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特開2022-188467画像記録装置、画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188467
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】画像記録装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
B41J2/01 213
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096517
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】村澤 孝大
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 和也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 文孝
(72)【発明者】
【氏名】溝口 慶範
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 顕季
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB29
2C056EB58
2C056EC28
2C056EC37
2C056EC71
2C056EC73
2C056EE18
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】 メタリックインクと有色インクとの境界において、メタリックインクの融着が完了する前に有色インクが付与されることによって、メタリックインクが茶色味を呈する画像弊害が生じる可能性がある。
【解決手段】 境界部において、メタリックインクを付与する走査と有色インクを付与する走査との時間差を大きくするように変更することによって、メタリックインクの融着時間を確保し、画像弊害の発生を抑制する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子を含むメタリックインクを付与するための複数の記録素子が第1の方向に並び、且つ、色材を含む有色インクを付与するための複数の記録素子が前記第1の方向に並ぶ記録手段と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に、前記記録手段を相対的に走査させる走査手段と、
前記記録手段と記録媒体とのN(N:2以上の整数)回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたドットデータに基づき、前記N回の走査によって単位領域に対する画像の記録を完成させるように、前記記録手段及び前記走査手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記生成手段は、
入力データに基づき、メタリックインクが付与されない画素であって且つメタリックインクが付与される画素に隣接するエッジ画素を検出し、
前記入力データに基づき、前記N回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成し、
生成されたL(L:2以上の整数、且つ、L<N)走査目のドットデータにおける、前記エッジ画素に対する有色インクの付与を示すデータを、M(M:3以上の整数、且つ、L<M≦N)走査目のドットデータに変更し、
前記M走査目よりも前の走査のドットデータにおいて、前記エッジ画素に隣接する画素に対してメタリックインクの付与を示すデータを生成する
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記生成手段は、(L-1)走査目までにメタリックインクの付与が完了するように、メタリックインクのドットデータを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記生成手段は、(L-1)走査目までは有色インクを付与しないように有色インクのドットデータを生成することを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記生成手段は、メタリックインクに含まれる金属粒子の融着時間を取得し、取得した前記融着時間に基づき、変更先となる前記M走査目のドットデータを決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記融着時間は、単位面積あたりに付与されるメタリックインクの量に基づいて決定されることを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記記録手段の走査速度にさらに基づいて、変更先となる前記M走査目のドットデータを決定することを特徴とする請求項4または5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記入力データを量子化することにより量子化データを生成し、生成された前記量子化データに前記N回の走査にそれぞれ対応する間引きマスクを用いて前記N回の走査の夫々に対応するドットデータを生成することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記金属粒子は銀粒子であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記第1の方向において、前記記録手段に対して記録媒体を相対的に移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項10】
金属粒子を含むメタリックインクを付与するための複数の記録素子が第1の方向に並び、且つ、色材を含む有色インクを付与するための複数の記録素子が前記第1の方向に並ぶ記録手段と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に、前記記録手段を相対的に走査させる走査手段と、
前記記録手段と記録媒体とのN(N:2以上の整数)回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたドットデータに基づき、前記N回の走査によって単位領域に対する画像の記録を完成させるように、前記記録手段及び前記走査手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記生成手段は、
入力データに基づき、メタリックインクが付与されない画素であって且つメタリックインクが付与される画素に隣接するエッジ画素を検出し、
前記入力データを量子化することにより量子化データを生成し、
前記量子化データにおいて、検出された前記エッジ画素に対応する画素値を変更し、
変更後の前記量子化データに基づき、前記エッジ画素に対する有色インクの付与を示すデータは前記N回の走査のうち所定の走査よりも後ろの走査のドットデータとなるように、前記N回の走査の夫々に対応するドットデータを生成し、
前記エッジ画素に対する有色インクの付与を示すデータのある走査よりも前の走査のドットデータにおいて、前記エッジ画素に隣接する画素に対してメタリックインクの付与を示すデータを生成する、
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項11】
金属粒子を含むメタリックインクを付与するための複数の記録素子が第1の方向に並び、且つ、色材を含む有色インクを付与するための複数の記録素子が前記第1の方向に並ぶ記録手段と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に、前記記録手段を相対的に走査させる走査手段と、
前記記録手段と記録媒体とのN(N:2以上の整数)回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成されたドットデータに基づき、前記N回の走査によって単位領域に対する画像の記録を完成させるように、前記記録手段及び前記走査手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記生成手段は、
入力データに基づき、メタリックインクが付与される画素のエッジの画素を検出し、
