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特開2022-188488プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188488
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/58 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
E02D5/58 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096561
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000140694
【氏名又は名称】株式会社加藤建設
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕作
(72)【発明者】
【氏名】新川 照雄
(72)【発明者】
【氏名】上山 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘輔
(72)【発明者】
【氏名】濱田 良幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】内山 敬二
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041DB08
2D041FA03
(57)【要約】
【課題】長尺の構造物に対するPPRC構造の適用を容易にする。
【解決手段】最下層となるPC部材11Aは、下側が鋼製の刃口とされたブロックであり、この上に、PC部材11B~11Fが順次積層される。PC部材12はPC部材11Fの上に積層され、更にその上にPC部材13A~13Iが順次積層される。下側のPC部材11A~11FはPC構造に対応した共通の構造を有する第1PC部材であり、上側のPC部材13A~13IはPPRC構造に対応した共通の構造を有する第2PC部材である。図1においては、下側で第1PC部材が積層されて構成された第1積層体110、上側で第2PC部材が積層されて構成された第2積層体130がそれぞれ形成される。第1積層体110と第2積層体130の中間にあるPC部材(中間PC部材)12は、第1PC部材と第2PC部材の特徴を共に有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張材が装着されて緊張作業が行われた後のプレキャスト部材を複数積層させた構造を沈設して構造物を構築する、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法であって、
前記プレキャスト部材として、
積層方向に沿って前記緊張材を貫通させる緊張材貫通孔を複数具備する第1プレキャスト部材と、
前記第1プレキャスト部材におけるよりも少ない数の複数の前記緊張材貫通孔と、前記積層方向に沿って鉄筋を貫通させる複数の鉄筋貫通孔と、を具備する第2プレキャスト部材と、
をそれぞれ複数設け、
前記緊張材を前記緊張材貫通孔の各々に設置して前記緊張作業が行われた状態の複数の前記第1プレキャスト部材を積層した第1積層体を得ると共に沈設する第1積層工程と、
前記緊張材を前記緊張材貫通孔の各々に設置して前記緊張作業が行われた状態の複数の前記第2プレキャスト部材を、複数の前記第2プレキャスト部材の前記鉄筋貫通孔が前記積層方向において連通するように積層した第2積層体を前記第1積層体の上に更に積層させた状態で得ると共に、前記第1積層体及び前記第1積層体を沈設する第2積層工程と、
前記第2積層体において前記積層方向で連通した前記鉄筋貫通孔の各々に、前記積層方向において全ての前記第2プレキャスト部材と重複し前記第1積層体とは重複しないように前記鉄筋を挿入して固定する鉄筋設置工程と、
を具備することを特徴とする、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法。
【請求項2】
前記第1積層体と前記第2積層体の間に、
前記第1プレキャスト部材における前記緊張材貫通孔の各々と対応する複数の前記緊張材貫通孔と、前記第2プレキャスト部材における前記鉄筋貫通孔の各々と対応する複数の前記鉄筋貫通孔と、を具備する中間プレキャスト部材を設け、
前記第2積層工程において、前記中間プレキャスト部材及び全ての前記第2プレキャスト部材における前記鉄筋貫通孔が前記積層方向において連通するように前記第2プレキャスト部材を積層し、
前記鉄筋設置工程において、前記積層方向において全ての前記第2積層体及び前記中間プレキャスト部材と重複するように前記鉄筋を前記鉄筋貫通孔の各々に挿入して固定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法。
【請求項3】
