(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188436
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
E02F9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096459
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】山崎 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】北原 訓
(72)【発明者】
【氏名】鬼束 講介
(57)【要約】
【課題】建設機械において、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、機体から延出したケーブルを踏んだり機体に接触させたりさせずに保持することを可能とする。
【解決手段】掘削作業機において、上部旋回体20Aと、上部旋回体20Aを支持する下部走行体と、上部旋回体20Aから延出された給電ケーブル52と、上部旋回体20Aの後部に収納可能に設けられ、上部旋回体20Aから後側に延出した状態で、給電ケーブル52を保持するケーブル保持アーム70とを備えた。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部装置と、
前記上部装置を支持する下部走行体と、
前記上部装置から延出されたケーブルと、
前記上部装置の後部に収納可能に設けられ、前記上部装置から後側に延出した状態で、前記ケーブルを保持するケーブル保持アームと、を備えた
建設機械。
【請求項2】
前記ケーブル保持アームは、前記上部装置に対して所定の回動軸により水平回動可能に支持されており、前記回動軸による回動動作により、前記上部装置に対して収納されるように構成されている
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ケーブル保持アームは、前記上部装置の外形の内側に納まる収納状態と、前記上部装置の外形から外側に延出して前記ケーブルを保持する展開状態とのいずれかの状態となるように設けられている
請求項1または請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記回動軸は、前記上部装置に設けられた運転席の後側方に設けられている
請求項2に記載の建設機械。
【請求項5】
前記ケーブル保持アームは、
前記上部装置に支持されたアーム本体部と、
前記アーム本体部の先端部を中心に前記アーム本体部に対して回動自在に支持され、前記ケーブルの一部を保持して導くガイド部材と、を有する
請求項1~4のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項6】
前記アーム本体部は、
前記上部装置に支持された第1アーム部材と、
一端側を前記第1アーム部材に対して回動可能に支持させるとともに、他端側に前記ガイド部材を支持する第2アーム部材と、
前記第1アーム部材に対する前記第2アーム部材の回動を許容するとともに、前記第1アーム部材に対する前記第2アーム部材の回動位置を所定の基準位置に保持するように、前記第1アーム部材に対して前記第2アーム部材を付勢する付勢部材と、を含む
請求項5に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば外部から電力の供給を受けるための電力供給線等のケーブルを有する建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば掘削作業機等の建設機械として、外部から電力の供給を受けるための電力供給線である給電用のケーブルを有する電動式の建設機械がある(例えば、特許文献1参照。)。電動式の建設機械は、例えば、駆動源として、ガソリンを燃料とするエンジンの代わりに電動モータを備える。
【0003】
電動式の建設機械においては、ケーブルを外部電源に接続した状態での作業が行われる場合がある。特許文献1には、給電用のケーブルを外部電源に接続した状態での作業中にケーブルを保持するための構成として、走行体上に旋回可能に設けられた旋回体の後端部に、ケーブルを保持するための棒状のケーブルアームを設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成において、ケーブルアームは、旋回体に対して左右に回動可能に支持されるとともに、旋回体から後側に延出し、先端部の回動軌跡が旋回体および走行体の外側に位置するように設けられている。このような構成によれば、ケーブルアームが旋回体から外側にはみ出た状態となるため、例えば建設機械をトラック等で輸送する際、ケーブルアームが邪魔になり運搬性が損なわれるという問題がある。
【0006】
また、電動式の建設機械には、旋回体にバッテリを有し、外部電源に対するケーブルの接続を解除した状態での作業を可能とした構成のものがある。このような構成において、特許文献1に開示されたようなケーブルアームを採用した場合、旋回体から外側にはみ出したケーブルアームが邪魔になり作業性が損なわれるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、機体から延出したケーブルを踏んだり機体に接触させたりさせずに保持することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る建設機械は、上部装置と、前記上部装置を支持する下部走行体と、前記上部装置から延出されたケーブルと、前記上部装置の後部に収納可能に設けられ、前記上部装置から後側に延出した状態で、前記ケーブルを保持するケーブル保持アームと、を備えたものである。
【0009】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記ケーブル保持アームは、前記上部装置に対して所定の回動軸により水平回動可能に支持されており、前記回動軸による回動動作により、前記上部装置に対して収納されるように構成されているものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記ケーブル保持アームは、前記上部装置の外形の内側に納まる収納状態と、前記上部装置の外形から外側に延出して前記ケーブルを保持する展開状態とのいずれかの状態となるように設けられているものである。
【0011】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記回動軸は、前記上部装置に設けられた運転席の後側方に設けられているものである。
【0012】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記ケーブル保持アームは、前記上部装置に支持されたアーム本体部と、前記アーム本体部の先端部を中心に前記アーム本体部に対して回動自在に支持され、前記ケーブルの一部を保持して導くガイド部材と、を有するものである。
【0013】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記アーム本体部は、前記上部装置に支持された第1アーム部材と、一端側を前記第1アーム部材に対して回動可能に支持させるとともに、他端側に前記ガイド部材を支持する第2アーム部材と、前記第1アーム部材に対する前記第2アーム部材の回動を許容するとともに、前記第1アーム部材に対する前記第2アーム部材の回動位置を所定の基準位置に保持するように、前記第1アーム部材に対して前記第2アーム部材を付勢する付勢部材と、を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、機体から延出したケーブルを踏んだり機体に接触させたりさせずに保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の左前方からの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る掘削作業機が備える装置構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の上部旋回体の左後方からの斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るケーブル保持アームの展開状態を示す平面断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るケーブル保持アームの収納状態を示す平面断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るケーブル保持アームの展開状態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るケーブル保持アームの構成を示す平面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るケーブル保持アームの構成を示す左側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るケーブル保持アームの構成を示すガイド部材の回動軸方向視の図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るケーブル保持アームの連結部の構成を示す縦断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るケーブル保持アームのガイド部材の構成を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、例えば外部から電力の供給を受けるための電力供給線等のケーブルを有する構成において、機体の後方に延出されるケーブルを保持すしガイドするためのケーブルガイド構造を工夫することにより、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、ケーブルを良好な位置状態に保持しようとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本発明の実施の形態では、本発明に係る建設機械として、旋回作業車である掘削作業機(ショベル)を例にとって説明する。