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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188502
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】合成壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/86 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
E04B2/86 611R
E04B2/86 601A
E04B2/86 601T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096589
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】花井 厚周
(72)【発明者】
【氏名】中根 一臣
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(57)【要約】
【課題】型枠の撤去作業を不要にしつつ、合成壁の意匠性を向上することを目的とする。
【解決手段】合成壁40は、互いに対向した状態で架構10内に配置されるとともに、各々の内壁面42Aに組立壁筋44が取り付けられた一対の木質壁板42と、一対の木質壁板42の間に打設されたコンクリート48と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向した状態で架構内に配置されるとともに、各々の内壁面に組立壁筋が取り付けられた一対の木質壁板と、
一対の前記木質壁板の間に打設されたコンクリートと、
を備える合成壁。
【請求項2】
前記組立壁筋は、
予め定められた一方向に並ぶ複数のトラス筋と、
隣り合う前記トラス筋の頂部に架け渡された複数の頂部交差筋と、
を有し、
一対の前記木質壁板は、各々の前記頂部交差筋を壁厚方向に離した状態で配置されている、
請求項1に記載の合成壁。
【請求項3】
前記組立壁筋は、
予め定められた一方向に並ぶ複数のトラス筋と、
隣り合う前記トラス筋の中間部に架け渡された複数の中間部交差筋と、
を有し、
一対の前記木質壁板は、各々の前記トラス筋を前記一方向に交互に並べた状態で配置されている、
請求項1に記載の合成壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成壁に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート壁の型枠として、トラス筋が取り付けられた鋼板やプレキャストコンクリート版等の埋込み型枠(捨て型枠)が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-54428号公報
【特許文献2】特開2017-071987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に開示された技術では、型枠の撤去作業が不要になるものの、壁(合成壁)の意匠性の観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、型枠の撤去作業を不要にしつつ、合成壁の意匠性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の合成壁は、互いに対向した状態で架構内に配置されるとともに、各々の内壁面に組立壁筋が取り付けられた一対の木質壁板と、一対の前記木質壁板の間に打設されたコンクリートと、を備える。
【0007】
請求項1に係る合成壁によれば、一対の木質壁板は、互いに対向した状態で架構内に配置されている。また、一対の木質壁板の各々の内壁面には、組立壁筋が取り付けられている。この一対の木質壁板の間には、コンクリートが打設されている。
【0008】
ここで、一対の木質壁板は、合成壁の外面を形成するとともに、合成壁の型枠としても機能する。したがって、型枠の撤去作業が不要になる。
【0009】