前記第2積層工程で前記第2プレキャスト部材に対して前記緊張作業で付与するプレストレスの値を、前記第1積層工程で前記第1プレキャスト部材に対して前記緊張作業で付与するプレストレスの値よりも小さく設定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法。
【請求項4】
前記第1プレキャスト部材、前記第2プレキャスト部材は、共に中心軸が前記積層方向と平行とされた筒状の形状を呈し、複数の前記緊張材貫通孔、及び複数の前記鉄筋貫通孔は、前記筒状の形状において前記中心軸の周りの周方向で分散して形成されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材(プレキャストコンクリート部材:PC部材)を用いて構造物を構築する構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋脚部基礎工や立抗等の構造物を構築する工法としてPCウェル工法が知られている。PCウェル工法においては、例えば短尺の円筒形状のコンクリート製のPC部材(プレキャストコンクリート部材又はプレキャスト部材)が地盤に順次沈設、圧入されて積層されることによって長尺の円筒形状のPCウェル構造物が構築される。この際、PC部材毎に緊張材を用いて緊張作業を行ない、プレストレスを付与することができる。PCウェル工法において用いられるPC部材は施工現場とは異なる場所で適切な環境下で製造することができるため、その品質の確保が容易であり、施工を容易にし、施工期間の短縮化を図ることができる。
【0003】
非特許文献1に示されるように、PCウェル工法においてPC部材が積層されて構築されるPCウェル構造物には、その構造に応じてPC(Prestressed Concrete)構造と、PPRC(Precast Prestressed Reinforced Concrete)構造の2種類がある。
【0004】
PC構造においては、各PC部材毎に鉛直方向(積層方向)に沿ったPC鋼棒(緊張材)が設けられ、このPC鋼棒にナットを締め込むことによって各PC部材に緊張力(プレストレス)が付与される。この際、下側のPC部材におけるPC鋼棒とこの上側に積層されたPC部材のPC鋼棒をカプラで連結した状態で積層した状態で、上側のPC部材における緊張処理を行うことができる。各PC部材におけるPC鋼棒の位置は、積層時にこれらがカプラで連結可能なように、重複するように設定される。
【0005】
構造物、PC部材が円筒形状である場合、PC鋼棒を円周方向に沿って多数設けることができるため、それぞれのPC部材において大きなプレストレスを一様に付与することができ、これによってこのPCウェル構造物におけるひび割れの発生等を抑制し、高い耐久性を得ることができる。
【0006】
一方、PPRC構造においても、各PC部材においてPC鋼棒が同様に用いられて積層される点についてはPC構造と同様である。ただし、PPRC構造においては、この他に、積層後のPCウェル構造物を鉛直方向で貫通する複数本の鉄筋が設けられる。この場合には、PCウェル構造物全体は鉄筋によって補強されるため、この構造は水平方向の応力に対しては高い強度を有し、特に耐震性が要求される構造物には適している。PPRC構造において各PC部材に付与されるプレストレスは、施工上必要となる最小限の値で十分である。
【0007】
PC構造、PPRC構造においては、それぞれの構造に対応した構造を具備するPC部材が用いられる。具体的には、PC構造用のPC部材にはPC鋼棒(緊張材)や緊張処理の際に用いられるナットやアンカープレートが装着されるように、PC鋼棒を貫通させる緊張材貫通孔が多数形成される。PPRC構造用のPC部材にも同様の緊張材貫通孔が設けられるが、その数はPC構造の場合よりも少なく、その代わりに鉄筋を貫通させる鉄筋貫通孔が多数設けられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】PCウェル工法研究会HP、https://www.pc-well.gr.jp/pcwell.php
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PPRC構造は、特に耐震性が要求される構造物にとって好ましいが、長尺となる場合には、これに応じて長い鉄筋が必要となった。この場合、長い鉄筋を全てのPC部材の積層後に鉄筋貫通孔に挿入する作業が容易ではなかった。また、鉄筋をPPRC構造内で固定するためには、実際には全てのPC部材の積層後に鉄筋挿入孔内を充填剤(固化前のモルタル)で充填してから鉄筋を挿入し、充填剤を固化させる作業が行われる。この場合において、鉄筋が長い場合には、鉄筋の挿入が完了する前に充填剤が固化し、この作業が困難となる場合があった。
【0010】
このため、長尺の構造物に対してもPPRC構造を容易に適用できる構築方法が求められた。
