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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188505
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20221214BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221214BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/175 501
B41J2/175 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096596
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】三觜 拓
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB15
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB32
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC16
2C056EC17
2C056EC20
2C056EC28
2C056EC32
2C056EC40
2C056FA13
2C056FA14
2C056KA01
2C056KB16
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】印刷ジョブ実行時におけるノズルでのインク圧力値の変動を抑制し、印刷品質を向上することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、循環流路の一部を形成するインク室およびインク室のインクを射出するノズルを含んで構成される射出部と、循環流路を流れるインクの循環を制御する制御部と、を備え、制御部は、印刷ジョブの実行前に前記印刷ジョブでのインク射出量を算出し、算出したインク射出量に基づいてインク室へのインクの流入量を決定し、印刷ジョブの実行中は決定した流入量を維持する制御を行う。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環流路の一部を形成するインク室および前記インク室のインクを射出するノズルを含んで構成される射出部と、
前記循環流路を流れるインクの循環を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、印刷ジョブの実行前に前記印刷ジョブでのインク射出量を算出し、算出したインク射出量に基づいて前記インク室へのインクの流入量を決定し、前記印刷ジョブの実行中は決定した流入量を維持する制御を行う
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、複数の印刷ジョブを連続実行する場合、連続印刷の実行前に各印刷ジョブでの前記インク室へのインクの流入量を決定し、実行する印刷ジョブの切替時に前記インク室へのインクの流入量を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、印刷待機中、予め決められた循環流量でインクを循環させる
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
インク温度と循環流量とを対応付けた対応情報を記憶する記憶部と、
前記循環流路に流れるインク温度を検出する検出部と、を更に備え、
前記制御部は、検出したインク温度および前記対応情報に基づいて前記循環経路を流れるインクの循環流量を決定し、前記インク射出量および前記循環流量に基づいて前記インク室へのインクの流入量を決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記射出部の温度と循環流量とを対応付けた対応情報を記憶する記憶部と、
前記射出部の温度を検出する検出部と、を更に備え、
前記制御部は、検出した射出部の温度および前記対応情報に基づいて前記循環経路を流れるインクの循環流量を決定し、前記インク射出量および前記循環流量に基づいて前記インク室へのインクの流入量を決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項6】
インク粘度と循環流量とを対応付けた対応情報を記憶する記憶部と、
前記循環流路に流れるインクの粘度を検出する検出部と、を更に備え、
前記制御部は、検出したインク粘度および前記対応情報に基づいて前記循環経路を流れるインクの循環流量を決定し、前記インク射出量および前記循環流量に基づいて前記インク室へのインクの流入量を決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項7】
表示部と入力部とを更に備え、
前記制御部は、前記循環経路を流れるインクの循環流量を前記表示部に表示させ、前記入力部で受け付けたユーザー入力に従って前記循環経路を流れるインクの循環流量を変更する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記射出部のインク供給口に接続され、空気層を有する第1インク貯留部と、
前記射出部のインク排出口に接続され、空気層を有する第2インク貯留部と、
前記第1インク貯留部の空気層および前記第2インク貯留部の空気層の圧力を制御する空圧制御と、を更に備え、
前記空圧制御部により、2つの空気層に差圧を生じさせることによって、前記循環経路に流れるインクの循環流量を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記射出部のインク供給口に備えられた液体ポンプを更に備え、
