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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188469
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04119 20160101AFI20221214BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20221214BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20221214BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221214BHJP
【FI】
H01M8/04119
H01M8/2484
H01M8/02
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096520
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 高弘
(72)【発明者】
【氏名】大平 紘敬
(72)【発明者】
【氏名】堀 良輔
(72)【発明者】
【氏名】福田 健太郎
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE11
5H127AA06
5H127AB29
5H127AC10
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127EE17
(57)【要約】
【課題】膜電極の乾燥を簡易に抑制する燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料電池5は、積層されている複数のセル30と、ファン4が回転することにより流れる酸化剤ガスが通過するフィルタ65と、フィルタ65に配置されている吸湿部材70と、を備え、吸湿部材70は、ファン4が停止しているとき、酸化剤ガスに含まれる水を吸収し、ファン4が回転するとき、フィルタ65を通過する酸化剤ガスに吸収した水を放出し、吸湿部材70によって放出された水とともに酸化剤ガスがセル30の酸化剤流路551を経由してカソード側拡散層452を流れることにより、吸湿部材70によって放出された水が膜電極450に接触する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池であって、
積層されている複数のセル(30)と、
ファン(4)が回転することにより流れる酸化剤ガスが通過するフィルタ(65)と、
前記フィルタに配置されている吸湿部材(70)と、
を備え、
前記セルは、
水素が流れる水素流路(351)を形成する燃料部(350)と、
前記複数のセルの積層方向(Ds)に前記燃料部と接続されているとともに、前記水素流路と連通するアノード側拡散層(40)と、
前記フィルタを通過した酸化剤ガスが流れる酸化剤流路(551)を形成する酸化剤部(550)と、
前記積層方向に前記酸化剤部と接続されているとともに、前記酸化剤流路と連通するカソード側拡散層(50)と、
前記アノード側拡散層を流れた水素を分解するアノード側触媒層(451)、前記アノード側触媒層によって生成された水素イオンが透過する電解質膜(453)および電子と前記カソード側拡散層を流れた酸化剤ガスと前記電解質膜を透過した水素イオンとを結合させるカソード側触媒層(452)を含む膜電極(450)と、
を有し、
前記吸湿部材は、前記ファンが停止しているとき、酸化剤ガスに含まれる水を吸収し、前記ファンが回転するとき、前記フィルタを通過する酸化剤ガスに吸収した水を放出し、
前記吸湿部材によって放出された水とともに酸化剤ガスが前記酸化剤流路を経由して前記カソード側拡散層を流れることにより、前記吸湿部材によって放出された水が前記膜電極に接触する燃料電池。
【請求項2】
前記フィルタの内部空間および前記酸化剤流路に連通するダクト流路(611、622)を形成するダクト(61、62)をさらに備え、
前記フィルタは、前記ダクト流路内に配置されており、
前記吸湿部材によって放出された水とともに酸化剤ガスが前記ダクト流路および前記酸化剤流路を経由して前記カソード側拡散層を流れることにより、前記吸湿部材によって放出された水が前記膜電極に接触する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記酸化剤流路のうち前記ファンとは反対側に連通する第1ダクト流路(611)を形成する第1ダクト(61)と、
前記酸化剤流路のうち前記ファン側に連通する第2ダクト流路(622)を形成する第2ダクト(62)と、
前記第1ダクト流路および前記第2ダクト流路に連通する第3ダクト流路(633)を形成する第3ダクト(63)と、
をさらに備え、
前記カソード側触媒層は、電子と前記カソード側拡散層を流れた酸化剤ガスと前記電解質膜を透過した水素イオンとを結合させることにより、水を生成し、
前記カソード側触媒層によって生成された水は、前記ファンの回転によって酸化剤ガスとともに吸い込まれることにより、前記カソード側拡散層および前記酸化剤流路を経由して前記第2ダクト流路を流れ、
前記フィルタは、前記第2ダクト流路および前記第3ダクト流路に配置されており、
前記吸湿部材は、前記ファンが回転するとき、前記第2ダクト流路を流れる前記カソード側触媒層によって生成された水を吸収し、前記第1ダクト流路を流れる酸化剤ガスに、吸収した水を、前記第3ダクト流路に配置されている前記フィルタを経由して放出し、
前記吸湿部材によって放出された水とともに酸化剤ガスが前記酸化剤流路を経由して前記カソード側拡散層を流れることにより、前記吸湿部材によって放出された水が前記膜電極に接触する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記酸化剤流路のうち前記ファンとは反対側に連通する第1ダクト流路(611)を形成する第1ダクト(61)と、
前記酸化剤流路のうち前記ファン側に連通する第2ダクト流路(622)を形成する第2ダクト(62)と、
