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特開2022-188438インプリント装置、インプリント方法、及び、物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188438
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、及び、物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221214BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096463
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】村里 直記
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AP12
4F209AR01
4F209AR12
4F209PA02
4F209PB01
4F209PN13
4F209PQ11
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】型の位置ずれを低減しつつ、スループットの点で有利なインプリント装置を提供する。
【解決手段】基板上のインプリント材と型とを接触させてインプリント材にパターンを形成するインプリント装置である。インプリント装置は、型の側面に力を加えて形状を補正する形状補正部と、形状補正部を変位可能に保持する保持部と、保持部に対する形状補正部の変位の負荷を変更する負荷制御部と、を備える。負荷制御部は、型の処理動作状態に基づいて、形状補正部の負荷を変更する。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のインプリント材と型とを接触させて前記インプリント材にパターンを形成するインプリント装置であって、
前記型の側面に力を加えて形状を補正する形状補正部と、
前記形状補正部を変位可能に保持する保持部と、
前記保持部に対する前記形状補正部の変位の負荷を変更する負荷制御部と、を備え、
前記負荷制御部は、前記型の処理動作状態に基づいて、前記形状補正部の前記負荷を変更することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記保持部は前記型を保持するためのものであることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記型の位置を検出する位置検出部を備え、
前記負荷制御部は、前記位置検出部で検出された前記型の位置に基づいて、前記形状補正部の前記負荷を変更することを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記型の位置ずれを検出するずれ検出部を備え、
前記負荷制御部は、前記ずれ検出部で検出された前記型のずれの状態に基づいて、前記形状補正部の前記負荷を変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記基板の方向へ前記型の移動速度を検出する速度検出部を備え、
前記負荷制御部は、前記速度検出部で検出された前記型の移動速度に基づいて、前記形状補正部の前記負荷を変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記負荷制御部は、前記形状補正部が前記型の側面に力を加えている場合は、前記形状補正部の前記負荷を低下させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記負荷制御部は、前記型と前記インプリント材とを接触させる場合に、前記形状補正部の前記負荷を高めることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記負荷制御部は、前記型を前記インプリント材から離型する場合に、前記形状補正部の前記負荷を高めることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記負荷制御部は、前記型の位置ずれが検出された場合に、前記形状補正部の前記負荷を低下させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記負荷制御部は、前記基板の方向への前記型の移動速度が閾値を超えた場合に、前記形状補正部の前記負荷を高めることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記負荷制御部は、ピエゾ素子アクチュエータ、電磁石モータ、超音波モータ、およびエアシリンダのいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項12】
基板上のインプリント材と型とを接触させて前記インプリント材にパターンを形成するインプリント方法であって、
保持部に変位可能に保持された形状補正部によって前記型の側面に力を加えて前記型の形状を補正する形状補正工程と、
