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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188443
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】記録ヘッド、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221214BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/14
B41J2/14 613
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096475
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】原部 翔
(72)【発明者】
【氏名】与田 純也
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB30
2C056HA15
2C057AL25
2C057AM24
(57)【要約】
【課題】構成を複雑化させることなくノズル各々のインクの吐出性能が不均一になることを抑制するとともに、ノズル内のインク温度を精度よく検出可能な記録ヘッド、及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】記録ヘッドは、バックエンド部と、前記バックエンド部からインクの供給を受け、複数のノズルを備えるフロントエンド部と、発熱体70を備え、前記バックエンド部と前記フロントエンド部との間に配置され、前記フロントエンド部及び前記バックエンド部を温める加熱板7と、を有し、加熱板7は、前記フロントエンド部の温度の検出に用いられる温度検知素子71と、加熱板7における発熱体70と温度検知素子71との間に形成されるスリット72と、を有する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク流路を備え、インクが送り込まれ、送り込まれたインクを送り出すバックエンド部と、
前記バックエンド部からインクの供給を受け、主走査方向に複数並べられインクを吐出するノズルを備えるフロントエンド部と、
通電により発熱する発熱体を備え、前記バックエンド部と前記フロントエンド部との間に配置され、平面の他方側から熱を伝えて前記フロントエンド部を温め、平面の一方側から熱を伝えて前記バックエンド部を温める加熱板と、
を有し、
前記加熱板は、
前記フロントエンド部の温度の検出に用いられる温度センサーと、
前記加熱板における前記発熱体と前記温度センサーとの間に形成される貫通孔と、
を有する記録ヘッド。
【請求項2】
前記発熱体及び前記温度センサーは、前記加熱板における前記フロントエンド部との対向面に設けられる、
請求項1に記載の記録ヘッド。
【請求項3】
前記フロントエンド部は、前記主走査方向に沿って形成され、前記主走査方向の端部で前記バックエンド部からインクの供給を受け、前記ノズル各々に供給されるインクを収容するインク収容部を有し、
前記対向面は、前記インク収容部における前記バックエンド部からインクが供給される供給位置から最も離間した特定位置と対向する第1対向領域、及び前記インク収容部と対向し前記第1対向領域とは異なる第2対向領域を含み、
前記温度センサーは、前記第1対向領域に設けられ、
前記発熱体は、前記第2対向領域に設けられる、
請求項2に記載の記録ヘッド。
【請求項4】
前記第1対向領域と前記フロントエンド部との間に設けられる第1伝熱部材と、
前記第2対向領域と前記フロントエンド部との間において前記第1伝熱部材から離間して設けられる第2伝熱部材と、
を有する請求項3に記載の記録ヘッド。
【請求項5】
前記第2伝熱部材は、弾性を有する、
請求項4に記載の記録ヘッド。
【請求項6】
前記加熱板は、前記第2対向領域において前記主走査方向に沿って並ぶ複数の前記発熱体を有し、
複数の前記発熱体は、発熱量が最も多い第1特定発熱体、及び発熱量が最も少ない第2特定発熱体を含み、
前記第1特定発熱体は、前記第1対向領域から最も遠い位置に配置され、
前記第2特定発熱体は、前記第1対向領域から最も近い位置に配置される、
請求項3~5のいずれかに記載の記録ヘッド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の記録ヘッドを用いて画像を形成する、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の画像形成装置、及び当該画像形成装置に設けられる記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置は、シートにインク画像を記録する記録ヘッドを備える。前記記録ヘッドは、前記シートの搬送方向(副走査方向)に直交する主走査方向に沿って並ぶ複数のノズルを備える。前記ノズル各々は、前記シートへ向けてインクを吐出する。前記ノズルからインクが吐出されると、吐出量に応じたインクが当該ノズルに補充される。
【0003】
この種の記録ヘッドでは、前記ノズルに補充されるインクによって当該ノズル内のインクの温度が低下して、当該ノズルによるインクの吐出性能がインクを吐出していない前記ノズルよりも低下することがある。つまり、前記ノズル各々のインクの吐出性能が不均一になることがある。これに対し、複数の前記ノズルを複数のグループにグループ分けし、当該グループごとに温度制御を実行する記録ヘッドが関連技術として知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-217823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記グループごとに温度制御を実行する場合には、前記グループごとにヒーター及び温度センサーのような温度制御のための構成を設ける必要がある。そのため、前記記録ヘッドの構成が複雑化する。また、前記関連技術のように、前記ヒーターと前記温度センサーとを同一の基板に設ける場合には、前記基板を介して伝達される前記ヒーターの熱により前記温度センサーの検出精度が低下することがある。
【0006】
本発明の目的は、構成を複雑化させることなくノズル各々のインクの吐出性能が不均一になることを抑制するとともに、ノズル内のインク温度を精度よく検出可能な記録ヘッド、及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る記録ヘッドは、バックエンド部と、フロントエンド部と、加熱板とを有する。前記バックエンド部は、インク流路を備え、インクが送り込まれ、送り込まれたインクを送り出す。前記フロントエンド部は、前記バックエンド部からインクの供給を受け、主走査方向に複数並べられインクを吐出するノズルを備える。前記加熱板は、通電により発熱する発熱体を備え、前記バックエンド部と前記フロントエンド部との間に配置され、平面の他方側から熱を伝えて前記フロントエンド部を温め、平面の一方側から熱を伝えて前記バックエンド部を温める。また、前記加熱板は、温度センサーと、貫通孔とを有する。前記温度センサーは、前記フロントエンド部の温度の検出に用いられる。前記貫通孔は、前記加熱板における前記発熱体と前記温度センサーとの間に形成される。
【0008】
本発明の他の局面に係る画像形成装置は、前記記録ヘッドを用いて画像を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構成を複雑化させることなくノズル各々のインクの吐出性能が不均一になることを抑制するとともに、ノズル内のインク温度を精度よく検出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るプリンターの一例を示す図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係るプリンターの一例を示す図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係るラインヘッドの一例を示す図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの一例を示す図である。