前記第1ダクト流路および前記第2ダクト流路に連通する第3ダクト流路(633)を形成する第3ダクト(63)と、
をさらに備え、
前記カソード側触媒層は、電子と前記カソード側拡散層を流れた酸化剤ガスと前記電解質膜を透過した水素イオンとを結合させることにより、水を生成し、
前記カソード側触媒層によって生成された水は、前記ファンの回転によって酸化剤ガスとともに送風されることにより、前記カソード側拡散層および前記酸化剤流路を経由して前記第1ダクト流路を流れ、
前記フィルタは、前記第1ダクト流路および前記第3ダクト流路に配置されており、
前記吸湿部材は、前記ファンが回転するとき、前記第1ダクト流路を流れる前記カソード側触媒層によって生成された水を吸収し、前記第2ダクト流路を流れる酸化剤ガスに、吸収した水を、前記第3ダクト流路に配置されている前記フィルタを経由して放出し、
前記吸湿部材によって放出された水とともに酸化剤ガスが前記酸化剤流路を経由して前記カソード側拡散層を流れることにより、前記吸湿部材によって放出された水が前記膜電極に接触する請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
燃料電池であって、
積層されている複数のセル(30)と、
前記セルを通過した水素が流れる出口管(8)と連通するとともにファン(4)が回転することにより流れる酸化剤ガスが通過するダクト流路(611、622)を形成するダクト(61,62)と、
前記ダクト流路に配置されているとともに、前記出口管から流れる水素と前記ダクト流路を流れる酸化剤ガスに含まれる酸素とを結合させることにより水を生成する加湿部(80)と、
を備え、
前記セルは、
水素が流れる水素流路(351)を形成する燃料部(350)と、
前記複数のセルの積層方向(Ds)に前記燃料部と接続されているとともに、前記水素流路と連通するアノード側拡散層(40)と、
前記ダクト流路に連通するとともに前記ダクト流路を通過した酸化剤ガスが流れる酸化剤流路(551)を形成する酸化剤部(550)と、
前記積層方向に前記酸化剤部と接続されているとともに、前記酸化剤流路と連通するカソード側拡散層(50)と、
前記アノード側拡散層を流れた水素を分解するアノード側触媒層(451)、前記アノード側触媒層によって生成された水素イオンが透過する電解質膜(453)および電子と前記カソード側拡散層を流れた酸化剤ガスと前記電解質膜を透過した水素イオンとを結合させるカソード側触媒層(452)を含む膜電極(450)と、
を有し、
前記加湿部によって生成された水とともに酸化剤ガスが前記酸化剤流路を経由して前記カソード側拡散層を流れることにより、前記加湿部によって生成された水が前記膜電極に接触する燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、酸化剤ガス流路から流出した酸化剤ガスの水分を凝縮するとともにその凝縮した水を貯蔵する水貯蔵部と、水貯蔵部に貯蔵された水を燃料ガス流路の入口に供給する水供給部とを備える燃料電池システムが知られている。これらの水貯蔵部および水供給部により、膜電極の乾燥が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-38973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等の検討によれば、特許文献1に記載されている燃料電池システムでは、酸化剤ガス流路から流出した酸化剤ガスの水分を凝縮するとともにその凝縮した水を貯蔵するために、三方弁が制御される。また、この三方弁が制御されることにより、その貯蔵された水が燃料ガス流路の入口に供給される。このため、膜電極の乾燥を抑制するための処理が煩雑となる。
【0005】
本開示は、膜電極の乾燥を簡易に抑制する燃料電池を提供することを目的とする。
【0006】
請求項1に記載の発明は、燃料電池であって、積層されている複数のセル(30)と、ファン(4)が回転することにより流れる酸化剤ガスが通過するフィルタ(65)と、フィルタに配置されている吸湿部材(70)と、を備え、セルは、水素が流れる水素流路(351)を形成する燃料部(350)と、複数のセルの積層方向(Ds)に燃料部と接続されているとともに、水素流路と連通するアノード側拡散層(40)と、フィルタを通過した酸化剤ガスが流れる酸化剤流路(551)を形成する酸化剤部(550)と、積層方向に酸化剤部と接続されているとともに、酸化剤流路と連通するカソード側拡散層(50)と、アノード側拡散層を流れた水素を分解するアノード側触媒層(451)、アノード側触媒層によって生成された水素イオンが透過する電解質膜(453)および電子とカソード側拡散層を流れた酸化剤ガスと電解質膜を透過した水素イオンとを結合させるカソード側触媒層(452)を含む膜電極(450)と、を有し、吸湿部材は、ファンが停止しているとき、酸化剤ガスに含まれる水を吸収し、ファンが回転するとき、フィルタを通過する酸化剤ガスに吸収した水を放出し、吸湿部材によって放出された水とともに酸化剤ガスが酸化剤流路を経由してカソード側拡散層を流れることにより、吸湿部材によって放出された水が膜電極に接触する燃料電池である。
【0007】
これにより、三方弁等の弁を制御することなく、膜電極の乾燥が抑制される。したがって、膜電極の乾燥が簡易になる。
【0008】
請求項5に記載の発明は、燃料電池であって、積層されている複数のセル(30)と、セルを通過した水素が流れる出口管(8)と連通するとともにファン(4)が回転することにより流れる酸化剤ガスが通過するダクト流路(611、622)を形成するダクト(61,62)と、ダクト流路に配置されているとともに、出口管から流れる水素とダクト流路を流れる酸化剤ガスに含まれる酸素とを結合させることにより水を生成する加湿部(80)と、を備え、セルは、水素が流れる水素流路(351)を形成する燃料部(350)と、複数のセルの積層方向(Ds)に燃料部と接続されているとともに、水素流路と連通するアノード側拡散層(40)と、ダクト流路に連通するとともにダクト流路を通過した酸化剤ガスが流れる酸化剤流路(551)を形成する酸化剤部(550)と、積層方向に酸化剤部と接続されているとともに、酸化剤流路と連通するカソード側拡散層(50)と、アノード側拡散層を流れた水素を分解するアノード側触媒層(451)、アノード側触媒層によって生成された水素イオンが透過する電解質膜(453)および電子とカソード側拡散層を流れた酸化剤ガスと電解質膜を透過した水素イオンとを結合させるカソード側触媒層(452)を含む膜電極(450)と、を有し、加湿部によって生成された水とともに酸化剤ガスが酸化剤流路を経由してカソード側拡散層を流れることにより、加湿部によって生成された水が膜電極に接触する燃料電池である。
