(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188472
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】中間転写媒体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/382 20060101AFI20221214BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B41M5/382 800
B41M5/52 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096525
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】掛川 駿太
(72)【発明者】
【氏名】松本 友紀
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA07
2H111AB05
2H111CA03
2H111CA04
2H111CA31
(57)【要約】
【課題】転写層表面に受ける擦れに対する高耐久性(高耐擦過性)と、連続転写性からバリや転写不良のない箔切れ性とを有する中間転写媒体を提供する。
【解決手段】中間転写媒体20は、基材1と、基材の一方の面に少なくとも中間層2、受容層3の順で積層してなり、画像を形成した受容層の面を被転写体の被転写面に向けて重ね、受容層と共に中間層を被転写体上に転写形成する。中間層2は、イソシアネートと反応して硬化されたアクリルポリオール樹脂と、フィラーとを含む。イソシアネートのイソシアネート基とアクリルポリオール樹脂の水酸基との当量比であるNCO/OHは1.0以上4.0以下であり、フィラーの質量はアクリルポリオール樹脂の0.5%以上25%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に少なくとも中間層、受容層の順で積層してなり、画像を形成した前記受容層の面を被転写体の被転写面に向けて重ね、前記受容層と共に前記中間層を前記被転写体上に転写形成する中間転写媒体であって、
前記中間層は、イソシアネートと反応して硬化されたアクリルポリオール樹脂と、フィラーとを含み、
前記イソシアネートのイソシアネート基と前記アクリルポリオール樹脂の水酸基との当量比であるNCO/OHが1.0以上4.0以下であり、
前記フィラーの質量が、前記アクリルポリオール樹脂の0.5%以上25%以下である、
中間転写媒体。
【請求項2】
前記中間層は、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の中間転写媒体。
【請求項3】
前記中間層の厚さが0.5μm以上10μm以下である、
請求項1または2に記載の中間転写媒体。
【請求項4】
前記基材と前記中間層との間に設けられた剥離層をさらに備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の中間転写媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写媒体に関し、被転写体への転写後の表面に高耐擦過性を付与し、耐久性を高める保護機能を有する中間層を備えた中間転写媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート、免許証およびID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、デザインなどの共通項目以外は、目視による個人認証を可能とするための顔画像と個人に関する情報を個人毎にその電子データを用いてプリンターの印画・印字により形成している。
【0003】
従来、このような印刷方法としては、熱転写方法が広く使用され、熱転写方法は、基材シートの一方の面に色材層が設けられた熱転写シートと、紙やプラスチック等の基材シートに必要に応じて受容層を設けた熱転写受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により熱転写シートの背面側から画像に応じた加熱工程において、色材層に含まれる色材を選択的に熱転写受像シート上に移行させて画像を形成する方法である。
【0004】
熱転写方法は、溶融転写方式と昇華転写方式に分けられる。溶融転写方式は顔料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーに分散させた熱溶融転写層をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の基材に担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックシート等の基材シートに受容層を設けた熱転写受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により熱転写シートの背面側から画像に応じた加熱工程において、熱転写受像シート上の受容層に熱溶融転写層から色材をバインダーと共に転写する画像形成方法である。この溶融転写方式による画像は、高濃度で鮮鋭性に優れ、文字等の2値画像の記録に適する。
【0005】
昇華転写方式は主に加熱により熱移行する染料を樹脂バインダー中に溶解或いは分散させた色材層をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックシート等の基材シートに染料受容層を設けた熱転写受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により熱転写シートの背面側から画像に応じた加熱工程において、熱転写受像シート上の受容層に、染料のみを転写移行させる画像形成方法である。昇華転写方式は、印加されるエネルギー量に応じて染料の移行量を制御できるため、サーマルヘッドのドット毎に画像濃度を制御した階調画像の形成を行なうことができ、また、使用する色材が染料であるため、形成される画像には透明性があり、異なる色の染料を重ねた場合の中間色の再現性が優れている。とくに、イエロー、マゼンタ、シアン、さらにはブラックの基本色からなる染料等の異なる色の熱転写シートを用い、熱転写受像シート上に各色染料を重ねる転写により中間色の再現性に優れた高画質な写真調フルカラー画像の形成が可能となる。