また、木質壁板は、鋼板等と比較して意匠性に優れている。したがって、木質壁板によって合成壁の外面を形成することにより、合成壁の意匠性が向上する。
【0010】
このように本発明では、型枠の撤去作業を不要にしつつ、合成壁の意匠性を向上することができる。
【0011】
また、一対の木質壁板の内壁面には、組立壁筋がそれぞれ取り付けられている。これにより、現場での壁筋の配筋作業の手間が低減される。したがって、合成壁の施工性が向上する。
【0012】
さらに、木質壁板の内壁面に組立壁筋を取り付けることにより、木質壁板の面外剛性が高められる。これにより、一対の木質壁板の間にコンクリートを打設した際に、一対の木質壁板が外側へ湾曲等することが抑制される。したがって、一対の木質壁板の間にコンクリートを打設する際に、一対の木質壁板の間隔を制限するセパレータの本数を低減し、又はセパレータを省略することができる。
【0013】
請求項2に記載の合成壁は、請求項1に記載の合成壁において、前記組立壁筋は、予め定められた一方向に並ぶ複数のトラス筋と、隣り合う前記トラス筋の頂部に架け渡された複数の頂部交差筋と、を有し、一対の前記木質壁板は、各々の前記頂部交差筋を壁厚方向に離した状態で配置されている。
【0014】
請求項2に係る合成壁によれば、組立壁筋は、予め定められた一方向に並ぶ複数のトラス筋と、隣り合うトラス筋の頂部に架け渡された複数の頂部交差筋とを有し、一対の木質壁板の内壁面にそれぞれ取り付けられている。この一対の木質壁板は、各々の頂部交差筋を壁厚方向に離した状態で配置されている。
【0015】
このように一対の木質壁板の頂部交差筋を壁厚方向に離すことにより、壁厚方向の所定位置に頂部交差筋を配筋することができる。
【0016】
また、一対の木質壁板の間隔を増減することにより、合成壁の壁厚を調整することができる。したがって、一対の木質壁板の汎用性が向上する。
【0017】
請求項3に記載の合成壁は、請求項1に記載の合成壁において、前記組立壁筋は、予め定められた一方向に並ぶ複数のトラス筋と、隣り合う前記トラス筋の中間部に架け渡された複数の中間部交差筋と、を有し、一対の前記木質壁板は、各々の前記トラス筋を前記一方向に交互に並べた状態で配置されている。
【0018】
請求項3に係る合成壁によれば、組立壁筋は、予め定められた一方向に並ぶ複数のトラス筋と、隣り合うトラス筋の中間部に架け渡される複数の中間部交差筋とを有し、一対の木質壁板の内壁面にそれぞれ取り付けられている。この一対の木質壁板は、各々のトラス筋を一方向に交互に並べた状態で配置されている。
【0019】
このように一対の木質壁板のトラス筋を一方向に交互に並べることにより、一対の木質壁板の面外剛性が高められる。したがって、一対の木質壁板の間にコンクリートを打設する際に、一対の木質壁板の間隔を制限するセパレータの本数をさらに低減することができる。
【0020】
また、例えば、一方の木質壁板のトラス筋の頂部を、他方の木質壁板の中間部交差筋に接触させることにより、一対の木質壁板が壁厚方向に位置決められる。したがって、一対の木質壁板の施工性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、型枠の撤去作業を不要にしつつ、合成壁の意匠性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る合成壁が設けられた架構を示す立面図である。
図2図1の2-2線断面図である。
図3図1の3-3線断面図である。
図4図1の4-4線断面図である。
図5図1の5-5線断面図である。
図6図1に示される合成壁及び架構の施工過程を示す立面図である。
図7】一実施形態に係る合成壁の変形例を示す縦断面図である。
図8図7に示される合成壁の一対の木質壁板を分解した分解縦断面図である。
図9】一実施形態に係る合成壁の変形例を示す縦断面図である。
図10図9に示される一方の木質壁板を内側から見て立面図である。
図11図10の11-11線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る合成壁について説明する。
【0024】
(架構)
