(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188442
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】サスペンション装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20221214BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20221214BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20221214BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20221214BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B60G17/015 Z
B60G17/015 B
F16F15/02 B
F16F15/023 A
F16F15/08 A
F16F9/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096473
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健悟
(72)【発明者】
【氏名】山下 幹郎
(72)【発明者】
【氏名】根津 隆
【テーマコード(参考)】
3D301
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA72
3D301DA28
3D301DA29
3D301DA35
3J048AA02
3J048AC04
3J048AD01
3J048BA20
3J048BB10
3J048BD04
3J048BD05
3J048BE03
3J048CB21
3J048EA15
3J069AA64
3J069DD20
3J069EE28
(57)【要約】
【課題】急激な軸方向の振動が入力された場合でも、螺合部に過大な振動が入力されることを抑制できるサスペンション装置を提供する。
【解決手段】サスペンション装置1は、油圧緩衝器2と電動アクチュエータ3とを備えている。油圧緩衝器2は、流体による減衰力を発生させる。電動アクチュエータ3は、電動モータ4とボールねじ機構5とを備えている。ボールねじ機構5は、ロッド8と、ボールナット14と、ボールねじ軸15と、複数のボール16とを含んで構成されている。ロッド8は、一端となる上端が車体側に接続される。ボールナット14は、ロッド8の他端側に固定される。ボールねじ軸15は、電動モータ4により駆動される。ボールねじ軸15は、ボールナット14に螺合している。ボールナット14は、複数の弾性部材19を径方向に積層した保持部材17を含んで構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体と車輪との間に設けられ、流体による減衰力を発生させる減衰機構と、
前記車体と前記車輪との間に前記減衰機構と並列に設けられ、動力源となるモータおよび前記モータにより駆動される駆動機構を有するアクチュエータと、
を備えたサスペンション装置であって、
前記駆動機構は、
一端が前記車体側または前記車輪側に接続されるロッドと、
前記ロッドの他端側に固定されるボールナットと、
前記モータにより駆動され、前記ボールナットに螺合するボールねじ軸と、を備えており、
前記ボールナットは、複数の弾性部材を径方向に積層した保持部材を含んで構成されるサスペンション装置。
【請求項2】
前記複数の弾性部材の径方向間には、金属部材が配置されている請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
前記複数の弾性部材の軸方向間には、金属部材が配置されている請求項1または2に記載のサスペンション装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記モータと前記駆動機構との間に設けられ、前記モータと前記駆動機構との間で動力の伝達を可能に接続する接続状態と、前記モータと前記駆動機構との間で動力の伝達を遮断可能に解放する解放状態とのいずれかに切換えられるクラッチ機構を備えており、
前記クラッチ機構は、前記接続状態とすることにより、前記減衰機構と前記アクチュエータとの双方による減衰力を発生させる並列モードと、前記解放状態にすることにより、前記減衰機構による減衰力を発生させる単体モードとの2つのモードを可能とした請求項1ないし3のいずれかに記載のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車等の車両に搭載され、車両の振動を制御するサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の車体と車輪との間に設けられ、ボールねじ軸とボールナットと電動モータとからなるアクチュエータを備えた電磁サスペンション装置が開示されている。特許文献2には、ボール螺子ナット内に回転自在に螺合される螺子軸と、螺子軸に連結されるモータとを備え、モータの電磁力でボール螺子ナットと螺子軸の軸方向の相対移動を抑制する電磁緩衝器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-177050号公報
