(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188482
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法およびデータ処理用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
G01C15/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096542
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
(57)【要約】
【課題】プリズム定数の取得をより効率よく行う。
【解決手段】反射プリズム装置を撮影することで得た画像データを取得する画像データ取得部109と、前記反射プリズム装置のプリズム定数と前記画像データとの関係を記憶したデータ記憶部118と、前記関係に基づき、反射プリズム装置のプリズム定数を取得するプリズム定数取得部111とを備えるレーザー測位装置100。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射プリズム装置を撮影することで得た画像データを取得する画像データ取得部と、
前記反射プリズム装置のプリズム定数と前記画像データとの関係を記憶した記憶部と、
前記関係に基づき、前記反射プリズム装置のプリズム定数を取得するプリズム定数取得部と
を備えるデータ処理装置。
【請求項2】
前記関係は、前記反射プリズム装置の外観と前記プリズム定数との関係である請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記関係は、反射プリズム装置に表示された文字またはコード表示と前記プリズム定数との関係である請求項1または2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記画像データに基づき、前記反射プリズム装置の向きを取得する反射プリズム装置の向き取得部と、
前記反射プリズム装置の前記向きの情報を報知する報知部と
を備える請求項1~3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記画像データは、光波測位装置が備えたカメラから出力され、
前記反射プリズム装置の前記向きは、前記光波測位装置に対する向きである請求項4に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記反射プリズム装置の前記光波測位装置に対する向きの情報が外部の端末に無線送信される請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記記憶部には、前記反射プリズム装置の3次元モデルが記憶され、
前記反射プリズム装置の前記光波測位装置に対する向きは、視点の位置を変えて前記3次元モデルを見た場合の画像に基づいて取得される請求項5または6に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記反射プリズム装置の前記光波測位装置に対する向きに基づき、前記反射プリズム装置が前記光波測位装置に正対しているか否かを判定する判定部を備え、
前記正対していると判定された場合に前記光波測位装置による前記反射プリズム装置の測距が行われる請求項5~7のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
カメラを備えた光波測位装置におけるデータ処理方法であって、
前記カメラにより反射プリズム装置を撮影することで得た画像データの取得と、
前記反射プリズム装置の前記画像データに基づく前記反射プリズム装置のプリズム定数の取得と、
前記反射プリズム装置の前記画像データに基づく前記光波測位装置に対する前記反射プリズム装置の向きの取得と、
前記光波測位装置に対する前記反射プリズム装置の前記向きの情報の端末への送信と、
前記光波測位装置に対する前記反射プリズム装置の前記向きの情報の前記端末の表示装置への表示と
を行うデータ処理方法。
【請求項10】
反射プリズム装置を撮影することで得た画像データの取得と、
前記反射プリズム装置のプリズム定数と前記画像データとの関係に基づく前記反射プリズム装置のプリズム定数の取得と
を行うデータ処理方法。
【請求項11】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータを
反射プリズム装置を撮影することで得た画像データを取得する画像データ取得部と、
前記反射プリズム装置のプリズム定数と前記画像データとの関係を記憶した記憶部と、
