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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188455
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】パレット搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20221214BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20221214BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G05D1/02 L
G01B11/24 A
B65G1/00 501C
G05D1/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096493
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】安田 克己
【テーマコード(参考)】
2F065
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA12
2F065AA53
2F065BB15
2F065CC07
2F065CC14
2F065DD03
2F065DD08
2F065FF05
2F065FF11
2F065FF67
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065JJ03
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU05
3F022LL07
3F022NN12
3F022QQ13
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH01
5H301JJ06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パレットの位置の検出ができなくなる場面が生じることを低減したパレット搬送システムを提供する。
【解決手段】パレット搬送システムは、検出光が反射した地点として扱われる反射地点に関する複数の検出データを取得するデータ収集工程と、複数の検出データから、少なくとも反射地点が一群に集合した点群が並ぶ方向が変わる位置にあるコーナ点を検出するコーナ点検出工程、点群をコーナ点で区切られた複数のグループに分けるグループ分け工程、及び、概略位置情報に基づいてグループの点群が延びる方向に関して、パレットの幅方向に並ぶ横グループ322、又は、前記幅方向及び上下方向に直交する奥行方向に並ぶ縦グループ321に分類する分類工程の各々を含む方向分類工程と、縦グループ及び横グループの少なくとも一つに属する複数の検出データを用いて、一対の脚部12の中心位置を導くパレット位置導出工程と、を実施する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台及び前記荷台を幅方向に間隔を空けて下方から支持する一対の脚部を有するパレットの前記荷台の下方に配置された状態で前記パレットを地面から浮かせつつ移動させる搬送車によるパレット搬送システムにおいて、
前記搬送車は、前記一対の脚部に検出光を照射する照射部と、前記検出光が前記一対の脚部に反射された反射光を受光する受光部と、を有し、
前記搬送車に対する前記パレットのおおよその位置に関する概略位置情報を把握する概略位置把握工程と、
少なくとも前記一対の脚部に前記照射部から前記検出光を照射して前記受光部で前記反射光を受光することで、前記検出光が反射した地点として扱われる反射地点に関する複数の検出データを取得するデータ収集工程と、
前記複数の検出データから、少なくとも前記反射地点が一群に集合した点群が並ぶ方向が変わる位置にある前記反射地点であるコーナ点を検出するコーナ点検出工程、前記点群を前記コーナ点で区切られた複数のグループに分けるグループ分け工程、及び、前記概略位置情報に基づいて前記グループの点群が延びる方向に関して、前記パレットの幅方向に並ぶ横グループ、又は、前記幅方向及び上下方向に直交する奥行方向に並ぶ縦グループに分類する分類工程の各々を含む方向分類工程と、
前記縦グループ及び前記横グループの少なくとも一つに属する前記複数の検出データを用いて、前記一対の脚部の中心位置を導くパレット位置導出工程と、
を実施する、パレット搬送システム。
【請求項2】
前記方向分類工程は、前記各グループの点群が並ぶ方向が、前記照射部が前記検出光を照射する原点から前記各グループに向かう方向と略同じ場合に、該当する前記グループを前記分類工程における分類対象から除外するグループ除外工程を含む請求項1に記載のパレット搬送システム。
【請求項3】
前記グループ除外工程において、前記原点から前記各グループに向かう方向として、前記原点から前記各グループの点群が並ぶ方向の両端部に位置する前記コーナ点同士の中点に向かう方向が用いられる請求項2に記載のパレット搬送システム。
【請求項4】
前記方向分類工程は、前記コーナ点検出工程によって検出された一のコーナ点が、隣接する2つの前記反射地点のうち近い方の前記反射地点が他のコーナ点として検出されていた場合に、前記一のコーナ点を異常点として前記グループ分け工程における対象から除外する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパレット搬送システム。
【請求項5】
前記概略位置情報は、前記パレットの向きに関する情報を含み、
前記分類工程は、前記パレットの向きに関する情報を基に、前記横グループ又は前記縦グループのいずれかに分類する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパレット搬送システム。
【請求項6】
