(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188487
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】車両用樹脂成形品および車両用樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20221214BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096558
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正知
(72)【発明者】
【氏名】原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】松井 洸樹
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD05
4F202AD23
4F202AG03
4F202AH17
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK06
4F206AD05
4F206AD23
4F206AG03
4F206AH17
4F206AR12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JN11
4F206JQ81
4F206JW23
(57)【要約】
【課題】クラックの発生を抑制できる車両用樹脂成形品および車両用樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】車両用樹脂成形品は、第1樹脂材料により構成されて意匠面部(21)を有する透明な第1部材(20)と、第2樹脂材料により構成される不透明な第2部材(40)と、を有する。第2部材(40)は第1部材(20)の意匠面部(21)の裏面に積層された枠状の部材である。第1部材(20)は、意匠面部(21)の裏面から盛り上がって、第2部材(40)が構成する枠の内側の第1端面(42)と意匠面部(21)との境界部分(30)を覆う第1縁取部(25)を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂材料により構成されて意匠面部を有する透明な第1部材と、第2樹脂材料により構成される不透明な第2部材と、を有し、
前記第2部材は前記第1部材の前記意匠面部の裏面に積層された枠状の部材であり、
前記第1部材は、前記意匠面部の前記裏面から盛り上がって、前記第2部材が構成する枠の内側の第1端面と前記意匠面部との境界部分を覆う第1縁取部を有している、
車両用樹脂成形品。
【請求項2】
前記第1縁取部は、前記第1端面を覆うように前記意匠面部の前記裏面から盛り上がっている、
請求項1に記載の車両用樹脂成形品。
【請求項3】
前記第2部材は前記第1部材の周縁部に積層されており、
前記第2部材が構成する枠の外側の第2端面と前記第1部材の前記周縁部の端面とが少なくとも一部において面一である、請求項1または請求項2に記載の車両用樹脂成形品。
【請求項4】
前記第2部材は前記第1部材の周縁部に積層されており、
前記第2部材が構成する枠の外側の第2端面と繋がる前記第2部材の端部は、前記第2端面に向かうにつれて徐々に厚みが小さくなる部分を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両用樹脂成形品。
【請求項5】
前記第2部材は、それ自体が構成する前記枠の一部において、前記第1部材が内側に充填されている開口部を有し、
前記第2部材は前記開口部を縁取る第2縁取部を有し、
前記第2縁取部の最小幅が10mm以上である、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両用樹脂成形品。
【請求項6】
前記第2部材は、それ自体が構成する前記枠の一部において、前記第1部材が内側に充填されている開口部を有し、
前記第2部材は前記開口部を縁取る第2縁取部を有し、
前記開口部における前記第1部材の開放面と前記第2縁取部の表面とが面一である、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の車両用樹脂成形品。
【請求項7】
第1樹脂材料により構成されて意匠面部を有する透明な第1部材と、第2樹脂材料により構成される不透明な第2部材と、を有し、前記第2部材は前記第1部材の前記意匠面部の裏面に積層された枠状の部材である、車両用樹脂成形品の製造方法であって、
前記第1部材が収容されたキャビティに前記第2樹脂材料を射出して、前記第1部材の周縁部に前記第2部材を枠状に積層させる積層工程と、
前記積層工程において成形された前記第1部材および前記第2部材を備える中間成形品をトリミングするトリミング工程と、
を含み、
前記積層工程において、
前記キャビティに収容された前記第1部材は、前記周縁部より外側に張り出た張出部を有し、
前記第1部材は、前記第2樹脂材料の射出口が存在する位置に前記張出部が配置されるように、前記キャビティに収容され、
前記射出口から前記第1部材の前記周縁部に向けて延びるゲートを介して、前記キャビティに前記第2樹脂材料を射出し、
前記トリミング工程において、
前記第2部材が構成する枠の外側の第2端面と前記第1部材の前記周縁部の端面とが少なくとも一部において面一となるように、前記中間成形品をトリミングする、
