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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018846
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】椎弓保持プレート
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20220120BHJP
   A61F 2/44 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A61B17/70
A61F2/44
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122232
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】320006623
【氏名又は名称】川崎 祐子
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(72)【発明者】
【氏名】川崎 祐子
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097SC00
4C160LL33
(57)【要約】
【課題】さまざまな体格の患者の椎弓の安定した保持を可能とする椎弓保持プレートおよび椎弓保持インプラントデバイスを提供する。
【解決手段】スクリュー50は、ねじ山61が形成された軸部60と、前記軸部60の基端63に設けられた頭部80を有し、椎弓保持プレート10は、長手形状の両端に前記スクリュー50によって固定される固定部40a,40bをそれぞれ有する形状であり、少なくとも一方の前記固定部40aは、前記スクリュー50の前記軸部60が貫通して前記頭部80と嵌合するスクリュー嵌合孔20bが前記椎弓保持プレート10の幅方向に2つ並べて配置され、2つの前記スクリュー嵌合孔20bは、それぞれに前記頭部80が嵌合する前記スクリュー50の前記軸部60のねじ先64が互いに近づく方向へ傾いた状態となる構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断された椎弓の一方と他方の間隔を維持する長手形状の板状部を有するプレートと、
前記プレートを前記椎弓の前記一方と前記他方にそれぞれ固定する2以上のスクリューとを備え、
前記スクリューは、
ねじ山が形成された軸部と、
前記軸部の基端に設けられた頭部を有し、
前記プレートは、
長手方向の一方に設けられて少なくとも1つの前記スクリューが挿入されて前記椎弓の前記一方に固定される第一固定部と、
前記長手方向の他方に設けられて少なくとも他の1つの前記スクリューが挿入されて前記椎弓の前記他方に固定される第2固定部とを備え、
前記板状部の前記椎弓側に突出して設けられて前記第1固定部と前記第2固定部にそれぞれ対応する第1スペーサ突起と第2スペーサ突起をそれぞれ備え、
前記第1スペーサ突起および第2スペーサ突起は、前記プレートの前記板状部の幅よりも幅細に形成されている
椎弓保持インプラントデバイス。
【請求項2】
前記第1スペーサ突起と前記第2スペーサ突起は、前記プレート側の基部が前記板状部へ向かって前記長手方向の厚みが徐々に厚くなる構成である
請求項1記載の椎弓保持インプラントデバイス。
【請求項3】
前記第1スペーサ突起は、先端部分の前記長手方向の厚みが先細り形状に形成されている
請求項2記載の椎弓保持インプラントデバイス。
【請求項4】
前記第1スペーサ突起の前記先端部分は、幅が一定である
請求項3記載の椎弓保持インプラントデバイス。
【請求項5】
切断された椎弓の一方と他方の間隔を維持する長手形状の板状部と、
前記板状部における長手方向の一方に設けられて少なくとも1つのスクリューが挿入されて前記椎弓の前記一方に固定される第一固定部と、
前記板状部における前記長手方向の他方に設けられて少なくとも他の1つの前記スクリューが挿入されて前記椎弓の前記他方に固定される第2固定部とを備え、
前記板状部は、前記椎弓側に突出して設けられて前記第1固定部と前記第2固定部にそれぞれ対応する第1スペーサ突起と第2スペーサ突起をそれぞれ備え、
前記第1スペーサ突起および第2スペーサ突起は、前記プレートの前記板状部の幅よりも幅細に形成されている