前記パレットは、前記一対の脚部を複数備え、
複数の前記一対の脚部は、前記パレットの前記奥行方向に沿って並んで設けられ、
前記パレット位置導出工程は、
前記縦グループ及び前記横グループの少なくとも一方について、一のグループ及び前記一のグループが並ぶ方向の略延長線上に位置する他のグループを統合した統合グループを導出し、
前記統合グループに属する前記複数の検出データを用いて、前記一対の脚部の中心位置を導く請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパレット搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役用パレットを無人運転可能な搬送車により搬送する際に用いられる、パレット搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば製鉄所等の製造施設において、荷役用のパレットの下部空間に搬送車を進入させ、搬送車がパレットを持ち上げることで、パレットごと荷物を搬送する方法がある。この方法の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
無人運転する搬送車をパレットの下部空間に誘導する方法に関し、特許文献1には、搬送車の車体に対するパレットの相対位置と角度を検出するために、車体に取り付けたセンサからレーザ光を、パレットが有する両脚における柱部に照射することで、測定点の集合したデータ群であり、かつ、対向した関係にあるものを得ることにより柱部の内法位置を検出し、これをもとにパレットの両脚の方向と両脚の中心線とを演算している。なお、柱部は形鋼(H形鋼など)を用いたラーメン構造またはトラス構造からなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4427360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記方法では、搬送車のパレットに対する位置関係により、パレットの左右いずれかの柱部にレーザ光が当たらなかったり、レーザ光の反射光を検出できなかったりすることがあった。この場合、パレットの位置の検出ができない。
【0006】
そこで、本発明は、パレットの位置の検出ができなくなる場面が生じることを低減したパレット搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパレット搬送システムは、荷台及び前記荷台を幅方向に間隔を空けて下方から支持する一対の脚部を有するパレットの前記荷台の下方に配置された状態で前記パレットを地面から浮かせつつ移動させる搬送車によるパレット搬送システムにおいて、前記搬送車は、前記一対の脚部に検出光を照射する照射部と、前記検出光が前記一対の脚部に反射された反射光を受光する受光部と、を有し、前記搬送車に対する前記パレットのおおよその位置に関する概略位置情報を把握する概略位置把握工程と、少なくとも前記一対の脚部に前記照射部から前記検出光を照射して前記受光部で前記反射光を受光することで、前記検出光が反射した地点として扱われる反射地点に関する複数の検出データを取得するデータ収集工程と、前記複数の検出データから、少なくとも前記反射地点が一群に集合した点群が並ぶ方向が変わる位置にある前記反射地点であるコーナ点を検出するコーナ点検出工程、前記点群を前記コーナ点で区切られた複数のグループに分けるグループ分け工程、及び、前記概略位置情報に基づいて前記グループの点群が延びる方向に関して、前記パレットの幅方向に並ぶ横グループ、又は、前記幅方向及び上下方向に直交する奥行方向に並ぶ縦グループに分類する分類工程の各々を含む方向分類工程と、前記縦グループ及び前記横グループの少なくとも一つに属する前記複数の検出データを用いて、前記一対の脚部の中心位置を導くパレット位置導出工程と、を実施する。
【0008】
かかる構成によれば、複数の検出データをコーナ点で区切ってグループ分けし、概略位置把握手段によって把握された概略位置に基づいて各グループを構成する点群が並ぶ方向によってグループを縦グループ及び横グループに分類し、縦グループ及び横グループの少なくとも一方に属する複数の検出データに基づいて一対の脚部の中心位置を導くので、パレットの脚部の一部に検出光が照射できなかったり、反射光が検出できなかったりした場合でもパレットの位置検出ができる。
【0009】
また、前記方向分類工程は、前記各グループの点群が並ぶ方向が、前記照射部が前記検出光を照射する原点から前記各グループに向かう方向と略同じ場合に、該当する前記グループを前記分類工程における分類対象から除外するグループ除外工程を含むこともできる。
【0010】
かかる構成によれば、方向分類工程は、グループの点群が並ぶ方向が、原点から前記グループに向かう方向と略同じ場合に、グループを分類対象から除外するグループ除外工程を備えるので、本来検出できない、検出光と平行に延びるグループを除外できるため、パレット位置の検出の精度が高まる。
【0011】
また、前記グループ除外工程において、前記原点から前記各グループに向かう方向として、前記原点から前記各グループの点群が並ぶ方向の両端部に位置する前記コーナ点同士の中点に向かう方向が用いられることもできる。
【0012】
かかる構成によれば、原点から各グループに向かう方向を、検出光を照射する原点からコーナ点同士の中点に向かう方向とみなすので、除外されるべきグループを構成するコーナ点以外の検出データが少ない場合であっても、誤って検出されたグループを除外できる。
【0013】
また、前記方向分類工程は、前記コーナ点検出工程によって検出された一のコーナ点が、隣接する2つの前記反射地点のうち近い方の前記反射地点が他のコーナ点として検出されていた場合に、前記一のコーナ点を異常点として前記グループ分け工程における対象から除外することもできる。
【0014】