車両用樹脂成形品の製造方法。
【請求項8】
前記ゲートは、前記射出口から前記周縁部に向かうにつれて、前記第1部材の前記意匠面部の裏面と直交する方向の開口幅が大きくなるように構成されている、
請求項7に記載の車両用樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用樹脂成形品および車両用樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、クリア部材と着色部材とを有する車両用リアモジュールを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、クラックの発生を抑制できる車両用樹脂成形品および車両用樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る車両用樹脂成形品は、
第1樹脂材料により構成されて意匠面部を有する透明な第1部材と、第2樹脂材料により構成される不透明な第2部材と、を有し、
前記第2部材は前記第1部材の前記意匠面部の裏面に積層された枠状の部材であり、
前記第1部材は、前記意匠面部の前記裏面から盛り上がって、前記第2部材が構成する枠の内側の第1端面と前記意匠面部との境界部分を覆う第1縁取部を有している。
【0006】
上記車両用樹脂成形品によれば、第1部材が、意匠面部の裏面から盛り上がって、第2部材が構成する枠の内側の第1端面と意匠面部との境界部分を覆う第1縁取部を有していることで、当該境界部分に表面処理等で使用する溶剤が溜まることを抑制でき、当該境界部分でのクラックの発生を抑制できる。
【0007】
本発明の一側面に係る車両用樹脂成形品の製造方法は、
第1樹脂材料により構成されて意匠面部を有する透明な第1部材と、第2樹脂材料により構成される不透明な第2部材と、を有し、前記第2部材は前記第1部材の前記意匠面部の裏面に積層された枠状の部材である、車両用樹脂成形品の製造方法であって、
前記第1部材が収容されたキャビティに前記第2樹脂材料を射出して、前記第1部材の周縁部に前記第2部材を枠状に積層させる積層工程と、
前記積層工程において成形された前記第1部材および前記第2部材を備える中間成形品をトリミングするトリミング工程と、
を含み、
前記積層工程において、
前記キャビティに収容された前記第1部材は、前記周縁部より外側に張り出た張出部を有し、
前記第1部材は、前記第2樹脂材料の射出口が存在する位置に前記張出部が配置されるように、前記キャビティに収容され、
前記射出口から前記第1部材の前記周縁部に向けて延びるゲートを介して、前記キャビティに前記第2樹脂材料を射出し、
前記トリミング工程において、
前記第2部材が構成する枠の外側の第2端面と前記第1部材の前記周縁部の端面とが少なくとも一部において面一となるように、前記中間成形品をトリミングする。
【0008】
上記車両用樹脂成形品の製造方法によれば、第1部材と第2部材との界面におけるクラックの発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クラックの発生を抑制できる車両用樹脂成形品および車両用樹脂成形品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る車両の後部を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車両用バックドアの構成を示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る張出部付車両用リアモジュールの正面図である。
【
図7】第2部材が備える構造物の一態様を示す図である。
【
図8】張出部付車両用リアモジュールの製造の一態様を示す模式図である。
【
図9】別の実施形態に係る第2部材が構成する枠の外側の第2端面と第1部材とを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。尚、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
また、本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」について適宜言及する。これらの方向は、
図1に示す車両1について設定された相対的な方向である。ここで、「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。
【0013】
まず、
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係る車両用バックドア3を説明する。
図1は、車両用バックドア3を備えるハッチバック式の車両1の後部を示す斜視図である。
図2は、車両用バックドア3の構成を示す模式図である。車両用バックドア3は車両1の後部に設けられた開口2を開閉するように、車両1の後部に取り付けられている。車両用バックドア3は、車両用リアモジュール4(車両用樹脂成形品の一例)と、車両用リアモジュール4よりも車両1の内側に設けられたバックドアインナ5と、を有している。
【0014】
車両用リアモジュール4は、車両1の後部の開口2を覆うことのできる大きさに形成されている(
図2)。車両用リアモジュール4は、第1部材20と第2部材40とを有している。
第1部材20は、無色透明または有色透明の部材である。第1部材20は、車両1の後方から車両1を見た時に視認される意匠面部21を有する。第1部材20は、ランプ部22と、窓部24とを一体に有している。ランプ部22と窓部24はいずれも、光を透過させる部位である。
