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特開2022-188470マスク内口腔周辺快適化方法及びリラックス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188470
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】マスク内口腔周辺快適化方法及びリラックス方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
A23G3/34 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096521
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】393029974
【氏名又は名称】クラシエフーズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】秋山 朝子
(72)【発明者】
【氏名】川▲さき▼ 健司
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB07
4B014GK04
4B014GK05
4B014GK07
4B014GL03
4B014GL07
4B014GL09
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GQ05
(57)【要約】
【課題】
マスク装着時にマスク内の口腔周辺を快適にすることが可能なマスク内口腔周辺快適化方法及びリラックス方法を提供する。
【解決手段】
マスク装着時に、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食し、ゲラニオールがマスク内口腔周辺で香ることを特徴とするマスク内口腔周辺快適化方法により上記課題を達成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク装着時に、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食し、ゲラニオールがマスク内口腔周辺で香ることを特徴とするマスク内口腔周辺快適化方法。
【請求項2】
0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食する請求項1記載のマスク内口腔周辺快適化方法。
【請求項3】
マスク装着時に、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食し、ゲラニオールがマスク内口腔周辺で香ることを特徴とするリラックス方法。
【請求項4】
0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食する請求項3記載のリラックス方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク装着時にマスク内の口腔周辺を快適にすることが可能なマスク内口腔周辺快適化方法及びリラックス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウイルスの感染予防や拡散防止、花粉の吸引抑制などのため、マスク装着が常態化している。しかしながら、マスク装着によって生じる息苦しさ、蒸れ、臭いなどからマスク内を不快に感じている人は多い。
【0003】
そこで、マスク内の不快感を解消するために、マスク貼着用芳香シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。該シートは、汎用タイプのマスクの外側の任意な位置に貼着して該シートに担持されたゲラニオールなどの芳香剤の香り成分がマスク内側に入り込むことによって、不快感を解消するものである。また、芳香剤や香料を包接したシクロデキストリンによる揮散性物質揮散調節材を担持したガーゼをマスク基体の袋に収めたものを着用し、呼気により濡れて揮散された芳香剤や香料を嗅ぐことで、芳香剤や香料が有する効果が発揮される揮散性物質揮散調節材が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
上記のように、マスクに芳香剤や香料を担持させる方法は、マスクから香りが放出されるため、マスク着用者が該香りを感じるころには強度不足の傾向がありマスク内の不快感を解消できなかった。また、この香りの強さとともに香り由来の効果を充分に享受できるとは言い難かった。
【0005】
他方、少なくとも悪臭成分(汗臭、加齢臭、タバコ臭、口臭及び足臭など)とこの悪臭成分よりも多い含有量の香気成分(ローズ油など)とを含むパーソナルケア組成物をマスクに使用して、ハーモナージュ又は順応効果より悪臭を抑制する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、該パーソナルケア組成物によるハーモナージュ又は順応効果を得るための香気は強度不足の傾向がありマスク内の不快感を解消できなかった。また、この香りの強さとともに香り由来の効果を充分に享受できるとは言い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-105643号公報