前記関係に基づき、前記反射プリズム装置のプリズム定数を取得するプリズム定数取得部と
して動作させるデータ処理用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量用の反射プリズム装置を扱う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光等の光波を利用した測量において、反射プリズム装置を用いる技術が知られている。この技術では、使用する反射プリズム装置のプリズム定数を取得する必要がある。プリズム定数は、実測された測距値を補正するための定数で、反射プリズム装置の構造、材質、保持構造(反射プリズムをホルダに保持する構造)等によって異なる。
【0003】
このため、測距精度を確保する上で、使用する反射プリズム装置のプリズム定数を把握することが重要となる。プリズム定数は、製造メーカや販売メーカのカタログや資料に記載されている。
【0004】
例えば、トータルステーション等のレーザー測位装置は、プリズム定数を予め入力できる機能を備えており、測位(測距)の作業に先立ち、プリズム定数を初期条件として入力する作業が行なわれる。この場合、入力されたプリズム定数に基づく補正がレーザー測位装置内で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリズム定数の取得はユーザが意識的に行う必要があり、作業が煩雑であり、また読み取りミスや入力ミスの可能性が問題となる。また、プリズム定数によっては、反射プリズム装置の測位装置に対する向きが測位精度に大きく影響する。
【0007】
このような背景において、本発明は、プリズム定数の取得をより効率よく行う技術の提供を目的とする。また、本発明は、取得したプリズム定数に関係して、反射プリズム装置の測量装置に対する向きによる測定精度の低下を抑えることができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、反射プリズム装置を撮影することで得た画像データを取得する画像データ取得部と、前記反射プリズム装置のプリズム定数と前記画像データとの関係を記憶した記憶部と、前記関係に基づき、前記反射プリズム装置のプリズム定数を取得するプリズム定数取得部とを備えるデータ処理装置である。
【0009】
本発明において、前記関係は、前記反射プリズム装置の外観と前記プリズム定数との関係である態様が挙げられる。本発明において、前記関係は、反射プリズム装置に表示された文字またはコード表示と前記プリズム定数との関係である態様が挙げられる。本発明において、前記画像データに基づき、前記反射プリズム装置の向きを取得する反射プリズム装置の向き取得部と、前記反射プリズム装置の前記向きの情報を報知する報知部とを備える態様が挙げられる。
【0010】
本発明において、前記画像データは、光波測位装置が備えたカメラから出力され、前記反射プリズム装置の前記向きは、前記光波測位装置に対する向きである態様が挙げられる。本発明において、前記反射プリズム装置の前記光波測位装置に対する向きの情報が外部の端末に無線送信される態様が挙げられる。
【0011】
本発明において、前記記憶部には、前記反射プリズム装置の3次元モデルが記憶され、前記反射プリズム装置の前記光波測位装置に対する向きは、視点の位置を変えて前記3次元モデルを見た場合の画像に基づいて取得される態様が挙げられる。本発明において、前記反射プリズム装置の前記光波測位装置に対する向きに基づき、前記反射プリズム装置が前記光波測位装置に正対しているか否かを判定する判定部を備え、前記正対していると判定された場合に前記光波測位装置による前記反射プリズム装置の測距が行われる態様が挙げられる。
【0012】
本発明は、カメラを備えた光波測位装置におけるデータ処理方法であって、前記カメラにより反射プリズム装置を撮影することで得た画像データの取得と、前記反射プリズム装置の前記画像データに基づく前記反射プリズム装置のプリズム定数の取得と、前記反射プリズム装置の前記画像データに基づく前記光波測位装置に対する前記反射プリズム装置の向きの取得と、前記光波測位装置に対する前記反射プリズム装置の前記向きの情報の端末への送信と、前記光波測位装置に対する前記反射プリズム装置の前記向きの情報の前記端末の表示装置への表示とを行うデータ処理方法である。
【0013】
本発明は、反射プリズム装置を撮影することで得た画像データの取得と、前記反射プリズム装置のプリズム定数と前記画像データとの関係に基づく前記反射プリズム装置のプリズム定数の取得とを行うデータ処理方法である。
