柱部36の下部とその後方に位置する本体枠部121との間の前後の間隔は、上側から下側にかけて徐々に大きくなる。ケーブル収納部120の傾斜角度である角度θ1の大きさは、例えば10°程度である。ただし、角度θ1の大きさは限定されるものではない。
【0071】
以上のような構成を備えたケーブル収納部120は、その全体または略全体を、平面視で旋回フレーム7の外形の内側に位置している(
図7参照)。本実施形態では、
図7に示すように、平面視において、ケーブル収納部120は、本体枠部121および左右の上係止部131の全体を、旋回フレーム7の外形の内側に位置させており、下係止部132の後端部をわずかに旋回フレーム7の外形の外側(後側)に突出させている。つまり、ケーブル収納部120は、下係止部132の後端部以外の略全体を、平面視で旋回フレーム7の外形の内側に位置させている。
【0072】
ケーブル収納部120に収納される給電ケーブル52は、先端部にコネクタ55を有する。旋回フレーム7の後上面部7b上においては、上部旋回体20Aに設けられた運転席15とケーブル収納部120との間に、コネクタ55を収納するコネクタ収納部としてのコネクタ収容箱140が設けられている。コネクタ収容箱140は、例えば給電ケーブル52がケーブル収納部120に収納された状態において用いられる。
【0073】
コネクタ収容箱140は、旋回フレーム7の後上面部7b上における左右の中央部に、平面視で旋回フレーム7の外形からはみ出ないように設けられている。コネクタ収容箱140は、給電ケーブル52に接続された状態の円筒状のコネクタ55を、筒軸方向を左右方向とする向きで位置決めした状態で収容する。
【0074】
コネクタ収容箱140は、左右方向を長手方向とする略直方体状の外形を有し、上側を開放側とした箱本体部141と、箱本体部141の上側を覆う蓋部142とを有する。蓋部142は、箱本体部141の前側の上部に設けられた軸支部143によって左右方向を回動軸方向として箱本体部141に対して開閉可能に設けられている。
【0075】
蓋部142の閉じた状態は、コネクタ収容箱140の後側の左右中央部に設けられたロック部144により固定される。ロック部144は、例えばパッチン錠等の留め金であり、手動操作によって簡単にロックおよびその解除ができる構成のものである。
【0076】
箱本体部141は、左右の側面部の下縁部に設けられた支持部材145を介して後上面部7b上に支持固定されている。支持部材145は、略L字状の横断面形状を有するアングル部材であり、箱本体部141の側面部に対して溶接等により固定されるとともに、後上面部7bに対して図示せぬボルト等の固定具によって固定されている。左右の支持部材145は、箱本体部141の底面と後上面部7bとの間にわずかな隙間を隔てた状態で箱本体部141を支持している。
【0077】
コネクタ収容箱140の左側の側面部には、給電ケーブル52を貫通させる開口部が形成されており、コネクタ収容箱140は、左側の側面部から、収容状態のコネクタ55に繋がっている給電ケーブル52を外側に延出させている。コネクタ収容箱140の内部には、ロック部144をロックした状態でコネクタ55が位置決め支持されるように、コネクタ55の外形に対応した複数の支持部が設けられている。
【0078】
以上のような構成を備えた掘削作業機1において、給電ケーブル52は、ケーブル収納部120に巻回された状態で収納される。また、ケーブル収納部120に対して給電ケーブル52を収納した状態において、コネクタ55は、コネクタ収容箱140内に収容される。
【0079】
図8および
図9に示すように、ケーブル接続部54から延出した給電ケーブル52は、ケーブル収納部120に対して、2本の上係止部131および1本の下係止部132の計3本の係止部の外側に巻き付けられる。すなわち、給電ケーブル52は、本体枠部121の後側において、2本の上係止部131の上側、および1本の下係止部132の下側に配され、3本の係止部を内周側に位置させた状態で、背面視で周回形態をなすように、ケーブル収納部120に巻き付けられる。なお、ケーブル収納部120に対する給電ケーブル52の巻き付け作業つまり収納作業は、手作業により行われる。
【0080】
