(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188513
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】インジェットヘッドモジュール保持構造体、インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
B41J2/01 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096607
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA22
2C056FA13
2C056HA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】上部空間が開放していない作業場所において、ノズル吐出面の周囲に位置する部位を弾性付勢して、載置台にインクジェットヘッドモジュールを保持させる保持構造体を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッドモジュールの前記載置台寄りの周縁一部には、押圧部材1125が当接していてインクジェットヘッドモジュールは載置台1001に押圧付勢されている。押圧部材1125による押圧付勢、非付勢は作業者による操作レバーに対する操作で切り替えられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドモジュールを載置台に保持するインクジェットヘッドモジュール保持構造体であって、
前記インクジェットヘッドモジュールの前記載置台寄りの周縁一部に当接して前記インクジェットヘッドモジュールを載置台に押圧付勢する押圧部と、
前記押圧部の押圧付勢、非付勢を切り替える操作部とを備え、
前記操作部は、インクジェットヘッドモジュールを載置台に載置する作業中、インクジェットヘッドモジュールの周縁よりも外側に存在している
ことを特徴とするインクジェットヘッドモジュール保持構造体。
【請求項2】
前記操作部は、長尺状の操作レバーを含み、前記押圧部は、押圧レバーと、押圧レバーの先端側に設けられ、弾性部材を介して弾性付勢された押圧部材とを含み、
前記押圧レバーの基端は前記操作レバー上に固設されている
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドモジュール保持構造体。
【請求項3】
前記操作レバーは、その基端側がインクジェットヘッドモジュール周縁よりも外側で載置台に軸支されており、その軸周りに操作レバーを揺動させると、前記押圧レバーが、インクジェットヘッドモジュールの外縁を包絡する空間に進入し、インクジェットヘッドモジュールの前記周縁を横切って前記押圧部材が前記インクジェットヘッドモジュールの周縁一部を載置台に弾性押圧する
ことを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッドモジュール保持構造体。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドモジュールは、ノズルを含むヘッド本体部と、ヘッド本体部の前記載置台寄りの位置から延出されたブラケットと、モジュール本体上から側方へ突出した状態で設けられた流路部材とを含み、前記インクジェットヘッドモジュールの外縁を包絡する空間は、ブラケット及び流路部材を包絡して直方体形状をなし、前記押圧レバーは、ブラケットと、流路部材とが上下に対向する包絡空間内の空所を通過する
ことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッドモジュール保持構造体。
【請求項5】
前記押圧レバーと押圧部材とが接触する状態にまで前記弾性部材が弾性圧縮して、押圧レバーがインクジェットヘッドモジュールの周縁を押圧して、その後押圧部材がインクジェットヘッドモジュールの周縁を弾性付勢する状態になる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のインクジェットヘッドモジュール保持構造体。
【請求項6】
前記操作レバーは、作業者により把持される把持部を有し、
前記操作レバーの軸支位置から押圧部材までの操作レバー長手方向に沿う距離よりも軸支位置から握り部の距離の方が長い
ことを特徴とする請求項3~5の何れかに記載のインクジェットヘッドモジュール構造体。
【請求項7】
前記操作部はさらにロックレバーを含み、ロックレバーは、前記操作レバー上であって、前記押圧レバーの取り付け位置とは離れた個所から延出されている
ことを特徴とする請求項2~6の何れかに記載のインクジェットヘッドモジュール保持構造体。