【0011】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法は、緊張材が装着されて緊張作業が行われた後のプレキャスト部材を複数積層させた構造を沈設して構造物を構築する、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法であって、前記プレキャスト部材として、積層方向に沿って前記緊張材を貫通させる緊張材貫通孔を複数具備する第1プレキャスト部材と、前記第1プレキャスト部材におけるよりも少ない数の複数の前記緊張材貫通孔と、前記積層方向に沿って鉄筋を貫通させる複数の鉄筋貫通孔と、を具備する第2プレキャスト部材と、をそれぞれ複数設け、前記緊張材を前記緊張材貫通孔の各々に設置して前記緊張作業が行われた状態の複数の前記第1プレキャスト部材を積層した第1積層体を得ると共に沈設する第1積層工程と、前記緊張材を前記緊張材貫通孔の各々に設置して前記緊張作業が行われた状態の複数の前記第2プレキャスト部材を、複数の前記第2プレキャスト部材の前記鉄筋貫通孔が前記積層方向において連通するように積層した第2積層体を前記第1積層体の上に更に積層させた状態で得ると共に、前記第1積層体及び前記第1積層体を沈設する第2積層工程と、前記第2積層体において前記積層方向で連通した前記鉄筋貫通孔の各々に、前記積層方向において全ての前記第2プレキャスト部材と重複し前記第1積層体とは重複しないように前記鉄筋を挿入して固定する鉄筋設置工程と、を具備することを特徴とする。
本発明の、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法は、前記第1積層体と前記第2積層体の間に、前記第1プレキャスト部材における前記緊張材貫通孔の各々と対応する複数の前記緊張材貫通孔と、前記第2プレキャスト部材における前記鉄筋貫通孔の各々と対応する複数の前記鉄筋貫通孔と、を具備する中間プレキャスト部材を設け、前記第2積層工程において、前記中間プレキャスト部材及び全ての前記第2プレキャスト部材における前記鉄筋貫通孔が前記積層方向において連通するように前記第2プレキャスト部材を積層し、前記鉄筋設置工程において、前記積層方向において全ての前記第2積層体及び前記中間プレキャスト部材と重複するように前記鉄筋を前記鉄筋貫通孔の各々に挿入して固定する、ことを特徴とする。
本発明の、プレキャスト部材を用いた構造物の構築方法は、前記第2積層工程で前記第2プレキャスト部材に対して前記緊張作業で付与するプレストレスの値を、前記第1積層工程で前記第1プレキャスト部材に対して前記緊張作業で付与するプレストレスの値よりも小さく設定することを特徴とする。
本発明の、前記第1プレキャスト部材、前記第2プレキャスト部材は、共に中心軸が前記積層方向と平行とされた筒状の形状を呈し、複数の前記緊張材貫通孔、及び複数の前記鉄筋貫通孔は、前記筒状の形状において前記中心軸の周りの周方向で分散して形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のように構成されているので、長尺の構造物に対するPPRC構造の適用を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る構築方法によって構築される構造物の構成を示す鉛直方向に沿った断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る構築方法において用いられる第1プレキャスト部材の鉛直方向に垂直な断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る構築方法において用いられる第2プレキャスト部材の鉛直方向に垂直な断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る構築方法において用いられる中間プレキャスト部材の鉛直方向に垂直な断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る構築方法のフローチャートの例である。
図6】本発明の実施の形態に係る構築方法の工程断面図(その1)である。
図7】本発明の実施の形態に係る構築方法の工程断面図(その2)である。
図8】本発明の実施の形態に係る構築方法の工程断面図(その3)である。
図9】本発明の実施の形態に係る構築方法における、緊張材の周りの構造を示す断面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る構築方法における、鉄筋の周りの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る構造物の構築方法について説明する。この構築方法はPCウェル工法の一種であり、複数のPC部材(プレキャストコンクリート部材又はプレキャスト部材)が鉛直方向で積層され、かつ各PC部材においてPC鋼棒(緊張材)が用いられてプレストレスが付与される。また、鉛直方向に沿った鉄筋も用いられることによって、水平方向における応力に対して高い強度を有する。