かかる構成によれば、検出されたコーナ点のうち、コーナ点に隣接する2つの反射地点のうち近い方の反射地点が他のコーナ点である場合は、他のコーナ点から同じ方向に並んだ反射地点が存在しないので、空気中の塵による反射などによって引き起こされた誤った検出データである可能性が高い。そのため、この検出データを除外することで、パレット位置の検出精度が高まる。
【0015】
また、前記概略位置情報は、前記パレットの向きに関する情報を含み、前記分類工程は、前記パレットの向きに関する情報を基に、前記横グループ又は前記縦グループのいずれかに分類することもできる。
【0016】
かかる構成によれば、概略位置把握手段によって把握されたパレットの向きに関する情報を基にグループの点群が並ぶ方向を縦グループ又は横グループに分類するので、グループを構成する点群が並ぶ方向が縦方向か横方向かを正確に分類しやすい。
【0017】
また、前記パレットは、前記一対の脚部を複数対備え、複数の前記一対の脚部は、前記パレットの前記奥行方向に沿って並んで設けられ、前記パレット位置導出手段は、前記縦グループ及び前記横グループの少なくとも一方について、一のグループ及び前記一のグループが並ぶ方向の略延長線上に位置する他のグループを統合した統合グループを導出し、前記統合グループに属する前記複数の検出データを用いて、前記一対の脚部の中心位置を導くこともできる。
【0018】
かかる構成によれば、複数のグループを統合した統合グループの検出データに基づいてパレットの位置を導出するので、一部のグループの位置に誤差があったとしても複数のグループに基づいてパレットの位置を導出できるため、パレットの位置を正確に導出しやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パレットの位置の検出ができなくなる場面が生じることを低減したパレット搬送システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るパレット搬送システムにおいて用いられるパレットの一例を示す左側面図である。
図2】前記パレットの一例を搬送車(二点鎖線表示)と共に示す正面図である。
図3】同パレット搬送システムにおけるデータ収集工程を説明するための概要図である。
図4】同パレット搬送システムにおける検出データの概略を示す概要図である。
図5】同パレット搬送システムの流れを示すフローチャートである。
図6】同パレット搬送システムにおける方向分類工程の流れを示すフローチャートである。
図7】同パレット搬送システムにおけるグループ除外工程の概要を示す概要図である。
図8】同パレット搬送システムの方向分類工程が完了した状態を説明するための概要図である。
図9】同パレット搬送システムのパレット位置導出工程を説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のパレット搬送システムにつき、一実施形態を取り上げて、図面と共に以下説明を行う。
【0022】
本実施形態のパレット搬送システムは、パレット1が有する荷台11の下方に配置された状態でパレット1を地面から浮かせつつ移動させる搬送車2によるシステムである。なお、搬送車2の制御を遠隔的に行う場合には、搬送車2から離れた位置に制御部(図示しない)が設けられる。
【0023】
まず、本実施形態のパレット搬送システムにおける適用対象物であるパレット1について説明する。パレット1は、図1及び図2に示すように、荷物を積載できる荷台11と、この荷台11を幅方向(図2における左右方向)に間隔を開けて下方から支持する一対の脚部12と、を有する。本実施形態における一対の脚部12は、図2に示すように、左右に間隔をあけて対向している。また、本実施形態のパレット1は、一対の脚部12が荷台11の奥行方向(図1の左右方向)に離間して複数備える。一対の脚部12のそれぞれ(各脚部12)は、上下方向に延びる複数の柱部121と、複数の柱部121を下方に連結する脚底部122と、を有する。本実施形態で各柱部121は鉛直方向(パレット置き場Yの地面に対して垂直方向)に延びており、荷台11と各脚部12とでラーメン構造を構成している。ただし、これに限られず、各柱部121が斜め方向に延びていてもよい。この場合は、ラーメン構造又はトラス構造となる。図2に示すように、本実施形態のパレット1は、いわゆる「門型」形状であって、荷台11の下方に空間11Sが形成される。
【0024】
搬送車2は、一般に「キャリアパレット車」と呼ばれ、パレット1における荷台11の下方に存在する空間11Sに入り込むように配置することのできる車高に形成されている(図2に二点鎖線で示している)。そして、車高が伸長することで、パレット1を地面から浮かせつつ移動させることができる。本実施形態の搬送車2は、少なくとも前端に運転台を有していて有人走行も可能であるが、本実施形態のパレット搬送システムに用いられる場合には主に無人走行する。ただし、本実施形態のパレット搬送システムを有人走行の際に補助的に適用してもよい。また、搬送車2は、前端のみに運転台を有する場合に限らず、前端及び後端に運転台を有する構成であってもよい。即ち、搬送車2の運転台は、有人走行の際に搬送車2を運転可能な位置であれば、任意の位置に配置することができる。本実施形態の搬送車2は、パレット1が配置される位置に関する情報を含む地図データを記憶する記憶部(図示しない)と、搬送車2のパレット1に対するおおよその位置に関する概略位置情報を把握する概略位置把握手段と、を備える。概略位置把握手段として、例えば衛星測位システム(GNSS)を含む手段が挙げられるが、これに限定されず、例えば、搬送車2の制御部等に記憶された地図データと車載のカメラにより得た画像を突き合わせることでおおよその位置を把握するように構成することもできるし、地図データとパレット置き場Yにおいて搬送車2が走行した経路データ(走行経路の履歴データ)に基づいて、概略位置を把握するように構成することもできる。また、搬送車2は、向かい合う位置にあるパレット1(詳しくはパレット1における各脚部12)に向かって検出光を照射する照射部21と、照射された検出光がパレット1に反射された反射光を受光する受光部22と、を有する。照射部21及び受光部22としては、光線を発受光することで検知を行う種々のセンサ類(例えばLiDARやToFカメラなど)を用いることができる。図3に示した二点鎖線は、検出光及び反射光に相当する。本実施形態の照射部21は、搬送車2が有する車体に対して上下に伸びる軸線周りに回動(例えば方向Rに回動)して走査を行う。また、図4に示すように、受光部22が受光した反射光から、照射部21が照射した検出光が反射した地点である反射地点3に関するデータを得ることができる。なお、照射部21の走査方法は、上述の方法に限らず、種々の方法を採用できる。