【0014】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータを反射プリズム装置を撮影することで得た画像データを取得する画像データ取得部と、前記反射プリズム装置のプリズム定数と前記画像データとの関係を記憶した記憶部と、前記関係に基づき、前記反射プリズム装置のプリズム定数を取得するプリズム定数取得部として動作させるデータ処理用プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プリズム定数の取得をより効率よく行うことができる。また、本発明によれば、取得したプリズム定数に関係して、反射プリズム装置の測量装置に対する向きによる測定精度の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図5】反射プリズムの側面図(A)および(B)である。
【
図8】測位装置に対する反射プリズム装置の向きを説明する上面図(A)および(B)である。
【
図9】通信端末への表示内容を示す図(A)および(B)である。
【
図10】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】測位(測距)の作業を行う状況の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(プリズム定数について)
まず、プリズム定数について簡単に説明する。
図1(A)には、プリズム定数0mmの場合が示され、
図1(B)には、プリズム定数30mmの場合が示されている。また、
図1(A)および(B)には、反射プリズム装置が測位装置に正対していない(光軸が測位装置の方を向いていない)状態が誇張して示されている。
【0018】
反射プリズムは、入射光を180°向きを反転させて反射する。この際、反射プリズムを構成する高屈折率(ガラスの場合n=約1.5)の材料中を光線が進むこと等に起因して、測位装置の側から見て、反射点の光学的な位置は反射プリズムの向こう側に存在する。すなわち、実際の反射点は反射プリズム内にあるが、反射プリズム内での光速が遅くなる(1/屈折率)ので、光速度が不変として計測される光学的な反射点は、測位装置から見て、反射点より遠くの位置になる。このズレを補正するための補正パラメータがプリズム定数である。
【0019】
例えば、
図1(A)のプリズム定数0mmの場合を説明する。ここで、反射プリズム装置は、反射プリズムと反射プリズムを保持するホルダーにより構成される。反射プリズム装置には、測定の基準となる点である基準点が決められている。この基準点を測距(測位)を行いたい点に一致するように反射プリズム装置の設置が行われる。
【0020】
例えば、
図5にはプリズム定数0mmの反射プリズム装置200とプリズム定数30mmの反射プリズム装置300が示されている。反射プリズム装置200および300では、支柱205の延長線上に基準点が設定されている。ユーザは、測距(測位)を行う点に支柱205を鉛直に立てた状態で反射プリズム装置200または300を設置し、測距(測位)を行う。
【0021】
上述した理由により、反射プリズム装置では、実際の反射点の位置と光学的な反射点の位置には、ズレが生じる。プリズム定数0mmの場合、上記のズレを勘案して、ホルダーに対する反射プリズムの位置を前より(レーザー測位装置の側によった位置)に設定する。すなわち、基準点の位置より反射プリズムの位置を測位装置の側にずらした位置に設定する。
【0022】
こうすることで、測位装置から反射プリズム装置の基準点までの実際の距離と、測位装置から反射点までの光学的な距離とが一致するようにしている。
【0023】
しかしながら、プリズム定数0mmの場合、以下の問題が顕在化する。プリズム定数が0mmの場合、上述したように、ホルダーに対する反射プリズムの位置が前にオフセットした位置(レーザー測位装置の側にシフトした位置)に設定されており、基準点の位置は、反射プリズム内の反射点からずれた位置にある。
【0024】
つまり、光学的な位置を合わせるために、反射点と基準点の光軸方向における位置に物理的なズレが生じている。
【0025】
それ故、
図1(A)に示すように、反射プリズムがレーザー測位装置に正対していないと、基準点と反射点を結ぶ線分が回転し、基準点と反射点の光軸に垂直な方向における位置にズレが生じる。このズレが測定誤差となる。
【0026】
例えば、
図1(A)には、基準点を中心に反射プリズム装置が回転した場合が示されている。この場合、反射プリズム装置が回転すると、基準点を中心に反射点が円周上を移動し、それにより測定誤差が生じる。この測定誤差は、反射点と基準点の間の物理的な離間距離が大きくなる程、顕著となる。この測定誤差は、主に反射プリズム装置の測位の誤差として現れる。
【0027】
よって、プリズム定数0mmの場合、反射プリズムがレーザー測位装置に正対する(正面を向く)ように留意する必要がある。
【0028】
次に、