【請求項8】
前記ロックレバーの延出端には係止爪が形成され、他方、前記ロックレバーの係止爪が近接するインクジェットヘッドモジュールの上部に横架された構成部材に被係止部が形成されており、操作レバーを揺動させて、押圧部材により前記周縁一部を載置台に弾性押圧した状態において、前記係止爪が被係止部に係止し、ロック状態になる
ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッドモジュール構造体。
【請求項9】
前記操作レバーは、基端を中心に揺動自在であると共に、スライド自在に構成され、操作レバーの揺動により、前記押圧レバーを、インクジェットヘッドモジュールの周縁を横切ってインクジェットヘッドモジュールの外縁を包絡する空間に進入し、操作レバーのスライドにより、押圧部材が前記周縁一部を載置台に弾性押圧する
ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェットヘッドモジュール保持構造体。
【請求項10】
前記ロックレバーは、先端に係止爪を有し、操作レバーを下方にスライドさせて、押圧部材が周縁一部を載置台に押圧した状態で、前記ロックレバーの係止爪が、インクジェットヘッドモジュールの上部に横架された構成部材の先端に係止されている
ことを特徴とする請求項9に記載のインクジェットヘッドモジュール構造体。
【請求項11】
前記操作レバーは載置台の側面に軸支されており、
前記操作レバーの軸支位置から押圧部材までの操作レバー長手方向に沿う距離よりも軸支位置からロックレバーの係止爪による係止部位までの距離の方が長く設定されている
ことを特徴とする請求項7~10の何れかに記載のインクジェットヘッドモジュール構造体。
【請求項12】
前記押圧レバーは筒状であり、長尺のロックレバーが挿通されており、
前記ロックレバーによるロック状態は、操作レバーを揺動させて、押圧部材により周縁一部を載置台に弾性押圧した状態において、前記操作レバーに対してロックレバーをロックレバー先端が押圧レバーよりもさらに突出するようスライドさせ、載置台から立設された補強部材に開設した孔に挿入することにより行われる
ことを特徴とする請求項2~6の何れかに記載のインクジェットヘッドモジュール構造体。
【請求項13】
記録媒体を搬送し、搬送される記録媒体に対して、インクジェットを用いた画像形成を行うインクジェット記録装置であって、
載置台と、インクジェットヘッドモジュールと、インクジェットヘッドモジュールに加熱されたインクを供給するインク供給部と、請求項1に記載のインクジェットヘッドモジュール保持構造体と
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記インクジェットヘッドモジュールは、複数のインクジェットヘッドと、載置台の上方に設けられ、隣接するインクジェットヘッドモジュールとの間で、インクの受け渡しをするための流路部材とを含み、
前記載置台には所定間隔を開けて上部構成部材が配されており、上部構成部材は、上部流路部材を支持し、
前記押圧部により弾性付勢される周縁一部は、上部流路部材及び上部構成部材の下方にある
ことを特徴とする請求項13に記載のインクジェット記録装置。
【請求項15】
前記インクジェットヘッドモジュール保持構造の押圧部は、着脱可能な態様で、載置台に装着されている
ことを特徴とする請求項13~14の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項16】
前記複数のインクジェットヘッドモジュールが列状をなして載置台に配置された構造において、各インクジェットヘッドモジュールのノズル周囲部の、インクジェットヘッドモジュールの並び方向における両側部分を載置台に押圧するよう、インクジェットヘッドモジュールごとに一対の押圧部並びに操作部が設けられている
ことを特徴とする請求項13~15の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記一対の押圧部並びに操作部におけるそれぞれの押圧部は個別、又は、連動して、対応するインクジェットヘッドモジュールの周縁一部を押圧する
ことを特徴とする請求項16に記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
複数のインクジェットヘッドモジュールが列状をなして載置台に配置された構造において、各インクジェットヘッドモジュールの周縁一部の、インクジェットヘッドモジュールの並び方向における一方側部分を載置台に押圧するよう、インクジェットヘッドモジュールごとに押圧部並びに操作部が設けられている
ことを特徴とする請求項13~15の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項19】