【0025】
パレット1における一対の脚部12(詳しくは脚部12のうち柱部121)は、それぞれ、パレット1の手前側に搬送車2が配置された場合において、この搬送車2に対向する対向面を有する。本実施形態の各脚部12における柱部121はH形鋼から形成されている。H形鋼のウェブH2における外面である平面が対向面となる(図4参照)。なお、図4のH形鋼の向きは一例であり、例えば、図示状態を上下方向中心に90度回転させた向きでもよい。また、パレット1において、各脚部12における柱部121はH形鋼から形成されていた。しかし、これに限定されず、搬送車2に対向する対向面を有する材料であれば、種々の材料を用いることができる。このため、柱部121は例えば角型鋼管やチャンネル材、アングル材であってもよい。更には、柱部121に円形の鋼管を用い、搬送車2の照射部21から照射された検出光を受ける部分の側面に平板が取り付けられ、この平板の表面が対向面とされていてもよい。
【0026】
次に、本実施形態のパレット搬送システムにて行われる複数の工程について、図5を参照して説明する。まず、搬送車2は、概略位置把握手段により、搬送車2の現在の概略位置情報を把握し、地図データと概略位置情報とを突き合わせて移動して、パレット置き場Yに配置されたパレット1における一対の脚部12の手前側に停車する。この停車までの搬送車2の動きは、車上に設けられた制御部により自律的になされてもよいし、車外に設けられた制御部から例えば無線で指示を受けることでなされてもよい。
【0027】
本実施形態のパレット搬送システムでは、パレット1における荷台11の下方に搬送車2を進入させる前(一対の脚部12の手前側端部に搬送車2の前端がかかる前)の段階において、主に、目標エリア設定工程S1、データ収集工程S2、方向分類工程S3、パレット位置導出工程S4、及び、搬送車移動工程を順に実施する。なお、これらの工程に加えて、補助的な他工程を実施することもできる。これらの工程は、車上に設けられた制御部により自律的に実施される。または、車外に設けられた制御部で実施され、車外の制御部から、例えば無線で指示を受けることにより車上での動作がなされる。
【0028】
目標エリア設定工程S1では、概略位置把握手段によって把握させる搬送車2の現在地に関する情報及びパレット1の位置に関する情報から、パレット1における一対の脚部12が存在すると推定される目標エリアを設定する工程である。目標エリア設定工程S1では、パレット置き場Yの地図データからパレット1の位置に関する情報を取得し、パレット1の位置に関する情報と概略位置把握手段により把握された概略位置との照合により、パレット1における一対の脚部12が存在すると推定される目標エリアを各脚部12(本実施形態では、搬送車2から見た場合の左右の脚部12)について設定する。なお、前記方法のほか、搬送車2に設けられたカメラを利用して画像認識により目標エリアを設定することもできる。
【0029】
データ収集工程S2では、目標エリア設定工程S1で設定された、パレット1における一対の脚部12が存在すると推定される目標エリアに、搬送車2における照射部21から検出光を照射して、搬送車2における受光部22で反射光を受光する走査を行うことで検出光が反射した地点である反射地点3に関する複数の検出データ(検出データ群)を取得する。なお、データ収集工程S2で取得された検出データには、ノイズが混入していてもよい。このノイズは後の工程において排除される。また、データ収集工程S2における走査間隔(角度間隔)は、均等とされている。なお、図3では、模式的に検出光を2点鎖線で示しているため、2点鎖線は等間隔とはなっていない。図4図7、及び、図8では、検出データの点群(反射地点3)を模式的に円形で示している。また、実際には反射地点3は多数検出されるが、説明の都合上最低限の数を図示している。検出光としては、レーザ光が用いられている。ただし、検出光はレーザ光に限定されず、他の種類の光線であってもよい。
【0030】
図6に示すように、方向分類工程S3では、複数の検出データから、反射地点3が一群に集合した点群が並ぶ方向が変わる位置にある反射地点3であるコーナ点31を検出するコーナ点検出工程S31、点群をコーナ点31で区切られた複数のグループ32に分けるグループ分け工程S32、グループ32が延びる方向を分類する分類工程S33、及び、コーナ点処理工程S34の各工程を実行する。また、方向分類工程S3では、複数の検出データのうち、ノイズであると判断された検出データを異常点として、分類対象から除外する異常点を検出する工程を含む。本実施形態で、異常点を検出する工程は方向分類工程S3(具体的には、第一グループ除外工程S332、第二グループ除外工程S334及び異常コーナ点検出工程S341)で適宜実行される。
【0031】