ただし、本発明に係る建設機械は、掘削作業機に限らず、例えば、ブルドーザ、クレーン作業機、コンパクトトラックローダ、スキッドステアローダ、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用可能である。
【0018】
本実施形態に係る掘削作業機1の全体構成について、
図1、
図2および
図3を用いて説明する。
図1および
図2に示すように、掘削作業機1は、比較的小型のいわゆるミニショベルであり、自走可能な走行車体と、走行車体に取り付けられた作業部としての掘削装置3とを備える。
【0019】
掘削作業機1は、左右一対のクローラ式の走行部5,5と、左右の走行部5,5を支持する基台としてのトラックフレーム6と、トラックフレーム6上に設けられた旋回フレーム7とを有する。
【0020】
走行部5は、トラックフレーム6を構成する所定のフレーム部分に支持された複数のスプロケット等の回転体に履帯を巻回した構成を有する。走行部5は、後端部に回転体としての駆動スプロケット5aを有する。トラックフレーム6は、左右の走行部5,5間に位置するセンターフレーム部6aと、センターフレーム部6aの左右両側に設けられたサイドフレーム部6bとを有する。
【0021】
旋回フレーム7は、平面視略円形状に構成され、トラックフレーム6に対して、トラックフレーム6の上側に設けられた旋回支持部であり旋回ベアリング6cにより、上下方向の軸線回りに左右いずれの方向にも旋回可能に設けられている。旋回フレーム7の後下部には、カウンタウエイト7aが設けられている。また、旋回フレーム7は、左右の走行部5,5の左右幅内、つまり左側の走行部5の左外側縁端と右側の走行部5の右側縁端との間の幅内で旋回可能に構成されている。これにより、掘削作業機1による小旋回作業が可能となっている。
【0022】
旋回フレーム7上には、運転部10が設けられている。運転部10の右側には、タンク部9が設けられている。タンク部9には、掘削作業機1が有する油圧シリンダ等の油圧アクチュエータに供給される作動油を収容する作動油タンクが設けられている。運転部10の床部8の左側が、運転部10に対するオペレータの乗降口となっている。また、旋回フレーム7上の後部には、駆動源として、原動機である電動モータ12が設けられている。
【0023】
運転部10は、走行車体および掘削装置3を運転・操作するためのものである。旋回フレーム7上には、運転部10に対してキャノピ13が設けられている。キャノピ13は、いわゆる4柱キャノピであり、旋回フレーム7の後部上方に立設された左右一対の後支柱部36,36と、床部8の前端部に立設された左右一対の前支柱部37,37と、前後の支柱部間に設けられたキャノピルーフ部38とを有する。キャノピルーフ部38は、運転部10を上方から覆っている。左右それぞれの後支柱部36および前支柱部37は、キャノピルーフ部38の左右の縁部を形成する略水平状の部分を介して連続した一体のパイプ状の部材により形成されている。
【0024】
運転部10においては、床部8の後側にシートマウントである運転席支持台14が設けられており、運転席支持台14上に運転席15が設けられている。運転席15の前方には、左右一対の走行レバー16が、床部8から上方へ向けて延出した状態で設けられている。床部8上における走行レバー16の左右両側には、作業用の複数の操作ペダル17が配設されている。また、運転部10において、運転席15の周囲には、掘削装置3等の作業部を操作するための作業操作レバーや、スイッチ等の各種操作部を有する操作パネル部等が設けられている。
【0025】
掘削作業機1は、トラックフレーム6およびその左右両側に支持された走行部5,5を含む構成を下部装置である下部走行体20Bとし、下部走行体20Bに対して旋回可能に支持された機体として、上部装置である上部旋回体20Aを備える。上部旋回体20Aは、機体を構成するフレームである旋回フレーム7と、旋回フレーム7上に設けられた運転部10とを含む構成である。
【0026】
上部旋回体20Aは、その外装をなすカバー部として、旋回フレーム7の右側に設けられタンク部9の作動油タンク等を覆う右カバー部31と、運転席支持台14の左後側を覆う左カバー部32と、旋回フレーム7の後側を覆う後カバー部33とを含む。後カバー部33は、カウンタウエイト7aの上側に設けられており、左右の一側がヒンジ部によって回動可能に支持され、開閉可能に設けられている。
【0027】
掘削装置3は、掘削作業機1の前側に設けられたフロント作業装置である。旋回フレーム7の前端の左右中央部には、掘削装置3を支持する支持ブラケット18が前方に向けて突設されている。支持ブラケット18に、掘削装置3の基端部をなすブーム支持ブラケット19が、上下方向を回動軸方向として回動可能に支持させている。掘削装置3は、ブーム支持ブラケット19と旋回フレーム7との間に設けられたスイング用油圧シリンダ(図示せず)により、旋回フレーム7に対して左右にスイングするように設けられている。
【0028】
掘削装置3は、側面視でブーメラン状に屈曲した形状を有し掘削装置3の基部側の部分を構成するブーム21と、ブーム21の先端側に連結されたアーム22と、アーム22の先端部に取り付けられたバケット23とを有する。掘削装置3は、ブーム21を回動動作させるブームシリンダ26と、アーム22を回動動作させるアームシリンダ27と、バケット23を回動動作させる作業具シリンダ28とを有する。これらのシリンダは、いずれも油圧シリンダである。掘削装置3においては、作業内容に応じてバケット23に替えてグラップルやブレーカ等の他の装置が装着される。
【0029】
以上のような構成を備えた掘削作業機1においては、運転席15に着座したオペレータにより走行レバー16や作業操作レバー等が適宜操作されることで、所望の動作・作業が行われる。具体的には、例えば、走行レバー16の操作により、掘削作業機1の前後直進走行や左右旋回走行が行われる。また、作業操作レバーの操作により、掘削装置3による掘削作業等が行われる。
【0030】
本実施形態に係る掘削作業機1は、電力の供給を受けて駆動する電動機である電動モータ12を駆動源として備えた電動式の建設機械である。
図3に示すように、電動モータ12は、油圧ポンプ41を駆動させるポンプ駆動用モータである。電動モータ12は、例えば三相交流モータであり、交流電力の供給を受けて駆動する。油圧ポンプ41は、電動モータ12により駆動させられてタンク部9の作動油タンク内の作動油を、コントロールバルブ42を介してアクチュエータ43に供給するためのものである。
【0031】
アクチュエータ43は、掘削作業機1が備える各種の油圧アクチュエータの総称である。アクチュエータ43は、例えば、ブームシリンダ26、アームシリンダ27、作業具シリンダ28、スイング用油圧シリンダその他の油圧シリンダ等である。
【0032】
コントロールバルブ42は、アクチュエータ43としての各油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する。コントロールバルブ42は、各油圧アクチュエータに対応した複数の方向切替弁を含んで構成されており、方向切替弁の動作制御等により、油圧ポンプ41の駆動によって作動油タンク内から供給される圧油の量と供給先を制御する。アクチュエータ43への圧油の供給制御により、掘削装置3の動作や上部旋回体20Aの旋回動作等が行われる。
【0033】
電動モータ12は、旋回フレーム7の後下部において、駆動軸の軸方向を左右方向とした横向きで設置されている。油圧ポンプ41は、上部旋回体20Aにおいて例えば電動モータ12の左側に設けられている。油圧ポンプ41は、その回転軸を、カップリングを介して電動モータ12の駆動軸に連結させており、電動モータ12の駆動軸の回転にともなって駆動し、作動油を送り出す。コントロールバルブ42は、上部旋回体20Aにおいて例えば旋回フレーム7上の前部の左側の位置に設けられている。
