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特開2022-188466通信装置、通信方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188466
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/12 20090101AFI20221214BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20221214BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20221214BHJP
【FI】
H04W72/12
H04W72/04 111
H04W84/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096516
(22)【出願日】2021-06-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067CC02
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE61
(57)【要約】
【課題】 通信装置間で、Multi-Link通信時のチャネルペアの同時送受信が可能かどうかの情報を効率的に共有することを可能にし、装置間で効率的なMulti-Link通信を実施できるようにする。
【解決手段】 通信装置は、第一の周波数チャネルを用いた無線フレームの通信と、第二の周波数チャネルを用いた無線フレームの通信とを並行して実行することが可能な通信手段と、前記第一の周波数チャネルと前記第二周波数チャネルとの間の周波数軸上の距離を示す情報であって、前記通信手段による通信において前記第一の周波数チャネルを用いた無線フレームの送信と前記第二の周波数チャネルを用いた無線フレームの受信とを並行して実行するために必要となるチャネル距離を示す情報を、他の通信装置に送信する送信手段とを有する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
第一の周波数チャネルを用いた無線フレームの通信と、第二の周波数チャネルを用いた無線フレームの通信とを並行して実行することが可能な通信手段と、
前記第一の周波数チャネルと前記第二周波数チャネルとの間の周波数軸上の距離を示す情報であって、前記通信手段による通信において前記第一の周波数チャネルを用いた無線フレームの送信と前記第二の周波数チャネルを用いた無線フレームの受信とを並行して実行するために必要となるチャネル距離を示す情報を、他の通信装置に送信する送信手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第一の周波数チャネルおよび/または前記第二の周波数チャネルの通信の状態に基づいて前記チャネル距離を決定する決定手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記決定手段は、
前記通信装置の前記第一の周波数チャネルを用いた送信が前記通信装置の前記第二の周波数チャネルに与えるノイズと、
前記通信装置が前記第一の周波数チャネルを用いて送信していない時に前記通信装置の前記第二の周波数チャネルで検出されるノイズと、
前記他の通信装置の前記第二の周波数チャネルを用いた送信により、前記通信装置の前記第二の周波数チャネルで検出される送信パワーと、
前記通信装置の前記第二の周波数チャネルを用いた送信が前記通信装置の前記第一の周波数チャネルに与えるノイズと、
前記通信装置が前記第二の周波数チャネルを用いて送信していない時に前記通信装置の前記第一の周波数チャネルで検出されるノイズと、
前記他の通信装置の前記第一の周波数チャネルを用いた送信により、前記通信装置の前記第一の周波数チャネルで検出される送信パワーと、
のうちの一つ以上の値に基づいて前記チャネル距離を決定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信装置の前記第一の周波数チャネルを用いた送信が前記通信装置の前記第二の周波数チャネルに与えるノイズと、
前記通信装置の前記第二の周波数チャネルを用いた送信が前記通信装置の前記第一の周波数チャネルに与えるノイズは、
予め前記通信装置の中に保持しておくことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信装置の前記第一の周波数チャネルを用いた送信が前記通信装置の前記第二の周波数チャネルに与えるノイズと、
前記通信装置の前記第二の周波数チャネルを用いた送信が前記通信装置の前記第一の周波数チャネルに与えるノイズは、
前記通信装置が無線フレームを送信することにより測定することを特徴とする請求項3又は4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信手段は、IEEE802.11規格に準拠した無線通信を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信手段は、IEEE802.11規格において規定されたMulti-Link通信を行うことを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記チャネル距離は、IEEE802.11規格において規定されたSTR(simultaneous transmit and receive)の通信を行うために必要なチャネル間の周波数軸上の距離であることを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記第一の周波数チャネルと前記第二の周波数チャネルは、同じ周波数帯域の中の異なる周波数チャネルであることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第一の周波数チャネルと前記第二の周波数チャネルは、異なる周波数帯域のチャネルであることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の通信装置。
【請求項11】
第一の周波数チャネルを用いた無線フレームの通信と、第二の周波数チャネルを用いた無線フレームの通信とを並行して実行することが可能な通信工程と、
前記第一の周波数チャネルと前記第二周波数チャネルとの間の周波数軸上の距離を示す情報であって、前記通信工程による通信において前記第一の周波数チャネルを用いた無線フレームの送信と前記第二の周波数チャネルを用いた無線フレームの受信とを並行して実行するために必要となるチャネル距離を示す情報を、他の通信装置に送信する送信工程と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の通信装置としてコンピュータを動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信されるデータ量の増加に伴い、無線LAN(Local Area Network)等の通信技術の開発が進められている。無線LANの主要な通信規格として、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格シリーズが知られている。IEEE802.11規格シリーズには、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax等の規格が含まれる。例えば、最新規格のIEEE802.11axでは、OFDMA(直交周波数多元接続)を用いて、最大9.6ギガビット毎秒(Gbps)という高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度を向上させる技術が規格化されている(特許文献1参照)。なお、OFDMAは、Orthogonal frequency-division multiple accessの略である。