前記液体ポンプの送液圧力により前記循環経路に流れるインクの循環流量を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記循環流路を流れるインクの循環流量と前記印刷ジョブを実行中における前記インク射出量の平均値とから前記インク室へのインクの流入量を決定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インク循環構成を備えるインクジェット方式の印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の印刷装置において、インクジェットヘッドとインクタンクとの間でインクを循環させる循環式の印刷装置が知られている。このような循環式の印刷装置において、印刷ジョブ実行時に、インクジェットヘッドのノズルからインクを射出する量に応じて、インクジェットヘッドに供給するインクの量を変える方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-14194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7(a)は、従来の方法での印刷ジョブ実行時におけるQinと、Qoutと、Qjobの時系列変化を示すグラフであり、図7(b)は、印刷ジョブ実行時におけるPinと、Poutと、Pnozzleの時系列変化を示すグラフであり、図7(c)は、印刷ジョブ実行時における印刷濃度の時系列変化を示すグラフである。
【0005】
ここで、QinおよびPinは、インクジェットヘッドのインク供給口におけるインク流量およびインク圧力値であり、QoutおよびPoutは、インク排出口におけるインク流量およびインク圧力値であり、Qjobは、印刷ジョブ実行時におけるノズルからのインク吐出量であり、Pnozzleは、ノズルにおけるインク圧力値である。
【0006】
図7(a)に示すように、印刷ジョブの実行に応じてノズルからインクが射出されることによりQjobが上昇する。従来の方法では、Qjobの上昇に応じてQinが上昇するよう、図7(b)に示すようにPinが制御される。このとき、図7(b)に示すように、ノズルからのインク射出によってPnozzleが低下する。これは、射出方向に大気圧よりも大きい力を加えてノズルからインクを射出した際、作用反作用の法則により、射出方向の正圧に対してノズル内では逆向きの力が働いて負圧がより大きくなるためである。
【0007】
Pnozzleの値は、ノズルから射出されるインクの液滴サイズ(一度の射出におけるインク吐出量)に影響する。従って、Pnozzleの値が変動すると、ノズルから射出されるインクの液滴サイズが変動し、それが印刷濃度(記録媒体上の画像におけるインク濃度)の変動となる。例えば、Pnozzleの値が小さくなると、液滴サイズが小さくなり、記録媒体上に着弾するインク量が少なくなり、印刷濃度が薄くなってしまう。その結果、図7(c)に示すように、印刷濃度の変動となり、これがスジ・ムラ等につながり、印刷品質が低下してしまう。
【0008】
このように、従来の方法では、印刷ジョブの実行時に、ノズルからのインク吐出に応じてノズルにおけるインク圧力値が変動し、印刷品質が低下してしまうおそれがある。
【0009】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたもので、印刷ジョブ実行時におけるノズルでのインク圧力値の変動を抑制し、印刷品質を向上することができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様の印刷装置は、循環流路の一部を形成するインク室および前記インク室のインクを射出するノズルを含んで構成される射出部と、前記循環流路を流れるインクの循環を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、印刷ジョブの実行前に前記印刷ジョブでのインク射出量を算出し、算出したインク射出量に基づいて前記インク室へのインクの流入量を決定し、前記印刷ジョブの実行中は決定した流入量を維持する制御を行うことを特徴とする。
【0011】
また、前記印刷装置において、前記制御部は、複数の印刷ジョブを連続実行する場合、連続印刷の実行前に各印刷ジョブでの前記インク室へのインクの流入量を決定し、実行する印刷ジョブの切替時に前記インク室へのインクの流入量を切り替えるとしてもよい。
【0012】
また、前記印刷装置において、前記制御部は、印刷待機中、予め決められた循環流量でインクを循環させるとしてもよい。
【0013】
また、前記印刷装置は、インク温度と循環流量とを対応付けた対応情報を記憶する記憶部と、前記循環流路に流れるインク温度を検出する検出部と、を更に備え、前記制御部は、検出したインク温度および前記対応情報に基づいて前記循環経路を流れるインクの循環流量を決定し、前記インク射出量および前記循環流量に基づいて前記インク室へのインクの流入量を決定するとしてもよい。
【0014】
また、前記印刷装置は、前記射出部の温度と循環流量とを対応付けた対応情報を記憶する記憶部と、前記射出部の温度を検出する検出部と、を更に備え、前記制御部は、検出した射出部の温度および前記対応情報に基づいて前記循環経路を流れるインクの循環流量を決定し、前記インク射出量および前記循環流量に基づいて前記インク室へのインクの流入量を決定するとしてもよい。
【0015】
