(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188494
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】抗菌性化粧シート、及び化粧板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221214BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20221214BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20221214BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B41M3/06 Z
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096571
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中山 由美
(72)【発明者】
【氏名】田淵 恵里香
(72)【発明者】
【氏名】藪原 靖史
【テーマコード(参考)】
2H113
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA06
2H113BA03
2H113BA09
2H113BB07
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(57)【要約】
【課題】住宅等の建築物における壁材、天井材、床材、造作材等の内装材や建具、家具什器類、住設機器や家電製品の外装、自動車等の車両内装等に使用するための抗菌性化粧シート、化粧板を提供する。
【解決手段】基材シートの一方の面側に、インクジェットインキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層、前記光輝性絵柄印刷層上に表面保護層を少なくとも備えた抗菌性化粧シートにおいて、前記表面保護層が透明で、多孔質でヘイズが10%以下であり、かつ、前記インクジェットインキが、銀ナノ粒子を含むことを特徴とする
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面側に、インクジェットインキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層、前記光輝性絵柄印刷層上に表面保護層を少なくとも備えた抗菌性化粧シートにおいて、前記表面保護層が透明で多孔質であり、
前記表面保護層のヘイズが10%以下であり、
かつ、前記インクジェットインキが、銀ナノ粒子を含むことを特徴とする抗菌性化粧シート。
【請求項2】
前記基材シートの一方の面側に、着色インキを用いて形成されたカラー絵柄印刷層を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性化粧シート。
【請求項3】
前記光輝性絵柄印刷層と、着色インキを用いて形成されたカラー絵柄印刷層とは、平面視において、両者が重ならない非重複部分を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の抗菌性化粧シート。
【請求項4】
前記カラー絵柄印刷層の上に形成された前記光輝性絵柄印刷層を有することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の抗菌性化粧シート。
【請求項5】
前記基材シートの一方の面側にカラー絵柄印刷層が形成され、その基材シート及び上記カラー絵柄印刷層の上にプライマー層、光輝性絵柄印刷層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の抗菌性化粧シート。
【請求項6】
前記抗菌性化粧シートと、前記化粧シートの他方の面側に配置された基板と、を備えることを特徴とする化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性化粧シート、及び化粧板に関する。本発明は、住宅等の建築物における壁材、天井材、床材、造作材等の内装材や建具、家具什器類、住設機器や家電製品の外装、自動車等の車両内装等に使用するための抗菌性化粧シート、化粧板に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明光を反射して光輝性を呈する特殊な意匠効果を得る目的で、光輝性顔料を適当なバインダー樹脂中に練り込んでなる光輝性インキを使用して、光輝性を有する絵柄等を基材上に印刷してなる光輝性印刷物が、各種の用途に広く使用されている(例えば、特許文献1、2)。また、光輝性顔料は、一般に、鱗片状アルミニウム粉末(アルミフレーク)等の金属粉や、二酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料(パール顔料)等からなる。
【0003】
例えば、建材や家具、家電製品の筐体等の表面装飾において、天然木に特有の照り感や深み感、木肌感等を印刷技術によって再現する目的で、木目の絵柄に光輝性層を付加した化粧シートや化粧板が使用されている。また、木目柄以外にも、石目柄、抽象柄等に例えば絹目調やパール調、メタリック調等、光輝性のある意匠感を表現した、各種の光輝性化粧シート及び化粧板(以下、単に「化粧シート」と称する)が広い分野で使用されている。
【0004】
ところで、光輝性顔料としては、粒径が数μm程度から100μm以上に及ぶ各種のものが市販されている。印刷技法を使用する光輝性化粧シートには、この光輝性顔料を練り込んだシルバーインキなどのメタリックインキ(粉の形状によってミラーインキ、リゲルインキ、ホログラムインキ、ステラインキと呼ばれることもある)や、パールインキの印刷適性上の制約のために、通常平均粒径が概ね30μm以下の光輝性顔料が使用されている。