前記入力データに基づき、前記N回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成し、
生成されたL(L:2以上の整数、且つ、L<N)走査目のドットデータにおける、前記エッジ画素に対するメタリックインクの付与を示すデータを、M(M:整数、且つ、M<L)走査目のドットデータに変更し、
前記L走査目よりも前の走査のドットデータにおいて、前記エッジ画素に隣接する画素に対してメタリックインクの付与を示すデータを生成する
ことを特徴とする画像記録装置。
【請求項12】
金属粒子を含むメタリックインクを付与するための複数の記録素子が第1の方向に並び、且つ、色材を含む有色インクを付与するための複数の記録素子が前記第1の方向に並ぶ記録手段と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に、前記記録手段を相対的に走査させる走査手段と、
を備える記録装置のための画像処理方法であって、
前記記録手段と記録媒体とのN(N:2以上の整数)回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成する生成工程と、
生成されたドットデータに基づき、前記N回の走査によって単位領域に対する画像の記録を完成させるように、前記記録手段及び前記走査手段を制御する制御工程と、
を備え、
前記生成工程において、
入力データに基づき、メタリックインクが付与されない画素であって且つメタリックインクが付与される画素に隣接するエッジ画素を検出し、
前記入力データに基づき、前記N回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成し、
生成されたL(L:2以上の整数、且つ、L<N)走査目のドットデータにおける、前記エッジ画素に対する有色インクの付与を示すデータを、M(M:3以上の整数、且つ、L<M≦N)走査目のドットデータに変更し、
前記M走査目よりも前の走査のドットデータにおいて、前記エッジ画素に隣接する画素に対してメタリックインクの付与を示すデータを生成する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の画像処理方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に画像を記録するための画像記録装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属粒子を含有するメタリックインクを用いて記録媒体上に画像を記録する画像記録装置が知られている。このようなメタリックインクを用いることにより、記録物に金属光沢を付与することができる。例えば、特許文献1に記載されるように銀粒子を含有するメタリックインクを用いた記録方法が知られている。以下、メタリック画像の記録を、メタリック記録と称する。
【0003】
さらに、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの有色インクを用いることで、有色画像とカラーメタリック画像を記録可能となる。カラーメタリック画像とは、メタリックインクの上に有色インクを着弾させることによって記録される、金属光沢をもった有色画像である。以下、カラーメタリック画像の記録を、カラーメタリック記録と称する。特許文献2には、メタリックインクを用いた画像の記録方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-55463号公報
【特許文献2】特開2011-183677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メタリックインクが付与された記録領域と有色インクが付与された記録領域との境界において金属光沢感が低下し、画質が低下するという課題がある。特許文献2には、メタリックインクと有色インクの記録媒体上への付与順を制御する方法が開示されているものの、このような課題に対する解決方法についての開示はされていない。
【0006】
本発明は上述の課題を低減するためになされたものであり、その目的とするところは、メタリックインクが付与された領域と有色インクが付与された領域との境界における画質の低下を抑制可能な画像記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属粒子を含むメタリックインクを付与するための複数の記録素子が第1の方向に並び、且つ、色材を含む有色インクを付与するための複数の記録素子が前記第1の方向に並ぶ記録手段と、前記第1の方向と交差する第2の方向に、前記記録手段を相対的に走査させる走査手段と、前記記録手段と記録媒体とのN(N:2以上の整数)回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成する生成手段と、前記生成手段により生成されたドットデータに基づき、前記N回の走査によって単位領域に対する画像の記録を完成させるように、前記記録手段及び前記走査手段を制御する制御手段と、を備え、前記生成手段は、入力データに基づき、メタリックインクが付与されない画素であって且つメタリックインクが付与される画素に隣接するエッジ画素を検出し、前記入力データに基づき、前記N回の走査の夫々について、各画素に対するインクの付与または非付与を示すドットデータを生成し、生成されたL(L:2以上の整数、且つ、L<N)走査目のドットデータにおける、前記エッジ画素に対する有色インクの付与を示すデータを、M(M:3以上の整数、且つ、L<M≦N)走査目のドットデータに変更し、前記M走査目よりも前の走査のドットデータにおいて、前記エッジ画素に隣接する画素に対してメタリックインクの付与を示すデータを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メタリック画像領域と有色画像領域との境界部分における画質低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像記録装置構成を表した図
図2】画像記録装置の記録部を表した図
図3】記録ヘッドを表した図
図4】Meインクの銀粒子融着を表した図
図5】Meインクドットの銀粒子分布を表した図
図6】Meインクドットと有色インクドットとが隣接して着弾したときを表した図
図7】第1の実施形態の処理を示すフローチャート
図8】Meインクの画素配置及び有色領域の属性の一例を表した図
図9】エッジ抽出フィルタの一例を表した図
図10】有色領域境界属性の一例を表した図
図11】量子化後データの一例を表した図
図12】ノズルと走査番号を説明するための図
図13】間引きマスクの一例を表した図
図14】第1の実施形態の間引きマスクを変更の一例を表した図
図15】第1の実施形態の有色インクドットの着弾順を変更した効果を表した図
図16】第1の実施形態のMeインク量と融着時間の関係を表したグラフ
図17】第2の実施形態のフローチャート
図18】第3の実施形態のフローチャート
図19】第3の実施形態の間引きマスクを変更の一例を表した図
図20】展開マスクと、量子化値と展開マスク値の対応表
図21】確率マスクを表した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
<記録システム全体>
図1は、本実施形態に使用可能な記録システムの構成を説明するブロック図である。画像処理装置101はホストPCやタブレットPCなどからなり、CPU102は、HDD104に保持されるプログラムに従ってRAM103をワークエリアとしながら各種処理を実行する。例えば、CPU102は、キーボード・マウスI/F106やタッチパネル(不図示)を介してユーザより受信したコマンドやHDD104に保持されるプログラムに従って記録装置108が記録可能な画像データを生成し、これをプリンタ108に転送する。また、データ転送I/F107を介して記録装置108から受信した画像データに対し、HDDに記憶されているプログラムに従って所定の処理を行い、その結果や様々な情報をディスプレイI/F105を介して不図示のディスプレイに表示する。画像処理装置101は目標プリンタ116に対しても同様の処理を行うことができる。
【0012】