図5図5は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの一例を示す図である。
図6図6は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの一例を示す図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの模式図の一例を示す図である。
図8図8は、本発明の第1実施形態に係るフロントエンド部の一例を示す図である。
図9図9は、本発明の第1実施形態に係る加熱板の一例を示す図である。
図10図10は、本発明の第1実施形態に係るインクの温度調整処理の一例を示す図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッドの模式図の一例を示す図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係る加熱板の一例を示す図である。
図13図13は、本発明の第3実施形態に係る加熱板の一例を示す図である。
図14図14は、本発明の第3実施形態に係る加熱板の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、図1図10を用いて、本発明に係るインクジェットヘッド100及びインクジェットヘッド100を備えた画像形成装置を説明する。インクジェットヘッド100はインクを吐出する。以下では、画像形成装置としてプリンター101を例に挙げて説明する。なお、本発明は、複合機のようなプリンター以外の画像形成装置にも適用できる。
【0012】
以下の説明では、3次元直交座標系(XYZ座標系)を用いて説明する。以下の説明では、X軸方向は主走査方向である。主走査方向はノズル5が並べられる方向である。Y軸方向は副走査方向である。Y軸方向は、インクジェットヘッド100に対して、用紙が搬送される方向でもある。Y軸方向はX軸方向と直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と直交する方向である。Z軸はノズル5と搬送用紙が向かい合う方向でもある。X軸方向とY軸方向の平面は、例えば、水平面と平行である。この場合、Z軸方向は、鉛直方向(上下方向)となる。
【0013】
一部の図面には、XYZの方向を図示する。以下の説明、及び、図面での+X方向はX軸方向のうちの一方側である。-X方向は、X軸方向のうちの他方側である。+Y方向はY軸方向のうちの一方側であり、用紙搬送方向の上流側を示す。-Y方向は、Y軸方向のうちの他方側であり、用紙搬送方向の下流側を示す。+Z方向は、Z軸方向のうちの一方側である。水平面にプリンター101が設置されたとき、+Z方向は上方向である。-Z方向はZ軸方向のうちの他方側である。水平面にプリンター101が設置されたとき、-Z方向は下方向である。なお、本説明において「平行」とは、略平行な場合も含む。また、「垂直」とは、略垂直な場合も含む。ただし、これらの方向は説明の便宜のために方向を定義したものである。これらの方向はインクジェットヘッド100及びプリンター101の製造時及び使用時の向きを限定するものではない。
【0014】
(プリンター101の概要)
まず、図1及び図2を用いて、実施形態に係るプリンター101の概要を説明する。図1図2は、実施形態に係るプリンター101の一例を示す図である。
【0015】
プリンター101は制御部1、記憶部2、操作パネル3、印刷部4、及び、メンテナンスユニット102を含む。制御部1はプリンター101の各部を制御する。例えば、制御部1は基板である。制御部1は、制御回路10及び画像処理回路11を含む。例えば、制御回路10はCPUである。記憶部2に記憶される制御プログラムや制御データに基づき、制御回路10は演算、処理を行う。画像処理回路11は印刷に用いる画像データの画像処理を行い、インク吐出用画像データを生成する。プリンター101は、記憶部2として、ROM、ストレージ(HDD及び/又はSSD)、RAMを含む。
【0016】
通信回路部12は、通信用コネクター、通信制御回路、通信用メモリーを含む。通信用メモリーは、通信用ソフトウェアを記憶する。通信回路部12はコンピューター200と通信する。コンピューター200は、例えば、PCやサーバーである。制御部1はコンピューター200から印刷用データを受信する。印刷用データは印刷設定のデータ及び印刷内容を記述したデータを含む。例えば、印刷用データはページ記述言語で記述されたデータを含む。制御部1(画像処理回路11)は、受信した(入力された)印刷用データに基づき、画像データ(ラスターデータ)を生成する。制御部1は、生成した画像データを処理して、インク吐出用画像データを生成する。
【0017】
操作パネル3は、表示パネル31、タッチパネル32を含む。制御部1は、設定画面や情報を表示パネル31に表示させる。表示パネル31は、キー、ボタン、タブのような操作用画像を表示する。タッチパネル32は表示パネル31へのタッチ操作を検知する。タッチパネル32の出力に基づき、制御部1は操作された操作用画像を認識する。制御部1は、使用者が行った設定操作を認識する。
【0018】
プリンター101は印刷部4を含む。印刷部4は、給紙部4a、第1搬送部4b、画像形成部4c、第2搬送部4d、メンテナンスユニット102を含む。印刷ジョブを行うとき、制御部1は印刷部4の動作を制御する。
【0019】
給紙部4aは、給紙カセット41、給紙ローラー42、及び、給紙モーター(不図示)を備える。給紙カセット41は、プリンター101の本体の内部下方に配置される。給紙カセット41は複数枚の記録媒体を収容する。以下の説明では、記録媒体として用紙を用いる例を説明する。なお、プリンター101は用紙以外の記録媒体にも印刷できる。この場合、用紙以外の記録媒体が給紙カセット41にセットされる。給紙ローラー42は給紙カセット41にセットされた用紙と接する。印刷のとき、制御部1は給紙モーターを回転させ、給紙ローラー42を回転させる。給紙ローラー42は用紙を送り出す。
【0020】
第1搬送部4bは、画像形成部4cに向けて、給紙カセット41から送り出された用紙を搬送する。第1搬送部4bは、複数の第1搬送ローラー対43、レジストローラー対44、第1搬送モーター(不図示)、第1搬送路45、及び、第1搬送ユニット46を含む。印刷のとき、制御部1は、第1搬送モーターを回転させる。これにより、第1搬送ローラー対43が回転し、用紙が搬送される。第1搬送路45は、搬送ガイドによって形成された用紙の搬送通路である。第1搬送部4bの用紙搬送方向の下流端部には、レジストローラー対44が配置される。さらにレジストローラー対44の用紙搬送方向下流側に、第1搬送ユニット46が配置される。
【0021】
レジストローラー対44は到達した用紙の斜行を補正する。レジストローラー対44は第1搬送ユニット46に向けて用紙を送り出す。画像形成部4cは、複数のラインヘッド47を備える。例えば、画像形成部4cは、ブラックのインクを吐出するラインヘッド47K、シアンのインクを吐出するラインヘッド47C、マゼンタのインクを吐出するラインヘッド47M、イエローのインクを吐出するラインヘッド47Yを含む。各ラインヘッド47は、第1搬送ユニット46の上側(+Z方向)に設けられる。インク吐出用画像データに基づき、各ラインヘッド47は、インクを吐出し、用紙に画像を形成(記録)する。
【0022】
第1搬送ユニット46は、搬送ベルト48を備える。搬送ベルト48は、複数の第1ベルトローラーに回しかけられる。印刷のとき、制御部1は、搬送ユニットモーター(不図示)を回転させ、第1ベルトローラーを回転させる。これにより、搬送ベルト48が周回する。搬送ベルト48上の用紙が搬送される。用紙は画像形成部4cの下側を通過する。
【0023】
第2搬送部4dは、第2搬送ユニット49、複数の第2搬送ローラー対410、第2搬送モーター(不図示)、及び、第2搬送路411を備える。第2搬送部4dは、画像形成部4cを通過した用紙を排出トレイに向けて搬送する。第1搬送ユニット46は、画像形成部4cにてインクが吐出された用紙を、第2搬送ユニット49に送る。第2搬送ユニット49は、用紙に吐出されたインクを乾燥する。
【0024】