【0005】
前記化粧シートでは、グラビア印刷によって模様が印刷されている。グラビア印刷によれば、高速度で大量の印刷を行えるという利点がある。しかしながら、グラビア印刷は、少量の印刷しか行わない場合には経済的ではなく、また、模様が複雑である場合には印刷品質の点で適さない場合がある。これに対し、特許文献3に記載の技術では、化粧シートの印刷に、インクジェット印刷を用いることが提案されている。この際、例えば、化粧シートの意匠性を向上するために、インクジェットインキに光輝性顔料を混ぜて、インクジェット印刷層に光輝性を付与することが考えられる。
【0006】
現在インクジェット印刷はさまざまな分野で、さまざまな用途に実用化がなされており、身近な存在となっている。例えば、一般家庭においても、インクジェット印刷は、パソコンの出力装置にあるいは年賀状や写真のプリンターに使用されることが多く、また産業用においてもバーコードプリンター、あるいは看板、POP、広告媒体など商業印刷物への利用例も多い。
【0007】
インクジェット印刷の利点として、プリンターが比較的安価で且つ高画質が得られる点が第一にある。また、印刷といっても印刷用の版を必要とせず、パソコンや専用の機器からのデータによって目的の印刷物を得ることができる。これは単に印刷用の版の価格が節約できるということにとどまらず、印刷までに要する時間を短縮し、校正刷りといわれる試作、試し刷りを簡略なものにできるなどの利点が多い。
【0008】
しかしながら、特許文献4、5に記載されているように、インクジェット印刷の問題点として、微小な液滴の吐出にはノズル内径を10μmオーダーまで小さくする必要がある。一方で光輝性顔料は粒径が大きいものが多いため、光輝性顔料を分散したインキを用いた場合、ノズル内での目詰まりの問題が生じ、安定したインキの吐出が難しい場合がある。
【0009】
このため、光輝性顔料を混ぜたインクジェットインキで印刷を行うことは一般に難しく、特許文献1、2のように光輝性層は塗工法によりベタ膜で利用するか、グラビア印刷等の別手法で印刷するしかなく、意匠性が低く印刷工程も複雑なものが多い、という問題があった。つまり、従来の化粧シートには、高い輝度感と高い意匠性の両方を備えたものが少ないという問題があった。
【0010】
加えて化粧シートは高機能化が進んでおり、それに伴い多層になり製造工程も多くなっている。昨今の衛生意識の高まりから特に抗菌性は求められている機能の一つであり、銀ナノ粒子を用いた抗菌性商品は数多く展開され、銀ナノ粒子は微量でも効果が高いことがわかっている。銀ナノ粒子の抗菌作用は、酸素及びプロトンの存在により、粒子が酸化され、銀イオンが放出されるためである。銀イオンは、細菌の生命維持に不可欠な酵素およびタンパク質のチオール基と相互作用して細胞呼吸に影響を与え、細胞死させる。よって、銀ナノ粒子の抗菌性を発揮するには、酸素やプロトンが存在する環境下であることが重要である。しかしながら、銀ナノ粒子が酸化してしまうと、色が変色してしまうため、抗菌性と意匠性を両方備えた化粧シートを銀ナノ粒子のみで実現するには困難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4725226号公報
【特許文献2】特許第6107180号公報
【特許文献3】特開2001-71447号公報
【特許文献4】特開2004-299378号公報
【特許文献5】特許第4834981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような問題、状況を鑑みて発案されたものであり、その目的とするところは、高い輝度感と高い意匠性に加え、抗菌性を有する化粧シート、及び化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様に係る、基材シートの一方の面側に、インクジェットインキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層、前記光輝性絵柄印刷層上に表面保護層を少なくとも備えた抗菌性化粧シートにおいて、前記表面保護層が透明で多孔質であり、前記表面保護層のヘイズが10%以下であり、かつ、前記インクジェットインキが、銀ナノ粒子を含むことを特徴とする抗菌性化粧シート。
【0014】
前記基材シートの一方の面側に、着色インキを用いて形成されたカラー絵柄印刷層を更に備えることを特徴とする。
【0015】
前記光輝性絵柄印刷層と、着色インキを用いて形成されたカラー絵柄印刷層とは、平面視において、両者が重ならない非重複部分を有することを特徴とする。
【0016】
前記カラー絵柄印刷層の上に形成された前記光輝性絵柄印刷層を有することを特徴とする。
【0017】
前記基材シートの一方の面側にカラー絵柄印刷層が形成され、その基材シート及び上記カラー絵柄印刷層の上にプライマー層、光輝性絵柄印刷層がこの順に形成されていることを特徴とする。
【0018】
前記抗菌性化粧シートと、前記化粧シートの他方の面側に配置された基板と、を備えることを特徴とする化粧板。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、高い輝度感と高い意匠性に加え、抗菌性も備えた化粧シート、及び化粧板を得ることができる。具体的には、本発明の態様によれば、銀ナノ粒子を含んだインクジェットインキを用いて光輝性絵柄印刷層を印刷、その上にヘイズが10%以下の透明で空隙のサイズが10nm以上1μm以下の多孔質な表面保護層を備えることで高い輝度感を有する抗菌性化粧シート及び化粧板が得られる。すなわち、建材特有の細線やグラデーション、アルミを用いたインキでは表現の難しい淡い光沢を特徴とするパール調の意匠に加え、抗菌性も備えた印刷が再現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子1の分散液を基板に塗布し乾燥させた後、観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。