【特許文献2】特開2005-256927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の場合、急激な上下力や横力が加わったときに、ボールねじ軸およびボールナットの耐久性を十分に確保できない可能性がある。即ち、ボールねじ式のサスペンション装置は、ボールねじ軸とボールとで外部からの振動を受け止める。このため、例えば、路面からの突き上げ入力のような急激な軸方向の振動が入力された場合に、ボールとボールねじ軸との螺合部(転がり接触部)に不均一な負荷が加わる可能性がある。即ち、螺合部の負荷分布が不均一となり、過大なトルクが加わると共に、振動を引き起こす可能性がある。これにより、摩耗が進行し、耐久性の低下、信頼性の低下に繋がる可能性がある。
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、急激な軸方向の振動が入力された場合でも、螺合部に過大な振動が入力されることを抑制できるサスペンション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、車両の車体と車輪との間に設けられ、流体による減衰力を発生させる減衰機構と、前記車体と前記車輪との間に前記減衰機構と並列に設けられ、動力源となるモータおよび前記モータにより駆動される駆動機構を有するアクチュエータと、を備えたサスペンション装置であって、前記駆動機構は、一端が前記車体側または前記車輪側に接続されるロッドと、前記ロッドの他端側に固定されるボールナットと、前記モータにより駆動され、前記ボールナットに螺合するボールねじ軸と、を備えており、前記ボールナットは、複数の弾性部材を径方向に積層した保持部材を含んで構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、急激な軸方向の振動が入力された場合でも、螺合部に過大な振動が入力されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態によるサスペンション装置を示す縦断面図である。
【
図2】
図1中のサスペンション装置が伸長した状態を示す縦断面図である。
【
図4】
図3中の保持部材を取出して変形前の状態および変形した状態を示す断面図である。
【
図5】第2の実施形態による保持部材を示す
図4と同様の断面図である。
【
図6】第3の実施形態によるサスペンション装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態によるサスペンション装置を車両(例えば、4輪自動車)に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1ないし
図4は、第1の実施形態を示している。
図1において、サスペンション装置1は、自動車等の車両(図示せず)に組み込まれる。この場合、サスペンション装置1は、例えば、車両の車体(ボディ)と車輪との間に設けられる。サスペンション装置1は、車体と車輪との間で、振動、衝撃を緩和(吸収)する。
【0011】
なお、以下の説明では、サスペンション装置1の軸方向の一端側を上端側とし、軸方向の他端側を下端側とする。即ち、車体側となる図面の上側を一側とし、車輪側となる図面の下側を他側として説明する。しかし、これとは逆に、サスペンション装置1の軸方向の一端側を下端側(車輪側)とし、軸方向の他端側を上端側(車体側)としてもよい。
【0012】
サスペンション装置1は、図示しない懸架ばねと、減衰機構としての油圧緩衝器2と、アクチュエータとしての電動アクチュエータ3とを備えている。油圧緩衝器2と電動アクチュエータ3は、ハイブリッド式の緩衝器、即ち、流体(流通抵抗)と電力(電磁力)との双方で減衰力を発生させることが可能なハイブリッド式の減衰装置(力発生機構)を構成している。
【0013】
即ち、油圧緩衝器2は、流体による減衰力を発生させる油圧シリンダ装置(油圧力発生機構)である。電動アクチュエータ3は、電動モータ4を備えたボールねじ式電動駆動装置(電動力発生機構)である。油圧緩衝器2および電動アクチュエータ3は、車両の車体と車輪との間に互いに並列に設けられている。
【0014】
電動アクチュエータ3は、モータとしての電動モータ4と、この電動モータ4により駆動される駆動機構としてのボールねじ機構5とを備えている。電動モータ4は、電動アクチュエータ3の動力源であり、電力の供給により駆動軸(回転軸)となるシャフト4Aを回転駆動、または、シャフト4Aに回転抵抗を付与する。電動モータ4は、油圧緩衝器2の外筒6の底部6Aに固定されている。この場合、電動モータ4は、油圧緩衝器2の外筒6内に設けられているが、例えば、外筒6の外側に設けてもよい。
【0015】
油圧緩衝器2は、シリンダ(筒体)となる外筒6と、ピストン7と、ロッド8と、アキュムレータ9とを含んで構成されている。ロッド8は、油圧緩衝器2のロッド(ピストンロッド)に対応すると共に、電動アクチュエータ3を構成するボールねじ機構5のロッド(ナット支持ロッド)に対応する。外筒6は、有底筒状に形成されており、油圧緩衝器2の外殻を構成している。外筒6は、一端側となる上端側が開口しており、他端側となる下端側が底部6Aとなって閉塞されている。