【0034】
また、掘削作業機1は、左右一対の走行用油圧モータ44,44を有する(
図1、
図2参照)。走行用油圧モータ44は、コントロールバルブ42からの圧油の供給を受けることで駆動するアクチュエータであり、各走行部5において、トラックフレーム6のサイドフレーム部6b等の所定の部位に取り付けられた状態で設けられており、駆動スプロケット5aを回転駆動させる。左右の走行用油圧モータ44,44がそれぞれ走行部5を駆動させることで、掘削作業機1の前後直進走行や左右旋回走行が行われる。
【0035】
図3に示すように、掘削作業機1は、電動モータ12に直接的にまたは間接的に電気的に接続された構成として、電動モータ12に外部から電力を供給するための給電器46と、電動モータ12に電力を供給するためのバッテリであるバッテリユニット47と、電動モータ12を制御するインバータ装置48とを備える。
【0036】
図3に示すように、給電器46は、外部電力供給用の電力供給線50により、外部電源である商用電源49に電気的に接続される。給電器46は、電力供給線50により、外部電源である商用電源49からの電力を機体内の回路に取り込む。また、給電器46は、バッテリユニット47およびインバータ装置48のそれぞれに対して電気的に接続されており、給電器46からの電力は、バッテリユニット47およびインバータ装置48のそれぞれに分岐して供給される。
【0037】
給電器46は、商用電源49から供給される交流電力(交流電圧)を直流電力(直流電圧)に変換してインバータ装置48に出力する機能と、商用電源49から供給される交流電力を直流電力に変換してバッテリユニット47に出力する機能と、バッテリユニット47からの直流電力をインバータ装置48に出力させる機能とを有する。給電器46は、モードの切換えによって発揮する機能を切り換えるように構成されている。給電器46は、供給された電力の電流と電圧の値を制御する。
【0038】
掘削作業機1は、例えば運転部10に設けられたモード切換スイッチの操作によって切り換えられるモードとして、次の3つの給電モードを有する。すなわち、掘削作業機1は、電動モータ12への給電がバッテリユニット47のみにより行われるバッテリ給電モードと、電動モータ12への給電が給電器46により外部の商用電源49から行われる外部給電モードと、給電器46により外部の商用電源49からの電力をバッテリユニット47に蓄電する蓄電モードとを有する。
【0039】
外部給電モードには、給電器46を介した商用電源49からの給電によるバッテリユニット47の充電、およびバッテリユニット47から電動モータ12への給電の少なくともいずれかが行われる場合が含まれる。すなわち、電動モータ12は、バッテリ給電モードでは、バッテリユニット47からの給電によって駆動し、外部給電モードでは、商用電源49からの給電によって駆動するとともに、場合によってはバッテリユニット47から駆動用の電力の供給を受ける。なお、商用電源49またはバッテリユニット47から供給される電力は、DC/DCコンバータにより電圧が降圧されてから電動モータ12等に供給される。
【0040】
例えば、給電器46からインバータ装置48に対する電力の供給経路には、インバータ装置48に対する電力の供給を遮断するためのスイッチが設けられており、スイッチの切替えによりインバータ装置48に対する電力の供給が遮断されると、給電器46からの電力はすべてバッテリユニット47の充電に充てられる。また、給電器46からの電力の供給が遮断されると、電動モータ12は、バッテリユニット47から供給される電力のみで駆動することになる。
【0041】
バッテリユニット47は、掘削作業機1が備える電源である。バッテリユニット47は、複数のバッテリモジュールをユニット化した構成のものである。バッテリモジュールは、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の二次電池からなる。バッテリユニット47は、インバータ装置48に直流電流を供給する。バッテリユニット47は、旋回フレーム7の後部において、電動モータ12の上方の位置に設置されている(
図1参照)。
【0042】
インバータ装置48は、電動モータ12に対して出力する電力を制御することで、電動モータ12の出力を制御する。具体的には、インバータ装置48は、バッテリ給電モードにおいて、バッテリユニット47から供給される直流電力を交流電力に変換して電動モータ12に供給する。また、インバータ装置48は、外部給電モードにおいて、給電器46を介して商用電源49から供給される直流電力を交流電力に変換して所定の電圧として電動モータ12に供給する。インバータ装置48は、旋回フレーム7における所定の位置に設けられている。
【0043】
電力供給線50は、
図3に示すように、上部旋回体20Aにおいて旋回フレーム7の内部に設けられた内部の給電ケーブル51と、内部の給電ケーブル51に対して一端側を接続させた外部の給電ケーブル52と、給電ケーブル52と商用電源49との間の電源側ケーブル53とを有する。
【0044】
給電ケーブル51は、旋回フレーム7の内部において、給電器46から延出され、旋回フレーム7の外側に設けられたケーブル接続部54に電気的に接続されている。ケーブル接続部54は、旋回フレーム7において、運転席15の後方かつ後カバー部33の上縁部の前側に設けられた棚状の平面部である後上面部7bの右側の部分に筒状に突設されている(
図4参照)。ケーブル接続部54は、右側の後支柱部36の左後方に位置している。
【0045】
ケーブル接続部54に、外部の給電ケーブル52の一端側が接続されている。つまり、給電ケーブル52は、ケーブル接続部54を介して給電ケーブル51に電気的に接続されており、ケーブル接続部54に接続されることで、上部旋回体20Aの後部から延出した態様で設けられている。給電ケーブル52の長さは、例えば10m程度である。給電ケーブル52の他端側の端部には筒状のコネクタ55が設けられている。コネクタ55は、高圧電流用のコネクタであり、商用電源49側の電源側ケーブル53に設けられたコネクタ受部56に連結されて電気的に接続される。
【0046】
以上のように、本実施形態に係る掘削作業機1は、上部旋回体20Aと、上部旋回体20Aを支持する下部走行体20Bとを備えるとともに、上部旋回体20Aから延出されたケーブルとして、電力供給線50の一部をなす給電ケーブル52を備える。給電ケーブル52は、掘削作業機1が外部から電動モータ12に供給するための電力の供給を受けるための電力供給線となる。
【0047】
掘削作業機1は、例えば外部給電モードのように電力供給線50を商用電源49に接続させた状態での作業を行う際に、給電ケーブル52を保持するための構成として、ケーブル保持アーム70を備えている。ケーブル保持アーム70は、上部旋回体20Aの後部に収納可能に設けられ、上部旋回体20Aから後側に延出した状態で、給電ケーブル52を保持する。ケーブル保持アーム70について、
図4から
図12を用いて説明する。なお、
図5、
図6、
図8および
図11においては、便宜上、給電ケーブル52の図示を省略している。
【0048】
図4から
図10に示すように、ケーブル保持アーム70は、キャノピ13を構成する左右の後支柱部36間に架設された横架フレーム60に支持された状態で設けられている。左右の後支柱部36は、後上面部7bの左右両端部に設けられている。
【0049】
後支柱部36は、旋回フレーム7の後上面部7b上において、後支柱部36の下端部にフランジ状に設けられた固定板部61を、固定ボルト62により後上面部7bに対して固定させた状態で立設されている。固定板部61は、後支柱部36を支持する部分から左右内側に向けて延出した延出部を有し、この延出部が固定ボルト62により2箇所で固定されている。固定板部61と後支柱部36の下端部との間には、略三角形状の支持板63が設けられている。右側の固定板部61の後側に、給電ケーブル52の基端部が接続されるケーブル接続部54が位置している。
【0050】
横架フレーム60は、所定の屈曲形状を有するパイプ部材により構成されており、左右の後支柱部36の下部間に水平状に架設されている。横架フレーム60は、左右方向について対称または略対称な形状を有する。横架フレーム60は、上下方向について、運転席15の上端に対してわずかに上方の高さに位置するように、左右の後支柱部36に対して支持されている。
【0051】
横架フレーム60は、パイプ部材により構成されたフレーム本体部64を有し、フレーム本体部64について、平面視で後側に膨出した形態をなす屈曲形状を有する。フレーム本体部64は、平面視での屈曲形状をなす部分として、左右方向に沿う中間部64aと、中間部64aの左右両側の傾斜部64bとを有する。傾斜部64bは、中間部64aとともに鈍角をなすように屈曲形成された部分であり、左右方向に対して、左右外側から内側にかけて徐々に前側から後側に向かうように傾斜している。
【0052】