椎弓保持インプラントデバイス用のプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、椎弓形成術用の椎弓保持プレートおよび椎弓保持インプラントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎疾患の治療の1つとして椎弓形成術がある。この椎弓形成術で人工骨としての役割を担う椎弓形成術用のインプラントデバイスは、様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1のような椎弓形成用のインプラントデバイスは、椎弓保持プレートと移植器具およびスクリューを有し、椎弓保持プレートが2つの本体部からなり、それらが摺動可能に取り付けられていることにより、切断された椎弓と椎弓の間隔を調整可能とする構成である。
【0004】
しかし、このようなインプラントデバイスは、椎弓保持プレートの幅方向への固定がされていないため、幅方向へのがたつきが生じ得、安定した固定が困難である。一方、幅方向の固定を行う際には、スクリューを幅方向および軸方向に固定することが考えられる。しかし、幅方向および軸方向にそれぞれ2つのスクリューで固定することは、椎弓形成術を受ける患者の椎弓が小さい場合などは求められる強度の確保と施術容易性の向上という相反する課題が生じ、椎弓形成術施行時に適合させることが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2015-511138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の問題に鑑みて、椎弓形成術において、さまざまな体格の患者の椎弓の安定した保持を可能とする椎弓保持プレートおよび椎弓保持インプラントデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、切断された椎弓の一方と他方の間隔を維持する長手形状の板状部を有するプレートと、前記プレートを前記椎弓の前記一方と前記他方にそれぞれ固定する2以上のスクリューとを備え、前記スクリューは、ねじ山が形成された軸部と、前記軸部の基端に設けられた頭部を有し、前記プレートは、長手方向の一方に設けられて少なくとも1つの前記スクリューが挿入されて前記椎弓の前記一方に固定される第一固定部と、前記長手方向の他方に設けられて少なくとも他の1つの前記スクリューが挿入されて前記椎弓の前記他方に固定される第2固定部とを備え、前記板状部の前記椎弓側に突出して設けられて前記第1固定部と前記第2固定部にそれぞれ対応する第1スペーサ突起と第2スペーサ突起をそれぞれ備え、前記第1スペーサ突起および第2スペーサ突起は、前記プレートの前記板状部の幅よりも幅細に形成されている椎弓保持インプラントデバイスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明により、さまざまな体格の患者の椎弓の安定した保持を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】椎弓保持インプラントデバイスの左側面図。
図2】スクリューの構成を示す説明図。
図3】インプラントプレートの斜視図と縦断左側面図による説明図。
図4】インプラントプレートの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、椎弓保持インプラントデバイス1(椎弓保持プレート・スクリューシステム)の左側面図である。
【0011】
椎弓保持インプラントデバイス1は、椎弓保持プレート10と、この椎弓保持プレート10を椎弓に固定するためのスクリュー50を有する。
【0012】
スクリュー50は、椎弓保持プレート10の表面15(15a,15b,15c)側からスクリュー嵌合孔20に差し込まれている。椎弓保持プレート10およびスクリュー50は、いずれもチタン合金Ti-6Al-4V ELIで形成されている。なお、椎弓保持プレート10およびスクリュー50の素材は、チタン合金Ti-6Al-4V ELIに限らず、人体に適合できる適宜の素材とすることができる。
【0013】
図2は、スクリュー50の投影図であり、図2(A)は斜視図、図2(B)は右側面図、図2(C)は右断面図、図2(D)は背面図である。
【0014】
スクリュー50は、ねじ山61が形成された軸部60と、軸部60の基端63に設けられた頭部80を有している。スクリュー50の長手方向の長さは、4.0ミリメートルから10.0ミリメートルとすることができ、6.0ミリメートルから9.0ミリメートルとすることが好ましく、7.4ミリメートルが好適である。
【0015】