【0003】
さらなるスループット向上や周波数利用効率の改善、通信レイテンシ改善を目指した後継規格として、IEEE802.11be規格の規格化が進められている。
【0004】
IEEE802.11beでは、1台のアクセスポイント(AP)が1台のステーション(STA)と2.4GHz、5GHz、6GHz帯等の周波数帯域で複数のLinkを構築し、同時通信を行うMulti-Link通信が検討されている。また無線通信機器のハードウェア上の制約等から、Multi-Link通信において、所定のLinkで送信動作中に他方のLinkで受信動作ができないAPやSTAに対する処理が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-50133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
効率的なMulti-Link通信を実施するためには、どのLinkが、他のLinkと同時に送受信可能であるかを示す情報を、通信を行う装置間で共有する必要がある。なぜなら同時に送受信不可能なLinkのペアを使ってしまうと、送信と受信の処理を排他的に実行する必要があり、通信効率が下がってしまうためである。しかし従来、どのLinkが他のLinkと同時に送受信可能であるかを示す情報を装置間で共有するために、具体的にどのような情報を共有するか、或いはどのように共有するかについて決まっていなかった。
【0007】
そこで本発明は、通信装置間で、Multi-Link通信時のチャネルペアの同時送受信が可能かどうかの情報を効率的に共有することを可能にし、装置間で効率的なMulti-Link通信を実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の通信装置は、第一の周波数チャネルを用いた無線フレームの通信と、第二の周波数チャネルを用いた無線フレームの通信とを並行して実行することが可能な通信手段と、前記第一の周波数チャネルと前記第二周波数チャネルとの間の周波数軸上の距離を示す情報であって、前記通信手段による通信において前記第一の周波数チャネルを用いた無線フレームの送信と前記第二の周波数チャネルを用いた無線フレームの受信とを並行して実行するために必要となるチャネル距離を示す情報を、他の通信装置に送信する送信手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信装置間で、Multi-Link通信時のチャネルペアの同時送受信が可能かどうかの情報を効率的に共有することが可能となり、装置間で効率的なMulti-Link通信を実施できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明におけるネットワークの構成を示す図である。
図2】本発明における通信装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】本発明における通信装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】実施例1においてAssociation候補のチャネルについて、STR可能なLinkのチャネル距離をAssociation Responseで通知するシーケンス図である。
図5】実施例1においてAP101がSTA102へ送信するAssociation Responseフレームの構成例である。
図6】AP101の、20MHz送信におけるSTR可能チャネル距離の決定フローチャートである。
図7】実施例1においてAP101の、チャネルAとチャネルBのペアが20MHz送信時にSTR可能かどうかを判定するフローチャート図である。
図8】実施例2においてAP101はSTA102と通信前に事前に、チャネルAとチャネルBのペアについての20MHz送信時の送信ノイズを検出するフローチャートである。
図9】実施例2においてAP101の、チャネルAとチャネルBのペアが20MHz送信時にSTR可能かどうかを判定するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0012】
(無線通信システムの構成)
図1は、本実施形態にかかる通信装置102(以下、STA102)が参加するネットワークの構成を示す。STA102はネットワーク100に参加する役割を有するステーション(STA)である。通信装置101(以下、AP101)は、無線ネットワーク100を構築する役割を有するアクセスポイント(AP)である。AP101はSTA102と通信可能である。
【0013】
AP101、STA102の各々は、IEEE802.11be(EHT)規格に準拠した無線通信を実行することができる。なお、IEEEはInstitute of Electrical and Electronics Engineersの略である。AP101、STA102は、2.4Hz帯、5GHz帯、および/又は6GHz帯の周波数において通信することができる。各通信装置が使用する周波数帯は、これに限定されるものではなく、例えば60GHz帯のように、異なる周波数帯を使用してもよい。また、AP101、STA102は、20MHz、40MHz、80MHz、160MHz、および320MHzの帯域幅を使用して通信することができる。各通信装置が使用する帯域幅は、これに限定されるものではなく、例えば240MHzや4MHzのように、異なる帯域幅を使用してもよい。
【0014】
AP101、STA102は、IEEE802.11be規格に準拠したOFDMA通信を実行することで、複数のユーザの信号を多重する、マルチユーザ(MU、Multi User)通信を実現することができる。OFDMAは、Orthogonal Frequency Division Multiple Access(直行周波数分割多元接続)の略である。OFDMA通信では、分割された周波数帯域の一部(RU、Resource Unit)が各STAにそれぞれ重ならないように割り当てられ、各STAの搬送波が直行する。そのため、APは規定された帯域幅の中で複数のSTAと並行して通信することができる。
【0015】
なお、AP101、STA102は、IEEE802.11be規格に対応するとしたが、これに加えて、IEEE802.11be規格より前の規格であるレガシー規格に対応していてもよい。具体的には、AP101、STA102は、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax規格の少なくともいずれか一つに対応していてもよい。また、IEEE802.11シリーズ規格に加えて、Bluetooth(登録商標)、NFC、UWB、ZigBee、MBOAなどの他の通信規格に対応していてもよい。なお、UWBはUltra Wide Bandの略であり、MBOAはMulti Band OFDM Allianceの略である。また、NFCはNear Field Communicationの略である。UWBには、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、WiNETなどが含まれる。また、有線LANなどの有線通信の通信規格に対応していてもよい。AP101の具体例としては、無線LANルーターやパーソナルコンピュータ(PC)やスマートフォンなどが挙げられるが、これらに限定されない。またAP101は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる無線チップなどの情報処理装置であってもよい。また、STA102の具体的な例としては、カメラ、タブレット、スマートフォン、PC、携帯電話、ビデオカメラ、ヘッドセットなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、STA102は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる無線チップなどの情報処理装置であってもよい。各通信装置は、20MHz、40MHz、80MHz、160MHz、および320MHzの帯域幅を使用して通信することができる。