コーナ点検出工程S31では、反射地点3が一群に集合した点群が並ぶ方向が変わる位置にある反射地点3であるコーナ点31を検出する。即ち、コーナ点検出工程S31では、走査において検出光が照射された順に反射地点3を連続的に繋いだ際に、角となる反射地点3をコーナ点31として検出する。このコーナ点31は、H形鋼のフランジに形成される角及びウェブとフランジが交差する角に対応する反射地点である。ただし、検出時点では、それ以外の反射地点3も含まれており、後の工程で除外される。また、一つの脚部12に対する走査のうち、走査順で最初の反射地点3及び最後の反射地点3も後に行われる処理の都合上、コーナ点31として検出する。一つの脚部12に対する走査であることは、目標エリア設定工程S1によって設定された目標エリアに基づいて判定することや、検出された反射地点3同士の距離などに基づいて判定することができる。本実施形態のコーナ点検出工程S31では、各反射地点3について、該反射地点3から所定距離内で、走査において検出光が照射された順における前の点群および後の点群を求める。次に前記前の点群及び後の点群のそれぞれについて、点群の重心位置を割り出し、当該反射地点3と各重心位置の方向とがなす角度(反射地点3を基準とした3点のなす角度)を割り出す。そして、角度が閾値以下、かつ、走査において検出光が照射された順において角度が極小となる反射地点3をコーナ点31として割り出す。また、コーナ点31の検出方法は、上記方法に限定されず、コーナ点31を検出するための種々の処理方法を採用可能である。例えば上記方法と並行して、隣接する2点の反射地点3間の距離が閾値以上離れている場合には、当該2点をいずれもコーナ点31として検出することができる。このような方法によれば、隣接する2点が別の脚部12に検出光が反射した反射地点3である場合に、当該2点を別のグループ32として検出できるようになる。なお、上記方法の閾値には、例えば、H形鋼のフランジH1の幅の長さの半分とすることができる。このように閾値を設定することで、フランジH1の端部の反射地点3とウェブH2の幅の中途部分の反射地点3とを別のグループ32として検出できるようになる。
【0032】
グループ分け工程S32では、点群をコーナ点31で区切られたグループ32に分ける工程である。グループ分け工程S32では、点群のうち、コーナ点31として分類されていない点について、コーナ点31に挟まれる点群を1つのグループ32として分類する。つまり、グループ分け工程S32の時点では、コーナ点31は、グループ32を構成せず、分類工程S33に利用される。なお、コーナ点31は、最終的にはグループ32に組み込まれることができる。具体的に、点群のうち、コーナ点31と判別されていない点群について、走査順で一のコーナ点31から次のコーナ点31までの間に含まれる点群を1つのグループ32として分類する。なお、点群の座標によってグループ分けをすることもできる。即ち、一のコーナ点31から他のコーナ点31までを結ぶ直線に近接して位置する点群を1つのグループ32として分類することもできる。本実施形態で近接して位置するとは、直線上に位置する又は直線に対して誤差の範囲内でずれて位置することを指す。なお、誤差の範囲として認める範囲は、受光部22の性能や、求められる検出精度などによって適宜設定することができる。また、コーナ点31がグループ32に含まれるようにグループ分けをすることもできる。
【0033】
点群についてグループ分けが完了した後に、分類工程S33を実行する。分類工程S33では、各グループ32の点群が延びる方向が、パレット1の幅方向に沿った方向である横向きなのか、パレット1の奥行方向に沿った方向である縦向きなのかを分類する。また、分類工程S33内で、異常点を検出する工程であるグループ除外工程が実行される。本実施形態の分類工程S33では、各グループ32に対して後述の工程を順に行うが、このような場合に限らず、各工程を全グループ32に適用してから次の工程に移るように構成することもできる。
【0034】
分類工程S33では、まず、グループ32の点群が延びる方向が判定される(ステップS331)。本実施形態では、グループ32の点群が延びる方向は、グループ32を挟む一対のコーナ点31(グループ32の点群が延びる方向の両端部に位置するコーナ点31)を結ぶ直線が延びる方向をグループ32の点群が延びる方向として判定する。なお、このような方法に限らず、他の方法により、グループ32の点群が延びる方向を判定することができる。例えば、グループ32に含まれる反射地点3が複数存在する場合には、各反射地点3との距離の合計が最も小さくなる直線が延びる方向をグループ32の点群が延びる方向と判定することもできるし、コーナ点検出工程S31と同様に、重心位置を用いて方向の判断をすることもできる。また、本実施形態で、グループ32の点群が延びる方向は、照射部21のセンサの横軸21Aに対する角度を基準として判定される、例えば、図7に示すグループ32の点群が延びる方向は、照射部21のセンサの横軸21A(図では、センサの横軸に平行な仮想線21B)に対して角度φだけずれた方向に延びていると判定される。
【0035】
グループ32の点群が延びる方向について判定されたのちに、該グループ32の点群が検出時のノイズにより検出された点群によって構成されたグループ32であるか否かの判定として、第一グループ除外工程S332が実行される。第一グループ除外工程S332では、グループ32の点群が延びる方向が、照射部21が検出光を照射する原点211からグループ32に向かう方向と略同じ場合に、該当するグループ32を構成する点群を異常点と分類し、当該グループ32を分類工程S33における分類対象から除外する。原点211から検出光が照射される方向と平行に延びる直線は、検出光の反射が起こらないので、本来検出できないため、原点211から検出光が直線と略同じ方向に延びる点群は何かしらの異常(例えば、脚部12の有する2以上の面での検出光の反射が重複することで、H形鋼では形状の関係でこの異常が起こりやすい。)により検出されたと判断できるためである。本実施形態の第一グループ除外工程S332では、グループ32を挟む一対のコーナ点31同士の中点33と原点211とを結ぶ直線を原点211からグループ32に向かう方向として用いる。具体的には、原点211から中点33に向かって延びる直線とセンサの横軸21Aとによってなされる角度φMが図7に示すグループ32の点群が延びる方向を示す角度φと略同じである場合に、グループ32の点群が延びる方向が、照射部21が検出光を照射する原点211からグループ32に向かう方向と略同じと判定する。グループ32を挟む一対のコーナ点31同士の中点33と原点211とを結ぶ直線を原点211からグループ32に向かう方向として用いることで、異常点によって構成されるグループ32に含まれる検出データ(反射地点3)が少ない場合であっても異常点によって構成されるグループ32を検出できる。なお、グループ32の点群が延びる方向と原点211からグループ32へ向かう方向が略同じ場合とは、グループ32の点群が延びる方向と原点211からグループ32へ向かう方向が全く同じ場合に限られず、誤差の範囲でずれている場合も含む。誤差の範囲として認める範囲は、受光部22の性能や、求められる検出精度などによって適宜設定することができる。