図1には、本実施形態に係る合成壁40が設けられた架構10が示されている。架構(ラーメン架構)10は、互いに間隔を空けて配置された一対の柱20と、一対の柱20に架設された上側梁30U及び下側梁30Lとを備えている。
【0025】
なお、各図に示される矢印Xは、合成壁40の横幅方向(上側梁30U及び下側梁30Lの材軸方向)を示している。また、矢印Yは、合成壁40の壁厚方向(面外方向)を示している。さらに、矢印Zは、合成壁40の高さ方向(上下方向)を示している。
【0026】
図2に示されるように、柱20は、鉄筋コンクリート造とされている。この柱20には、複数の柱主筋22、及び複数のせん断補強筋24が埋設されている。複数の柱主筋22は、柱20の材軸方向に沿って配筋されている。複数のせん断補強筋24は、柱20の材軸方向に間隔を空けて配筋されており、複数の柱主筋22を取り囲んでいる。
【0027】
図3に示されるように、上側梁30Uは、鉄筋コンクリート造とされている。この上側梁30Uには、複数の梁主筋32及び複数のせん断補強筋34が埋設されている。複数の梁主筋32は、上側梁30Uの材軸方向に沿って配筋されている。複数のせん断補強筋34は、上側梁30Uの材軸方向に間隔を空けて配筋されており、複数の梁主筋32を取り囲んでいる。この上側梁30Uの下側には、下側梁30Lが配置されている。
【0028】
図4に示されるように、下側梁30Lは、鉄筋コンクリート造とされている。この下側梁30Lには、複数の梁主筋32及び複数のせん断補強筋34が埋設されている。複数の梁主筋32は、下側梁30Lの材軸方向に沿って配筋されている。複数のせん断補強筋34は、下側梁30Lの材軸方向に間隔を空けて配筋されており、複数の梁主筋32を取り囲んでいる。
【0029】
(合成壁)
図1に示されるように、上側梁30Uと下側梁30Lとの間には、複数(本実施形態では、3つ)の合成壁40が、横に並んだ状態で配置されている。これらの合成壁40は、例えば、耐震壁や耐力壁として機能する。図2図3、及び図4に示されるように、各合成壁40は、一対の木質壁板42と、一対の木質壁板42の間に打設されたコンクリート48とを有している。
【0030】
一対の木質壁板42は、合成壁40の壁厚方向(矢印Y方向)に互いに対向している。また、一対の木質壁板42は、壁厚方向から見て矩形状に形成されている。各木質壁板42は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber)、LVL(Laminated Veneer Lumber)、DLT(Dowel Laminated Timber)、NLT(Nail Laminated Timber)、集成材、又は合板等の木質板によって形成されている。
【0031】
図2及び図3に示されるように、一対の木質壁板42の内壁面42Aには、組立壁筋44が予め取り付けられている。つまり、本実施形態の木質壁板42及び組立壁筋44は、工場等において、予め一体化されたユニットとされている。
【0032】
なお、木質壁板42及び組立壁筋44は、予め一体化されたユニットに限らず、例えば、別体とされた木質壁板42及び組立壁筋44を現場で一体化させても良い。
【0033】
組立壁筋44は、複数のトラス筋50と、複数の頂部交差筋70とを有している。複数のトラス筋50は、合成壁40の横幅方向に延びるとともに、合成壁40の高さ方向に間隔を空けて並べられている。なお、合成壁40の高さ方向は、予め定められた一方向の一例である。
【0034】
図3及び図4に示されるように、トラス筋50は、一対の下弦筋52と、上弦筋54と、一対のラチス筋56と有している。一対の下弦筋52は、合成壁40の横幅方向に延びるとともに、合成壁40の高さ方向に間隔を空けて配置されている。一対の下弦筋52よりも合成壁40の内側(中心側)には、上弦筋54が配置されている。
【0035】
上弦筋54は、合成壁40の横壁筋として機能する。この上弦筋54は、合成壁40の横幅方向に延びるとともに、合成壁40の壁厚方向から見て、一対の下弦筋52の間に配置されている。この上弦筋54と一対の下弦筋52とは、上弦筋54の両側に配置された一対のラチス筋56によって連結されている。
【0036】