ケーブル収納部120に巻回されて収納された状態の給電ケーブル52は、収納状態での形態部分として、ケーブル収納部120に巻回された部分である巻回部52aと、ケーブル接続部54から延出して巻回部に連続する基端側延出部52bと、巻回部52aから延出するとともにコネクタ収容箱140の左側の側面部からコネクタ収容箱140内のコネクタ55に繋がったコネクタ側延出部52cとを有することになる。巻回部52aは、給電ケーブル52の複数の周回部分が束となった部分である。
【0081】
そして、ケーブル収納部120に対して給電ケーブル52をある程度緩みなく巻回した状態において、巻回部52aをなす各周回部分は、左右の上係止部131間に架け渡された略水平状の上横架部52xと、左右の各上係止部131と下係止部132との間に架け渡され湾曲状の部分を含む左右の側周部52yとを有する(
図9参照)。巻回部52aは、各周回部分の上横架部52xおよび左右の側周部52yにより、後面視において、横長の楕円形状の下側の左右中央部を尖らせたような略ハート形の巻回形状を有する。
【0082】
給電ケーブル52がケーブル収納部120に巻き付けられた収納状態において、左右の上係止部131の傾斜部131b、および下係止部132の傾斜部132bにより、巻回部52aの後側への抜け落ちが規制される。
【0083】
また、給電ケーブル52の収納状態において、給電ケーブル52の全体または略全体が、平面視で旋回フレーム7の外形の内側に位置している。つまり、ケーブル収納部120は、給電ケーブル52の全体または略全体を、平面視で旋回フレーム7の外形の内側に位置させるように、給電ケーブル52を収納する。
【0084】
給電ケーブル52の巻回部52aに関し、例えば、給電ケーブル52の全長が約10mであり、ケーブル収納部120に対する給電ケーブル52の1つの周回部分(1巻き分)が約1mとなる場合、巻回部52aは、約10周分の周回部分が束となった部分となる。
【0085】
収納状態の給電ケーブル52を使用する際は、コネクタ収容箱140のロック部144のロックが解除されて蓋部142が開けられ、コネクタ55が取り出される。ここで、ケーブル収納部120により保持された状態の巻回部52aから給電ケーブル52が引き出されて機体から延ばされ、コネクタ55が、機体から離れた位置にある商用電源49側のコネクタ受部56に接続される。
【0086】
以上のような構成を備えた本実施形態に係る掘削作業機1によれば、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、機体から延出した給電ケーブル52を機体に対して収納することができる。
【0087】
掘削作業機1において、ケーブル収納部120は、給電ケーブル52を、背面視で周回形態をなすように、つまり横方向に巻き付けた態様で巻回させた状態で、給電ケーブル52を収納する。このような構成によれば、例えば機体の前後方向にケーブルを巻き取る構成と比べて、給電ケーブル52をコンパクトに収納することができる。これにより、収納状態の給電ケーブル52が上部旋回体20Aから外側にはみ出しにくくなるため、機体の方向転換動作や上部旋回体20Aの旋回動作等についてコンパクトな動作を確保することができ、良好な作業性を得ることができる。また、例えば掘削作業機1をトラック等で輸送する際、収納状態の給電ケーブル52が邪魔になることがないので、運搬性が損なわれることを防ぐことができる。
【0088】
また、ミニショベルである掘削作業機1のように、上部旋回体20Aの後部のスペースが比較的小さい後方小旋回の構成であっても、ケーブル収納部120および収納状態の給電ケーブル52が機体の後部にはみ出ることを抑制することができる。これにより、商用電源49からコネクタ55を外し、給電ケーブル52およびコネクタ55を収納した状態とすることで、例えば掘削作業機1をトラック等で輸送する際に良好な運搬性を得ることができる。また、給電ケーブル52を収納した状態のケーブル収納部120は、上部旋回体20Aの平面視の周縁部の内側に納まるため、バッテリ給電モードでの作業性が損なわれることがない。
【0089】