前記インクジェットヘッドモジュールを載置台に弾性押圧して取り付けた状態において、インクジェットヘッドモジュールの載置台に対する取り付け位置を調 整する位置調整機構を備える
ことを特徴とする請求項13~18の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項20】
前記インクジェットヘッドモジュールの周縁一部から一対のピンが突出しており、
前記位置調整機構は、一対のピンが挿入される一対の挿通部を有し、当該一対の挿通部のうち少なくとも一方は載置台においてインクジェットヘッドモジュールの並び方向に対して直交する方向に摺動自在に載置台に支持されている
ことを特徴とする請求項19に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェットヘッドモジュールを載置台に保持するインクジェットヘッドモジュール保持構造体、並びに、そのような保持構造体を具備したインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドモジュールは、例えば、2基のヘッド本体部を束ねて、これらの周面をアルミ板金の外装体で覆い、流路部材及びブラケットを一体化したものである。ヘッド本体部はその内部に貯留部を備え、流路部材から供給されたインクを貯留部に貯留した後、加熱や加圧の手法によって、底面のノズルからインクを吐出する。この際、流路部材からはインクが熱された状態で供給されるから、当該インクの熱量により、外装体が熱膨張する。そのため、ねじ止めにより、インクジェットヘッドモジュールを堅固に載置台に固定すると、外装体の伸び縮みを逃がすことができない。
【0003】
外装体の伸び縮みを逃がすため、インクジェットヘッドモジュールと、載置台との遊びを残してインクジェットヘッドモジュールを載置台に載置する必要がある。また、熱膨張に限らず、撓みや加工精度などで載置台が反りかえっていて、そのままインクジェットヘッドモジュールの底面板を堅固に固定したらインクジェットヘッドモジュールの底面板が載置台の形状にならうように反ってしまう場合がある。
【0004】
そこで従来のインクジェット記録装置では、コイルバネの弾性力と、ネジの螺入により、インクジェットヘッドモジュールを載置台に保持させている。特許文献1に記載されたインクジェット記録装置では、ねじ軸に、ねじ頭部よりも小径のコイルバネと、コイルバネよりも大径のワッシャーとをこの順に挿入した構成の押圧部材を用いる。
【0005】
インクジェットヘッドモジュールのブラケットをワッシャと載置台との間に挟みつつ、ネジの先頭を載置台のネジ穴にはめ込むことでコイルバネの弾性力によりインクジェットヘッドモジュールを載置台に押圧する。こうした押圧部材の利用により、インクの通過による外装体の熱膨張を吸収しつつも、載置台にインクジェットヘッドモジュールを保持させ、またその保持状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
押圧部材であるねじバネのネジ軸を載置台に螺入するには、インクジェットヘッドモジュールが載置された状態の載置台においてネジ締め作業を行う必要がある。こうしたネジ締め作業は、上方が開放した作業スペースで作業を行うことが望ましい。ねじバネの上下動やネジ軸の位置合わせ、ねじ回しがスムーズに行えるからである。
【0008】
しかし、インクジェット記録装置におけるインクジェットヘッドモジュールの載置では、上方が開放した作業スペースを確保することができない。何故なら、インクジェットヘッドモジュールの流路部材には、インクジェットヘッドモジュールの上部に設けられ、隣接するインクジェットヘッドモジュールとの間で、インクの受け渡しを行うものがあり、こうして上部に設けられた流路部材が、ねじ締めを行うべき場所の上方の空間を占有するからである。ねじ・工具をつかんだ指を上下動させるスペースがないので、ねじ締め作業が一向に捗らず、作業性が悪いという問題がある。
【0009】
本開示の目的は、上部空間が開放していない作業場所において、ノズル吐出面の周囲に位置する部位を弾性付勢して、載置台にインクジェットヘッドモジュールを保持させることができる、インクジェットヘッドモジュール保持構造体、インクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、インクジェットヘッドモジュールを載置台に保持するインクジェットヘッドモジュール保持構造体であって、前記インクジェットヘッドモジュールの前記載置台寄りの周縁一部に当接して前記インクジェットヘッドモジュールを載置台に押圧付勢する押圧部と、前記押圧部の押圧付勢、非付勢を切り替える操作部とを備え、前記操作部は、インクジェットヘッドモジュールを載置台に載置する作業中、インクジェットヘッドモジュールの周縁よりも外側に存在していることを特徴とするインクジェットヘッドモジュール保持構造体により解決される。