図2に示されるように、一対のラチス筋56は、合成壁40の横幅方向に山部と谷部とが交互に繰り返す波形形状とされている。この一対のラチス筋56は、上弦筋54及び下弦筋52に溶接等によってそれぞれ接合されている。
【0037】
図3に示されるように、トラス筋50は、複数のブラケット60を介して木質壁板42の内壁面42Aに取り付けられている。複数のブラケット60は、鋼板等の金属板によって形成されている。また、複数のブラケット60は、一対の下弦筋52の長手方向に間隔を空けて配置されており、一対の下弦筋52に溶接等によって接合されている。
【0038】
ブラケット60は、合成壁40の横幅方向から見て、クランク状に屈曲されている。このブラケット60は、内側フランジ部62と、外側フランジ部64と、接続部66とを有している。内側フランジ部62は、木質壁板42の内壁面42Aと対向している。この内側フランジ部62には、下弦筋52が溶接等によって接合されている。
【0039】
内側フランジ部62の下側、かつ、外側には、外側フランジ部64が配置されている。また、内側フランジ部62の下端部と外側フランジ部64の上端部とは、接続部66を介して接続されている。この外側フランジ部64は、木質壁板42の内壁面42Aに重ねられた状態で、当該内壁面42Aに複数のビス68によって固定されている。
【0040】
これにより、トラス筋50が、複数のブラケット60を介して木質壁板42の内壁面42Aに取り付けられている。また、前述したように、内側フランジ部62は、木質壁板42の内壁面42Aと対向している。そのため、内側フランジ部62と木質壁板42の内壁面42Aとの間に、コンクリート48が流れ易くなっている。
【0041】
なお、ブラケット60の形状や配置、数は、適宜変更可能である。また、ブラケット60を省略し、例えば、トラス筋50の一対の下弦筋52を木質壁板42の内壁面42Aに接着剤等によって接合することも可能である。
【0042】
(頂部交差筋)
複数の頂部交差筋70は、合成壁40の縦壁筋として機能する。また、複数の頂部交差筋70は、合成壁40の高さ方向に延びるとともに、合成壁40の横幅方向に間隔を空けて配筋されている。これらの頂部交差筋70は、合成壁40の高さ方向に隣り合うトラス筋50の頂部50Tに架け渡されており、トラス筋50の頂部50Tに溶接等によって接合されている。
【0043】
一対の木質壁板42は、合成壁40を横幅方向から見て、各々の内壁面42Aに取り付けられた頂部交差筋70を壁厚方向に離した状態で配置されている。この状態で、互いに対向する一対の木質壁板42(内壁面42A)の間にコンクリート48が打設されている。
【0044】
(柱接続筋)
図2に示されるように、柱20と柱側の合成壁40の側部とは、複数の柱接続筋26を介して接続されている。なお、以下では、説明の便宜上、図1に示される3つの合成壁40のうち、中央の合成壁40を中央合成壁40Mとし、両側の合成壁40を柱側合成壁40Sとする。また、中央合成壁40M及び柱側合成壁40Sの総称を合成壁40とする。
【0045】
図2に示されるように、複数の柱接続筋26は、合成壁40の横幅方向に沿って配筋されており、柱20と柱側合成壁40Sの側部とに渡っている。各柱接続筋26の一端側は、トラス筋50の上弦筋54の一端側に沿って配筋され、図示しない結束線等によって上弦筋54の一端側と結束されている。また、各柱接続筋26の一端側は、コンクリート48に埋設(定着)されている。
【0046】
各柱接続筋26の他端側は、柱側合成壁40Sの側端から柱20の内部へ延び出し、当該柱20に埋設(定着)されている。これらの柱接続筋26を介して、柱20と柱側合成壁40Sの側部とが応力(せん断力)を伝達可能に接続されている。
【0047】
なお、柱接続筋26の構成や配置、本数は、適宜変更可能である。また、柱接続筋26は、トラス筋50に接合せず、一対の木質壁板42の設置後に配筋しても良い。
【0048】
(上側梁接続筋)
図3に示されるように、上側梁30Uと合成壁40の上部とは、複数の上側梁接続筋36Uを介して接続されている。具体的には、複数の上側梁接続筋36Uは、合成壁40の高さ方向に沿って配筋されており、上側梁30Uと合成壁40の上部とに渡っている。
【0049】