また、前記印刷装置は、インク粘度と循環流量とを対応付けた対応情報を記憶する記憶部と、前記循環流路に流れるインクの粘度を検出する検出部と、を更に備え、前記制御部は、検出したインク粘度および前記対応情報に基づいて前記循環経路を流れるインクの循環流量を決定し、前記インク射出量および前記循環流量に基づいて前記インク室へのインクの流入量を決定するとしてもよい。
【0016】
また、前記印刷装置は、表示部と入力部とを更に備え、前記制御部は、前記循環経路を流れるインクの循環流量を前記表示部に表示させ、前記入力部で受け付けたユーザー入力に従って前記循環経路を流れるインクの循環流量を変更するとしてもよい。
【0017】
また、前記印刷装置は、前記射出部のインク供給口に接続され、空気層を有する第1インク貯留部と、前記射出部のインク排出口に接続され、空気層を有する第2インク貯留部と、前記第1インク貯留部の空気層および前記第2インク貯留部の空気層の圧力を制御する空圧制御と、を更に備え、前記空圧制御部により、2つの空気層に差圧を生じさせることによって、前記循環経路に流れるインクの循環流量を制御するとしてもよい。
【0018】
また、前記印刷装置は、前記射出部のインク供給口に備えられた液体ポンプを更に備え、前記液体ポンプの送液圧力により前記循環経路に流れるインクの循環流量を制御するとしてもよい。
【0019】
また、前記印刷装置において、前記制御部は、前記循環流路を流れるインクの循環流量と前記印刷ジョブを実行中における前記インク射出量の平均値とから前記インク室へのインクの流入量を決定するとしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本開示の印刷装置によれば、印刷ジョブ実行時におけるノズルでのインク圧力値の変動が抑制されるため、印刷品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】印刷装置1の主要構成を示す図である。
図2図2(a)は、ヘッドユニット24を側方から見た場合のヘッドユニット24の内部構成の概略図である。図2(b)は、ヘッドユニット24を記録媒体側から見た場合のヘッドユニット24の概略図である。
図3図3は、印刷装置1のインク循環機構300の主要構成及びインク循環機構300の各部間の接続を示す概要図である。
図4図4は、インクジェットヘッド51の内部構成を示す概略図である。
図5図5は、図4におけるA部分の詳細を示す概略図である。
図6図6(a)は、印刷待機時のインク流量を示すグラフである。図6(b)は、印刷待機時のインク圧力値を示すグラフである。
図7図7(a)は、従来技術における印刷ジョブ実行時のインク流量の変動を示すグラフである。図7(b)は、従来技術における印刷ジョブ実行時のインク圧力値の変動を示すグラフである。図7(c)は、従来技術における印刷ジョブ実行時の印刷濃度の変動を示すグラフである。
図8図8(a)は、印刷装置1における印刷ジョブ実行時のインク流量の変動を示すグラフである。図8(b)は、印刷装置1における印刷ジョブ実行時のインク圧力値の変動を示すグラフである。図8(c)は、印刷装置1における印刷ジョブ実行時の印刷濃度の変動を示すグラフである。
図9図9は、インク流量制御の制御構成を示すブロック図である。
図10図10は、インク流量制御のフローチャートである。
図11図11は、インク流量制御の制御構成を示すブロック図である。
図12図12(a)は、インク温度と待機時インク流量の対応関係を示す対応関係の一例を示す。図12(b)は、ヘッド温度と待機時インク流量の対応関係を示す対応関係の一例を示す。図12(c)は、インク粘度と待機時インク流量の対応関係を示す対応関係の一例を示す。
図13図13は、インク流量制御の制御構成を示すブロック図である。
図14図14は、印刷装置1のインク循環機構400の主要構成及びインク循環機構400の各部間の接続を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示に係る印刷装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一の機能および構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
[1]実施の形態
(1)印刷装置1
図1は、本開示の一実施形態である印刷装置1の全体構成を示す図である。図1に示すように、印刷装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40とを備える。
【0023】
(1-1)給紙部10
給紙部10は、画像形成が行われる記録媒体Pを画像形成部に供給する。給紙部10は、記録媒体Pを保持する給紙トレー11と、画像形成部20に記録媒体Pを供給する搬送部12とを備える。
【0024】
給紙トレー11は、1又は複数の記録媒体Pを載置可能に設けられた板状の部材である。給紙トレー11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動するように設けられており、最上の記録媒体Pが搬送部12により搬送される位置で保持される。
【0025】
搬送部12は、給紙トレー11に載置された記録媒体Pのうち最上のものをベルト123上に繰り出し、ベルト123をローラー121、122により回転駆動してベルト123上の記録媒体Pを搬送する。
【0026】
(1-2)画像形成部20
画像形成部20は、給紙部10から供給された記録媒体Pにインクを吐出させて画像を形成する。画像形成部20は、画像形成ドラム21と、受け渡しユニット22と、用紙加熱部23と、ヘッドユニット24と、照射部25と、デリバリー部26とを備える。
【0027】
画像形成ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、同図の反時計方向の回転に伴って記録媒体Pを搬送する。画像形成ドラム21の外周面は、用紙加熱部23、ヘッドユニット24および照射部25に対向している。