【0016】
外筒6の上端側の開口は、ロッドガイド10により閉塞されている。外筒6の下端側となる底部6Aは、例えば、車両の車輪側に連結される支持部(車輪側接続部)となっている。また、外筒6の内側となる底部6Aの上面側には、電動アクチュエータ3の電動モータ4が取付けられている。外筒6は、電動モータ4と共に、ロッド8に対して軸方向に相対移動する。外筒6内には、作動流体(作動液)としての油液(作動油)が封入されている。作動液である油液は、オイルに限らず、例えば添加剤を混在させた水等でもよい。
【0017】
ピストン7は、外筒6内に摺動可能に挿入(挿嵌)されている。ピストン7は、外筒6内を2室(即ち、一側室となるロッド側油室Aと他側室となるボトム側油室B)に区画(画成)している。ピストン7には、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間を連通可能とする油路7A,7Bが設けられている。油路7A,7Bは、ピストン7の移動により、外筒6(シリンダ)内の油室A,Bのうち、一方の室から他方の室に向けて作動液体(油液)が流通するのを許す通路を構成している。即ち、それぞれが連通路としての油路7Aおよび油路7Bは、一側室となるロッド側油室Aと他側室となるボトム側油室Bとを連通する。油路7Aおよび油路7Bは、ピストン7の移動によって作動流体(油液)の流れが生じる流路である。
【0018】
ピストン7には、縮小側(縮み側)の減衰バルブを構成する縮小側バルブ11(以下、圧側バルブ11という)が設けられている。圧側バルブ11は、例えば、ピストン7の上側に設けられるディスクバルブにより構成することができる。圧側バルブ11は、ロッド8の縮小行程(縮み行程)でピストン7が外筒6に沿って下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室Bからロッド側油室Aに向けて油路7A内を流通する油液に対し抵抗力を与える。これにより、ロッド8の縮小行程で所定の減衰力を発生させる。即ち、圧側バルブ11は、外筒6内のピストン7の摺動によって生じる作動流体(油液)の流れを制御して減衰力を発生させる。
【0019】
ピストン7には、伸長側(伸び側)の減衰バルブを構成する伸長側バルブ12(以下、伸側バルブ12という)が設けられている。伸側バルブ12は、例えば、ピストン7の下側に設けられるディスクバルブにより構成することができる。伸側バルブ12は、ロッド8の伸長行程(伸び行程)でピストン7が外筒6に沿って上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室Aからボトム側油室Bに向けて油路7B内を流通する油液に対し抵抗力を与える。これにより、ロッド8の伸長行程で所定の減衰力を発生させる。即ち、伸側バルブ12は、外筒6内のピストン7の摺動によって生じる作動流体(油液)の流れを制御して減衰力を発生させる。
【0020】
外筒6の上端側(開口端側)は、ロッドガイド10により閉塞されている。ロッドガイド10は、ロッド8が軸方向に変位するのを摺動可能にガイドするガイド部材である。ロッドガイド10は、外筒6の上端側(開口端側)に嵌合して設けられている。ロッドガイド10の内径側には、ロッドシール(図示せず)が設けられている。ロッドシールは、その内周がロッド8の外周側に摺接することにより、外筒6とロッド8との間を液密、気密に封止(シール)する。
【0021】
アキュムレータ9は、外筒6内のボトム側油室Bと接続されている。アキュムレータ9は、油圧緩衝器2のリザーバ(リザーバ室)を構成している。アキュムレータ9は、外筒6内にロッド8が進入したときに、このロッド8の進入体積に応じて外筒6から排出される油液を収容する。これにより、アキュムレータ9は、ロッド8の進入および退出を補償する。
【0022】
ロッド8は、基端側となる下端側が外筒6内に挿入され、先端側となる上端側がロッドガイド10を介して外筒6外へと突出している。即ち、ロッド8は、ピストン7に連結されて外筒6の外部へ延びている。ロッド8の下端側には、ピストン7が取付けられている。ここで、ロッド8は、有蓋筒状(有底筒状)に形成されている。即ち、ロッド8は、一端側となる上端側が蓋部8Aとなって閉塞されており、他端側となる下端側が開口している。ロッド8の蓋部8Aには、車体側に連結される支持部13が設けられている。支持部13は、車体側接続部に対応する。
【0023】
ロッド8内は、中空部8Bとなっており、中空部8Bには、ボールねじ機構5のボールねじ軸15が挿通されている。また、ロッド8の下端側には、ボールねじ機構5のボールナット14が取り付けられるナット取付け部8Cが設けられている。ナット取付け部8Cは、ロッド8の軸方向に延びる内周面のうち他の部分よりも内径寸法が大きくなった大径開口部として形成されている。ナット取付け部8Cには、ボールナット14が取付けられている。これにより、ロッド8は、ボールナット14と共にボールねじ軸15に対して軸方向に相対移動する。即ち、ロッド8は、ピストン7およびボールナット14と共に、外筒6およびボールねじ軸15に対して相対移動する。
【0024】