各上側梁接続筋36Uの下端側は、頂部交差筋70の上端側に沿って配筋され、図示しない結束線等によって頂部交差筋70の上端側と結束されている。また、各上側梁接続筋36Uは、コンクリート48に埋設(定着)されている。
【0050】
各上側梁接続筋36Uの上端側は、合成壁40の上端から上側梁30Uの内部へ延び出し、当該上側梁30Uに埋設(定着)されている。これらの上側梁接続筋36Uを介して、上側梁30Uと合成壁40の上部とが応力(せん断力)を伝達可能に接続されている。
【0051】
なお、上側梁接続筋36Uの構成や配置、本数は、適宜変更可能である。また、上側梁接続筋36Uは、頂部交差筋70に予め取り付けず、一対の木質壁板42の設置後に配筋しても良い。
【0052】
(下側梁接続筋)
図4に示されるように、下側梁30Lと合成壁40の下部とは、複数の下側梁接続筋36Lを介して接続されている。具体的には、複数の下側梁接続筋36Lは、合成壁40の高さ方向に沿って配筋されており、下側梁30Lと合成壁40の下部とに渡っている。各下側梁接続筋36Lの下端側は、下側梁30Lに埋設(定着)されている。
【0053】
各下側梁接続筋36Lの上端側は、下側梁30Lの上面から下側梁30Lの内部へ延び出し、頂部交差筋70の下端側に沿って配筋されている。また、各下側梁接続筋36Lの上端側は、コンクリート48に埋設(定着)されている。これにより、下側梁接続筋36Lの上端側と頂部交差筋70の下端側とが、重ね継手によって接続されている。これらの下側梁接続筋36Lを介して、下側梁30Lと合成壁40の下部とが応力(せん断力)を伝達可能に接続されている。
【0054】
なお、下側梁接続筋36Lの構成や配置、本数は、適宜変更可能である。また、下側梁接続筋36Lは、頂部交差筋70に予め取り付けず、一対の木質壁板42の設置後に配筋しても良い。
【0055】
(壁接続筋)
図5に示されるように、隣り合う中央の合成壁40と柱側の合成壁40とは、複数の壁接続筋46を介して接続されている。
【0056】
具体的には、複数の壁接続筋46は、合成壁40の横幅方向に沿って配筋されており、隣り合う中央合成壁40Mと柱側合成壁40Sとに渡っている。
【0057】
各壁接続筋46の一端側は、中央合成壁40Mのトラス筋50の上弦筋54の一端側に沿って配筋され、図示しない結束線等によって上弦筋54の一端側と結束されている。また、各壁接続筋46の一端側は、中央合成壁40Mのコンクリート48に埋設(定着)されている。
【0058】
各壁接続筋46の他端側は、中央合成壁40Mの側端から柱側合成壁40Sの内部へ延び出し、当該柱側合成壁40Sの上弦筋54に沿って配筋されている。また、各壁接続筋46の他端側は、柱側合成壁40Sのコンクリート48に埋設(定着)されている。これらの壁接続筋46を介して、隣り合う中央合成壁40Mと柱側合成壁40Sとが応力(せん断力)を伝達可能に接続されている。
【0059】
なお、壁接続筋46の構成や配置、本数は、適宜変更可能である。また、壁接続筋46は、中央合成壁40Mのトラス筋50ではなく、柱側合成壁40Sのトラス筋50に予め取り付けても良い。
【0060】
(位置決め材)
図4に示されるように、下側梁30Lの上面には、下側梁30Lに対し、一対の木質壁板42の下端部を壁厚方向に位置決めする一対の位置決め材80が取り付けられている。一対の位置決め材80は、合成壁40の壁厚方向に間隔を空けて配置されている。各位置決め材80は、合成壁40の横幅方向から見て、L字形状に屈曲されたアングルとされている。
【0061】
位置決め材80の一方のフランジ部80Aは、あと施工アンカー82によって下側梁30Lの上面に固定されている。また、各位置決め材80の他方のフランジ部80Bには、一方のフランジ部80Aの外側の端部から壁状に立ち上げられている。この他方のフランジ部80Bに木質壁板42の下端部が突き当てられている。これにより、下側梁30Lに対して一対の木質壁板42の下端部が、壁厚方向に位置決められている。
【0062】
なお、位置決め材80の構成や配置は、適宜変更可能である。また、位置決め材80は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0063】