第2搬送ユニット49の用紙搬送方向下流側にデカーラー部412が配置される。デカーラー部412は用紙に生じたカールを矯正する。デカーラー部412の用紙搬送方向下流側に、第2搬送路411が配置される。第2搬送路411は、搬送ガイドによって形成された用紙の搬送通路である。第2搬送路411に沿って、第2搬送ローラー対410が設けられる。印刷のとき、制御部1は、第2搬送モーターを回転させる。これにより、第2搬送ローラー対410が回転し、用紙が搬送される。
【0025】
例えば、メンテナンスユニット102は、第2搬送ユニット49の下方に配置される。インクジェットヘッド100(ノズル5)のメンテナンスのとき、第1搬送ユニット46は退避移動し、メンテナンスユニット102は、画像形成部4c(ラインヘッド47)の下方に移動する。メンテナンス完了後、メンテナンスユニット102が退避し、第1搬送ユニット46が元の位置に移動する。
【0026】
(ラインヘッド47)
次に、図3を用いて、実施形態に係るラインヘッド47及びインクジェットヘッド100の一例を説明する。図3は実施形態に係るラインヘッド47の一例を示す図である。図3は下方(-Z方向)からみた画像形成部4cの一例を示す。
【0027】
図1図3に示すように、画像形成部4cは、複数のラインヘッド47(47C、47M、47Y、及び47K)を備える。それぞれのラインヘッド47は、使用するインクの色は異なるが、同じ構成である。1つのラインヘッド47は、複数のインクジェットヘッド100を備える。複数のインクジェットヘッド100を組み合わせたものが、1本のラインヘッド47である。図3は、1本のラインヘッド47が、3つのインクジェットヘッド100を備える例を示す。なお、1本のラインヘッド47は、2つのインクジェットヘッド100を組み合わせたものでもよいし、4つ以上のインクジェットヘッド100を組み合わせたものでもよい。
【0028】
図3は、X軸方向(主走査方向)に同色のインクジェットヘッド100を3つ並べ、うち2つのインクジェットヘッド100のY軸方向(副走査方向)の位置を同じとし、1つのインクジェットヘッド100のY軸方向(副走査方向)の位置を異ならせた例を示す。それぞれのインクジェットヘッド100は支持され、位置は固定されている。
【0029】
それぞれのインクジェットヘッド100は、複数のノズル5を備える。ノズル5は、インクを吐出する開口を備える。プリンター101が水平面に設置された場合、ノズル5は下向きであり、上から下に向けてインクが吐出される。つまり、開口は、-Z方向を向く(下向き)。各ノズル5は搬送される用紙及び搬送ベルト48と向かい合う。それぞれのインクジェットヘッド100は、ノズル5と用紙との間隔、又は、ノズル5と搬送ベルト48との間隔が所定の間隔(例えば1mm)となるように支持される。複数のノズル5が、X軸方向(主走査方向)に並べられる。図3では、破線の円がノズル5を示している。なお、図3に示すノズル5は便宜上のサイズであり、実際のノズル5はずっと小さい。具体的に、-Z方向から見て、インクジェットヘッド100の面(下面)に、複数のノズル5が形成されている。インクジェットヘッド100のうちのノズル5が設けられた面がインク吐出面5fである。
【0030】
(インクジェットヘッド100)
次に、図4図8を用いて、実施形態に係るインクジェットヘッド100の一例を説明する。図4図6は実施形態に係るインクジェットヘッド100の一例を示す図である。図5図6は、Y軸方向(副走査方向)からみたインクジェットヘッド100の一例を示している。図7は、実施形態に係るインクジェットヘッド100の模式図の一例を示す。図8は実施形態に係るフロントエンド部9の一例を示す図である。
【0031】
図4に示すように、インクジェットヘッド100は複数の圧電アクチュエーター51を含む。例えば、1つのノズル5に対し、1つの圧電アクチュエーター51が設けられる。圧電アクチュエーター51は圧電素子を含む。例えば、圧電素子はピエゾ素子である。例えば、圧電アクチュエーター51は圧電素子を層状に(Z軸方向に)積み重ねたものである。駆動電圧V1が印加されると、各圧電アクチュエーター51は変形する。変形に伴ってインクがノズル5から吐出される。
【0032】
インクジェットヘッド100は、ヘッド基板50を備えてもよい。ヘッド基板50は、例えば、1又は複数のドライバー回路52を備える。図4は、1つのインクジェットヘッド100(ヘッド基板50)が、複数のドライバー回路52を備える例を示す。ドライバー回路52は各圧電アクチュエーター51の電圧印加のON/OFFを行う。印刷ジョブのとき、制御部1はインク吐出用画像データ(インクを吐出すべきノズル5を示すデータ)を各ドライバー回路52に与える。インク吐出用画像データは、各ノズル5(各画素)のインクの吐出、不吐出を指示するデータ(2値的なデータ)である。
【0033】
インク吐出用画像データに基づき、ドライバー回路52は、インクを吐出すべきノズル5の圧電アクチュエーター51に駆動電圧V1を印加する。駆動電圧V1の印加により、圧電アクチュエーター51は変形する。変形の圧力がノズル5に対応する個別流路92(インクが通る流路)に加わる。圧力印加により、ノズル5からインクが吐出される。一方、ドライバー回路52は、インクを吐出させない画素に対応するノズル5の圧電アクチュエーター51に駆動電圧V1を印加しない。
【0034】
制御部1は駆動信号生成回路13を含んでもよい(図1参照)。駆動信号生成回路13は駆動信号を生成する。駆動信号は、例えば、クロック信号である。駆動信号はインクを周期的に吐出するための信号である。ドライバー回路52は、駆動信号が1回立ち上がる又は立ち下がるごとに、1ライン分のインクを吐出してもよい。また、第1搬送部4bは、インクの1吐出周期の間に1画素の距離だけ用紙を搬送してもよい。
【0035】
ヘッド基板50は駆動電圧生成回路53を含んでもよい。駆動電圧生成回路53は、複数種の大きさの異なる電圧を生成してもよい。駆動電圧生成回路53が生成した電圧は、各ドライバー回路52に入力される。ドライバー回路52は、駆動電圧生成回路53から供給された電圧を用いて、圧電アクチュエーター51に電圧を印加する。
【0036】
図5はインクジェットヘッド100の一例を示す。図5は、インクジェットヘッド100の上側(+Z方向側)にヘッド基板50が配置されている例を示す。図6は、図5に示すインクジェットヘッド100の一部を分解した図である。
【0037】
図6の破線矩形で囲う部分は、バックエンド部6である。図6に示すように、バックエンド部6の-Z方向側(下側)には、+Z方向から順に、保護板80、粘着シート81、加熱板7、伝熱シート8、フロントエンド部9が配置される。
【0038】
バックエンド部6は、インクが送り込まれ、送り込まれたインクを送り出す。図7に示すように、バックエンド部6は、インク導入部61を備える。例えば、インク導入部61は、X軸方向(主走査方向)の一方側と他方側のそれぞれに、計2カ所に設けられる。バックエンド部6は、内部にインク流路62を備える。インクタンク(不図示)から送られたインクは、インク導入部61を介して、バックエンド部6のインク流路62に入る。図7の破線は、インク流路62の一例を示している。例えば、インク流路62はインクを流す管である。図7の実線矢印はインクの流れる方向を示す。
【0039】
図7に示すように、インク流路62に進入したインクは、-Z方向(下向き)に移動し、X軸方向(主走査方向)の中央に進む。その後、+Z方向(上向き)に移動する。そして、インク流路62は+X方向(主走査方向の一方側)と-X方向(主走査方向の他方側)に分岐する。分岐したインク流路62の終点がインク送出口63である。インク輸送管64は、インク送出口63とフロントエンド部9をつなぐ。インク送出口63から送り出されたインクは、インク輸送管64によって、フロントエンド部9に供給される。
【0040】
例えば、保護板80はバックエンド部6と加熱板7との間に設けられる板である。例えば、保護板80は、金属の板である。保護板80には、熱伝導性が高い金属を用いることができる。例えば、保護板80はアルミ板である。保護板80の素材はアルミに限られず、例えば、銅でもよい。保護板80は、例えば、矩形である。図6において、保護板80の長手方向はX軸方向(主走査方向)である。保護板80の短手方向はY軸方向である。保護板80の他方側(-Z方向)の平面(XY平面)と、粘着シート81の一方側(+Z方向)の平面が接する。保護板80の一方側(+Z方向)の平面(XY平面)は、バックエンド部6の下面(XY平面に平行な-Z方向側の面)と接する。例えば、バックエンド部6の下面は平面である。なお、ビスを用いて、保護板80はバックエンド部6に取り付けられてもよい。