【0016】
図1は、この構築方法で構築される構造物1の構造を示す鉛直方向に垂直な断面図である。ここで、この構造物1は、例えば橋脚の基礎等として用いられ、鉛直方向に沿った中心軸を有する長尺の略円筒形状の形態を有し、短尺のPC部材が鉛直方向に16個積層された積層構造が、地盤G中に圧入されている。この構築方法は、ここで用いられるPC部材の構成、及びこれに伴う構築の手法に特徴を有する。周知のPCウェル工法の場合と同様に、各PC部材は個別にコンクリートを主体として構成されている。なお、後述するように、実際にはこの構造物1の内部には底部においてコンクリート層(底版コンクリート層)が、その上部において土砂層(中詰土砂層)がそれぞれ設けられているが、これらの記載は図1では省略され、図1においてはPC部材のみが記載されている。
【0017】
図1における最下層となるPC部材11Aは、下側が鋼製の刃口とされたブロックであり、この上に、PC部材11B~11Fが順次積層される。PC部材12はPC部材11Fの上に積層され、更にその上にPC部材13A~13Iが順次積層される。また、最上層となるPC部材13Iは地盤Gから露出する。なお、実際には図1において積層方向(鉛直方向)で隣接するPC部材の間にはエポキシ系接着剤で構成された薄い接合層が形成されているが、この記載は図1では省略されている。
【0018】
ここで、下側のPC部材11A~11FはPC構造に対応した共通の構造を有する第1PC部材(第1プレキャスト部材)であり、上側のPC部材13A~13IはPPRC構造に対応した共通の構造を有する第2PC部材(第2プレキャスト部材)である。このため、図1においては、下側で第1PC部材が積層されて構成された第1積層体110、上側で第2PC部材が積層されて構成された第2積層体130がそれぞれ形成される。
【0019】
第1積層体110と第2積層体130の中間にあるPC部材(中間PC部材)12は、第1PC部材と第2PC部材の特徴を共に有する。図2は第1PC部材の一つであるPC部材11Fの鉛直方向に垂直な断面図、図3は第2PC部材の一つであるPC部材13Aの鉛直方向に垂直な断面図、図4は中間PC部材であるPC部材12の鉛直方向に垂直な断面図、をそれぞれ示す。なお、図1においては、PC部材11A~11Fの外径、内径は等しく記載されているが、これらは図1の積層構造が可能な限りにおいて適宜設定され、これらが等しい必要はない。PC部材13A~13Iについても同様である。
【0020】
図2においてはPC部材11Fの断面が示されているが、PC部材11A~11Eの断面構造も同様である。ただし、前記のように外径、内径は若干異なっていてもよく、ここに記載された範囲外における相違があってもよい。PC部材13AとPC部材13B~13Iの関係も同様である。
【0021】
第1PC部材であるPC部材11F(図2)においては、周方向に沿って、12個の緊張材貫通孔20A~20Lが形成されている。緊張材貫通孔はPC部材11Fを鉛直方向(積層方向)で貫通する孔部であり、後述する緊張作業において用いられるPC鋼棒(緊張材)50がこの中に収容される。図2には、後述するようにこの緊張作業の際にPC鋼棒50に装着されるアンカープレート52も記載されている。また、PC部材11A~11Eも図2と同様の構成を具備し、PC部材11A~11Fが積層される際には、全てのPC部材における緊張材貫通孔20A~20Lの各々は平面視において重複する。
【0022】
第2PC部材であるPC部材13A(図3)においても、PC鋼棒50が貫通しPC部材11Fにおけるものと対応する緊張材貫通孔が形成されており、この緊張材貫通孔は、その下側のPC部材11A~11Fにおいて対応する緊張材貫通孔と平面視において重複する。ただし、図3に示されるように、PC部材13Aにおいては、図2における緊張材貫通孔20B、20D、20F、20H、20J、20Lは設けられず、緊張材貫通孔20A、20C、20E、20G、20I、20Kのみが設けられる。
【0023】
一方、PC部材13Aには、緊張材貫通孔20B、20D、20F、20H、20J、20Lの代わりに、後述する鉄筋60が収容される鉄筋貫通孔21が多数設けられる。鉄筋貫通孔21は、形成されなかった緊張材貫通孔20B、20D、20F、20H、20J、20Lに対応した箇所と、これに隣接して形成された緊張材貫通孔20A、20C、20E、20G、20I、20Kとの間において3つずつ周方向に並んで、合計36個が形成される。鉄筋貫通孔21も、緊張材貫通孔と同様に、PC部材13Aを鉛直方向で貫通する。また、PC部材13B~13Iも図3と同様の構成を具備し、PC部材13A~13Iが積層される際には、全てのPC部材における緊張材貫通孔20A、20C、20E、20G、20I、20Kの各々は平面視において重複する。また、第2積層体130においては、各PC部材における鉄筋貫通孔21が鉛直方向で連通するため、図3における各鉄筋貫通孔21に、第2積層体130の高さと同程度の長さの鉄筋60を収容することができる。