(合成壁の施工方法)
次に、合成壁40の施工方法の一例について説明する。
【0064】
図6には、一対の柱20に架設された下側梁30Lが示されている。なお、下側梁30Lよりも上側の柱20では、柱主筋22及びせん断補強筋24が配筋されているが、コンクリートは打設前の状態である。また、上側梁30Uは、施工前の状態である。
【0065】
先ず、下側梁30Lにおける柱20側の上面に、柱側合成壁40Sとなる一対の木質壁板42を載置し、柱側合成壁40Sの板厚方向に互いに対向させる。この際、図4に示されるように、一対の木質壁板42の間に、下側梁30Lの上面から突出する複数の下側梁接続筋36Lを配置する。
【0066】
また、図6に矢印aで示されるように、柱側合成壁40Sの一対の木質壁板42を柱20側へスライドし、一対の木質壁板42の側端から突出する複数の柱接続筋26を、隣り合うせん断補強筋24の間に差し込む。
【0067】
この状態で、図4に示されるように、一対の木質壁板42の下端部を、位置決め材80のフランジ部80Bに突き当てる。これにより、下側梁30Lに対して一対の木質壁板42の下端部が位置決められる。また、一対の木質壁板42の下端部の外側に拘束部材84を仮置きし、一対の木質壁板42の下端部の開きを制限する。なお、拘束部材84は、撤去せずに、存置しても良い。
【0068】
次に、図6に矢印bで示されるように、隣り合う柱側合成壁40Sの間に、中央合成壁40Mとなる一対の木質壁板42を落とし込む。この際、中央合成壁40Mとなる一対の木質壁板42の両側の側端からそれぞれ突出する複数の壁接続筋46を、柱側合成壁40Sとなる一対の木質壁板42の間にそれぞれ挿入する。
【0069】
次に、図3に示されるように、上側梁30Uの型枠38を仮設するとともに、型枠38内に梁主筋32及びせん断補強筋34を配筋する。この際、一対の木質壁板42の上端から上方へ突出する上側梁接続筋36Uの上端側を、隣り合うせん断補強筋34の間に配置する。また、一対の木質壁板42の上端部の外面に、拘束部材としての型枠38を突き当てる。この型枠38によって、一対の木質壁板42の上端部の開きを制限する。
【0070】
次に、柱側合成壁40S及び中央合成壁40Mとなる一対の木質壁板42の間にコンクリート48を打設する。この際、隣り合う柱側合成壁40Sと中央合成壁との目地部は、図示しない型枠等で塞ぐ。また、一対の柱20及び上側梁30Uの型枠38内にコンクリート打設する。これにより、架構10と、柱側合成壁40S及び中央合成壁40Mとが一体に施工される。
【0071】
なお、合成壁40の施工方法は、上記したものに限らず、適宜変更可能である。
【0072】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0073】
図3及び図4に示されるように、本実施形態によれば、一対の木質壁板42は、互いに対向した状態で架構10内に配置されている。また、一対の木質壁板42の各々の内壁面42Aには、組立壁筋44が取り付けられている。この一対の木質壁板42の間に、コンクリート48が打設されている。これにより、合成壁40が耐震壁として機能する。また、合成壁40の遮音性が高められる。
【0074】
ここで、一対の木質壁板42は、合成壁40の外面を形成するとともに、合成壁40の型枠としても機能する。したがって、型枠の撤去作業が不要になる。
【0075】
また、木質壁板42は、鋼板等と比較して意匠性に優れている。したがって、木質壁板42によって合成壁40の外面を形成することにより、合成壁40の意匠性が向上する。
【0076】
このように本実施形態では、型枠の撤去作業を不要にしつつ、合成壁40の意匠性を向上することができる。
【0077】
また、コンクリート48の表面を一対の木質壁板42で覆うことにより、コンクリート48の表面のひび割れ等を抑制する補強筋が不要になる。したがって、合成壁40のコストを削減することができる。
【0078】
さらに、一対の木質壁板42の内壁面42Aには、組立壁筋44がそれぞれ取り付けられている。これにより、現場での壁筋の配筋作業の手間が低減される。したがって、合成壁40の施工性が向上する。