【
図2】本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子1の粒度分布及び累積度数(%)を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る化粧シートの構成を例示する模式断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る化粧シートの構成を例示する模式断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る化粧シートの構成を例示する模式断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る化粧シートの構成を例示する模式断面図である。
【
図7】本発明の第5実施形態に係る化粧シートの構成を例示する模式断面図である。
【
図8】本発明の第6実施形態に係る化粧シートの構成を例示する模式断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る化粧シートを備えた化粧板の構成を例示する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る化粧シート及び化粧板の各構成について、図面を用いて説明する。
【0022】
同一の構成要素については便宜上の理由がない限り同一の符号を付ける。各図面において、見易さのため構成要素の厚さや比率は誇張されていることがあり、構成要素の数も減らして図示していることがある。また、本発明は以下の実施形態そのままに限定されるものではなく、主旨を逸脱しない限りにおいて、適宜の組合せ、変形によって具体化できる。
【0023】
本発明の実施形態に係る化粧シートは、いずれも、基材シートの上に、インクジェットインキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層、その上に透明な多孔質な表面保護層を少なくとも備え、そのインクジェットインキは、銀ナノ粒子を含む、という共通した特徴を有している。なお、銀ナノ粒子を含めることで光輝性を付与した印刷層である光輝性絵柄印刷層がインクジェット印刷法により作製したものであるかどうかは、ルーペ等で例えばその印刷層に表現された木目柄等の絵柄を拡大観察したときに、茶色等で印刷されているか、赤青黄黒の多色で印刷されているかどうかにより容易に判別できる。
【0024】
(第1実施形態)
図3は、本発明の第1実施形態に係る化粧シート10の構成を例示する模式断面図である。第1実施形態に係る化粧シート10では、基材シート1上に、銀ナノ粒子インキを用いたインクジェット印刷法によって、光輝性絵柄印刷層2が形成され、透明な多孔質の表面保護層3が被覆している。銀ナノ粒子インキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層2は、化粧シート10に輝度感を付与し、意匠性を高める機能を有する。ここで、本実施形態に係る光輝性絵柄印刷層2の色はシルバー(銀色)に限定されるものではない。これは、上述のように、含まれる銀ナノ粒子の大きさや形状、表面修飾、インキの濃度、基材上の粒子密度等によって、その色が変わるためである。
【0025】
光輝性絵柄印刷層2は、光輝性絵柄印刷層2全体の質量に対して、銀ナノ粒子を90質量%以上含有していれば好ましく、95質量%以上含有していればより好ましく、98質量%以上含有していれば更に好ましい。銀ナノ粒子の含有率が90質量%以上であれば、シルバー絵柄印刷層2に効果的に輝度感を付与することができる。
【0026】
光輝性絵柄印刷層2の厚さは、10nm以上1000nm以下の範囲内であれば好ましく、100nm以上500nm以下の範囲内であればより好ましく、200nm以上400nm以下の範囲内であれば更に好ましい。光輝性絵柄印刷層2の厚さが前記数値範囲内であれば、インクジェット印刷法によって印刷されて光輝性絵柄印刷層に、効果的に光輝性を付与することができる。
【0027】
なお、光輝性絵柄印刷層2は、
図3に示すように、基材シート1の表面の少なくとも一部を覆うように形成されていてもよいし、基材シート1の表面全部を覆うように形成されていてもよい。
【0028】
さらに、化粧シート10は、最表面を多孔質な表面保護層3が被覆している。表面保護層は、多孔質サイズがナノサイズであるため、銀ナノ粒子の酸化を最小限にでき、抗菌性と意匠性を保つことができる。つまり、化粧シート10は、最表層に多孔質な表面保護層3を備えた化粧シートである。以下に述べる実施形態においても、最表面に多孔質な表面保護層3を備えている。
【0029】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る化粧シート20の構成を例示する模式断面図である。第2実施形態に係る化粧シート20では、着色インキで形成されたパターンをカラー絵柄印刷層3とし、その上に、インクジェット印刷法によって、銀ナノ粒子インキを用いた光輝性絵柄印刷層2が形成され、透明な多孔質の表面保護層4が被覆している。そのため、第2実施形態に係る化粧シート20は、光輝性絵柄印刷層2が任意の色で着色された輝度感を示すような意匠性の高い化粧シート20となる。なお、カラー絵柄印刷層3は、例えば、グラビア印刷やインクジェット印刷等の印刷法により形成することができる。
【0030】