前記保持部に対する前記形状補正部の変位の負荷を変更する負荷制御工程と、を有し、
前記負荷制御工程は、前記型の処理動作状態に基づいて、前記形状補正部の前記負荷を変更することを特徴とするインプリント方法。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板上に硬化したインプリント材のパターンを形成する工程と、
前記工程でパターンの形成された前記基板を加工する工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、及び、物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等を製造するための光インプリント技術では、パターンの形成されたモールドを光硬化樹脂が塗布されたシリコン基板上に押しつけて紫外光によって樹脂を硬化させパターンを形成している。インプリント装置では、モールドとシリコン基板上の間に、光硬化樹脂を満たし、紫外光の露光ユニットで硬化させている。モールド上のパターンと位置は、ウエハ上のアライメントマークを基準に、位置や倍率などのパターン形状をアライメントしてインプリントする必要がある。シリコン基板を保持したステージの駆動により位置合わせをしつつ、倍率などのパターン形状は、インプリントユニット内に備わったモールド側面を押すモールド形状補正ユニットによってモールド形状を補正することで変更できる。
【0003】
特許文献1には、インプリントヘッド、及び塗布ユニットなどを備えるインプリントシステムが記載されている。特許文献2には、高精度なアライメントに対応して改良されたインプリントシステムが記載されおり、該インプリントシステムは、モールド形状補正ユニットを備える。モールド形状補正ユニットは、モールドを保持するモールド保持部品に接続されている。接続部は、幅形状を細くした弾性構造をしており、モールド形状補正ユニットが駆動した際のひずみがモールド保持部品へ伝わらないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005-533393号公報
【特許文献2】特表2008-504141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モールド形状を補正する際に、モールド自体の位置ずれや回転が発生しても、システム上、基板ステージで位置補正が可能である。しかし、モールドとモールド保持部の間に発生する摩擦によるモールド変形、さらに、アライメント測定を行なう光学的な計測誤差へ影響することが分かっている。特許文献2のシステムは、モールド自体の位置ずれを軽減する構造になっている。しかし、インプリントヘッド内に弾性部分を多用することで剛性が下がるデメリットがあり、高スループットの高速駆動では、停止時に安定するまでの整定時間の遅さや衝撃によるモールドの位置ずれ発生の課題がある。
【0006】
本発明は、例えば、型の位置ずれを低減しつつ、スループットの点で有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、基板上のインプリント材と型とを接触させて前記インプリント材にパターンを形成するインプリント装置であって、前記型の側面に力を加えて形状を補正する形状補正部と、前記形状補正部を変位可能に保持する保持部と、前記保持部に対する前記形状補正部の変位の負荷を変更する負荷制御部と、を備え、前記負荷制御部は、前記型の処理動作状態に基づいて、前記形状補正部の前記負荷を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、型の位置ずれを低減しつつ、スループットの点で有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インプリント装置の構成例を示す図である。
図2】インプリントヘッドの構成例を示す断面図である。
図3】インプリントヘッドの上面図と底面図の概略図である。
図4図2のインプリントヘッドの構造における課題を説明する図である。
図5】第1実施形態に係るインプリントヘッドの断面図である。
図6】負荷制御機構による負荷の制御を含むインプリントシーケンスを示すフロー図である。
図7】第1実施形態に係る負荷制御機構の詳細な構成例を示す図である。
図8】第2実施形態に係るインプリントヘッドの断面図である。
図9】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
インプリント装置について説明する。図1は、インプリント装置の構成例を示す図である。なお、以下の図において、基板1上のインプリント材に対して紫外光8aを照射する照射部8の光軸に平行な方向をZ軸とし、Z軸に垂直な平面内(基板1の表面内)に互いに直交するX軸およびY軸をとる。
【0012】
インプリント装置100は、インプリントサイクル(インプリント処理)を繰り返すことによって基板の複数のショット領域にパターンを形成する。なお、ショット領域とは、本実実施形態では、モールド4(型)の1つのパターン領域4aに相当する大きさの領域、即ち、1回のインプリントサイクルでモールド4のパターンに対応するインプリント材のパターンが形成される領域(成形領域)を意味する。