横架フレーム60は、フレーム本体部64の両端部に設けられたクランプ部65により後支柱部36を挟持した状態で、後支柱部36に固定支持されている。クランプ部65は、フレーム本体部64の端部に固定された固定側挟持片部65aと、固定側挟持片部65aに対してヒンジ部65cを介して連結された可動側挟持辺部65bとを有する。
【0053】
固定側挟持片部65aおよび可動側挟持辺部65bは、いずれも凹形状をなす屈曲板状の部分であり、凹側同士を対向させて互いの間に後支柱部36を挟持している。固定側挟持片部65aおよび可動側挟持辺部65bは、一側の縁部同士をヒンジ部65cにおいて開閉可能に連結させており、他端側に形成された合わせ面部同士を重ね、ボルト66aにより2箇所で締結固定された状態で、後支柱部36を挟持している。ボルト66aは、両挟持片部の合わせ面部を貫通し、一方の(本実施形態では、固定側挟持片部65aの)合わせ面部に設けられたナット部66bに螺挿されている。
【0054】
このように、横架フレーム60は、左右の後支柱部36に対して、左右のクランプ部65により着脱可能に設けられている。後支柱部36に対するクランプ部65の固定状態において、例えば、ボルト66aを緩めることで、クランプ部65が後支柱部36に対して移動可能となり、横架フレーム60の高さ調整が可能となる。
【0055】
ケーブル保持アーム70は、上部旋回体20Aに対して所定の回動軸O1により水平回動可能に支持されており、回動軸O1による回動動作により、上部旋回体20Aに対して収納されるように構成されている。ケーブル保持アーム70は、概略的に全体として所定の屈曲形状を有する棒状の構造であり、一端側(基部側)を横架フレーム60に対して上下方向に沿う回動軸O1により水平回動可能に支持させた状態で設けられている。
【0056】
本実施形態では、ケーブル保持アーム70は、横架フレーム60の左側の端部に支持された状態で設けられている。詳細には、ケーブル保持アーム70は、フレーム本体部64の左側の傾斜部64bの左側の端部近傍の部位に支持されている。
【0057】
ケーブル保持アーム70は、上部旋回体20Aの外形の内側に納まる収納状態と、上部旋回体20Aの外形から外側に延出して給電ケーブル52を保持する展開状態とのいずれかの状態となるように設けられている。ケーブル保持アーム70の収納状態と展開状態の切替えは、回動軸O1を中心としたケーブル保持アーム70の回動動作により行われる。
図1、
図2、
図4、
図6は、収納状態のケーブル保持アーム70を示しており、
図5、
図7から
図10は、展開状態のケーブル保持アーム70を示している。
【0058】
ケーブル保持アーム70は、収納状態において、上部旋回体20Aを構成する旋回フレーム7の平面視外形から外側にはみ出ないように構成されている。基端部を横架フレーム60の左端部に支持させたケーブル保持アーム70は、収納状態において、横架フレーム60の直後方の位置で、横架フレーム60に沿うように横向きの状態となり、先端部が旋回フレーム7からはみ出ないように構成されている。
【0059】
図6に示すように、ケーブル保持アーム70は、収納状態において、先端部を、右側の後支柱部36の右方に位置させている。収納状態のケーブル保持アーム70の先端部は、平面視で旋回フレーム7の外形の内側に位置している。収納状態のケーブル保持アーム70の先端部の近傍において、旋回フレーム7の平面視での外形は、右カバー部31により形成される円弧状の部分であり、平面視において、ケーブル保持アーム70の先端の位置は、旋回フレーム7の外形線の位置に略一致している。
【0060】
ケーブル保持アーム70は、展開状態において、横架フレーム60に対する支持部分から後方に向けて水平状に延出しており、前後方向について、先端部を、走行部5の後端よりも後方に位置させている。本実施形態では、ケーブル保持アーム70は、展開状態において、後側の略半分を、走行部5の後端よりも後側へと延出させている。
【0061】
展開状態のケーブル保持アーム70に対して、ケーブル接続部54から延出する給電ケーブル52は、基端側の部分を、横架フレーム60に対して面ファスナーやベルト等の留め具(図示略)によって複数箇所で支持させる。給電ケーブル52は、横架フレーム60に対する支持部分から先端側の部分の一部を、ケーブル保持アーム70に対して支持させた状態で保持される。
【0062】
給電ケーブル52は、ケーブル保持アーム70に対しては、ケーブル保持アーム70を伝って略水平状に後方に向かって配された状態で保持され、ケーブル保持アーム70の先端部から垂下した状態となる。給電ケーブル52のうち、ケーブル保持アーム70の先端部から垂下した部分よりもさらに延びた部分の先端部に、筒状のコネクタ55が設けられている。
【0063】
旋回フレーム7の後上面部7b上における左右の中央部には、コネクタ55を所定の姿勢で載置支持させるためのコネクタ支持部67が設けられている(
図4参照)。コネクタ支持部67は、例えばバッテリ給電モード等、給電ケーブル52を使用しない場合において、旋回フレーム7に対してコネクタ55を収納させる。
【0064】
コネクタ支持部67は、略L字状の横断面形状を有するアングル部材を、長手方向を前後方向として、左右方向に所定の間隔を隔てた2箇所に、後上面部7b上に固定することにより設けられている。コネクタ支持部67は、左右両側に後上面部7bからの突片部をなしており、円筒状のコネクタ55を、筒軸方向を左右方向とする向きで載置支持する。コネクタ支持部67は、平面視でコネクタ55が旋回フレーム7の外形からはみ出ない位置にコネクタ55を支持する。
【0065】
ケーブル保持アーム70の構成について説明する。ケーブル保持アーム70は、ケーブル保持アーム70の基端部を構成する支持ブラケット71と、支持ブラケット71により横架フレーム60に支持されたアーム本体部72と、アーム本体部72の先端側に設けられたガイド部材73とを有する。
【0066】
支持ブラケット71は、ケーブル保持アーム70における横架フレーム60に対する支持部分であり、横架フレーム60に対して回動軸O1を中心に回動可能に支持されている。支持ブラケット71は、略U字状の屈曲形態を有する金具部分であり、平面視で略直角三角形状を有する上下の支持面部71aと、上下の支持面部71a同士を繋ぐ部分である固定面部71bとを有する。
【0067】
支持ブラケット71は、上下の支持面部71aの間隔を、フレーム本体部64の外径と略同じとしており、上下の支持面部71aの間にフレーム本体部64を挟持した状態で、フレーム本体部64に支持されている。支持ブラケット71は、支持面部71aの略直角三角形状における直角部側となる角部分を貫通するボルト状の軸支部材75により、フレーム本体部64に対して回動軸O1を中心に回動可能に支持されている。軸支部材75の中心軸が、回動軸O1に一致している。軸支部材75は、支持ブラケット71に対して上側から挿入され、上下の支持面部71aおよびフレーム本体部64のそれぞれに形成された支持孔部を貫通し、下側の支持面部71aの下側に位置するナット76に螺合している(
図10参照)。
【0068】
支持ブラケット71は、上下の支持面部71aおよびフレーム本体部64を貫通する係止ピン77により、フレーム本体部64に固定された状態となる。つまり、支持ブラケット71の回動軸O1を中心としたフレーム本体部64に対する回動が、係止ピン77により規制される。これにより、ケーブル保持アーム70の位置が固定される。フレーム本体部64において、係止ピン77を貫通させる位置決め用の係止孔部(図示略)は、軸支部材75を貫通させる支持孔部に対して左右内側(右側)に位置している。
【0069】
係止ピン77は、一端側に円板状のフランジ部を有する棒状の部材であり、上下方向を軸方向として、支持ブラケット71に対して上側から挿入され、上下の支持面部71aおよびフレーム本体部64のそれぞれに形成された係止孔部を貫通している。係止ピン77は、下側の支持面部71aから下方への突出部分に抜止めピン78を係合させている(
図10参照)。抜止めピン78は、例えば係止ピン77を径方向に貫通した状態で係止ピン77に挟持係合するスナップピンである。
【0070】
支持ブラケット71は、上下の支持面部71aにおいて係止ピン77を貫通させる円形状の係止孔部として、ケーブル保持アーム70を収納状態でフレーム本体部64に固定するための第1係止孔部79aと、ケーブル保持アーム70を展開状態でフレーム本体部64に固定するための第2係止孔部79bとを有する(
図8参照)。第1係止孔部79aおよび第2係止孔部79bは、収納状態または展開状態で、フレーム本体部64に形成された共通の係止孔部に対して重なり、係止ピン77の挿入を受ける。したがって、第1係止孔部79aおよび第2係止孔部79bは、支持ブラケット71において回動軸O1に対応する位置を中心とした共通の円周上に位置している。
【0071】
ケーブル保持アーム70の収納状態と展開状態の間の回動角度、つまり回動軸O1を中心とした支持ブラケット71の回動角度は、略90°である。支持ブラケット71において、固定面部71bは、ケーブル保持アーム70の状態の切替えのための回動動作においてフレーム本体部64に干渉しないように設けられている。
【0072】