【0041】
粘着シート81は、保護板80と加熱板7との間に設けられる。粘着シート81は、例えば、矩形である。図6において、粘着シート81の長手方向はX軸方向(主走査方向)である。粘着シート81の短手方向はY軸方向である。加熱板7も粘着シート81に貼り付けられる。例えば、粘着シート81は両面テープである。粘着シート81の他方側(-Z方向)の平面(XY平面)に、加熱板7の一方側(+Z方向)の面が、貼り付けられる。つまり、粘着シート81の他方側の平面が、加熱板7の一方側の平面と接する。なお、ビスを用いて、加熱板7がインクジェットヘッド100に取り付けられてもよい。
【0042】
加熱板7は、粘着シート81と伝熱シート8の間に設けられる板状の部材である。例えば、加熱板7は、複数の発熱体70を備える板である。例えば、加熱板7は、発熱体70として複数のチップ抵抗を備えるガラスエポキシ樹脂製の基板である。図6において、加熱板7の長手方向はX軸方向(主走査方向)である。加熱板7の短手方向はY軸方向である。加熱板7の他方側(-Z方向)の面が、伝熱シート8の一方側(+Z方向)の平面(XY平面)と接する。
【0043】
伝熱シート8は、加熱板7とフロントエンド部9の間に設けられるシートである。伝熱シート8は1枚のシートであってもよい。1枚の伝熱シート8が全ての発熱体70を覆ってもよい。伝熱シート8は、熱伝導性が高く、弾性も高いシートである。例えば、伝熱シート8の圧縮率は50%以上である。例えば、シリコン系の素材を用いるシートを伝熱シート8に用いることができる。伝熱シート8には、いわゆるサーコンを用いることができる。伝熱シート8の他方側(-Z方向)の面が、フロントエンド部9の一方側(+Z方向)の平面(XY平面)と接する。
【0044】
フロントエンド部9は、バックエンド部6からインクの供給を受ける。また、フロントエンド部9は、インクを吐出するノズル5を備える。ノズル5は、主走査方向に複数並べられる。また、フロントエンド部9は、マニホールドダンパー91を含む。マニホールドダンパー91は、インクを貯める部分(空間)である。マニホールドダンパー91はそれぞれのノズル5と接続される。
【0045】
図8に示すように、フロントエンド部9は、ノズル5、マニホールドダンパー91、個別流路92、圧電アクチュエーター51を備える。例えば、フロントエンド部9は、積み重ねられた複数の金属板を含む。例えば、金属板はSUS(ステンレス)製である。図8は、実施形態に係るフロントエンド部9の断面の一例を示す。図8は、XY平面をみた(X軸方向からみた、用紙搬送方向に沿って切った)1つのノズル5の断面の一例を示す。
【0046】
便宜上、フロントエンド部9の積層された金属板を、+Z方向から-Z方向(上から下)の順に、トッププレート9a、第1ダンパープレート9b、第2ダンパープレート9c、個別流路プレート9d、ノズルプレート9e、と称する。なお、図8に示すフロントエンド部9の積層例は一例にすぎない。例えば、積む金属板の数は、図8に示す例よりも多くてもよい。
【0047】
第1ダンパープレート9bは、第1貫通孔93を備える。第2ダンパープレート9cは第2貫通孔94を備える。第1貫通孔93と第2貫通孔94は、Z軸方向(上下方向)に貫通している。第1貫通孔93と第2貫通孔94は、X軸方向(主走査方向)にのびている。第1貫通孔93と第2貫通孔94のX軸方向の長さは、最も-X方向側にあるノズル5から最も+X方向側にあるノズル5までの距離(両端のノズル5の距離)以上である。
【0048】
第1ダンパープレート9bと第2ダンパープレート9cを重ねたとき、第1貫通孔93と第2貫通孔94のY軸方向(副走査方向)の位置が一致する。第1ダンパープレート9bの+Z方向側(上側)には、トッププレート9aが重ねられる。トッププレート9aは、第1貫通孔93と第2貫通孔94の蓋となる。第1貫通孔93と第2貫通孔94の部分(空間)がマニホールドダンパー91となる。マニホールドダンパー91は、吐出前のインクを貯める空間である。バックエンド部6から送り出されたインクは、マニホールドダンパー91に入る。インク吐出によってフロントエンド部9のインクが減ると、マニホールドダンパー91を経たインクがノズル5に供給される。
【0049】
ノズルプレート9eは、フロントエンド部9の最下層(最も下方向)の金属板である。ノズルプレート9eには、Z軸方向に貫通する孔が設けられている。この孔の部分がノズル5のインク吐出口54である。また、第1ダンパープレート9b、第2ダンパープレート9c、個別流路プレート9dには、個別流路92を形成するための貫通孔が設けられる。個別流路92は、ノズル5ごとに設けられる。個別流路92の部分については、第1ダンパープレート9b、第2ダンパープレート9c、及び、個別流路プレート9dでは、ノズル5とノズル5の間の部分は、貫通していない。言い換えると、第1ダンパープレート9b、第2ダンパープレート9c、及び、個別流路プレート9dには、Z軸方向(上又は下方向)からみて、X軸方向(主走査方向)に、一定間隔で、個別流路92の貫通孔と壁部が交互に設けられている。貫通していない部分は、個別流路92を隔てる壁部となる。1つの個別流路92は、1つのノズル5と接続される。全ての個別流路92はマニホールドダンパー91と接続される。マニホールドダンパー91のインクは、個別流路92を進み、それぞれのノズル5に到達する。
【0050】
(加熱板7)
図9を用いて、実施形態に係る加熱板7の一例を説明する。図9は、実施形態に係る加熱板7の一例を示す図である。図9は加熱板7を-Z方向(下方向)から見た図である。
【0051】
加熱板7は、通電により発熱する発熱体70を備える。発熱体70としてチップ抵抗を用いることができる。なお、発熱体70はチップ抵抗に限られない。通電により発熱する素子を発熱体70として用いることができる。そして、加熱板7は、複数の発熱体70が配置された1枚の基板である。1枚の加熱板7によって、全てのノズル5(フロントエンド部9の全体)とバックエンド部6の全体を温めることができる。
【0052】
加熱板7のZ軸方向の他方側(-Z方向)の面に、複数の発熱体70が配置される(図6図7参照)。この他方側の平面は、フロントエンド部9に向けられ、伝熱シート8を介して、フロントエンド部9と接する。また、加熱板7の一方側(+Z方向)の平面は、バックエンド部6に向けられる。
【0053】
図9は、チップ抵抗をY軸方向(副走査方向)に4個、X軸方向(主走査方向)に12個並べる例を示す。図9は、48個のチップ抵抗を発熱体70として設ける例を示す。なお、発熱体70の個数は、48個よりも少なくてもよいし、多くてもよい。例えば、Y軸方向の中心よりも+Y方向側の24個のチップ抵抗が直列に接続される。また、例えば、Y軸方向の中心よりも-Y方向側の24個のチップ抵抗が直列に接続される。つまり、図9に示す加熱板7は、24個のチップ抵抗を直列接続した抵抗回路を2つ備える。
【0054】
ここで、加熱板7の他方側の平面には、隔離領域F0が設けられる。隔離領域F0は、発熱体70が設けられない領域である。図9においては、加熱板7のX軸方向の中央部分に記された破線矩形が隔離領域F0である。隔離領域F0は矩形でなくてもよい。便宜上、加熱板7の他方側の平面のうち、X軸方向で隔離領域F0を挟む領域であって、X軸方向の一方側(+X方向)の領域を第1配置領域F1と称し、他方側(-X方向)の領域を第2配置領域F2と称する。図9は、第1配置領域F1と第2配置領域F2のそれぞれに同数の発熱体70(チップ抵抗)を配置する例を示す。なお、第1配置領域F1と第2配置領域F2とでは、発熱体70の配置数は異なってもよい。
【0055】
ここで、隔離領域F0には、温度検知素子71が配置される。例えば、温度検知素子71は、チップ型サーミスターである。チップ型サーミスターを用いることにより、加熱板7の厚み(Z軸方向の幅)を抑えることができる。なお、温度検知素子71は、チップ型サーミスターに限られない。温度検知素子71は、リードタイプのサーミスターでもよい。温度検知素子71は、サーミスター以外の温度計測用の素子でもよい。
【0056】