【0006】
本発明の中間転写媒体は、パスポートおよびID(identification)カードなどの個人認証媒体に用いられ、個人認証媒体の個人認証に目視による顔画像を使用しており、この顔画像はデジタル化されたデータに基づき、例えば上記溶融転写方式または昇華転写方式の熱転写リボンを用い、顔画像の写真の貼り換えによる改竄を排除している。
【0007】
すなわち、感熱転写方式による個人認証媒体の作成手段として、画像形成に用いる多くの種類の被転写体記録媒体の材質の汎用性と高信頼性と連続転写性の観点から中間転写媒体に画像および文字などの情報を形成・担持し、さらに基材からなる被転写体に転写形成するものである。
【0008】
この中間転写媒体は、基材と、基材上に剥離層、中間層、接着層、受容層などをこの順次形成した転写層とを備え、熱転写リボンから画像等を中間転写媒体の転写層に転写した(一次転写)後に、転写層側を被転写体の基材に重ねて加圧し、基材側のいずれかから加熱することにより中間転写媒体の転写層を基材に再転写(二次転写)するものである。
【0009】
被転写対象は、個人認証媒体などをはじめ、その用途の多様化と普及の拡大もあり、中間転写媒体が広く用いられるようになっており、転写後の被転写体の表面がとなる転写層は、外的な要因、例えば紫外線の受光や物理的な応力、化学物質(例えば、耐可塑剤)の接触による劣化などに対する高耐久性が必要である。さらに耐久性の向上における転写層の箔切れ性に悪化を生じ、転写層を被転写体上に転写する際、転写層の転写端部にバリ、尾引きなどの転写不良が発生することがあり、中間転写媒体の転写層に求められる機能に耐久性とともに箔切れ性の向上がある。
【0010】
この高耐久性を有する転写層を備えた中間転写媒体として、転写層に形成した一次転写の画像を被転写体に再転写して形成した二次転写の画像の機械的強度等を向上することができる転写層を、紫外線反応性樹脂と光開始剤を主成分とする紫外線反応層とする構成があるが(特許文献1)、この構成は、転写層の被転写体への二次転写後に紫外線(UV)を照射する機構を転写機構に設ける必要があり、転写機構の大型化と高コスト化、高エネルギー消費となる問題を有している。また、転写層にアクリル系ポリオール樹脂と硬化剤よりなる熱硬化系の透明性樹脂を用いることにより、耐可塑剤性や耐熱性などの耐久性を向上させるとする構成がある(特許文献2)が、この構成は、熱硬化反応に時間を有すること、耐溶剤性と耐可塑性材に不十分であるという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003-231366号公報
【特許文献2】特開2008-238525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、転写層表面に受ける擦れに対する高耐久性(高耐擦過性)と、連続転写性からバリや転写不良のない箔切れ性とを有する中間転写媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基材と、基材の一方の面に少なくとも中間層、受容層の順で積層してなり、画像を形成した受容層の面を被転写体の被転写面に向けて重ね、受容層と共に中間層を被転写体上に転写形成する中間転写媒体である。
中間層は、イソシアネートと反応して硬化されたアクリルポリオール樹脂と、フィラーとを含む。
イソシアネートのイソシアネート基とアクリルポリオール樹脂の水酸基との当量比であるNCO/OHは、1.0以上4.0以下である。
フィラーの質量は、アクリルポリオール樹脂の0.5%以上25%以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の中間転写媒体によれば、中間転写媒体に含まれる転写層に耐久性と箔切れ性とを付与することができ、中間転写媒体においては、熱転写画像が形成された受容層と中間層とからなる転写層を被転写材の任意の基材上に転写する際の転写層(とくに中間層)の箔切れ性が良好であり、かつ受容層に形成した画像他文字の転写画像に高耐久性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)および(b)は、本発明の中間転写媒体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】(a)および(b)は、本発明の中間転写媒体の一例を示す概略断面図である。
【
図3】(a)は、本発明の中間転写媒体に対して画像・文字の印画に用いる昇華型熱転写リボンの一例を示す概略平面図、(b)は概略断面図である。
【
図4】(a)は、本発明の中間転写媒体に対して画像・文字の印画に用いる溶融型熱転写リボンの一例を示す概略平面図、(b)は概略断面図である。
【
図5】本発明の中間転写媒体の実施形態における中間転写方式熱転写装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<中間転写媒体>
次に、
図1を用いて本発明の中間転写媒体20について説明する。本発明の中間転写媒体20は、
図1の(a)に示すように、基材1の一方の面上に、基材1から剥離可能な転写層10が設けられており、転写層10は、基材1側から中間層2、受容層3が、この順に積層される基本構成である。また、本発明の中間転写媒体20は、
図2の(a)および(b)に示すように、転写層10の構成として、基材1と中間層2との間に剥離層4または離型層5、或いは、剥離層4および離型層5の両方を設けることができる。または基材1に離型層5を設けてもよい。
さらに、