第2部材40は、第1部材20と比べて光の透過率が低い不透明な部材である。第2部材40は、少なくとも車両1の内部の一部を外部から視覚的に遮蔽するように、着色されている。
第1部材20は第1樹脂材料により構成されている。第2部材40は第2樹脂材料により構成されている。第1樹脂材料および第2樹脂材料は、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂(PMMA)、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等を主材料とし、任意にフィラーや着色剤などの添加剤を含む材料である。
【0015】
バックドアインナ5は、例えばポリプロピレン等の樹脂にガラス繊維等が混練された材料で構成される。ただし、バックドアインナ5を構成する材料は特定の樹脂に限られず、例えば金属であってもよい。バックドアインナ5は、車両用リアモジュール4の外周部の全周に亘るように形成され、ランプ部22と窓部24とに対応するインナ開口部52が設けられている(
図2)。
【0016】
バックドアインナ5が車両用リアモジュール4に接着剤を介して接着されることで、車両用バックドア3は形成されている。なお、バックドアインナ5への車両用リアモジュール4の取り付けの態様は接着剤を介したものに限定されず、車両用リアモジュール4にリブやボス等の構造物を形成して、バックドアインナ5へ取り付けられても良い。車両用バックドア3は、バックドアインナ5に設けられたヒンジ(図示省略)を介して車両後部に取り付けられている。
【0017】
車両用リアモジュール4の第1部材20のランプ部22の前方向の位置には、左右一対のリアコンビネーションランプが配置されている(図示省略)。本実施形態におけるランプ部22は、リアコンビネーションランプのストップランプやターンシグナルランプなどの光を透過させる。なお、リアコンビネーションランプは、車両用リアモジュール4に直接搭載されていてもよく、バックドアインナ5に搭載されていてもよく、車両用リアモジュール4及びバックドアインナ5の両方で支持されるように搭載されていてもよい。また、車体にリアコンビネーションランプを設けて車両用リアモジュール4の第1部材20のランプ部22によりリアコンビネーションランプが覆われるようにしてもよい。
【0018】
続いて、本実施形態に係る車両用リアモジュール4を詳細に説明する。
図3は後述する本実施形態の製造方法により成形された直後の車両用リアモジュール(以下、張出部付車両用リアモジュール400とする。)の正面図である。
図4は
図3のA-A’断面図である。
【0019】
張出部付車両用リアモジュール400は、車両用リアモジュール4の上下左右方向のいずれかに向かって延びる張出部410を備えている(
図3及び
図4)。張出部410には、射出ゲート痕420が形成される。張出部410をトリミングなどにより除去することで、車両用リアモジュール4が形成される。張出部付車両用リアモジュール400は、第1部材20と第2部材40とを二色成形することにより形成される。なお、張出部付車両用リアモジュール400及び車両用リアモジュール4の第1部材20及び第2部材40については、説明の便宜上、同一の符号を付して同様の部材として説明する。
【0020】
第1部材20は、前述のように窓部24とランプ部22とを一体に(monolithically)有し、さらにスポイラ部26を有してもよい(
図3)。
窓部24は第1部材20の左右方向の中心部分から左右方向に向かうにしたがって、緩やかに湾曲している。
ランプ部22は、第1部材20の左右の位置に一対で形成されており、第1部材20の主曲面から後方向に向かって張り出すように構成されている(
図1)。第1部材20の左右方向の端部の一部(上下方向の略中央部分)は車両1の略前後方向に向かって延びており、ランプ部22の側面部を形成している(
図1)。なお、ランプ部22における第1部材20の厚みが薄く形成されていると、ランプの光を十分に透過させることができ好ましい。
スポイラ部26は、第1部材20の上部において左右方向に延びるように形成されており、第1部材20の主曲面から後方向に向かって張り出すように構成されている(
図3および
図4)。スポイラ部26は、窓部24を平面視した時に、左右方向の中心部分から左右方向に延びるにつれて下方向に湾曲するように形成されている(
図3)。
【0021】
第2部材40は、第1部材20の意匠面部21の裏面に積層された枠状の部材である(
図3及び
図4)。第2部材40は第1部材20の周縁部23に積層されている。第2部材40は第1部材20のスポイラ部26の背面(車両1の前方向の面)にも設けられている。第2部材40は、それ自体が構成する枠の一部において、第1部材20が内側に充填されている開口部41を有している。開口部41は、第2部材40が構成する枠の上部に設けられており、ハイマウントストップランプからの光が第1部材20を介して車両1の後方向に放出されるように構成されている。第2部材の開口部41は、第1部材のスポイラ部26よりも下方に設けられている。
【0022】
第1部材20は、意匠面部21の裏面から盛り上がっている第1縁取部25を有している(
図4)。第1縁取部25は、第2部材40が構成する枠の内側の第1端面42と第1部材20の意匠面部21との境界部分30を覆っている。境界部分30は、第1端面42の後端に位置する部分である。本実施形態では、第1縁取部25は第1端面42の全体を覆っている。なお、