支持ブラケット71は、ケーブル保持アーム70の展開状態(以下「アーム展開状態」ともいう。)において、上下の支持面部71aの大部分をフレーム本体部64から後側に突出させている。この上下の支持面部71aの後側への突出部分の左側に、固定面部71bが設けられている。ケーブル保持アーム70の収納状態(以下「アーム収納状態」ともいう。)において、支持ブラケット71は、固定面部71bを、フレーム本体部64の左側の傾斜部64bの後側に沿わせた状態となる。
【0073】
ケーブル保持アーム70の回動軸O1は、上部旋回体20Aに設けられた運転席15の後側方に設けられている。本実施形態では、回動軸O1は、運転席15の後左側方に設けられており、平面視において、旋回フレーム7の後端部における左側の端部に位置している。
【0074】
また、本実施形態では、ケーブル保持アーム70は、フレーム本体部64の左端部に支持された状態で設けられているが、ケーブル保持アーム70は、フレーム本体部64の右端部に支持された状態で設けられてもよい。このため、フレーム本体部64の右側の傾斜部64bには、左側の傾斜部64bと左右対称の配置で、軸支部材75を貫通させるための支持孔部64cと、係止ピン77を貫通させるための係止孔部64dとが形成されている(
図7参照)。なお、ケーブル保持アーム70は、フレーム本体部64の右側に支持される場合は、フレーム本体部64の左側に支持される場合に対して左右反転させた状態でフレーム本体部64に取り付けられる。
【0075】
アーム本体部72について説明する。アーム本体部72は、横架フレーム60に支持された第1アーム部材81と、第1アーム部材81に連結された第2アーム部材82と、これらのアーム部材間に設けられた付勢部材としての付勢バネ83とを含む。
【0076】
アーム本体部72は、ケーブル保持アーム70の基部側の部分を構成する第1アーム部材81と、ケーブル保持アーム70の先端側の部分を構成する第2アーム部材82とにより、平面視で所定の屈曲形状をなす棒状の部分を構成している。なお、ケーブル保持アーム70においては、支持ブラケット71側を基部側とし、ガイド部材73側を先端側とする。
【0077】
アーム本体部72は、平面視での屈曲形状をなす部分として、基部側傾斜部72aと、中間部72bと、先端側傾斜部72cとを有する(
図5参照)。アーム本体部72は、平面視での屈曲形状を、アーム収納状態においてフレーム本体部64の屈曲形状に対応するような形状としている。すなわち、アーム本体部72は、アーム収納状態において、基部側傾斜部72a、中間部72b、および先端側傾斜部72cがそれぞれフレーム本体部64の左側の傾斜部64b、中間部64a、および右側の傾斜部64bと平行または略平行となるように構成されている。
【0078】
具体的には、アーム収納状態において、アーム本体部72の基部側傾斜部72aは、フレーム本体部64の左側の傾斜部64bの後側に沿った状態となる。また、アーム本体部72の中間部72bは、フレーム本体部64の中間部64aの後側に沿った状態となる。また、アーム本体部72の先端側傾斜部72cは、フレーム本体部64の右側の傾斜部64bの後方の位置で、傾斜部64bと平行状に延伸した状態となる。一方、アーム展開状態において、アーム本体部72は、中間部72bを前後方向に沿わせた状態となる。
【0079】
第1アーム部材81は、円形の横断面形状を有する屈曲棒状の部分を本体部とする部材であり、本体部において、基部側アーム部81aおよび先端側アーム部81bにより、鈍角状の屈曲形態をなしている。基部側アーム部81aにより、アーム本体部72の基部側傾斜部72aが形成されており、先端側アーム部81bにより、アーム本体部72の中間部72bの基部側の略半分が形成されている。第1アーム部材81の本体部の外径は、給電ケーブル52の外径と同程度である。
【0080】
第1アーム部材81は、基部側アーム部81aを、支持ブラケット71に対して固定面部71bの外側に溶接等により固定させている。第1アーム部材81は、基部側アーム部81aの基部側の略半分を、固定面部71bの外側面に沿わせ、支持ブラケット71に対する固定部分としている。
【0081】
このように、上部旋回体20Aに支持されたアーム本体部72において、第1アーム部材81が、上部旋回体20Aに支持された部分となる。第1アーム部材81は、上部旋回体20Aに設けられた横架フレーム60に対して、支持ブラケット71を介して支持されている。
【0082】
第2アーム部材82は、円形の横断面形状を有するとともに第1アーム部材81の本体部と同一または略同一の外径を有する屈曲管状の部材であり、基部側アーム部82aおよび先端側アーム部82bにより、鈍角状の屈曲形態をなしている。基部側アーム部82aにより、アーム本体部72の中間部72bの先端側の略半分が形成されており、先端側アーム部82bにより、アーム本体部72の先端側傾斜部72cが形成されている。
【0083】
第2アーム部材82は、基部側アーム部82aを、第1アーム部材81の先端側アーム部82bに対して同軸状に配置している。すなわち、アーム本体部72において、第1アーム部材81の先端側アーム部81bと、第2アーム部材82の基部側アーム部82aとにより、直線状の中間部72bが形成されている。
【0084】
第2アーム部材82は、一端側である基部側を第1アーム部材81に対して回動可能に支持させている。第2アーム部材82は、第1アーム部材81に対して、上下方向に沿う連結回動軸O2を中心として水平回動可能に連結されている。つまり、第1アーム部材81と第2アーム部材82は、ケーブル保持アーム70の回動軸O1と平行な連結回動軸O2を中心として相対回動可能に連結されている。
【0085】
第2アーム部材82の第1アーム部材81に対する連結部80は、アーム本体部72における中間部72bの延伸方向の中間に位置している。したがって、第2アーム部材82が第1アーム部材81に対して回動することで、アーム本体部72は、中間部72bの中間部分から屈曲した形態となる。
【0086】
連結部80の構造について説明する。
図11に示すように、第1アーム部材81において、棒状の本体部の先端側の端部、つまり先端側アーム部81bの先端側の端部には、上下方向を筒軸方向とする円筒状のボス部90が設けられている。ボス部90は、上下方向に貫通した孔部90aを有する。また、ボス部90は、上下方向について、第1アーム部材81の本体部の外径と同一または略同一の寸法を有し、上下の端面90bを、第1アーム部材81の本体部の上下の端部の位置に合わせている。なお、
図11は、第1アーム部材81と第2アーム部材82の連結部80の連結回動軸O2を通る縦断面図である。
【0087】
第2アーム部材82は、基部側の端面82cを、ボス部90に近接させた位置で、第1アーム部材81に連結されている(
図11参照)。第2アーム部材82の基部側アーム部82aの基部側の端部には、上連結プレート91および下連結プレート92が設けられている。
【0088】
上連結プレート91および下連結プレート92は、いずれも所定の厚さを有する矩形板状の部材であり、板厚方向を上下方向とするとともに、長手方向を第2アーム部材82の基部側アーム部82aの軸方向に沿わせた向きで、基部側アーム部82aの上端部および下端部それぞれに対して溶接等により固定されている。上連結プレート91および下連結プレート92は、第2アーム部材82の一部として基部側アーム部82aと一体的に回動する部分となる。
【0089】
図11に示すように、上連結プレート91および下連結プレート92は、いずれも長手方向の一端側を第2アーム部材82の端面82cから基部側に延出させており、端面82cからの突出部分である延出板部91a,92aを有する。上下の延出板部91a,92aは、互いに平行な水平板状の部分であり、互いの間隔を、ボス部90の上下方向の寸法と略一致させている。
【0090】
上連結プレート91の延出板部91aは、ボス部90の上側の端面90bの全体を覆うとともに、先端面91bをボス部90よりも基部側(
図11における左側)に位置させる延出長さを有する。下連結プレート92の延出板部92aは、先端面92bをボス部90と先端側アーム部81bとの境界部分の近傍に位置させ、ボス部90の下側の端面90bの略全体または全体を覆う延出長さを有する。
【0091】
第2アーム部材82は、上連結プレート91および下連結プレート92の上下の延出板部91a,92aによってボス部90を上下に挟んだ状態で、上下の延出板部91a,92aおよびボス部90を貫通する支持ピン93により、第1アーム部材81に対して連結回動軸O2を中心に回動可能に連結支持されている。支持ピン93の中心軸が、連結回動軸O2に一致している。
【0092】
支持ピン93は、一端側に円板状のフランジ部93aを有する棒状の部材であり、上下方向を軸方向として、上連結プレート91に対して上側から挿入され、延出板部91a,92aに形成された孔部91c,92c、およびボス部90の孔部90aを貫通している。支持ピン93は、下側の延出板部92aから下方への突出部分に抜止めピン94を係合させている。抜止めピン94は、例えば支持ピン93を径方向に貫通した状態で抜止めピン94に挟持係合するスナップピンである。