図2に示すように、これらの基材1の他方の面上に耐熱性、及び印画時のサーマルヘッド等の加熱部との接触走行性等を向上させるための耐熱滑性層6を設けることができる。なお、耐熱滑性層6は、任意の構成である。
また、
図1の(b)に示すように、中間層2上に接着層7を設けて受容層3を形成してもよい。
以下、本発明の中間転写媒体20の各構成を具体的に説明する。
【0017】
(基材)
基材1は、一方の面に転写層10、基材1の他方の面に任意に設けられる耐熱滑性層を保持するものである。基材1は、転写層10の一部である中間層2の紫外線(UV)硬化反応に用いる紫外線(UV)波長光を透過でき、被転写体上に熱転写する際の加熱温度に耐える耐熱性と、転写工程に支障のない機械的特性を有することが望ましい。基材1としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等を用いることができるが、特にこれらに限定されない。また、基材1はこれらの各種プラスチックのフィルムまたはシート形状で用いられる。その厚さは、基材1の強度と耐熱性を確保できるように各種プラスチックに応じて適宜設定することができ、例えば、2.5~100μmである。
【0018】
基材1の中間層2、受容層3を形成する面に、或いは両面に、接着処理を施すことも可能である。接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理に二種以上を併用することもできる。
【0019】
基材1の中間層2、受容層3を形成しない面には耐熱滑性層6を設けることができる。
【0020】
(中間層)
転写層10を構成する中間層2は、ポリイソシアネートにより熱硬化させたアクリルポリオール樹脂を主成分とする層である。
ポリイソシアネートはキシリレンジイソシアネート(XDI)系またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系であることが好ましい。
本実施形態の中間層2は、イソシアネート基と水酸基の当量比(NCO/OH)が1.0以上4.0以下となるようにポリイソシアネートとアクリルポリオール樹脂とを混合し、熱硬化することにより形成されている。発明者らの検討では、NCO/OHが1.0未満となると硬化反応が十分に進行しないため十分な耐久性を発現できない可能性があること、4.0より大きくなると堅牢な塗膜中に未反応の硬化剤が多量に含有されることにより耐久性が低下する可能性があることを見出している。
【0021】
中間層2は、フィラーを含有している。フィラーを添加することにより中間層2の平滑性、透明性、光沢度を低下させることなく、転写時の箔切れ性と、転写された画像の耐久性を向上させることができる。
本実施形態においては、フィラーの量を、アクリルポリオール樹脂の重量の0.5質量%以上25%以下としている。発明者らの検討では、アクリルポリオール樹脂を主成分とする中間層において、フィラーの量を上記範囲内にすると、転写時の箔切れ性と、転写された画像の耐久性が特に優れることが見出されている。
【0022】
フィラーの材料については、従来公知のものを用いることができ、有機フィラー、無機フィラー、有機-無機ハイブリッド型フィラーのいずれであっても好適に使用することができる。これらのフィラーは粉体であってもよく、ゾル系であってもよい。粉体の有機フィラーとして、非架橋アクリル系粒子、架橋アクリル系粒子等のアクリル系粒子、メラミン系粒子、ポリアミド系粒子、シリコーン系粒子、ポリエチレンワックス等を挙げることができる。粉体の無機フィラーとして、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、酸化チタンなどの金属酸化物粒子等を挙げることができる。有機-無機のハイブリッド型のフィラーとして、アクリル樹脂にシリカ粒子をハイブリッドしたものを挙げることができる。ゾル系のフィラーには、シリカゾル系、オルガノゾル系のものを挙げることができる。これらのフィラーは、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
フィラーの粒径は特に制限されないが、0.01μm以上3μm以下とできる。この範囲内であると、転写時の脱離や膜形成の観点で好ましい。
本明細書において、「フィラーの粒径」とは体積平均粒径を意味する。フィラーの粒径は、例えば、BET法、電子顕微鏡観察結果を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア解析により測定できる。
なお、フィラーの効果を妨げない範囲であれば、上記の範囲外の粒径を有するフィラーが一部含有されていてもよい。
【0024】
中間層2は、添加樹脂としてアクリルポリオール樹脂以外の樹脂成分を含んでもよい。発明者らの検討では、中間層2がアクリルポリオール樹脂を主成分としつつポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂の一方又は両方を含有することにより、基材1や受容層3との密着が良好になることを見出している。
添加樹脂の量は、アクリルポリオール樹脂に対して1%以上30%以下とできる。
【0025】
(剥離層)
基材1に中間層2が形成された構成の転写層10において、中間層2の転写性や箔切れ性が不十分となることがある場合には、剥離層4を設けることが好ましい。これにより、転写層10の転写性及び箔切れ性の向上を図ることができ、中間層2の効果である印画物に高い耐久性の付与を確実にすることができる。
剥離層4に用いる樹脂としては、基材1との接着力が適度に調節されている樹脂が望ましい。接着力が過度に大きいと、熱転写後の剥離時に基材から転写層10が被転写体表面に転写できず、また接着力が過度に小さいと、基材の剥離後に被転写体端面にバリが発生するという問題点が発生する。
転写層10を構成する剥離層4の構成に適した適度な接着力を持つ樹脂としては、熱溶融性のポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、パラフィンワックスなどのワックス類、セルロース誘導体及びこれらの各樹脂の混合物等が用いられる。とくにアクリル樹脂、セルロース誘導体が好ましい。また必要に応じて、滑り性の付与や表面光沢調整などの目的で、各種添加剤を含有することができる。