ボールねじ機構5は、ロッド8と、ボールナット14と、ボールねじ軸15と、複数のボール16とを含んで構成されている。ロッド8は、一端となる上端が車体側に接続される。ボールナット14は、ロッド8の他端側となる下端側に固定される。ボールねじ軸15は、電動モータ4のシャフト4Aと接続されている。ボールねじ軸15は、電動モータ4により駆動される。ボールねじ軸15は、ボールナット14に螺合している。
【0025】
ボールナット14の内周側には、螺旋状の内周側ねじ溝14Aが形成されている。また、ボールねじ軸15の外周側には、螺旋状の外周側ねじ溝15Aが形成されている。内周側ねじ溝14Aと外周側ねじ溝15Aとの間には、転動可能に複数のボール16が設けられている。ボール16は、ボールナット14の内周側ねじ溝14A内を循環する。ボールナット14とボールねじ軸15は、ボール16を介して螺合されている。
【0026】
このように、実施形態のサスペンション装置1は、車体側に連結される支持部13と、支持部13に接続されたロッド8と、ロッド8と一体となって設けられたピストン7(縮小側バルブ11、伸長側バルブ12)およびボールナット14を有している。ロッド8は、外筒6内に挿入されている。ロッド8は、外筒6に対して上下動(軸方向の相対運動)を可能に設置されている。ロッド8は、中空部8Bを有する有蓋円筒形状(有底円筒形状)となっている。
【0027】
ロッド8の中空部8Bには、中空部8Bに挿入されるようにボールねじ軸15が配置されている。ボールねじ軸15は、電動モータ4のシャフト4Aに接続されており、シャフト4Aの回転運動がボールねじ軸15に伝わる構成となっている。この場合、ボールねじ軸15の回転運動がボール16およびボールナット14を介してそのままロッド8の上下運動に変換され、支持部13を通じて車体を上下に動かすことが可能となっている。電動モータ4の駆動は、例えば、図示しないサスペンション制御装置により制御される。サスペンション制御装置は、例えば、マイクロコンピュータ、モータ駆動回路等を含んで構成されている。
【0028】
ところで、ボールねじ式のサスペンション装置は、路面のからの入力(上下振動)がボールねじ軸およびモータに直接的に印加される。ここで、ボールねじ機構は、急激に大きな負荷が印加されると、ボールのずれ等に伴ってボールとボールナットとの間でこじり(不均一な負荷分布)が生じ、過大なトルクが加わると共に、振動を引き起こす可能性がある。これにより、摩耗が進行し、著しい場合には剥離が発生する等、耐久性の低下、信頼性の低下に繋がる可能性がある。
【0029】
これに対して、前述した特許文献2の電磁緩衝器は、螺子軸とモータとの間に両者間の伝達トルクを変更するトルク変更手段が設けられている。トルク変更手段は、例えば、クラッチにより構成されている。このような特許文献2の技術は、ポットホール等の路面の凹凸に起因する大きな入力があったときに、クラッチを用いてその入力が伝達されないようにすることを意図していると考えられる。しかし、特許文献2の技術は、クラッチ等のトルク変更手段が必須であるため、部品点数が増大すると共に、構造が複雑化する。また、クラッチ等のトルク変更手段では、急激な軸方向の振動(例えば、高周波の微振動)が入力されたときに、この振動が螺合部に入力されることを十分に抑制できない可能性もある。
【0030】
そこで、実施形態では、ボールナット14を、ゴム、樹脂等の弾性部材19を積層してなる保持部材17を含んで構成することにより、ボールねじ機構5に印加される振動外乱を抑制できるように構成している。即ち、ボール16を介してボールねじ軸15を支承するボールナット14は、保持部材17を含んで構成されており、この保持部材17は、例えば、ゴムが多層に積層された高減衰ゴムにより形成されている。
【0031】
このような高減衰ゴムは、横振動に対して剛性が高く、しかも、ポットホール等の急激な上下方向の高周波振動の入力に対して、その高周波振動が伝達されることを抑制できる。この結果、過荷重によりボールナット14内のボール16が不均一(負荷分布が不均一)になることを抑制でき、こじれ、摩耗を抑制できる。
【0032】
これに加えて、作動中(ボールナット14が変位しているとき)の異音を低減でき、静音性を向上できる。なお、保持部材17は、高減衰ゴムにより形成することができる他、例えば、樹脂製の弾性部材19が多層に積層された高減衰樹脂、または、樹脂製の弾性部材19とゴム製の弾性部材19とが多層に積層された高減衰高分子材料により形成してもよい。以下、保持部材17を含むボールナット14の構成について、詳しく説明する。
【0033】
図3に示すように、ボールナット14は、保持部材17を含んで構成されている。即ち、ボールナット14は、内周側ねじ溝14Aが形成されたナット本体18と、複数の弾性部材19を径方向に積層した保持部材17とを備えている。保持部材17は、円筒状の弾性部材19を径方向に複数積層することにより、全体として円筒状に形成されている。保持部材17の内周面は、ナット本体18の外周面に固定されている。保持部材17の外周面は、ロッド8の内周面、より具体的には、ロッド8のナット取付け部8Cに固定されている。これにより、ボールナット14のナット本体18は、複数の弾性部材19を径方向に積層してなる保持部材17によりロッド8に保持されている。また、ボールナット14は、保持部材17によりロッド8に対する回転が阻止された状態で保持されている。