【0024】
中間PC部材であるPC部材12(図4)においては、PC部材11F(第1PC部材:図2)における緊張材貫通孔20A~20Lの全てに対応した緊張材貫通孔と、PC部材13A(第2PC部材:図3)における鉄筋貫通孔21の全て(36個)に対応した鉄筋貫通孔が共に設けられる。このため、図1の積層構造においては、PC部材11A~11F、12の全てにおける緊張材貫通孔20A~20Lは平面視において重複する。また、PC部材12、13A~13Iの全てにおける緊張材貫通孔20A、20C、20E、20G、20I、20Kは平面視において重複し、かつPC部材12、13A~13Iの全てにおける鉄筋貫通孔21は鉛直方向で連通する。
【0025】
なお、図2~4において、各PC部材は円筒形状を呈しているが、各PC部材がそれぞれ一体化されて円筒形状とされている必要はなく、例えば、図2~4の構造が左右2分割されていてもよい。また、構築される構造物の形態に応じ、他の形状、特に鉛直方向に垂直な断面形状が上記とは異なるものを適宜用いることができる。
【0026】
図1の積層構造においては、下層側の第1PC部材(PC部材11A~11F)と中間PC部材(PC部材12)の積層構造では鉄筋が用いられないPC構造が実現され、上層側の中間PC部材(PC部材12)、第2PC部材(PC部材13A~13I)の積層構造では鉄筋が用いられるPPRC構造が実現される。以下に、この場合の構築方法について説明する。
【0027】
図5は、この構築方法を示すフローチャートであり、図6、7は、この構築方法を簡略化して示す工程断面図である。図6(a)に示されるように、ここでは、まず、準備工程として、ボーリングによって地盤Gの施工地点においてグラウンドアンカー200を打設した後に、地上において施工時にPC部材を保持するために用いるベースフレーム210を、このグラウンドアンカー200に対して定着させる。
【0028】
次に、図6(b)に示されるように、図1において最も下層となるPC部材11Aをベースフレーム210に対して傾斜のないように固定する(図5のS1)。その後、図6(c)に示されるように、この状態で、後述するようにPC鋼棒50等をPC部材11Aの緊張材貫通孔20A~20L(図2)に設置してPC部材11Aに対して緊張作業を行ない、鉛直方向に沿ったプレストレスを付与する(図5のS2)。この緊張作業は緊張材貫通孔20A~20Lに対応した12本のPC鋼棒50を用いて行われる。その後、後述するようにPC部材11Aにおける各緊張材貫通孔内にグラウトを注入して固化させる。
【0029】
次に、図6(d)に示されるように、PC部材11Aの上面に接合層となるエポキシ系接着剤を塗布した後に、その上層のPC部材11Bを積層する(図5のS3)。この際には、PC部材11Aにおける場合と同様にPC鋼棒50をPC部材11Bに設置し、後述するように、下側のPC部材11A側で用いられるPC鋼棒50と上側のPC部材11B側で用いられるPC鋼棒50が連結される。その後、図6(e)に示されるように、PC部材11Bに対して図6(c)の場合と同様の緊張処理を行なった(図5のS4)後に、PC部材11Bの緊張材貫通孔20にグラウトを注入して固化させる。これによって、PC部材11AとPC部材11Bにそれぞれプレストレスが付与された状態で、これらの間の位置関係が固定される。
【0030】
次に、図6(f)に示されるように、ハンマグラブ(図示せず)で内部を掘削しながらPC部材11A等を地盤Gに圧入して沈設する(図5のS5)。その後、図6(d)~(f)(図5のS3~S5)の工程と同様の作業をPC部材11C~11Fに対して順次繰り返し、所定の総数の第1PC部材(PC部材11A~11F)を積層し終わった(図5のS6:Yes)場合に、図1の第1積層体110が形成される(第1積層工程)。
【0031】
その後、中間PC部材12に対しても上記の第1PC部材に対してと同様に積層(図5のS7)、緊張作業(図5のS8)が行われた後に圧入・沈設(図5のS9)が行われる。これにより、図6(g)に示されるように、各PC部材において緊張作業が行われた状態で、地盤G中においてPC部材11A~11Fが積層された第1積層体110が形成され、その上にPC部材(中間PC部材)12が固定される。
【0032】
ここで、緊張作業(図6(c)(e))においてPC部材に付与されるプレストレスは、例えば3.0~7.0N/mmの範囲である。このプレストレスの値は、この構築方法で構築される構造物1の基礎となる部分における強度を確保するために要求される値である。
【0033】
上記の作業においては、PC部材11A~11F、12のそれぞれにおける12個の緊張材貫通孔20A~20L(図2)中に設けられたPC鋼棒50が用いられ、後述するように、隣接するPC部材間においてPC鋼棒50同士が連結される。
【0034】