一方、記録装置108において、CPU111は、ROM113に保持されるプログラムに従ってRAM112をワークエリアとしながら各種処理を実行する。更に、記録装置108は、高速な画像処理を行うための画像処理アクセラレータ109を備える。画像処理アクセラレータ109は、CPU111よりも高速に画像処理を実行可能なハードウェアである。画像処理アクセラレータ109は、CPU111が画像処理に必要なパラメータとデータをRAM112の所定のアドレスに書き込むことにより起動され、上記パラメータとデータを読み込んだ後、上記データに対し所定の画像処理を実行する。但し、画像処理アクセラレータ109は必須な要素ではなく、同等の処理はCPU111で実行することができる。上記パラメータはROM113に格納しても良いし、フラッシュメモリやHDDなどのストレージ(不図示)に格納しておいても良い。
【0013】
ここで、CPU111または画像処理アクセラレータ109によって行われる、所定の画像処理について説明する。この画像処理は、入力データを、各走査でのインクのドット形成位置を示すデータに変換するまでの処理である。
【0014】
まず、CPU111または画像処理アクセラレータ109において、入力データの色変換処理及び量子化処理が行われる。入力データは、色変換処理により、記録装置で用いられるインク濃度に色変換される。例えば、入力データには、画像を示す画像データと、メタリック記録を行うためのメタリックデータとが含まれる。画像データがモニタの表現色であるsRGB等の色空間座標を示す場合、色変換処理により、sRGBの色座標(R、G、B)データが記録装置の有色インクデータ(CMYK)に変換される。一方、メタリックデータは、Meインク色データに変換される。色座標(R、G、B)とメタリックデータの両方が含まれる場合は、有色インクデータ(CMYK)とMeインクデータの両方に変換される。色変換処理は、マトリクス演算処理や三次元LUT、四次元LUTを用いた処理等の既知の手法によって実現される。本実施形態の記録装置108は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、メタリック(Me)のインクを用いて画像を記録する記録装置であるため、RGB信号の画像データとメタリックデータは、C、M、Y、K、Meの各8ビットの色信号からなる画像データに色変換される。各色の色信号は各インクの付与量に対応する。
【0015】
尚、記録装置が備えるインク色として、K、C、M、Y、Meの5色を例に挙げたが、画質向上の為に、濃度の薄いライトシアン(Lc)やライトマゼンタ(Lm)やグレー(Gy)のインクなど、その他のインクを使用する形態であってもよい。この場合は、それらのインクに対応するインク信号がさらに生成される。
【0016】
尚、本実施形態では、金属粒子を含むメタリックインクに対して、色材を含むインクを有色インクとして説明する。従って、ライトシアン(Lc)やライトマゼンタ(Lm)などの淡インクや、黒(K)やグレー(Gy)などの無彩色インクも、有色インクとして扱う。
【0017】
色変換処理の後、各インク色のインクデータに対し、量子化処理が行われる。量子化処理は、インクデータの階調のレベル数を下げる処理である。本実施形態では、各画素についてインクデータの値と比較するための閾値を配列したディザマトリクスを用いる。この量子化処理を経て、最終的に、各画素に対してインクドットを付与するかどうかを示すドットデータにすることができる。本実施形態のドットデータは、インクの付与を示す「1」、もしくは非付与を示す「1」の2値のデータである。
【0018】
以上の画像処理の後、記録ヘッドコントローラ114によって、記録ヘッド115へ記録データが転送される。同時に、CPU111は、記録ヘッド115を動作させるキャリッジモータを動作させ、さらに記録媒体を搬送する搬送モータを動作させる。記録ヘッドが記録媒体上を走査するのと同時に、ドットデータに基づいて記録ヘッド115から吐出されたインク滴が着弾することにより、記録媒体上に画像が形成される。
【0019】
本実施形態では、単位領域に対する記録ヘッド115の複数回の走査によって画像の記録が完成する、いわゆるマルチパス記録を実行する。そして、マルチパス記録を実行する前に、量子化処理後のドットデータに対して走査順決定処理を行う。走査順決定処理は、量子化処理後のドットデータに対してマスクパターン等を用いて間引くことにより、マルチパス記録における各走査に対応したデータを生成する処理である。ここでは、画像処理アクセラレータ109を用いることにより、処理を高速化することができる。
【0020】
画像処理装置101は、通信回線118を介して記録装置108と繋がっている。本実施形態では、通信回線118はイーサネット(登録商標)として記述するが、USBハブ、無線のアクセスポイントを用いた無線通信ネットワーク、Wifiダイレクト通信機能を用いた接続でも良い。
【0021】
<記録装置の記録部について>
図2は、本実施形態における記録部108を構成する記録ヘッド115を説明するための図である。記録ヘッド115は、キャリッジ116に搭載されている。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の有色インク(以下、カラーインクとも称する)を吐出するためのノズル列と、メタリック(Me)のインクを吐出するためのノズル列を備える。有色インクを吐出するためのノズル列115k、115c、115m、115y、及び、メタリックインクを吐出するためのノズル列115Meは、それぞれインクを吐出するための複数の記録素子が配列され、各記録素子が駆動されることによって各ノズルからインクが吐出する。また、記録ヘッド115は、光学センサ118を備えている。
【0022】
記録ヘッド115を搭載したキャリッジ116は、ベルト117を介して伝達されるキャリッジモ-タの駆動力により、図中X方向(所謂、主走査方向)に沿って往復移動することができる。記録媒体に対してキャリッジ116が相対的にX方向に移動する間に、ドットデ-タに基づいて各ノズルからインクが重力方向(図中-z方向)に吐出することにより、プラテン119上に配された記録媒体上に1回の主走査分の画像が記録される。1回分の主走査が完了すると、記録媒体は、図中-y方向である搬送方向に、所定量搬送される。このような主走査と搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体上に徐々に画像が形成される。
【0023】
光学センサ118は、キャリッジ116とともに移動しながら検出動作を行うことにより、プラテン119上に記録媒体が存在するかどうかを判定する。
【0024】
<記録ヘッド>
図3は、記録ヘッド115を装置上面(-z方向)から見た場合のノズル列の配置を示す図である。記録ヘッド115には、以下のような5つのノズル列が配置されている。即ち、シアンインクに対応するノズル列115c、マゼンタインクに対応するノズル列115m、イエローインクに対応するノズル列115y、ブラックインクに対応するノズル列115k、メタリックインクに対応するノズル列115Meが配置されている。そして、それぞれのノズル列は、X方向における位置が異なるように配置されている。ノズル列115cのノズルからシアンインクが吐出される。ノズル列115mのノズルからマゼンタインクが吐出される。ノズル列115yのノズルからイエローインクが吐出される。ノズル列115kのノズルからブラックインクが吐出される。ノズル列115Meからメタリックインクが吐出される。各ノズル列において、インクを滴として吐出するための複数のノズルがY方向に沿って所定のピッチで配列されている。そして、各ノズルの内部には、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する電気熱変換素子が記録素子として設けられている。
【0025】
<銀ナノインク>
次に、本実施形態で使用される銀粒子を含有したメタリックインクを構成する各成分について説明する。
【0026】
<銀粒子>
本実施形態に用いられる銀粒子は銀を主成分とする粒子であって、銀粒子における銀の純度は50質量%以上であればよい。例えば、副成分として、他の金属、酸素、硫黄、炭素等を含んでもよく、合金であってもよい。
【0027】
銀粒子は、製造方法は特に限定されないが、銀粒子の粒径制御および分散安定性を考慮すると、水溶性銀塩から還元反応を利用した種種の合成方法により製造した銀粒子であることが好ましい。