【0028】
受け渡しユニット22は、搬送部12により搬送された記録媒体Pを画像形成ドラム21に受け渡す。受け渡しユニット22は、記録媒体Pの一端を担持するスイングアーム部221、円筒状の受け渡しドラム222等を備え、搬送部12上の記録媒体Pをスイングアーム部221で取り上げ、受け渡しドラム222により記録媒体Pを画像形成ドラム21の外周面に沿う向きに誘導して画像形成ドラム21に受け渡す。
【0029】
用紙加熱部23は、画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pを加熱する。用紙加熱部23は、例えば、通電に応じて発熱する赤外線ヒーター等を有する。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であって、記録媒体Pの搬送方向においてヘッドユニット24の上流側に設けられる。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21に担持されて用紙加熱部23の近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるように、その発熱を制御部40により制御される。
【0030】
ヘッドユニット24は、画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pに対してインクを吐出し、画像を形成する。ヘッドユニット24は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色について個別に設けられている。図1では、記録媒体Pの搬送方向に対して上流からY、M、C、Kの各色に対応したヘッドユニット24が順番に設けられている。ヘッドユニット24の詳細構成については後述する。
【0031】
照射部25は、記録媒体Pにインクが吐出された後に、当該インクを硬化させるためのエネルギー線を記録媒体Pに照射する。照射部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を備える。照射部25は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であって、記録媒体Pの搬送方向においてヘッドユニット24の下流側に設けられる。
【0032】
照射部25は、インクの性質に応じてインクを硬化させるエネルギー線を発するものであればよく、低圧水銀ランプの他、水銀ランプ、殺菌灯として利用可能な光源、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプ、発光ダイオード等を用いることができる。
【0033】
デリバリー部26は、記録媒体Pを画像形成ドラム21から排紙部30に搬送する。デリバリー部26は、受け渡しドラム264により画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pをベルト263に受け渡し、ベルト263をローラー261、262により回転駆動してベルト263上の記録媒体Pを搬送する。
【0034】
(1-3)排紙部30
排紙部30は、板状の排紙トレー31を備え、画像形成部20から搬送された記録媒体Pを格納する。
【0035】
(1-4)制御部40
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。ROMに記憶された各種プログラムが読みだされてRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、制御部40は、印刷装置1の各部の動作を制御し、全体の動作を統括する。
【0036】
(2)ヘッドユニット24
ヘッドユニット24の詳細について説明する。
【0037】
(2-1)ヘッドユニット24
図2(a)は、ヘッドユニット24を側方から見た場合におけるヘッドユニット24の内部構成の概略図である。図2(b)は、ヘッドユニット24を画像形成ドラム21に担持された記録媒体P側から見た場合におけるヘッドユニット24の概略図である。
【0038】
ヘッドユニット24は、記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向(幅方向:矢印X方向)について、記録媒体Pの全体をカバーする長さ(幅)で設けられている。
【0039】
ヘッドユニット24は、複数のインクジェットヘッド51を備える。図の例では、1つのヘッドユニット24に16個のインクジェットヘッド51が設けられている。16個のインクジェットヘッド51は、それぞれ2個のインクジェットヘッド51が一組になって、8個のインクヘッドモジュール52を構成している。
【0040】
インクジェットヘッド51は、それぞれが複数のノズル511を備える。インクジェットヘッド51は、複数のノズル511からインクを吐出し、記録媒体Pに画像を形成する。従って、インクジェットヘッド51は、複数のノズル511が、画像形成ドラム21に担持された記録媒体Pに対向するように、ヘッドユニット24の下面側に露出するように設けられる。
【0041】
ヘッドユニット24は、インクジェットヘッド51に供給されるインクを貯留するインクタンク53を備える。
インクタンク53は、インク供給部(インクカートリッジ)から供給されるインクを貯留するメインタンク54、メインタンクから供給されたインクをインクジェットヘッド51に供給する第1サブタンク55、インクジェットヘッド51から回収したインクを貯留する第2サブタンク56を含んで構成される。
【0042】