また、本実施形態において、ケーブル収納部120は、本体枠部121と、本体枠部121から突設され給電ケーブル52の巻回状態を保持する上係止部131および下係止部132とを有する。このような構成によれば、上係止部131および下係止部132によって給電ケーブル52をしっかりと保持した状態で収納することができるので、作業中に給電ケーブル52がケーブル収納部120から脱離することを抑制することができ、安全に作業を行うことができる。
【0090】
特に、本実施形態では、上係止部131および下係止部132は、それぞれ基部131a,132aと、基部131a,132aに対して巻回状態の給電ケーブル52の外周側となる向きに傾斜した傾斜部131b,132bを有する。このような構成によれば、給電ケーブル52をケーブル収納部120に対してずれにくい状態でしっかりと保持することができ、給電ケーブル52の離脱を効果的に抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態において、ケーブル収納部120は、複数のケーブル保持部として、上係止部131および下係止部132を有する。このような構成によれば、例えば2本の係止部に給電ケーブル52を巻回する場合と比べて、上下の係止部によって自重等の作用により給電ケーブル52を効率的にしっかりと保持した状態で収納することができる。
【0092】
また、本実施形態において、ケーブル収納部120は、上段両側の上係止部131と、下段中央の下係止部132との3本の係止部を有する。このような構成によれば、例えば2本の係止部に給電ケーブル52を巻回する場合と比べて、給電ケーブル52の巻回形態を広げることができるので、給電ケーブル52を上下方向および左右方向について安定的に保持することが可能となり、収納状態の給電ケーブル52のぐらつきを抑制することができる。これにより、作業中等におけるケーブル収納部120からの給電ケーブル52の離脱を効果的に抑制することができ、高い安全性を得ることができる。
【0093】
また、3本の係止部を有する構成によれば、例えば4本の係止部に対して給電ケーブル52を巻き付ける場合と比べて、ケーブル収納部120に対する給電ケーブル52の収納時の巻き付け作業、および給電ケーブル52の使用時の引き出し作業を簡易的に行うことができる。これにより、作業者の負担を軽減することができる。
【0094】
また、3本の係止部を有する構成によれば、2本の係止部に給電ケーブル52を巻回する場合と比べて、巻回部52aにおける給電ケーブル52の最小曲げ半径を大きくすることができ、給電ケーブル52における応力集中を避けることができる。これにより、給電ケーブル52の応力集中による破損を抑制することができ、給電ケーブル52の寿命を延ばすことができる。また、3本の係止部を有する構成によれば、2本の係止部に給電ケーブル52を巻回する場合と比べて、給電ケーブル52の1つの周回部分(1巻き分)の距離を稼ぐことができ、給電ケーブル52をコンパクトに収納することができる。
【0095】
また、本実施形態において、ケーブル収納部120は、本体枠部121を前傾状に傾斜させた状態で設けられている。このような構成によれば、本体枠部121の後側において上係止部131および下係止部132に巻き付けられた給電ケーブル52の巻回部52aは、荷重の一部を本体枠部121にあずけた状態となる。つまり、本体枠部121は、給電ケーブル52の巻回部52aを背負った態様となり、上係止部131および下係止部132とともに巻回部52aを直接的に支持した状態となる。
【0096】
したがって、ケーブル収納部120に対して給電ケーブル52を安定的に巻き付けて収納することができる。結果として、作業者がケーブル収納部120に対する給電ケーブル52の巻き付けや引き出しを容易に行うことができ、作業者の負担を軽減して作業効率を上げることができるとともに、収納状態の給電ケーブル52の離脱を抑制することができ、安全性を向上することができる。
【0097】
また、左右の上係止部131は、前傾状の本体枠部121に対して側面視で本体枠部121の延伸方向に対して直角状をなす基部131aと、基部131aに対して傾斜した傾斜部131bとを有する。このような構成によれば、側面視で略V字状をなす本体枠部121と上係止部131とによって給電ケーブル52をしっかりと保持することができ、給電ケーブル52の離脱を効果的に抑制することができる。