図1(B)に示すプリズム定数が0でない値(
図1(B)の場合は30mm)の場合を説明する。この場合、反射点と基準点を物理的に一致または近接させることができる。すなわち、測位装置から反射点までの物理的な距離と、測位装置から基準点までの物理的な距離とを一致あるいは近接させることができる。
【0029】
他方において、測位装置から反射点までの光学的な距離と、測位装置から基準点までの物理的な距離とは異なる値となる。この差がプリズム定数となる。
【0030】
すなわち、
図1(B)の場合、基準点を測距の対象としたつもりであっても、実際には基準点から30mm先の点を対象に測距が行われる。そのため、実測値から30mmを差し引いた値が最終的な測距値となる。
【0031】
図1(B)の場合、反射プリズムがレーザー測位装置に正対しておらず傾いていても、反射点と基準点の物理的な位置の差がない(あるいは小さい)。よって、
図1(A)のプリズム定数0mmの場合に比較して生じる誤差は小さい。
【0032】
このように、プリズム定数が0mmの場合、0mmでない場合の両方がある。いずれの場合であって、利用する反射プリズム装置のプリズム定数の情報は必要となる。また、プリズム定数が0mmの場合は、反射プリズム装置の向きの設定に留意が必要となる。
【0033】
(測位装置)
図2には、発明を利用したレーザー測位装置100の正面から見た外観が示されている。レーザー測位装置100は、トータルステーションとして機能する測量装置である。レーザー測位装置100は、目標までの距離とその方向を計測することで、レーザー測位装置100に対する目標の位置を計測する。レーザー測位装置100は、ベース部151、ベース部151を支える三脚152、ベース部151上に回転可能な状態で保持された水平回転部153、水平回転部153に対して仰角回転および俯角回転を行う鉛直回転部154を備える。
【0034】
水平回転部153は、ベース部151に対して水平回転する。回転は、モータによって行われる。鉛直回転部154は、水平回転部153に対して鉛直回転(仰角回転および俯角回転)する。各回転は、モータによって行われる。
【0035】
鉛直回転部154には、レーザー測距を行うための光学系と周辺回路、撮影を行うためのカメラが収められている。
【0036】
図2には示されていないが、レーザー測位装置100は、操作パネルとディスプレイを兼ねたタッチパネルディスプレイ110(
図3参照)を備えている。このタッチパネルディスプレイ120には、レーザー測位装置100の操作に係る情報、測量した各種データ等が表示される。
【0037】
図3には、レーザー測位装置100のブロック図が示されている。
図3のブロック図を構成する各機能ブロックにおいて、演算を行う部分は、コンピュータにより実現されている。勿論、一部または全部の機能ブロックを専用の電子回路により実現する形態も可能である。
【0038】
レーザー測位装置100は、発光部101、受光部102、距離算出部103、方向取得部104、広角カメラ105、望遠カメラ106、水平回転駆動制御部107、鉛直回転駆動制御部108、画像データ受付部109、画像解析部110、プリズム定数取得部111、測距データ補正部112、位置算出部113、反射プリズム装置の向き取得部114、報知部115、判定部116,動作制御部117、データ記憶部118、通信装置119、タッチパネルディスプレイ120を備える。
【0039】
発光部101は、測距光(測距用レーザー光)の発光に関係する部分であり、測距光を発光する発光デバイス、レンズ等の光学系、発光デバイスの周辺回路を含む。受光部102は、対象物から反射した測距光の受光に関係する部分であり、レンズ等の光学系、受光デバイス、受光デバイスの周辺回路を含む。
【0040】
発光部101からの測距光は、対物レンズ155の中心からレーザー測位装置100の外部に出射され、この測距光の反射光は対物レンズ155の中心からレーザー測位装置100の内部に取り込まれる。
【0041】
発光部101の光学系と受光部102の光学系は、一部で共用されており、ハーフミラー等を用いた光学系により両者の光軸は分離および合成され、レーザー測位装置100からの出射光とレーザー測位装置100への入射光は、一つの光軸上で重なるように設定されている。
【0042】
距離算出部103は、光波測距の原理を用いて対象物までの距離を算出する。距離の算出には、受光した測距光の位相差を用いる方法と伝搬時間を用いる方法がある。この例では、位相差を用いる方法で測距が行われる。
【0043】
位相差を用いる方法では、測位装置内に基準光路が設けられ、この基準光路を伝搬した測距光の受光タイミングと、対象物から反射した測距光の受光タイミングとの差(位相差)から、対象物までの距離を算出する。伝搬時間を用いる方法では、測距光が対象物に当たり、反射して戻ってくるまでの時間から、対象物までの距離を算出する。