【0013】
基板上のインプリント材にモールド4のパターンを転写することで、基板表面層にモールドパターンに対応した素子パターンが形成される。基板1の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0014】
基板ステージ2は、基板1をXY方向及びXY面内回転方向に移動させ、基板1をモールド4直下のインプリント位置へ移動させる。基板ステージ2は、基板ステージ2の移動位置を検出する変位センサ2aを備え、その検出値をもとに基板ステージ2をモータ駆動し、正確な位置へ移動させることができる。変位センサ2aは、例えば、レーザ干渉計やエンコーダである。基板ステージ2の下のベースフレーム3は、基板ステージ2の案内、保持を行う。
【0015】
モールド4は、表面に凹凸状のパターンが形成されたパターン領域4aを有する。パターン領域4aの基板1との間にインプリント材を充填し、インプリント材を硬化させることで、パターン領域4aに形成されたパターンが基板1(の上のインプリント材)へ転写される。パターン領域4aは、モールド4のパターン領域4a以外の領域が基板1と接触することを防止するため、モールド4のパターン領域4a以外の領域よりも出っ張った段差構造を有している。
【0016】
インプリントヘッド20は、モールド保持部5と、駆動機構6とを含む。モールド保持部5は、モールド4を保持し、上下(Z方向)駆動を行う。モールド保持部5の駆動は、駆動機構6によって行われうる。駆動機構6は、インプリント装置100本体の定盤7に固定されており、モールド4を基板上の未硬化のインプリント材へ押しつける動作(押印動作)を行う。なお、押印動作は、基板1側を上昇させることにより、または、基板1とモールド4の両方を移動させることにより行われても良い。
【0017】
インプリント材は、未硬化状態を樹脂と呼ぶこともある。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。インプリント材は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。硬化性組成物の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。本件では、一例として、紫外線によって硬化する硬化性組成物をインプリント材として用いる。
【0018】
照射部8は、透明なモールド4を介して未硬化のインプリント材に紫外光8aを照射して、基板上のインプリント材を硬化させる。照射部8は、照射タイミングを制御するシャッタ部8bを備えうる。
【0019】
定盤7には、さらにディスペンサ9が備えられる。ディスペンサ9下にパターンの形成を行うショット領域を移動させ、ディスペンサ9からインプリント材が基板1に塗布(供給)される。
【0020】
スコープ10は、内部に光学レンズ、照明、画像検出センサを備えており、モールド4と基板1にあるアライメントマークの相対的な位置ずれを検出する。そのずれ量を、基板ステージ2を微小移動させることで補正し、モールド4と基板1の位置合わせを行うことができる。
【0021】
形状補正ユニット11(形状補正部)はモールド保持部5に搭載されている。形状補正ユニット11は、モールド4の側面に力を加えることでモールドの形状を変えることができる。
【0022】
制御部12は、例えば、コンピュータとしてのCPU等のプロセッサと、RAM、ROM、HDD等の記憶部と、を含みうる。プロセッサは記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、インプリント装置100の動作を制御する。つまり、制御部12は、後述するインプリント装置100の処理フローを実行するために、インプリント装置100の各部を制御しうる。また、制御部12は、スコープ10の位置合わせ情報、基板ステージ2の位置情報、モールド形状補正ユニットの負荷する荷重の情報を元に計算し、最適な基板1とモールド4との位置合わせ制御を行う。
【0023】
図2は、インプリントヘッド20の構成例を示す断面図である。モールド4を保持しているモールド保持部5がある。モールド4は、一例として、モールド保持部5につながった真空配管(不図示)を通して吸着保持されている。モールド保持部5は、インプリント装置100の本体の定盤7に対して駆動機構6を介して保持されている。駆動機構6は、例えば、永久磁石6bと電磁コイル6aを含むボイスコイルモータである。永久磁石6bと電磁コイル6aの上下の配置は逆であってもよい。また、駆動機構6は、ボイスコイルモータ以外に、ボールねじと回転モータ、超音波モータ、ピエゾ素子アクチュエータなど、直線運動に変える負荷装置であればよい。ただし、耐久性や摩擦の観点で、駆動機構6の固定部と可動部間は非接触であることが望ましい。モールド保持部5の重量分を支えるための不図示のバネや駆動範囲を規制する不図示のガイド部品を有していても良い。
【0024】