【特許文献2】特開2007-252777号公報
【特許文献3】特開2020-193156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、マスク装着時にマスク内の口腔周辺を快適にすることが可能なマスク内口腔周辺快適化方法及びリラックス方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、マスク装着時に、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食し、ゲラニオールがマスク内口腔周辺で香ることを特徴とするマスク内口腔周辺快適化方法により上記目的を達成する。
【0009】
本発明は、マスク装着時に、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食し、ゲラニオールがマスク内口腔周辺で香ることを特徴とするリラックス方法により上記目的を達成する。
【0010】
好ましくは、0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食する。
【0011】
すなわち、本発明者らは、マスク装着による口腔周辺の不快感の解消方法について検討したところ、香りを有する食品を喫食すること、該香りはゲラニオールが最適であることを見出した。
【0012】
第一に、マスクを装着してゲラニオールを含有する食品を喫食すると、口腔内を起点としてゲラニオールの香りが放出され、鼻腔やマスクに覆われた口周辺の体表面空間に香りが広がるが、マスク外側への香り流出が最小限に抑制される。そのため、マスク内側に香りが効率よく充満する。
【0013】
第二に、例えば、ミントやメントールのような香りは、マスク装着すると、多すぎると鼻腔がヒリヒリしたり、目が痛いあるいは涙目になるなどの強い刺激性を示し、少なすぎると、口腔、鼻腔又はマスク内の香りによる爽快感や清涼感が得られないことから喫食者が適切と感じる香り強度の調整は非常に難しい。一方、ゲラニオールは鼻腔や目への刺激性がない。
【0014】
第三に、ゲラニオールは、食品自身から口腔内に発散されるだけでなく、本発明者らが開示(国際公開WO2006/129876号公報参照)するように、体表面からも放出される。
【0015】
したがって、ゲラニオールを含有する食品を喫食することが、効率よくマスク内側を刺激性のない香りで満たすことが可能となり、マスク内の口腔周辺を快適にしてマスク装着による口腔周辺の不快感を解消できることを見出し、本発明に到達した。
【0016】
さらに、ゲラニオールを含有する食品は、口腔外でも香る点で、咀嚼しながら口腔内で一定時間滞留する形態のソフトキャンディが最適であることを見出した。これは、錠菓やハードキャンディでは、ゲラニオールの香りが口腔内に留まる傾向があり、鼻腔やマスク内の口腔外に広がり難いためである。その理由として、錠菓やハードキャンディは、舐めるため咀嚼しない、或いは、噛み砕いてすぐに喫食するため口腔内での滞留時間が短いなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ゲラニオールのバラ様の香り(優雅さ、華やかさ、濃厚な甘み、及び気品を有する)により、マスク内口腔周辺が快適化され、リラックス効果を付与することができる。
【0018】
また、好ましくは、マスク内を継続してゲラニオールの香りが満たされることから、マスク装着者はマスク内空間を快適に感じリラックス感も持続する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1のマスク内口腔周辺の香り快適性評価結果を示す図である。
図2】比較例1のマスク内口腔周辺の香り快適性評価結果を示す図である。
図3】実施例2のマスク内口腔周辺の香り快適性評価結果を示す図である。
図4】比較例2のマスク内口腔周辺の香り快適性評価結果を示す図である。
図5】実施例3のマスク内口腔周辺の香り快適性評価結果を示す図である。
図6】実施例4のマスク内口腔周辺の香り快適性評価結果を示す図である。
図7】実施例5のマスク内口腔周辺の香り快適性評価結果を示す図である。
図8】比較例3のマスク内口腔周辺の香り快適性評価結果を示す図である。
図9】実施例6~8及び比較例4、5のゲラニオールのマスク付着量を示す図である。