【0016】
また、本実施形態におけるAP101およびSTA102は、複数の周波数チャネルを介してリンクを確立し、Multi-Link通信を実行する。IEEE802.11シリーズ規格では、各チャネルの帯域幅は20MHzとして定義されている。ここで、チャネルとは、IEEE802.11シリーズ規格に定義された周波数チャネルであって、IEEE802.11シリーズ規格では、2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯、60GHz帯の各周波数帯に複数のチャネルが定義されている。なお、隣接するチャネルと結合、ボンディングすることで、1つのチャネルにおいて40MHz以上の帯域幅を利用してもよい。例えばAP101はSTA102と2.4GHz帯の第1のチャネルを介したリンクを確立し、通信することができる。STA102はこれと並行してAP101と5GHz帯の第2のチャネルを介したリンクを確立し、通信することができる。この場合に、STA102は、第1のチャネルを介したリンクと並行して、第2のチャネルを介した第2のリンクを維持するという、Link103とLink104とによるMulti-Link通信を実行する。このようにAP101は複数のチャネルを介したリンクをSTA102と確立することで、STA102との通信におけるスループットを向上させることができる。
【0017】
なお、各通信機器間のリンクはMulti-link通信において、周波数帯の異なるリンクを複数確立してもよい。例えば、AP101とSTA102とは2.4GHz帯における第1のリンクと6GHz帯における第2のリンクに加えて、5GHz帯における第3のリンクを確立するようにしてもよい。あるいは同じ周波数帯に含まれる複数の異なるチャネルを介してリンクを確立するようにしてもよい。例えば2.4GHz帯における6chのリンクを第1のリンクとして、これに加えて2.4GHz帯における1chのリンクを第2のリンクとして確立するようにしてもよい。なお、周波数帯が同じである複数のリンクと、周波数帯が異なるリンクとが混在していてもよい。例えば、AP101とSTA102で2.4GHz帯における6chのリンクに加えて、2.4GHz帯の1chのリンクと、5GHz帯における149chのリンクを確立してもよい。AP101はSTA102と周波数の異なる複数の接続を確立することで、ある周波数帯域(例えば2.4GHz帯)が混雑している場合であっても、STA102と他方の帯域(例えば5GHz帯)で通信を確立することができる。そのため、STA102との通信におけるスループットの低下や通信遅延を防ぐことができる。
【0018】
なお、図1の無線ネットワーク100は1台のAPと1台のSTAによって構成されているが、APおよびSTAの台数や配置はこれに限定されない。例えば、図1の無線ネットワークに加えて、STAを1台以上増やしてもよい。このとき確立する各リンクの周波数帯やリンクの数、帯域幅は、STA毎に異なっていてもよい。
【0019】
Multi-link通信を行う場合、AP101とSTA102とは、1つのデータを分割して複数のリンクを介して相手装置に送信する。また、AP101とSTA102はMIMO(Multiple-Input And Multiple-Output)通信を実行できてもよい。この場合、AP101およびSTA102は複数のアンテナを有し、一方がそれぞれのアンテナから異なる信号を同じチャネルを用いて送る。受信側は、複数のアンテナを用いて複数ストリームから到達したすべての信号を同時に受信し、各ストリームの信号を分離し、復号する。このように、MIMO通信を実行することで、AP101およびSTA102は、MIMO通信を実行しない場合と比べて、同じ時間でより多くのデータを通信することができる。また、AP101およびSTA102は、Multi-link通信を行う場合に、一部又は全部のリンクにおいてMIMO通信を実行してもよい。
【0020】
(APおよびSTAの構成)
図2に、本実施形態におけるAP101のハードウェア構成例を示す。AP101は、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206およびアンテナ207を有する。なお、アンテナは複数でもよい。
【0021】
記憶部201は、ROMやRAM等の1以上のメモリにより構成され、後述する各種動作を行うためのコンピュータプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ROMはRead Only Memoryの、RAMはRandom Access Memoryの夫々略である。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。また、記憶部201が複数のメモリ等を備えていてもよい。
【0022】
制御部202は、例えば、例えばCPUやMPU等の1以上のプロセッサにより構成され、記憶部201に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、AP101の全体を制御する。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたコンピュータプログラムとOS(Operating System)との協働により、AP101の全体を制御するようにしてもよい。また、制御部202は、他の通信装置との通信において送信するデータや信号(無線フレーム)を生成する。なお、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの略である。また、制御部202がマルチコア等の複数のプロセッサを備え、複数のプロセッサによりAP101全体を制御するようにしてもよい。
【0023】
また、制御部202は、機能部203を制御して、無線通信や、撮像、印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部203は、AP101が所定の処理を実行するためのハードウェアである。
【0024】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、モニタ画面やスピーカーを介して、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、モニタ画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力などであってもよい。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。また、入力部204および出力部205は、夫々AP101と一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0025】
通信部206は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信の制御を行う。また、通信部206は、IEEE802.11be規格に加えて、他のIEEE802.11シリーズ規格に準拠した無線通信の制御や、有線LAN等の有線通信の制御を行ってもよい。通信部206は、アンテナ207を制御して、制御部202によって生成された無線通信のための信号の送受信を行う。