スクリュー50は、スクリュー50の長手方向の中心軸70を有している。ねじ山61は、中心軸70を中心として、軸部60に形成されている。軸部60は、基端63からスクリュー50の先端であるねじ先64に向かって先細りの形状を有している。
【0016】
軸部60は、基端63からねじ先64に向かって長手方向に3つのねじ山61がらせん状に形成されており、各ねじ山61の間にねじ溝71が形成されている。ねじ先64は、円錐形からねじ山61を形成するために谷底を削った形状となっている。この円錐形は円錐面と中心軸70との先端(錐)のなす角度が約45度である円錐形である。
【0017】
頭部80は、スクリュー50の頭頂部である頭頂部90と、基端63に接続する頭底部92と、頭頂部90と頭底部92の間に挟まれた頭中部91を有している。頭頂部90は、中心軸70を中心とした円を有する略円錐台形である。また、頭中部91は中心軸70を中心と円を有する略円柱形である。頭底部92は、中心軸70を中心とした円を有する略円錐台形である。
【0018】
頭頂部90の円錐台形の底面と、頭中部91の円柱形の上面は、共通の円を有し、接続されている。また、頭中部91の円柱形の底面と、頭底部92の円錐台形の上面は、共通の円を有し、接続されている。頭底部92の円錐台形の底面は、基端63と同じ円を有し、接続されている。
【0019】
頭頂部90および頭中部91は、工具などでスクリュー50を回転させるための六角穴84を有している。六角穴84は、頭頂面81に開口を有し、頭頂部から順に、六角柱の形をした六角柱穴部85と、頭底面83側に円錐の形をした円錐穴部86と、六角柱穴部85から円錐穴部86の間の円柱の形をした円柱穴部87を有している。
【0020】
六角柱穴部85は、断面(中心軸70の垂直面)が六角形の角柱穴である。六角形の対向する辺までの長さは、0.5ミリメートルから5.0ミリメートルで、好ましくは、1.0ミリメートルから3.0ミリメートルで、2.0ミリメートルが好適である。六角柱穴部85の高さは、0.5ミリメートルから3.0ミリメートルで、好ましくは、1.0ミリメートルから2.0ミリメートルで、1.3ミリメートルが好適である。
【0021】
円柱穴部87は、断面(中心軸70の垂直面)が円形で、高さ約0.1ミリメートルの角柱穴である。
【0022】
円錐穴84は、断面(中心軸70の垂直面)が円形の錐体穴である。円錐穴84の底面円(最大円)の直径は、円柱穴部87の断面円形より僅かに小さく、1.0ミリメートルから3.0ミリメートルで、好ましくは1.4ミリメートルから2.0ミリメートルで、1.8ミリメートルが好適である。円錐穴84の高さは、0.1ミリメートルから1.0ミリメートルで、好ましくは、0.3ミリメートルから0.7ミリメートルで、0.5ミリメートルが好適である。
【0023】
頭頂面81は、中心軸70に垂直な面である。頭頂面81は、六角穴84の大きさより僅かに大きい大きさの円径の面である。頭頂面81の直径は、1.5ミリメートルから4.0ミリメートルで、好ましくは、2.0ミリメートルから3.2ミリメートルで、2.4ミリメートルが好適である。
【0024】
頭頂部90と頭中部91の接続面82は、中心軸70に垂直な円形の面で、頭頂面81より大きな円径の面である。接続面82の直径は、2.0ミリメートルから5.0ミリメートルで、好ましくは、3.0ミリメートルから4.0ミリメートルで、3.8ミリメートルが好適である。
【0025】
頭中部91と頭底部92の接続面82は、同様に、中心軸70に垂直な円形の面で、頭頂面81より大きな円径の面である。接続面82の直径は、2.0ミリメートルから5.0ミリメートルで、好ましくは、3.0ミリメートルから4.0ミリメートルで、3.8ミリメートルが好適である。
【0026】
頭底部92の頭底面83は、中心軸70に垂直な面で、頭頂面81より小さな円径の面である。頭底面83の直径は、1.2ミリメートルから3.5ミリメートルで、好ましくは、1.5ミリメートルから3.0ミリメートルで、2.2ミリメートルが好適である。また、頭底部92の側面84は、外向きに弧を描いた形状を有している。
【0027】
基端63は、頭底面83を共有して、頭底部92と接続されている。基端63は、頭底面83と同じ面を有する円柱形である。
【0028】
ねじ山61から次のねじ山61までの中心軸と並行方向の距離であるピッチ73は1.0ミリメートルである。ピッチ73の距離は、これに限らず適宜の大きさとすることができる。
【0029】