図10】ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食した前後のアンケート調査結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を詳しく説明する。本発明のマスク内口腔周辺快適化方法及びリラックス方法は、マスク装着時に、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食し、ゲラニオールがマスク内口腔周辺で香ることが、マスク内の口腔周辺の快適性を得る点、およびリラックス効果付与の点で重要である。
【0021】
本明細書において、「マスク」とは、衛生、医療等の目的で人体の口や鼻の周辺部を覆うものをいい、素材は不織布、布又はウレタン等、汎用のマスクであればよく特に制限はない。また、「マスク内口腔周辺」とは、口腔とマスク内の空間、具体的には、口腔内、鼻腔内、及び、顔表面のうちマスク装着によってマスクに覆われた口及び鼻周辺の体表面部とマスクとの間の空間を意味する。なお、「マスク装着によってマスクに覆われた口及び鼻周辺の体表面部とマスクとの間の空間」を「マスク内空間」とする。
【0022】
また、マスク内口腔周辺を「快適化する」とは、マスク内口腔周辺がゲラニオールによるバラ様の香りにより満たされ、マスク装着者が、不快さを感じない、すなわちマスク装着によって生じる息苦しさ、蒸れ、臭いなどを感じることがなく、不快さが解消又は軽減したと感じる状態となることを意味する。好ましくは、0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食することを意味する。より好ましくは、マスクを装着しゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食して30分後の時点のマスクに付着したゲラニオール量が、0.09ng以上であることを意味する。
【0023】
また、「リラックス」とは、くつろいだ気分になる、ゆったりとした気分になることを意味する。
【0024】
次に、本発明のマスク内口腔周辺を快適化する、及びリラックス効果を付与する方法について具体的に説明する。
まず、マスクを装着する。装着方法は、一般的に周知の方法で装着すればよい。次に、マスクを装着したまま、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食する。
【0025】
ゲラニオールは、化学式C1018Oの非環式モノテルペンアルコールであり、その香りは、優雅さ、華やかさ、濃厚な甘み、および気品のあるバラ様の香りと称されている。また、非刺激性である。本発明では、香り成分としてゲラニオールを用いることが、マスク内口腔周辺の快適性及びリラックス効果付与の点で重要である。
【0026】
また、好ましくは、0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食すると、香り持続性の点で好適であり、マスク内の口腔周辺の快適性、リラックス効果にとっても有効である。さらに好ましくは、9.0mg以下のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食すると、喫食の際ゲラニオールの苦さを感じない風味となる点で望ましい。なお、ソフトキャンディの喫食数は単数でも複数でもよく、喫食1回あたりのソフトキャンディに含有するゲラニオールの総量を上述のようにすることが、本願効果を得
る点で好適である。
【0027】
また、本発明では、形態がソフトキャンディであることが、咀嚼しながら口腔内で一定時間滞留できることから、ゲラニオールの香りが広がり口腔だけでなく鼻腔やマスク内空間で香る点で重要である。さらに、ソフトキャンディであると口腔内に入れた時の香りの広がりの瞬発性と、程よい溶解性によりゲラニオールの苦味を感じにくくできる点でも好適である。
【0028】
上記ソフトキャンディとは、砂糖などの糖質甘味料を主原料とし、ハードキャンディに比べ水分量が比較的高め(約5%以上)に設計された軟質性を有するものを指す。具体的には、特開平09-023819号公報や特開2012-110288号公報に記載の100℃未満で調製する非加熱ソフトキャンディや、100℃以上に煮詰めて調製するソフトキャンディ、他にグミキャンディ、キャラメル、ヌガー等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、非加熱ソフトキャンディが口腔内での溶解性を調整しやすい点で好適である。
【0029】
本発明では、マスク内口腔周辺において、ゲラニオールのバラ様の香りが、喫食中口腔内を起点として発散される。次に喫食中から喫食後にかけて、該香りが口腔から鼻腔及びマスク内空間に拡散され充満する。さらに、喫食によって体内吸収したゲラニオールは体表面から放出されることから、マスク内口腔周辺には、口周辺の体表面部から放出されたゲラニオールも存在する。この作用は、マスク装着によりマスク外側への香り流出が最小限に抑制されるため、マスク内は効率良くゲラニオールが漂った状態になる。また、ゲラニオールは、ミントやメントールと異なり、鼻腔や目への刺激性がなく、特有の優雅さ、華やかさ、濃厚な甘み、および気品のあるバラ様の香気が、口腔、鼻腔及びマスク内空間を快適化する。さらに、ゲラニオールの機能性であるリラックス効果も得ることができる。