【0026】
なお、接着力の調整は、接着力が過度に小さい場合は、熱可塑性樹脂の添加、粘着剤の添加など、接着力が過度に大きい場合には剥離層4中に接着に寄与しない材料の添加により、公知の材料を用いて行なうことができる。
【0027】
(受容層)
図1及び
図2に示すように、中間層2上には受容層3が設けられている。受容層3は、転写層10を構成する層である。この受容層3上に熱転写画像が形成される。そして、画像が形成された受容層3は、中間層2、さらには剥離層4とともに被転写体上に転写され、印画物が形成される。受容層3を形成するための材料としては、昇華性の染料または熱溶融性の転写インク等の熱移行性の色材を受容し易い、従来公知の樹脂を用いることができる。
【0028】
受容層3を構成する樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等が挙げられ、特に、昇華型熱転写リボンによる転写には、塩化ビニル系樹脂、アクリル-スチレン系樹脂またはポリエステル樹脂が好ましく、溶融型熱転写リボンによる転写には、エポキシ樹脂が好ましい。
【0029】
受容層3が接着層を介して被転写体に転写される場合には、受容層3自体の接着性は必ずしも要求されない。しかし、受容層3が接着層を介さないで被転写体に転写される場合には、接着性を有する樹脂を用いて受容層3を形成することが好ましい。
【0030】
受容層3は、上述の材料の中から選択された単独または複数の材料、および必要に応じて各種添加剤等を加え、水または有機溶剤等の適当な溶剤に溶解または分散させて受容層用塗工液を調製し、これをバーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート等のソルベントコート法によって塗布し、乾燥して形成することができる。受容層3の厚さは、0.1μm以上10μm以下であればよく、0.2μm以上8μm以下程度がより好ましい。
【0031】
受容層3が接着性を有しない場合には、受容層3上に接着層(図示しない)を設けてもよい。また、被転写体側に接着処理等を施されている場合は、接着層は不要であるが、接着層(図示しない)は、任意の構成である。
接着層(図示しない)を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂等を主成分とする従来公知の接着剤を用いることができる。
【0032】
(耐熱滑性層)
耐熱滑性層6は、任意の構成であるが、基材1の他方の面上に耐熱性、及び印画時のサーマルヘッド等の加熱部との接触走行性等を向上させることができる。
このような耐熱滑性層6を構成する材料としては、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂等の樹脂にフッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、燐酸エステル等の滑剤を含有させたもの、またはシリコーン変性樹脂等が挙げることができる。またシリカ、炭酸カルシウム、タルク、樹脂ビーズ等のフィラーを含有してもよく、また、耐熱性を向上させる目的で、架橋剤を併用してもよい。
【0033】
耐熱滑性層6は、上述の材料の中から選択された単独または複数の材料、および必要に応じて各種添加剤等を加え、水または有機溶剤等の適当な溶剤に溶解または分散させて耐熱滑性層用塗工液を調製し、これをバーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート等のソルベントコート法によって塗布し、乾燥して形成することができる。耐熱滑性層6を設ける際の塗布厚は、0.1~4μmが好ましい。
【0034】
(画像形成方法)
本発明の中間転写媒体20を用いて、受容層3上に画像形成を行う方法としては、特に限定されず、公知の熱転写方式により画像形成を行うことができる。
【0035】
上記画像形成の際に使用する熱転写シートとしては、例えば、ポリエステルフィルム等の基材の一方の面に熱転写性色材層が設けられ、基材の他方の面に背面層が設けられた従来公知の熱転写シートを使用することができる。以下、熱転写シートについて説明する。
【0036】
<熱転写リボンの構成>
図3および
図4は、本発明の中間転写媒体20に対して画像・文字の印画・形成に用いる熱転写リボンの一例である。
【0037】
<昇華型熱転写リボン>
図3に示す熱転写リボン25は、昇華転写方式であり、(a)および(b)に示すように、基材21の一方の面上に、イエロー層Y、マゼンタ層M、シアン層Cを面順次に形成してなる染料層22を繰り返し形成している。染料層22は、ブラック層Bを含んでもよいし、さらに他の色を加えた4色以上で構成されてもよい。繰り返し形成される染料層22間には、位置制御用マーク26が形成されている。熱転写リボン25は、転写体として、中間転写媒体20の受容層3に染料層22の各染料の移染による画像・文字を印画・形成する。
【0038】
(昇華型熱転写リボンの基材)
熱転写リボン25の基材21としては、熱転写における圧力により変形しない耐熱性と強度とが要求され、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド等からなる合成樹脂フィルムや、コンデンサーペーパー、パラフィン紙等の紙類を、単独で又は組み合わされた複合体として使用可能である。特に加工性やコスト面等を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが基材21として好ましい。また、そのフィルムの厚さは、操作性や加工性を考慮すると2μm以上50μm以下の範囲が可能であり、転写適正等を考慮すると、2μm以上16μm以下の範囲がより好ましい。
【0039】