図4では一部の断面が例示されているが、第1縁取部25は枠の内側の全ての第1端面42を覆うように設けられている。また、
図4では、第1縁取部25の表面の一部は第2部材40が構成する枠の表面と面一とされているが、
図5に示すように第1端面42との接触部分から直ちに傾斜する態様であってもよい。
【0023】
張出部付車両用リアモジュール400は、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20の周縁部23の端面23aとが張出部410を除いて面一となるように構成されている。張出部410をトリミング等により除去して形成される車両用リアモジュール4では、張出部410の除去部分においても、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20の周縁部23の端面23aとが面一となるように構成されている(
図4参照)。なお、後述する態様のように、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44が、張出部410を除いて第1部材20により覆われていてもよい。
【0024】
第2部材40は、開口部41を縁取る第2縁取部45を有している。第2縁取部45は、第2部材40が構成する枠の一部であり、開口部41の周辺に位置する。第2縁取部45は、開口部41を囲う枠である。ここで、
図6を参照して第2縁取部45の幅について説明する。
図6は、開口部41付近を後方から見た拡大模式図である。実施形態における張出部付車両用リアモジュール400における第2部材40のうち、開口部41の下方向に位置する第2縁取部45の幅wは、他の部位に比べて小さい。第2縁取部45の最小幅wは、10mm以上とすることが好ましい。これにより、この部位においてヒケ等の外観不良が発生することを抑制できる。開口部41における第1部材20の開放面27と第2縁取部45の表面とは面一である(
図4)。
【0025】
車両用リアモジュール4の第2部材40は、バックドアインナ5への締結のためのボスや、位置決めのためのリブ等の構造物を備えてもよい。
図7は、第2部材40が備える構造物47の一態様を示す図である。ここでは、略円柱状の構造物47を説明する。車両用リアモジュール4に構造物47を設ける場合、構造物47の根元部分の直径tと、構造物47が設けられている部分における第1部材20および第2部材40の積層厚みTと、がT/t≧1.0の関係とすることが好ましい。このような構成により、ヒケなどの外観不良の発生を抑制できる。T/t≧1.5の関係となるように構造物47を設けるとより好ましい。なお、構造物47は平板状であってもよい。
なお、第1部材20の表面に傷つきを防止するハードコートを施すことで、若干のヒケによる凹部を埋めることもでき、これによっても外観不良の抑制された車両用リアモジュール4とすることもできる。
【0026】
続いて、本実施形態に係る車両用リアモジュール4の製造方法(車両用樹脂成形品の製造方法の一例)を説明する。本実施形態の基本的態様として、国際公開第2019/181944号(特許文献1)に開示されるいわゆる対向方式の二色成形用金型を用いる方法が適宜参照される。上述した張出部付車両用リアモジュール400に対応したキャビティを備える金型を用いて、張出部付車両用リアモジュール400が製造される。そして、張出部付車両用リアモジュール400から張出部410を取り除くことで、車両用リアモジュール4が製造される。
【0027】
実施形態に係る張出部付車両用リアモジュール400の製造方法は、第1部材20が収容されたキャビティに第2樹脂材料を射出して、第1部材20の周縁部23に第2部材40を枠状に積層させる積層工程を含む。実施形態に係る車両用リアモジュール4の製造方法は、積層工程に加えて、積層工程において成形された第1部材20および第2部材40を備える張出部付車両用リアモジュール400をトリミングするトリミング工程を含む。
【0028】
積層工程において、キャビティに収容された第1部材20は、周縁部23より外側に張り出た張出部410を有する(
図3および
図4参照)。第1部材20は、第2樹脂材料の射出口が存在する位置に張出部410が配置されるように、前記キャビティに収容される(
図3及び
図4参照)。そして、射出口から第1部材20の周縁部23に向けて延びるゲートを介して、キャビティに第2樹脂材料を射出する。当該キャビティは、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と前記第1部材20の周縁部23の端面23aとが張出部410を除いて面一となるように構成されていてもよい。このように構成されたキャビティを用いることで、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20の周縁部23の端面23aとが張出部410を除いて面一となるように構成された張出部付車両用リアモジュール400が製造される。
【0029】
続いてトリミング工程において、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20の周縁部23の端面23aとが少なくとも一部において面一となるように、張出部付車両用リアモジュール400をトリミングする。具体的には、張出部付車両用リアモジュール400の張出部410をトリミングして、張出部410が位置していた部分において第2端面44と端面23aとを面一にする。