【0093】
以上のように、第2アーム部材82は、連結部80において、第1アーム部材81に対して連結回動軸O2を中心として回動可能に連結されている。第1アーム部材81に対する第2アーム部材82の回動動作については、基準位置から回動した第2アーム部材82を基準位置に復帰させるように、第2アーム部材82が第1アーム部材81に対して付勢バネ83により付勢されている。
【0094】
ここで、基準位置とは、第1アーム部材81に対する第2アーム部材82の回動方向についての位置であり、第2アーム部材82が、基部側アーム部82aの軸方向を、第1アーム部材81の先端側アーム部81bの軸方向に一致させる位置である。言い換えると、基準位置とは、アーム本体部72において第1アーム部材81の先端側アーム部81bと第2アーム部材82の基部側アーム部82aとにより直線状の中間部72bが形成される位置である。
【0095】
付勢バネ83は、第1アーム部材81に対する第2アーム部材82の連結回動軸O2回りの回動を許容するとともに、第1アーム部材81に対する第2アーム部材82の回動位置を所定の基準位置に保持するように、第1アーム部材81に対して第2アーム部材82を付勢する。
【0096】
付勢バネ83は、引張りコイルバネであり、両端に湾曲状のフック部83a,83bを有する。付勢バネ83は、第1アーム部材81の先端側アーム部81bの上方において、伸縮方向を先端側アーム部81bの軸方向に沿わせた向きで水平状に設けられている。
【0097】
付勢バネ83は、基部側に位置する一方のフック部83aを、第1アーム部材81の先端側アーム部81bに設けられた円筒状の基部側バネ係止ピン96に係止させた状態で支持されている。基部側バネ係止ピン96は、第1アーム部材81における屈曲部の近傍の部位において、上方に向けて突設されている。基部側バネ係止ピン96は、外周溝等により、フック部83aを容易に外れないように係止支持している。
【0098】
付勢バネ83は、先端側に位置する他方のフック部83bを、上連結プレート91の延出板部91aに設けられた円筒状の先端側バネ係止ピン97に係止させた状態で支持されている。先端側バネ係止ピン97は、延出板部91aにおける延出側の端部において、上方に向けて突設されている。先端側バネ係止ピン97は、外周溝97a等により、フック部83bを容易に外れないように係止支持している(
図11参照)。
【0099】
以上のような第1アーム部材81に対する付勢バネ83を介した第2アーム部材82の連結構成において、第2アーム部材82が基準位置にある状態で、付勢バネ83が最も短い状態となる。第2アーム部材82が基準位置から連結回動軸O2を中心に左側または右側に回動することで、付勢バネ83は、先端側バネ係止ピン97により引っ張られて伸長する。
【0100】
図8に示すように、第2アーム部材82が連結回動軸O2を中心に左側に回転することで、上連結プレート91を介して連結回動軸O2よりも基部側(
図8において上側)に位置する先端側バネ係止ピン97は、右後側に移動して付勢バネ83を引っ張る。逆に、第2アーム部材82が連結回動軸O2を中心に右側に回転することで、先端側バネ係止ピン97は左後側に移動して付勢バネ83を引っ張る。
【0101】
付勢バネ83は、伸長することで反発力を生じ、基部側バネ係止ピン96に対して先端側バネ係止ピン97を引っ張ることで、上連結プレート91を先端側アーム部81bの軸方向に沿う状態に戻すように付勢作用する。これにより、第2アーム部材82が自動的に基準位置に戻ることになる。
【0102】
図8においては、アーム展開状態において、第2アーム部材82が基準位置から連結回動軸O2を中心として左側に回動した状態を、二点鎖線の第2アーム部材82Lで示しており、第2アーム部材82が基準位置から連結回動軸O2を中心として右側に回動した状態を、二点鎖線の第2アーム部材82Rで示している。
図8に示す例では、第2アーム部材82が基準位置から左右それぞれ約30°回動した状態を示している。
【0103】
以上のような構成を備えたアーム本体部72に対して、ケーブル保持アーム70による保持対象である給電ケーブル52は、アーム本体部72の下側を伝って保持されている。アーム本体部72には、給電ケーブル52を保持するための面ファスナーやベルト等の留め具98が複数箇所に設けられている。
【0104】
留め具98は、ループ状の部材であり、アーム本体部72の下側に位置する給電ケーブル52を、アーム本体部72とともに巻き止め、給電ケーブル52を部分的に保持する。本実施形態では、留め具98は、第1アーム部材81の先端側アーム部81bの中間部、第2アーム部材82の基部側アーム部82aの先端側の部分、および先端側アーム部82bの基部側の部分の3箇所に設けられている。
【0105】
留め具98の配置位置には、留め具98のズレを防止するためのストッパ99が設けられている。ストッパ99は、略V字状に屈曲した棒状の部材の両端部を第1アーム部材81または第2アーム部材82の外周面に固定することによって設けられている。ストッパ99は、第1アーム部材81または第2アーム部材82の側部に設けられており、各アーム部材の外周面とともに、留め具98を通す空間を形成している。
【0106】
なお、アーム本体部72において、留め具98を設ける位置および数は特に限定されない。また、アーム本体部72の下側に給電ケーブル52を保持する構成において、給電ケーブル52は、連結部80の近傍部分では、可動部分となる連結部80に対する干渉を避けるため、アーム本体部72に対して下側に間があくように緩ませた状態で配索される(
図9参照)。連結部80の近傍部分以外の部分においては、給電ケーブル52は、アーム本体部72に近接した状態でアーム本体部72に沿うように配索される。
【0107】
以上のような構成を備えたアーム本体部72は、他端側である先端側にガイド部材73を支持している。つまり、ガイド部材73は、アーム本体部72の先端側に設けられている。ガイド部材73は、給電ケーブル52のうち、アーム本体部72を伝って略水平状に保持された部分と、ケーブル保持アーム70の先端側から垂下した状態となる部分との間の部分を湾曲形態で保持する。
【0108】
ガイド部材73は、アーム本体部72の先端部を中心にアーム本体部72に対して回動自在に支持され、給電ケーブル52の一部を保持して導く。ガイド部材73は、アーム本体部72の軸方向に沿う方向を回動軸方向として、アーム本体部72に対して回動するように設けられている。具体的には、ガイド部材73は、アーム本体部72のうち、第2アーム部材82の先端側アーム部82bの軸方向に沿う回動軸O3を中心として、アーム本体部72に対して回動自在に支持されている。回動軸O3は、第2アーム部材82の先端側アーム部82bの中心軸に一致する。
【0109】
ガイド部材73は、給電ケーブル52を所定の形状に沿わせた状態で保持するケーブルガイド部101と、ケーブルガイド部101を第2アーム部材82に対して回動可能に支持する回動支持筒部102とを有する。
【0110】
回動支持筒部102は、第2アーム部材82と略同じ径を有する両端開口の筒状の部分であり、第2アーム部材82に対して、支持軸105を介して回動可能に支持されている。
図12に示すように、支持軸105は、軸方向の中間部に拡径部105aを有する直線棒状の部材である。
【0111】
図12に示すように、支持軸105は、拡径部105aを第2アーム部材82の先端側の開口端82dに対する係止部とし、拡径部105aよりも軸方向一側(
図12において左側)の部分である固定軸部105bを、第2アーム部材82に挿嵌させている。つまり、支持軸105は、拡径部105aおよび拡径部105aよりも軸方向他側(
図12において右側)の部分である支持軸部105cを、第2アーム部材82の開口端82dから突出させている。支持軸105は、固定軸部105bを第2アーム部材82に圧入させること等によって第2アーム部材82に対して固定状態で設けられている。
【0112】
支持軸105は、支持軸部105cを回動支持筒部102に貫通させた状態で、回動支持筒部102を支持している。支持軸部105cは、先端部を、回動支持筒部102から突出させている。支持軸部105cの外周面と回動支持筒部102の内周面との間には、支持軸部105cを貫通させた円筒状の軸受部材であるブッシュ106が介在している。ブッシュ106は、回動支持筒部102の中心軸方向の両端部の2箇所に設けられている。
【0113】
回動支持筒部102は、基部側の開口端面102aを、拡径部105aと支持軸部105cとの段差面に係止させている。一方、回動支持筒部102は、先端側の開口端面102bを、支持軸部105cの先端部の外周溝105dに係合した止め輪107に対してワッシャ108を介して係止させている。回動支持筒部102は、支持軸105上において、支持軸部105cを貫通させるとともに、拡径部105aと、止め輪107およびワッシャ108とにより挟持されて軸方向について位置決めされた状態で設けられている。
【0114】