カラー絵柄印刷層3の厚さは、1μm以上100μm以下の範囲内であれば好ましく、10μm以上80μm以下の範囲内であればより好ましく、30μm以上50μm以下の範囲内であれば更に好ましい。カラー絵柄印刷層3の厚さが上記数値範囲内であれば、任意の色で着色された輝度感を光輝性絵柄印刷層2に効果的に付与することができる。
【0031】
カラー絵柄印刷層3の厚さは、光輝性絵柄印刷層2の厚さの1倍以上10倍以下の範囲内が好ましく、2倍以上8倍以下の範囲内がより好ましく、3倍以上5倍以下の範囲内が更に好ましい。カラー絵柄印刷層3の厚さが、上記数値範囲内であれば、任意の色で着色された輝度感を光輝性絵柄印刷層2に効果的に付与することができる。
【0032】
カラー絵柄印刷層3は、銀ナノ粒子を含んだ層であってもよいが、銀ナノ粒子を含まない層であることが好ましい。カラー絵柄印刷層3が銀ナノ粒子を含まない層の場合、光輝性絵柄印刷層2の輝度感がより際立つ傾向がある。なお、カラー絵柄印刷層3が銀ナノ粒子を含む層であれば、化粧シート20全体に輝度感を付与することができる。
【0033】
なお、光輝性絵柄印刷層2は、
図4に示すように、カラー絵柄印刷層3の表面全部を覆うように形成されていてもよいし、カラー絵柄印刷層3の表面の一部を覆うように形成されていてもよい。
【0034】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る化粧シート30の構成を例示する模式断面図である。第3実施形態に係る化粧シート30では、
図3に示した第1実施形態に係る化粧シート10が備える銀ナノ粒子インキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層2と、
図4に示した第2実施形態に係る化粧シート20が備える着色インキを用いて形成されたカラー絵柄印刷層3とが、基材シート1の同一平面上に両者が重ならないようにして形成され、透明な多孔質の表面保護層4が被覆している。そのため、光輝性絵柄印刷層2の一部分のみが輝度感を示すような意匠性の高い化粧シート30が得られる。なお、銀ナノ粒子インキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層2と、着色インキを用いて形成されたカラー絵柄印刷層3との形成順序はどちらが先であってもよい。つまり、基材シート1の上に、銀ナノ粒子インキを用いたインクジェット印刷法によって光輝性絵柄印刷層2を形成した後に、着色インキを用いてカラー絵柄印刷層3を形成してもよいし、着色インキを用いてカラー絵柄印刷層3を形成した後に、銀ナノ粒子インキを用いたインクジェット印刷法によって光輝性絵柄印刷層2を形成してもよい。
【0035】
なお、光輝性絵柄印刷層2とカラー絵柄印刷層3とは、
図5に示すように、光輝性絵柄印刷層2がカラー絵柄印刷層3上ではなく基材上に直接形成されてもよいし、光輝性絵柄印刷層2とカラー絵柄印刷層3とで基材シート1の表面全部を覆うように形成されていてもよい。
【0036】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態に係る化粧シート40の構成を例示する模式断面図である。第4実施形態に係る化粧シート40では、基材シート1の上に、着色インキを用いて形成されたカラー絵柄印刷層3と、前記カラー絵柄印刷層3の上に、銀ナノ粒子インキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層と、基材シート1の上に、銀ナノ粒子インキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層2とが形成され、透明な多孔質の表面保護層4が被覆している。言い換えれば、第4実施形態に係る化粧シート40では、
図4に示した第2実施形態に係る化粧シート20の形態に加えて、光輝性絵柄印刷層2が形成されている。これにより、第4実施形態に係る化粧シート40は部分的に着色され、且つ全体的に輝度感を示すような意匠性が高い化粧シート40となる。なお、図示しないが、カラー絵柄印刷層3の側面も光輝性絵柄印刷層2で覆われていてもよい。
【0037】
なお、光輝性絵柄印刷層2は、
図4に示すように、基材シート1の上、及びカラー絵柄印刷層3の上を全て覆うように形成されていてもよいし、基材シート1の上、及びカラー絵柄印刷層3の上の少なくとも一部を覆うように形成されていてもよい。
【0038】
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態に係る化粧シート50の構成を例示する模式断面図である。第5実施形態に係る化粧シート50では、基材シート1上に、プライマー層5が設けられ、その上に、銀ナノ粒子インキを用いたインクジェット印刷法によって、光輝性絵柄
印刷層2が形成され、透明な多孔質の表面保護層4が被覆している。銀ナノ粒子インキを用いて形成された光輝性絵柄印刷層2は、化粧シート50に輝度感を付与し、意匠性を高める機能を有する。また図示しないが、プライマー層5上に前記実施形態2~4のようにカラー絵柄印刷層3を設けてもよい。
【0039】
プライマー層5の厚みは特に制限はなく、用いる材料や用途によって適宜変更してよい。ただし、プライマー層5の下層の表面が粗い場合は、プライマー層5の表面が平滑になるよう十分な厚みを設けるのが好ましい。また、プライマー層5の塗工方式は問わず、例えば、グラビア方式やインクジェット方式、スクリーン方式等の他、バーコート等でも塗工が可能である。
【0040】
(第6実施形態)
図8は、本発明の第6実施形態に係る化粧シート60の構成を例示する模式断面図である。第6実施形態に係る化粧シート60では、着色インキで形成されたパターンをカラー絵柄印刷層3とし、その上にプライマー層5を塗工し、更にインクジェット印刷法によって、銀ナノ粒子インキを用いた光輝性絵柄印刷層2が形成され、透明な多孔質の表面保護層4が被覆している。そのため、第6実施形態に係る化粧シート60は、光輝性絵柄印刷層2が任意の色で着色された輝部分を有するような意匠性の高い化粧シート60となる。なお、カラー絵柄印刷層3は、