また、ねじ山61の基端63側の傾斜角度である抜去角度75は、約75度で、ねじ山61のねじ先64側の傾斜角度である挿入角度76は、約60度となっている。すなわち、抜去角度75は、挿入角度60より大きい角度を有する。これにより、スクリュー50を椎弓板に固定する場合、スクリュー50を椎弓板に挿入することを容易にでき、かつ、スクリュー50が対象物から抜けることを防止できる。
【0030】
図3および図4は、椎弓保持プレート10の構成の説明図であり、図3(A)は斜視図、図3(B)は縦断左側面図、図4(A)は正面図、図4(B)は背面図、図4(C)は上面図、図4(D)は左側面図である。
【0031】
図3に示すように、椎弓保持プレート10は、厚みが一定の板状で長手形状のプレートを長手方向に3分割するべく2ヶ所で厚み方向へ屈曲させた形状であり、中央の基盤部13(板状部)と、その両端に連接されている固定部40a,40bを有している。固定部40aは、椎弓保持プレート10の裏面側へ向かって屈曲しており、固定部40bは、椎弓保持プレート10の表面側へ向かって屈曲しており、基盤部13の裏面側には、2ヶ所のスペーサ突起30a,30bが一体成型されている。
【0032】
基盤部13は、略平板状で、椎弓に固定する際、椎弓に向ける側の裏面14cと、椎弓の外側に向く側の表面15cを有している。
【0033】
椎弓保持プレート10は、長手方向の一端である一端11から約10.0ミリメートルから12.0ミリメートルの位置を裏面14(14a,14c)側の角度が約140度に山折りにされ、他端12から5.5ミリメートルから8.0ミリメートルの位置を表面15(15c,15b)の角度が約120度に谷折りにされた形状となっている。
【0034】
したがって、椎弓保持プレート10は、山折りされた位置より一端11側の平板である第1平板部31(固定部40a)と、谷折りされた位置より他端12側の平板である第2平板部32(固定部40b)と、第1平板部31と第2平板部32(固定部40b)の間の平板(山折りされた位置と谷折りされた位置の間の平板)である第3平板部33(基盤部13)を有している。第1平板部31(固定部40a)と第2平板部32(固定部40b)の肉厚は、中央の第3平板部33(基盤部13)の肉厚の85~95%程度と薄く形成されている。この実施例では、第1平板部31(固定部40a)と第2平板部32(固定部40b)の肉厚が0.8mm、第3平板部33(基盤部13)の肉厚が0.9mmとなっている。
【0035】
第3平板部33は、長手方向長さが5.0ミリメートルから13.0ミリメートルで、好ましくは、7.0ミリメートルから11.0ミリメートルである。
【0036】
基盤部13の裏面14cには、椎弓のスペースを維持するための突起状物であるスペーサ突起30が2つ備えられている。スペーサ突起30は、基盤部13の幅と同じ幅を有した略板状の突起物である。2つのうち一方のスペーサ突起30aは、第3平板部33の裏面14cの略中央に、他方のスペーサ突起30bは、第2平板部32における第3平板部33への屈曲部付近の裏面14(14b,14c)に設けられている。
【0037】
スペーサ突起30aは、第3平板部33に垂直より僅かに(5度程度)第1平板部31側に傾いて形成されている。このスペーサ突起30aは、厚み及び幅よりも、突出している突出長さの方が長く形成されており、厚みおよび幅の1.5倍以上の長さ、若しくは2倍以上の長さに形成されている。スペーサ突起30aの厚み(図4(D)の上下方向の厚み)は、第3平板部33(基盤部13)の厚みと同じに形成されている。スペーサ突起30aの幅(図4(B)の左右方向の幅)は、第3平板部33(基盤部13)の幅の50%~70%程度の幅に形成することができ、60%程度の幅とすることが好ましい。この実施例では、第3平板部33(基盤部13)の幅3mmに対してスペーサ突起30aの幅が1.8mとなっている。スペーサ突起30aの先端付近は、厚み(図4(D)の上下方向の厚み)が先細りになる先細り形状に形成されている。この先細り形状となる部分は、スペーサ突起30aの先端側2分の1から3分の1程度とるすことができ、先端は円弧状にして最も薄い部分が最も厚い部分の3分の1から2分の1程度となるように構成されている。
【0038】
スペーサ突起30bは、第2平板部32に垂直よりある程度(60度程度)他端12側に傾いて形成されている。このスペーサ突起30bは、第2平板部32に対して直角になるように形成されている。スペーサ突起30bの幅(図4(B)の左右方向の幅)は、第3平板部33(基盤部13)の幅の50%~70%程度の幅に形成することができ、60%程度の幅とすることが好ましい。この実施例では、第3平板部33(基盤部13)の幅3mmに対してスペーサ突起30bの幅が1.8mとなっている。また、スペーサ突起30bの厚み(図4(D)の左右方向の厚み)は、第3平板部33(基盤部13)の厚みと同じに形成されている。スペーサ突起30bの幅(図4(B)の左右方向の幅)は、第3平板部33(基盤部13)の幅の50%~70%程度の幅に形成することができ、60%程度の幅とすることが好ましい。この実施例では、第3平板部33(基盤部13)の幅3mmに対してスペーサ突起30aの幅が1.8mとなっている。