【0028】
本実施形態に用いられる銀粒子の平均粒子径は、インクの保存安定性と銀粒子により形成される画像の光沢性の観点から、1nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
【0029】
尚、具体的な平均粒子径の測定方法としては、レーザー光の散乱を利用した、FPAR-1000(大塚電子製、キュムラント法解析)、ナノトラックUPA150EX(日機装社製、体積平均粒径の50%の積算値を採用)等を使用して測定できる。
【0030】
本実施形態においては、インク中の銀粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、2.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。含有量が2.0質量%未満である場合、画像の金属光沢性が低下する場合がある。また、含有量が15.0質量%を上回る場合、インクあふれを起こしやすく印字ヨレが発生する場合がある。
【0031】
<分散剤>
銀粒子の分散方式は特に限定されない。例えば、界面活性剤により分散させた銀粒子、分散樹脂により分散させた樹脂分散銀粒子、などを用いることができる。勿論、分散方式の異なる金属粒子を組み合わせて使用することも可能である。
【0032】
界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。
【0033】
アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリ-ルスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、
ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロ-ルボレイト脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0034】
非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエ-テル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマ-、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等が挙げられる。カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が挙げられる。両イオン性活性剤としては、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が挙げられる。
【0035】
分散樹脂は、水溶性もしくは水分散性を有する樹脂であれば何れのものも用いることができるが、中でも特に、分散樹脂の重量平均分子量が1,000以上100,000以下、更には3,000以上50,000以下のものが好ましい。
【0036】
分散樹脂は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン、ビニルナフタレン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコ-ルエステル、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマ-ル酸、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はこれらの誘導体等を単量体とするポリマ-。尚、ポリマ-を構成する単量体のうち1つ以上は親水性単量体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩等を用いてもよい。又は、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂を用いることもできる。
【0037】
本実施形態においては、前記水性インクに前記銀粒子を分散させるための分散剤が含まれ、前記分散剤の含有量(質量%)が、前記銀粒子の含有量(質量%)に対して、質量比率で0.02倍以上3.00倍以下であることが好ましい。
【0038】
前記質量比率が0.02倍未満である場合、銀粒子が分散不安定となり、前記ヘッドの発熱部に付着する銀粒子の比率が高まることでより異常発泡を起こしやすく、インクあふれによる印字ヨレが発生する場合がある。また、前記質量比率が3.00倍を上回る場合、画像形成する際に分散剤が銀粒子の融着を阻害し、画像の金属光沢性が低下する場合がある。
【0039】
<界面活性剤>
本実施形態に用いられる銀粒子含有インクは、よりバランスのよい吐出安定性を得るために、インク中に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、上述のアニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性活性剤を用いることができる。
【0040】
中でもノニオン界面活性剤を含有することが好ましい。ノニオン界面活性剤の中でもポリオキシエチレンアルキルエ-テル、アセチレングリコ-ルのエチレンオキサイド付加物が特に好ましい。これらのノニオン系界面活性剤のHLB値(Hydrophile-Lipophile Balance)は、10以上である。こうして併用される界面活性剤の含有量は、好ましくはインク中に0.1質量%以上である。また、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である。
【0041】
<水性媒体>
本実施形態に用いられる銀粒子含有インクには、水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として10質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下とする。また、インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として50質量%以上88質量%以下とすることが好ましい。
【0042】
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メタノ-ル、エタノ-ル、プロパノ-ル、プロパンジオ-ル、ブタノ-ル、ブタンジオ-ル、ペンタノ-ル、ペンタンジオ-ル、ヘキサノ-ル、ヘキサンジオ-ル、等のアルキルアルコ-ル類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類。アセトン、ジアセトンアルコ-ル等のケトン又はケトアルコ-ル類。テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ-テル類。ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル等の平均分子量200、300、400、600、及び1,000等のポリアルキレングリコ-ル類。エチレングリコ-ル、プロピレングリコ-ル、ブチレングリコ-ル、トリエチレングリコ-ル、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、チオジグリコ-ル、ヘキシレングリコ-ル、ジエチレングリコ-ル等の炭素数2~6のアルキレン基を持つアルキレングリコ-ル類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテ-ト等の低級アルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコ-ルモノメチル(又はエチル)エ-テル、ジエチレングリコ-ルメチル(又はエチル)エ-テル、トリエチレングリコ-ルモノメチル(又はエチル)エ-テル等の多価アルコ-ルの低級アルキルエ-テル類。また、水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。
【0043】
<記録媒体>
本実施形態の記録媒体は、基材と、少なくとも1層のインク受容層とを有している。本実施形態においては、インクジェット画像記録方法に用いるインクジェット用記録媒体であることが好ましい。
【0044】