【0009】
これにより、三方弁を制御することなく、膜電極の乾燥が抑制される。したがって、膜電極の乾燥が簡易になる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の燃料電池が用いられる燃料電池システムの構成図。
図2】燃料電池の断面図。
図3図2のIII-III線断面図。
図4】セルによる化学反応を示す模式図。
図5】吸湿部材による加湿有無の電圧比を示す図。
図6】第2実施形態の燃料電池の断面図。
図7図6のVII-VII線断面図。
図8】第3実施形態の燃料電池の断面図。
図9】第4実施形態の燃料電池の断面図。
図10】他の実施形態における燃料電池の断面図。
図11】他の実施形態における燃料電池の断面図。
図12】他の実施形態における燃料電池の断面図。
図13】他の実施形態における燃料電池の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
本実施形態の燃料電池5は、燃料電池システム1に用いられる。まず、この燃料電池システム1について説明する。
【0014】
燃料電池システム1は、図1に示すように、水素ボンベ2、水素入口管3、複数のファン4、燃料電池5、二次電池6、負荷7、水素出口管8、排気弁9およびECU10を備える。
【0015】
水素ボンベ2は、水素を貯蔵している。水素入口管3は、筒状に形成されている。また、水素入口管3は、水素ボンベ2に接続されている。
【0016】
ファン4は、後述の燃料電池5に取り付けられている。また、ファン4は、燃料電池5側の空気を吸い込むことによって、燃料電池5に空気を供給する。なお、以下では、ファン4が吸い込む方向を単に吸込方向Dvと記載する。
【0017】
燃料電池5は、PEFCであって、水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。また、燃料電池5は、複数のセル30が積層されることによって形成されている。さらに、燃料電池5は、発電した直流電力を後述の二次電池6および負荷7に供給する。この燃料電池5の詳細については、後述する。なお、PEFCは、Polymer Electrolyte Fuel Cellの略である。また、水素は、燃料ガスに対応する。さらに、空気は、酸化剤ガスに対応する。また、以下では、燃料電池5のセル30が積層されている方向を単に積層方向Dsと記載する。
【0018】
二次電池6は、リチウムイオン電池およびニッケル水素電池等であって、充放電する。二次電池6は、燃料電池5からの直流電力によって充電される。また、二次電池6は、放電することにより直流電力をファン4および後述の負荷7に供給する。
【0019】
負荷7は、例えば、インバータおよびモータである。このインバータは、燃料電池5および二次電池6からの直流電力を交流電力に変換する。また、このインバータは、この変換した交流電力をモータに供給する。これにより、モータは、回転する。
【0020】
水素出口管8は、筒状に形成されている。また、水素出口管8は、燃料電池5および燃料電池システム1の外部に接続されている。排気弁9は、例えば、電磁弁であって、水素出口管8の流路を開閉する。
【0021】
ECU10は、マイコン等を主体として構成されており、CPU、ROM、フラッシュメモリ、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するバスライン等を備えている。また、ECU10は、ROMに記憶されているプログラムを実行する。このとき、ECU10は、燃料電池システム1の外部からの要求に基づいて、ファン4、二次電池6および排気弁9を制御する。
【0022】
以上のように、燃料電池システム1は、構成されている。次に、燃料電池5の構成の詳細について説明する。
【0023】
燃料電池5は、図2および図3に示すように、アノード拘束プレート20、アノードターミナル22、複数のセル30、カソードターミナル24、カソード拘束プレート26、第1ダクト61、フィルタ65、吸湿部材70および第2ダクト62を備える。
【0024】
アノード拘束プレート20は、電気絶縁性を有する樹脂等で板状に形成されている。また、アノード拘束プレート20は、図3に示すように、水素用アノード拘束入口穴201および水素用アノード拘束出口穴202を有する。
【0025】
水素用アノード拘束入口穴201は、水素入口管3の内部と連通している。水素用アノード拘束出口穴202は、水素出口管8の内部と連通している。
【0026】
アノードターミナル22は、燃料電池5の負極である。また、アノードターミナル22は、金属等で板状に形成されている。さらに、アノードターミナル22は、積層方向Dsに、アノード拘束プレート20と接続されている。また、積層方向Dsと直交する方向において、アノードターミナル22の長さは、アノード拘束プレート20の長さよりも小さい。このため、アノード拘束プレート20は、アノードターミナル22から積層方向Dsと直交する方向に突き出ている。さらに、アノードターミナル22は、水素用アノードターミナル入口穴221および水素用アノードターミナル出口穴222を有する。
【0027】
水素用アノードターミナル入口穴221は、水素用アノード拘束入口穴201と連通している。水素用アノードターミナル出口穴222は、水素用アノード拘束出口穴202と連通している。
【0028】
セル30は、図2および図3に示すように、水素プレート35、アノード側拡散層40、膜電極接合体45、カソード側拡散層50およびセパレータ55を備える。
【0029】
水素プレート35は、ステンレス鋼等で形成されている。また、水素プレート35は、水素流路形成部350、水素流路351、水素プレートシール部352、水素用第1入口穴361および水素用第1出口穴362を有する。