形状補正ユニット11は、モールド保持部5上に構成される。形状補正ユニット11は、モールド保持部5と、弾性支持部11cを介して接続されている。モールド保持部5の接続先となる補正ユニット固定部11aには、荷重発生源のアクチュエータ11bが配置され、レバー11eと支点11dにより力方向をモールド端面に垂直に変換してモールド4を変形させることができる。アクチュエータ11bは、例えば、ピエゾ素子アクチュエータである。レバー11eの先端には、力検出センサ11fが直列に構成されており、力検出センサ11fの出力値をアクチュエータ11bの駆動量にフィードバックすることで正確な力をモールド4に付加することができる。アクチュエータ11bは、低発熱、高速度駆動、省スペース、駆動分解能の点で最適なデバイスであるが、ピエゾ素子アクチュエータの代わりに超音波モータやエアシリンダなど直線運動に変換するデバイスを用いても良い。レバー11e及び支点11dによる力の倍率や方向を変える構造は、駆動源の大きさ及びスペースの制約に応じた設計が可能である。
【0025】
形状補正ユニット11とモールド保持部5の接続部において弾性支持部11cを介している点は、モールド4に力を付加した際の補正ユニット固定部11aへの反力及び変形がモールド保持部5へ伝わる影響を軽減する目的がある。すなわち、形状補正ユニット11は、モールド保持部5に変位可能に保持されているといえる。また、レバー11eからモールド4へ付加する荷重によってはモールド4自体が位置ずれすることを防止する働きもある。モールド4自体が位置ずれする力が加わっても、その前に、弾性支持部11cが変形することで補正ユニット固定部11a自体が位置移動し、モールド4自体は位置ずれしない。そのため、弾性支持部11cの弾性部11gは、モールドが位置移動する前に変形する必要があるため十分柔らかいことが求められる。例えば、10Nの力で2~4umの弾性変形が可能である必要がある。
【0026】
図3は、インプリントヘッド20の上面図と底面図の概略図である。図3(A)は、インプリントヘッド20の上面図である。図3(B)は、インプリントヘッド20の底面図である。インプリントヘッド20には、モールド保持部5の周辺部、3か所に駆動機構6が配置されている。ここでは、モールド保持部5の傾きを制御しやすくするため、一例として、120度ピッチで駆動機構6を3個配置している。しかし、モータの個数や配置位置の制限は特にない。補正ユニット固定部11aの隅の4か所には、弾性支持部11cがそれぞれ接続されている。レイアウトの制約内で、3か所や5か所以上に弾性支持部11cが構成されていてもよい。この例では、アクチュエータ11b、レバー11e、力検出センサ11fは、モールド4の一辺当りに4か所均等に配置され、合計16軸が構成されている。より自由度のある形状補正を行なうには、できるだけ軸数が多く、一つの軸が付加できる力も大きい方がよい。
【0027】
図4は、図2のインプリントヘッド20の構造における課題を説明する図である。動機構6の上下運動により、モールド保持部5は基板から離れる動作と押印動作を繰り返す。高い生産性を実現するために、モールド保持部5をより高加速、高速に動かすことが求められる。弾性支持部11cは、形状補正ユニット11の駆動によるモールド4の位置ずれを防止する働きがある一方、高速上下運動時の振動や衝撃に対しては、形状補正ユニット11の剛性の弱さが原因となって、整定の悪化や位置ずれの課題がある。
【0028】
このように、図2に示す構成の形状補正ユニット11の弾性支持部11cは、モールド4の位置ずれ防止と、高速駆動時の剛性保持の目的において両立できない課題がある。
【0029】
図5は、第1実施形態に係るインプリントヘッド20の断面図である。図2の構造に対して、負荷制御機構13(負荷制御部)を追加している。負荷制御機構13は、モールド保持部5と補正ユニット固定部11a間に作用するように配置され、モールド保持部5をベースに補正ユニット固定部11aへ力を付加することができる。言い換えると、負荷制御機構13は、モールド保持部5に対する形状補正ユニット11の変位の負荷を変更することができる。なお、ここで変位の負荷とは、変位のしやすさを意味する。対向側にも同様の負荷制御機構13を配置することで、モールド保持部5の位置を調整し、所定の位置で剛性が十分高い状態を維持することが可能である。本実施形態では、一例として、負荷制御機構13をX軸方向の対向位置に2個とそれと垂直なY軸方向の対向位置に2個で合計4個を配置している(不図示)が、3か所や5か所以上の負荷制御機構13を補正ユニット固定部11aの周辺部に配置してもよい。負荷制御機構13は、モールド4の処理動作状態に基づいて、形状補正ユニット11の変位の負荷を変更する。具体的には、負荷制御機構13は、例えば、モールド4の位置、モールド4の位置ずれの状態、モールド4の移動速度に基づいて、形状補正ユニット11の変位の負荷を変更する。
【0030】
図6は、負荷制御機構13による負荷の制御を含むインプリントシーケンスを示すフロー図である。なお、このフロー図で示す各動作(ステップ)は、制御部12内のコンピュータが記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し各部の制御をすることによって実行されうる。
