(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188460
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】軸シール梱包用スリーブ
(51)【国際特許分類】
F16J 15/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
F16J15/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096502
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 伸和
(57)【要約】
【課題】軸シールの脱着時に軸シールに傷を付けないようにしてそのシール性能の低下を防ぐ。
【解決手段】内周面が回転軸に摺接する軸シール10に挿入される、円筒状の軸シール梱包用スリーブ1において、軸シール10に挿入される挿入用端部5と、挿入用端部5よりも外径の大きい装着用端部6とを設ける。挿入用端部5及び装着用端部6には、面取り部7が形成され、この面取り部7の軸方向奥側には、面取り部7よりも外径の大きい段差部8が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面が回転軸に摺接する軸シールに挿入される、円筒状の軸シール梱包用スリーブであって、
上記軸シールに挿入される挿入用端部と、
上記挿入用端部よりも外径の大きい装着用端部とを備え、
上記挿入用端部及び上記装着用端部には、面取り部が形成され、該面取り部の軸方向奥側には、該面取り部よりも外径の大きい段差部が設けられており、
上記挿入用端部における上記段差部の最小径は上記軸シールの最小径よりも小さい
ことを特徴とする軸シール梱包用スリーブ。
【請求項2】
上記挿入用端部の反対側の、上記装着用端部の最大径は、上記軸シールの最小径よりも大きい
ことを特徴とする、請求項1に記載の軸シール梱包用スリーブ。
【請求項3】
円筒状の樹脂成形品よりなる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の軸シール梱包用スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内周面が回転軸に摺接する軸シールに挿入される、円筒状の軸シール梱包用スリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂製のシールエレメントを有する回転軸シールは広く使用されている。すなわち、金属製アウターケースと金属製インナーケースにて、樹脂製のシールエレメントを挾圧保持して組立てられた回転軸シールは公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような回転軸に摺接する軸シールは、スリーブ状の梱包資材を内周に挿入して出荷されることが多く、使用現場で軸シール梱包用スリーブから回転軸外周に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の軸シール梱包用スリーブでは、薄肉の成形品であると、挿入側又は装着側の端面に傷が付きやすい。挿入側又は装着側端面に傷があると、脱着の際に回転軸に摺接するシール部分に傷が入ってしまい、シール性能が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸シールの脱着時に軸シールに傷を付けないようにしてそのシール性能の低下を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、梱包用スリーブの端面に段部を設けた。
【0008】
具体的には、第1の発明では、内周面が回転軸に摺接する軸シールに挿入される、円筒状の軸シール梱包用スリーブを対象とし、
上記軸シール梱包用スリーブは、
上記軸シールに挿入される挿入用端部と、
上記挿入用端部よりも外径の大きい装着用端部とを備え、
上記挿入用端部及び上記装着用端部には、面取り部が形成され、該面取り部の軸方向奥側には、該面取り部よりも外径の大きい段差部が設けられており、
上記挿入用端部における上記段差部の最小径は上記軸シールの最小径よりも小さい。
【0009】
上記の構成によると、梱包用スリーブの挿入用端部の面取り部は、軸シールの最小径よりも外径が小さく、軸シールの挿入の際に回転軸に摺接する部分は、面取り部に接触せずに面取り部の奥側の段差部に接触する。このため、梱包用スリーブの挿入用端部に傷が生じていたとしても、傷部分が軸シールの摺接部分には接触しにくいので、摺接部分に傷が付きにくい。一方、装着用端部にも段差部が設けられ、軸部材に装着する際に段差部から回転軸側に移動する際にも面取り部に接触しにくいので、装着用端部に傷があっても摺接部分に傷が付きにくい。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記挿入用端部の反対側の、上記装着用端部の最大径は、上記軸シールの最小径よりも大きい。
【0011】
上記の構成によると、装着用端部を回転軸に挿入した状態で軸シールを回転軸側に装着でき、その際にも摺接部分に傷が付きにくい。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明の軸シール梱包用スリーブは、
円筒状の樹脂成形品よりなる。
【0013】
上記の構成によると、面取り部と段差部を有する複雑な形状であっても、容易かつ安価に成形できる。また、樹脂成形品だと端面に傷が付きやすいが、段部を設けているので、脱着の際に軸シールに傷が付きにくい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、軸シールの脱着時に軸シールに傷を付けないようにしてそのシール性能の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る梱包用スリーブを一部拡大して示す断面図である。
【