【0079】
また、木質壁板42の内壁面42Aに組立壁筋44を取り付けることにより、木質壁板42の面外剛性が高められる。これにより、一対の木質壁板42の間にコンクリート48を打設した際に、一対の木質壁板42が外側へ湾曲等することが抑制される。したがって、コンクリート48の打設時に、一対の木質壁板42の間隔を制限するセパレータの本数を低減し、又はセパレータを省略することができる。
【0080】
特に、面外剛性が高いCLTによって一対の木質壁板42を形成することにより、セパレータの本数をさらに低減し、又はセパレータを省略することができる。また、CLTによって一対の木質壁板42を形成することにより、合成壁40の耐震性能も向上する。
【0081】
さらに、組立壁筋44は、複数のトラス筋50と、隣り合うトラス筋50の頂部50Tに架け渡された複数の頂部交差筋70とを有し、一対の木質壁板42の内壁面42Aにそれぞれ取り付けられている。この一対の木質壁板42は、各々の頂部交差筋70を壁厚方向(矢印Y方向)に離した状態で配置されている。
【0082】
このように一対の木質壁板42の頂部交差筋70を壁厚方向に離すことにより、壁厚方向の所定位置に、縦壁筋としての頂部交差筋70を配筋することができる。
【0083】
また、一対の木質壁板42の間隔を増減することにより、合成壁40の壁厚を調整することができる。したがって、一対の木質壁板42の汎用性が向上する。
【0084】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0085】
上記実施形態では、トラス筋50の頂部50Tに、トラス筋50と交差する頂部交差筋70が設けられている。しかし、トラス筋50と交差する交差筋は、トラス筋50の頂部50Tに限らず、トラス筋50の中間部に設けられても良い。
【0086】
例えば、図7及び図8に示される変形例では、隣り合うトラス筋50の突出方向の中間部50Mに、複数の中間部交差筋90が架け渡されている。複数の中間部交差筋90は、合成壁40の縦壁筋として機能する。これらの中間部交差筋90は、複数のトラス筋50の中間部50Mを合成壁40の高さ方向に貫通するとともに、合成壁40の横幅方向に間隔を空けて配筋されている。
【0087】
各中間部交差筋90は、トラス筋50の中間部50Mに設けられた一対の中間筋58に溶接等によってそれぞれ接合されている。一対の中間筋58は、一対のラチス筋56に沿って合成壁40の横幅方向にそれぞれ延びており、溶接等によってラチス筋56に接合されている。なお、本変形例の組立壁筋44は、複数のトラス筋50、複数の中間部交差筋90、及び複数の中間筋58を有している。
【0088】
図7に示されるように、一対の木質壁板42は、合成壁40を横幅方向から見て、各々の内壁面42Aに取り付けられたトラス筋50を、合成壁40の高さ方向に交互に並べた状態で配置されている。また、一対の木質壁板42は、一方のトラス筋50の頂部50Tを他方のトラス筋50の中間部交差筋90に接触させた状態で配置されている。これにより、一対の木質壁板42が壁厚方向に位置決めされている。この結果、一対の木質壁板42の間隔が所定値に設定されている。この状態で、互いに対向する一対の木質壁板42の間にコンクリート48が打設されている。
【0089】
このように一対の木質壁板42のトラス筋50を、合成壁40の高さ方向に交互に並べることにより、一対の木質壁板42の面外剛性が高められる。したがって、一対の木質壁板42の間にコンクリート48の打設する際に、一対の木質壁板42の間隔を制限するセパレータの本数をさらに低減し、又はセパレータを省略することができる。
【0090】
また、例えば、一方の木質壁板42を対向させる際に、一方のトラス筋50の頂部50Tを、他方のトラス筋50の中間部交差筋90に接触させることにより、一対の木質壁板42が壁厚方向に位置決められる。したがって、一対の木質壁板42の施工性が向上する。
【0091】
なお、本件例では、一対の木質壁板42において、一方のトラス筋50の頂部50Tが他方のトラス筋50の中間部交差筋90に接触している。しかし、一対の木質壁板42において、一方のトラス筋50の頂部50Tと他方のトラス筋50の中間部交差筋90とは、必ずしも接触させる必要はなく、一方のトラス筋50の頂部50Tと他方のトラス筋50の中間部交差筋90との間に隙間があっても良い。