なお、図2(a)において、インクタンク53の長手方向中央部にメインタンク54に設けられ、その両縁部に第1サブタンク55が設けられ、更にその両縁部に第2サブタンク56が設けられているが、メインタンク54、第1サブタンク55、第2サブタンク56の数や配置は、インクジェットモジュール52の数等に応じて適宜変更されるものであってもよい。
【0043】
(2-2)インク循環機構300
図3は、印刷装置1におけるインク循環機構300の主要構成及びインク吐出機構の各部間の接続を示す概要図である。
【0044】
インク循環機構300は、インクジェットヘッド51、メインタンク54、第1サブタンク55、第2サブタンク56、脱気モジュール61、フィルター62、空圧制御部65および66等を備えて構成される。
【0045】
メインタンク54と第1サブタンク55とは経路301により接続され、第1サブタンク55とインクジェットヘッド51とは経路302により接続され、インクジェットヘッド51と第2サブタンク56とは経路303により接続され、第2サブタンク56とメインタンク54とは経路304により接続される。経路301~304は、それぞれ内部をインクが通過するチューブ状の部材であり、例えば、樹脂等を素材とする。
【0046】
インクジェットヘッド51は、第1サブタンク55から供給されたインクの一部をノズル511から射出し、残ったインクを第2サブタンク56に排出する。インクジェットヘッド51の詳細については後述する。
【0047】
メインタンク54は、インク循環機構300の各部に流通されるインクを貯留する。
【0048】
第1サブタンク55は、メインタンク54から供給されるインクを貯留し、貯留されたインクはインクジェットヘッド51に供給される。第1サブタンク55は、各種の接続箇所を除いて密閉されたタンク状の容器であり、インク層55aと空気層55bが形成されている。
【0049】
第2サブタンク56は、インクジェットヘッド51から回収されたインクを貯留する。第2サブタンク56は、各種の接続箇所を除いて密閉されたタンク状の容器であり、インク層56aと空気層56bが形成されている。
【0050】
経路301には、脱気モジュール61が設けられ、経路301を通過するインクの脱気を行う。脱気モジュール61は、例えば、気体透過膜を介して片側にインクを流下させ、その反対側の気圧を真空ポンプ等によって減圧することにより、気体透過膜に接するインク中の溶存気体のみが気体透過膜を透過して除去されるように構成されている。
【0051】
経路302には、フィルター62が設けられ、経路302を通過するインクに含まれる埃等の異物の除去を行う。フィルター62の孔径としては、インクジェットヘッド51のノズル径以上の粒径の異物を除去できる程度の孔径であることが好ましい。
【0052】
経路301にはポンプ63が設けられている。ポンプ63は、制御部40の制御下で動作し、メインタンク54から第1サブタンク55にインクを供給する。ポンプ63としては、例えば、ダイヤフラムポンプ等の容積型のポンプやチューブポンプ等が用いられる。
【0053】
経路304にはポンプ64が設けられている。ポンプ64は、制御部40の制御下で動作し、第2サブタンク56からメインタンク54にインクを供給する。ポンプ64としては、例えば、ダイヤフラムポンプ等の容積型のポンプやチューブポンプ等が用いられる。
【0054】
空圧制御部65は、第1サブタンク55に接続されて、制御部40の制御下で第1サブタンク55内の空気層55bの圧力を調整する。空圧制御部66は、第2サブタンク56に接続されて、制御部40の制御下で第2サブタンク56内の空気層56bの圧力を調整する。空圧制御部65および空圧制御部66の制御により、第1サブタンク55からインクジェットヘッド51へ、インクジェットヘッド51から第2サブタンク56へ流れるインク流量を調整する。また、空圧制御部65および空圧制御部66の制御により、インクジェットヘッド51のノズル511、インク供給口512(図4参照)、インク排出口514(図4参照)の圧力を負圧状態とし、これにより、画像形成や各種のメンテナンスを行わない際にノズルからインクが漏れ出すことを防止する。
【0055】
上記構成により、メインタンク54-第1サブタンク55-インクジェットヘッド51-第2サブタンク56間でインクが循環する。
(2-3)インクジェットヘッド51
図4は、インクジェットヘッド51の内部構成を示す概略図である。
【0056】
図に示すように、インクジェットヘッド51は、ノズル511、供給口512、インク室513、排出口514を含んで構成される。
【0057】
第1サブタンク55から供給されたインクは、インクの循環経路の一部を形成する供給口512、インク室513、排出口514を順に通過し(矢印B参照)、第2サブタンク56に回収される。インク室513に流れるインクの一部は、印刷ジョブの実行時に、ノズル511から記録媒体に射出される。図5に、図4のA部分の詳細を示す。ノズル511は、インク室513と連通するインクチャネル515を有している。ノズル内壁516は、圧電(ピエゾ)素子を用いて形成され、制御部40の制御により供給されるパルス信号に応じてせん断変形することにより、インクチャネル515内のインクをノズル口517から射出する。
【0058】
(2-4)インク流量制御
ここで、インクジェットヘッド51のインク供給口512におけるインク流量およびインク圧力値をQinおよびPinとする。また、インク排出口514におけるインク流量およびインク圧力値をQoutおよびPoutとし、印刷ジョブ実行時におけるノズル511からのインク吐出量をQjobとし、ノズル口511におけるインク圧力値Pnozzleとする。
【0059】
図6(a)は、印刷待機時におけるQinおよびQoutの時系列変化を示すグラフであり、図6(b)は、印刷ジョブ実行時におけるPin、PoutおよびPnozzleの時系列変化を示すグラフである。