次に、図7(h)に示されるように、図6(d)(図5のS3)と同様に、PC部材12の上面に接合層となるエポキシ系接着剤を塗布した後に、その上層のPC部材(第2PC部材)13Aを積層する(図5のS10)。この際、図3に示されたように、PC部材13Aには6つの緊張材貫通孔20A、20C、20E、20G、20I、20Kのみが設けられ、これらにPC鋼棒50が設置され、この6本のPC鋼棒50がその下側のPC部材12における緊張材貫通孔20A、20C、20E、20G、20I、20K中のPC鋼棒50とそれぞれ連結される。また、PC部材12における鉄筋貫通孔21の各々(図4)とPC部材13Aにおける鉄筋貫通孔21の各々(図3)は連通する。
【0035】
次に、図7(i)に示されるように、図6(c)(e)の場合と同様に、PC鋼棒50を用いて緊張作業が行われることによって、PC部材13Aに対してプレストレスが付与される(図5のS11)。その後、図7(j)に示されるように、図6(f)と同様に、PC部材11A等を更に圧入・沈設する(図5のS12)。図7(h)~(j)の工程をPC部材13B~13Iに対して順次繰り返し、PC部材13Iまでが積層される(図5のS13:Yes)ことによって、図1における第2積層体130が形成される(第2積層工程)。これにより、図7(k)に示されるように、地盤G中において最下層にPC部材11Aが設けられ、最上部にPC部材13Iが設けられた積層構造が形成される。
【0036】
緊張作業(図7(i))においては、図6(c)(e)の場合とは異なり、6本のPC鋼棒50のみが用いられる。このため、この際のプレストレスは図6(c)(e)の場合よりも小さく、0.5~1.0N/mm程度とされる。このプレストレスの値は、図7に示された作業を行うにあたり最小限必要となる程度の値である。
【0037】
この状態では、PC部材12、13A~13Iの緊張材貫通孔20A、20C、20E、20G、20I、20K中のPC鋼棒50はそれぞれ連結され、かつ、PC部材12、13A~13Iにおける鉄筋貫通孔21の各々(図3、4)は連通する。
【0038】
その後、トレミー管やサンドポンプを用いてこの筒状の積層構造の内部のスライムを除去した後に、図8(l)に示されるように、底部にコンクリートを打設し、底版コンクリート層70を形成する(図5のS14)。
【0039】
次に、図8(m)に示されるように、PC部材12、13A~13Iにおいて連通した鉄筋貫通孔21の各々(図3、4)に鉄筋60が収納されて固定される(鉄筋設置工程:図5のS15)。この際、鉄筋貫通孔21の各々には予め固化前の充填剤(モルタル)が充填され、その後に鉄筋60を収納した後に充填剤を固化させることによって、鉄筋60が各鉄筋貫通孔21内において固定される。図2~4に示されるように、鉄筋貫通孔21は上層側のPC部材12、第2積層体130(PC部材13A~13I)においてのみ形成され、下層側の第1積層体110(PC部材11A~11F)には形成されないため、鉄筋60の長さは、PC部材12、第2積層体130の積層構造の高さに対応した長さとなり、構造物1全体(図1)の高さよりも短くなる。
【0040】
その後、図8(n)に示されるように、積層構造の内部の水分を除去した後に、内部における底版コンクリート層70の上側に土砂を投入し、中詰土砂層71を形成する(図5のS16)。これによって、図1の構造物1が構築される。
【0041】
図9は、上記の緊張作業(図6(e))におけるPC鋼棒(緊張材)50に関わる構造を詳細に示す断面図であり、ここでは緊張材貫通孔20Aの部分での鉛直方向に沿った断面が示されている。ここでは、PC部材11BをPC部材11Aの上側に設置した際(図5のS3)に用いた接着剤で構成された接合層80も記載されている。前記の通り、緊張作業の後でPC鋼棒50等は緊張材貫通孔20中においてグラウトで固定されるが、このグラウトで構成された充填層90も記載されている。
【0042】
ここで、下側のPC部材11AではPC鋼棒50A、上側のPC部材11BではPC鋼棒50Bが用いられている。PC鋼棒50A、50Bにはネジ加工が施され、ナット51がこれらに螺合して上側から装着される。また、PC部材11A、11Bの上面側において、水平方向に広がる矩形形状の板状の金属板でありPC鋼棒50が貫通するアンカープレート52が装着される。これに対応して、PC部材11A、11Bの上側には、アンカープレート52を内部に収容した状態でPC部材11A、11Bの上面よりも突出させないように掘り下げられた凹部52Aが緊張材貫通孔20Aの周囲に形成されている。
【0043】