<メタリックインクを用いた記録領域が茶色く見えるメカニズム>
ここで、メタリックインクについて説明する。金属粒子の融点は、物質の種類と粒子のサイズに依存しており、粒径が小さいほど融点が低い。このようなメタリックインクに含まれる数~数百nm程度の粒径の小さな銀粒子は、記録面に着弾した後、水分の減少とともに分散状態が破壊され、近くの銀粒子と融着し銀の融着膜を形成する。このように銀の融着膜が記録媒体上に形成されることで、金属光沢感を有するメタリック画像を記録することができる。
【0045】
本実施形態で用いるメタリックインクは、金属粒子として銀粒子を含有し、茶色味を呈する液体である。この色は、光の電界を受けた金属内部の自由電子の振動(プラズモン)と光の振動が共鳴する表面プラズモン共鳴と呼ばれる現象により、光の特定波長の吸収が起こるためである。この表面プラズモン共鳴は粒子の形状や大きさによって吸収波長が異なるが、本実施形態で用いられる銀粒子では可視光域の低波長側に消光スペクトルのピ-クがあるため、茶色味を呈する液体となる。
【0046】
銀粒子を含有するメタリックインクは、液体の状態ではプラズモン共鳴による茶色味を呈する。このメタリックインクを用いたインクジェット記録において、メタリック記録領域と有色記録領域が隣接しすると、有色インクの溶媒によりメタリックインクの銀粒子密度が低下し、銀の融着が不十分になることで茶色味が残ってしまう。このように銀の融着が不十分であると、銀粒子を含有するメタリック記録領域と有色記録領域の境界部分が茶色っぽく見えてしまうという課題がある。
【0047】
図4は、Meインクによるドットが茶色味を呈するメカニズムの説明図である。図4(a)は、Meインクが記録媒体に着弾した瞬間の断面を表した模式図である。Meインクの断面形状はインクの表面張力によりド-ム状になる。また、このド-ム状のインクの内部には銀粒子が均等に分散している。
【0048】
図4(b)は、Meインクの水性媒体がメディアに浸透し銀粒子がメディア表面にトラップされている状態を示している。水性媒体の浸透前のインクがド-ム状であるため、メディア上の単位面積当たりの銀粒子はドットの中央部ほど多く、ドットの外周に近づくほど小さくなる。水性媒体がメディアに浸透すると、水性媒体に浮遊していた銀粒子は直下のメディア表面に着地するため、メディア表面の銀粒子はドットの中央部ほど密度が高く、ドットの外周に近づくほど密度が低くなる。
【0049】
図4(c)は、メディア表面でトラップされた銀粒子が融着した状態を示す図である。銀粒子の融着は粒子同士の接触により起こるため、銀粒子密度の高い領域ほど融着が起こりやすい。そのため、ドットの外周に近づくほど銀粒子の密度が低く孤立した銀粒子が多いため、融着の確立はドットの中央部より低くなる。
【0050】
図5は、Meインクを1ドット付与した状態を示す模式図である。図5(a)は、水性溶媒の浸透後の銀粒子の密度の分布を示し、図5(b)は、銀粒子の接触している部分が融着し銀の膜を形成した状態を示す。銀粒子の密度が低い領域には、銀粒子同士が接触せずに融着していないものが存在している。本実施形態で用いるMeインクは、銀が融着せずに粒子状である場合には、前述のプラズモン共鳴による茶色味を呈する。そのため、融着が起こりにくい銀粒子の密度が低い領域は、プラズモン共鳴による茶色味が残ってしまうのである。以上が、Meドットが茶色味を呈するメカニズムである。
【0051】
図6は、有色インクとの境界におけるMeインクの状態を説明するための図である。本図は、Meインク601のドットが記録媒体上に着弾した後に、有色インク602が着弾した状態を示している。このとき、Meインク601と有色インク602が隣接し、有色インク602の溶媒がMeインク601と混ざる。その結果、Meインク601と有色インク602の境界部分において、銀粒子の密度がさらに低下し、Meドットが茶色味を呈する。有色インクは、C、M、Y、Kのどのインクでも起こりうる。特に、Yインクにおいては色材の発色濃度が薄いため、茶色味が顕著になる。
【0052】
このような課題に対しては、メタリックインクを付与した後、有色インクを付与するまでに融着時間を得るための時間を設ける目的でキャリッジ116の走査を停止させる方法がある。しかし、記録走査毎にキャリッジを停止させて融着を待つ方法において、メタリックインクの融着に8秒から10秒ほどの時間を要した場合には、1枚の記録媒体に対するトータルの記録時間が長くなってしまう。
【0053】
<処理フロー1>
図7を参照し、本実施形態における処理フローを説明する。ステップS701では、画像処理装置101で送信されたデータを記録装置108が受信する。上述した通り、入力される印刷データには、有色記録を表すRGBデータとメタリック記録を表すメタリックデータが含まれる。
【0054】
ステップS702では、ステップS701で受信したメタリックデータから、Meインクのインク量を示すデータが生成される。ここでは、メタリックデータとMeインク量の関係を表した一次元LUTなどの既知の方法を用いて生成される。尚、画像処理装置101において、メタリックデータがMeインク量のデータに変換される形態であってもよい。その場合、ステップS702はスキップされる。
【0055】
図8(a)は、生成されたMeインク量データを示し、左上を原点としてX方向へ順番に1画素ごとのインク量を示す値である。そして、このMeインク量データは、RAM112に保存される。
【0056】
ステップS703では、ステップS702で生成されたMeインク量データから、有色領域データを生成する。本実施形態では、Meインク量が0の領域、すなわち、Meインクが付与されない領域を有色領域として定義し、有色領域であるかどうかの情報は、属性値として保持する。属性値は、「1」が有色領域を示し、「0」が非有色領域を示す。
【0057】
図8(b)は、図8(a)のMeインク量データに基づいて生成された有色領域データを示し、左上を原点としてX方向へ順番に1画素ごとに、有色領域を示す属性値としてRAM112に保存される。
【0058】
ステップS704では、ステップS703で生成された有色領域データから、境界画素を検出する。本実施形態では、エッジ抽出フィルタ方法を用いる。図9(a)及び(b)は、エッジ抽出フィルタの一例であり、このソーベルフィルタのような既知のフィルタを用いればよい。フィルタ処理後、「0」ではない画素をエッジと判断し、属性値を「1」とする。エッジ抽出フィルタは、属性値が「1」のエッジと「0」のエッジ両方が抽出される。本実施形態では、属性値が「1」のエッジ、すなわち、有力領域のエッジを抽出する目的である。このため、フィルタ処理によってエッジ判断された画素であっても、注目画素の属性値が「0」の場合は、エッジ抽出結果の画素値も「0」に変更する。
【0059】
図10は、ステップS704において検出された有色領域側のエッジ画素の検出結果である。ここで検出されたエッジ画素は、Meインクが付与されない画素であって、且つ、Meインクが付与される画素に隣接する画素である。本実施形態の構成で検出されるエッジ画素は、Meインクも有色インクも付与されない白画素も含んでいる。この結果は、左上を原点としてX方向へ順番に、1画素ごとの有色領域の境界(エッジ)の属性値としてRAM112に保存される。尚、属性値にフィルタ処理を実施することにより処理ビット数を落とすことができる。結果、データ転送量を削減できるため、画像処理アクセラレータで処理する場合においても、さらなる処理速度向上を行うことができる。
【0060】
ステップS705では、ステップS701で受信された入力データに対して、上述したCPU111または画像処理アクセラレータ109による所定の画像処理が行われる。
【0061】
図11は、ステップS705の処理結果の一例である。図中、「1」の画素は、インクドットが付与される画素を示し、「0」の画素はインクドットが付与されない画素を示している。本例の画像データにおいては、Cインクは、Meインクと同じ画素位置に付与され、Yインクは、Meインクとは排他の画素位置に付与される。このとき、Yインクは、Meインクは隣接する画素に付与されることになるため、Yインクが付与される領域とMeインクが付与される領域との境界部分において、前述のようなMeインクが茶色く見える画像弊害が発生する可能性がある。
【0062】