温度検知素子71は、隔離領域F0の中心に配置してもよい(中心でなくてもよい)。例えば、Z軸方向からみて、隔離領域F0のXY平面の中心と温度検知素子71の中心が一致するように、温度検知素子71が配置されてもよい。温度検知素子71は、伝熱シート8を介して、フロントエンド部9と接する。温度検知素子71とフロントエンド部9の距離は、1枚の伝熱シート8の厚さとなる。つまり、温度検知素子71とフロントエンド部9の距離は、発熱体70と温度検知素子71の距離よりも近い。温度検知素子71はフロントエンド部9の温度を測る。温度検知素子71の出力は、フロントエンド部9の温度に応じて変化する。温度検知素子71の出力(出力電圧)は、制御部1に入力される。制御部1は、温度検知素子71の出力に基づき、フロントエンド部9の温度を認識する。
【0057】
そして、第1配置領域F1及び第2配置領域F2での発熱体70(チップ抵抗)のX軸方向の間隔(最短の間隔)を第1間隔W1と称する。第1配置領域F1及び第2配置領域F2での発熱体70(チップ抵抗)のY軸方向の間隔(最短の間隔)を第2間隔W2と称する。隔離領域F0に最も近い発熱体70と、温度検知素子71と、の距離(XY平面での間隔)は、第1間隔W1及び第2間隔W2よりも広い。温度検知素子71は、発熱体70が生じさせる熱の影響を受けにくい場所に配置される。例えば、実験により、温度検知素子71の出力に基づき認識する温度とフロントエンド部9の実際の温度との温度差がない、又は、温度差の絶対値が基準値以下となる温度検知素子71と発熱体70との距離を求めてもよい。また、加熱板7の材質の熱伝導率に基づき、発熱体70から伝わる熱量が所定値以下となる距離を求めてもよい。発熱体70は、XY平面において、温度検知素子71を中心とし、求めた距離を半径とする円よりも外側に配置してもよい。
【0058】
加熱板7は、電源装置100p(図9参照)と接続される。電源装置100pと加熱板7は電力供給用の電線(供給線)で接続される。供給線にはスイッチ100sが設けられる。制御部1は、スイッチ100sのON/OFFを制御する。インクを温めるとき、制御部1は、スイッチ100sをONし、加熱板7に電力を供給し、各チップ抵抗に電流を流し(通電し)、発熱させる。インクを温めないとき、制御部1は、スイッチ100sをOFFし、加熱板7への電力供給を停止する。
【0059】
ここで、X軸方向(主走査方向)の両端からも、加熱板7の熱は空気又は他の部材に逃げる。発熱体70への電力供給を停止した場合、加熱板7のX軸方向の端部の温度は、発熱体70と発熱体70の間の温度よりも下がりやすい。X軸方向において、最も外側の発熱体70(第1発熱体70a)の発熱量は、X軸方向において、第1発熱体70aの内側の発熱体70(第2発熱体70b)よりも発熱量を大きくしてもよい。抵抗値を異ならせることにより、第1発熱体70aと第2発熱体70bの発熱量が異なってもよい。抵抗値を小さくすると、電流が増える。その結果、発熱量が大きくなる。そこで、第1発熱体70aの抵抗値は、第2発熱体70bの抵抗値よりも小さくてもよい。
【0060】
1枚の伝熱シート8は、全ての発熱体70(チップ抵抗)を覆う。なお、伝熱シート8は複数枚でもよい。言い換えると、全ての発熱体70は、伝熱シート8に覆われる。さらに、伝熱シート8は発熱体70と発熱体70の間に入り込むほどの弾性と圧縮性を備える。これにより、伝熱シート8は、加熱板7の一方側の平面を隙間なく覆う。その結果、加熱板7の熱は、伝熱シート8によって、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向の3方向に効率よく伝えられる。その結果、通電時、加熱板7は均一に温度が上昇する。そのため、フロントエンド部9の全体及びバックエンド部6の全体が効率よく温められる。フロントエンド部9のマニホールドダンパー91及びノズル5内のインクが効率よく温められる。
【0061】
(インクの温度調整)
次に、図10を用いて、実施形態に係る加熱板7を用いたインクの温度調整の一例を説明する。図10は、実施形態に係るインクの温度調整処理の一例を示す図である。
【0062】
制御部1は、加熱板7への電力の供給と停止を制御し、加熱板7による加熱を制御し、インクの温度を調整する。上述のように、プリンター101は、複数のインクジェットヘッド100を備える。それぞれのインクジェットヘッド100は、ヘッド基板50、バックエンド部6、保護板80、粘着シート81、加熱板7、伝熱シート8、及び、フロントエンド部9を備える。制御部1は、それぞれの加熱板7について、発熱体70への電力供給と供給停止を制御し、それぞれのインクジェットヘッド100の温度を調整する。制御部1は、それぞれのインクジェットヘッド100について、図10に示す処理を行う。
【0063】
図10のスタートは、インクの温度調整を開始する時点である。例えば、図10のスタートは、プリンター101の主電源が投入され、プリンター101の起動が完了した時点でもよい。また、操作パネル3が加熱制御の開始を受け付けた時点でもよい。また、プリンター101の省電力モードが解除された時点でもよい。また、印刷ジョブのデータを通信回路部12が受信した時点でもよい。
【0064】
また、図10のフローチャートに示す処理の終了時点は予め定められる。終了時点は、プリンター101の主電源が切られた時点でもよい。また、操作パネル3が加熱制御の終了を受け付けた時点でもよい。また、省電力モードの開始条件の充足により、プリンター101の省電力モードを開始する時点でもよい。また、印刷ジョブが完了した時点でもよい。
【0065】
まず、温度検知素子71の出力に基づき、制御部1はフロントエンド部9の温度を認識する(ステップ♯1)。そして、制御部1は、認識したフロントエンド部9の温度が第1閾値温度以下か否かを確認する(ステップ♯2)。第1閾値温度は予め定められる。第1閾値温度は、保持温度範囲内の何れかの温度である。保持温度範囲は、適切な吐出のために保持すべきインクの温度範囲である。インクの材料に基づき、保持温度範囲が予め定められる。例えば、第1閾値温度は、保持温度範囲の最低温度としてもよい。例えば、保持温度範囲が、20~35°Cのとき、第1閾値温度は、20°Cとしてもよい。
【0066】
認識した温度が第1閾値温度を超えているとき(ステップ♯2のNo)、制御部1は、ステップ♯1を実行する(ステップ♯1に戻る)。具体的に、制御部1は、ステップ♯2をNoと判定してから所定の待ち時間が経過したとき、ステップ♯1を実行する。制御部1は、加熱板7に電力を供給しないで、温度変化を監視する。
【0067】
認識した温度が第1閾値温度以下のとき(ステップ♯2のYes)、制御部1は、加熱板7に電力を供給する(ステップ♯3)。言い換えると、制御部1は、加熱板7に電流を流し始めて、フロントエンド部9及びバックエンド部6を加熱板7に加熱させる。加熱の開始後、制御部1は、温度検知素子71の出力に基づき、フロントエンド部9の温度を周期的に認識する(ステップ♯4)。例えば、制御部1は、1秒~数秒に1回、温度を認識する。
【0068】
認識したフロントエンド部9の温度が、第2閾値温度を超えたとき、制御部1は、加熱板7への電力供給を停止する(ステップ♯5)。加熱を続けると、フロントエンド部9、バックエンド部6、及び、インク温度は上昇してゆく。やがて、制御部1が認識する温度が第2閾値温度を超える。第2閾値温度は予め定められる。第2閾値温度は第1閾値温度よりも高い。第2閾値温度は、保持温度範囲内の何れかの温度である。例えば、第2閾値温度は、保持温度範囲の最高温度としてもよい。ステップ♯5の後、制御部1は、ステップ♯1を実行する(ステップ♯1に戻る)。これらの処理を行うことにより、ノズル5の内部の温度は適切な温度で保持される。
【0069】
このようにして、実施形態に係るインクジェットヘッド100及び画像形成装置(プリンター101)は、バックエンド部6、フロントエンド部9、及び、加熱板7を含む。バックエンド部6はインク流路62を備える。バックエンド部6はインクが送り込まれ、送り込まれたインクを送り出す。フロントエンド部9は、バックエンド部6からインクの供給を受ける。フロントエンド部9はノズル5を備える。ノズル5は主走査方向に複数並べられ、インクを吐出する。加熱板7は、通電により発熱する発熱体70を備える。加熱板7はバックエンド部6とフロントエンド部9との間に配置される。加熱板7は平面の他方側から熱を伝えてフロントエンド部9を温める。加熱板7は平面の一方側から熱を伝えてバックエンド部6を温める。
【0070】