【0030】
なお、口腔内から拡散、及び体表面で放出されたゲラニオールは、口腔、鼻腔、マスク空間を漂っている最中或いは漂った後に、口腔及び鼻腔から体内吸収、マスク外拡散、又はマスクに付着する。その際、喫食30分後の時点で、ゲラニオールのマスク付着量が0.09ng以上であることが好ましい。マスク内口腔周辺においてバラ様のゲラニオールが継続して香り、マスク装着者が不快さを感じない、不快さが解消又は軽減したと感じられるからである。なお、ゲラニオールのマスク付着量が0.09ng以上とするためには、0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食することが必要である。
【0031】
上記ゲラニオールのマスク付着量は、例えば、次のようにして測定することができる。ゲラニオール含有ソフトキャンディの喫食30分後のマスクを、固相抽出用撹拌子(Twister)と共にサンプリングバッグに一定時間投入し、該撹拌子にマスクに付着したゲラニオールを吸着させる。該撹拌子を加熱脱着式導入装置付きGC/MSに導入することで、ゲラニオールのマスク付着量を測定することができる。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
<ソフトキャンディの調製>
<試料A~D>
表1に示す組成のソフトキャンディを調製した。まず、表1に示す原料を40℃程度で混合し、エクストルーダーで更に均質化した後、スタンピング成型し、球状の非加熱ソフト
キャンディ(試料A~D)を調製した。バラ様香料は、ゲラニオール含有量のみが異なり、ゲラニオール以外の香り成分は同等量となるように調製した香料を、試料A、B、Dに用いた。
【0034】
【表1】
【0035】
<マスク内口腔周辺の香り快適性評価試験1>
試料A~Cについて、マスク内口腔周辺の快適性評価試験を、専門パネラー9名(20歳~40歳台の男女)にて、以下のように実施した。
【0036】
<実施例1>
(1)マスクを装着した。マスクは、市販の不織布マスクを用いた。
(2)マスクを装着したまま、試料Aを1粒(1.5g)喫食した。なお、試料Aのゲラニオール含有量は、表2に記載の通りである。
(3)喫食後30分間の間、5分経過毎に、マスク内口腔周辺の香りの程度を表3記載の5段階評価から選択した(評価はバラ様の香りに対して実施)。その結果を、図1に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
<比較例1>
マスクを装着しない以外は、実施例1と同様に行った。その結果を図2に示す。
【0040】
<実施例2>
試料Aの代わりに試料Bを用いる以外は、実施例1と同様に行った。その結果を図3に示す。
【0041】
<比較例2>
試料Aの代わりに試料Cを用いる以外は、実施例1と同様に行った。その結果を図4に示す。
【0042】
上記評価結果について、実施例1と比較例1、実施例1と比較例2、実施例2と比較例2、実施例1と実施例2におけるすべての時間帯においてt検定(両側検定、等分散仮定)を行った。その結果を表4(a)~(d)に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
同様に30分後においてwilcoxonの符号順位検定を行った。その結果を表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
<マスク有無の影響について>
実施例1と比較例1とを比較すると、表4(a)に記載の通り、t検定では、喫食してから25分後と30分後に有意な差が認められた。また、表5に記載の通り、30分後に関するwilcoxonの符号順位検定では、T=3の両側有意が認められた。
すなわち、マスクを装着すると香りを継続して強く感じることができ、バラ様の香りを長く楽しむことができることを確認した。この結果は、試験を実施したパネラーから多く寄せられた「マスクを装着した方が香りをずっと強く実感でき快適である」という感想とも一致している。
【0047】
<ゲラニオール有無の影響について>
実施例1と比較例2とを比較すると、表4(b)に記載の通り、t検定ではすべての時間帯において有意な差が認められた。また、表5に記載の通り、30分後に関するwilcoxonの符号順位検定でも、T=0の両側有意が認められた。
【0048】
また、実施例2と比較例2とを比較すると、表4(c)に記載の通り、t検定ではすべての時間帯において有意な差が認められた。また、表5に記載の通り、30分後に関するwilcoxonの符号順位検定でも、T=0の両側有意が認められた。
【0049】
以上のことから、マスク装着時に、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食すると、マスク内の口腔周辺をゲラニオール由来のバラ様の香りによって快適にできることが認められた。好ましくは、0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食すると、ゲラニオールのバラ様の香りを長く、強く楽しむことができることが認められた。