【0039】
これにより、椎弓板の一端は、スペーサ突起30a、第1平板部31および第3平板部33によって静止され、椎弓板の他端は、スペーサ突起30bと第2平板部32によって安定して静止される。
【0040】
スペーサ突起30aは、基盤部13より狭い幅を有し、長手方向長さが約5.0ミリメートルの略板状で、スペーサ突起30bは、基盤部13より狭い幅を有し、長手方向長さが約1.6ミリメートルの略板状である。また、スペーサ突起30(スペーサ突起30a、30b)は、それぞれ基部が基盤部13との接続部に向かって厚み(基盤部13の長手方向の厚み)が増す形状となっている。これにより、スペーサ突起30が破損することを防き、かつ、施術後にスペーサ突起30(スペーサ突起30a、30b)が変形しないように強度を担保している。
【0041】
固定部40(40a,40b)は、スクリュー50を貫通させ、椎弓保持プレート10と椎弓を固定するスクリュー嵌合孔20(20a,20b)を有し、スクリュー嵌合孔20を縁取るような形状となっている。
【0042】
詳述すると、第1平板部31である固定部40aには、2つのスクリュー嵌合孔20aが、椎弓保持プレート10の長手方向に隣り合わせで2つ並べて配置されている。また、第2平板部32である固定部40bには、2つのスクリュー嵌合孔20bが、椎弓保持プレート10の幅方向に隣り合わせで2つ並べて配置されている。
【0043】
これらの固定部40aおよび固定部40bは、それぞれが、リング状部が2つ結合されたような形状に形成されており、スクリュー嵌合孔20aおよびスクリュー嵌合孔20bの周囲には、第3平板33と接続される部位以外はできるだけ突出しないように、すなわちリング状部分の厚み程度しか部材が存在しないように形成されている。
【0044】
第1平板部31のスクリュー嵌合孔20aは、第1平板部31の表面15a側にスクリュー50の頭底部92の全てを収める座ぐり21aと、裏面14a側に軸部60を貫通させる貫通穴22aを有している。
【0045】
座ぐり21aは、スクリュー50の頭底部92より僅かに大きく、表面から裏面へ向けて縮径する逆円錐台形状の穴である。貫通穴22aは、座ぐり21aの最縮径部に連結されており、頭底面83より僅かに大きな円径を有する円柱の穴である。
【0046】
座ぐり21aおよび貫通穴22aは、第1平板部31の表面15aと垂直な共通の中心軸120aを有する。この中心軸120aは、図1に示すように椎弓保持プレート10の幅方向中心位置を長手方向へ伸ばした長軸100を通過する構成であり、第1平板部31の長軸101と直交する構成となっている。従って、2つのスクリュー嵌合孔20aの座ぐり21aと貫通孔22aのリング状境界部23aは、第1平板部31の表面15aに対して平行な平面上に形成されている。
【0047】
このような構造により、第1平板部31の表面15a側からスクリュー50がスクリュー嵌合孔20aの中心軸120aに沿うように挿入されると、スクリュー50は、中心軸70が第1平板部31の表面15aと垂直になり、頭底面83がザグリ21aに当接した状態で頭部80がスクリュー嵌合孔20aに嵌合する。
【0048】
これにより、第1平板部31は、2つのスクリュー嵌合孔20aの一方に挿入されたスクリュー50により、切断された椎弓のうち一方の椎弓と固定される。このとき、スクリュー50は、スクリュー嵌合孔20aと、概ね、隙間なく接触する。そして、隣接する2つのスクリュー嵌合孔20aのどちらにスクリュー50が挿入されても、スクリュー50の中心軸70が第1平板部31の表面15aと略垂直になる。
【0049】
施術者は、患者の椎弓の形状から2つのスクリュー嵌合孔20aのうち適切な1つのスクリュー嵌合孔20aを選択し、選択したスクリュー嵌合孔20aにスクリュー50を貫通させて固定することができる。また、必要であれば、2つのスクリュー嵌合孔20aの両方にスクリュー50を貫通させ、インプラントデバイス1と椎弓とを固定することもできる。
【0050】