また、基材21の耐熱滑性層23又は/及び染料層22を形成する面に、接着処理を施すことも可能である。接着処理としては、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等の公知の技術を適用することができ、それらの処理に二種以上を併用することもできる。
【0040】
(染料層)
次に、染料層22は、従来公知のもので対応でき、例えば、熱により昇華移行する昇華性染料とバインダーと溶剤とを配合して染料層形成用の塗布液を調製し、この塗布液を塗布、乾燥することで形成される。なお、染料層22は、一色からなる単一の染料層を基材21上に形成し、また色相の異なる染料を含む複数色の染料層を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成することで形成されている。
【0041】
染料層22に含まれる染料は特に限定されるものではないが、例えば、イエロー(Y)成分としては、ソルベントイエロー56,16,30,93,33や、ディスパースイエロー201,231,33等を挙げることができる。マゼンタ(M)成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ディスパースバイオレット38、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を挙げることができる。シアン(C)成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、C.I.ソルベントブルー266、C.I.ディスパースブルー257、あるいはC.I.ディスパースブルー24等を挙げることができる。
【0042】
染料層22に含まれるバインダー樹脂は、従来公知のバインダー樹脂を使用することができ、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂や、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂や、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0043】
この染料層22の染料とバインダー樹脂との質量基準での配合比率は、染料/バインダー樹脂=10/100~300/100が好ましい。これは、染料/バインダー樹脂の配合比率が10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られず、また、この配合比率が300/100を越えると、バインダー樹脂に対する染料の溶解性が極端に低下するために、得られる熱転写リボンは、保存安定性が低下し、染料が析出し易くなるおそれがあるためである。
【0044】
また、染料層22には、性能を損なわない範囲でイソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、あるいは安定化剤等の公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0045】
また、染料層22は、離型剤、無機微粒子、有機微粒子等を含有していてもよい。離型剤としては、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、リン酸エステル等が挙げられる。シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル、および変性シリコーンオイルやその硬化物等が挙げられる。シリコーンオイルは反応性のものでもよいし、非反応性のものでもよい。無機微粒子としては、カーボンブラック、アルミニウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルに分類できる。反応性シリコーンオイルには、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシ変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性・異種官能基変性がある。非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、フッ素変性等がある。シリコーンオイルの添加量は、バインダーの質量に対し、0.1~15質量%が好ましく、更に好ましくは0.3~10質量%である。また、上記有機微粒子としては、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0046】
染料層22は、上記の染料、バインダー樹脂、及び必要に応じて任意に添加される各種の成分を、適当な溶媒に分散、或いは溶解した染料層用塗工液を、基材21上に、従来公知の塗工方法を用いて、塗工・乾燥により形成することができる。従来公知の塗工方法としては、バーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート等のソルベントコート法が挙げられる。溶媒としては、一般的なコート剤に用いられる溶剤、例えば、水あるいはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド〔DMF〕等のその他の炭化水素などの有機溶剤が挙げられる。
【0047】
染料層22の膜厚は特に限定はないが、通常0.2μm~5μmである。
【0048】
(耐熱滑性層)
耐熱滑性層23は、任意の構成であるが、基材21の他方の面上に耐熱性、及び印画時のサーマルヘッド等の加熱部との接触走行性等を向上させることができるものであり、上記の本発明の中間転写媒体20と同様のものを用いることができ、ここでは詳細な説明は省略する。
【0049】
<溶融型熱転写リボン>
図4に示す熱転写リボン35は、溶融転写方式であり、(a)および(b)に示すように、基材31の一方の面上に、転写インク層32として、イエロー層Y、マゼンタ層M、シアン層C、およびブラック層Bからなる転写インク層32を面順次に繰り返し形成している。転写インク層32は、ブラック層Bを含まなくてもよいし、さらに他の色を加えた4色以上で構成されてもよい。繰り返し形成される転写インク層32間には、位置制御用マーク36が形成されている。
