(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188464
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】支持機構
(51)【国際特許分類】
B24B 7/10 20060101AFI20221214BHJP
B24B 27/00 20060101ALI20221214BHJP
B24B 41/047 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B24B7/10 Z
B24B27/00 P
B24B41/047
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096511
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203910
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 健弘
(72)【発明者】
【氏名】松垣 比呂
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】松原 秀樹
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034AA13
3C034BB37
3C034DD20
3C043CC02
3C043DD01
3C158AA02
3C158AA11
3C158AA14
3C158CB01
3C158CB05
(57)【要約】
【課題】グラインダを用いて鋼材のフランジの端面を簡易な構成で研削することができる支持機構を提供する。
【解決手段】
鋼材の端面を研削するために用いられるグラインダ100を移動可能に支持するための支持機構1であって、ベース部31と、該ベース部31から立ち上がるとともに、上下方向に延びる凹部Cが形成された一対の壁部41、42とを有する支持部材30と、前記支持部材30を前記鋼材に対して移動可能に支持する台車10と、前記グラインダ100を前記支持部材30に対して前記凹部Cを介して揺動自在な状態で連結する連結部材50とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材の端面を研削するために用いられるグラインダを移動可能に支持するための支持機構であって、
ベース部と、該ベース部から立ち上がるとともに、上下方向に延びる凹部が形成された一対の壁部とを有する支持部材と、
前記支持部材を前記鋼材に対して移動可能に支持する台車と、
前記グラインダを前記支持部材に対して前記凹部を介して揺動自在な状態で連結する連結部材とを備えることを特徴とする支持機構。
【請求項2】
前記連結部材は、前記グラインダの移動方向に延びる延設部を有し、
前記延設部には前記グラインダの移動方向と略直交する方向に突出する一対の支持軸が複数組設けられ、
前記一対の支持軸のうちのいずれかが前記凹部に挿入されること
を特徴とする請求項1に記載の支持機構。
【請求項3】
前記支持部材には、前記一対の支持軸の高さを変更可能なスペーサが設けられること
を特徴とする請求項2に記載の支持機構。
【請求項4】
前記台車には、
前記鋼材の端面に接し、前記グラインダの移動方向に直交する水平方向に延びる回転軸を中心に回転する第1ローラが配置されること
を特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の支持機構。
【請求項5】
前記台車には、
更に前記鋼材の側面に接し、上下方向に延びる回転軸を中心に回転する第2ローラが配置されること
を特徴とする請求項4に記載の支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持機構に関し、特にH鋼のフランジの端面を研削するグラインダを支持するグラインダの支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水平方向に延びる鋼材等の寸法調整のために、砥石を備えた研削装置を用いることが行われている。研削作業は、例えば研削装置のハンドル操作等の手作業により行われることがあるが、手作業を行う場合には、作業結果にムラが生じてしまうこともあるため、様々な改良が試みられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、H形鋼を縦置き状態で水平方向に搬入搬出するコンベアと、コンベアの搬入側と搬出側との間でコンベア側方位置に立設された昇降案内部と、昇降案内部に沿って昇降自在な昇降体と、H形鋼のウェブ両側面からフランジ内外面にわたって面研削するための砥石車、砥石車を回転自在に支持する砥石ヘッド、砥石ヘッドの向きを水平方向及び上下方向に回動させる首振り手段及び砥石車を回転させるモータを有し、昇降体に対してH形鋼に向かって水平方向にスライド移動可能に配設された研削ユニットを具備したことを特徴とするH形鋼用面研削装置が開示されている。