【0044】
方向取得部104は、測距対象点の方向を取得する。水平回転部153と鉛直回転部154の回転角は、エンコーダにより精密に計測されており、これら角度を計測することで、レーザー測位装置100から見た測距対象点の方向、すなわちレーザー測位装置100の光軸の方向が取得される。
【0045】
広角カメラ105および望遠カメラ106は、画像倍率の可変が可能なデジタルカメラであり、静止画および動画の撮影が可能である。
図2には、広角カメラ105が示されている。望遠カメラ106は、対物レンズ155を介して撮影を行う。前述したように、対物レンズ155を介して測距光の出射および入射が行われる。
【0046】
広角カメラ105および望遠カメラ106の外部標定要素(位置と姿勢)と測距のための光学系の外部標定要素の関係は既知である。この例では、望遠カメラ106の光軸と測距光の光軸とは一致している。広角カメラ105の光軸は、望遠カメラ106の光軸と一致していないが、平行となる関係に設定されている。
【0047】
水平回転駆動制御部107は、水平回転部153の水平回転の駆動およびその制御を行う。鉛直回転駆動制御部108は、鉛直回転部154の鉛直回転の駆動およびその制御を行う。
【0048】
画像データ受付部109は、広角カメラ105および望遠カメラ106が撮影した画像の画像データを受け付ける。画像解析部110は、広角カメラ105および望遠カメラ106が撮影した画像の画像解析を行う。この画像解析では、撮像した反射プリズム装置の識別と、測位装置100に対する反射プリズム装置の向きが取得される。画像解析部110で行われる処理の詳細については後述する。
【0049】
プリズム定数取得部111は、画像解析部110における画像解析の結果得られた反射プリズム装置の識別情報に基づき、プリズム定数を取得する。測距データ補正部112は、プリズム定数取得部111が取得したプリズム定数を用いて、距離算出部103が算出した当該反射プリズムまでの距離の値を補正する。この補正された値が最終的な測距値となる。
【0050】
例えば、画像から画像解析部110が割り出した識別情報に基づく当該反射プリズム装置のプリズム定数が20mmであるとする。この場合、距離データ補正部112は、距離算出部103が算出した距離を上記取得されたプリズム定数を用いて補正し、最終的な測距値を得る。この場合、距離算出部103が算出した距離をLとすると、L-20mmが最終的な測距値として得られる。
【0051】
位置算出部113は、測距値およびその方向に基づき、測距点の三次元位置を算出する。ここで、絶対座標系におけるレーザー測位装置100の外部標定要素(姿勢と位置)が既知であれば、測距点の絶対座標系における三次元位置が得られる。絶対座標系は、GNSSや地図を記述する場合に利用される座標系である。
【0052】
反射プリズム装置の向き取得部114は、画像解析部110における画像解析の結果に基づき、反射プリズム装置のレーザー測位装置100に対する向きの情報を取得する。
【0053】
報知部115は、反射プリズム装置の向き取得部114が取得した反射プリズム装置の向きに係る情報を報知情報として出力する。この報知情報は、通信装置119を介して、外部に出力される。例えば上記の報知情報は、無線LAN回線を介して、反射プリズム装置の設置を行う作業員が携帯する通信端末に送信される。
【0054】
判定部116は、反射プリズム装置がレーザー測位装置に正対しているか否かの判定を行う。例えば、反射プリズム装置の正面の方向と、反射プリズム装置とレーザー測位装置を結ぶ線とがなす角度が、予め定めた閾値(例えば5°)以下であれば、反射プリズム装置がレーザー測位装置に正対しているとの判定が行われる。
【0055】
動作制御部117は、レーザー測位装置100の動作の制御を行う。動作制御部117は、例えばマイコンにより構成される。データ記憶部118は、レーザー測位装置100を動作させるために必要な動作プログラム、各種のデータ、測量データを記憶する。また、データ記憶部118には、
図6および
図7に例示するテーブルデータが記憶される。
【0056】
通信装置119は、外部の機器との間で通信を行う。通信は、光通信、無線LAN、携帯電話回線等を用いて行われる。有線による通信も可能である。タッチパネルディスプレイ120は、ユーザインターフェースとして機能し、レーザー測位装置100の操作パネル、操作に係る情報の表示装置、測量した各種データ等の表示装置として機能する。
【0057】
(反射プリズム装置)
以下、反射プリズム装置について説明する。
図4は、反射プリズム装置の正面図である。
図5(A)は、プリズム定数が0mmである反射プリズム装置200の側面図であり、