【0060】
図6(a)に示すように、印刷待機時には、QinおよびQoutは一定の値となっており、一定量のインクがインク循環機構300で循環する。このとき、図6(b)に示すように、Pin、PoutおよびPnozzleは負圧状態となっており、ノズル511などの各部からインクが漏れることを防止している。Pin>Poutとなるように、第1サブタンク55内の空気層55bの圧力および第2サブタンク56内の空気層56bの圧力を調整することにより、供給口512から排出口514の方向へのインクの流れが生まれ、その差圧に応じてQinおよびQoutが調整される。
【0061】
図7(a)は、比較例となる従来の方法での印刷ジョブ実行時におけるQinと、Qoutと、Qjobの時系列変化を示すグラフであり、図7(b)は、印刷ジョブ実行時におけるPinと、Poutと、Pnozzleの時系列変化を示すグラフであり、図7(c)は、印刷ジョブ実行時における印刷濃度の時系列変化を示すグラフである。
【0062】
図7(a)に示すように、印刷ジョブの実行に応じてノズル511からインクが射出されることによりQjobが上昇する。比較例では、Qjobの上昇に応じてQinが上昇するよう、図7(b)に示すようにPinが制御される。このとき、図7(b)に示すように、ノズル口511からのインク射出によってPnozzleが低下する。Pnozzleの変動に応じて、ノズルから射出されるインクの液滴サイズが変動し、それが、図7(c)に示すように、印刷濃度の変動となり、印刷品質が低下してしまう。
【0063】
図8(a)は、本開示の印刷装置1の印刷ジョブ実行時におけるQinと、Qoutと、Qjobの時系列変化を示すグラフであり、図8(b)は、印刷ジョブ実行時におけるPinと、Poutと、Pnozzleの時系列変化を示すグラフであり、図8(c)は、印刷ジョブ実行時における印刷濃度の時系列変化を示すグラフである。なお、図8(b)、図8(c)において、破線は比較例を示す。
【0064】
図8(a)に示すように、本開示の印刷装置1では、比較例と同様に、印刷ジョブ実行時、印刷ジョブの実行に応じてノズル511からインクが射出されることによりQjobが上昇する。一方、ジョブの実行中、実際にノズル511からインクが射出される前後の所定時間を含めたインク流量維持期間の間、Qinは、Qoutよりも大きい一定の値を維持し続けるよう制御される。例えば、待機時のインク流量をQstandby、印刷ジョブで射出されるインク量の平均値(射出されるインク総量をインク流量維持期間で割ったもの)を<Q>jobとすると、Qout=Qstandbyであり、Qin=Qstandby+<Q>jobとなる。本開示の印刷装置1では、インク流量維持期間の間Qinが一定となるようにPinが制御される。なお、Qinは、Pin、PoutおよびPnozzleの値に依存するため、PinはPnozzleの変動に対してもQinが一定となるように制御される。このとき、図8(b)の実線グラフに示すように、ノズル口511からのインク射出によってPnozzleが低下するが、あらかじめQinがQoutよりも大きくなるように制御されているため、その低下量は破線グラフの比較例よりも小さくなる。Pnozzle変動が小さくなると、図8(c)に示すように、印刷濃度の変動も小さくなり、その結果、印刷品質の低下を抑制することができる。
【0065】
図9は、インク流量制御の制御ブロック図である。制御部40は、印刷ジョブデータを受信すると、印刷ジョブの実行前に、印刷ジョブデータを解析して、印刷ジョブの実行で射出されるインク総量を求め、求めたインク総量からインク量維持期間におけるインク射出量平均<Q>jobを計算する。そして、待機時のインク流量Qstandby+インク射出量平均<Q>jobとなるように印刷時インク流量を設定する。また、制御部40は、印刷ジョブデータを解析して、インクが算出されるタイミングおよび各タイミングで射出されるインク量を求め、各タイミングで設定された印刷時インク流量を一定に維持するために必要なPinを決定する。その後、印刷ジョブの実行を開始し、印刷ジョブの実行中は、事前に決定されたPinとなるように各タイミングで空圧制御部65を制御することにより、インク流量維持期間の間、設定された印刷時インク流量が維持される。
【0066】
なお、インク量維持期間は、印刷ジョブデータを解析して、インクが算出されるタイミングを求め、最初にインクが射出されるタイミングの所定時間前から最後にインクが射出されるタイミングの所定時間後の期間として求められる。
【0067】
なお、制御部40は、複数の印刷ジョブを連続実行する場合、複数の印刷ジョブのジョブデータを、連続実行の前に受信し、受信した各ジョブデータに基づいて各印刷ジョブにおける印刷時インク流量を決定する。その後、印刷ジョブの切替時に、印刷時インク流量を連続実行の前に決定されたものに切り替える制御を行う。
【0068】
なお、ここで、印刷ジョブは、1ページ分の印刷イメージを記録媒体上に印刷(画像形成)することを指す。従って、複数ページに係る印刷を行うときに、複数の印刷ジョブを連続実行する。
【0069】
図10は、印刷装置1の印刷ジョブの実行時に制御部40が実行するインク流量の制御のフローチャートである。
【0070】
制御部40は、印刷ジョブデータを受信するまでの間(ステップS1:No)、印刷待機状態となり、インク流量Qinを待機時インク流量Qstandbyに設定する(ステップS6)。制御部40は、印刷待機状態の間、インク流量Qinが待機時インク流量Qstandbyを維持するように空圧制御部65、66を制御する。
【0071】