左右一対の砥石車によりH形鋼を縦置き状態のままその上部フランジ内外面、ウェブ両側面及び下部フランジ内外面を次々と自動化により研削作業を行うもので、H形鋼の反転作業が不要なため作業の安全性を確保できると共に、H形鋼を縦置きのままで研削するので装置の横方向寸法をコンパクトにすることができ、狭い工場内でも容易に設置することができる。
【0004】
また、特許文献2には、レールに沿って移動可能な車体と、レールの頭部の側面を研磨する研磨材と、研磨材を回転させる回転駆動源とを備え、研磨材は、レールの頭部の側面を研磨する研磨面が研磨材の回転軸に対して揺動可能に支持されているレール研磨装置が開示されている。かかるレール研磨装置によれば、レールの頭部の側面の湾曲や変形に追従して研磨材の研磨面を当接させることができ、良好な研磨を行うことができる。
【0005】
更に、特許文献3には、山形鋼材の山側面に沿って長手方向に移動自在の走行体と、当該走行体に結合され第1及び第2の山側面を研磨する本体とを具備し、走行体は、第1及び第2の山側面にそれぞれ吸着する磁石車輪を具備し、当該磁石車輪を転動させることによって山形鋼材の山側面に沿って長手方向に移動自在に構成され、本体は、走行体に結合される支持枠と、第1及び第2の山側面にそれぞれ接するように支持枠に支持される少なくとも一対の回転研磨ブラシと、支持枠に支持される駆動装置と、当該駆動装置の回転を回転研磨ブラシに伝えるように支持枠に支持される伝動機構を具備する研磨装置が開示されている。この研磨装置によれは、山形鋼材の2つ山側面に磁石車輪を吸着させ、ブラシを2つの山側面に圧接させながら、山形鋼材の長手方向に移動させて2つの山側面を同時に効率的に研磨することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-254279号公報
【特許文献2】特開2018-204225号公報
【特許文献3】特開2020-138242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載のH形鋼用面研削装置では、砥石ヘッドの位置決めにモータ等の制御系を要するため、構造が複雑であった。また、上記特許文献2に記載の研磨装置では、研磨材によりレール頭部の側面を研磨することが主目的であった。更に、上記特許文献3に記載の研磨装置では、山形鋼材の山側面を研磨することが主目的であった。
【0008】
そこで、本発明は、グラインダ等の研削装置を用いて鋼材のフランジの端面を簡易な構成で研削することができる支持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、鋼材の端面を研削するために用いられるグラインダを移動可能に支持するための支持機構であって、ベース部と、該ベース部から立ち上がるとともに、上下方向に延びる凹部が形成された一対の壁部とを有する支持部材と、前記支持部材を前記鋼材に対して移動可能に支持する台車と、前記グラインダを前記支持部材に対して前記凹部を介して揺動自在な状態で連結する連結部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る支持機構において、前記連結部材は、前記グラインダの移動方向に延びる延設部を有し、前記延設部には前記グラインダの移動方向と略直交する方向に突出する一対の支持軸が複数組設けられ、前記一対の支持軸のうちのいずれかが前記凹部に挿入されるものとしてもよい。
【0011】
本発明に係る支持機構において、前記支持部材には、前記一対の支持軸の高さを変更可能なスペーサが設けられるものとしてもよい。
【0012】
本発明に係る支持機構において、前記台車には、前記鋼材の端面に接し、前記グラインダの移動方向に直交する水平方向に延びる回転軸を中心に回転する第1ローラが配置されるものとしてもよい。
【0013】
本発明に係る支持機構において、更に前記鋼材の側面に接し、上下方向に延びる回転軸を中心に回転する第2ローラが配置されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、グラインダ等の研削装置を用いて鋼材のフランジの端面を簡易な構成で研削することができる支持機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る支持機構の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態に係る台車の模式的な正面図であり、