第2平板部32のスクリュー嵌合孔20bは、椎弓保持プレート10の幅方向に2つ横並びに近接配置されている。このスクリュー嵌合孔20bは、第2平板部32の表面15b側にスクリュー50の頭底部92の一部を収める座ぐり21bと、裏面14側に軸部60を貫通させる貫通穴22bを有している。この2つのスクリュー嵌合孔20bの間隔は、それぞれに挿入したスクリュー50の頭底部92同士が近接する程度に構成されている。なお、2つのスクリュー嵌合孔20bの間隔は、挿入されたスクリュー50の頭底部92同士が当接する程度の間隔に構成してもよいが、当接しない程度に近接する程度の間隔が好ましい。これにより、椎弓へのスクリュー50の羅入時に椎弓へ不要な応力をかけることを防止し、かつ、小さい椎弓であっても破損なく羅入することができる。
【0051】
座ぐり21bは、スクリュー50の頭底面83より僅かに大きく、表面から裏面へ向けて縮径する逆円錐台形状の穴である。貫通穴22bは、座ぐり21bの最縮径部に連結されており、底頭面83の円径より大きく、接続面82より小さな円径を有した円柱形である。
【0052】
2つの座ぐり21bおよび貫通穴22bは、それぞれの中心軸120bが、第2平板部32の厚み方向(表面15bに対して垂直の方向)よりも裏面14側が幅方向内側で長手方向他端12側へ僅かに傾く配置に形成されている。
【0053】
座ぐり21bおよび貫通穴22bの中心軸120b(図4(A)参照)は、第2平板部32の表面15bの垂直方向となっている。
【0054】
また、座ぐり21bおよび貫通穴22bの中心軸120b(図4(A)参照)は、第2平板部32の表面15bに対して垂直に構成されている。
【0055】
それぞれの中心軸120bは、互いに平行であり、椎弓保持プレート10の幅方向中心位置を長手方向へ伸ばした長軸100を中心に等距離で対称に形成されている。従って、2つのスクリュー嵌合孔20bの座ぐり21bと貫通孔22bのリング状境界部23bは、第2平板部32の表面15bに対して平行に形成されている。
【0056】
このような形状により、スクリュー嵌合孔20bに第2平板32の表面15b側から挿入されたスクリュー50は、椎弓保持プレート10の幅方向外側で長手方向内側により深く入り込んだ状態で、スクリュー50の頭底面83が、座ぐり21bと当接した状態で頭部80がスクリュー嵌合孔20bに嵌合する。すなわち、隣り合わせに設けられた2つのスクリュー嵌合孔20bに挿入された2つのスクリュー50は、互いに略平行な状態で固定される。
【0057】
第2平板部32は、幅方向に対称かつ中心から均等位置に設けられた2つのスクリュー嵌合孔20bに挿入されたスクリュー50により、切断された椎弓のうち他方の椎弓と固定される。第2平板部32は、2つのスクリュー嵌合孔20bの両方にスクリュー50がそれぞれ貫通され、椎弓と固定される。これにより、椎弓に固定した際の基盤部13の幅方向へのがたつきを軽減することができる。また、ねじ先64が近づくようにスクリュー50が挿入されることにより、小さな椎弓においても、基盤部13の幅方向に配置された2本のスクリュー50を挿入して椎弓に固定することができる。
【0058】
以上の構成により、椎弓保持インプラントデバイス1は、さまざまな体格の患者の椎弓形成術を容易にすることができる。
【0059】
椎弓保持インプラントデバイス1は、外科手術により切断された椎弓と椎弓との間隔を維持することができる。椎弓保持プレート10のスペーサ突起30は、切断された椎弓を支え、椎弓と椎弓との間隔を維持する。すなわち、切断された一方の椎弓は、第1平板部31、第3平板部33および、スペーサ突起30aによって静止され、他方の椎弓は、第2平板部32およびスペーサ突起30bによって静止される。さらに、スクリュー50は、固定部40のスクリュー嵌合孔20を通して椎弓保持プレート10と椎弓を固定する。
【0060】
椎弓保持プレート10は、一端11側に設けられたスクリュー嵌合孔20aのうちどちらかを選択してスクリュー50により椎弓の一端に固定することができる。すなわち、様々な椎弓の形や大きさに対応して椎弓保持プレート10を椎弓に固定することができる。
【0061】
さらに、他端12側に設けられた2つのスクリュー嵌合孔20bの両方にスクリュー50を挿入して第2平板部32を固定することによって、椎弓保持プレート10は、椎弓に強固に固定される。詳述すると、基盤部13の長手方向は、一端11側の固定部40aおよび他端12側の固定部40bで固定され、基盤部13の幅方向は、他端12側の固定部40bの2つのスクリュー嵌合孔20bの両方をスクリュー50が貫通して、椎弓に固定される。そうすることで、椎弓保持プレート10は、椎弓に強固に固定され、椎弓と椎弓との間隔は、維持される。
【0062】