【0092】
次に、上記実施形態では、組立壁筋44がトラス筋50及び頂部交差筋70を有している。しかし、組立壁筋44は、トラス筋50及び頂部交差筋70に限らない。
【0093】
例えば、図9図10、及び図11に示される変形例では、組立壁筋100が、複数の横壁筋102と、複数の縦壁筋104とを有している。図9に示されるように、組立壁筋100は、後述する複数のブラケット110を介して木質壁板42の内壁面42Aにそれぞれ取り付けられている。
【0094】
図10に示されるように、複数の横壁筋102は、合成壁40の横幅方向に延びるとともに、合成壁40の高さ方向に間隔を空けて配筋されている。一方、複数の縦壁筋104は、合成壁40の高さ方向に延びるとともに、合成壁40の横幅方向に間隔を空けて配筋されている。これらの横壁筋102及び縦壁筋104は、合成壁40の厚み方向から見て、格子状に接合されている。
【0095】
横壁筋102及び縦壁筋104は、交差部において図示しない結束線又は溶接等によって接合されている。この横壁筋102及び縦壁筋104の交差部は、ブラケット110を介して木質壁板42の内壁面42Aにそれぞれ取り付けられている。
【0096】
図11に示されるように、ブラケット110は、ハット形鋼によって形成されている。このブラケット110は、ブラケット本体112と、一対のフランジ114とを有している。ブラケット本体112の断面形状は、平面視にて、合成壁40の中心側が開口したC字形状とされている。ブラケット本体112の開口側の端部には、一対のフランジ114が設けられている。
【0097】
一対のフランジ114は、ブラケット本体112の開口側の端部から外側へそれぞれ延出している。この一対のフランジ114には、横壁筋102が溶接等によって接合されている。また、ブラケット本体112における開口と反対側の壁部(ベース部)112Aは、ビス120によって木質壁板42の内壁面に42Aに固定されている。
【0098】
このように本変形例では、組立壁筋100が、複数のブラケット(ハット形鋼)110を介して木質壁板42の内壁面42Aに取り付けられている。これにより、合成壁40の壁厚を薄くしつつ、組立壁筋100の構造をシンプルにすることができる。
【0099】
なお、ブラケット110の数や配置、向きは、上記したもの限らず、適宜変更可能である。
【0100】
次に、上記実施形態では、合成壁40の一対の木質壁板42がセパレータを介して連結されていない。しかし、一対の木質壁板42は、必要に応じてセパレータを介して連結しても良い。
【0101】
また、上記実施形態では、一対の木質壁板42のトラス筋50が、合成壁40の高さ方向に並んで配置されている。しかし、トラス筋50は、合成壁40の横幅方向に並んで配置されても良い。この場合、トラス筋50の上弦筋54が合成壁40の竪壁筋として機能し、頂部交差筋70が合成壁40の横壁筋として機能する。また、合成壁40の横幅方向が、予め定められた一方向の一例となる。
【0102】
また、組立壁筋44は、トラス筋50及び頂部交差筋70に限らない。組立壁筋44は、合成壁40の縦壁筋及び横壁筋の少なくとも一方を含んで構成されていれば良く、その構成は、適宜変更可能である。
【0103】
また、上記実施形態では、合成壁40が柱20に接合されている。しかし、合成壁40は、必ずしも柱20に接合する必要はない。また、合成壁40と柱20との間には、必要に応じて開口を設けることも可能である。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0105】
10 架構
40 合成壁
42 木質壁板
42A 内壁面
44 組立壁筋
48 コンクリート
50 トラス筋
50T 頂部(トラス筋の頂部)
50M 中間部(トラス筋の中間部)
70 頂部交差筋
90 中間部交差筋
100 組立壁筋
矢印Z 合成壁の高さ方向(予め定められた一方向)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11