【0034】
保持部材17を構成する複数の弾性部材19は、それぞれ減衰性能を有する弾性材料、より具体的には、ゴム材料(例えば合成ゴム)、樹脂材料(例えば合成樹脂)等の高分子材料を用いて形成されている。この場合、弾性部材19としては、高減衰の弾性材料を用いることが好ましい。第1の実施形態では、複数の弾性部材19のみを積層することにより保持部材17を構成している。複数の弾性部材19は、例えば接着等により互いに分離不能に接続している。例えば、径方向に隣り合う弾性部材19の内周面と外周面とを接着剤により接続している。保持部材17を構成する複数の弾性部材19は、それぞれが同じ素材としてもよいし、異なる素材としてもよい。
【0035】
このように、第1の実施形態では、ボールナット14のナット本体18をロッド8に支持するための支持部材として、高減衰ゴムの弾性部材19を積層した保持部材17を用いている。
図4に示すように、保持部材17は、軸方向の変形(
図4の上下方向の変位)が容易となっている。このため、ナット本体18は、ロッド8に対する軸方向の変位が容易となり、路面からの突き上げのような急激な軸方向の振動に対して保持部材17により振動減衰効果を得ることができる。この結果、ボールねじ軸15に印加される振動を小さくでき、乗り心地を向上できる。
【0036】
また、ボールねじ軸15とボール16との螺合部(転がり接触部)に高負荷が印加されること、換言すれば、螺合部(転がり接触部)に不均一な負荷が加わることを抑制できる。これにより、摩耗の進行、割れ等の損傷を抑制することができる。また、ボールねじ軸15とボール16は、特に不均一な荷重が印加されることに起因して動作音が大きくなる等、異音(異常な音)が発生する可能性があるが、上記のように不均一な負荷が加わることを抑制できるため、静音性を向上することもできる。
【0037】
第1の実施形態によるサスペンション装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0038】
サスペンション装置1は、例えば、ロッド8の先端側(上端側)に設けられた支持部13が車両(自動車)の車体側に取付けられ、外筒6の基端側(下端側)が車両の車輪側(車軸側)に取付けられる。これにより、車両の走行時に振動が発生したときに、ロッド8を伸長、縮小させつつ、ピストン7の圧側バルブ11、伸側バルブ12、電動モータ4によって減衰力を発生させ、このときの振動を減衰する。
【0039】
即ち、ロッド8が縮小行程にある場合には、ロッド側油室Aよりもボトム側油室B内が高圧状態になる。そして、ボトム側油室B内の油液(圧油)は、ピストン7の油路7A、圧側バルブ11を介してロッド側油室A内へと流通し、減衰力を発生する。このとき、外筒6内へのロッド8の進入体積分に相当する分量の油液が、ボトム側油室Bからアキュムレータ9内へと流入する。これにより、ロッド8の進入体積分が吸収される。
【0040】
また、ロッド8の縮小方向への変位に伴って、ロッド8の下端のボールナット14は、ロッド8と共に下側に変位しつつ、この下側への変位に対応する方向にボールねじ軸15を回転させる。このとき、電動モータ4は、ボールナット14の下側への変位を妨げる方向の駆動力(抵抗力)をボールねじ軸15に出力することにより、減衰力を発生する。また、例えば、電動モータ4によりボールねじ軸15に対してボールナット14の下側への変位を進める方向の駆動力を出力した場合には、負の減衰力を発生させることができる。この場合は、電動モータ4の駆動によって油液(圧油)により発生する減衰力を低減できる。
【0041】
一方、ロッド8が伸長行程にある場合には、ボトム側油室Bよりもロッド側油室A内が高圧状態となる。そして、ロッド側油室A内の油液(圧油)は、ピストン7の油路7B、伸側バルブ12を介してボトム側油室B内へと流通し、減衰力が発生する。このとき、外筒6から進出(退出)したロッド8の進出体積分(退出体積分)に相当する分量の油液が、アキュムレータ9内からボトム側油室B内に流入する。
【0042】
また、ロッド8の伸長方向への変位に伴って、ロッド8の下端のボールナット14は、ロッド8と共に上側に変位しつつ、この上側への変位に対応する方向にボールねじ軸15を回転させる。このとき、電動モータ4は、ボールナット14の上側への変位を妨げる方向の駆動力(抵抗力)をボールねじ軸15に出力することにより、減衰力を発生する。また、例えば、電動モータ4によりボールねじ軸15に対してボールナット14の上側への変位を進める方向の駆動力を出力した場合には、負の減衰力を発生させることができる。この場合は、電動モータ4の駆動によって油液(圧油)により発生する減衰力を低減できる。
【0043】
また、車両の走行時に、ポットホール等の路面の凹凸に起因する大きな入力があったとき、例えば、急激な軸方向の振動(例えば、高周波の微振動)が入力されたときは、その入力を保持部材17で遮断(吸収)することができる。即ち、
図4に示すように、保持部材17は、高減衰ゴムの弾性部材19を径方向に積層することにより構成されているため、軸方向の変形(
図4の上下方向の変位)が容易となっている。これにより、ナット本体18は、保持部材17によって軸方向の振動に対する振動減衰効果を得ることができる。