このため、アンカープレート52の上側でナット51をPC鋼棒50A、50Bに装着することによって、図9の形態が実現される。この際、ナット51と同様に内面がネジ加工されたカプラ53がPC鋼棒50Aの上端及びPC鋼棒50Bの下端に装着されるため、PC鋼棒50AとPC鋼棒50Bは結合されて一体化される。このため、図9における上側のナット51を締め込むことによって、PC鋼棒50Bを介してPC部材11Bに対して鉛直方向でプレストレスを付与することができる。なお、前記のように下側のPC鋼棒50Aの下端側は図示の範囲外でPC部材11Aに固定されており、この段階の前の緊張作業において図9における下側のナット51を締め込むことによって、同様にPC部材11Aに対して鉛直方向で同様にプレストレスが付与されている。図9においては、緊張材貫通孔20Aに関わる断面構造が示されているが、他の緊張材貫通孔についても同様の構造が設けられており、全ての緊張材貫通孔におけるPC鋼棒50に対してナット51を共通のトルクで締め込むことによって、面内で均一なプレストレスを付与することができる。このプレストレスは、前記の通り、例えば3.0~7.0N/mmの範囲とされる。
【0044】
また、図9に示されるように、PC部材11A、11Bには、緊張材貫通孔20Aを側方の外部と連通させる細孔であるグラウト注入孔54が形成されている。このため、ナット51を締め込むことによってプレストレスを付与した後でグラウト注入孔54から流動性の高い液状のグラウトを注入して固化させることにより、充填層90を形成し、PC鋼棒50A、50Bを緊張材貫通孔20A中で固定することができる。
【0045】
図9の構造は第1積層体110中における他の接続箇所においても同様であり、この構造を用いて各PC部材の積層及び緊張作業が行われる。また、図7(i)におけるPC部材12とPC部材13Aの接続箇所、あるいは第2積層体130における接続箇所についても同様であるが、前記のように、この場合には使用される緊張材貫通孔(PC鋼棒)の数が少なく、プレストレスも、前記の通り0.5~1.0N/mm程度と小さく設定される。
【0046】
また、図10は、図8(m)において鉄筋60が挿入されて固定された際のPC部材13H、13Iにおける鉄筋貫通孔21の周囲の鉛直方向に沿った断面を示す図である。前記の通り、下側のPC部材13Hにおける鉄筋貫通孔21と上側のPC部材13Iにおける鉄筋貫通孔21は連通し、共通の鉄筋60が鉄筋貫通孔21の内部に設けられている。前記の通り、鉄筋60は鉄筋貫通孔21内に充填剤となるモルタルが固化前の状態で充填された後に設置されるため、鉄筋貫通孔21における鉄筋60の周囲にはモルタルが固化した充填層91が形成されている。すなわち、図10の構造によって、鉄筋60が第2積層体130内において固定されている。なお、図10においては単一の鉄筋60が用いられているが、実際には継手を用いて複数の鉄筋を連結して一体化されたものを用いてもよい。ただし、図9におけるPC鋼材50A、50Bとは異なり、こうした場合でも、図8(m)における設置時(モルタルの固化前)には既に鉄筋は一体化されている。
【0047】
図9における充填層90は、前記のように、緊張作業の終了後にグラウト注入孔54からグラウトを注入して固化させることによって形成され、この作業は、単体のPC部材毎に行われる。このため、グラウトの注入は、ナット51、アンカープレート52等によってPC鋼棒50が各PC部材に固定されてから行われる。この際、グラウトが単一のPC部材における緊張材貫通孔20A等に充填されたか否かを目視で確認することも容易である。
【0048】
これに対して、図10における充填層91を形成する際に、積層方向で連通した鉄筋貫通孔21の合計の深さは、PC部材12、PC部材13A~13Iの積層構造に対応した深さとなり、上記の場合の緊張材貫通孔20Aと比べて10倍程度となる。このため、例えばPC鋼棒50の場合と同様に鉄筋60を鉄筋貫通孔21に挿入した後でモルタルを注入した場合には、鉄筋貫通孔21がモルタルで充填されたか否かを確認することは容易ではない。このため、図10における充填層91は、PC部材12の上に第2積層体130が形成されてから(図8(l))、これらの間にかけて連通した各鉄筋貫通孔21中にモルタルを上側から注入した後で、鉄筋60を上側から挿入してから固化させることによって形成される。
【0049】
この際、鉄筋60が長く鉄筋貫通孔21が深くなった場合には、鉄筋60を鉄筋貫通孔21に挿入する作業を迅速に行なわないと、モルタルが固化するために、鉄筋60の設置が困難となる。この点は、前記のように鉄筋60が継手を用いて一体化された場合においても同様である。こうした点は、鉛直方向に長い構造物に対してPPRC構造を適用する場合に顕著となる。
【0050】
上記の構造物1においては、施工後において大きな水平応力が印加される上層側でのみPPRC構造(第2積層体130)を用い、下層側ではPC構造(第1積層体110)を用いることによって、鉄筋60あるいは鉄筋貫通孔21を短くすることができ、鉄筋60の設置を容易とし、この構造物1の構築作業を容易とすることができる。あるいは鉄筋60の全長を短くすることができるため、継手を用いることが不要となり、この点からも作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0051】