2つのスクリュー嵌合孔20bの座ぐり21bは、同一平面上に傾きなく形成されているため、スクリュー50を挿入した際、スクリュー50のねじ先64が互いに平行となる。すなわち、スクリュー嵌合孔20bの座ぐり21bは、スクリュー50の方向を誘導する誘導面として機能する。
【0063】
また、スクリュー50の軸部60は、ねじ先64に向かって先細りとなっているので、スクリュー50が傾いた状態で挿入された歳に、2つのスクリュー50が接触あるいは極端に近づくことを防止できる。特に、この先細りの傾斜が、スクリュー50の傾斜となる角度θ1より鈍角となっているために、予定の角度θ1よりもさらに角度を付けて挿入された場合であっても先端の接触を防止できる。このようにすることで、2つのスクリュー50は、小さな椎弓にも挿入することができ、子どもや老人などの様々な椎弓に適応することができる。
【0064】
また、スクリュー50の中心軸70幅方向の傾斜を、1°から10°とすることができ、3°から8°とすることが好ましく、4°から6°とすることがより好ましく、5°程度とすることが好適となるように、スクリュー嵌合孔20の中心軸120bの角度を設定しているため、スクリュー50の先端が幅方向の内側へ傾きすぎて、2つのスクリュー50の間で椎弓が割れあるいは欠けるといったことを防止できる。
【0065】
また、2つのスクリュー50が平行に挿入される場合、小さな椎弓であれば、スクリュー50が挿入された部位の外側が割れるあるいは欠ける等してスクリュー50での固定ができない場合があり得る。これに対して、2つのスクリュー50のねじ先64が平行に挿入されることで、小さな椎弓においても2つのスクリュー50のそれぞれの内側および外側に十分な厚みを確保することができ、スクリュー50の外側の椎弓が割れることや欠けることを防止できる。
【0066】
スペーサ突起30の厚み方向長さは、基盤部13との接続部に向かって大きくなっているため、強度を確保でき、基盤部13と丈夫に接続されるとともに、スペーサ突起30が破損することを防止できる。また、基盤部13は、第1平板部31と第3平板部33との間で屈曲し、第3平板部33と第2平板部32との間で屈曲して、略階段状となっていることで、椎弓から受けた圧力を分散させることができる。これにより、スペーサ突起30および椎弓保持プレート10が破損する可能性をさらに低減できる。
【0067】
また、スペーサ突起30aは、先端側が先細り形状に形成されているため、人によって形状の異なる椎弓を好適に支持することができる。また、スペーサ突起30aおよびスペーサ突起30bの幅は、基盤部13の幅よりも短く形成されているため、施術時の視野を確保して施術しやすく、かつ、適切な位置にささりやすくなり、施術容易性を高めることができる。特に、全体長の長い基盤部13を幅広にすることで椎弓の切断部分を押し広げて維持する強度を確保しつつ、基盤部13よりも全体長が短いスペーサ突起30aおよびスペーサ突起30bを幅狭にすることで見やすさと施術容易性も高めることができ、求められる強度の確保と施術容易性の向上という相反する課題を解決することができる。
【0068】
また、スペーサ突起30aおよびスペーサ突起30bの幅が基盤部13の幅よりも狭く形成されていることにより、MRIで撮影した際に椎弓保持インプラントデバイス1および椎弓保持プレート10(特にスペーサ突起30aおよびスペーサ突起30b)が邪魔にならず、良好に撮影することができる。
【0069】
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0070】
例えば、スペーサ突起30の長さ、幅および厚みを変更しても良いし、スペーサ突起30aとスペーサ突起30bが一体となっていても良い。また、基盤部13の長さ、幅および厚みを変更しても良い。これらの変更により、さらに多様な椎弓に適応することが可能となる。
【0071】
スクリュー50の六角穴84は、椎弓に固定するため、スクリュー50を回すことができればよく、適宜形状を変更しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明は、椎弓形成術において椎弓と椎弓との間隔を維持することに利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
100…インプラントデバイス
10…椎弓保持プレート
50…スクリュー
70…中心軸
90…頭頂部
60…軸部
20…スクリュー嵌合孔
30…脚部
11…一端
12…他端
31…第1平板
32…第2平板
33…第3平板
21…座ぐり
22…貫通穴
図1
図2
図3
図4