【0044】
即ち、ナット本体18は、急激な軸方向の振動が入力されたときに、弾性部材19が軸方向に変形することに伴って軸方向(
図1ないし
図3の上下方向)に変位する。これにより、ボールねじ軸15とボール16との螺合部(接触部)に高負荷が印加されることを抑制できる。また、ナット本体18とボール16との螺合部(接触部)に高負荷が印加されることを抑制できる。
【0045】
以上のように、第1の実施形態では、ボールナット14は、複数の弾性部材19を径方向に積層した保持部材17を含んで構成されている。このため、路面からの突き上げ入力等に伴って、ボールねじ軸15に急激な軸方向の振動が入力された場合、その振動をボールナット14の保持部材17で受けることができる。保持部材17は、複数の弾性部材19を径方向に積層しているため、軸方向の振動に対して減衰効果を与えることができる。これにより、ボール16とボールナット14との螺合部(接触部)、ボール16とボールねじ軸15との螺合部(接触部)に過大な荷重および振動が入力されることを抑制できる。この結果、ボールナット14、ボールねじ軸15およびボール16の耐久性、信頼性を向上できる。また、特許文献2に記載されたようなトルク変更手段を必要としないため、部品点数を低減しつつ耐久性、信頼性を向上できる。
【0046】
次に、
図5は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、複数の弾性部材の径方向間に金属部材を配置したことにある。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0047】
上述の第1実施形態では、複数の弾性部材19のみを積層することにより保持部材17を構成している。これに対して、第2の実施形態では、径方向に隣り合う高減衰ゴム製の弾性部材19の間に金属製で円筒状に形成された金属部材22を挟持することにより保持部材21を構成している。
【0048】
即ち、第2の実施形態のボールナット14も、第1実施形態のボールナット14と同様に、保持部材21を含んで構成されている。第2実施形態では、保持部材21は、複数の弾性部材19と、複数の金属部材22とを備えている。金属部材22は、例えば、ステンレス鋼板等の金属材料製の板材(金属板)を円筒状に形成したもので、高減衰ゴム製の弾性部材19の間に挿入されている。即ち、保持部材21は、円筒状の弾性部材19と円筒状の金属部材22とを径方向に交互に配置することにより形成されている。これら弾性部材19と金属部材22は、互いに分離できないように接続されている。例えば、保持部材21は、金型内の円筒空間に径方向の隙間を介して配置された複数の金属部材22の間にゴム材料を注入し、熱および圧力を加えることにより形成することができる。
【0049】
第2の実施形態は、上述の如き保持部材21によりボールナット14のナット本体18をロッド8に支持するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第2の実施形態では、複数の弾性部材19の径方向間に金属部材22が配置されている。このため、軸方向の振動の減衰効果を維持しつつ、横方向(径方向)の力が加わることによる保持部材21の変形を、金属部材22により抑制できる。即ち、横方向(径方向)の力によりボールナット14(ナット本体18)が径方向に移動する(偏心する、位置ずれする、がたつく)傾向となることを金属部材22により抑制できる。これにより、ボールナット14、ボールねじ軸15およびボール16の耐久性、信頼性をさらに向上できる。
【0050】
次に、
図6は、第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、モータと駆動機構との間にクラッチ機構を設けたことにある。なお、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0051】
第3実施形態では、アクチュエータとしての電動アクチュエータ31は、モータとしての電動モータ4と、駆動機構としてのボールねじ機構5と、連結機構32とを備えている。連結機構32はクラッチ機構33を含んで構成されている。電動モータ4は、外筒6の外側に設けられている。電動モータ4のシャフト4Aは、外筒6の軸線方向に対して直交する方向に延びている。連結機構32は、電動モータ4とボールねじ機構5(ボールねじ軸15)との間に設けられている。これにより、第2の実施形態の電動アクチュエータ31は、連結機構32を介して電動モータ4によりボールねじ機構5を駆動する構成となっている。
【0052】
連結機構32は、歯車伝達機構34とクラッチ機構33とを備えている。歯車伝達機構34は、円錐形状のかさ歯車により構成されたかさ歯車伝達機構であり、第1回転軸34Aと、第1かさ歯車34Bと、第2回転軸34Cと、第2かさ歯車34Dとを備えている。第1回転軸34Aは、ボールねじ機構5のボールねじ軸15に同心に接続されている。即ち、第1回転軸34Aは、ボールねじ軸15の下端部にボールねじ軸15と一体に接続されており、ボールねじ軸15と共に回転する。第1回転軸34Aは、図示しない転がり軸受等により外筒6の底部6Aに対して回転可能に支持されている。第1回転軸34Aには、第1かさ歯車34Bが設けられている。