図8に示すように、基材シート1の表面の一部のみを覆うように形成されていてもよいし、基材シート1の表面全部を覆うように形成されていてもよい。
【0041】
なお、光輝性絵柄印刷層2も、プライマー層5の表面の一部のみを覆うように形成されていてもよいし、プライマー層5の表面全部を覆うように形成されていてもよい。
【0042】
図9は、本発明の第1実施形態に係る化粧シート10を備えた化粧板100の構成を例示する模式断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係る化粧板100は、基板6の一面上に、
図3に示した化粧シート10を積層した積層構造になっている。そして、基板6と化粧シート10との間には接着層5が設けられており、接着層5により基板6と化粧シート10とが接着されている。
【0043】
図9に示した化粧板100は、基板6の一面上に、
図3に示した化粧シート10を積層した積層構造となっているが、同様に、
図4から
図8にそれぞれ示した第2実施形態の化粧シート20から第6実施形態の化粧シート60の積層構造でもよい。
【0044】
以下、本実施形態で用いた銀ナノ粒子インキ、化粧シートの材料、構成について詳しく説明する。
【0045】
本実施形態で用いる銀ナノ粒子の表面は、アミン化合物を主成分として含む保護分子により覆われている。ここでいう「主成分」とは、銀ナノ粒子の表面を覆っている複数の保護分子のうち最も多い成分(分子)をいう。
【0046】
本実施形態に係る銀ナノ粒子は、例えば、メジアン径(D50)が1nm以上250nm以下の範囲内であり、有機溶媒や水といった分散媒に分散可能である。なお、銀ナノ粒子のメジアン径(D50)が1nmより小さいと視認性(光輝性)が低下し、銀ナノ粒子のメジアン径(D50)が250nmより大きいと分散性が低下することがある。また、平均一次粒子径は、Nanotrac UPA-EX150粒度分布計(動的光散乱法、日機装社)を用い、0.1質量%分散液にて測定した粒度分布から求めた。
【0047】
銀ナノ粒子の形状としての制限はないが、特には球状、平板状、多角形状等のいずれか
、又は複数の形状のものを含むことが好ましい。平板状の銀ナノ粒子は表面積が大きく、粒子が少量であっても視認性(光輝性)がよいことが期待される。また、銀ナノ粒子の形状が球状であると、大きさが均一になりやすく、銀ナノ粒子が隙間なく並ぶことが期待できる。このため、球状の銀ナノ粒子も視認性(光輝性)がよいことが期待される。
【0048】
銀ナノ粒子を構成する銀の原料としては、含銀化合物のうちで、加熱により容易に分解して金属銀を生成する銀化合物が好ましく使用される。このような銀化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸と銀が化合したカルボン酸銀の他、塩化銀、硝酸銀、炭酸銀等がある。前記銀化合物の中でも、分解により容易に金属を生成し、かつ、銀以外の不純物を生じにくい観点からシュウ酸銀が好ましく用いられる。
【0049】
シュウ酸銀は、銀含有率が高いとともに、加熱によりシュウ酸イオンが二酸化炭素として分解除去される。このために、還元剤を必要とせず熱分解により金属銀がそのまま得られ、不純物が残留しにくい点で有利といえる。
【0050】
銀化合物を加熱分解する際は、アルコールや脂肪酸、高分子等を添加してもよい。これらの添加により、粒径の調整や、良分散媒の変化や、分散安定性の向上が期待される。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール等、脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸等、高分子としては、ポリビニルピロリドン、ゼラチン等が挙げられる。
【0051】
銀ナノ粒子の表面を保護するアミン化合物は、特に、その構造に制限はないが、銀原子への配位の容易さから、1級のアミノ基であるRNH2(Rは炭化水素基)を有することが好ましい。2級アミノ基も配位可能であるが、反応性は1級よりも低下する。また、アミノ基を複数有するジアミン化合物でもよい。ジアミン化合物の場合は、1級アミノ基と3級アミノ基とを備えると、1級アミノ基が選択的に銀原子に配位し、嵩高い3級アミノ基は外側を向くことになるため、銀ナノ粒子の表面が保護されやすい。
【0052】
アミンとしては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、1,2-ジメチルプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、n-ノニルアミン、n-アミノデカン、n-アミノウンデカン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、n-オレイルアミン、等を挙げることができる。
【0053】
さらにジアミンとしては、例えば、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジブチルアミノプロパン、N,N-ジイソブチル1,3-ジアミノプロパン、等が挙げられるが、この限りではない。また、複数の異なるアミンを同時に用いてもよい。
【0054】
このように、本実施形態で用いる銀ナノ粒子は、例えば、シュウ酸銀とアミンを混合して熱分解することにより、シュウ酸銀アミン錯体を経て製造された銀ナノ粒子であってもよい。シュウ酸銀とアミンとを熱分解して銀ナノ粒子を製造する技術としては、例えば、特開2012-162767号公報や特許第5574761号公報に記載されたものがある。上述の手法であれば、銀イオンを還元するための還元剤を混合する必要がなく、単純な手法で銀ナノ粒子を製造することが可能である。また、前記手法で得られた銀ナノ粒子は、主にアミン分子のアミノ基が銀粒子表面に配位しており、分散媒中での分散性が高い。また、製造する際の条件によって粒子の大きさや分散性を変更可能なことから、これらを用いた銀ナノ粒子インキは、用いる銀ナノ粒子やその濃度によって光輝性を調節した意匠を表現可能である。