【0030】
水素プレートシール部352は、積層方向Dsおよび水素が水素流路351を流れる方向と直交する方向に水素流路形成部350と接続されているとともに、水素流路形成部350を囲っている。また、複数のセル30のうちアノードターミナル22に接続されているセル30の水素プレートシール部352は、アノードターミナル22のうちアノード拘束プレート20とは反対側と接続されている。
【0031】
水素用第1入口穴361は、水素プレートシール部352および水素流路形成部350によって形成される空間である。また、複数のセル30のうちアノードターミナル22に接続されているセル30の水素用第1入口穴361は、水素用アノードターミナル入口穴221と連通している。
【0032】
水素用第1出口穴362は、水素プレートシール部352および水素流路形成部350の間に形成される空間である。また、複数のセル30のうちアノードターミナル22に接続されているセル30の水素用第1出口穴362は、水素用アノードターミナル出口穴222と連通している。
【0033】
アノード側拡散層40は、アノード側多孔体400およびアノード側シール部410を有する。
【0034】
アノード側多孔体400は、カーボンペーパー、カーボンクロス等のカーボン多孔質材および金属メッシュ、発砲金属等の金属多孔質材等で形成されている。このため、アノード側多孔体400は、ガス透過性および電子伝導性を有する。また、アノード側多孔体400の開孔は、水素流路351と連通している。
【0035】
アノード側シール部410は、ゴム等で形成されている。また、アノード側シール部410は、積層方向Dsと直交する方向にアノード側多孔体400と接続されていることにより、アノード側多孔体400を囲っている。さらに、アノード側シール部410は、積層方向Dsに、水素プレートシール部352と接続されている。また、アノード側シール部410は、水素用第2入口穴421および水素用第2出口穴422を含む。
【0036】
水素用第2入口穴421は、水素用第1入口穴361と連通している。水素用第2出口穴422は、水素用第1出口穴362と連通している。
【0037】
膜電極接合体45は、膜電極450および膜電極シール部460を有する。膜電極450は、アノード側触媒層451、カソード側触媒層452および電解質膜453を含む。
【0038】
アノード側触媒層451は、白金等の触媒、その触媒を担持するカーボンおよびそのカーボンを被覆するアイオノマーで形成されている。また、アノード側触媒層451は、積層方向Dsに、アノード側多孔体400と対向している。
【0039】
カソード側触媒層452は、白金等の触媒、その触媒を担持するカーボンおよびそのカーボンを被覆するアイオノマーで形成されている。
【0040】
電解質膜453は、陽イオン交換膜であって、含水性を有する炭化フッ素系、炭化水素系等の高分子材料で形成されている。また、電解質膜453は、積層方向Dsに、アノード側触媒層451およびカソード側触媒層452にて挟まれている。
【0041】
膜電極シール部460は、ゴム等で形成されている。また、膜電極シール部460は、積層方向Dsと直交する方向に膜電極450と接続されていることにより、膜電極450を囲っている。さらに、膜電極シール部460は、積層方向Dsに、アノード側シール部410のうち水素プレートシール部352とは反対側と接続されている。また、膜電極シール部460は、水素用第3入口穴461および水素用第3出口穴462を含む。
【0042】
水素用第3入口穴461は、水素用第2入口穴421と連通している。水素用第3出口穴462は、水素用第2出口穴422と連通している。
【0043】
カソード側拡散層50は、カソード側多孔体500およびカソード側シール部510を有する。
【0044】
カソード側多孔体500は、カーボンペーパー、カーボンクロス等のカーボン多孔質材および金属メッシュ、発砲金属等の金属多孔質材等で形成されている。このため、カソード側多孔体500は、ガス透過性および電子伝導性を有する。また、カソード側多孔体500は、積層方向Dsに、カソード側触媒層452と対向している。
【0045】
カソード側シール部510は、ゴム等で形成されている。また、カソード側シール部510は、積層方向Dsと直交する方向にカソード側多孔体500と接続されていることにより、カソード側多孔体500を囲っている。さらに、カソード側シール部510は、積層方向Dsに、膜電極シール部460のうちアノード側シール部410とは反対側と接続されている。また、カソード側シール部510は、水素用第4入口穴511および水素用第4出口穴512を含む。
【0046】
水素用第4入口穴511は、水素用第3入口穴461と連通している。水素用第4出口穴512は、水素用第3出口穴462と連通している。
【0047】
セパレータ55は、酸化剤流路形成部550、酸化剤流路551およびセパレータシール部560を有する。
【0048】
酸化剤流路形成部550は、ステンレス鋼等の金属で板状に形成されている。さらに、酸化剤流路形成部550には、吸込方向Dvに延びる複数の凹部が形成されている。これらの凹部は、積層方向Dsおよび吸込方向Dvと直交する方向に並列している。
【0049】
酸化剤流路551は、酸化剤流路形成部550の凹部によって形成される空間である。また、これらの凹部が積層方向Dsおよび吸込方向Dvと直交する方向に並列しているため、酸化剤流路551は、積層方向Dsおよび吸込方向Dvと直交する方向に並列している。
【0050】
セパレータシール部560は、ゴム等で形成されている。また、セパレータシール部560は、積層方向Dsおよび吸込方向Dvと直交する方向に、酸化剤流路形成部550と接続されている。さらに、セパレータシール部560は、積層方向Dsに、カソード側シール部510のうち膜電極シール部460とは反対側と接続されている。また、セパレータシール部560は、水素用第5入口穴561および水素用第5出口穴562を有する。
【0051】
水素用第5入口穴561は、水素用第4入口穴511および水素用第1入口穴361と連通している。水素用第5出口穴562は、水素用第4出口穴512および水素用第1出口穴362と連通している。
【0052】