図2(b)は、実施形態に係る台車の模式的な側面図であり、
図2(c)は実施形態に係る台車の模式的な背面図である。
【
図3】
図3(a)は、実施形態に係る支持部材の模式的な正面図であり、
図3(b)は、実施形態に係る支持部材の模式的な側面図である。
【
図4】
図4(a)は、支持部材が傾いた場合の支持部材、凸部及び台車の位置関係を示す図であり、
図4(b)は
図4(a)の一部拡大図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る連結部材の模式的な斜視図である。
【
図6】グラインダが本発明の実施形態に係る支持機構に取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図7】
図7(a)は、支持機構がH鋼に取り付けられた状態を示す図であり、
図7(b)は
図7(a)の一部拡大図である。
【
図8】
図8(a)は、粗削り工程を示す図であり、
図8(b)は、調整工程を示す図であり、
図8(c)は、仕上げ工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る支持機構1の模式的な斜視図である。支持機構1は、例えばグラインダを取り付けた状態で鋼材(H鋼)のフランジの端面を研削するために用いられるものである。以下の実施形態では、X軸方向が前後方向、Y軸方向が左右方向であり、Z軸方向が鉛直方向(上下方向)とする。
【0018】
図1に示すように、支持機構1は、台車10と、台車に取り付けられる支持部材30と、支持部材30に取り付けられる連結部材50とを有して構成されている。
【0019】
図2(a)は台車10の正面図であり、
図2(b)は台車10の側面図であり、
図2(c)は台車10の背面図である。台車10は、基台11と、基台11に取り付けられる複数の第1ローラ21F、21Rと、複数の第2ローラ22A、22B、22C、22D、22E、22F、22G、22Hを有して構成されている。台車10は、支持部材30をH鋼に対して移動可能に支持する。なお、以下の説明で各ローラを区別しない場合には、説明の簡略化のために単に第1ローラ21、あるいは第2ローラ22と記載する。
【0020】
基台11は、第1基材11aと第2基材11bから構成され、第1基材11aと第2基材11bは、左右方向に並んで例えばボルト23aとナット23bにより結合されている。本実施形態では、説明の都合上、右側に位置する部材が第1基材11aであり、左側に位置する部材が第2基材11bであるとする。第1基材11aと第2基材11bは、同形状であってもよく、異なる形状であってもよい。ボルト23aとナット23bにより、第1基材11aと第2基材11bとの間隔を調整することができる。
【0021】
第1基材11aにおける上方側には、前後に一対の第1ローラ21F、21Rが設けられている。第1ローラ21F、21Rは、鋼材の端面に接するとともにいずれも左右方向(グラインダの移動方向に直交する水平方向)に延びる回転軸を中心に回転するように構成されている。第1基材11aの下方側における先端には、上下に並んだ状態で一対の第2ローラ22A、22Bが設けられ、下方側における後端には、上下に並んだ状態で一対の第2ローラ22C、22Dが設けられている。第2ローラ22A、22B、22C、22Dは、いずれも鋼材の側面に接するとともに上下方向に延びる回転軸を中心に回転するように構成されている。
【0022】
第2基材11bの下方側における先端には、上下に並んだ状態で一対の第2ローラ22E、22Fが設けられ、下方側における後端には、上下に並んだ状態で一対の第2ローラ22G、22Hが設けられている。第2ローラ22E、22F、22G、22Hは、いずれも上下方向に延びる回転軸を中心に回転するように構成されている。
【0023】
台車10において、一対の第2ローラ22A、22Bと一対の第2ローラ22E、22Fとの離間距離は、フランジの幅と略一致するように構成されている。同様に、一対の第2ローラ22C、22Dと一対の第2ローラ22G、22Hとの離間距離は、フランジの幅と略一致するように構成されている。ボルト23aとナット23bを用いて第1基材11aと第2基材11bとの間隔を調整することにより、フランジの幅に応じて第2ローラ22同士の左右方向における離間距離を調整することができる。