【0036】
第一グループ除外工程S332において除外されなかったグループ32について、グループ32の点群が延びる方向がパレット1の幅方向に並ぶ横グループ322、又は、前記幅方向及び上下方向に直交する奥行方向に並ぶ縦グループ321に分類する方向識別工程S333を実行する。グループ32の点群が延びる方向の分類は、概略位置情報に基づいて行われる。具体的に、制御部は、概略位置情報に含まれる搬送車2とパレット1の位置関係から、パレット1が搬送車2に対してどの程度の傾きでどちら向きに位置しているのかを予測し、パレット1の幅方向及び奥行方向を予測する。予測された幅方向に対してグループ32の点群が延びる方向の傾きが閾値以内の(略同じ方向に延びている)場合に、当該グループ32の点群が幅方向に並ぶ横グループ322であると判定する。予測された奥行方向に対してグループ32の点群が延びる方向の傾きが閾値以内の(略同じ方向に延びている)場合に、当該グループ32の点群が奥行方向に並ぶ縦グループ321であると判定する。なお、閾値の範囲は、予測の誤差として生じうると考えられる範囲に基づいて設定することができる。
【0037】
方向識別工程S333の完了後に第二グループ除外工程S334に移行する。第二グループ除外工程S334では、方向識別工程S333において縦グループ321及び横グループ322のいずれにも分類されなかったグループ32を構成する点群を異常点と判定し、当該グループ32を方向分類工程S3の対象から除外すべきと判定する工程である。方向識別工程S333において縦グループ321及び横グループ322のいずれにも分類されなかったグループ32を除外することで、ノイズを起因とする検出データを含むグループ32を除外することができる。
【0038】
以上の工程で、方向分類工程S3の主な工程は完了するが、追加的に、補助的な工程として、コーナ点処理工程S34を方向分類工程S3に含めることもできる。コーナ点処理工程は、各コーナ点31について、当該コーナ点31が異常点であるか否かを判定する異常コーナ点検出工程S341と、異常点でないと判定されたコーナ点31を、最も近いグループ32に加える工程であるグループ追加工程S342と、を含む。なお、異常コーナ点検出工程S341及びグループ追加工程S342の一方のみを方向分類工程S3に含めることもできる。
【0039】
異常コーナ点検出工程S341では、コーナ点31の最も近くに位置する反射地点3が他のコーナ点31でとして検出されていた場合に、当該コーナ点31を異常点とみなす工程である。この工程により、塵などに反射して検出された、他の点群に対して浮いている反射地点3を異常点として判定することができる。
【0040】
グループ追加工程S342では、異常点でないと判定されたコーナ点31を、最も近いグループ32に加える。本実施形態で、グループ追加工程S342では、コーナ点31に隣接して位置する2のグループ32について、各グループ32を構成する点群のうち、当該コーナ点31に最も近い反射地点3を検出し、各グループ32のコーナ点31に最も近い反射地点3が、よりコーナ点31に近い側のグループ32を、最も近いグループ32として判定する。即ち、グループ追加工程S342では、コーナ点31に最も近い反射地点3が含まれるグループ32に当該コーナ点31を追加する。この工程により、異常点を除くすべての反射地点3をいずれかのグループ32に含めることができる。
【0041】
以上の工程で方向分類工程S3は完了する。本実施形態では、コーナ点処理工程S34を実行するので、図8に示すように、方向分類工程S3が完了したのちには、検出データのうち、ノイズが除外され、かつ、ノイズ(異常点)以外のすべての反射地点3がいずれかのグループ32に属する状態となる。
【0042】
目標エリア設定工程S1で設定された各脚部12に関する検出データについて上述の処理が完了した後に、パレット位置を導出するパレット位置導出工程S4に移行する。パレット位置導出工程S4では、同じ方向に延びる複数のグループ32を統合する統合工程と、統合工程において複数のグループ32が統合された統合グループに基づいて搬送車2に対するパレット位置を演算する位置演算工程と、を実行する。また、本実施形態のパレット位置導出工程S4では、一対の脚部12の幅方向の中途部分に搬送車2(具体的には原点211)が位置している場合について説明する。即ち、概略位置把握手段で把握された搬送車2が、パレット1の一対の脚部12の幅方向の中途部分に位置している場合について説明する。
【0043】
図9に示すように、統合工程では、パレット1の奥行方向に沿って点群が延びるグループ32である縦グループ321について、複数の縦グループ321を統合した統合縦グループ41と、パレット1の幅方向に沿って点群が延びるグループ32である横グループ322について、複数の横グループ322を統合した統合横グループ42と、を割り出す。
【0044】