図5(B)は、プリズム定数が30mmである反射プリズム装置300の側面図である。この例の場合、プリズム定数が違っても、正面から見ると反射プリズム装置の見た目は、同じように見える(厳密には、部品の奥行方向の位置関係が異なるが、子細な差なので、ここでは、同じ見た目として扱う)。また、両反射プリズム装置を構成する部品は同じであるので、以下の説明では同じ符号を付与して説明を行う。
【0058】
反射プリズム装置200と300は、反射プリズム201、反射プリズム201を保持するホルダー202、ホルダー202を支持するU字型のアーム203、アーム203の下部を支えるベース部204、ベース部204の下部に固定された支柱205を有する。
【0059】
反射プリズム201は、アーム203に対する仰角および俯角の調整が可能である。アーム203に対する反射プリズム201の仰角および俯角の固定は、摘み208を回転させることで行なわれる。
【0060】
反射プリズム200と300の違いは、ホルダー202に対する反射プリズム201の光軸方向における位置である。反射プリズム装置200では、
図1(A)に関連して説明した理由により、反射プリズム300に比較して、反射プリズム201がホルダー202に対して光軸上の前の方向(レーザー測位装置の方向)にシフトした位置にある。
【0061】
反射プリズム装置200と300において、基準点(測距の基準となる点)は支柱205の軸線上に設定されている。支柱205の先端は尖がっており、支柱205を鉛直にした状態で、その先端を地面や床面上に設定された測設点に接触させることで、反射プリズム装置200および300の設置が行われる。
【0062】
反射プリズム装置200および300は、支柱205を軸として水平回転させることで、その水平方向における向きが調整される。支柱205でなく、三脚等の支持体上に水平回転可能な状態でベース部204を保持させる形態も可能である。
【0063】
ベース部204の正面には、プリズム定数を示すバーコード207が表示されている。バーコード207の代わりに文字によるコード表示、2次元バーコード、その他図形情報によるコード表示が利用可能である。また、直接プリズム定数を表示する形態も可能である。
【0064】
(プリズム定数の取得と反射プリズム装置の向きの取得)
画像解析部110は、広角カメラ105および/または望遠カメラ106が撮像したバーコード207の画像からバーコード207に対応するコード情報を読み取る。このコード情報は反射プリズム装置の識別情報であり、プリズム定数取得部111は、このコード情報から、バーコード207が付された反射プリズム装置の型番を特定し、当該反射プリズム装置のプリズム定数を取得する。
【0065】
この場合、データ記憶部118には、
図6に示すデータが記憶され、このデータに基づき、読み取ったコードに対応するプリズム定数が取得される。
図6のデータは予め取得され、既知のデータとしてデータ記憶部118に記憶しておく。
【0066】
例えば、画像から読み取ったコード情報が〇△□◇○△であったとする。この場合、
図6のデータから、当該反射プリズムの型番が特定され、またプリズム定数30mmが取得される。
【0067】
反射プリズム装置の外観とプリズム定数の関係を予め調べて置き、そのデータをデータ記憶部118に記憶しておく方法も可能である。この場合、画像解析部110は、広角カメラ105および/または望遠カメラ106が撮像した反射プリズム装置の外観画像から反射プリズム装置を識別する。コード情報と反射プリズム装置の外観の情報を組み合わせて、反射プリズム装置の識別を行う形態も可能である。
【0068】
また、画像解析部110は、広角カメラ105および/または望遠カメラ106が撮像した反射プリズム装置200(または300)のレーザー測位装置100に対する向きを割り出す。以下、この処理について説明する。
【0069】
データ記憶部118には、利用する反射プリズム装置の3次元モデルが記憶されている。
図7にこのデータの一例を示す。この3次元モデルは、反射プリズム装置の外観を示す輪郭線により構成される3Dデータであり、例えば、各反射プリズム装置の設計データ(3次元CADデータ)から得られる。各反射プリズム装置の三次元データをステレオ写真撮影やレーザースキャンを用いて取得し、そこから3次元モデルのデータを得てもよい。
【0070】
以下、反射プリズム装置を撮影した画像に基づいて、当該反射プリズムの向きを割り出す処理について説明する。ここでは、レーザー測位装置100から見て、反射プリズム装置が水平方向または水平方向と見なせる方向にあるとする。
【0071】
まず、撮影画像から読み取ったコードに基づき、
図7のデータを参照して対象となる反射プリズム装置の三次元モデルを取得する。