図2】梱包用スリーブにシールを嵌め込む様子を一部破断して示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態の変形例1に係る段部及びその周辺を拡大して示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の変形例2に係る段部及びその周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1及び
図2は本発明の実施形態の軸シール梱包用スリーブ1を示す。この軸シール梱包用スリーブ1は、例えば、円筒状の薄肉樹脂成形品よりなり、内周面が回転軸(図示せず)に摺接する軸シール10に挿入されるものである。軸シール梱包用スリーブ1は、例えば肉厚aが1mm程度の、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、ポリエチレン等よりなる樹脂成形品である。材質や肉厚はこれに限定されない。
【0018】
軸シール10は、例えば、内周面に摺接部分としてのリップ部12が突出し、外周がアウター部材11で覆われたものであるが、これはリング状の軸シールであれば特に限定されない。リップ部12の材質は、四フッ化エチレン樹脂、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴムなど特に限定されない。
【0019】
軸シール梱包用スリーブ1は、軸シール10に挿入される挿入用端部5と、挿入用端部5よりも外径の大きい装着用端部6とを備えている。外径の最も小さい挿入用端部5から第1テーパ部2、第2テーパ部3、大径部4と、徐々に外径が大きくなるようにして連続している。この第1テーパ部2又は第2テーパ部3に軸シール10が挿入された状態で梱包される。このとき、リップ部12は変形しすぎていないのが望ましい。軸部材に装着する際には、大径部4側を軸部材に挿入した状態で、軸シール10を、大径部4を乗り越えさせて軸シール10外周に装着するようになっている。軸部材は、特に外径、材質等は限定されず、場合によっては回転しない軸でもよい。
【0020】
挿入用端部5及び装着用端部6には、面取り部7が形成されている。本実施形態では、丸面取りであるが、後述する変形例1及び2のようなものでもよい。
【0021】
この面取り部7の軸方向奥側には、面取り部7よりも外径の大きい段差部8が設けられている。段差部8の径方向の大きさbは、肉厚aに対して5%~50%である。例えば、肉厚aが1mmとすると、段差部8の大きさは、径方向に0.05mm~0.5mmである。段差部8は、挿入用端部5の端面よりも奥側にあり、かつ面取り部7よりも外径が大きい。結果的に、挿入用端部5から軸シール10を挿入するときに、リップ部12が面取り部7の端面に接しにくい寸法となっている。
【0022】
挿入用端部5における段差部8の最小径Dminは軸シール10の最小径D0よりも小さい(Dmin<D0)。すなわち、挿入用端部5から軸シール10を挿入するときに、リップ部12が面取り部7の端面に接しにくい寸法となっている。
【0023】
本実施形態では、梱包用スリーブの挿入用端部5の面取り部7は、軸シール10の最小径D0よりも外径が小さい。このため、軸シール10の回転軸に摺接するリップ部12は、面取り部7に接触せずに最初に面取り部7の軸方向奥側の段差部8に接触する。このため、梱包用スリーブの挿入用端部5に傷が生じていたとしても、軸シール10の摺接部分には接触しないので、摺接部分に傷が付きにくくなっている。
【0024】
一方、装着用端部6にも段差部8が設けられている。この段差部8は、挿入用端部5の端面よりも軸方向奥側にあり、かつ面取り部7よりも外径が大きい。
【0025】
また、装着用端部6の最大径Dmaxは、軸シール10の最小径D0よりも大きい(Dmax>D0)。これにより、装着用端部6を回転軸に挿入した状態で軸シール10を回転軸側に装着でき、段差部8から回転軸側に移動する際にも面取り部7に接触しない。このため、装着用端部6に傷があっても摺接部分に傷が付きにくくなっている。
【0026】
さらに、軸シール梱包用スリーブ1は、円筒状の樹脂成形品であるため、面取り部7と段差部8を有する複雑な形状であっても、容易かつ安価に成形できる。
【0027】
したがって、本実施形態に係る軸シール梱包用スリーブ1によると、軸シール10の脱着時に軸シール10に傷を付けないようにしてそのシール性能の低下を防ぐことができる。
【0028】
-変形例1-
図3は本発明の実施形態の変形例1に係る軸シール梱包用スリーブ1’を示し、面取り部7の形状が異なる点で上記実施形態と異なる。なお、以下の各変形例では、
図1及び
図2と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0029】
本変形例の軸シール梱包用スリーブ1’は、45°の角面取りであるが、面取りの角度は45°に限定されない。
【0030】
段差部8の径方向の大きさbは、肉厚aに対して5%~50%である。本変形例では、例えば、肉厚aが1mmのとき、段差部8の大きさは、径方向に0.2mm(20%)である。面取り7の半径方向の大きさは、特に限定されないが、本実施形態では、肉厚aの7割程度を占めている。
【0031】
本変形例のような角面取りであっても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0032】
-変形例2-
図4は本発明の実施形態の変形例2に係る軸シール梱包用スリーブ1’’を示し、面取り部7’’の形状が異なる点で上記変形例1と異なる。
【0033】
本変形例では、上記変形例1よりも面取りの大きさが小さくなっている。
【0034】
このように、面取りは、丸面取り、角面取りのいずれでもよく、その大きさも特に限定されない。
【0035】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1,1’,1’’ 軸シール梱包用スリーブ
2 第1テーパ部
3 第2テーパ部
4 大径部
5 挿入用端部
6 装着用端部
7,7’,7’’ 面取り部
8 段差部
10 軸シール
11 アウター部材
12 リップ部