制御部40は、印刷ジョブデータを受信すると(ステップS1:Yes)、印刷ジョブデータを解析し、ジョブ実行時インク流量(Qstandby+<Q>job)を決定する(ステップS2)。制御部40は、複数の印刷ジョブを連続実行する場合は、各印刷ジョブのジョブ実行時のインク流量を決定する。
【0072】
制御部40は、インク流量Qinを、次に実行する印刷ジョブに応じたジョブ実行時インク流量(Qstandby+<Q>job)に設定する(ステップS3)。
【0073】
制御部40は、印刷ジョブの実行を開始し、印刷ジョブを実行している間(インク流量維持期間)、インク流量QinがステップS3で設定したジョブ実行時インク流量(Qstandby+<Q>job)を維持するように空圧制御部65、66を制御する(ステップS4)。
【0074】
制御部40は、印刷ジョブの実行後、全ジョブの実行が終了したか否かを判定し、全ジョブの実行が終了していれば(ステップS5:Yes)、ステップS6に進み、終了していなければ(ステップS5:No)、ステップS3に進む。
【0075】
制御部40は、上記手順により、インクジェットヘッド51におけるインク流量を制御する。このインク流量制御により、印刷ジョブ実行時におけるノズル511でのインク圧力値の変動が抑制されるため、印刷品質を向上する。
[2]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0076】
(1)上述の実施の形態における印刷待機時のインク流量Qstandbyは、予め決定された一定値であるが、待機時インク流量Qstandbyは状況に応じて適宜変更してもよい。例えば、インク温度、ヘッド温度またはインク粘度に応じて待機時インク流量Qstandbyを変更してもよい。
【0077】
図11は、インク温度、ヘッド温度、インク粘度に応じて待機時インク流量を変更するインク流量制御の制御ブロック図である。制御部40は、CPU41と不揮発性メモリ41を備え、不揮発性メモリ42には、インク温度、ヘッド温度、インク粘度と待機時インク流量Qstandbyとの対応情報43が記憶されている。また、インクジェットヘッド51には、インクジェットヘッド51の温度を検出するヘッド温度センサー72が設けられている。または、インク循環機構300の任意の個所に循環するインクの温度を検出するインク温度センサー71または循環するインクの粘度を検出するインク粘度センサー73が設けられている。
【0078】
インク温度センサー71、ヘッド温度センサー72、インク粘度センサー73は制御部を接続され、検出したインク温度、ヘッド温度、インク粘度を制御部40に送信する。制御部40は、対応情報43に基づいて待機時インク量Qstandbyを決定する。
【0079】
制御部40は、待機時インク流量を図12(a)に一例を示す対応情報43に基づいて決定してもよい。図12(a)は、インク温度センサー71から受信したインク温度Tinkと待機時インク流量Qstandbyの対応関係を示す対応関係43の一例を示している。図において、T1、T2、T3、T4は、T1<T2<T3<T4を満たす予め決められた温度を表す定数である。また、Q0、Q1、Q2はそれぞれ予め決められたインクの流量を表す定数であり、Q1およびQ2はQ2>Q1を満たす。
【0080】
制御部40は、Tink≦T1の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0+Q2と設定する。制御部40は、T1<Tink≦T2の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0+Q1と設定する。制御部40は、T2<Tink≦T3の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0と設定する。制御部40は、T3<Tink≦T4の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0-Q1と設定する。制御部40は、T4<Tinkの場合、待機時インク流量QstandbyをQ0-Q2と設定する。
【0081】
インク温度によってインクの流動性が変化するので、インク温度に応じて循環流量を制御することで、インクの循環を円滑に行い、インクの射出動作を安定させ、印刷品質を向上させることができる。
【0082】
制御部40は、待機時インク流量を図12(b)に一例を示す対応情報43に基づいて決定してもよい。図12(b)は、ヘッド温度センサー72から受信したインク温度Theadと待機時インク流量Qstandbyの対応関係を示す対応関係43の一例を示している。図において、T1、T2、T3、T4は、T1<T2<T3<T4を満たす予め決められた温度を示す定数である。また、Q0、Q1、Q2はそれぞれ予め決められたインク流量を示す定数であり、Q1およびQ2はQ2>Q1を満たす。
【0083】
制御部40は、Thead≦T1の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0+Q2と設定する。制御部40は、T1<Thead≦T2の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0+Q1と設定する。制御部40は、T2<Thead≦T3の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0と設定する。制御部40は、T3<Thead≦T4の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0-Q1と設定する。制御部40は、T4<Theadの場合、待機時インク流量QstandbyをQ0-Q2と設定する。
【0084】