このように、回動支持筒部102は、第2アーム部材82に対して同軸状に固定された支持軸105に対してブッシュ106を介して回動可能に支持されることで、第2アーム部材82に対して回動軸O3回りに回動可能に支持されている。
【0115】
回動支持筒部102の周壁の上部には、グリスニップル109が設けられている。グリスニップル109は、回動支持筒部102の中心軸方向について、両側のブッシュ106の間の部分となる中央部に設けられている。グリスニップル109は、支持軸105の支持軸部105cの外周面と回動支持筒部102の内周面との間の隙間に連通しており、ブッシュ106の摺接部分に対するグリスの供給に用いられる。
【0116】
図12に示すように、ケーブルガイド部101は、所定の湾曲形状を有する板状のガイド本体部111と、回動支持筒部102に対してガイド本体部111を支持する板状の支持板部112とを有する。ガイド本体部111および支持板部112は、例えば金属製の一体の部材により構成されている。
【0117】
ガイド本体部111は、給電ケーブル52の外径よりもわずかに広い幅の板状部分を湾曲および屈曲させた形態を有する。ガイド本体部111は、
図12に示すように、回動支持筒部102の下方に位置する水平状の部分である水平面部111aと、水平面部111aから回動支持筒部102よりも先端側に延出した部分であって側面視で円弧状に湾曲した湾曲面部111bとを有する。
【0118】
水平面部111aは、回動支持筒部102の下方において、回動支持筒部102に対して給電ケーブル52の外径(太さ)よりもわずかに大きい間隔を隔てた位置に設けられている。湾曲面部111bは、水平面部111aの先端側に連続し、側面視で略90°の角度範囲の円弧状に形成され、水平面部111aの先端側から垂れ下がるように設けられている。ガイド本体部111は、水平面部111aおよび湾曲面部111bにより、略J字状の側面視形状をなしている。
【0119】
ガイド本体部111は、水平面部111aおよび湾曲面部111bの上側の面を、給電ケーブル52を下側から支持するケーブル支持面113としている。ケーブル支持面113は、水平面部111aの部分において、第2アーム部材82の下側を伝って水平状に配された給電ケーブル52を水平状のまま下側から支持し、湾曲面部111bの部分において、給電ケーブル52を湾曲面部111bの湾曲形状に沿わせて円弧状に垂れ下がる形態に支持する。ケーブル支持面113により支持された給電ケーブル52は、ケーブル支持面113に対する支持部分よりも先端側(コネクタ55側)の部分を、ケーブル支持面113の下端から垂下させた状態となる。
【0120】
ガイド部材73においては、給電ケーブル52をガイド本体部111に保持するためのリング状の保持部115が複数箇所に設けられている。保持部115は、ケーブル支持面113とともに給電ケーブル52を貫通させるトンネル状の挿通孔を形成している。保持部115は、所定の形状を有する無端帯状の部材をガイド本体部111に対して溶接等によって固定することによって設けられている。ガイド本体部111の側面部には、保持部115を形成する無端帯状の部材を位置させる係止凹部111cが形成されている(
図12参照)。
【0121】
本実施形態では、保持部115は、ガイド本体部111において、水平面部111a、湾曲面部111bの中間部、および湾曲面部111b下部の3箇所に設けられている。なお、ガイド本体部111において、保持部115を設ける位置および数は特に限定されない。また、保持部115の代わりに、ガイド本体部111とは別体の面ファスナーやベルト等の留め具が用いられてもよい。
【0122】
図12に示すように、ガイド本体部111は、水平面部111aの基部側において、水平面部111aとともに鈍角状をなして下り傾斜した基部側屈曲部111dを有する。また、ガイド本体部111は、湾曲面部111bの先端側において、湾曲面部111bの下端部とともに直角状をなすように基部側に屈曲した先端側屈曲部111eを有する。これらの屈曲部は、例えば、保持部115により形成された挿通孔に給電ケーブル52を通す際にガイド部として機能する。
【0123】
支持板部112は、厚さ方向をガイド本体部111の幅方向とした矩形板状の部分であり、ガイド本体部111の水平面部111aの左側から上方に向けて延出している。支持板部112は、回動軸O3の軸方向視において、上端部を回動支持筒部102の外周面102cの左側の部位に溶接等によって固定されている。
【0124】
支持板部112は、水平面部111aから側方に向けて突出形成された矩形板状の突片部を水平面部111aに対して直角状に屈曲させた部分として設けられている。支持板部112により、水平面部111aが回動支持筒部102の下方において所定の高さ位置となるように、回動支持筒部102に対してガイド本体部111が固定支持されている。支持板部112は、水平面部111a上に支持された給電ケーブル52の部分に対して側壁状の部分となる。
【0125】
図10においては、アーム展開状態において、ガイド部材73が自重等によって回動軸O3の軸方向視でガイド本体部111を鉛直方向に向けた基準状態から回動軸O3を中心として左側に回動した状態を、二点鎖線のガイド部材73Lで示しており、ガイド部材73が基準状態から回動軸O3を中心として右側に回動した状態を、二点鎖線のガイド部材73Rで示している。
図10に示す例では、ガイド部材73が基準状態から左右それぞれ約30°回動した状態を示している。
【0126】
以上のように給電ケーブル52を保持してガイドするための構造としてアーム本体部72およびガイド部材73を設けた構成においては、給電ケーブル52は、アーム本体部72によって水平状に配された状態で保持されるとともに、ガイド部材73によってR形状をなすように緩やかに屈曲した形態で保持され、ケーブル保持アーム70の前端部から垂下した状態となる。言い換えると、給電ケーブル52は、アーム本体部72による水平状の保持部分と、ケーブル保持アーム70の先端部からの垂下状の部分との角部分において、ガイド部材73によってR形状をなすように湾曲した状態で保持される。
【0127】
以上のような構成を備えたケーブル保持アーム70の収納状態と展開状態の切替えについて説明する。アーム収納状態において、ケーブル保持アーム70は、支持ブラケット71の第1係止孔部79aおよびフレーム本体部64を貫通する係止ピン77により、フレーム本体部64に沿うように横向きで係止支持されている。アーム収納状態から、係止ピン77を抜くことで、ケーブル保持アーム70が回動軸O1回りに回動可能な状態となる。
【0128】
アーム収納状態において係止ピン77を抜いた状態から、ケーブル保持アーム70を回動軸O1回りに後側に向けてアーム展開状態の位置まで回動させる(
図5、矢印A1参照)。そして、フレーム本体部64の係止孔部に重なった状態の支持ブラケット71の第2係止孔部79bに対して係止ピン77を挿入して抜止めピン78により係止させる。これにより、アーム展開状態が得られる。
【0129】
アーム展開状態からアーム収納状態とする場合は、係止ピン77を抜くことでケーブル保持アーム70を回動軸O1回りに回動可能な状態とし、後方に延出した状態のケーブル保持アーム70を回動軸O1回りに前側に向けてアーム収納状態の位置まで回動させる(
図6、矢印A2参照)。そして、フレーム本体部64の係止孔部に重なった状態の支持ブラケット71の第1係止孔部79aに対して係止ピン77を挿入して抜止めピン78により係止させる。これにより、アーム収納状態が得られる。なお、アーム収納状態において、アーム本体部72は、面ファスナーやベルト等の留め具が用いられてフレーム本体部64に対して適宜保持される。
【0130】
以上のような構成を備えた本実施形態に係る掘削作業機1によれば、機体の運搬性や作業性を損なうことなく、機体から延出した給電ケーブル52を踏んだり機体に接触させたりさせずに保持することができる。
【0131】
掘削作業機1において、給電ケーブル52を保持するケーブル保持アーム70は、上部旋回体20Aに対して収納可能に設けられている。このような構成によれば、例えばバッテリ給電モード等のように給電ケーブル52が使用されない場合、ケーブル保持アーム70を収納することができる。これにより、ケーブル保持アーム70が上部旋回体20Aから外側にはみ出すことがないため、機体の方向転換動作や上部旋回体20Aの旋回動作等についてコンパクトな動作を確保することができ、良好な作業性を得ることができる。また、例えば掘削作業機1をトラック等で輸送する際、ケーブル保持アーム70が邪魔になることがないので、運搬性が損なわれることを防ぐことができる。
【0132】
一方、例えば外部給電モード等のように給電ケーブル52が使用される場合、ケーブル保持アーム70により給電ケーブル52が上部旋回体20Aから後方に向けて水平状に保持される。このため、旋回フレーム7上において引き出された給電ケーブル52を走行部5により踏んだり旋回フレーム7に接触させたりすることや、上部旋回体20Aの旋回動作において給電ケーブル52が旋回フレーム7に引っかかったり巻き付いたりすること等を防止することができる。
【0133】