【0055】
また、シュウ酸銀を熱分解させる際に、粒子の表面に配位する分子としてポリビニルピロリドンを用いて銀ナノ粒子を製造する方法もある(T.Togashi,S.Ojima,I.Sato,K.Kanaizuka,M.Kurihara,Chem.Lett.,2016,45,646-648)。この手法で合成した銀ナノ粒子にはプレート状のものも含まれ、印刷時に高い輝度感が期待される。
【0056】
塗液における銀ナノ粒子の添加量は、例えば、分散媒に対して1質量%以上50質量%以下の範囲内であることが好ましい。なお、金属光沢が強くなることから、銀ナノ粒子の添加量は、15質量%以上であることが特に好ましい。銀ナノ粒子の添加量が1質量%を下回ると印刷物としての視認性(光輝性)が低下し、50質量%を上回ると分散性が低下することがある。
【0057】
本実施形態に係る銀ナノ粒子を分散溶媒として用いられる溶剤等に分散させる際、分散剤を用いてもよい。分散剤は、大きく分けてアニオン系、カチオン系、ノニオン系に分類でき、粒子表面の電位や分散媒に応じて適宜選択する。アニオン系は、硫酸エステル型、リン酸エステル型、カルボン酸型、スルホン酸型が代表的なもので主にエチレンオキサイド(EO)付加型の分子構造をとるものが多い。カチオン系は、第4級アンモニウム塩型でCl塩型、非Cl塩型、EO付加型に分類できる。ノニオン系は、アルキレンオキサイド付加型、カルカノールアミド型に大別できる。本実施形態に係る銀ナノ粒子の表面修飾はアミン錯体となっていることから、特に、アニオン系が好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル琥珀酸塩、等が好ましく、特にポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)が好ましい。
【0058】
具体的には、フォスファノールRB-40、RD-510Y、RD720N、RL-210、RS-410(東邦化学工業)、NIKKOL DDP-8NV、DDP-2、DDP-4、DDP-6、DDP-8、DDP-10(日光ケミカルズ)、プライサーフ A212C、A215C、A208F、M208F、A208A、A208B、A210B、A219B、DB-01、AL、DBS(第一工業製薬)、等を挙げることができるがこの限りではない。
【0059】
本実施形態に係る銀ナノ粒子インキは、上述した分散剤の他にも色素や消泡剤、レベリング剤、硬化剤、等の添加剤を有してもよい。
【0060】
本実施形態に係る銀ナノ粒子インキが有する分散媒としては、例えば、水、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、シクロヘキサノン、テルピネオール等のテルペン類等の各成分を挙げることができる。分散媒は、狙いとする塗液の物性に合わせて上記成分を適宜混合して用いてよい。
【0061】
塗液における上記成分の配合割合は特に限定するものではないが、インクジェット印刷法のようにノズル内での塗液の乾燥を防止する必要がある場合は、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1-ブタノール、シクロヘキサノン、テルピネオールのような沸点110℃以上の有機溶剤1種以上を、合計でインクジェット塗布用塗液(銀ナノ粒子インキ)中に1質量%以上含有していることがより好ましい。塗液中における上記成分の含有量が1質量%より少ないと、塗液の乾燥が起こりやすくなり、ノズルの目詰まりの原因となることがある。上記成分の含有量に上限はないが、多すぎると塗液の乾燥に必要な時
間が延びることがある。
【0062】
本実施形態に係る銀ナノ粒子インキを印刷した層(光輝性絵柄印刷層)の色としては、銀由来のシルバー以外にも、銀ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴由来の青色、緑色、黄色、赤色、等の色が表現可能だが、これに限らない。銀ナノ粒子の大きさや形状、表面修飾、インキの濃度、基材上の粒子密度等が色に影響する。
【0063】
本実施形態に係る基材シート1の材料としては、柔軟性があり、熱可塑性で成形性がよく、印刷適性のある、いずれもシート状のポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、又はアクリル樹脂、ポリオレフィン系のポリプロピレン樹脂、あるいはポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂の他に、いずれもシート状の紙、鋼板、木材等が挙げられる。これらは、基材シート1の用途、仕様に応じ、適宜選択することができる。
【0064】
本実施形態に係る透明な多孔質の表面保護層4の材料としては、例えば、特許第6379582号公報にあるフェニル基をもつシリカナノ粒子とポリシランを用いた塗料を用いることができる。これは、塗布することで、透明多孔質膜を作製することができるがこれに限らない。
【0065】
塗料中に含まれる熱硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂を用いることができる。また、電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線硬化型樹脂を用いることができる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。これらの材料を用いることで、表面保護層4の硬度を向上でき、耐摩耗性や、耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性を向上することができる。また表面防汚性を出す表面調整剤等も含んでいてもよい。