【0030】
また、当該製造方法に用いられる金型において、射出口から第1部材20の周縁部23に向かうにつれて、第1部材20の意匠面部21の裏面と直交する方向の開口幅が大きくなるようにゲートが構成されている。これにより、第2部材40が射出ゲート痕420から第1部材20の周縁部23に向かうにつれて徐々に厚みが大きくなる部分440を含む、張出部付車両用リアモジュール400を製造できる(
図4)。
【0031】
なお、
図4に示す例では、トリミングラインTL2より外方向の部分(トリミングされて取り除かれる部分)において徐々に厚みが大きくなる部分440が含まれ、トリミングラインより内方向の部分(トリミングされて残る部分)には徐々に厚みが大きくなる部分440が含まれていない。一方で、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と繋がる第2部材の端部(トリミングされて残る部分)が、第2端面44に向かうにつれて徐々に厚みが小さくなる部分を含むように、キャビティの形状を変えてもよく、トリミングラインを調整してもよい。
【0032】
また、当該製造方法において用いられる金型において、射出口から第1部材20の周縁部23に向かうにつれて、第1部材20の意匠面部21の裏面と平行な方向の開口幅が大きくなるようにゲートが構成されている。これにより、第2部材40が射出ゲート痕420から第1部材20の周縁部23に向かうにつれて徐々に幅が大きくなる部分430を含む、張出部付車両用リアモジュール400を製造できる(
図3)。なお、第2部材40の第1部材20の周縁部23に向かうにつれて徐々に幅が大きくなる部分430は、トリミングラインTL1(
図3に示される破線)でトリミングされて取り除かれる。
【0033】
ここで、
図8を参照して張出部付車両用リアモジュール400の製造方法の一態様を説明する。
図8は、開口部41を有する第2部材40の製造の態様を示す。
図8に示す態様では、キャビティに第1部材20を収容して型締めをする際、第1部材20の開放面27を金型50に接触させる。そして、開放面27が金型50に接触した状態で、第1部材20が収容されたキャビティに第2樹脂材料を導入して第2部材40を積層させる。これにより、第2部材40の開口部41に充填される第1部材20に働く残留応力を低減することができる。
【0034】
(作用・効果)
上記実施形態における車両用樹脂成形品(車両用リアモジュール4)は、第1部材20が、意匠面部21の裏面から盛り上がって、第2部材40が構成する枠の内側の第1端面42と意匠面部21との境界部分30を覆う第1縁取部25を有している(
図4)。これにより、境界部分30に表面処理等で使用する溶剤が溜まることを抑制でき、境界部分30でのクラックの発生を抑制できる。
【0035】
また、上記実施形態では、第1部材20の意匠面部21の裏面に枠状の第2部材40が積層された樹脂成形品(車両用リアモジュール4)において、第2部材40が構成する枠の内側の第1端面42が第1部材20の盛り上がった第1縁取部25に覆われている(
図4)。これにより、第1部材20と第2部材40との界面に表面処理等で使用する溶剤がさらに溜まりにくくなり、第1部材20と第2部材40との界面におけるクラックの発生をさらに抑制できる。
【0036】
また、上記実施形態では、第1部材20の周縁部23に枠状の第2部材40が積層された樹脂成形品(車両用リアモジュール4)において、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20の周縁部23の端面23aとが面一である(
図4)。これにより、第1部材20と第2部材40との界面に表面処理等で使用する溶剤がさらに溜まりにくくなり、第1部材と第2部材との界面におけるクラックの発生をさらに抑制できる。ただし、後述する態様のように、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44が、張出部410を除いて第1部材20により覆われていてもよい。また、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20の周縁部の端面23aとが少なくとも一部において面一であってもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、第1部材20の周縁部23に枠状の第2部材40が積層された樹脂成形品(車両用リアモジュール4)において、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と繋がる第2部材40の端部が第2端面44に向かうにつれて徐々に厚みが小さくなる部分440を含んでもよい(
図4)。この場合、当該部分が段差状とされている場合に比べて、第1部材20および第2部材40の界面での成形収縮による応力集中を抑制でき、第1部材20と第2部材40との界面におけるクラックの発生を抑制できる。
【0038】
また、上記実施形態では、枠状の第2部材40の一部に設けられた開口部41に第1部材20が充填された樹脂成形品(車両用リアモジュール4)において、開口部41を縁どる第2部材40の第2縁取部45の最小幅wを10mm以上としている(
図6)。これにより、成形時の第2樹脂材料の充填量を増加でき、ヒケの発生を抑制できる、第1部材20および第2部材40の界面における残留応力を低減でき、第1部材20と第2部材40との界面におけるクラックの発生を抑制できる。