加熱板7の他方側(下側)がフロントエンド部9を温める。フロントエンド部9を面的に温めることにより、加熱板7はフロントエンド部9の全体を温める。これにより、フロントエンド部9が含むインク全体を温めることができる。各ノズル5に既に温めたインクを送るので、各ノズル5のインク温度を均一にすることができる。つまり、各ノズル5において、吐出直前のインクの温度差をできるだけ減らすことができる。
【0071】
また、加熱板7は、バックエンド部6をも温める。バックエンド部6はフロントエンド部9にインクを供給する部分である。フロントエンド部9は、バックエンド部6にて温められたインクの供給を受ける。フロントエンド部9に送る前に、バックエンド部6でインクを温めることができる(予熱)。低温のインクがフロントエンド部9に補給されない。各ノズル5の吐出頻度が異なっても、各ノズル5でのインクの温度差が大きくならない。
【0072】
さらに、1つの加熱板7がフロントエンド部9とバックエンド部6の両方を温めることができる。フロントエンド部9とバックエンド部6のそれぞれにヒーターを設ける場合に比べ、製造コストを抑えることができる。また、ヒーターの設置に要するスペースも少なくてよい。
【0073】
加熱板7は、複数の発熱体70が配置された1枚の基板である。1枚の加熱板7が全てのノズル5を温める。1枚の加熱板7だけで、全てのノズル5(フロントエンド部9の全体)を温めることができる。つまり、構成が簡易である。従来のように、微細かつ多数のヒーターを設ける必要が無い。従って、インクジェットヘッド100の構造を簡素化して製造コストを抑えることができる。
【0074】
複数の発熱体70は、加熱板7の他方側の平面に配置され、フロントエンド部9に向けられる。加熱板7の一方側の平面がバックエンド部6に向けられる。発熱体70を加熱板7の他方側(下側)の平面に並べて配置することができる。発熱体70をフロントエンド部9に向けることにより、フロントエンド部9を効率よく温めることができる。また、加熱板7の一方側(上側)の熱によって、バックエンド部6も温めることができる。
【0075】
インクジェットヘッド100は伝熱シート8を備える。伝熱シート8は加熱板7とフロントエンド部9の間に配置される。複数の発熱体70は、加熱板7の他方側の平面に配置される。加熱板7の他方側の平面は、フロントエンド部9に向けられる。伝熱シート8の一方側の面は、複数の発熱体70と接する。伝熱シート8の他方側の面は、フロントエンド部9と接する。伝熱シート8は、各発熱体70から生じた熱を伝える。伝熱シート8は、熱を加熱板7全体にゆきわたらせる。これにより、加熱板7の表面の温度が均一になる。つまり、加熱板7の温度分布がなだらかになる。伝熱シート8を介して加熱板7と接するフロントエンド部9の全体を均一に温めることができる。加熱の偏りがない。
【0076】
伝熱シート8は、発熱体70と発熱体70の間に入り込む。伝熱シート8は、発熱体70と発熱体70の間の隙間の熱をも吸収する。伝熱シート8は発熱体70から生じた熱を効率よく吸収する。伝熱シート8は、加熱板7の平面にわたって熱を伝え、広げる。加熱板7は、全体的にムラなく温度が上がる。効率よくフロントエンド部9及びバックエンド部6を温めることができる。
【0077】
複数の発熱体70は、主走査方向に並べて配置される。第1発熱体70aは、第2発熱体70bよりも発熱量が大きい。第1発熱体70aは、主走査方向において、最も外側の発熱体70である。第2発熱体70bは、主走査方向において、第1発熱体70aよりも内側の発熱体70である。加熱板7の平面を垂直な方向からみて(Z軸方向からみて)、加熱板7の外周部分では、熱が逃げやすい。加熱板7の内側部分は、外周部分に比べて熱が逃げにくい。加熱板7には、熱が失われやすい部分がある。そして、加熱板7の外周部分の発熱体70(第1発熱体70a)の発熱量は、内側の発熱体70(第2発熱体70b)よりも大きい。熱が逃げやすい部分に配置された発熱体70の発熱量を大きくすることができる。その結果、極端に温度が低い部分がなくなり、加熱板7の平面の温度差が小さくなる。これにより、フロントエンド部9の全体を均等に温めることができる。全ノズル5のインクをもれなく温めることができる。また、バックエンド部6の全体を温めることができる。
【0078】
複数の発熱体70は、主走査方向に並べて配置され、副走査方向にも並べて配置される。加熱板7の全体、フロントエンド部9の全体、及び、バックエンド部6の全体が均一に温められるように、発熱体70を配置することができる。
【0079】
加熱板7は、温度検知素子71を備える。温度検知素子71はフロントエンド部9の温度に応じた出力値を出力する。温度検知素子71を加熱板7に設けることができる。フロントエンド部9に極めて近い位置に温度検知素子71を設けることができる。フロントエンド部9の温度を測ることができる。しかも、温度検知素子71と加熱板7とを別体で設ける場合に比べ、製造コストを抑えることができる。また、製造工程が簡素化される。
【0080】
複数の発熱体70及び温度検知素子71は、加熱板7の他方側の平面に配置される。加熱板7の他方側の平面には、発熱体70が設けられない隔離領域F0が設けられる。隔離領域F0に温度検知素子71が配置される。加熱板7の他方側の平面(下側)に特別な領域を設けることができる。温度検知素子71を、発熱体70の熱の影響を受けにくい位置に、配置することができる。フロントエンド部9の温度を正確に測ることができる。
【0081】
温度検知素子71は、隔離領域F0の中心に配置されてもよい(中心でなくてもよい)。発熱体70からできるだけ離れた位置に温度検知素子71を設けることができる。加熱板7の他方側(下側)の平面のうち、発熱体70の熱の影響を最も受けない位置に温度検知素子71を設けることができる。フロントエンド部9の正確な温度を把握することができる。
【0082】
主走査方向での温度検知素子71と発熱体70の間隔は、第1間隔W1及び第2間隔W2よりも広い。第1間隔W1は、主走査方向での隣り合う発熱体70と発熱体70の間隔である。第2間隔W2は、副走査方向での隣り合う発熱体70と発熱体70の間隔である。発熱体70と温度検知素子71との距離を離すことができる。
【0083】
インクジェットヘッド100及びプリンター101は、温度検知素子71の出力に基づき、フロントエンド部9の温度を認識する制御部1を有する。温度検知素子71の出力に基づき、フロントエンド部9の温度を認識することができる。
【0084】
温度検知素子71の出力に基づき認識したフロントエンド部9の温度が予め定められた第1閾値温度以下のとき、制御部1は、加熱板7に電力を供給する。温度検知素子71の出力に基づき認識したフロントエンド部9の温度が予め定められた第2閾値温度を超えたとき、制御部1は、加熱板7への電力供給を停止する。第1閾値温度は第2閾値温度よりも低い。温度検知素子71の出力に基づき、自動的に加熱板7の通電(電力供給)をON/OFFすることができる。第1閾値温度を超え、かつ、第2閾値温度以下となるように、加熱板7への電力供給を制御することができる。その結果、適切な温度範囲内に収まるように、インクの温度を維持することができる。
【0085】
発熱体70はチップ抵抗でもよい。発熱体70にチップ抵抗を用いるので、加熱板7を安価に製造することができる。加熱板7の厚さ(Z軸方向の幅)が抑えられる。
【0086】
フロントエンド部9はマニホールドダンパー91を含む。マニホールドダンパー91は、インクを貯め、それぞれのノズル5と接続される。ノズル5に供給するインクをマニホールドダンパー91に貯めることができる。加熱板7によって、マニホールドダンパー91のインクを温めることができる。マニホールドダンパー91から各ノズル5に温められたインクを送り込むことができる。吐出前のインク(それぞれのノズル5内のインク)の温度を均一にすることができる。
【0087】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0088】
[第2実施形態]
以下、図11及び図12を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッド100(本発明の記録ヘッドの一例)について説明する。ここで、図11は、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100の模式図の一例を示す図である。また、図12は、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100の加熱板7の一例を示す図である。図12は、加熱板7を-Z方向(下方向)から見た図である。