【0026】
なお、AP101が、IEEE802.11be規格に加えて、NFC規格やBluetooth規格等に対応している場合、これらの通信規格に準拠した無線通信の制御を行ってもよい。また、AP101が複数の通信規格に準拠した無線通信を実行できる場合、夫々の通信規格に対応した通信部とアンテナを個別に有する構成であってもよい。AP101は通信部206を介して、画像データや文書データ、映像データ等のデータをSTA102と通信する。なお、アンテナ207は、通信部206と別体として構成されていてもよいし、通信部206と合わせて一つのモジュールとして構成されていてもよい。
【0027】
アンテナ207は、2.4GHz帯、5GHz帯、および6GHz帯における通信が可能なアンテナである。本実施形態では、AP101は1つのアンテナを有するとしたが、3つのアンテナでもよい。または周波数帯ごとに異なるアンテナを有していてもよい。また、AP101は、アンテナを複数有している場合、各アンテナに対応した通信部206を有していてもよい。なお、STA102はAP101と同様のハードウェア構成を有する。
【0028】
図3には、本実施形態におけるAP101の機能構成のブロック図を示す。なお、STA102も同様の構成である。ここではAP101は無線LAN制御部301を備えるものとする。なお、無線LAN制御部の数は1つに限らず、2つでもよいし、3つ以上でも構わない。AP101は、さらに、フレーム生成部302、送信時間制御部303、ビーコン制御部304、UI制御部305および記憶部306、無線アンテナ307を有する。
【0029】
無線LAN制御部301は、他の無線LAN装置との間で無線信号を送受信するためのアンテナ並びに回路、およびそれらを制御するプログラムを含んで構成される。無線LAN制御部301は、IEEE802.11規格シリーズに従って、フレーム生成部302で生成されたフレームを元に無線LANの通信制御を実行する。
【0030】
フレーム生成部302は、無線LAN制御部301で送信するべき無線制御フレームを生成する。フレーム生成部302で生成する無線制御の内容は記憶部306に保存されている設定によって制約を課してもよい。またUI制御部305からのユーザ設定によって変更してもよい。生成されたフレームの情報は無線LAN制御部301に送られ、通信相手に送信される。
【0031】
送信時間制御部303は、ビーコン制御部304から受け取った時間間隔に従い、どのタイミングでフレームを送信する指示を出すかを制御する。送信時間制御部303からの指示に従い、無線LAN制御部301はフレーム生成部302で生成されたフレームを送信する。
【0032】
ビーコン制御部304は、ビーコンを送信するタイミングやビーコンに含めるべき情報についてフレーム生成部302、送信時間制御部303に指示を出す。AP101がAPとして動作を開始するとき、送信制御部303にビーコンを定期的に送信する時間を設定する。また、送信時間制御部303がビーコンを送信する指示を出すのに伴い、フレーム生成部302にビーコンに含める内容の指示を示す。フレーム生成部302は指示に基づき記憶部306から情報を取得する。
【0033】
UI制御部305は、APの不図示のユーザによるAPに対する操作を受け付けるためのタッチパネルまたはボタン等のユーザインタフェースに関わるハードウェアおよびそれらを制御するプログラムを含んで構成される。なお、UI制御部305は、例えば画像等の表示、または音声出力等の情報をユーザに提示するための機能も有する。
【0034】
記憶部306は、APが動作するプログラムおよびデータを保存するROMとRAM等によって構成されうる記憶装置である。
【0035】
(実施例1)
図4に、AP101がSTA102に対し、Association候補のチャネルについて、STRが可能なLinkのチャネル距離を通知するシーケンス図を示す。本シーケンスでは、その通知をAssociation Responseを用いて行う例を示している。ここでSTRとはsimultaneous transmit and receiveの略であり、IEEE802.11規格において規定されている。STRとは、Multi-Link通信で用いるLinkのペアにおいて、一方のLinkで送信を行っている間に他方のLinkで受信を行う(又はその逆)ことを示す。
【0036】
AP101およびSTA102は、複数のLinkのそれぞれに対応する無線LAN制御部301を有している。図4におけるAP101のAP411は1つ目のLink用、AP412は2つ目のLink用、AP413は3つ目のLink用の無線LAN制御部301である。また、STA102のSTA421は1つ目のLink用、STA422は2つ目のLink用、STA423は3つ目のLink用の無線LAN制御部301を示している。本実施形態では、一例としてSTA421およびAP411は2.4GHz帯の1chを介した通信の処理を行うものとする。STA422およびAP412は2.4GHz帯の5chを介した通信の処理を行うものとする。STA423およびAP413は2.4GHz帯の10chを介した通信の処理を行うものとする。
【0037】
本シーケンスの処理は、AP101およびSTA102のそれぞれの電源が投入されたことに応じて開始される。あるいは、AP101およびSTA102の少なくとも一方は、ユーザまたはアプリケーションからMulti-Link通信の開始を指示されたことに応じて開始してもよい。あるいはAP101およびSTA102の少なくとも一方は、相手装置と通信したいデータのデータ量が所定の閾値以上となったことに応じて開始してもよい。
【0038】
まず、AP101は、1chにおいて、自装置のネットワーク情報を含むBeaconを送信することで、自装置のネットワーク情報を周囲のSTAへ報知する(S401)。ネットワーク情報とは具体的には、AP101がビーコンを送信する送信間隔や、AP101のSSIDである。SSIDとは、Service Set Identifierの略である。これに加えて、AP101は、AP101のMulti-Link通信に関する能力情報をネットワーク情報としてBeaconに含めて報知してもよい。
【0039】
STA102は、1chにおいて送信されているAP101のBeaconを受信すると、AP101のネットワーク情報を問い合わせるために、Probe Requestを1chにおいて送信する(S402)。Probe Requestには、AP101のSSIDが含まれる。また、これに加えて、STA102は、STA102のMulti-Link通信に関する能力情報をProbe Requestに含めてAP101へ通知する。
【0040】
AP101は、Probe Requestを受信すると、応答としてProbe Responseを、1chにおいてSTA102に送信する(S403)。AP101は、BeaconにMulti-Link通信に関する能力情報を含めなかった場合、該能力情報をProbe Responseに含めて送信する。あるいは、AP101は、Multi-Link通信に関する能力情報のうち、一部のみをBeaconに含め、残りの情報またはすべての情報をProbe Responseに含めるようにしてもよい。
【0041】
S401~S403の処理を行うことで、AP101とSTA102とは、それぞれのMulti-Link通信に関する能力情報を交換することができる。
【0042】