カソードターミナル24は、燃料電池5の正極である。また、カソードターミナル24は、金属等で板状に形成されている。さらに、カソードターミナル24は、図3に示すように、積層方向Dsに、複数のセル30のうちカソード側におけるセパレータ55と接続されている。
【0053】
カソード拘束プレート26は、電気絶縁性を有する樹脂等で板状に形成されている。また、カソード拘束プレート26は、積層方向Dsに、カソードターミナル24と接続されている。さらに、積層方向Dsと直交する方向において、カソード拘束プレート26の長さは、カソードターミナル24の長さよりも大きい。このため、カソード拘束プレート26は、カソードターミナル24から積層方向Dsと直交する方向に突き出ている。また、カソード拘束プレート26の図示しない穴およびアノード拘束プレート20の図示しない穴に図示しないボルトが挿入されている。これにより、カソード拘束プレート26およびアノード拘束プレート20の間にて、アノードターミナル22、複数のセル30およびカソードターミナル24が拘束されている。
【0054】
第1ダクト61は、金属等で形成されている。また、第1ダクト61は、図2に示すように、筒状に形成されていることにより、第1ダクト流路611を形成する。さらに、第1ダクト61は、アノード拘束プレート20のうちファン4とは反対側に接続されているとともに、カソード拘束プレート26のうちファン4とは反対側に接続されている。これにより、第1ダクト流路611は、酸化剤流路551のうちファン4とは反対側に連通している。
【0055】
フィルタ65は、複数の孔を有する多孔体に形成されている。これにより、フィルタ65は、集塵する。また、フィルタ65は、第1ダクト流路611内に配置されている。このため、フィルタ65の開孔は、第1ダクト流路611に連通している。さらに、フィルタ65は、積層方向Dsに第1ダクト61と接続されているとともに、第1ダクト61の軸と直交する方向に延びている。これにより、フィルタ65は、第1ダクト流路611のうち酸化剤流路551とは反対側を覆っている。
【0056】
吸湿部材70は、フィルタ65内に配置されている。また、吸湿部材70は、例えば、シリカゲル、酸化カルシウム、モンモリナイト、アロフェン、ゼオライトおよび塩化カルシウム等で形成されている。これにより、吸湿部材70は、フィルタ65内の空気に含まれる水を吸収する。さらに、吸湿部材70は、吸湿部材70に含まれる水の量がフィルタ65内の空気に含まれる水の量よりも多いとき、その吸収した水をフィルタ65内に放出する。
【0057】
第2ダクト62は、金属等で形成されている。また、第2ダクト62は、筒状に形成されていることにより、第2ダクト流路622を形成する。さらに、第2ダクト62は、アノード拘束プレート20のうちファン4側に接続されているとともに、カソード拘束プレート26のうちファン4側に接続されている。これにより、第2ダクト流路622は、酸化剤流路551のうちファン4側に連通している。
【0058】
以上のように、燃料電池5は、構成されている。次に、燃料電池5による発電について説明する。
【0059】
ファン4が停止しているとき、吸湿部材70は、フィルタ65内の空気に含まれる水を吸収する。そして、ECU10がファン4に電圧を印加することにより、ファン4が回転する。これにより、ファン4が空気を吸い込むことによって、空気がフィルタ65を通過する。このとき、吸湿部材70がフィルタ65内の空気に含まれる水を吸収していたため、吸湿部材70に含まれる水の量は、フィルタ65を通過する空気に含まれる水の量が多い。このため、吸湿部材70は、吸湿部材70内とフィルタ65内との湿度差を小さくして吸湿部材70内とフィルタ65内とを平衡状態にするため、フィルタ65を通過する空気に、ファン4が停止しているときに吸収した水を放出する。これにより、吸湿部材70によって放出された水を含んだ空気が、第1ダクト流路611を経由して酸化剤流路551を流れる。酸化剤流路551を流れた空気の一部は、吸湿部材70によって放出された水とともに、カソード側多孔体500の開孔を流れる。このため、吸湿部材70によって放出された水は、膜電極450のカソード側触媒層452に接触する。
【0060】
また、水素が水素ボンベ2から水素入口管3内、水素用アノード拘束入口穴201、水素用アノードターミナル入口穴221および水素用第1入口穴361を流れる。また、水素用第1入口穴361を流れた水素の一部は、水素用第2入口穴421、水素用第3入口穴461、水素用第4入口穴511および水素用第5入口穴561を経由して、複数のセル30のうちカソード側におけるセル30の水素用第1入口穴361を流れる。
【0061】
さらに、水素用第1入口穴361を流れた水素の一部は、水素流路351およびアノード側多孔体400の開孔を流れる。
【0062】
そして、このとき、アノード側多孔体400の開孔を流れた水素は、以下化学反応式(1)に示すように、アノード側触媒層451の触媒によって、水素イオンと電子とに分解される。この化学反応によって生じた水素イオンは、図4に示すように、電解質膜453を透過してカソード側触媒層452に移動する。また、この化学反応によって生じた電子は、カソード側触媒層452に移動する。これにより、電気エネルギが発生する。この発生した電気エネルギによる直流電力が二次電池6に供給されることにより、二次電池6は、充電される。また、この発生した電気エネルギによる直流電力が負荷7に供給されることにより、負荷7であるインバータおよびモータが駆動する。さらに、アノード側触媒層451、電解質膜453およびカソード側触媒層452を含む膜電極接合体45に熱が発生する。この発生した熱は、カソード側触媒層452を経由してセパレータ55の酸化剤流路形成部550に伝わる。
【0063】
また、カソード側多孔体500の開孔を流れた空気に含まれる酸素は、以下化学反応式(2)に示すように、カソード側触媒層452の触媒によって、カソード側触媒層452に移動した水素イオンと電子と結合する。これにより、カソード側多孔体500の開孔を流れた空気に含まれる酸素は、水になる。
【0064】
(アノード)H→2H+2e ・・・(1)
(カソード)2H+1/2O+2e→HO ・・・(2)
【0065】