【0053】
第2回転軸34Cは、第1回転軸34Aの中心軸線に対して直交する方向に延びている。第2回転軸34Cは、図示しない転がり軸受等により外筒6の筒部6Bに対して回転可能に支持されている。第2回転軸34Cの一端側、即ち、第1かさ歯車34B側には、この第1かさ歯車34Bと噛合する第2かさ歯車34Dが設けられている。第2回転軸34Cの他端側、即ち、電動モータ4側(換言すれば、外筒6から突出した側)は、クラッチ機構33(駆動機構側クラッチ板33A)に接続されている。
【0054】
クラッチ機構33は、駆動機構側クラッチ板33Aと、モータ側クラッチ板33Bとを備えている。駆動機構側クラッチ板33Aは、第2回転軸34Cに設けられており、第2回転軸34Cと共に回転する。モータ側クラッチ板33Bは、電動モータ4のシャフト4Aに設けられている。クラッチ機構33は、第2回転軸34Cとシャフト4Aとの間で回転(トルク、回転力、動力)の伝達を行う「接続状態(締結状態)」と、回転の伝達が断たれる「遮断状態(解放状態)」とに切換えが可能となっている。クラッチ機構33の接続と解放の切換えは、例えば、図示しないサスペンション制御装置により制御される。クラッチ機構33は、例えば、摩擦クラッチ等、回転力の伝達、遮断(解放)を行うことができる各種のクラッチを採用することができる。
【0055】
クラッチ機構33が接続状態のときは、例えば、電動モータ4(シャフト4A)の回転をモータ側クラッチ板33B、駆動機構側クラッチ板33A、第2回転軸34C、第2かさ歯車34D、第1かさ歯車34B、第1回転軸34Aを介してボールねじ軸15に伝達できる。逆に言えば、ボールナット14の上下方向の変位に基づくボールねじ軸15の回転は、第1回転軸34A、第1かさ歯車34B、第2かさ歯車34D、第2回転軸34C、駆動機構側クラッチ板33A、モータ側クラッチ板33Bを介して電動モータ4(シャフト4A)に伝達される。これに対して、クラッチ機構33が解放状態のときは、例えば、電動モータ4(シャフト4A)の回転はボールねじ軸15に伝達されない。逆に言えば、ボールねじ軸15の回転は電動モータ4(シャフト4A)に伝達されない。
【0056】
このように、クラッチ機構33は、電動モータ4とボールねじ機構5(より具体的には、ボールねじ軸15)との間に設けられている。クラッチ機構33は、電動モータ4とボールねじ機構5(ボールねじ軸15)との間で動力の伝達を可能に接続する接続状態と、電動モータ4とボールねじ機構5(ボールねじ軸15)との間で動力の伝達を遮断可能に解放(開放)する解放状態(開放状態)とのいずれかに切換えられる。これにより、クラッチ機構33は、接続状態とすることにより、油圧緩衝器2と電動アクチュエータ31との双方による減衰力を発生させる並列モードと、解放状態にすることにより、油圧緩衝器2による減衰力を発生させる単体モードとの2つのモードを可能としている。モード切換えは、サスペンション制御装置により自動的にクラッチ機構33が切換えられることにより行う構成としてもよいし、運転者の操作により手動でクラッチ機構33が切換えられることにより行う構成としてもよい。
【0057】
クラッチ機構33が接続状態(即ち、並列モード)のときは、前述の第1の実施形態と同様に、油圧緩衝器2と電動アクチュエータ31との双方による減衰力を発生させることができる。これに対して、クラッチ機構33が解放状態(即ち、単体モード)のときは、ボールねじ機構5(ボールねじ軸15)と電動モータ4との間で動力の伝達が遮断される。これにより、ボールナット14の軸方向変位に伴ってボールねじ軸15は空回りし、電動アクチュエータ31による減衰力(各部の転がり抵抗、回転摩擦抵抗等に基づく減衰力は除く)は発生しない。
【0058】
このように、第3の実施形態では、第1かさ歯車34Bと噛み合うように配置された第2かさ歯車34Dと、第2かさ歯車34Dに接続された第2回転軸34Cが、外筒6の内部に設置されている。第2回転軸34Cとクラッチ機構33の駆動機構側クラッチ板33Aは、外筒6の外側で接続されている。第2回転軸34Cは、クラッチ機構33を介してハウジング35内に設置された電動モータ4(シャフト4A)と接続される。電動モータ4を収容するハウジング35は、外筒6の外側に設けられている。なお、第3の実施形態では、クラッチ機構33を外筒6の外側(ハウジング35内)に配置しているが、これに限定されず、例えば、クラッチ機構を外筒の内側に配置してもよい。
【0059】
クラッチ機構33を接続した場合、ロッド8の上下動は、ボールねじ機構5(ボールナット14、ボール16、ボールねじ軸15)、歯車伝達機構34(第1回転軸34A、第1かさ歯車34B、第2かさ歯車34D、第2回転軸34C)、クラッチ機構33(駆動機構側クラッチ板33A、モータ側クラッチ板33B)を介して電動モータ4(シャフト4A)に伝達される。また、電動モータ4を通電すると、電動モータ4の動力(回転力)は、クラッチ機構33(モータ側クラッチ板33B、駆動機構側クラッチ板33A)、歯車伝達機構34(第2回転軸34C、第2かさ歯車34D、第1かさ歯車34B、第1回転軸34A)、ボールねじ機構5(ボールねじ軸15、ボール16、ボールナット14)を介してロッド8に伝達される。さらに、ロッド8の上下動に伴って、外筒6内の油液(流体)が、圧側バルブ11または伸側バルブ12を通過することにより、流体による減衰力が発生する。これに対して、クラッチ機構33の接続を解除した場合、ロッド8の上下動は電動モータ4へは伝達されず、流体による減衰力のみ発生する。