次に、STA102は、AP101が形成するネットワークへの接続要求としてのAssociation Requestを、1chにおいてAP101へ送信する(S404)。ここで、STA102は、Association RequestにSTA102のMulti-Link通信に関する能力情報を含めて通知してもよい。なお、STA102は、S401またはS403の少なくとも一方で検出したAP101のMulti-Link通信に関する能力情報に基づいて、S404で送信する能力情報を決定してもよい。例えば、STA102が2.4GHz帯と5GHz帯におけるLinkを組み合わせることができる場合であっても、AP101が2.4GHz帯内の複数Linkを用いたMulti-Link通信にしか対応していないとする。この場合、STA102は、本ステップで送信する能力情報として、2.4GHz帯における複数Linkの確立に関する能力情報のみを送信するようにしてもよい。また、本実施形態では、STA102はS402において自装置のMulti-Link通信に関する能力情報を送信するとしたが、これに限らずS402では能力情報を送信せず、本ステップでのみ送信するようにしてもよい。あるいは、STA102は、Association Requestに、Multi-Link通信を行う際に要求する要求情報を含めてもよい。STA102が要求する要求情報は、Multi-Linkに関する能力情報によって示されてもよいし、別のElementによって示されてもよい。
【0043】
AP101は、Association Requestを受信すると、応答としてAssociation Responseを、1chにおいてSTA102に送信する(S405)。ここで送信されるAssociation Responseには、1個以上の送信帯域幅ごとの、STR可能チャネル距離を含める。STR可能チャネル距離とは、Multi-Link通信において用いる複数のリンクが、周波数軸上でどれだけ離れていれば送信と受信を並行して実行することができるか、即ちSTR可能であるかを示した情報である。つまりSTR可能チャネル距離とは、Multi-Link通信において用いる複数のリンクそれぞれで用いられる周波数チャネル間の周波数軸上の距離である。例えばリンク間が5ch分離れていればSTR可能である場合、STR可能チャネル距離は5(又は5ch)となる。この値は装置によって異なるものとなる。本実施形態では、20MHzの帯域幅については5ch分の距離、40MHzの帯域幅については10ch分の距離、80MHzの帯域幅については20chの距離、160MHzの帯域幅については40ch分の距離をAP101のSTR可能チャネル距離とする。尚、STR可能チャネル距離は20MHzの帯域幅の距離のみから構成されてもよいし、320MHzの帯域幅といった、前述の例にない帯域幅の距離を追加で含めてもよい。Association Responseへ具体的にどのようにSTR可能チャネル距離を含めるかは、図6の説明にて後述する。チャネル距離の決定方法については、図7の説明にて後述する。各チャネル距離を決定するタイミングは、本実施形態ではAssociation Responseを送信する直前とする。なお、Association Response送信のタイミングに限らず、Probe Requestを受信したタイミング、Beaconを出す前のタイミング、などでもよい。または、通信状態の変化を検知したタイミングでもよい。その他、例えばAP101の送信パワーを変更したタイミング、STA102からの送信パワーが変化したタイミング、通信においてパケットロス率に増減あったタイミング、通信においてパケットエラー率に増減あったタイミング、などでもよい。あるいは定期的に決定してもよい。Association候補のチャネルペアが全てSTR可能である場合、送信帯域幅ごとのSTR可能チャネル距離を通知しなくてもよい。あるいは全てSTR可能でない場合、送信帯域幅ごとのSTR可能チャネル距離を通知しなくてもよい。
【0044】
また、ここで送信されるAssociation Responseには、AP101が決定した、STA102とのMulti-Link通信を行う際の運用情報が含まれる。また、S404においてSTA102が要求する運用情報を含めたAssociation Requestを送信していた場合、AP101は該要求に対する可否を含むAssociation Responseを送信してもよい。
【0045】
STA102はAssociation Responseを受信すると、そこに含まれる送信帯域幅ごとのSTR可能チャネル距離から、Association候補のLinkのAP101から見た同時送受信性能を検出することができる。具体的には、送信帯域幅ごとのSTRチャネル距離だけチャネルが離れると、そのチャネルペアでAP101は同時に送受信可能と判断する。例えばAssociation候補のリンクとして1ch、5ch、6chがあったとして、かつ20MHzのSTR可能チャネル距離が5であるとする。すると5ch分離れている1chと6chのペアでは、片側リンクで20MHzの送信をしつつ他方のリンクで20MHzの受信ができると判断する。一方で1chと5chのペアでは、チャネル距離が5ch分未満であることから、片側リンクで20MHzの送信をしつつ他方のリンクで20MHzの受信ができないと判断する。例えばAssociation候補のリンクとして1ch、10ch、36chがあったとして、かつ40MHzのSTR可能チャネル距離が10であるとする。すると26ch分離れている10chと36chのペアでは、片側リンクで40MHzの送信をしつつ他方のリンクで20MHzの受信ができると判断する。一方で1chと10chのペアでは、チャネル距離が10ch分未満であることから、片側リンクで40MHzの送信をしつつ片側リンクで20MHzの受信ができないと判断する。この例では送信帯域幅が20MHzではない(40MHzである)にも関わらず受信帯域幅を20MHz固定にしている。なお、この受信帯域幅を送信帯域幅に一致させて判断してもよい。つまり例えばAssociation候補のリンクとして1ch、10ch、36chがあったとして、かつ40MHzのSTR可能チャネル距離が10であるとする。すると26ch分離れている10chと36chのペアでは、片側リンクで40MHzの送信をしつつ片側リンクで40MHzの受信ができると判断する。一方で1chと10chのペアでは、チャネル距離が10ch分未満であることから、片側リンクで40MHzの送信をしつつ片側リンクで40MHzの受信ができないと判断する。
【0046】
STA102はAssociation Responseにて決定されるAssociation内容を変更する目的で、Reassociation RequestをAP101へ送信する(S406)。例えばS404でのAssociation Responseにより1ch、5ch、10chがAssociationされたが、20MHzのSTR可能チャネル距離が5であり1chと5chが同時送受信できないと判断されたためである。それを改善すべく、例えば1ch、6ch、11chでReassociationする要求をAP101へ送信する。あるいはReassociation Requestではなく、Disassociationを送信してもよい。あるいはReassociation Requestを送信せず、そのままデータ送信を実施してもよい。その場合、1chと5chは同時に送受信できないため、片方のチャネルが受信している間に片方のチャネルが送信しないように同期制御をする、あるいはパケット受信漏れを検知し再送を試みるといった制御が、正確な受信のために必要となる。あるいは同時に送受信できないチャネルペアにて低優先度あるいは正確な受信を要求しない通信を実施するよう処理する。例えばTID(Traffic IDentifier)割り当てを変更する。
【0047】