【0072】
反射プリズム装置の3次元モデルを取得したら、この3次元モデルを正面(0°方向)から見た図、右斜め5°から見た図、右斜め10°から見た図、右斜め15°から見た図、右斜め20°から見た図、右斜め25°から見た図、右斜め30°から見た図を作成する。また同様に、当該3次元モデルを、左斜め5°から見た図、左斜め10°から見た図、左斜め15°から見た図、左斜め20°から見た図、左斜め25°から見た図、左斜め30°から見た図を作成する。
【0073】
すなわち、異なる複数の視点から見た当該反射プリズム装置の画像を作成する。以下、この視点毎の当該反射プリズム装置の画像をモデル画像と称する。
【0074】
そして、当該3次元モデルを各方向から見た上記モデル画像(この場合は、計15枚)と広角カメラ105および/または望遠カメラ106が撮影した反射プリズムの撮影画像とを比較する。この比較により、当該撮影画像に最も類似するモデル画像を探索する。この探索は、公知の画像解析技術を用いて行われる。
【0075】
そして上記探索されたモデル画像における上記の角度(3次元モデルを見る角度)を取得する。例えば、探索したモデル画像が、右斜め10°の方向から見たモデル画像である場合、当該反射プリズム装置の正面の方向から大凡右斜め10°の方向にレーザー測位装置100が見えることになる。この場合、反射プリズム装置がレーザー測位装置100に対して正対しておらず左に10°回転させた方向を向いていることになる。
【0076】
図8は、鉛直上方から見た上面図である。
図8(A)には、反射プリズム装置200がレーザー測位装置100に正対している状態が示されている。
図8(B)には、反射プリズム装置200がレーザー測位装置100に対して、少し左の方向に向いている状態が示されている。
【0077】
上記の処理により、反射プリズム装置のレーザー測位装置に対する向きが割り出される。この処理が画像解析部110において行われる。
【0078】
ここでは、角度の設定を5°刻みとする例を説明したが、より細かい設定(例えば、2°や3°刻み)も可能である。また、精度の低下を許容できれば、より大きな角度の刻みの設定(例えば、10°刻み)も可能である。また、当該3次元モデルを斜め上や斜め下の方向から見たモデル画像を作成する形態も可能である。
【0079】
(処理の手順の一例)
以下、レーザー測位装置100を用いて反射プリズム装置200または300の測位(測距)を行う手順の一例を説明する。以下説明する処理を実行するプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、レーザー測位装置100に内蔵されたコンピュータのCPUにより実行される。
【0080】
以下の処理は、レーザー測位装置100が設置され、作業員が反射プリズム装置200(または300)を、測位を行う予定の位置に設置した状態(
図11参照)で開始される。なお、処理に先立ち、レーザー測位装置100の外部標定要素(位置と姿勢)は求められており、既知であるとする。
【0081】
まず、広角カメラ105および/または望遠カメラ106により、反射プリズム装置200を撮影し、その際に得られた画像データを取得する(S101)。この処理は、画像データ受付部109で行われる。上記の撮影の際、凡そでよいので、反射プリズム装置200がレーザー測位装置100に正対するように努める。
【0082】
次に、ステップS101で取得した反射プリズム装置200の撮影画像からコードデータの表示(この場合は、バーコード207の表示)を検出し、そのコードの読み取りを行う(ステップS102)。
【0083】
次に、読み取ったコードを
図6のデータに当てはめ、ここで対象としている反射プリズム装置200の型番を求め、反射プリズム装置200の識別を行う(ステップS103)。ステップS102とS103の処理は、画像解析部110で行われる。
【0084】
次に、ステップS102において読み取ったコードを
図6のテーブルデータに当てはめ、ここで対象としている反射プリズム装置200のプリズム定数を求める(ステップS104)。この処理は、プリズム定数取得部111で行われる。
【0085】
次に、ステップS103で取得した型番を
図7のデータの当てはめ、該当する反射プリズム装置(この例では、
図11の反射プリズム装置200)の3次元モデルを得る(ステップS105)。次に、ステップS105で得た3次元モデルを用いた反射プリズム装置200のレーザー測位装置100に対する向きを特定する(ステップS106)。ステップS105とS106の処理は、反射プリズム装置の向き取得部114で行われる。
【0086】