【0089】
第2実施形態に係るインクジェットヘッド100は、加熱板7にスリット72(図12参照)が設けられている点、及び伝熱シート8に替えて第1シート8a(図11参照)と第2シート8b(図11参照)とが設けられている点を除けば、第1実施形態と共通の構成を備える。
【0090】
なお、第2実施形態において、温度検知素子71(本発明の温度センサーの一例)は、フロントエンド部9の温度の検出に用いられる。
【0091】
また、第2実施形態において、発熱体70及び温度検知素子71は、加熱板7におけるフロントエンド部9との対向面に設けられる。
【0092】
また、第2実施形態において、マニホールドダンパー91(本発明のインク収容部の一例)(図11参照)は、主走査方向(X軸方向)に沿って形成され、主走査方向の端部でバックエンド部6からインクの供給を受け、ノズル5各々に供給されるインクを収容する。
【0093】
また、第2実施形態において、加熱板7の前記対向面は、隔離領域F0(本発明の第1対向領域の一例)と、第1配置領域F1(本発明の第2対向領域の一例)と、第2配置領域F2(本発明の第2対向領域の一例)とを含む。隔離領域F0は、マニホールドダンパー91における、バックエンド部6からインクが供給される供給位置P1(図11参照)から最も離間した特定位置P2(図11参照)と対向する。図11に示されるように、供給位置P1は、マニホールドダンパー91における主走査方向の両端の位置である。また、特定位置P2は、マニホールドダンパー91における主走査方向の中央の位置である。第1配置領域F1は、マニホールドダンパー91と対向し、隔離領域F0とは異なる領域である。第2配置領域F2は、マニホールドダンパー91と対向し、隔離領域F0とは異なる領域である。
【0094】
また、第2実施形態において、温度検知素子71は、隔離領域F0に設けられる。具体的に、温度検知素子71は、特定位置P2に対向して設けられる。また、発熱体70は、第1配置領域F1及び第2配置領域F2に設けられる。
【0095】
また、第2実施形態において、加熱板7は、第1配置領域F1及び第2配置領域F2各々において主走査方向に沿って並ぶ複数の発熱体70を有する。第1配置領域F1又は第2配置領域F2に配置される複数の発熱体70は、発熱量が最も多い第1特定発熱体、及び発熱量が最も少ない第2特定発熱体を含む。前記第1特定発熱体は、隔離領域F0から最も遠い位置に配置される。具体的に、前記第1特定発熱体は、第1発熱体70aである。前記第2特定発熱体は、隔離領域F0から最も近い位置に配置される。具体的に、前記第2特定発熱体は、複数の第2発熱体70bのうち、隔離領域F0から最も近い位置に配置される発熱体70である。例えば、前記第1特定発熱体は、前記第2特定発熱体よりも、前記対向面に沿ったサイズ(面積)が大きい発熱体70である。
【0096】
図12に示されるように、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100の加熱板7は、スリット72(本発明の貫通孔の一例)を有する。
【0097】
スリット72は、加熱板7における発熱体70と温度検知素子71との間に形成される貫通孔である。
【0098】
加熱板7における発熱体70と温度検知素子71との間に貫通孔が設けられることにより、発熱体70で発生する熱が加熱板7の基板を経由して温度検知素子71に伝達することが抑制される。従って、発熱体70及び温度検知素子71を同一の基板に設けた場合であっても、温度検知素子71の検出精度が低下することを抑制可能である。
【0099】
例えば、図12に示されるように、スリット72は、隔離領域F0において、温度検知素子71の周囲を覆うように形成される。図12には、温度検知素子71の周囲を覆うように形成された8個のスリット72が示されている。
【0100】
なお、スリット72は、主走査方向(X軸方向)における温度検知素子71の両側において、副走査方向(Y軸方向)に沿って直線状に形成されてもよい。この場合、スリット72における温度検知素子71からの距離が遠い側の断面部に、発熱体70から伝達される熱をスリット72内の空間に放熱する放熱部が設けられてもよい。例えば、前記放熱部として銅などの金属を用いることが可能である。
【0101】
図11に示されるように、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100は、第1シート8a(本発明の第1伝熱部材の一例)、及び第2シート8b(本発明の第2伝熱部材の一例)を有する。
【0102】
第1シート8aは、隔離領域F0とフロントエンド部9との間に設けられる、熱伝導性を有する部材である。第1シート8aは、フロントエンド部9の熱を温度検知素子71に伝達する。
【0103】
第2シート8bは、第1配置領域F1とフロントエンド部9との間、及び第2配置領域F2とフロントエンド部9との間に設けられる、熱伝導性を有する部材である。第2シート8bは、発熱体70で発生する熱をフロントエンド部9に伝達する。
【0104】
第2シート8bは、第1シート8aから離間して設けられる。つまり、第2シート8bは、第1シート8aと接触しない。これにより、発熱体70で発生する熱が第2シート8b及び第1シート8aを経由して温度検知素子71に伝達することが回避される。従って、加熱板7とフロントエンド部9との間の熱伝導性を向上させるとともに、発熱体70で発生する熱が温度検知素子71に伝達することを抑制可能である。
【0105】
例えば、第1シート8aは、副走査方向(Y軸方向)に長尺な矩形状に形成される。また、第2シート8bは、矩形状に形成される。第2シート8bは、主走査方向(X軸方向)における第1シート8aの両側に設けられる。第1シート8aと第2シート8bとの間には、副走査方向(Y軸方向)に沿って伸びる間隙が形成される。
【0106】
例えば、第1シート8a及び第2シート8bは、伝熱シート8が裁断されたものである。つまり、第1シート8a及び第2シート8bは、弾性を有するシートである。
【0107】
なお、第1シート8aは、第2シート8bとは異なる素材によって形成されてもよい。例えば、第1シート8aは、弾性を有しないシートであってもよい。
【0108】
このように、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100では、第1実施形態と同様に、バックエンド部6とフロントエンド部9との間に配置された加熱板7が、バックエンド部6及びフロントエンド部9の両方を温める。つまり、加熱板7は、ノズル5を備えるフロントエンド部9を温めるとともに、フロントエンド部9にインクを供給するバックエンド部6を温める。これにより、ノズル5に補充されるインクが事前に温められる。従って、ノズル5に補充されるインクによって当該ノズル5内のインクの温度が低下し、ノズル5各々のインクの吐出性能が不均一になることを抑制可能である。また、一又は複数のノズル5ごとに温度制御を実行する構成と比較して、一又は複数のノズル5ごとにヒーター及び温度センサーのような温度制御のための構成を設ける必要がないため、インクジェットヘッド100の構成が複雑化することを回避可能である。
【0109】
また、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100では、加熱板7における発熱体70と温度検知素子71との間にスリット72が設けられている。これにより、発熱体70及び温度検知素子71を同一の基板に設けた場合であっても、温度検知素子71の検出精度が低下することを抑制可能である。
【0110】
また、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100では、発熱体70及び温度検知素子71が、加熱板7における前記対向面に設けられる。これにより、発熱体70の熱を効率よくフロントエンド部9に伝達することが可能であるとともに、温度検知素子71によるフロントエンド部9の温度の検知精度を向上させることが可能である。なお、発熱体70及び温度検知素子71のいずれか一方又は両方は、加熱板7における前記対向面の裏側の面に設けられてもよい。
【0111】