ヘッド温度によって、循環経路に流れるインク温度が変化し、インク温度によってインクの流動性が変化するので、インク温度に応じて循環流量を制御することで、インクの循環を円滑に行い、インクの射出動作を安定させ、印刷品質を向上させることができる。
【0085】
制御部40は、待機時インク流量を図12(c)に一例を示す対応情報43に基づいて決定してもよい。図12(c)は、インク粘度センサー73から受信したインク粘度ηと待機時インク流量Qstandbyの対応関係を示す対応関係43の一例を示している。図において、η1、η2、η3、η4は、η1<η2<η3<η4を満たす予め決められた粘度を表す定数である。また、Q0、Q1、Q2はそれぞれ予め決められたインク流量を表す定数であり、Q1およびQ2はQ2>Q1を満たす。
【0086】
制御部40は、η≦η1の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0+Q2と設定する。制御部40は、η1<η≦η2の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0+Q1と設定する。制御部40は、η2<η≦η3の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0と設定する。制御部40は、η3<η≦η4の場合、待機時インク流量QstandbyをQ0-Q1と設定する。制御部40は、η4<ηの場合、待機時インク流量QstandbyをQ0-Q2と設定する。
【0087】
インク粘度に応じて循環流量を制御することで、インクの循環を円滑に行い、インクの射出動作を安定させ、印刷品質を向上させることができる。
【0088】
(2)上述の実施の形態における印刷待機時のインク流量Qstandbyは、予め決定された一定値であるが、待機時インク流量Qstandbyは、待機時インク流量を指示するユーザー入力に応じて決定してもよい。図13は、ユーザー入力に応じて待機時インク流量を変更するインク流量制御の制御ブロック図である。制御部40は、操作パネル81から待機時インク流量を指示するユーザー入力を受信し、受信したユーザー入力に基づいて待機時インク流量Qstandbyを設定する。
【0089】
ユーザー入力は、待機時インク流量の絶対量を指定する形式で入力を受け付けてもよい。例えば、操作パネル81に待機時インク流量について「多い」「多め」「標準」「少な目」「少ない」等の複数段階の項目から選択する選択を表示し、選択された項目に応じた待機時インク流量Qstandbyを設定してもよい。「多い」が選択された場合待機時インク流量QstandbyをQ0+Q2と設定する。同様に、「多め」、「標準」、「少な目」、「少ない」が選択された場合、待機時インク流量QstandbyをそれぞれQ0+Q1、Q0、Q0-Q1、Q0-Q2に設定する。ここで、Q0、Q1、Q2はそれぞれ予め決められたインク流量を表す定数であり、Q1およびQ2はQ2>Q1を満たす。
【0090】
ユーザー入力は、現在の待機時インク流量からの相対変化量を指定する形式で受け付けてもよい。例えば、操作パネル81に、現在の待機時インク流量を表示すると共に、待機時インク流量を「多くする」か「少なくする」かを指定するユーザー入力を受け付け、受け付けたユーザー入力に従って待機時インク流量を設定してもよい。すなわち、現在の待機時インク流量QstandbyがQ0のときに待機時インク流量を「多くする」ユーザー入力を受け付けた場合は、待機時インク流量QstandbyをQ0+Q1に設定し、「少なくする」ユーザー入力を受け付けた場合は、待機時インク流量QstandbyをQ0-Q1に設定するとしてもよい。ここで、Q1はそれぞれ予め決められたインク流量を表す定数である。
【0091】
(3)上述のインク循環機構300において、インクジェットヘッド51から第2サブタンク56に回収されたインクをメインタンク54に供給する構成としているが、これに限られない。図14に示すインク循環機構400のように、第1サブタンク55と第2サブタンク56とを接続する経路401を備え、インクジェットヘッド51から第2サブタンク56に回収されたインクを第1サブタンク55に供給するとしてもよい。
【0092】
(4)上述の実施の形態では、空圧制御部65、66により、第1サブタンク55の空気層55b、第2サブタンク56の空気層56の空圧を制御し、空気層55b、56bの差圧によりインクの循環流量を制御する構成としていたが、インクジェットヘッド51のインク供給口512に液体ポンプを備え、液体ポンプの送液圧力により、インク室513に流入するインクの量を調整してもよい。また、インクジェットヘッド51のインク排出口512に液体ポンプを備え、液体ポンプの送液圧力により、インク室513から排出されるインクの量を調整してもよい。
【0093】
(5)上記実施の形態において、印刷装置1は、記録媒体Pの幅方向について、記録媒体Pの全体をカバーする幅に設けられたヘッドユニット24に、複数のインクジェットヘッド51を配列して構成されたシングルパス方式(ラインヘッド方式)のインクジェット印刷装置として説明したが、マルチパス方式(シリアルヘッド方式)のインクジェット印刷装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示は、インクジェット方式の印刷装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 給紙部
20 画像形成部
30 排紙部
40 制御部
24 ヘッドユニット
51 インクジェットヘッド
53 インクタンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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