【0024】
なお、ここでは第1基材11a及び第2基材11bに、前後に2個ずつ第2ローラ22が配置される例を説明したが、第1基材11a及び第2基材11bに配置される第2ローラ22の個数は前後に1個ずつであってもよく、3個以上ずつであってもよい。また、前方において配置される第2ローラ22の個数と、後方において配置される第2ローラ22の個数は異なっていてもよい。台車10に第1ローラ21及び第2ローラ22が設けられることにより、支持機構1をH鋼に対してスムーズに移動させることができる。また、台車10がH鋼のフランジに対してスムーズに移動することができるのであれば、台車10には第1ローラ21のみが設けられ、第2ローラ22は必ずしも設けられなくてもよい。あるいは、鋼材の端面が台車10全体を載置できる程の幅を有する物であれば、台車10に車輪状のローラを設け、端面上に台車10全体を載置し、台車10の車輪によって移動する構成としてもよい。
【0025】
図3(a)は支持部材30の正面図であり、
図3(b)は支持部材30の側面図である。支持部材30は、上方が開放された略コ字状に形成され、平板状に形成されたベース部31と、ベース部31から立ち上がる第1壁部41及び第2壁部42から構成されている。ベース部31は、例えば平面視略矩形状に形成され、台車10に取り付けられている。
【0026】
第1壁部41と第2壁部42は、いずれも平板状に形成され、対向した状態で配置されている。即ち、
図3に示すように、第1壁部41と第2壁部42は左右対称に形成され、グラインダが配置される程度の間隔を隔てて離間して配置されている。ベース部31と、第1壁部41及び第2壁部42により、グラインダが配置されるスペースが形成される。
【0027】
第1壁部41及び第2壁部42には、前後方向における中央部分に上下方向に延びる凹部Cが形成されている。凹部Cは上方側に開口され、開口側から底部BPに至るまでほぼ同じ幅に形成されている。凹部Cの深さは後述する研削角度Pが適切なものとなるように設定されていればよい。第1壁部41に形成される凹部C及び第2壁部42に形成される凹部Cは、同形状に形成されている。
【0028】
第1壁部41及び第2壁部42には、前方側に複数の切り欠きNが形成されている。各切り欠きNは、前方側に開口されている。切り欠きNの形状は特に限定されるものではないが、後方側に進むにつれて下方側に傾斜するように斜めに形成されていることが望ましい。第1壁部41に形成される切り欠きNの場所に対応して、第2壁部42にも切り欠きNが形成されている。第1壁部41及び第2壁部42に形成される切り欠きNの個数は、特に限定されるものではない。
【0029】
なお、支持部材30には、ベース部31上に一対のスペーサ43が設けられていてもよい。スペーサ43は、上下方向に伸縮可能に形成されているのであればいかなる構造であってもよく、例えばばねなどの弾性部材によって構成されていればよい。スペーサ43は、左右方向において凹部Cと重なる場所に配置されていればよく、スペーサ43の上端部43aは、底部BPから第1壁部41あるいは第2壁部42の上端までのいずれの高さにも変更することができるように構成されていることが望ましい。なお、スペーサ43は、凹部C内をはじめ、支持部材30の適切な場所に設けられていればよい。
【0030】
図4(a)は、支持部材30が傾いた場合の支持部材30、凸部12及び台車10の位置関係を示す図であり、
図4(b)は
図4(a)の一部拡大図である。台車10と支持部材30は、凸部12を介して連結されてもよい。具体的には、台車10の第1基材11aに凸部12が設けられ、凸部12上に支持部材30が配置されている。凸部12は、上側に凸となる半リング状に形成されているため、凸部12、支持部材30は台車10に対して左右方向に揺動することができる。なお、凸部12の形状は半リング状に限定されることはなく、支持部材30を左右方向に揺動可能に支持することができるのであれば、半球状、多角形状等いかなる形状であってもよい。また、凸部12は、支持部材30側に設けられてもよい。
【0031】
図5は、連結部材50の模式的な斜視図である。
図5に示すように、連結部材50は、前後方向に延びる一対の延設部51、51と、一対の延設部51、51同士を繋ぐ水平部54とを備えている。延設部51は、前方から後方にかけて、取付部52と、直線状に延びる直線部53とを有している。連結部材50は、グラインダを支持部材30に連結するために用いられ、グラインダの重量に耐えることができるように、例えば金属製であることが望ましい。
【0032】