また、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100では、温度検知素子71が、マニホールドダンパー91においてインクの流動量が最も少ない特定位置P2(図11参照)と対向する隔離領域F0に設けられる。また、発熱体70が、マニホールドダンパー91と対向し、隔離領域F0とは異なる第1配置領域F1及び第2配置領域F2に設けられる。つまり、加熱板7では、マニホールドダンパー91において最もインクが冷えにくい特定位置P2との対向部に温度検知素子71が設けられ、マニホールドダンパー91において特定位置P2よりもインクが冷えやすい位置との対向部に発熱体70が設けられる。これにより、加熱板7の駆動によってマニホールドダンパー91内のインクの温度差を低減することが可能になるとともに、発熱体70から離れた位置に温度検知素子71を配置することが可能である。なお、温度検知素子71が隔離領域F0の外側に設けられ、発熱体70が隔離領域F0の内側に設けられてもよい。
【0112】
また、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100では、加熱板7の第1配置領域F1及び第2配置領域F2各々に、主走査方向に沿って並ぶ複数の発熱体70が設けられる。また、第1配置領域F1及び第2配置領域F2各々に設けられる複数の発熱体70は、発熱量が最も多い前記第1特定発熱体、及び発熱量が最も少ない前記第2特定発熱体を含む。また、前記第1特定発熱体は、隔離領域F0から最も遠い位置に配置され、前記第2特定発熱体は、隔離領域F0から最も近い位置に配置される。つまり、加熱板7では、マニホールドダンパー91におけるインクが冷えにくい位置との対向部に前記第2特定発熱体が設けられ、マニホールドダンパー91におけるインクが冷えやすい位置との対向部に前記第1特定発熱体が設けられる。これにより、加熱板7の駆動によってマニホールドダンパー91内のインクの温度差をより低減することが可能である。なお、第1配置領域F1及び第2配置領域F2各々に設けられる複数の発熱体70は、隔離領域F0に近づくほど、発熱量が少なくなってもよい。また、第1配置領域F1及び第2配置領域F2各々に設けられる複数の発熱体70は、隔離領域F0に近づくほど、配置間隔が大きくなってもよい。また、なお、第1配置領域F1及び第2配置領域F2各々に設けられる複数の発熱体70は、発熱量が同じであってもよい。
【0113】
また、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100には、隔離領域F0に対応する第1シート8a、及び第1配置領域F1及び第2配置領域F2各々に対応し且つ第1シート8aと接触しない第2シート8bが設けられる。これにより、加熱板7とフロントエンド部9との間の熱伝導性を向上させるとともに、発熱体70で発生する熱が温度検知素子71に伝達することを抑制可能である。なお、第1シート8a、及び第2シート8bに替えて、伝熱シート8が用いられてもよい。
【0114】
また、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100において、第2シート8bは、弾性を有する部材である。これにより、発熱体70の側部に第2シート8bを接触させることが可能となり、当該側部から発する熱のフロントエンド部9への伝達効率を向上させることが可能である。
【0115】
[第3実施形態]
以下、図13及び図14を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るインクジェットヘッド100について説明する。ここで、図13は、第3実施形態に係るインクジェットヘッド100の加熱板7の一例を示す図である。図13は、加熱板7を-Z方向(下方向)から見た図である。また、図14は、第3実施形態に係るインクジェットヘッド100の加熱板7の一例を示す図である。図14は、加熱板7を+Z方向(上方向)から見た図である。
【0116】
第3実施形態に係るインクジェットヘッド100は、加熱板7に第1パターン73(図13参照)、第2パターン74(図14参照)、及び接続部75(図13及び図14参照)が設けられている点、及び加熱板7に設けられる発熱体70の数が少ない点を除けば、第1実施形態と共通の構成を備える。なお、発熱体70の数は、第1実施形態と同じ数であってよい。
【0117】
第1パターン73は、加熱板7における発熱体70の実装面に形成され、発熱体70に電気的に接続される。第1パターン73は、導電性を有し、且つ熱伝導性の高い部材により形成される。具体的に、第1パターン73は、銅などの金属によって形成される。
【0118】
例えば、図13に示されるように、加熱板7の前記実装面には、14個の第1パターン73が形成される。第1パターン73各々は、略矩形状に形成される。前記実装面では、2つの第1パターン73を跨ぐように、発熱体70が配置される。14個の第1パターン73のうちの2つには、第1接点部73a及び第2接点部73bが設けられる。第1接点部73aは、スイッチ100s(図9参照)を介して電源装置100p(図9参照)に接続される。第2接点部73bは、グランドに接続される。14個の第1パターン73は、複数の発熱体70を含む抵抗回路の通電路を構成する配線パターンである。
【0119】
第2パターン74は、加熱板7における前記実装面の裏側の面に形成される。第2パターン74は、導電性を有し、且つ熱伝導性の高い部材により形成される。具体的に、第2パターン74は、銅などの金属によって形成される。
【0120】
例えば、図14に示されるように、加熱板7における前記実装面の裏側の面には、13個の第2パターン74が形成される。13個の第2パターン74のうちの1つである第2パターン74aは、主走査方向(X軸方向)に離間して配置された二つの矩形状の領域と、それら2つの領域を接続する主走査方向(X軸方向)に長尺な矩形状の領域とにより構成される。第2パターン74aは、複数の発熱体70を含む抵抗回路の通電路を構成する。13個の第2パターン74のうち、第2パターン74aを除く12個の第2パターン74bは、略矩形状に形成される。第2パターン74bは、複数の発熱体70を含む抵抗回路の通電路を構成しない。
【0121】
接続部75は、加熱板7を貫通して第1パターン73及び第2パターン74を接続する。接続部75は、導電性を有し、且つ熱伝導性の高い部材により形成される。具体的に、接続部75は、銅などの金属によって形成される。例えば、接続部75は、第1パターン73及び第2パターン74を電気的に接続するスルーホールである。
【0122】
例えば、図13に示されるように、第1パターン73各々には、2つ又は4つの接続部75が設けられる。また、図14に示されるように、第2パターン74aには、4つの接続部75が設けられる。第2パターン74aに設けられる4つの接続部75は、複数の発熱体70を含む抵抗回路の通電路を構成する。また、図14に示されるように、第2パターン74b各々には、2つ又は4つの接続部75が設けられる。
【0123】
このように、第3実施形態に係るインクジェットヘッド100では、加熱板7における発熱体70の前記実装面に金属製の第1パターン73が形成され、前記実装面の裏側の面に金属製の第2パターン74が形成される。そして、第1パターン73及び第2パターン74が金属製の接続部75によって接続される。これにより、発熱体70で発生する熱が第1パターン73、及び接続部75を介して第2パターン74に伝達される。従って、加熱板7における前記実装面の裏側の面からの発熱量を多くすることが可能である。
【0124】
なお、第1パターン73、第2パターン74、及び接続部75は、第2実施形態に係るインクジェットヘッド100の加熱板7に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明はインクを吐出するインクジェットヘッドに利用可能である。
【符号の説明】
【0126】
100 インクジェットヘッド
1 制御部
5 ノズル
6 バックエンド部
62 インク流路
7 加熱板
70 発熱体
70a 第1発熱体
70b 第2発熱体
71 温度検知素子
72 スリット
73 第1パターン
74 第2パターン
75 接続部
8 伝熱シート
8a 第1シート
8b 第2シート
9 フロントエンド部
91 マニホールドダンパー
F0 隔離領域
W1 第1間隔
W2 第2間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14