転写インク層32は、例えば、染料又は/及び顔料、バインダー、溶剤等を配合して調製された塗布液を、塗布、乾燥する事により得られる。この転写インク層32の塗布量は、乾燥厚で1.0μm程度が好適である。
熱転写リボン35は、転写体として、中間転写媒体20の受容層3に転写インク層32の各色インク層の転写により画像・文字を印画・形成する。
【0050】
<溶融熱転写リボンの基材>
基材31は、上記の本発明の昇華転写方式の熱転写リボン25の基材21と同様のものを用いることができ、ここでは詳細な説明は省略する。
【0051】
<転写インク層>
転写インク層32の塗布液に用いられる染料としては、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンテン系、アキサジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等の一般に使用されている感熱転写性染料を広く使用する事ができる。また、顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料を使用することができ、例えば、カーボンブラック、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、アンスラキノン系、イソインドリノン系等がある。これらは2種類以上組み合わせて使用することも可能である。
【0052】
転写インク層32に含まれるバインダー樹脂は、従来公知のバインダー樹脂を使用することができ、特に限定されるものではないが、そのバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体等の合成樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、等のセルロース系樹脂、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体の1種又は2種以上の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、ポリビニルブチラール、スチレン・アクリロニトリル共重合体、フェノキシ樹脂が好適である。
【0053】
また、転写インク層32には、熱転写するときの転写性としての、転写画像を形成するドット形状、また階調再現性等の向上を目的に、転写画像の発色を極力損なわないように無色又は淡色の微粒子を添加することができる。このような無色又は淡色の微粒子の例としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、澱粉、酸化亜鉛、テフロン(登録商標)パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレート樹脂ビーズ、ポリウレタン樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン及びメラミン樹脂ビーズなどを挙げることができる。とくに、屈折率が樹脂に近く透明性の優れるシリカの微粒子が好ましい。
【0054】
また、転写インク層32には、顔料や染料、樹脂、微粒子の他に転写インク層32の熱的感度、強度、接着性などの調整を目的として適宜、離型剤、軟化剤、界面活性剤などの添加剤を添加することができる。
【0055】
離型剤、軟化剤としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛のような脂肪酸金属塩類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、脂肪酸アミド類等の脂肪酸誘導体、高級アルコール類、多価アルコール類のエステル等誘導体、パラフィンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ミツロウ、木ロウ、キャンデリラワックス等のワックス類、粘度平均分子量が約1,000から10,000程度の低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン類、或いはオレフイィン、α-オレフィン類と無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機酸、酢酸ビニル等との低分子量共重合体、低分子量酸化ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン類、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等長鎖アルキル側鎖を有するメタクリル酸エステル、メタクリル酸エステル類の単独もしくはスチレン類等のビニル系単量体との共重合体、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等の低分子量シリコーンレジン及びシリコーン変性有機物質等が挙げられ、1種あるいは2種以上選択することができる。
【0056】
界面活性剤は、転写インク層32の平滑性や顔料分散性の向上が目的であり、転写インク層32中の組成物に相溶するものならば特に制限はなく、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪族アミンもしくは脂肪族アミドの硫酸塩類、脂肪族アルコール燐酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタレンスルホン酸塩類等のアニオン系界面活性剤、脂肪族アミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等の非イオン系界面活性剤、カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤等、パーフルオロアルキルカルボン酸類、フルオロ脂肪族基含有アクリレートもしくはフルオロ脂肪族基含有メタクリレートとポリオキシアルキレンアクリレートもしくはポリオキシアルキレンメタクリレートとの共重合体、パーフルオロアルキルスルホンアミド類等が挙げられる。