【0098】
また、略U字状の本体枠部121を前傾状とした構成において、2本の上係止部131と1本の下係止部132に給電ケーブル52を巻回させる構成を採用することで、給電ケーブル52の巻回部52aを略ハート形の巻回形状とすることができるとともに、巻回部52aの本体枠部121に対する接触部分が確保しやすくなる。具体的には、
図9に示すように、給電ケーブル52の巻回部52aのうち、左右の側周部52yを、本体枠部121の下部における角部124およびその近傍部分に対して比較的広い範囲で支持させることができる。これにより、ケーブル収納部120に対する給電ケーブル52の安定的な巻き付け状態を得ることができる。
【0099】
また、本実施形態において、運転席15の後方に位置する旋回フレーム7の後上面部7b上に、コネクタ55を収容するコネクタ収容箱140が設けられている。このような構成によれば、旋回フレーム7上のスペースを有効に利用しながら、比較的損傷しやすい部分であるコネクタ55を簡易かつ安全に収容することができる。また、ケーブル収納部120との関係において、本実施形態のように本体枠部121を前傾状とすることで、本体枠部121の下部を上部に対して後側に位置させることができ、後上面部7b上におけるコネクタ収容箱140の設置スペースを容易に確保することができる。
【0100】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る建設機械は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0101】
上述した実施形態では、ケーブル収納部120は、ケーブル保持部として、上係止部131を左右2箇所に、下係止部132を左右中央の1箇所に有する構成のものであるが、複数のケーブル保持部の配置は特に限定されない。例えば、上述した実施形態とは上下逆に、上係止部131を左右中央の1箇所に設け、下係止部132を左右2箇所に設けてもよい。また、上係止部131および下係止部132の各係止部の本数も特に限定されるものではない。また、上述した実施形態では、ケーブル収納部120の本体枠部121は、略U字状に形成された部分であるが、本体枠部121の形状は特に限定されない。
【0102】
また、上述した実施形態において、ケーブル収納部120は、キャノピ13に設けられた横架フレーム60に対して所定の形状を有するケーブル保持部材を固設した構成のものであるが、ケーブル収納部としては、例えば、給電ケーブル52を巻き取るような可動部を有する構成のものであってもよい。
【0103】
また、上述した実施形態では、本発明に係るコネクタ収納部としてコネクタ収容箱140を例にとって説明しているが、本発明に係るコネクタ収納部は、箱状のものに限らず、コネクタ55を所定の姿勢で保持した状態で収納する構成のものであればよい。
【0104】
また、上述した実施形態では、掘削作業機1は、4柱キャノピであるキャノピ13を備えた構成のものであるが、キャノピの構成は特に限定されるものではなく、例えば左右一対の後支柱部を有するいわゆる2柱キャノピであってもよい。また、キャノピの代わりに、運転部を覆うキャビンを備えた構成のものであってもよい。
【0105】
また、上述した実施形態では、ケーブル収納部120により収納されるケーブルは、外部から電動モータ12に供給するための給電ケーブル52であるが、本発明に係るケーブルは、給電ケーブル等の電気供給線に限らず、例えば、空気、水、スラリー等の気体、液体または流動体を供給するためのケーブルを含む概念である。
【符号の説明】
【0106】
1 掘削作業機(建設機械)
5 走行部
7 旋回フレーム
13 キャノピ
15 運転席
20A 上部旋回体(上部装置)
20B 下部走行体
52 給電ケーブル(ケーブル)
55 コネクタ
60 横架フレーム
64 フレーム本体部
120 ケーブル収納部
121 本体枠部(支持基部)
131 上係止部(ケーブル保持部、第1のケーブル保持部)
132 下係止部(ケーブル保持部、第2のケーブル保持部)
140 コネクタ収容箱(コネクタ収納部)