【0060】
第3の実施形態は、上述の如きクラッチ機構33をボールねじ機構5(ボールねじ軸15)と電動モータ4との間に設けたもので、その基本的作用については、上述した第1の実施形態によるものと格別差異はない。即ち、第3の実施形態も、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、ボールねじ機構5に急激な軸方向の振動が入力された場合でも、ボールねじ機構5の螺合部(転がり接触部)に過大な振動が入力されることを抑制できる。しかも、第3の実施形態では、電動モータ4とボールねじ機構5との間にクラッチ機構33が設けられている。このため、クラッチ機構33の切換えにより、油圧緩衝器2と電動アクチュエータ31との双方による減衰力を発生させる並列モードと、油圧緩衝器2による減衰力を発生させる単体モードとの2つのモードを実現できる。
【0061】
なお、第1の実施形態では、保持部材17を、複数の弾性部材19のみを積層することにより構成した場合を例に挙げて説明した。また、第2の実施形態では、保持部材21を、複数の弾性部材19の径方向間に金属部材22を配置することにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これらに限らず、例えば、
図7に示す変形例のように、複数の弾性部材19の軸方向間に円筒状の金属部材42を配置することにより保持部材41を構成してもよい。この場合も、軸方向の振動の減衰効果を維持しつつ、横方向(径方向)の力が加わることによる保持部材41の変形を、金属部材42により抑制できる。即ち、横方向(径方向)の力によりボールナット14(ナット本体18)が径方向に移動する(偏心する、位置ずれする、がたつく)傾向となることを金属部材42により抑制できる。これにより、耐久性、信頼性をさらに向上できる。このことは、第2の実施形態および第3の実施形態も同様である。
【0062】
第1の実施形態では、ボールねじ機構5のロッド8の一端を車体側に接続する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これらに限らず、例えば、ロッドの一端を車輪側に接続してもよい。このことは、第2の実施形態、第3の実施形態および変形例も同様である。
【0063】
各実施形態および変形例では、サスペンション装置の代表例として自動車に取付けるサスペンション装置を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、鉄道車両に取付けるサスペンション装置に適用してもよい。また、各実施形態および変形例は例示であり、異なる実施形態および変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0064】
以上説明した実施形態によれば、ボールナットは、複数の弾性部材を径方向に積層した保持部材を含んで構成されている。このため、路面からの突き上げ入力等に伴って、ボールねじ軸に急激な軸方向の振動が入力された場合、その振動をボールナットの保持部材で受けることができる。保持部材は、複数の弾性部材を径方向に積層しているため、軸方向の振動に対して減衰効果を与えることができる。これにより、螺合部(ボールとボールナットとの螺合部、ボールとボールねじ軸との螺合部)に過大な振動が入力されることを抑制でき、耐久性、信頼性を向上できる。
【0065】
実施形態によれば、保持部材は、複数の弾性部材の径方向間に金属部材が配置されている。このため、軸方向の振動の減衰効果を維持しつつ、横方向(径方向)の力が加わることによる保持部材の変形を、金属部材により抑制できる。即ち、横方向(径方向)の力によりボールナットが径方向に移動する(偏心する、位置ずれする、がたつく)傾向となることを金属部材により抑制できる。これにより、耐久性、信頼性をさらに向上できる。
【0066】
実施形態によれば、保持部材は、複数の弾性部材の軸方向に金属部材が配置されている。このため、軸方向の振動の減衰効果を維持しつつ、横方向(径方向)の力が加わることによる保持部材の変形を、金属部材により抑制できる。即ち、横方向(径方向)の力によりボールナットが径方向に移動する(偏心する、位置ずれする、がたつく)傾向となることを金属部材により抑制できる。これにより、耐久性、信頼性をさらに向上できる。
【0067】
実施形態によれば、モータと駆動機構との間にクラッチ機構が設けられている。このため、クラッチ機構の切換えにより、減衰機構とアクチュエータとの双方による減衰力を発生させる並列モードと、減衰機構による減衰力を発生させる単体モードとの2つのモードを実現できる。
【符号の説明】
【0068】
1:サスペンション装置、2:油圧緩衝器(減衰機構)、3,31:電動クアクチュエータ(アクチュエータ)、4:電動モータ(モータ)、5:ボールねじ機構(駆動機構)、8:ロッド、14:ボールナット、15:ボールねじ軸、17,21,41:保持部材、19:弾性部材、22,42:金属部材、33:クラッチ機構