【0057】
転写インク層32は、上記の顔料及び/又は染料,バインダー樹脂、及び必要に応じて任意に添加される各種の成分を、適当な溶媒に分散、或いは溶解した転写インク層用塗工液を、基材31上に、従来公知の塗工方法を用いて、塗工・乾燥により形成することができる。従来公知の塗工方法としては、バーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート等のソルベントコート法が挙げられる。溶媒としては、一般的なコート剤に用いられる溶剤、例えば、水あるいはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド〔DMF〕等のその他の炭化水素などの有機溶剤が挙げられる。
【0058】
転写インク層32の膜厚は、0.3~1.0μmが好ましい。膜厚が0.3μm未満では十分な色濃度を出すことが難しく、また1.0μmを越えるとサーマルヘッド等の発熱部による転写に影響が生じ、転写画像を形成するドット形状、また階調再現性等が劣化する。
【0059】
(耐熱滑性層)
耐熱滑性層33は、任意の構成であるが、基材31の他方の面上に耐熱性、及び印画時のサーマルヘッド等の加熱部との接触走行性等を向上させることができるものであり、上記の本発明の中間転写媒体20と同様のものを用いることができ、ここでは詳細な説明は省略する。
【0060】
<中間転写方式熱転写装置>
図5は、熱転写リボン25,35により画像および/または文字を転写する、本発明の中間転写媒体20を使用する中間転写方式熱転写装置の例を示す概略図である。ただし、中間転写方式熱転写装置の制御装置は省略している。
熱転写リボン25,35の搬送系(図示しない)と、中間転写媒体20の搬送系(図示しない)を制御することによって各層の画像を重ね合わせて所望の画像を形成する。位置制御用マーク26,36は、熱転写リボン25,35から転写体が中間転写媒体20に転写される際に、染料層22転写インク層32の中間転写媒体20に対する位置合わせに使用される。
【0061】
図5に示す中間転写方式熱転写装置100において、熱転写リボン25,35が、長尺状の中間転写媒体20に転写(一次転写)され、中間転写媒体20に転写された転写体を被転写体70への再転写(二次転写)することによって被転写体70への転写が行われる。
熱転写リボン25,35は熱転写リボン巻出部41から巻き出され、熱転写リボン巻取部42で巻き取られる。
中間転写媒体20は、中間転写媒体巻出部43で巻き出され、中間転写媒体巻取部44で巻き取られる。
【0062】
熱転写リボン25,35と中間転写媒体20は、走行途中において、重ね合わされて、サーマルヘッド40とプラテンローラ50で挟持され、熱転写リボン25,35の背面から印画データに基づいて、サーマルヘッド40による熱印加を行い、熱転写リボン25,35の染料層22または転写インク層32を中間転写媒体20に転写する(一次転写)。
一次転写された中間転写媒体20は、その後、ヒートローラ60が熱を持ちながら、中間転写媒体20を被転写体70に押圧することによって、中間転写媒体20の転写層10が、被転写体70に転写される(二次転写)。
このように本発明の実施形態に係る中間転写媒体20は、中間転写方式熱転写装置100を用いて、熱転写リボン25,35の染料層22または転写インク層32を転写層10に一次転写し、転写層10を用いて、被転写体70の指定する箇所、或いは全面に転写層10を二次転写し、転写物(例えば、ICカードなどの情報記録表示媒体)を形成する。
【実施例0063】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明についてさらに説明する。本発明は、実施例あるいは比較例の具体的内容のみによって限定されることはない。以降の説明において、「部」とは、特にことわりのない限り質量基準を示す。
【0064】
(実施例1)
基材として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー)を用い、一方の面に下記組成の中間層用塗工液Aを乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように塗工し、100℃1分間乾燥して中間層を形成した。次いで、中間層の上に下記組成の受容層用塗工液を、乾燥後の膜厚が2.0μmとなるように塗工し、100℃1分間乾燥し受容層を形成して実施例1の中間転写媒体を作製した。なお、中間層用塗工液、および受容層用塗工液は、全てグラビアコーティング法により塗工した。
【0065】
<中間層用塗工液A>
・アクリルポリオール樹脂(6AN-5000、大成ファインケミカル(株)) 41部
・ポリイソシアネート(タケネートD-110 三井化学(株)) 12部
・フィラー(シリコーン、粒径0.5μm) 2部
・ポリエステル樹脂(バイロンUR-1400 東洋紡(株)) 2部
・酢酸エチル(溶媒) 80部
【0066】
<受容層用塗工液>
・エポキシ樹脂(jER1004、三菱ケミカル(株)) 20部
・メチルエチルケトン(溶媒) 80部
【0067】
(実施例2、3、比較例1、2)
中間層用塗工液におけるポリイソシアネートの量を変更した点を除き、実施例1と同様の手順で実施例2、3、比較例1、および比較例2に係る中間転写媒体を作製した。
上記各例は、ポリイソシアネートの量を変更したことにより、中間層におけるNCO/OHの値が実施例1と異なっている。各例のNCO/OHの値は、後に表1に示す。
(実施例4)
中間層用塗工液にポリエステル樹脂を加えなかった点を除き、実施例1と同様の手順で実施例4に係る中間転写媒体を作製した。
【0068】
(実施例5、比較例3、4)