ステップS706、ステップS707及びステップS708において、上述の走査順決定処理が行われ、各画素に対してインクドットが付与される走査が何走査目であるかが決定する。すなわち、インクドットが着弾する順番が決定する。
【0063】
図12は、マルチパス記録における、記録ヘッドのノズルの位置と走査順との対応を示す図である。記録媒体の搬送方向(図のY方向)の上流側から順に、1走査目の領域、2走査目の領域と続き、最後に8走査目の領域となる。各領域には、以下で説明する間引きマスクを対応付けることで、各インクドットの着弾順を制御することができる。
【0064】
図13は、8走査で画像の記録を完成させる、いわゆる8パス記録に用いられる間引きマスクを示している。間引きマスクの画素値が「1」であり、且つ、インクの付与または非付与を示す量子化処理後のドットデータの画素値が「1」である場合に、インクドットが付与される。図13(a)のマスクは全ての画素値が「0」である。すなわち、このマスクに対応する走査ではインクが付与されないことを示す。図13(b)~(e)の間引きマスクは、インクの付与を示す「1」の画素位置がそれぞれ排他の関係にある。尚、記録ヘッドの走査方向(図中、X方向)は、間引きマスクが繰り返して用いられる。
【0065】
前述のように、Meインクは銀粒子の融着をさせる必要があるため、MeインクはCMYKインクよりも先の走査で付与される。そのため、Meインクの走査順決定処理で用いられる間引きマスクは、1走査目は図13(b)、2走査目は図13(c)、3走査目は図13(d)、4走査目は図13(e)、5走査目から8走査目は図13(a)である。一方、CMYKインクに対して用いられる間引きマスクは、1走査目から4走査目は図13(a)、5走査目は図13(b)、6走査目は図13(c)、7走査目は図13(d)、8走査目は図13(e)である。このような構成により、Meインクが先に付与され、その後に有色インクが付与されるように制御することができる。
【0066】
ここで本実施形態では、ステップS706とステップS707において、ステップS704で検出された有色領域のエッジを示す属性値に基づいて、CMYKの有色インクに用いられる間引きマスクの値を変更する。これにより、CMYKの有色インクのドットが付与される走査の順番を変更し、記録媒体上でのインクドットの着弾順を制御することができる。変更方法としては、有色領域を示す属性値が「1」である画素について、移動元である間引きマスクの対応する画素値を「0」に変更し、移動先である間引きマスクの対応する画素値を「1」に変更する。
【0067】
図14は、変更する一例を示す図である。CMYKの有色インクの5走査目で用いられる図13(b)の間引きマスクに対し、図10の有色領域のエッジを示す属性値を参照し、図14(b)のように変更する。変更された画素は、右上がりの斜線で表した画素である。さらに、7走査目で用いられる図13(d)の間引きマスクに対し、図10の有色領域のエッジを示す属性値を参照し、図14(c)のように変更する。変更された画素は、右上がりの斜線で表した画素である。この結果、有色領域のエッジを示す属性値が「1」である画素のうち、通常のマスク処理結果において5走査目にインクドットが付与される予定だった画素については、7走査目にインクドットが付与されるような制御に変更される。
【0068】
同様に、CMYKの有色インクの6走査目に用いられる図13(c)の間引きマスクに対し、図10の有色領域のエッジを示す属性値を参照し、図14(b)のように変更する。変更された画素は、右下がりの斜線で表した画素である。さらに、8走査目で用いられる図13(e)の間引きマスクに対し、図10の有色領域のエッジを示す属性値を参照し、図14(d)のように変更する。変更された画素は、右下がりの斜線で表した画素である。この結果、有色領域のエッジを示す属性値が「1」である画素のうち、通常のマスク処理結果において6走査目でインクドットが付与される予定だった画素について、8走査目にインクドットが付与されるような制御に変更される。つまり、7走査目以降において、有色領域のエッジの画素におけるインクドット付与数は、有色領域の非エッジ画素におけるインクドット付与数より多くなる。
【0069】
上述した変更する一例では、間引きマスクを変更することを記載したが、あらかじめ8走査目にインクドットが付与される間引きマスクを準備し、エッジを示す属性と参照して切り替えても良い。
【0070】
ステップS709では、ステップS708で決定された記録走査に従って、記録動作を実行する。
【0071】
図15は、上記のインクドットの付与順変更後の記録媒体上のドット状態を示す模式図である。ここでは、説明を簡単にするために有色領域のエッジの画素に対しては、8走査目でインクが付与されるように着弾順を変更したものとする。
【0072】
まず、図15(a)のように、1走査目から4走査目でMeインクがされ、記録媒体上に着弾する。この時点では、Meインクの銀粒子はまだ融着していない。その後、図15(b)のように、5走査目から7走査目までの間に、Meインクとの境界部分を除く有色インクが付与される。この間に、Meインクの銀粒子が融着する。その後、図15(c)のように、8走査目でMeインクとの境界部分の有色インクが付与される。このように、Meインクが付与されてから、Meインクと隣接する画素の有色インクが付与されるまでの着弾時間差を大きくする。これにより、Meインクの銀粒子が融着した後に、Meインクに隣接する境界部分に有色インクが着弾することになり、隣接した有色インクの溶媒によるMeインクの銀粒子密度の低下を抑制することができる。すなわち、Meインクの融着が不十分であることに起因する、茶色く見える画像弊害を抑制することができる。この効果は、走査順序を変更する画素の数が一部であっても得ることができる。さらに、走査順序の変更を行うことによって大きくなる着弾時間差が1走査分であったとしても、効果を得ることができる。
【0073】
前述したように、Meインクが付与された直後に隣接して有色インクが着弾した場合、Meインクの領域に有色インクの色材が流れ込む可能性があり、滲みや混色などの画像弊害が生じることがある。しかし、本実施形態の処理により、有色インクの色材が流れ込んだとしても、銀粒子の融着に影響を及ぼさないため、画像弊害は生じない。
【0074】
尚、走査順序を変更する際の、変更先の走査数を算出する方法について説明する。有色インクを付与する走査を後ろの走査に移動させる走査数をP、印字する印字幅をL(インチ)、一回の走査におけるキャリッジ116の平均移動速度をV(秒/インチ)、銀粒子の融着時間をT(秒)とする。移動走査数を算出する計算式は、下記の式1である。尚、計算結果の小数点以下は切り上げとする。
P=T/(V×L)・・・(式1)
【0075】
図16は、Meインク量に対する銀粒子の融着時間Tの関係を示す図である。銀粒子の着弾時間Tは、Meインク量が多ければ短くなり、少なければ長くなる。これは、銀粒子同士がくっつくことで銀粒子の融着が起こるため、銀粒子の密度が高いほど銀粒子同士がくっつきやすくなるためである。上記の特性は有色インクの滲みとは逆の特性となっている。よって、Meインクの境界部分のMeインク量が多いほど、融着時間Tが小さくなり、有色インクをメタリック記録領域との境界部分に早い段階から付与することができる。すなわち、有色領域のエッジのインク吐出を後ろの走査に遅らせる時間を小さくすることができる。Meインクの境界部分のMeインク量に応じて、当初決定された走査順序から遅らせる走査分の数を決定しても良い。
【0076】
図16を用い、Meインク量に基づき、有色インクを付与する走査順を遅らせるために変更する走査数の算出方法を説明する。単位面積あたりのMeインク量が20のときの銀粒子の融着時間をT1、255のときの銀粒子の融着時間をT2とする。また、境界部分のMeインク量をDとする。下記の式2により、融着時間Tを算出することができる。式2で融着時間Tが求められたら、式1を用いて移動させる走査数を算出できる。
T=D×(T2-T1)/(255-20)・・・(式2)
【0077】
この結果、Meインクの境界部分のMeインク量が少ない場合には、Meインクが付与されてから隣接する有色インクを付与するまでの時間差が多く必要になり、有色インクを付与する走査を遅くする、すなわち移動させる走査数を大きくする必要がある。一方、Meインク量が多い場合には、Meインクが付与されてから隣接する有色インクを付与するまでの時間差が小さくてすむため、有色インクを付与する走査を遅くする、すなわち移動させる走査数を小さくすることができる。このように、付与されるMeインクの量に基づいて融着時間を求め、融着時間に基づいて有色インクを付与する変更先の走査を決定することができる。