【0066】
前記透明で多孔質な表面保護層4のヘイズは、10%以下で、空隙のサイズは、10nm以上1μm以下であれば、特に材質は限定していない。銀ナノ粒子を含む印刷層の外観を損ねなければよく、ヘイズ値が10%以上になると白くなり視認性が悪くなってしまう。また空隙のサイズが10nm以下であると、抗菌性が低下してしまう可能性があり、1μm以上であると銀ナノ粒子の酸化が速まり変色してしまう可能性がある。
【0067】
また、表面保護層4には、紫外線吸収剤等を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系を用いることができる。また、光安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系を用いることができる。更に、汚染防止性能やセロテープ(登録商標)離型性が求められる場合には、シリコーン骨格を持つ離型剤を添加することができる。この場合、離型剤の種類は特に限定されないが、樹脂組成物に対して反応性を有する末端官能基を持つシリコーン離型剤を用いることで、汚染防止性能やセロテープ(登録商標)離型性の耐久性を向上することができる。
【0068】
本実施形態に係るプライマー層5の材料としては、平滑な表面が作製可能であれば問わない。プライマー層3の材料としては、例えば、エステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン系アクリル樹脂(ウレタンアクリレート)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等を挙げることができるが、その他の層との密着・接着性が良いものが好ましい。
【0069】
前記プライマー層5には、目的とする用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。また、シリカ微粒子を混合する
ことによる吸インク層や、色素の混合によるカラー層を兼ねても良い。
【0070】
本実施形態に係る基板7としては、例えば、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、ハードボードなどの木質板や金属板を用いることができる。また、接着層6としては、例えば熱可塑性樹脂や、熱硬化型樹脂などを用いることができる。
【実施例0071】
次に、本実施形態に係る化粧シートについての実施例を説明する。
【0072】
以下に示す材料構成及び工程によって、第5実施形態に係る化粧シート50を例にして説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
〔シュウ酸銀の合成〕
シュウ酸二水和物(関東化学社)9.92gに蒸留水60mLを加え加温しながら溶解させ、110℃のオイルバス中で撹拌しながら、硝酸銀(関東化学社)26.7gに20mLの蒸留水を加え加温しながら溶解させたものを加え、1時間加熱撹拌を続けた。析出したシュウ酸銀を自然ろ過で回収し、更に熱水200mL、メタノール(関東化学社)50mLでろ過洗浄した後、遮光デシケーター内で減圧しながら室温乾燥した。こうして得たシュウ酸銀の収量は、21.6g(収率90.4%)であった。
【0074】
〔銀ナノ粒子の合成〕
N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成工業社)3.26gにオレイン酸(関東化学社)0.13gを加えたところに、上述の工程で得たシュウ酸銀1.90gを加え、110℃のオイルバスで加熱撹拌した。1分以内で二酸化炭素の発泡が起こり、数分後に褐色の懸濁液に変化した。5分間加熱後、冷却したところにメタノール30mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥すると青色固形物である銀ナノ粒子1.48g(銀基準収率97.0%)を得た。
【0075】
得られた銀ナノ粒子を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社、SEM S-4800)を用いてS-TEMモード(加速電圧30kV)で観察したところ、粒子径が5~20nm程度の球状粒子が観察された。その結果を
図1に示す。より詳しくは、
図1は、実施例1で得た銀ナノ粒子のトルエン分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし乾燥させた後に観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
【0076】
次に、得られた銀ナノ粒子がトルエンに分散したことから、トルエン分散液の動的光散乱粒度測定(日機装社、Nanotrac UPA-EX150)を行った。その結果、銀ナノ粒子はD50が15nmで良好に分散していることが分かった。その結果を
図2に示す。また、
図2に示した実線は、累積度数(%)を示している。
【0077】
〔インキの調製〕
上述の工程で得た銀ナノ粒子0.20gをトルエン(関東化学社)1.8gとテルピネオール(異性体混合物、富士フイルム和光純薬社)0.2gに添加し、撹拌して分散液とした。この場合、分散溶媒2.0gに対して銀ナノ粒子0.2gのため、銀ナノ粒子の質量%は10%となる。分散液をシリンジフィルター(Whatman社、25mmGD/Xシリンジフィルター(GF/B 1.0μm))に通し、インクジェット印刷用の銀ナノ粒子インキとした。
【0078】
〔表面保護層用塗料1の調製〕
フェニル基表面修飾シリカ微粒子(商品名:PL-2-TOL、粒子径25nm前後、扶