中間層用塗工液におけるフィラーの量を変更した点を除き、実施例1と同様の手順で実施例5、比較例3、および比較例4に係る中間転写媒体を作製した。各例におけるフィラーの含有率(アクリルポリオール樹脂に対して)の値は、後に表1に示す。
【0069】
(実施例6)
基材の一方の面に下記組成の剥離層用塗工液を乾燥後の膜厚が1.0μmとなるようにグラビアコーティング法により塗工し、100℃1分間乾燥して剥離層を形成した。その後は、実施例1と同様の手順で実施例6に係る中間転写媒体を作製した。
<剥離層用塗工液>
・アクリル樹脂(パラロイドA21、ダウ・ケミカル日本(株)) 20部
・メチルエチルケトン 60部
・トルエン 20部
【0070】
(実施例7)
中間層用塗工液Aに代えて、下記組成の中間層用塗工液Bを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で実施例7に係る中間転写媒体を作製した。実施例7は、中間層の添加樹脂として、ポリエステル樹脂に代えてエポキシ樹脂を含有する。
<中間層用塗工液B>
・アクリルポリオール樹脂(6AN-5000、大成ファインケミカル(株)) 41部
・ポリイソシアネート(タケネートD-110 三井化学(株)) 12部
・フィラー(シリコーン、粒径0.5μm) 2部
・エポキシ樹脂(jER1004、三菱ケミカル(株)) 5部
・酢酸エチル 60部
・メチルエチルケトン 20部
【0071】
次に、下記組成の熱転写インキ層用インキ組成物を調製し、下記処方の熱転写インキ層用インキを、裏面に耐熱滑性層33としてシリコーン樹脂による耐熱処理を施した、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材31に乾燥膜厚が0.4μmになるように塗布及び乾燥して各色の転写インク層32を形成し、
図4に示す溶融転写型の熱転写リボン35を得た。
(熱転写リボン)
<シアンインキ>
・顔料:フタロシアニンブルー 1.8部
・樹脂:エポキシ樹脂 3.9部
・染料:C.I.ソルベントブルー63 3.9部
・無色微粒子:シリカ 0.4部
・溶剤:メチルエチルケトン 90部
<マゼンタインキ>
・顔料:カーミン6B 1.8部
・樹脂:エポキシ樹脂 3.9部
・染料:C.I.ディスパースレッド60 3.9部
・無色微粒子:シリカ 0.4部
・溶剤:メチルエチルケトン 90部
<イエローインキ>
・顔料:ジスアゾイエロー 1.8部
・樹脂:エポキシ樹脂 3.9部
・染料:C.I.ディスパースイエロー201 3.9部
・無色微粒子:シリカ 0.4部
・溶剤:メチルエチルケトン 90部
【0072】
(転写物の形成)
カードプリンター(凸版印刷(株)製)と、上記熱転写リボンとを用いて、プリンター標準設定下で各例の中間転写媒体の受容層へ全面黒の画像を1次転写し、さらに塩化ビニル樹脂製カード(凸版印刷(株)製)上に1次転写後の受容層および中間層を2次転写し、各例に係るカードを転写物として得た。
【0073】
<転写物の評価>
各例のカードについて、以下の評価を行った。
【0074】
<耐擦過性>
各例のカードの転写面に対し、JIS K 7204に準拠したテーバー試験を実施した。試験環境は以下の通りである。
摩耗輪(CF-10F、東洋精機(株))を試験機(ロータリーアブレージョンテスター 東洋精機(株))に設置
試験条件:500gf、回転速度60rpm
評価は以下の3段階とし、×以外を合格とした。
◎(GOOD):1000回転の回転摩耗でカード表面に傷が生じない。
〇(FAIR):800回以上1000回未満の回転摩耗でカード表面に傷を生じる。
×(BAD):800回未満の回転摩耗でカード表面に傷を生じる。
【0075】
<箔切れ性>
キーエンス社製デジタルマイクロスコープ VHX-1000を用いて、各例のカード上の転写画像の端部におけるバリの最大突出長を測定した。
評価は以下の2段階とし、○を合格とした。
〇(GOOD):バリの最大突出長が100μm未満
×(BAD):バリの最大突出長が100μm以上
【0076】
<転写画像と被転写体との密着性>
JIS K 5600-5-6に準拠して実施した。各例のカード上の転写画像に間隔1mmのクロスカットを施した。クロスカットした部位にセロハンテープ(ニチバン(株))を貼り付けたのちに剥離を行い、転写画像の剥がれの有無を目視確認した。
評価は以下の3段階とし、×以外を合格とした。
◎(GOOD):JIS K 5600-5-6における分類0または1
〇(FAIR):JIS K 5600-5-6における分類2
×(BAD):JIS K 5600-5-6における分類3、4、5のいずれか
【0077】
<フィラー脱落>
各例のカード作製後にプリンターの内部を目視して、中間転写媒体のフィラーに由来する汚染の有無を確認した。
評価は以下の2段階とし、○を合格とした。
〇(GOOD):フィラーに由来する汚染を認めない
×(BAD):フィラーに由来する汚染を認める
結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
表1に示されるように、各実施例の中間転写媒体は、中間層のNCO/OHが1.0以上4.0以下であり、アクリルポリオール樹脂に対するフィラーの割合が0.5%以上25%以下であることにより、耐擦過性と箔切れ性とが両立されており、優れた転写物を提供することができた。また、中間層に添加樹脂を含有する実施例は、いずれも含有しない実施例4に比べて良好な密着性を示した。
一方、NCO/OHの値が1.0未満である比較例1の中間転写媒体は、中間層の硬化が十分に行われず、転写画像の耐久性が低かった。NCO/OHの値が4.0を超える比較例2の中間転写媒体も、転写画像の耐久性が低かった。これは、中間層に未反応のポリイソシアネートが過剰に存在することによるものと考えられた。フィラーの割合が0.5%未満である比較例3の中間転写媒体は、箔切れ性が良好でなく、実用上許容できないレベルのバリが生じた。フィラーの割合が25%を超える比較例4の中間転写媒体は、形成された中間層が安定せず、1次転写時にフィラーの脱落による汚染を生じた。