【0078】
尚、Meインクが付与されてから融着時間T以上の時間が経った後に有色インクが付与されればよいため、全てのエッジ画素の走査順序を変更する必要がないことは言うまでもない。ある画素に付与されるMeインクと、当該画素に隣接する画素に付与される有色インクの着弾時間差が融着時間Tよりも短い場合に、着弾時間差が融着時間Tよりも長くなるように、有色インクを付与する変更先の走査を決定すればよい。
【0079】
一般的に、入力される画像データの解像度の方が、量子化処理後のドットデータの解像度よりも小さいため、Meインク量データを量子化処理後の解像度とすると、データ量が大きくなってしまう。これにより、高速印刷時にRAM112へのアクセス速度が足りなくなる可能性がある。アクセス速度が足りなくなった場合には、記録ヘッド115へのデータ転送が行えなくなり、記録動作が止まってしまうことになる。そのため、上記に加え、Meインクの量子化結果を参照して、有色インクを付与する走査を遅らせるかどうかを判断する構成でも良い。量子化結果は、Meインク量が多くなると、単位面積当たりの1が多くなるため、量子化結果を用いることで、式2を用いた方法と類似した効果を持った処理を行うことができる。具体的には、以下である。式1を用いて、Meインク量が20である場合のP1と、Meインク量が255である場合のP2を算出する。次に、有色領域のエッジであることを示す属性が「1」の画素のうちの一つを注目画素とする。その注目画素と同じ画素位置を中心にして周囲8画素のMeインクの量子化データを参照する。参照した結果、量子化データが「1」の画素が1個以下ある場合には、P1分走査を遅らせる。2個以上である場合には、P2分走査を遅らせる。このような構成によって、データ量を削減しつつ、Meインク量に応じたドット着弾順を制御することができる。
【0080】
尚、上記の処理では、有色領域のエッジを示す属性値を用いて、走査順決定処理の間引きマスクを変更することで有色インクのドットの着弾順を移動させ、Meインクと有色インクの着弾時間差が融着時間以上となるようにした。尚、量子化処理結果に有色領域のエッジを示す属性情報を付加する方法であっても良い。量子化処理結果は、インクドットを付与するかしないかの2値ではなく、所定エリア内にドットを何発吐出するかの多値となる場合もある。例えば、入力画像が0から255までの256値の画素値データ場合、量子化時には0から4までの5値の画素値データとなるように量子化処理を行うことができる。その後、どこでインクドットを付与するかを決定する多値量子化展開処理を行うことで、走査毎にインクドットを付与するかしないかの2値データを生成する。これにより、同じ量子化値であったとしても、インクドットの着弾順と配置を制御することができる。
【0081】
以下、多値量子化展開処理を用いてインクドットの着弾順を制御する方法について説明する。まず、量子化処理時に、有色領域のエッジを示す属性データに基づき、量子化結果を変更する。本実施形態では、量子化結果が「0」ではなく、且つ、有色領域のエッジを示す属性データが「1」である場合に、量子化結果に「4」を加算する。これにより、有色領域のエッジを示す属性データが「1」、すなわち有色領域のエッジ画素である場合、有色インクの量子化結果は「5」から「8」のいずれかの値を取ることになる。
【0082】
図20(a)から(e)は、多値量子化展開処理に利用される展開マスクの一例であり、図20(f)は、インクを付与するかどうかを決定するための対応表である。図21(a)~(e)の展開マスクは多値である。図20(f)の対応表を用い、量子化された量子化値とその画素位置に対応した展開マスクの値とに基づき、インクドットを付与するかどうかを決定する。図20(f)の対応表では、〇がインクドットの付与、×がインクドットを付与しないことを表している。CMYKの有色インクにおいて、各走査に対応している展開マスクは、1走査目から4走査目は図20(a)、5走査目は図20(b)、6走査目は図20(c)、7走査目で図20(d)、8走査目は図21(e)に対応する。
【0083】
この結果、量子化値が「5」から「8」である場合は、8回の記録走査のうち、7走査目と8走査目でインクドットが付与されることになる。すなわち、有色領域のエッジである境界画素に対しては、後半の走査でインクドットを付与することができるため、Meインクと有色インクの着弾時間差が広がり、Meインクの銀粒子の融着が完了した後に、有色領域の境界領域に有色インクが着弾する。これにより、Meインクが茶色く見える画像弊害を抑制することができる。
【0084】
尚、上記構成では、ステップS704において、フィルタ処理後の値が「0」でないところを境界(エッジ)の画素と判断し、エッジ画素であるかどうかを属性値が「0」もしくは「1」で判断した。一方、ガウシアンフィルタを用いることにより、エッジからの距離に基づいたエッジ強度を検出し、エッジ強度に基づいて有色インクの付与を遅らせるかどうかを決定する方法であってもよい。このとき、エッジ画素であるかどうかを示す属性データに対し、属性値が「1」である画素値を「255」に変換し、変換後のデータにガウシアンフィルタをかける。本実施形態では、有色インクが付与される有色領域のエッジを抽出することを目的としているため、フィルタ処理を行った結果、有色インクが付与される有色領域ではない画素を「0」とする。これにより、メタリック領域との境界(エッジ)に近いほど、属性値が大きくなる。そして、図21に示すような確率マスクを用い、上述の走査順決定処理の実行を切り替える。具体的には、図21の確率マスクは、16x16のマスクであり、画像の左上から敷き詰めるようにマスクが繰り返され、注目画素と対応する位置の確率マスクの値が決定される。つまり、画像の左上を原点とし、注目画素のx座標とy座標によって決定される。図21のような16x16マスクでは、注目画素に対応する確率マスクの位置は、x座標を16で割った余りのx座標と、y座標の16で割った余りのy座標である。注目画素の属性値と対応する確率マスク値を比べ、属性値の方が大きいときに走査順決定処理を実行する。属性値の方が小さい場合は走査順決定処理を実行しない。このような構成により、エッジからの距離に基づいて、インクを付与する走査を遅らせる画素を確率的に切り替えること可能になる。
【0085】
このように、メタリック領域のエッジ画素からの距離が近い画素は、インクを付与する走査を遅らせる走査数が大きくなり、メタリック領域のエッジ画素からの距離が遠い画素は、インクを付与する走査を遅らせる走査数が小さくなる。この結果、有色領域のエッジ画素と判断された領域だけでなく、メタリック領域と有色領域の境界から離れた画素に対しても、Meインクと有色インクの着弾時間差を大きくすることができ、Meインクが茶色く見える画像弊害を抑制することができる。
【0086】
尚、ガウシアンフィルタのサイズ及び係数は、有色インクの滲み率に基づいて決定することができる。滲み率は、インクドットの液滴径と記録媒体上でのドット径に基づいて算出できる。滲み率が大きいほど有色インクの溶媒が遠くまで流れ込むため、エッジから離れた画素においても有色インクとMeインクの着弾時間差を広げる必要がある。よって、滲み率が大きいほど、ガウシアンフィルタサイズを大きく、ガウシアン係数を大きくすることが好ましい。また、所定のエッジ距離まで走査順決定処理を実行したい場合は、ガウシアンフィルタでなく、平均値フィルタで処理することとで実現できる。所定のエッジ距離は平均値フィルタのサイズで制御できる。
【0087】
図21に示す確率マスクは、「0」から「255」までの値を取っているが、フィルタサイズと係数によって変更してもよい。エッジ画素における属性値がフィルタ係数によっては255より小さくなるため、エッジ画素における属性値の最小値を確率マスクの最大値しても良い。これにより、エッジ画素は必ず走査順決定処理を実行することができる。
【0088】