この際、下層側ではプレストレスを大きく設定することによって、第1積層体110の強度を高く維持することができる。また、PC構造とPPRC構造の両方に適合した中間PC部材12を用いることによって、上記の第1積層体110と第2積層体130を組み合わせることが特に容易となる。
【0052】
なお、上記の例では、図2~4にその断面構造が示された筒状のPC部材(第1PC部材、第2PC部材、中間PC部材)が用いられ、図1における各層はこれらの各PC部材単体で構成された。しかしながら、構造物が水平方向において大きな場合には、各層におけるPC部材を水平方向において分割し、分割された複数のPC部材を組み合わせて構造物の各層を形成してもよい。具体的には、構造物1(各PC部材)の外径が3800mm程度以上の場合にはこのような分割構造を用いることが好ましく、この外径が3500mm以下の場合には分割されない一体化構造を用いることが好ましい。
【0053】
この場合、例えば、図2~4の各PC部材を左右で2分割したものを用いることができる。この場合においても、分割されたPC部材毎に積層(図5のS3、S7、S10)、緊張(S4、S8、S11)を行うことができ、各層が形成された後で圧入・沈設(S5、S9、S12)を行うことができる。すなわち、上記の構築方法は、各層が単一のPC部材で構成されている場合に限定されない。この場合においても、鉄筋の設置は、全てのPC部材の積層後(第2積層体の形成後)に、同様に行うことができる。
【0054】
また、上記の例においては、上記のPC部材を用いたPCウェル工法が説明され、これによって構築される構造物が地盤G中に沈設させて得られた。この場合には上部側においてのみ特に大きな水平応力に対応する必要があるため、上部側においてのみ鉄筋60が用いられる。同様の要求は、地盤に圧入(沈設)されない構造物に対しても有効である。すなわち、上記の構築方法は、PCウェル工法だけでなく、PC部材を積層させて構造物を構築するPC工法全般にわたり有効である。この場合、構造物あるいはPC部材が筒状構造である必要はない。
【0055】
また、PCウェル工法においては、PC部材が積層された構造は内部が中空である筒状とされる。このように内部を中空とできる限りにおいて、PC部材の外形は適宜設定できる。例えば、その外形の鉛直方向に垂直な断面形状は楕円形状、長楕円形状、(略)矩形形状等、これによって構築される構造物の断面形状に応じて適宜設定できる。この場合でも、上記と同様に、緊張材貫通孔、鉄筋貫通孔をその中心軸の周りで分散させて複数形成することも容易である。
【0056】
また、図2~4では、最も単純な例として、緊張材貫通孔、鉄筋貫通孔が中心からの距離を一定としてほぼ等間隔で円周上に配列しているが、他の構成でこれらを配列させてもよい。例えば、図2~4において、これらを中心からの距離が異なる2つの円(第1の円、第2の円)の円周上でそれぞれ配列させてもよい。あるいは、この場合において、緊張材貫通孔あるいは鉄筋貫通孔が周方向に沿って第1の円上、第2の円上に交互に存在するような、千鳥配列としてもよく、あるいは、より多くの円の円周上にこれらを同様に配列させてもよい。PC部材(構造物)の断面形状の外形が円形状ではない場合においても、その外形の形状に沿って緊張材貫通孔、鉄筋貫通孔を同様に配列させることができる。この際、緊張材貫通孔は緊張材によって一様なプレストレスを付与できるように、鉄筋貫通孔は鉄筋によって一様に強度を高められるような形態で、分散して形成される。
【0057】
また、上記の例においては、第1積層体110と第2積層体130の間に、第1PC部材、第2PC部材とは異なる中間PC部材12が用いられた。しかしながら、例えば第2PC部材と同一の構造をもつPC部材を中間PC部材として用いることもできる。この際、例えば第2PC部材における一部の鉄筋貫通孔を第1積層体との間の関係では緊張材貫通孔として用いることもできる。このような場合には、実質的に中間PC部材を用いずに同様の構造を実現することも可能である。
【0058】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0059】
1 構造物
11A~11F 第1PC部材(第1プレキャスト部材:PC部材)
12 中間PC部材(中間プレキャスト部材:PC部材)
13A~13I 第2PC部材(第2プレキャスト部材:PC部材)
20A~20L 緊張材貫通孔
21 鉄筋貫通孔
50、50A、50B PC鋼棒(緊張材)
51 ナット
52 アンカープレート
52A 凹部
53 カプラ
54 グラウト注入孔
60 鉄筋
70 底版コンクリート層
71 中詰土砂層
80 接合層
90、91 充填層
110 第1積層体
130 第2積層体
200 グラウンドアンカー
210 ベースフレーム
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10