次に、ステップS106で得た反射プリズム装置200のレーザー測位装置100に対する向きの情報の報知を行う(ステップS107)。この処理では、反射プリズム装置200のレーザー測位装置100に対する向きに係る報知情報が通信装置119を介して、反射プリズム装置200の設置を行う作業員が携帯する通信端末に送信される。
【0087】
図9に、反射プリズム装置200の設置を行う作業員が携帯する通信端末400の表示ディスプレイに表示される上記の報知情報の一例を示す。通信端末400としては、専用の通信端末、スマートフォン、タブレット等が利用できる。
【0088】
図9(A)には、反射プリズム装置200がレーザー測位装置100に対して正対している(正面を向いている)旨の報知情報が通信端末400のディスプレイ上に表示されている状態が示されている。
図9(B)には、反射プリズム装置200の正面が、レーザー測位装置100に対してやや左を向いている場合の報知情報が通信端末400のディスプレイ上に表示されている状態が示されている。
【0089】
ステップS107の後、反射プリズム装置200がレーザー測位装置100に対して正対しているか否かの判定が行われる(ステップS108)。この処理は判定部116で行われる。反射プリズム装置200がレーザー測位装置100に対して正対していれば、ステップS109に進み、正対していなければ、ステップS106以下の処理を再度実行する。
【0090】
正対の判定は、±5°以内といった予め定めた範囲に収まっているか否かを判定することで行なわれる。勿論、完全な正対の有無を判定する形態も可能である。
【0091】
例えば、
図9(B)の表示を見た作業員は、反射プリズム装置200を上方から見て時計回り方向に少し回す。そして、反射プリズム装置200がレーザー測位装置100に対して正対した段階、あるいは正対したとみなせる状態となった段階でステップS108の判定がYESとなり、ステップS109に進む。
【0092】
ステップS109では、測距光を用いた反射プリズム装置200の測距が行われる(ステップS109)。次に、ステップS104で取得したプリズム定数を用いてステップS109で得た測距値を補正する(ステップS110)。この処理は、測距データ補正部112で行われる。
【0093】
そして、ステップS110で補正された測距値が測距値として確定される(ステップS111)。こうして
図11の反射プリズム装置200の測距(レーザー測位装置100からの距離の測定)が行われる。
【0094】
また、得られた測距値、レーザー測位装置100の外部標定要素(位置と姿勢)、レーザー測位装置100から見た反射プリズム装置200の方向に基づき、反射プリズム装置200の絶対座標系における位置が算出される。すなわち、反射プリズム装置200の測位が行われる。
【0095】
(優位性)
反射プリズム装置のプリズム定数が撮影画像に基づき自動で取得でき、このプリズム定数を用いた測距値の補正が行われる。この際の作業員の負担は軽微であり、プリズム定数の設定に係る作業が簡素化できる。また、反射プリズム装置がレーザー測位装置に正対しているのか否かの判定が行われ、その情報がリアルタイムで反射プリズム装置を取り扱う作業者に報知される。これにより、反射プリズム装置をレーザー測位装置に正対させることが容易となり、高い測定精度を得ることができる。
【0096】
(その他)
ここでは、光波測位装置の例としてレーザー測位装置の例を説明したが、レーザースキャナ等のレーザー測距の機能を有する測量装置に本発明を利用することができる。またレーザー以外の形式の光を用いた測位装置に本発明を適用することもできる。
【0097】
プリズム定数の自動取得に係る処理および/または反射プリズム装置の向きの判定に係る処理を行う部分をデータ処理装置として独立して機能させることも可能である。この場合、当該部分がPC(パーソナル・コンピュータ)、マイコン、専用のハードウェアの一または複数により構成される。例えば、画像データ受付部109、画像解析部110、プリズム定数取得部111、測距データ補正部112、位置算出部113、反射プリズム装置の向き取得部114、報知部115、判定部116、データ記憶部118の少なくとも一つをPCで構成し、当該PCをプリズム定数の自動取得に係る処理の少なくとも一部を行うデータ処理装置として利用することができる。
図3の構成は、上記データ処理装置を備えたレーザー測位装置100として捉えることができる。
【符号の説明】
【0098】
100…レーザー測位装置、105…広角カメラ、151…ベース部、152…三脚、153…水平回転部、154…鉛直回転部、155…対物レンズ、200…反射プリズム装置、201…反射プリズム、202…ホルダー、203…アーム、204…ベース部、205…支柱、207…バーコード、206…摘み、300…反射プリズム装置、400…通信端末。