さらに、この生成された水の一部は、カソード側多孔体500の開孔を流れる。カソード側多孔体500の開孔を流れた水は、酸化剤流路551を流れる未反応の空気とともに、ファン4によって吸い込まれる。また、このとき、酸化剤流路形成部550は、膜電極接合体45から酸化剤流路形成部550に伝導した熱を、酸化剤流路551を流れる空気に放散する。これにより、セル30は、冷却される。
【0066】
さらに、この生成された水の一部は、電解質膜453およびアノード側触媒層451を通過してアノード側多孔体400の開孔を流れる。複数のセル30のうちアノードターミナル22に接続されているセル30のアノード側多孔体400の開孔を流れた水は、水素流路351を流れる未反応の水素とともに水素用第1出口穴362を流れる。また、複数のセル30のうちカソード側におけるセル30のアノード側多孔体400の開孔を流れた水は、水素流路351を流れる未反応の水素とともに、水素用第5出口穴562および水素用第4出口穴512を経由して、水素用第3出口穴462を流れる。水素用第3出口穴462を流れた水は、水素流路351を流れる未反応の水素とともに、水素用第2出口穴422を経由して、水素用第1出口穴362を流れる。そして、水素用第1出口穴362を流れた水および未反応の水素は、水素用アノードターミナル出口穴222および水素用アノード拘束出口穴202を流れる。また、このとき、ECU10が排気弁9に電流を流すことにより、排気弁9が開く。これにより、水素用アノード拘束出口穴202を流れた水および未反応の水素は、水素出口管8内を流れることにより、排出される。
【0067】
以上のように、燃料電池5は、発電する。次に、膜電極450の乾燥が簡易に抑制されることについて説明する。
【0068】
燃料電池5は、複数のセル30と、フィルタ65と、吸湿部材70と、を備える。複数のセル30は、積層されている。フィルタ65は、ファン4が回転することにより流れる空気が通過する。吸湿部材70は、フィルタ65に配置されている。また、セル30は、水素流路形成部350と、アノード側拡散層40と、酸化剤流路形成部550と、カソード側拡散層50と、膜電極450と、を有する。水素流路形成部350は、水素流路351を形成する。水素流路351は、水素が流れる。アノード側拡散層40は、積層方向Dsに水素流路形成部350と接続されているとともに、水素流路351と連通する。酸化剤流路形成部550は、フィルタ65を通過した空気が流れる酸化剤流路551を形成する。カソード側拡散層50は、積層方向Dsに酸化剤流路形成部550と接続されているとともに、酸化剤流路551と連通する。膜電極450は、アノード側触媒層451と、電解質膜453と、カソード側触媒層452とを含む。アノード側触媒層451は、アノード側拡散層40を流れた水素を分解する。電解質膜453は、アノード側触媒層451によって生成された水素イオンが透過する。カソード側触媒層452は、電子と、カソード側拡散層50を流れた空気と、電解質膜453を透過した水素イオンとを結合させる。さらに、吸湿部材70は、ファン4が停止しているとき、空気に含まれる水を吸収する。また、吸湿部材70は、ファン4が回転するとき、フィルタ65を通過する空気に吸収した水を放出する。さらに、吸湿部材70によって放出された水とともに空気が酸化剤流路551を経由してカソード側拡散層50を流れることにより、吸湿部材70によって放出された水が膜電極450に接触する。なお、空気は、酸化剤ガスに対応する。水素流路形成部350は、燃料部に対応する。酸化剤流路形成部550は、酸化剤部に対応する。
【0069】
これにより、三方弁等の弁を制御することなく、膜電極450の乾燥が抑制される。このため、図5に示すように、電流密度を1.4A/cmと固定した場合において吸湿部材70による加湿がないときの電圧を1としたとき、燃料電池5の電圧は、1.05であった。したがって、吸湿部材70による加湿をする燃料電池5の電圧は、吸湿部材70による加湿がないときの電圧と比較して、5%向上している。よって、燃料電池5では、膜電極450の乾燥が簡易になる。また、三方弁等の弁を制御することなく膜電極450の乾燥を抑制できることから、三方弁等の弁やその弁に接続される配管を設ける必要がなくなるため、燃料電池システム1の体格を弁や配管をなくした分小さくすることができる。
【0070】
また、燃料電池5では、以下に記載する効果も奏する。
【0071】
[1]燃料電池5は、第1ダクト61をさらに備える。第1ダクト61は、フィルタ65の開孔および酸化剤流路551に連通する第1ダクト流路611を形成する。また、フィルタ65は、第1ダクト流路611内に配置されている。さらに、吸湿部材70は、ファン4が回転するとき、第1ダクト流路611を通過する空気に、吸収した水を放出する。また、吸湿部材70によって放出された水とともに空気が第1ダクト流路611および酸化剤流路551を経由してカソード側拡散層50を流れることにより、吸湿部材70によって放出された水が膜電極450に接触する。なお、フィルタ65の開孔は、フィルタ65の内部空間に対応する。
【0072】
第1ダクト流路611が複数のセル30のそれぞれの酸化剤流路551に連通することから、第1ダクト流路611の大きさは、セル30の大きさよりも大きくなる。このため、フィルタ65を第1ダクト流路611に取り付けることは、フィルタ65をセル30に取り付ける場合と比較して容易である。したがって、フィルタ65が第1ダクト流路611内に配置されていることにより、フィルタ65の取り付けが容易になる。
【0073】
(第2実施形態)
第2実施形態では、フィルタ65の形態が第1実施形態と異なる。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0074】
フィルタ65は、図6および図7に示すように、第1ダクト61の内面の全面に接続されている。また、フィルタ65は、第1ダクト61の内面に沿う方向に延びている。これにより、フィルタ65は、第1ダクト流路611を流れる空気の流れに沿う方向に延びている。なお、フィルタ65は、第1ダクト61の内面の全面に接続されていることに限定されない。フィルタ65は、第1ダクト61の内面の一部に接続されてもよい。
【0075】