【0050】
<ゲラニオール量違いの影響について>
実施例1と実施例2とを比較すると、表4(d)に記載の通り、t検定ではすべての時間帯において有意な差は認められなかった。一方、表5に記載の通り、30分後に関するwilcoxonの符号順位検定では、T=6.5となり片側有意を示した。このことは、ソフトキャンディ中のゲラニオール含有量の相違(実施例1が0.59mg、実施例2が0.19mg)による影響が反映されたと推察される。
【0051】
<マスク内口腔周辺の香り快適性評価試験2>
試料Dについて、マスク内口腔周辺の快適性評価試験を、専門パネラー2名(30歳~40歳台の男女)にて、以下のように実施した。
【0052】
<実施例3>
試料Aの代わりに試料Dを用いる、及び1粒を3.0gとする以外は、実施例1と同様に行った。その結果を図5に示す。
【0053】
評価の結果、実施例3は、口腔、鼻腔及びマスク内空間はバラ様の香りを継続して感じることができた。さらに、実施例3よりゲラニオール含有量の多いソフトキャンディ(18mgと36mg)を喫食したところ、香りを強く感じるとともに、苦みが非常に強く風味的に喫食しにくいソフトキャンディであった。
【0054】
<ソフトキャンディの調製>
<試料E~G>
表6に示す組成のソフトキャンディを調製した。まず、表6に示す原料を40℃程度で混合し、エクストルーダーで更に均質化した後、スタンピング成型し、球状の非加熱ソフトキャンディ(試料E~G)を調製した。香料は、試料E、Fは、ゲラニオール含有バラ様香料とミント系香料を併用して用いた。試料Gはメントール香料を用いた。
【0055】
【表6】
【0056】
<マスク内口腔周辺の香り快適性評価試験3>
試料E~Gについて、マスク内口腔周辺の快適性評価試験を、以下のように実施した。なお試料E及びFは専門パネラー5名(20歳~40歳台の男女)にて、試料Gは専門パネラー3名(30歳~40歳台の男女)にて行った。
【0057】
<実施例4>
(1)マスクを装着した。マスクは市販の不織布マスクを用いた。
(2)マスクを装着したまま、試料Eを2粒(2.86g/2粒)喫食した。なお、試料Eのゲラニオール含有量及びメントール含有量は、表7記載の通りである。なお、ゲラニオール含有量及びメントール含有量は2粒の総量である。
(3)喫食後30分間の間、5分経過毎に、マスク内口腔周辺の香りの程度を表3記載の5段階評価から選択した(評価はバラ様の香りに対して実施)。その結果を図6に示す。
【0058】
【表7】
【0059】
<実施例5>
試料Eの代わりに試料Fを用いる以外は、実施例4と同様に行った。その結果を図7に示す。
【0060】
<比較例3>
試料Eの代わりに試料Gを1粒(3.0g)喫食する以外は、実施例4と同様に行った。なお、評価する香りの対象を、試料E及びFにも含まれるメントール由来のすっきりとした爽快な香りに対して実施した。その結果を図8に示す。
【0061】
実施例4、5より、ソフトキャンディ組成、重量や粒数に関係なく、また他の香りを併用しても、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食すると、マスク装着によって香りを継続して強く感じることができ、ゲラニオール由来のバラ様の香りを楽しむことができることを確認した。したがって、マスク内の口腔周辺は快適化されたと認められる。
【0062】
比較例3より、喫食中及び喫食直後はすっきりする爽快な香りやメントール特有の清涼感を、特に口腔内及び鼻腔内で認識できたが、口腔から離れるにつれて弱くなり、マスク内空間ではかなり弱かった。また、清涼感の持続性は感じられなかった。したがって、メントールによるマスク内の口腔周辺の快適化は困難であった。
【0063】
<ゲラニオールのマスク付着量測定1>
専門パネラー5名(20歳~50歳台の男女)がマスク装着時に試料A~Cの何れかを喫食し、30分後のマスクに付着したゲラニオール量を、以下のようにして測定した。
【0064】
<実施例6、7>
(1)まず、マスクを装着した。マスクは、市販の不織布タイプのマスクを用いた。
(2)マスクを装着したまま、試料Aを1粒(1.5g)喫食した。なお、試料Aのゲラニオール含有量は表8に記載の通りである。
(3)喫食後継続して30分間マスクを装着した後、マスクに付着したゲラニオール量を測定した。すなわち、30分後に外したマスクを固相抽出用撹拌子(Twister)1個と共に2Lのサンプリングバッグに投入後密封した。60℃で1時間加温抽出した後、室温(25℃)で1時間以上放冷し、撹拌子にマスク付着ゲラニオールを吸着させた。
(4)サンプルバックから取り出した撹拌子を加熱脱着式導入装置付きGC/MSに導入し、撹拌子に吸着したゲラニオール量を測定した。なお、試料を喫食せずに30分間装着したマスクを同様に測定したものを、ブランクとして用いた。