図5はAP101がSTA102へ送信するAssociation Responseフレームの構成の例を示している。Capability Information element(501)は、要求するオプション機能または自身がサポートするオプション機能を示す。Status Code element(502)は、Response対象のRequestが成功したか失敗したかを示す。AID element(503)は、AP101が割り振るAssociation IDentifierを示す。504はAP101がAssociation Responseフレームを送信しているチャネルのCapability情報を示す。Capability情報には、例えばIEEE802.11nに準拠した通信を行う際は、HT Capabilities element(505)を格納される。また、例えばIEEE802.11acに準拠した通信を行う際は、VHT Capabilities element(506)などが格納されるが、これに限定されない。
【0048】
ML(Multi-Link) element(507)はMulti-Link通信をサポートすることを示す情報である。Multi-Link通信をサポートしないAPのAssociation ResponseフレームにML elementは含まれない。さらにML element(507)はElementを識別するElement IDフィールド511と、Elementのデータ長を示すLengthフィールド512と、Element固有の情報から構成される。Element固有の情報には全Link共通の情報を含むCommon Info513と、Linkごとの固有の情報を含むPer Link Info514から構成される。
【0049】
521~525はCommon Infoに含まれる情報を示している。MLD MAC Address521は、AP101のMLD(Multi-Link Device) MAC(Medium Access Control) Addressを示す。20MHz STR Distance522は、送信帯域幅20MHzでの、STR(Simultaneous Tx Rx)可能なチャネルとなるチャネル間の距離であるSTR可能チャネル距離を示す。値として例えば5が格納されると、AP101にとって2つのチャネルが5ch以上離れていれば、一方のチャネル上20MHzで送信しつつ、もう一方のチャネル上20MHzで受信できることを示す。40MHz STR Distance523は、送信帯域幅40MHzでの、STR可能なチャネルとなるチャネル間の距離を示す。値として例えば10が格納されると、AP101にとって2つのチャネルが10ch以上離れていれば、一方のチャネル上40MHzで送信しつつ、もう一方のチャネル上20MHzで受信できることを示す。80MHz STR Distance524は、送信帯域幅80MHzでの、STR可能なチャネルとなるチャネル間の距離を示す。値として例えば20が格納されると、AP101にとって2つのチャネルが20ch以上離れていれば、一方のチャネル上80MHzで送信しつつ、もう一方のチャネル上20MHzで受信できることを示す。他にも160MHz STR Distanceなど、別の帯域幅の領域があってもよい。あるいは、AP101がサポートしていない高帯域幅の情報を省いてもよい。なお、ここではチャネル間の距離(ch)を示すとしたが、周波数間の距離(Hz)を示してもよい。なお、ここでは同時送受信時の受信の帯域幅は20MHz固定としたが、送信の帯域幅と合わせてもよい。つまり40MHzの帯域幅で送信を行いつつ、40MHzの帯域幅で受信を行ってもよい(80MHzや160MHzでも同様)。
【0050】
Association Responseフレームはこれらの情報を含むことにより、AP101はSTA102に対してMulti-Link通信をサポートしていることと各送信帯域幅のSTR可能チャネル距離をSTA102に対して通知することができる。フィールドの名前や、ビットの位置・サイズはこの例に限定されず、同様の情報が異なるフィールド名や異なる順序やサイズで格納されても良い。
【0051】
図6は、AP101の、20MHz送信におけるSTR可能チャネル距離の決定フローチャートを示す。本フローチャートは、AP101の制御部202のプロセッサが、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。
【0052】
まずAP101は、Ch[2]以降とCh[1]のペアについて順に、STR可能なペアが見つかるまで探す(S601)。ここでCh[n]とは、Association候補のチャネルであって20MHzの帯域幅で通信可能なチャネルのうち、周波数の小さいものからn番目のチャネルを示す。本実施例では、Association候補のチャネル群は1ch、5ch、10ch、36ch、40ch、64ch、100chとする。例えばCh[1]は1chとなり、Ch[7]は100chとなる。この場合、1chと5chのペアがSTR可能か調べ、可能でなければ1chと10chのペアがSTR可能か調べ、これがCh[1]とCh[7]のペアまで続けて調べることになる。所定のチャネルペアが20MHz送信においてSTR可能か否かの判定方法は、後述の図7にて示す。本実施形態では、1chと10chがSTR可能と判定されたとする。
【0053】
次に、AP101はS601にてSTR可能なチャネルペアが見つかったか否かを判定する(S602)。見つかっていれば、S603に進む。見つからなければ、20MHzにおけるSTR可能チャネル距離は無し、あるいは現実的ではない大きな値として決定し、本フローを終える。本実施例では1chと10chのペアが見つかったため、S603へ進む。
【0054】
次に、見つかったSTR可能なチャネルペアを、Ch[x]、Ch[y](ただしx<y)とする(S603)。本実施例では、x=1、y=3となる。
【0055】
次に、i=xとする(S604)。本実施例ではi=1となる。
【0056】
次にAP101は、Ch[i+2]が、Association候補のチャネルであって20MHz通信可能なチャネルに存在するかを判定する。存在していればS606へ進む。存在していなければ、(Ch[y]-Ch[x])が、20MHzにおけるSTR可能チャネル距離として、本フローを終える。本実施例ではi=1のため、Ch[3]は10chとして存在しており、S606へ進む。
【0057】
次に、i=i+1、j=i+2と名付ける(S606)。本実施例では、i=2、j=3となる。
【0058】
次にAP101は、Ch[j]以降とCh[i]のペアについて順に、STR可能なペアが見つかるまで探す(S607)。本実施例ではまずCh[2]とCh[3]、すなわち5chと10chのペアがSTR可能か調べ、可能でなければCh[2]とCh[4]、すなわち5chと36chがSTR可能か調べ、これをCh[2]とCh[7]のペアまで順に調べることになる。本実施例ではCh[2]とCh[4]が、STR可能と判定されたとする。
【0059】
次にAP101は、S607でSTR可能なチャネルペアが見つかり、かつそのペアのチャネル距離が(Ch[y]-Ch[x])未満であるかを判定する(S608)。見つかってかつ(Ch[y]-Ch[x])未満であれば、S609へ進む。見つからなかった場合、あるいは見つかったが(Ch[y]-Ch[x])以上であった場合は、S605へ進む。本実施例では、S607で見つけたチャネルのチャネル距離が(Ch[4]-Ch[2])=36-5=31であり、(Ch[y]-Ch[x])=10-1=9であることから、i=2のままでS605へ進む。i=2のままS605以降を再度進むことで、よりチャネル距離の近い、Ch[3]=10とSTR可能となるチャネルペアを探すことになる。更新されたiのままでS605以降を再度進むことで、よりチャネル距離の近い、STR可能となるチャネルペアを探すことになる。
【0060】