以上のように、第2実施形態は、構成されている。第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0076】
[2]フィルタ65は、第1ダクト61の内面に接続されているとともに、第1ダクト流路611を流れる空気の流れに沿う方向に延びている。
【0077】
フィルタ65が第1ダクト流路611を流れる空気の流れに沿う方向に延びていることにより、フィルタ65が第1ダクト流路611を流れる空気の流れと直交する方向に延びている場合と比較して、第1ダクト流路611を流れる空気の流れを妨げない。このため、第1ダクト流路611を流れる空気の圧力損失を低減させることができる。
【0078】
(第3実施形態)
第3実施形態では、燃料電池5が第3ダクト63をさらに備える。また、フィルタ65の形態が第1実施形態と異なる。これら以外は、第1実施形態と同様である。
【0079】
第3ダクト63は、金属等で形成されている。また、第3ダクト63は、図8に示すように、筒状に形成されていることにより、第3ダクト流路633を形成する。さらに、第3ダクト63は、第1ダクト61および第2ダクト62に接続されている。これにより、第3ダクト流路633は、第1ダクト流路611および第2ダクト流路622に連通している。
【0080】
フィルタ65は、第2ダクト62の内面に接続されていることにより、第2ダクト流路622内に配置されている。また、フィルタ65は、第3ダクト流路633に充填されている。なお、フィルタ65は、第3ダクト流路633に充填されていることに限定されないで、第3ダクト流路633の一部に配置されてもよい。
【0081】
以上のように、第3実施形態は、構成されている。次に、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、膜電極450の乾燥が簡易に抑制されることについて説明する。
【0082】
上記したように、カソード側多孔体500の開孔を流れた空気に含まれる酸素は、カソード側触媒層452の触媒によって、カソード側触媒層452に移動した水素イオンと電子と結合する。これにより、カソード側多孔体500の開孔を流れた空気に含まれる酸素は、水になる。この生成された水の一部は、カソード側多孔体500の開孔を流れる。カソード側多孔体500の開孔を流れた水は、酸化剤流路551を流れる未反応の空気とともに、ファン4によって吸い込まれる。
【0083】
このとき、カソード側触媒層452によって生成された水は、第2ダクト流路622を通過して、フィルタ65に流れる。このため、フィルタ65に配置されている吸湿部材70は、カソード側触媒層452によって生成された水を吸収する。また、フィルタ65が第3ダクト流路633に配置されているとともに第3ダクト流路633が第1ダクト流路611に連通していることから、吸湿部材70は、第1ダクト流路611を流れる空気にこの吸収した水を放出する。そして、この吸湿部材70によって放出された水とともに空気が酸化剤流路551を経由してカソード側拡散層50を流れることにより、吸湿部材70によって放出されたが膜電極450のカソード側触媒層452に接触する。
【0084】
これにより、三方弁等の弁を制御することなく、膜電極450の乾燥が抑制される。したがって、第1実施形態と同様に、膜電極450の乾燥が簡易になる。
【0085】
また、第3実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0086】
[3]燃料電池5は、第3ダクト63をさらに備える。第3ダクト63は、第1ダクト流路611および第2ダクト流路622に連通する第3ダクト流路633を形成する。また、フィルタ65は、第2ダクト流路622および第3ダクト流路633に配置されている。このため、吸湿部材70は、ファン4が回転するとき、第2ダクト流路622を流れるカソード側触媒層452によって生成された水を吸収する。また、吸湿部材70は、第1ダクト流路611を流れる空気に、この吸収した水を放出する。さらに、この吸湿部材70によって放出された水とともに空気が酸化剤流路551を経由してカソード側拡散層50を流れることにより、吸湿部材70によって放出された水が膜電極450のカソード側触媒層452に接触する。
【0087】
これにより、カソード側触媒層452によって生成された水が利用されて、膜電極450の乾燥が抑制される。
【0088】
(第4実施形態)
第4実施形態では、第1ダクト61の形態が第1実施形態と異なる。また、燃料電池5は、フィルタ65および吸湿部材70を備えていないで、加湿部80をさらに備える。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0089】
第1ダクト61は、図9に示すように、第1ダクト穴615を有する。第1ダクト穴615は、第1ダクト流路611および水素出口管8内に連通する。
【0090】
加湿部80は、白金等の触媒、その触媒を担持するカーボンおよびそのカーボンを被覆するアイオノマーで形成されている。また、加湿部80は、第1ダクト流路611に配置されているとともに、第1ダクト穴615を覆っている。
【0091】
以上のように、第4実施形態は、構成されている。次に、第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、膜電極450の乾燥が簡易に抑制されることについて説明する。
【0092】
上記したように、水素用第1出口穴362を流れた水および未反応の水素は、水素用アノードターミナル出口穴222および水素用アノード拘束出口穴202を流れる。また、このとき、ECU10が排気弁9に電流を流すことにより、排気弁9が開く。これにより、水素用アノード拘束出口穴202を流れた水および未反応の水素は、水素出口管8内を流れる。水素出口管8内を流れた水および未反応の水素は、第1ダクト穴615を流れることにより、加湿部80に接触する。このとき、加湿部80は、未反応の水素と第1ダクト流路611を流れる空気に含まれる酸素とを結合させることにより、水を生成する。
【0093】
この加湿部80によって生成された水は、第1ダクト流路611を経由して酸化剤流路551を流れる。酸化剤流路551を流れた空気の一部は、加湿部80によって生成された水とともに、カソード側多孔体500の開孔を流れる。このため、加湿部80によって生成された水は、膜電極450のカソード側触媒層452に接触する。