【0065】
【表8】
【0066】
<実施例8>
試料Aの代わりに試料Bを用いる以外は実施例6と同様に行った。なお、試料Bのゲラニオール含有量は表8に記載の通りである。
【0067】
<比較例4、5>
試料Aの代わりに試料Cを用いる以外は実施例6と同様に行った。なお、試料Cのゲラニオール含有量は表8に記載の通りである。
【0068】
実施例6~8及び比較例4、5の結果を表8に併せて示す。さらに、図9に示す。図9に示す通り、喫食後30分間装着したマスクには、ゲラニオールが付着していた。そのマスクへのゲラニオール付着量は、ソフトキャンディ中のゲラニール含有量と正の強い相関関係があると認められた。また、図9の近似式より、0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食すると、マスクには0.09ng以上のゲラニオールが付着すると推定される。
【0069】
以上のことから、ゲラニオール含有ソフトキャンディの喫食30分後におけるゲラニオールマスク付着量が0.09ng以上であれば、口腔、鼻腔及びマスク空間が快適化され、ゲラニオール由来のバラ様の香りを長く、強く楽しむことができる。また、そのためには、マスク装着時に、0.19mg以上のゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食することが好適であると認められた。
【0070】
<ゲラニオールのマスク付着量測定2>
専門パネラー4名(20歳~50歳台の男女)がマスク装着時に試料Aを喫食し、30分後のマスクに付着したゲラニオール量を測定した。
【0071】
<実施例9、10>
不織布のマスクの代わりに、市販の布マスク(綿100%)を用いる以外は実施例6と同
様に行った。なお、ゲラニオール含有量は表9に記載の通りである。
<実施例11、12>
不織布のマスクの代わり、市販の布マスク(ポリエステル95%、ポリウレタン5%)を用いる以外は実施例6と同様に行った。なお、ゲラニオール含有量は表9に記載の通りである。
【0072】
【表9】
【0073】
実施例9~12のゲラニオールのマスク付着量を表9に併せて示す。表9に示す通り、喫食後30分間装着したマスクには、ゲラニオールが付着していた。また、専門パネラーからは「マスクを装着すると、バラの香りを実感できた。また、その香りを楽しむことができ、マスク内の息苦しさが解消され快適であった」との感想を得られた。
【0074】
<マスク装着によるリラックス効果調査>
次に、マスク装着時に、ゲラニオールを含有するソフトキャンディを喫食させて、次のようなアンケート調査を実施した。
【0075】
20歳~40歳台の男女12人に、1粒当たり0.35mgのゲラニオールを含有するソフトキャンディが10粒入った袋を渡し、喫食粒数、喫食間隔などの制限を全くせずに、食べたいと思ったタイミングで、該ソフトキャンディを自由に喫食させた。アンケートは、喫食直前と喫食直後に、マスク内の臭い、リラックス感、及び日本語版PANASについて実施した。
【0076】
上記日本語版PANASでは、因子の一つであるネガティブ感情(「神経質な」、「おびえた」、「うろたえた」、「恐れた」、「ぴりぴりした」、「苦悩した」、「恥ずかしい」、「イライラした」、「うしろめたい」、「敵意をもった」)の10項目の程度について、それぞれ表10記載の6段階評価から選択させた。なお、ネガティブ感情の程度が強いと、各項目の評点及び各評点の合計は高い値となる。
【0077】
【表10】
【0078】
マスク内の臭い、リラックス感に関するアンケート結果を図10(a)及び図10(b)に、日本語版PANASのネガティブ感情の程度評点の合計結果を表11に示す。
【0079】
【表11】
【0080】
図10(a)は、マスク内の嫌な臭いに関するアンケート結果であり、喫食前よりも喫食後の方が嫌な臭いとして気になりにくくなることを示しており、喫食前の不快な状態が改善され快適な状態に変化したと認められる。
【0081】
図10(b)は、喫食前後におけるリラックス感に関する感情の変化状態を問うアンケート結果であり、喫食後は全体的に改善傾向を示していることから、喫食後にリラックスしていると認められる。
【0082】
表11はネガティブ感情の程度評点の合計が、bを除くモニター全員が低下し、平均的にも低下したことを示していることから、喫食後にストレスが軽減しリラックスしていると認められる。
【0083】
以上の結果より、マスク装着時に、ゲラニオール含有ソフトキャンディを喫食すると、マスク内口腔周辺はゲラニオールのバラ様の香りが継続して満たされることから、マスク装着によって生じる息苦しさ、蒸れ、臭いなどを解消し、マスク内空間を快適にすることができること、また、ゲラニオールの香りを感じることによりリラックスできることが認められる。
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図10