【0031】
まず、S101において、形状補正ユニット11によって、モールド4の側面に力を加えて、モールド4の形状を補正する。モールド4の形状補正は、負荷制御機構13の負荷を低下させた状態(すなわち、形状補正ユニット11が変位しやすい状態)、好ましくは、負荷制御機構13の負荷のない状態で行なう。
【0032】
その後、S102において、ディスペンサ9によって基板1の対象ショット領域にインプリント材を供給し、基板ステージ2を駆動してモールド4の直下に基板1を移動させる。
【0033】
そして、S103において、モールド保持部5を駆動し、モールド4を基板上のインプリント材へ押印する押印動作を行う。押印動作は、負荷制御機構13の負荷を高めた状態(すなわち、形状補正ユニット11が変位しにくい状態)で行う。具体的には、モールド4と、基板上のインプリント材とが接触するときには、接触圧により、モールド4の位置ずれが発生しやすくなる。このため、モールド4と基板上のインプリント材と接触時には、負荷制御機構13による負荷は高められた状態であることが好ましい。さらに具体的には、例えば、インプリント装置100は、モールド4のZ方向の位置を検出する位置検出部(不図示)を備えていても良い。そして、位置検出部によって検出されるモールド4の位置が所定の位置よりも下(-Z方向)の位置、言い換えると、モールド4と基板1との距離が所定の閾値を下回る位置となった場合に、負荷制御機構13による負荷を高めても良い。
【0034】
また、モールド4が比較的高速で移動しているときには、負荷制御機構13による負荷は高められた状態であることが好ましい。具体的には、例えば、インプリント装置100は、加速度センサ等のモールド4の基板方向(Z方向)の加速度又は移動速度を検出する速度検出部(不図示)を備えていても良い。そして、速度検出部によって検出されるモールド4の基板方向の加速度又は移動速度が所定の閾値を超えた場合に、負荷制御機構13による負荷を高めても良い。
【0035】
そして、S104において、モールド4をインプリント材に押圧することにより、モールド4のパターン領域4aへのインプリント材の充填が開始される。
【0036】
充填開始後、S105において、モールド4と基板1の位置合わせを行う。位置合わせは、モールド4の位置ずれを修正しやすくするため、負荷制御機構13の負荷を低下させた状態、好ましくは、負荷制御機構13の負荷のない状態で行なう。
【0037】
そして、S106において、モールド4と基板1との位置ずれがアライメント目標値内か否かが判定される。位置ずれがアライメント目標値内でない場合(No)は再度モールド4と基板1の位置合わせ(S105)を行う。一方、位置ずれがアライメント目標値内である場合(Yes)には、処理をS107へ進める。
【0038】
S107では、照射部8から透明なモールド4を介して紫外光8aを基板上のインプリント材に照射して、インプリント材を硬化させる。
【0039】
硬化が完了したら、S109において、モールド保持部5を駆動して、モールド4を基板上のインプリント材から剥離する(引き離す)離型動作を行う。離型動作は、負荷制御機構13の負荷を高めた状態で行う。具体的には、モールド4が、基板上のインプリント材から離型されるときには、離型の反力により、モールド4の位置ずれが発生しやすくなる。このため、モールド4を基板上のインプリント材から離型する時には、負荷制御機構13による負荷は高められた状態であることが好ましい。また、モールド4が基板方向に比較的高速で移動しているときには、負荷制御機構13による負荷は高められた状態であることが好ましい。具体的な動作については、押印動作時と同様であるため省略する。
【0040】
S101~S108は、1回のインプリントシーケンスを示し、基板上の全ショット領域に対して夫々のインプリントシーケンスが終わるまで、S101~S108を繰り返す(S109)。
【0041】
図7は、第1実施形態に係る負荷制御機構13の詳細な構成例を示す図である。負荷制御機構13は、アクチュエータ13aと、力検出センサ13bと、測定器13cと、を備える。アクチュエータ13aは、形状補正ユニット11の変位の負荷を変更するための力を付加する。このアクチュエータ13aは、例えば、ピエゾ素子、ボールねじの電磁石モータ、エアシリンダ、超音波モータなど、直線運動で、形状補正ユニット11に力を付加できる機構であればよい。そのZ方向側の隣に測定器13cがある。測定器13cは、形状補正ユニット11の位置を測定している。測定器13cは、例えば、レーザ測長器、静電容量センサ、磁歪センサ、接触式のダイヤルゲージである。また、形状補正ユニット11に付加される力を検出するための力検出センサ13bをアクチュエータ13aと直列に配置し、アクチュエータ13aが付加する力を測定できるようにしている。このような構成により補正ユニット固定部11aの位置を測定し、モールド4の位置ずれの発生を低減しつつ、アクチュエータと力検出センサで形状補正ユニット11に所望の負荷を与えることができる。