取付部52には、取付孔52aが形成され、この取付孔52aには、グラインダを操作するために作業者が操作するハンドルが取り付けられる。取付孔52aに対するハンドルの取り付けは特に限定されるものではないが、例えばネジやボルトを用いた結合であればよい。
【0033】
直線部53は、取付部52の後方側に位置し、前後方向に延びる左右一対の直線状部材である。直線部53には、取付部52側から水平部54側にかけて、左右一対の第1支持軸61、一対の第2支持軸62、一対の第3支持軸63がこの順に設けられている。第1支持軸61、第2支持軸62、第3支持軸63は、いずれも直線部53から左右方向において外側に突出している。第1支持軸61、第2支持軸62、第3支持軸63は、連結部材50と一体成型されることにより形成されてもよく、別部材として構成されてもよい。なお、以下の説明で各支持軸を区別しない場合には、説明の簡略化のために単に支持軸60と記載する。
【0034】
図6は、支持機構1にグラインダ100が取り付けられた状態を側方から視た図である。後述するように、グラインダ100はH鋼を研削するために連結部材50を介して支持部材30に取り付けられる。支持部材30は台車10に固定されているため、台車10の移動に伴いグラインダ100も移動する。
【0035】
グラインダ100は、長手状の本体部101と、本体部101の前方側に設けられる研磨部102を有する。研磨部102は、例えば円盤状に形成された砥石である。本体部101の後方側には、図示しないバッテリに接続されるコード103が設けられている。本体部101における前方側には、取付孔52aを介してハンドル104が設けられている。
【0036】
グラインダ100は、第1支持軸61、第2支持軸62、第3支持軸63のいずれかが凹部Cに挿入されることにより支持部材30に取り付けられる。
図6には、第2支持軸62が凹部Cに挿入されて、底部BP上に配置された状態を示す。支持軸60が凹部Cに挿入されることにより、水平な状態でグラインダ100の支持機構1に対する移動が規制される。H鋼の端面を研削する際には、グラインダ100が支持部材30に取り付けられて固定された状態で、作業者により前後に移動される。
【0037】
凹部Cには、第1支持軸61、第2支持軸62、第3支持軸63のいずれかが挿入される。グラインダ100のH鋼に対する3種類の角度は予め決定されており、必要とされる角度に応じて第1支持軸61、第2支持軸62、第3支持軸63のいずれかが凹部Cに挿入される。
【0038】
第1支持軸61、第2支持軸62、第3支持軸63は、いずれも凹部Cに対して着脱可能である。支持軸60が凹部Cに対して着脱可能であることにより、連結部材50と一体化したグラインダ100を支持部材30に対して容易に着脱することができる。即ち、第2支持軸62が凹部Cに挿入された状態から、第1支持軸61又は第3支持軸63が凹部Cに挿入された状態へとグラインダ100の状態を変更することができる。これにより、グラインダ100のH鋼に対する角度を容易に変更することができる。
【0039】
なお、スペーサ43を使用することで、凹部Cに挿入された支持軸60の高さを変更することにより、グラインダ100の高さを変更することができる。即ち、支持軸60の凹部Cに対する着脱を伴うことなしに、グラインダ100のH鋼に対する角度を変更することができる。また、支持部材30を台車10に対して傾けることにより、グラインダ100を左右何れの方向にも傾けることができる。これにより、研削作業中に生じたバリを除去することができる。
【0040】
なお、作業上の安全を考慮して、グラインダ100はホルダ105により連結部材50に固定されてもよい。また、グラインダ100を動作させていない状態では研磨部102がH鋼に接触して損傷を与えないようグラインダ100の前方側を持ち上げることが望ましい。このような目的のため、例えば
図6に示すように、パイプ部材106をいずれかの一対の切り欠きNに水平に掛け渡し、グラインダ100の重量を支えることとすればよい。
【0041】
図7(a)は、支持機構1がH鋼200に取り付けられた状態を前後方向から視た図である。
図7(b)は、
図7(a)の破線で囲んだ領域の拡大図である。
【0042】
図7(a)に示すように、H鋼200は互いに対向して設けられた平板状の第1フランジ201及び第2フランジ202と、第1フランジ201と第2フランジ202とを連結するウェブ203とを有して構成されている。第1フランジ201の上側の面は上面201Fとされ、第2フランジ202の上側の面は上面202Fとされている。また、第1フランジ201の両側の面は側面201Sとされ、第2フランジ202の両側の面は側面202Sとされている。
【0043】