統合縦グループ41の割り出しについて説明する。統合縦グループ41を割り出す際には、一の脚部12について検出された一の縦グループ321を基準として、当該一の縦グループ321の点群が延びる方向の略直線上にある他の縦グループ321を一の縦グループ321と統合して、統合縦グループ41とする。一の脚部12の選定においては、例えば、最も搬送車2に近い脚部12を対象とすることができるが、これに限定されない。基準となる位置の縦グループ321の選定においては、縦グループ321の点群のうち両端間の距離が最も長い縦グループ321を基準となる縦グループ321として選定することができる。本実施形態の場合、原点211が一対の脚部12の幅方向の中途部分に位置するので、脚部12の幅方向における内側の面に反射した点群についての縦方向のグループ32が基準となる縦グループ321となる。さらに、縦グループ321のうち、両端間の距離が最も長い縦グループ321の長さが脚部12の設計上の奥行方向長さ(H形鋼のフランジH1の幅)に対して閾値以下の長さである場合には、縦グループ321の統合に失敗したものとして扱うこともできる。閾値の範囲としては、例えば、両端間の距離が最も長い縦グループ321の長さが脚部12の設計上の奥行方向長さの6割以上のように設定することができる。このように処理することで、確実に脚部12について検出された縦グループ321を基準とすることができるので、導出されるパレット1の位置について信頼性が高まる。
【0045】
基準となる縦グループ321が決まると、当該基準となる縦グループ321を構成する点群が延びる方向の略延長線上に位置する他の縦グループ321を統合した統合縦グループ41を導出する。略延長線上とは、基準となる縦グループ321の点群が延びる方向の延長線上に他の縦グループ321が位置している場合に限られず、延長線と他の縦グループ321とが誤差の範囲でずれている場合も含む。誤差の範囲として認める範囲は、受光部22の性能や、求められる検出精度などによって適宜設定することができる。また、誤差がある場合には、誤差を考慮して統合縦グループ41が定められる。
【0046】
統合横グループ42の割り出しについて説明する。統合横グループ42を割り出す際には、最も手前側に検出された一対の脚部12のうち、一の脚部12について検出された一の横グループ322を基準として、一の横グループ322の点群が延びる方向の略直線上にある他の横グループ322を一の横グループ322と統合して、統合横グループ42とする。基準となる位置の横グループ322の選定においては、横グループ322の点群のうち両端間の距離が最も長い横グループ322を基準となる横グループ322として選定することができる。また、横グループ322のうち、両端間の距離が最も長い横グループ322の長さが脚部12の設計上の幅方向長さ(H形鋼のウェブH2の幅)に対して閾値以下の長さである場合には、横グループ322の統合に失敗したものとして扱うこともできる。このように処理することで、確実に脚部12について検出された横グループ322を基準とすることができるので、導出されるパレット1の位置について信頼性が高まる。
【0047】
基準となる横グループ322が決まると、当該基準となる横グループ322を構成する点群が延びる方向の略延長線上に位置する他の横グループ322を統合した統合横グループ42を導出する。略延長線上とは、基準となる横グループ322の点群が延びる方向の延長線上に他の横グループ322が位置している場合に限られず、延長線と他の横グループ322とが誤差の範囲でずれている場合も含む。誤差の範囲として認める範囲は、受光部22の性能や、求められる検出精度などによって適宜設定することができる。また、誤差がある場合には、誤差を考慮して統合横グループ42が定められる。
【0048】
以上の手順により、統合工程は完了する。統合工程の完了後は、統合グループに基づいて搬送車2に対するパレット位置を演算する位置演算工程に移行する。なお、統合工程において、統合縦グループ41及び統合横グループ42のいずれも割り出すことができなかった場合には、位置演算工程に移行せず、パレット位置の導出に失敗したとして、エラーを出し、全工程を終了する。エラーでの工程終了後は、再度搬送車2をパレット1に接近させてから目標エリア設定工程S1、データ収集工程S2、方向分類工程S3、パレット位置導出工程S4、及び、搬送車移動工程を順に実施する。
【0049】
位置演算工程では、統合工程で、統合縦グループ41及び統合横グループ42を割り出すことができた場合と、統合縦グループ41のみ割り出すことができた場合と、統合横グループ42のみ割り出すことができた場合と、でパレット1の位置を演算する方法が異なる。以下それぞれの場合について説明する。
【0050】
統合工程で、統合縦グループ41及び統合横グループ42を割り出すことができた場合には、統合縦グループ41に基づいて、搬送車2に対するパレット1の幅方向の位置を演算し、統合横グループ42に基づいて、搬送車2に対するパレット1の奥行方向の位置を演算する。具体的に、搬送車2に対するパレット1の幅方向の位置については、統合縦グループ41及びパレット1の寸法の設計値に基づいて求められるパレット1の幅方向の中央線Cを基準に演算される。即ち、搬送車2から中央線Cまでの距離を演算することで、搬送車2に対するパレット1の幅方向の位置を演算する。パレット1の幅方向の中央線Cは、統合縦グループ41から、パレット1寸法の設計値に基づいて求められる所定位置だけ離れた個所に仮想的に設けられる統合縦グループ41と平行に延びる直線として求められる。本実施形態の中央線Cは、統合縦グループ41がH形鋼の幅方向内方のフランジH1の幅に沿って延びる直線であるので、脚部12の内方の面からパレット1の幅方向中央までの距離だけ、統合縦グループ41から幅方向内方に離れた位置に統合縦グループ41と平行に延びるように仮想的に設けられる直線が中央線Cである。搬送車2に対するパレット1の奥行方向の位置については、統合横グループ42及びパレット1の寸法の設計値に基づいて求められる。本実施形態で、統合横グループ42は、H形鋼のウェブH2の幅に沿って延びる直線であるので、搬送車2からパレット1までの奥行方向の距離は、統合横グループ42と搬送車2の距離から、パレット1の手前側の端部と脚部12のウェブH2までの距離を引いた距離として演算される。