さらに、有色領域とメタリック領域の境界に隣接する、メタリック領域側のエッジ画素のMeインク量に応じて属性値を変更しても良い。境界領域のみ走査順決定処理により走査順を変更されると、変更されていない画素との着弾時間差が発生する。一般的に、着弾時間差が大きくなると、記録媒体上での定着状態が異なり、色ムラや光沢ムラ等の画像弊害が生じる可能性がある。そのため、メタリック領域のエッジのMeインク量が多い場合は有色インクのエッジに対する走査を遅らせる画素の割合を少なくし、Meインク量が少ない場合は、走査を遅らせる画素の割合を多くしてもよい。
【0089】
具体的には、メタリック領域のエッジのMeインク量が多い場合には属性値を小さくし、Meインク量が少ない場合には属性値を大きくするような処理を行う。Meインク量をM、変更前の属性値をA、変更後の属性値をA´とすると、下記の式を用いて変更できる。
A´=A×(255/M)・・・(式3)
【0090】
この結果、メタリック領域のエッジ画素のインク量が少ないほど、有色インクを付与する走査順を遅らせる画素数が多くなり、メタリック領域のエッジ画素のインク量が多いほど、走査順を遅らせる画素数が少なくなる。これにより、エッジのMeインク量が少ない画素に近い領域は、有色インクの付与を遅らせる走査順決定処理を実行する画素の数が多くなり、エッジのMeインク量が多い画素に近い領域は有色インクの付与を遅らせる走査順決定処理を実行する画素の数が少なくなる。その結果、Meインク量に基づいて最適に走査順を決定することができ、エッジ画素における、着弾時間差によるムラを必要最小限に抑制しつつ、Meインクが茶色く見える画像弊害を抑制することができる。
【0091】
(第2の実施形態)
<処理フロー2>
第1の実施形態では、有色領域のエッジを示す画素に付与される有色インクの走査順序を制御するものであった。本実施形態では、さらにメタリック領域境界部の有色インクドットの付与順を制御する。
【0092】
上述したように、記録媒体上に付与されたMeインクの銀粒子が融着することで、金属光沢が発現する。さらに、融着後のメタリック膜上に有色インクを付与することで、色を持った金属光沢であるカラーメタリックを発現できる。通常のカラーメタリック記録では、Meインクが融着後、有色インクを付与する。
【0093】
一方、前述の実施形態で述べたように、融着に必要な時間は、Meインク内の銀粒子密度で定まるものである。そのため、カラーメタリック記録を行う領域の中央部と端部では、銀粒子の密度が異なるため、融着時間が異なる。従って、カラーメタリック領域の中央部のMeインク量に基づいて算出された融着時間では、有色領域とカラーメタリック領域の境界部分である端部の融着時間よりも短い。このため、融着が完了する前に有色インクを付与したことによって、有色領域との境界で茶色く見える画像弊害が発生してしまう。
【0094】
図17は、本実施形態における処理を示すフローチャートである。ステップS1701とステップS1702は第1の実施形態と同等の処理であるため、説明を省略する。ステップS1703では、ステップS1702で生成したMeインク量からメタリック領域を示すデータを生成する。本実施形態では、Meインク量が「0」ではない領域をメタリック領域と定義する。メタリック領域であるかどうかの情報は、属性値として保持する。属性値は、「1」がメタリック領域を示し、「0」がメタリック領域ではない領域、すなわち非メタリック領域を示す。左上を原点としてX方向へ順番に1画素ごとのメタリック領域を示す属性値は、RAM112に保存される。
【0095】
ステップS1704からステップS1709では、第1の実施形態で有色領域属性に基づいて行った同等の処理をメタリック領域属性に基づいて行う。すなわち、メタリックインクが付与されるメタリック領域のエッジを検出し、メタリックが付与される画素のうちの端部の画素に対し、メタリックインクが融着した後に有色インクが付与されるように、当該画素に対する有色インクを付与する走査順序を制御する。
【0096】
このような構成により、メタリック領域の境界部分の有色インクに対し、有色インクを付与する走査を後ろに移動させることで、Meインクと有色インクの着弾時間差を広げ、Meインクの銀粒子が融着した後にメタリック境界部分の有色インクが着弾する。そして上述したような、上から付与された有色インクの溶媒によってMeインクの銀粒子密度が下がることが抑制され、Meインクが茶色く見える画像弊害を抑制することができる。
【0097】
本実施形態の構成は、第1の実施形態の処理と平行して行うことが可能である。その場合、有色領域の属性とメタリック領域の属性は、一つの属性値で表現することができる。具体的には、属性値が「1」の画素は有色領域、属性値が「0」の画素はメタリック領域を示し、各領域の境界部を検出するには、上述したエッジ抽出フィルタを用いればよい。この場合は、属性値が「1」と「0」の両方のエッジを抽出するため、属性値を参照してエッジとするかどうかの処理は行わない。これにより、有色領域境界部とメタリック領域境界部の両方に対し、有色インクを付与する走査を遅らせることができ、同時にMeインクが茶色く見える画像弊害を抑制することができる。また、領域属性を参照することにより、有色領域境界部とメタリック領域境界部のいずれであるかを判断することができるため、各領域のエッジに付与される有色インクの走査を適宜設定することが可能である。
【0098】
(第3の実施形態)
<処理フロー3>
前述の第1の実施形態では、有色インクを付与する走査を後ろに遅らせることによって、隣接するMeインクとの着弾時間差を確保する構成とした。Meインクの融着が完了してから隣接する有色インクが付与されれば、本発明の課題を解決することができるため、本発明は、有色インクの走査を変更する構成に限られない。
【0099】
本実施形態では、メタリック領域の境界領域のMeインクの付与順を制御する。Meインクが付与されるメタリック領域の端部の画素に対してMeインクが付与される走査を、前の走査に早めるように変更する。Meインクが付与される画素の中からエッジ画素を検出し、検出されたエッジ画素にMeインクが付与される走査と、隣接する画素に有色インクが付与される走査との走査数の差に基づき、Meインクが付与される走査を前の走査に早める。これにより、Meインクの融着時間を確保することができ、融着が不十分であることによる画像弊害を抑制することができる。
【0100】
図18は、本実施形態の処理を示すフローチャートである。ステップS1801からステップS1805までは、第2の実施形態と同等の処理である。ステップS1806~ステップS1808においては、ステップS1802で生成したメタリック領域の境界を示す属性値に基づき、変更前の走査よりも前の走査でMeインクを付与するように走査順序を変更することにより、インクドットの着弾順を制御する。本例では、マスク処理後に4走査目で付与することが決定したMeインクを、2走査目で付与するように変更する。インクドットの着弾順の制御は、第2の実施形態のステップS1706からステップS1708と同等の処理である。
【0101】
図19は、本実施形態において各走査で付与されるMeインクの変更結果を示す図である。Meインクの4走査目で使用される図13(e)の間引きマスクに対して、メタリック領域のエッジを示す属性値を参照し、図19(d)のように変更する。変更された画素は、右上がりの斜線で表した画素である。さらに、Meインクの1走査目で使用される図13(b)の間引きマスクに対して、メタリック領域のエッジを示す属性値を参照し、図19(a)のように変更する。変更された画素は、右上がりの斜線で表した画素である。このように、メタリック領域の境界(エッジ)部分のMeインクに対し、ドット着弾順をより先の走査に移動させ、Meインクと有色インクの着弾時間差を広げる。これにより、Meインクの銀粒子が融着した後に、メタリック領域の境界端部に有色インクが付与されるため、後から着弾した有色インクの溶媒によってMeインクの銀粒子密度が下がることによる融着不良の画像弊害を抑制することができる。
【0102】
さらに、本実施形態では、第1の実施形態の構成と第2の実施形態の構成とを平行して実行しても良い。平行して実行することで、さらにMeインクと有色インクの着弾時間の間隔が広がり、茶色く見える画像弊害を抑制することができる。
【符号の説明】
【0103】
109 画像処理アクセラレータ
111 CPU
114 記録ヘッドコントローラ
115 記録ヘッド
116 キャリッジ
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