次にAP101は、S608にて見つかった、よりチャネル距離の近いSTR可能なチャネルペアをCh[x]、Ch[y](ただしx<y)とする(S609))。本実施例では最終的には、Ch[1]とCh[3]が、チャネル距離が最も近い、STR可能となるチャネルペアと判定されたとする。ただこの場合、このチャネルペアはS603で既に特定されているため、S609に進むことはない。
【0061】
最後にAP101は、見つかった、チャネル距離が最も近い、STR可能となるチャネルペアのチャネル距離を、20MHzにおけるSTR可能チャネル距離として決定(S610)し、本フローを終える。
【0062】
なお本フローチャートでは20MHzの帯域幅での送信に着目して説明したが、同様の方法で40MHz、80MHzなどでもSTR可能チャネル距離を決定することができる。80MHzと80MHzで分割された合計160MHzの帯域と、他のチャネルとのSTR可能チャネル距離決定の場合は、他のチャネルと近い位置にある80MHzのみを見ることで決定が可能である。同様に他の分割帯域についても、STR可能チャネル距離決定が可能である。
【0063】
図7は、AP101の、チャネルAとチャネルBのペアが20MHz送信時にSTR可能かどうかを判定するフローチャートを示す。本フローチャートは、AP101の制御部202のプロセッサが、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。
【0064】
まずAP101は、チャネルA上のAP101の20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルB上のAP101が受信する無線ノイズ量(B)を検出する(S701)。この無線ノイズ量の単位は例えばdBmである。S701の処理は、なんらかの無線フレーム送信の必要があるタイミングで無線ノイズ量検出してもよいし、この無線ノイズ量検出のためにダミーフレーム(データの中身には意味を持たないフレーム)をチャネルA上で送信してもよい。
【0065】
次にAP101は、チャネルB上でSTA102が20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルB上のAP101が20MHzで受信するRSSI(Received Signal Strength Indicator)(B)を検出する(S702)。このRSSIの単位は例えばdBmである。S702の処理は、なんらかの無線フレーム送信が来たタイミングでRSSIを検出してもよいし、この無線ノイズ量検出のためにダミーフレームをチャネルB上で送信させるよう、予めSTA102に要請していてもよい。
【0066】
次にAP101は、チャネルB上のAP101の20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルA上のAP101が受信する無線ノイズ量(A)を検出する(S703)。S703の処理は、なんらかの無線フレーム送信の必要があるタイミングで無線ノイズ量検出してもよいし、この無線ノイズ量検出のためにダミーフレームをチャネルB上で送信してもよい。
【0067】
次にAP101は、チャネルA上でSTA102が20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルA上のAP101が20MHzで受信するRSSI(A)を検出する(S704)。S704の処理は、なんらかの無線フレーム送信が来たタイミングでRSSI検出してもよいし、この無線ノイズ量検出のためにダミーフレームをチャネルA上で送信させるよう、予めSTA102に要請していてもよい。
【0068】
次にAP101は、(RSSI(A)-無線ノイズ量(A))と(RSSI(B)-無線ノイズ量(B))がそれぞれ、所定値以上かを判定する(S705)。所定値以上の場合、S706に進む。所定値未満の場合、S707へ進む。ここでの所定値とは、固定値でもよいし、通信状態に基づき所定値を適宜決定してもよい。例えばチャネルAでのリンクレートが所定レートよりも高い場合、(RSSI(A)-無線ノイズ量(A))との比較に使う所定値を高くする。リンクレートが高い方が、高品質の通信のためにSNR(Signal-to-noise Ratio)をより要求するためである。また、RSSIまた無線ノイズ量の片方のみで判断してもよい。例えばRSSI(A)とRSSI(B)がそれぞれ所定値以上かを判定する、あるいは、無線ノイズ量(A)と無線ノイズ量(B)がそれぞれ所定値未満かを判定する、でもよい。
【0069】
次にAP101はS706において、チャネルAとチャネルBのペアがSTR可能であると判定し、本フローを終える。また、AP101はS707において、チャネルAとチャネルBのペアがSTR可能ではないと判定し、本フローを終える。
【0070】
以上、チャネルAとチャネルBのペアが20MHz送信時にSTR可能かどうかを判定するフローチャートを説明した。40MHzや80MHzの時も同様に、送信時の無線帯域幅を40MHzや80MHzに変えたフローとなるが、受信時の無線帯域幅は20MHzを用いる。あるいは送信時の無線帯域幅と一致させてもよいし、Association候補の帯域幅と一致させてもよい。無線帯域幅は大きい方が、高品質通信のためのSNRをさほど必要としなくなるため、それに応じて所定値を変えてもよい。
【0071】
以上、本実施例では、AP101が自身の、各無線帯域幅のSTR可能チャネル距離を含めてAssociation Responseを送信する。これにより、STA102がMulti-Link通信の中でSTR可能なチャネルペア、不可能なチャネルペアが推測できるようになる。STA102は、効率的な通信を目的として、使用チャネルを変える、新規チャネルを設立する、高優先度データをSTR可能チャネルで送信する、などが可能となる。また本実施例では、各無線周波数幅のSTR可能チャネルをAP101がSTA102に通知したが、これに限らず、STA102がAP101に通知してもよい。
【0072】
また本実施例では、STR可能チャネルはAssociation Responseに含めたがこれに限定されない。例えば、Beacon、Probe Request,Probe Response,Association Request,Authentication、Actionなどのマネージメントフレームに含めてもよい。
【0073】
(実施例2)
実施例1では、AP101はSTA102と通信中に、無線ノイズ量とRSSIを測定し、それらに基づきSTR可能チャネル距離を決定し、STA102へ通知する形態を説明した。本実施例では、無線ノイズ量のうち、送信に関する無線ノイズ量を事前に測定して保持しておき、STA102と通信中にその保持された無線ノイズ量にも基づき、STR可能チャネル距離を決定する形態を説明する。
【0074】
図4から図6で説明した箇所については、実施例1と同一のため説明を省略する。
【0075】
図8は、AP101がSTA102と通信前に事前に、チャネルAとチャネルBのペアについての20MHz送信時の送信ノイズを検出する処理を示すフローチャートである。本フローチャートは、AP101の制御部202のプロセッサが、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。
【0076】
まずAP101は、後述のS803~S804にてまだ送信ノイズ量を検出していない送信パワーが無いかを判定する(S801)。ある場合はS802へ進む。ない場合は本フローを終える。AP101はSTA102と通信前なので、STA102への送信パワーが確定していないとして、事前に候補となる送信パワー全てで送信ノイズ量を測定する必要がある。あるいはSTA102への送信パワーが予め確定している場合、S801はスキップしてS802に進んでもよい。
【0077】
次にAP101は、S801で判定した、まだ送信ノイズ量を検出してない送信パワー値へ、AP101は無線LAN制御部301に対して送信パワーを設定する(S802)。