【0051】
統合工程で、統合縦グループ41のみ割り出すことができた場合には、統合縦グループ41及びパレット1の寸法の設計値(あらかじめ制御部に記憶されている)に基づいて演算される。搬送車2に対するパレット1の幅方向の位置については、上記の統合縦グループ41及び統合横グループ42を割り出すことができた場合と同様に演算される。また、搬送車2に対するパレット1の奥行方向の位置については、統合縦グループ41の点群のうち、最も手前側の点とパレット1寸法の設計値に基づいて求められる。具体的に、搬送車2とパレット1と奥行方向の距離は、統合縦グループ41の最も手前側の反射地点3を通り、統合縦グループ41に直交するように水平方向に延びる仮想線と搬送車2との距離から、脚部12の手前側の端部とパレット1の手前側の端部との間の距離を引いた距離として演算される。
【0052】
統合工程で、統合横グループ42のみ割り出すことができた場合には、統合横グループ42及びパレット1の寸法の設計値(あらかじめ制御部に記憶されている)に基づいて演算される。搬送車2に対するパレット1の奥行方向の位置については、上記の統合縦グループ41及び統合横グループ42を割り出すことができた場合と同様に演算される。また、搬送車2に対するパレット1の幅方向の位置については、統合横グループ42の点群のうち、両端(横グループ322の外端)に位置する反射地点3同士の中点を通り、統合横グループ42に直交するように水平方向に延びる直線を中央線Cとして用い、上記の統合縦グループ41及び統合横グループ42における搬送車2に対するパレット1の幅方向の位置の演算と同様に行う。これは、本実施形態で、H形鋼の配置と搬送車2の位置との関係で、ウェブH2の内端には検出光が当たらないためである。具体的に、搬送車2から仮想的な中央線Cまでの距離を演算することで、搬送車2に対するパレット1の幅方向の位置を演算する。
【0053】
以上の工程で、搬送車2に対するパレット1の位置が割り出される。上記のように、統合縦グループ41及び統合横グループ42を割り出すことができた場合と、統合縦グループ41のみ割り出すことができた場合と、統合横グループ42のみ割り出すことができた場合と、でパレット1の位置を演算する方法が異なるので、統合縦グループ41及び統合横グループ42が割り出された場合には、複数の情報に基づいて演算するので、信頼性の高い情報が得られ、統合縦グループ41及び統合横グループ42の一方のみが割り出された場合にも、パレット1の位置に関する情報を適切に得ることができる。
【0054】
搬送車移動工程では、求められた中央線C(一対の脚部12の中央位置)に合わせて搬送車を移動させる工程である。具体的には、上記工程で導出されたパレット位置に向かって搬送車2を移動させる工程である。上記の工程からパレット1の搬送車2に対する幅方向及び奥行方向の位置が得られているので、得られた情報に基づいて搬送車2をパレット1の下方に適切に潜り込ませることができる。具体的は、中央線Cの情報と、パレット1までの距離に関する情報と、を有しているので、搬送車2がパレット1(具体的には脚部12)に当たらないように中央線Cに合わせてパレットの下方に潜り込ませることができる。
【0055】
以上のようなパレット搬送システムによれば、複数の検出データをコーナ点31で区切ってグループ分けし、概略位置把握手段によって把握された概略位置に基づいて各グループ32を構成する点群が並ぶ方向によってグループ32を縦グループ321及び横グループ322に分類し、縦グループ321及び横グループ322の少なくとも一方に属する複数の検出データに基づいて一対の脚部12の中心位置(中央線C)を導くので、パレット1の脚部12の一部に検出光が照射できなかったり、反射光が検出できなかったり、した場合でもパレット1の位置検出ができる。
【0056】
なお、上記実施形態において、搬送車2(照射部21の原点211)が一対の脚部12の幅方向の中途部分に位置している場合について説明したが、このような場合に限らず、搬送車2が一対の脚部12の両方に対して幅方向一方側に位置している場合にも、本システムを適用することができる。上記のように、搬送車2がパレット1から大きく外れて位置する場合としては、例えばGNSS等の電波の受信に失敗した場合や、GNSS等の精度が低い場合が考えられる。このような場合には、統合縦グループ41を脚部12の幅方向の外方の面に沿って延びる直線として演算することで、統合縦グループ41を得ることができ、得られた統合縦グループ41及びパレット1の寸法の設計値に基づいて、搬送車2に対するパレット1の位置を演算できる。
【0057】
また、搬送車2が一対の脚部12の両方に対して幅方向一方側に位置し、かつ、統合縦グループ41を割り出すことができない場合には、横グループ322に基づいて搬送車2に対するパレット1の位置を演算することができる。具体的には、統合横グループ42までの距離から搬送車2とパレット1との奥行方向の距離を演算できる。また、一対の脚部12のそれぞれついて検出された横グループ322のうち、一方の脚部12の幅方向一方側の端の点(反射地点3)と、他方の脚部12の幅方向一方側の端の点と、により、パレット1の寸法の設計値を参照することで、パレット1の幅方向の中央位置である中央線Cを導出できる。導出された中央線Cと搬送車2との距離を演算することで、搬送車2に対するパレット1の位置を演算できる。
【符号の説明】
【0058】
1…パレット、11…荷台、12…脚部、121…柱部、122…脚底部、2…搬送車、21…照射部、211…原点、22…受光部、3…反射地点、31…コーナ点、32…グループ、321…縦グループ、322…横グループ、33…中点、41…統合縦グループ、42…統合横グループ、中央線C
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9