【0039】
また、上記実施形態では、枠状の第2部材40の一部に設けられた開口部41に第1部材20が充填された樹脂成形品(車両用リアモジュール4)において、開口部41における第1部材20の開放面27と開口部41を縁取る第2部材40の第2縁取部45の表面とが面一である(
図4)。これにより、第1部材20と第2部材40との界面に表面処理等で使用する溶剤が溜まりにくくなり、第1部材20と第2部材40との界面におけるクラックの発生を抑制できる。
【0040】
また、上記実施形態の製造方法は、第1部材20が収容されたキャビティに第2樹脂材料を射出して、第1部材20の周縁部23に第2部材40を枠状に積層させる積層工程と、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20の周縁部23の端面23aとが少なくとも一部において面一となるように、張出部付車両用リアモジュール400をトリミングするトリミング工程と、を含む。これにより、第1部材20と第2部材40との界面に表面処理等で使用する溶剤が溜まりにくい中間成形品(張出部付車両用リアモジュール400)を製造でき、第1部材20と第2部材40との界面におけるクラックの発生を抑制できる。
【0041】
また、上記実施形態の製造方法では、第1部材20が収容されたキャビティに第2樹脂材料を射出して、第1部材20の周縁部23に第2部材40を枠状に積層させる工程において、第2樹脂材料がキャビティへ射出される際に通過するゲートが、射出口から周縁部23に向かうにつれて第1部材20の意匠面部21の裏面と直交する方向の開口幅が大きくなるように構成されている。これにより、第1部材20および第2部材40の界面での成形収縮による応力集中を抑制でき、第1部材20と第2部材40との界面におけるクラックの発生をより抑制できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0043】
上記の実施形態では、車両用樹脂成形品の一例として車両用リアモジュール4を説明したが、これ以外にも車両用灯具を構成する樹脂成形品、車両用センサユニットを構成する樹脂成形品、等の種々の部品として適用されうる。
【0044】
また、上記の実施形態では第1部材20と第2部材40とを二色成形により一体化させて車両用リアモジュール4を形成する態様を説明した。その他に例えば、第1部材20と第2部材40とを別々に成形してこれらを、接着剤を用いて接着させたり、溶着させたりして車両用リアモジュール4を形成してもよい。あるいは、第1部材20と第2部材40に設けたリブ等により互いを嵌合させたりして、車両用リアモジュール4を形成してもよい。ただし、二色成形により成形すると第1部材20と第2部材40との接合が強固となり、また連続工程で車両用リアモジュール4を成形することができ、好ましい。
【0045】
上記の実施形態において、リアコンビネーションランプの光を透過するランプ部22を有する車両用リアモジュール4を説明したが、リアコンビネーションランプのように複数のランプが複合化されたものに限らず、例えばストップランプ、ターンシグナルランプ、バックランプ、テールランプ、リアフォグランプ、デイタイムランプ等の光を透過するように構成されていてもよい。また、これらのランプの任意の組合せから構成されるリアコンビネーションランプの光を透過するように構成されていてもよい。
【0046】
また、上記の実施形態における車両用リアモジュール4にランプ、クリーナー、ワイパー、センサ、デフォッガー等の部材を搭載してもよい。ランプとしては例えば上記で説明したものを搭載することができる。またセンサとしては例えばLiDAR、カメラ、レーダ等が挙げられる。この場合、LiDARやレーダ等センサ搭載部の肉厚を薄くすると、透過率が上がりセンサの感度がアップする。
【0047】
また、上記の実施形態において、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20の周縁部23の端面23aとが張出部410を除いて面一となるように構成されている張出部付車両用リアモジュール400を説明したが、本開示はこの態様に限定されない。
図9は、別の実施態様に係る第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44と第1部材20とを示す模式図である。
図9(a)または
図9(b)に示すように、第2部材40が構成する枠の外側の第2端面44が第1部材20により覆われていてもよい。なお、張出部410を含む部分は、第2端面44が第1部材20により覆われている部分から除かれる。また、張出部付車両用リアモジュール400を第2端面44が第1部材20により覆われている部分でトリミングする際、第1部材20の部分のみをトリミングしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1:車両、2:開口、3:車両用バックドア、4:車両用リアモジュール、5:バックドアインナ、20:第1部材、21:意匠面部、22:ランプ部、23:周縁部、23a:端面、24:窓部、25:第1縁取部、26:スポイラ部、27:開放面、30:境界部分、40:第2部材、41:開口部、42:第1端面、44:第2端面、45:第2縁取部、47:構造物、50:金型、52:インナ開口部、400:張出部付車両用リアモジュール、410:張出部、420:射出ゲート痕