桑化学製)の固形分中比率を50質量%、ポリメチルフェニルシラン(PMPS;商品名:SI-10-10、大阪ガスケミカル製)の固形分中比率を1%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;固形分の濃度100%)の固形分中比率を49%とし、塗液の重量に対する全固形分の比率が20質量%になるように、トルエンで希釈し、表面保護層用塗料1を調製した。
【0079】
[表面保護層4の評価]
作製した表面保護層のヘイズは、PET基材(東レ株式会社製、ルミラーT60、75μm厚)に表面保護層用塗料のみをワイヤーバー#7にて塗布し、40℃に加熱したオーブンで1分間加熱、溶剤を除去、窒素パージ下でUV照射したものをヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、「NDH2000」)を用い測定した。
【0080】
〔化粧シート50の作製〕
基材シート1としては、PVCフィルム(リケンテクノス社製FZ)を用いた。次に、続いて、カラー絵柄印刷層3として、光輝性顔料を含まないインクジェットインキ(イエロー、マゼンダ、シアン)を用い、インクジェット印刷機で解像度610dpiの木目画像をそれぞれ印刷した。プライマー層5としてプライマー塗液をワイヤーバー#7にて塗工し、40℃に加熱したオーブンで1分間加熱、溶剤を除去した。更に、光輝性絵柄印刷層2として、上記の銀ナノ粒子インキを用いてインクジェット印刷機で解像度610dpi木目柄を印刷した。更に、表面保護層4として、表面保護層用塗料1をワイヤーバー#7にて塗布し、40℃に加熱したオーブンで1分間加熱、溶剤を除去、窒素パージ下でUV照射し、化粧シート50を作製した。模式断面を
図7に掲示した。
【0081】
[実施例2]
〔表面保護層用塗料2の調製〕
フェニル基表面修飾シリカ微粒子(商品名:PL-3-TOL、粒子径35nm前後、扶桑化学製)の固形分中比率を50質量%、ポリメチルフェニルシラン(PMPS;商品名:SI-10-10、大阪ガスケミカル製)の固形分中比率を1%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;固形分の濃度100%)の固形分中比率を49%とし、塗液の重量に対する全固形分の比率が20質量%になるように、トルエンで希釈し、表面保護層用塗料1を調製した。
〔化粧シート50の作製〕
表面保護層用塗料1の代わりに表面保護層塗料2を塗布する以外は、実施例1と同様に化粧シート50を作製した。模式断面図を
図7に掲示した。
【0082】
[比較例1]
〔表面保護層用塗料3の調製〕
フェニル基表面修飾シリカ微粒子(商品名:PL-7-TOL、粒子径75nm前後、扶桑化学製)の固形分中比率を50質量%、ポリメチルフェニルシラン(PMPS;商品名:SI-10-10、大阪ガスケミカル製)の固形分中比率を1%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;固形分の濃度100%)の固形分中比率を49%とし、塗液の重量に対する全固形分の比率が20質量%になるように、トルエンで希釈し、表面保護層用塗料3を調製した。
【0083】
表面保護層用塗料1の代わりに表面保護層塗料3を塗布する以外は、実施例1と同様に化粧シート50を作製した。模式断面図を
図7に掲示した。
【0084】
[比較例2]
実施例1の表面保護層4として、PVCフィルムを熱ラミネートで貼り合わせた以外は、実施例1と同様に化粧シート50を作製した。模式断面図を
図7に掲示した。
【0085】
[化粧シート評価方法]
以上作製した各実施例及び各比較例の化粧シートについて、輝度感及び意匠性について評価した。
【0086】
・輝度感
輝度感は、化粧シートの表面に対する、人の目による官能試験によって実行した。評価の判定基準は、次の通りである。輝度感は、被験者100人のうちの50人以上が同一の判定結果に基づき評価した。すなわち、50人以上が、木目の輝きとして自然であり、天然木の自然な光沢が再現できていると評価したものを「○」と判定した。また、50人以上が、木目として不自然なほど輝きが強すぎるために、天然木の自然な光沢が再現できていないと評価したものや、木目として輝きが弱すぎるために、天然木の自然な光沢が再現できていないと評価したものを「×」と判定した。なお、インキによって色味は異なるため、色は考慮せず、輝きのみを評価した。
【0087】
・意匠性
意匠性は、化粧シートの表面に対する、人の目による官能試験によって実行した。評価の判定基準は、次の通りである。意匠性は、被験者100人のうちの50人以上が同一の判定結果に基づき評価した。すなわち、50人以上が、木目柄の細線(数μm幅)の輪郭がぼやけずにきちんと再現できていると感じたものを「○」と判定した。また、50人以上が、木目柄の細線(数μm幅)の輪郭がぼやけて再現できていないと感じたもの、または保護膜により色が見えなくなったものを「×」と判定し、部分的に印刷ムラがあるものを「△」と判定した。なお、木目柄の細線の輪郭の確認には、拡大率100倍の顕微鏡を用いた。
【0088】
・抗菌性
JIS Z 2801:2010(フィルム密着法)に基づいて、抗菌性試験を実施した。具体的には、実施例1、比較例1、2の化粧シートそれぞれに、汚染物質として大腸菌、黄色ブドウ球菌を滴下し、25℃環境下、24時間暗所にて保管した。その後、生菌数をカウントし、抗菌活性値を算出した。抗菌活性値は、2.0以上で抗菌性ありとした。
【0089】
実施例1~2、及び比較例1~2の評価結果を表1に示す。
【0090】
【0091】
以上のように、実施例1、2で得られた化粧シートは、意匠性と抗菌性を両立した化粧シートであることがわかった。また比較例1は表面保護層が白く透明性がなくなってしまい、輝度感と意匠性が×になった。比較例2では抗菌性が発現しなかった。