支持機構1は、台車10が第1フランジ201の上面201Fあるいは第2フランジ202の上面202Fの上に配置された状態で使用される。支持機構1は、グラインダ100が第1フランジ201あるいは第2フランジ202の少なくとも一方を研削することにより、これらを適切な高さに調整するために使用される。
【0044】
図7(b)に示すように、支持機構1が第1フランジ201に取り付けられた状態では、第1ローラ21は上面201Fと接する。また、第2ローラ22A、22B、22E、22Fは、左右両側から第2フランジ202を挟んだ状態で側面202Sと接する。グラインダ100をH鋼200に対して前後に移動させる際には、第1ローラ21は上面201Fと接した状態で回転し、第2ローラ22は側面202Sと接した状態で回転する。
【0045】
図8は、使用目的に応じて変化するグラインダ100の配置状態を示した図である。H鋼200を研削する過程では、いわゆる粗削り、調整、仕上げの各工程を経ることが一般的である。また、この各工程は、グラインダ100のH鋼200に対する角度を変化させることにより行われる。即ち、研磨部102と上面201F(あるいは上面202F)がなす研削角度Pを変化させることにより行われる。
【0046】
図8(a)は、粗削り工程を示す図である。粗 削り工程では、調整、仕上げの各工程と比較して、研磨部102と上面201Fがなす研削角度P1が一番大きく設定されている。これは、グラインダ100によりH鋼200の端面(上面201Fあるいは上面202F)を大幅に研削する必要があることによる。研削角度P1とするために、第1支持軸61が凹部Cに挿入される。この状態で作業者がグラインダ100を前後に移動させると、研磨部102により上面201Fが深く研削される。研削角度P1は、22度~25度の範囲内であることが望ましい。
【0047】
図8(b)は、調整工程を示す図である。調整工程では、研磨部102と上面201Fがなす研削角度P2は、粗削り工程における研削角度P1よりも小さく、仕上げの工程における研削角度P3よりも大きく設定されている。研削角度P2とするために、第2支持軸62が凹部Cに挿入される。この状態で作業者がグラインダ100を前後に移動させると、研磨部102により上面201Fが浅く研削される。研削角度P2は、18度~21度の範囲内であることが望ましい。
【0048】
図8(c)は、仕上げ工程を示す図である。仕上げ工程では、粗削り、調整の工程と比較して、研磨部102と上面201Fがなす研削角度P3が一番小さく設定されている。これは、グラインダ100によりH鋼200の端面(上面201Fあるいは上面202F)をわずかに研削する程度であればよいことによる。研削角度P3とするために、第3支持軸63が凹部Cに挿入される。この状態で作業者がグラインダ100を前後に移動させると、研磨部102により上面201Fがわずかに研削される。研削角度P1は、15度~17度の範囲内であることが望ましい。
【0049】
以上説明したように、ベース部31と、このベース部31から立ち上がるとともに、上下方向に延びる凹部Cが形成された一対の壁部41、42とを有する支持部材30と、この支持部材30をH鋼200に対して移動可能に支持する台車10と、グラインダ100を支持部材30に対して凹部Cを介して揺動自在な状態で連結する連結部材50とを備える支持機構1にグラインダ100を取り付けた状態で、H鋼200の第1フランジ201あるいは第2フランジ202の少なくとも一方を研削する。これにより、上面201Fあるいは上面202Fが研削されるため、第1フランジ201あるいは第2フランジ202の高さが減少する。従って、グラインダ100等の研削装置を用いてH鋼200のフランジの端面を簡易な構成で研削することができ、仮にH鋼200に寸法ずれが生じたとしても、寸法ずれを工業規格値の範囲内に収めることができる。
【0050】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0051】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、支持機構の構成も本発明の一実施形態及び実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 支持機構、10 台車、11 基台、21 第1ローラ、22 第2ローラ、30 支持部材、31 ベース部、41 第1壁部、42 第2壁部、50 連結部材、51 延設部、52 取付部、53 直線部、54 水平部、61 第1支持軸、62 第2支持軸、63 第3支持軸、100 グラインダ、200 H鋼、201F 上面、C 凹部