【0042】
負荷制御機構13は、モールド4の位置ズレの状態に基づいて、形状補正ユニット11の変位の負荷を変更しても良い。具体的には、例えば、インプリント装置100は、モールド4の位置ずれを検出する位置ずれ検出部としてのスコープ10を備えている。そして、位置ずれ検出部によってモールド4の位置ずれが検出された場合に、負荷制御機構13による負荷を低下させる。なお、例えば、位置ずれ検出部によって検出されたずれ量が所定の閾値を超えた場合に、負荷制御機構13による負荷を低下させるようにしても良い。
【0043】
以上、本実施形態によれば、形状補正ユニット11駆動時のモールド4の位置ずれを低減しつつ、高速駆動でも位置ずれが生じにくい、高精度なモールド形状補正を実現することができる。
【0044】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係るインプリントヘッド20の断面図である。第2実施形態では、XYガイド機構14が形状補正ユニット11(補正ユニット固定部11a)とモールド保持部5との間に配置されている。XYガイド機構14は弾性支持部11cの代わりの働きをしており、Z方向の変形を抑えながら、エアガイドのように形状補正ユニット11のXY方向の位置を規制している。第1実施形態と比較して、XYガイド機構14による位置の規制は非接触であるため、パーティクルの削減に有利である。また、形状補正ユニット11のアクチュエータ11bなどで生じた熱がモールド保持部5に伝熱することを防ぐことができる。負荷制御機構13は、第1実施形態と同様の働きを行う。第1実施形態に加えて、リニアモータやシャフトモータのような接触部の無い機構であれば駆動の耐久性向上やパーティクルの削減について有利である。
【0045】
このように、モールド保持部5への変形を伝えずに、形状補正ユニット11の位置と剛性を制御することでも、形状補正ユニット11駆動時のモールド4の位置ずれを低減しつつ、高速駆動でも位置ずれが生じにくい、高精度なモールド形状補正を実現することができる。
【0046】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0047】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。ウエハの加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0048】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図9(A)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等のウエハ1z(基板)を用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zがウエハ上に付与された様子を示している。
【0049】
図9(B)に示すように、インプリント用のモールド4zを、その凹凸パターンが形成された側をウエハ上のインプリント材3zに向け、対向させる。図9(C)に示すように、インプリント材3zが付与されたウエハ1zとモールド4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zはモールド4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を、モールド4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0050】
図9(D)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、モールド4zとウエハ1zを引き離すと、ウエハ1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、モールドの凹部が硬化物の凸部に、モールドの凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zにモールド4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0051】
図9(E)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図9(F)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0052】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介して装置に供給し、その装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 基板
2 基板ステージ
4 モールド
5 モールド保持部
6 駆動機構
8 照射部
11 形状補正ユニット
12 制御部
13 負荷制御機構
20 インプリントヘッド
100 インプリント装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9