【0094】
これにより、三方弁を制御することなく、膜電極450の乾燥が抑制される。したがって、第1実施形態と同様に、膜電極450の乾燥が簡易になる。
【0095】
また、第4実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0096】
[4]燃料電池5は、複数のセル30と、第1ダクト61と、加湿部80と、を備える。複数のセル30は、積層されている。第1ダクト61は、第1ダクト流路611を形成する。第1ダクト流路611は、セル30を通過した水素が流れる水素出口管8と連通するとともに、ファン4が回転することにより流れる酸化剤ガスが通過する。加湿部80は、第1ダクト流路611に配置されているとともに、水素出口管8から流れる水素と第1ダクト流路611を流れる酸化剤ガスに含まれる酸素とを結合させることにより水を生成する。また、セル30は、水素流路形成部350と、アノード側拡散層40と、酸化剤流路形成部550と、カソード側拡散層50と、膜電極450とを有する。さらに、酸化剤流路形成部550は、第1ダクト流路611に連通するとともに第1ダクト流路611を通過した酸化剤ガスが流れる。そして、この加湿部80によって生成された水とともに酸化剤ガスが酸化剤流路551を経由してカソード側拡散層50を流れることにより、加湿部80によって生成された水が膜電極450に接触する。これにより、吸湿部材70を用いないで、膜電極450の乾燥が抑制される。
【0097】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0098】
上記実施形態では、ファン4は、セル30側の空気を吸い込むことによってセル30を通過する空気の流れを生成している。これに対して、ファン4は、セル30側の空気を吸い込むことによってセル30を通過する空気の流れを生成することに限定されない。ファン4は、セル30に向かって空気を送風することによってセル30を通過する空気の流れを生成してもよい。
【0099】
ファン4は、セル30に向かって空気を送風する場合、例えば、図10および図11に示すように、フィルタ65は、第2ダクト流路622内に配置される。この場合、ファン4が停止しているとき、吸湿部材70は、フィルタ65内の空気に含まれる水を吸収する。そして、ECU10がファン4に電圧を印加することにより、ファン4が回転する。これにより、ファン4が空気を送風することによって、空気がフィルタ65を通過する。このとき、吸湿部材70がフィルタ65内の空気に含まれる水を吸収していたため、吸湿部材70に含まれる水の量は、フィルタ65を通過する空気に含まれる水の量が多い。このため、吸湿部材70は、吸湿部材70内とフィルタ65内との湿度差を小さくして吸湿部材70内とフィルタ65内とを平衡状態にするため、フィルタ65を通過する空気に、ファン4が停止しているときに吸収した水を放出する。これにより、吸湿部材70によって放出された水を含んだ空気が、第2ダクト流路622を経由して酸化剤流路551を流れる。酸化剤流路551を流れた空気の一部は、吸湿部材70によって放出された水とともに、カソード側多孔体500の開孔を流れる。このため、吸湿部材70によって放出された水は、膜電極450のカソード側触媒層452に接触する。したがって、このような形態であっても、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0100】
また、ファン4は、セル30に向かって空気を送風する場合、図12に示すように、フィルタ65は、第1ダクト流路611内に配置される。このとき、カソード側触媒層452によって生成された水は、第1ダクト流路611を通過して、フィルタ65に流れる。このため、フィルタ65に配置されている吸湿部材70は、カソード側触媒層452によって生成された水を吸収する。また、フィルタ65が第3ダクト流路633に配置されているとともに第3ダクト流路633が第2ダクト流路622に連通していることから、吸湿部材70は、第2ダクト流路622を流れる空気にこの吸収した水を放出する。そして、この吸湿部材70によって放出された水とともに空気が酸化剤流路551を経由してカソード側拡散層50を流れることにより、吸湿部材70によって放出された水が膜電極450のカソード側触媒層452に接触する。よって、このような形態においても、第3実施形態と同様の効果を奏する。
【0101】
また、ファン4は、セル30に向かって空気を送風する場合、図13に示すように、第1ダクト61には第1ダクト穴615が形成されないで、第2ダクト62に第2ダクト穴625が形成される。第2ダクト穴625は、第2ダクト流路622および水素出口管8内に連通する。さらに、加湿部80は、第2ダクト流路622に配置される。このとき、水素出口管8内を流れた水および未反応の水素は、第2ダクト穴625を流れることにより、加湿部80に接触する。このとき、加湿部80は、未反応の水素と第2ダクト流路622を流れる空気に含まれる酸素とを結合させることにより、水を生成する。この加湿部80によって生成された水は、第2ダクト流路622を経由して酸化剤流路551を流れる。酸化剤流路551を流れた空気の一部は、加湿部80によって生成された水とともに、カソード側多孔体500の開孔を流れる。このため、加湿部80によって生成された水は、膜電極450のカソード側触媒層452に接触する。したがって、このような形態であっても、第4実施形態と同様の効果を奏する。なお、図10図13において、ファン4の送風方向がDbで示されている。
【0102】
上記実施形態では、ファン4の数は、2つである。これに対して、ファン4の数は、2つに限定されない。ファン4の数は、1以上であればよい。
【0103】
上記実施形態は、適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0104】
30 セル
61 第1ダクト
62 第2ダクト
63 第3ダクト
65 フィルタ
70 吸湿部材
80 加湿部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13