【0078】
次にAP101は、チャネルA上のAP101の20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルB上のAP101が受信する送信ノイズ量(B)を検出し、送信パワーとともに記憶部306に記録する(S803)。この送信ノイズ量の単位は例えばdBmである。S803の処理は、なんらかの無線フレーム送信の必要があるタイミングで無線ノイズ量検出してもよいし、この無線ノイズ量検出のためにダミーフレームをチャネルA上で送信してもよい。
【0079】
次にAP101は、チャネルB上のAP101の20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルA上のAP101が受信する送信ノイズ量(A)を検出し、送信パワーとともに記憶部306に記録する(S804)。この送信ノイズ量の単位は例えばdBmである。S804の処理は、なんらかの無線フレーム送信の必要があるタイミングで無線ノイズ量検出してもよいし、この無線ノイズ量検出のためにダミーフレームをチャネルA上で送信してもよい。
【0080】
本フローはAP101の電源投入後に実行されてもよいし、AP101のユーザの手元に届く前、例えば工場出荷前に実行されてもよいし、別の類似装置の検出結果をコピーし保持していてもよい。
【0081】
図9は、AP101の、チャネルAとチャネルBのペアが20MHz送信時にSTR可能かどうかを判定するフローチャートである。本フローチャートは、AP101の制御部202のプロセッサが、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。
【0082】
まずAP101は、チャネルA上のAP101の20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルB上のAP101が受信する送信ノイズ量(B)を記憶部306から検出する(S901)。その送信ノイズ量(B)に付随する送信パワーは、AP101に現在設定されている送信パワーと一致している、送信ノイズ量(B)を選択する。あるいはその送信ノイズ量(B)に付随する送信パワーは、AP101に現在設定されている送信パワーに最も近い値か、AP101に現在設定されている送信パワーを超える最小の値、でもよい。
【0083】
次にAP101は、チャネルA上のAP101の20MHzでの無線フレーム送信時以外のタイミングで、チャネルB上のAP101が受信する定常ノイズ量(B)を検出する(S902)。
【0084】
次にAP101は、チャネルB上でSTA102が20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルB上のAP101が20MHzで受信するRSSI(Received Signal Strength Indicator)(B)を検出する(S702)。
【0085】
次にAP101は、チャネルB上のAP101の20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルA上のAP101が受信する送信ノイズ量(A)を記憶部306から検出する(S904)。その送信ノイズ量(A)に付随する送信パワーは、AP101に現在設定されている送信パワーと一致している、送信ノイズ量(A)を選択する。あるいはその送信ノイズ量(A)に付随する送信パワーは、AP101に現在設定されている送信パワーに最も近い値か、AP101に現在設定されている送信パワーを超える最小の値、でもよい。
【0086】
次にAP101は、チャネルB上のAP101の20MHzでの無線フレーム送信時以外のタイミングで、チャネルA上のAP101が受信する定常ノイズ量(A)を検出する(S905)。
【0087】
次にAP101は、チャネルA上でSTA102が20MHzでの無線フレーム送信時に、チャネルA上のAP101が20MHzで受信するRSSI(Received Signal Strength Indicator)(A)を検出する(S704)。
【0088】
次にAP101は、(RSSI(A)-送信ノイズ量(A)-定常ノイズ量(A))と(RSSI(B)-送信ノイズ量(B)-定常ノイズ量(B))がそれぞれ、所定値以上かを判定する(S907)。所定値以上の場合、S706に進む。所定値未満の場合、S707へ進む。ここでの所定値とは、固定値でもよいし、通信状態に基づき所定値を適宜決定してもよい。例えばチャネルAでのリンクレートが所定レートよりも高い場合、(RSSI(A)-送信ノイズ量(A)-定常ノイズ量(A))との比較に使う所定値を高くする。リンクレートが高い方が、高品質の通信のためにSNRをより要求するためである。また、RSSIまたは送信ノイズ量または定常ノイズ量は、簡単のため一つ以上を0として扱ってもよい。例えばRSSI(A)とRSSI(B)がそれぞれ所定値以上かを判定する、あるいは、送信ノイズ量(A)と送信ノイズ量(B)がそれぞれ所定値未満かを判定してもよい。
【0089】
S706、S707は、実施例1と同一のため説明を省略する。
【0090】
以上、チャネルAとチャネルBのペアが20MHz送信時にSTR可能かどうかを判定するフローチャートを説明した。40MHzや80MHzの時も同様に、送信時の無線帯域幅を40MHzや80MHzに変えたフローとなるが、受信時の無線帯域幅は20MHzを用いる。あるいは送信時の無線帯域幅と一致させてもよいし、Association候補の帯域幅と一致させてもよい。Association候補の最大の帯域幅でもよいし、Association候補の最小の帯域幅でもよい。無線帯域幅は大きい方が、高品質通信のためのSNRをさほど必要としなくなるため、それに応じて所定値を変えてもよい。
【0091】
以上、本実施例では、AP101が、STA102と通信する前に測定していた送信ノイズ量にも基づいて決定した、各無線帯域幅のSTR可能チャネル距離を含めて、Association Responseを送信する。これにより、STA102がMulti-Link通信の中でSTR可能なチャネルペア、不可能なチャネルペアが推測できるようになる。STA102は、効率的な通信を目的として、使用チャネルを変える、新規チャネルを設立する、高優先度データをSTR可能チャネルで送信する、などが可能となる。また本実施例では、各無線周波数幅のSTR可能チャネルをAP101がSTA102に通知したが、これに限らず、STA102がAP101に通知してもよい。
【0092】
また本実施例では、STR可能チャネルはAssociation Responseに含めたがこれに限定されない。例えば、Beacon、Probe Request,Probe Response,Association Request,Authentication、Actionなどのマネージメントフレームに含めてもよい。
【0093】
(その他の実施例)
上述の実施例は一例であり本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではなく、本発明には上述の実施例の他にも各種の変形例が含まれる。上述の実施例では、無線LANの規格としてIEEE802.11be規格を例に説明したが、IEEE802.11シリーズのレガシー規格、後継規格を含む各種の規格(IEEE802.11x)や、同種の他の無線規格にも適用可能である。
【0094】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0095】
100 ネットワーク
101 AP
102 STA
103 Multi-Link
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9