特に、本実施形態では、アーム展開状態において、ケーブル保持アーム70は、後端部を走行部5の後端よりも後側へと延出させている。このような構成によれば、給電ケーブル52が走行部に干渉することを効果的に抑制することができ、良好な作業性を得ることができる。
【0134】
また、本実施形態において、ケーブル保持アーム70は、上下方向に沿う回動軸O1を中心とした水平回動動作により、上部旋回体20Aに対して収納されるように構成されている。このような構成によれば、ケーブル保持アーム70について優れた収納性を得ることができるとともに、アームの長さを確保することができる。これにより、アーム収納状態ではコンパクトな機体を確保することができるので、作業性・運搬性を損なうことがなく、アーム展開状態では良好な作業性を得ることができる。
【0135】
また、本実施形態において、ケーブル保持アーム70は、平面視で上部旋回体20Aの外形の内側に納まるアーム収納状態と、上部旋回体20Aから後側に延出したアーム展開状態とのいずれかの状態となるように設けられている。アーム収納状態に関し、ケーブル保持アーム70は、上部旋回体20Aの後部において、平面視で上部旋回体20Aの旋回中心を中心とした最大径の円周からはみ出ないように設けられている。これにより、ミニショベルである掘削作業機1における後方小旋回の構成を維持することができ、良好な作業性を得ることができる。
【0136】
また、アーム収納状態に対し、ケーブル保持アーム70を使用するための状態を1つのアーム展開状態とし、2つの状態間での切替え構成を採用することにより、ケーブル保持アーム70の収納時と使用時の姿勢を切り替えるための構成を簡単な構成にすることができる。
【0137】
また、本実施形態において、ケーブル保持アーム70の回動軸O1は、運転席15の左後側方に設けられている。このような構成によれば、アーム収納状態において、ケーブル保持アーム70を上部旋回体20Aの平面視外形の範囲内に納めることができるとともに、ケーブル保持アーム70の長さを長く確保することができる。これにより、アーム収納状態ではコンパクトな機体を確保することができるので、作業性・運搬性を損なうことがなく、アーム展開状態では良好な作業性を得ることができる。
【0138】
また、本実施形態において、ケーブル保持アーム70は、先端部においてアーム本体部72に対して水平方向の回動軸O3を中心として回動自在なガイド部材73を有する。このような構成によれば、ケーブル保持アーム70の先端部において給電ケーブル52を保持した状態のガイド部材73の回動軸O3回りの回動により、給電ケーブル52に作用する衝撃等の外力を緩衝、吸収することができる。これにより、例えば機体の移動時や旋回時において、展開状態のケーブル保持アーム70に保持された給電ケーブル52が障害物に引っかかったり捻じれたりした場合や、給電ケーブル52に障害物が接触して衝撃が加わった場合等に、外力を逃がすことができ、給電ケーブル52が外力によって破損することを抑制することができる。
【0139】
また、ガイド部材73自体に直接外力が作用した場合に、ガイド部材73の回動軸O3回りの回動により、ケーブル保持アーム70に作用する外力を緩衝、吸収することができる。これにより、ケーブル保持アーム70が外力によって破損することを抑制することができる。
【0140】
また、ガイド部材73は、湾曲状のケーブル支持面113をなすガイド本体部111を有することから、ケーブル保持アーム70の先端部において給電ケーブル52を円弧状に垂れ下がる形態で垂下させることができる。これにより、例えばケーブル保持アーム70の先端部において給電ケーブル52が直角状に屈曲した状態で垂下する場合と比べ、給電ケーブル52の変形を緩やかにすることができ、給電ケーブル52の局所的な屈曲変形等による応力の集中を避けることができる。これにより、ガイド部材73の回動による外力の緩衝、吸収と相俟って、給電ケーブル52の応力集中による破損を抑制することができ、給電ケーブル52の寿命を延ばすことができる。
【0141】
また、本実施形態において、ケーブル保持アーム70は、第2アーム部材82を、第1アーム部材81に対して、付勢バネ83による復帰構造とともに連結回動軸O2回りに回動可能に支持している。このような構成によれば、給電ケーブル52に作用する外力を緩衝、吸収することができることに加え、例えばケーブル保持アーム70が障害物に接触したり引っかかったりした場合等のようにケーブル保持アーム70自体に直接外力が作用した場合や、給電ケーブル52を介して間接的にケーブル保持アーム70に外力が作用した場合に、第2アーム部材82の連結回動軸O2回りの回動により、ケーブル保持アーム70に作用する外力を緩衝、吸収することができる。これにより、給電ケーブル52およびケーブル保持アーム70が外力によって破損することを抑制することができる。
【0142】
また、第2アーム部材82は、単に回動するだけではなく、外力の作用が除かれることで付勢バネ83により元の基準状態に復帰するように設けられている。このような構成によれば、ケーブル保持アーム70の後方への延伸形態が保持されることから、給電ケーブル52の配索状態を所定の状態に保持することができるので、作業中のオペレータの負担を軽減することができ、良好な作業性を得ることができる。
【0143】
また、第2アーム部材82の左右回動構造によれば、作業中に上部旋回体20Aの左右の旋回動作が行われる旋回作業車において、ケーブル保持アーム70を左右の旋回動作に追従させるとともに、第1アーム部材81に対する第2アーム部材82の左右回動により、ケーブル保持アーム70に作用する外力を効果的に緩衝、吸収することができる。
【0144】
また、本実施形態において、ケーブル保持アーム70は、キャノピ13に対して着脱可能に設けられた横架フレーム60に対して支持された状態で設けられている。このような構成によれば、既存の構成に対しても容易にケーブル保持アーム70を設けることができる。
【0145】
また、本実施形態において、ケーブル保持アーム70のアーム本体部72は、横架フレーム60におけるフレーム本体部64の屈曲形態に応じて、基部側傾斜部72a、中間部72b、および先端側傾斜部72cを有する。このような構成によれば、アーム収納状態において、アーム本体部72をフレーム本体部64に沿わせることができるので、ケーブル保持アーム70をコンパクトに収納することが可能となる。
【0146】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る建設機械は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0147】
上述した実施形態では、ケーブル保持アーム70の使用時の状態は、1つのアーム展開状態であるが、ケーブル保持アーム70を複数の角度位置で位置決め固定可能に構成することで、複数のアーム展開状態を有する構成であってもよい。
【0148】
また、上述した実施形態では、ガイド部材73を構成するガイド本体部111は、例えば金属製の部材により構成され、所定の形状を有するものであるが、ガイド本体部111は、例えばゴム等の弾性変形可能な材料により構成された部分であってもよい。このような構成によれば、給電ケーブル52またはガイド部材73に作用する外力を効果的に吸収することができる。
【0149】
また、上述した実施形態では、第2アーム部材82は、第1アーム部材81に対して連結回動軸O2を中心として水平回動するように設けられているが、第2アーム部材82の回動方向は、水平回動に限定されず、例えば上下回動等であってもよい。
【0150】
また、上述した実施形態では、第1アーム部材81に対して第2アーム部材82を付勢する付勢部材は、引張りコイルバネの付勢バネ83であるが、付勢部材の構成は特に限定されるものではない。付勢部材は、第1アーム部材81に対して第2アーム部材82を基準位置に保持させるための付勢力が得られるものであればよい。
【0151】
また、上述した実施形態では、掘削作業機1は、4柱キャノピであるキャノピ13を備えた構成のものであるが、キャノピの構成は特に限定されるものではなく、例えば左右一対の後支柱部を有するいわゆる2柱キャノピであってもよい。また、キャノピの代わりに、運転部を覆うキャビンを備えた構成のものであってもよい。
【0152】
また、上述した実施形態では、ケーブル保持アーム70により保持されるケーブルは、外部から電動モータ12に供給するための給電ケーブル52であるが、本発明に係るケーブルは、給電ケーブル等の電気供給線に限らず、例えば、空気、水、スラリー等の気体、液体または流動体を供給するためのケーブルを含む概念である。
【符号の説明】
【0153】
1 掘削作業機(建設機械)
5 走行部
7 旋回フレーム
13 キャノピ
15 運転席
20A 上部旋回体(上部装置)
20B 下部走行体
52 給電ケーブル(ケーブル)
60 横架フレーム
64 フレーム本体部
70 ケーブル保持アーム
71 支持ブラケット
72 アーム本体部
73 ガイド部材
75 軸支部材
81 第1アーム部材
82 第2アーム部材
83 付勢バネ(付勢部材)