【0011】
前記操作部は、長尺状の操作レバーを含み、前記押圧部は、押圧レバーと、押圧レバーの先端側に設けられ、弾性部材を介して弾性付勢された押圧部材とを含み、前記押圧レバーの基端は前記操作レバー上に固設されているとしてもよい。
【0012】
前記操作レバーは、その基端側がインクジェットヘッドモジュール周縁よりも外側で載置台に軸支されており、その軸周りに操作レバーを揺動させると、前記押圧レバーが、インクジェットヘッドモジュールの外縁を包絡する空間に進入し、インクジェットヘッドモジュールの前記周縁を横切って前記押圧部材が前記インクジェットヘッドモジュールの周縁一部を載置台に弾性押圧するとしてもよい。
【0013】
前記インクジェットヘッドモジュールは、ノズルを含むヘッド本体部と、ヘッド本体部の前記載置台寄りの位置から延出されたブラケットと、モジュール本体上から側方へ突出した状態で設けられた流路部材とを含み、前記インクジェットヘッドモジュールの外縁を包絡する空間は、ブラケット及び流路部材を包絡して直方体形状をなし、前記押圧レバーは、ブラケットと、流路部材とが上下に対向する包絡空間内の空所を通過するとしてもよい。
【0014】
前記押圧レバーと押圧部材とが接触する状態にまで前記弾性部材が弾性圧縮して、押圧レバーがインクジェットヘッドモジュールの周縁を押圧して、その後押圧部材がインクジェットヘッドモジュールの周縁を弾性付勢する状態になるとしてもよい。
【0015】
前記操作レバーは、作業者により把持される把持部を有し、前記操作レバーの軸支位置から押圧部材までの操作レバー長手方向に沿う距離よりも軸支位置から握り部の距離の方が長いとしてもよい。
【0016】
前記操作部はさらにロックレバーを含み、ロックレバーは、前記操作レバー上であって、前記押圧レバーの取り付け位置とは離れた個所から延出されているとしてもよい。
【0017】
前記ロックレバーの延出端には係止爪が形成され、他方、前記ロックレバーの係止爪が近接するインクジェットヘッドモジュールの上部に横架された構成部材に被係止部が形成されており、操作レバーを揺動させて、押圧部材により前記周縁一部を載置台に弾性押圧した状態において、前記係止爪が被係止部に係止し、ロック状態になるとしてもよい。
【0018】
前記操作レバーは、基端を中心に揺動自在であると共に、スライド自在に構成され、操作レバーの揺動により、前記押圧レバーを、インクジェットヘッドモジュールの周縁を横切ってインクジェットヘッドモジュールの外縁を包絡する空間に進入し、操作レバーのスライドにより、押圧部材が前記周縁一部を載置台に弾性押圧するとしてもよい。
【0019】
前記ロックレバーは、先端に係止爪を有し、操作レバーを下方にスライドさせて、押圧部材が周縁一部を載置台に押圧した状態で、前記ロックレバーの係止爪が、インクジェットヘッドモジュールの上部に横架された構成部材の先端に係止されているとしてもよい。
【0020】
前記操作レバーは載置台の側面に軸支されており、前記操作レバーの軸支位置から押圧部材までの操作レバー長手方向に沿う距離よりも軸支位置からロックレバーの係止爪による係止部位までの距離の方が長く設定されているとしてもよい。
【0021】
前記押圧レバーは筒状であり、長尺のロックレバーが挿通されており、前記ロックレバーによるロック状態は、操作レバーを揺動させて、押圧部材により周縁一部を載置台に弾性押圧した状態において、前記操作レバーに対してロックレバーをロックレバー先端が押圧レバーよりもさらに突出するようスライドさせ、載置台から立設された補強部材に開設した孔に挿入することにより行われるとしてもよい。
【0022】
また上記の課題は、記録媒体を搬送し、搬送される記録媒体に対して、インクジェットを用いた画像形成を行うインクジェット記録装置であって、載置台と、インクジェットヘッドモジュールと、インクジェットヘッドモジュールに加熱されたインクを供給するインク供給部と、前記インクジェットヘッドモジュール保持構造体とを備えることを特徴とするインクジェット記録装置により解決してもよい。
【0023】
前記インクジェットヘッドモジュールは、複数のインクジェットヘッドと、載置台の上方に設けられ、隣接するインクジェットヘッドモジュールとの間で、インクの受け渡しをするための流路部材とを含み、前記載置台には所定間隔を開けて上部構成部材が配されており、上部構成部材は、上部流路部材を支持し、前記押圧部により弾性付勢される周縁一部は、上部流路部材及び上部構成部材の下方にあるとしてもよい。
【0024】
前記インクジェットヘッドモジュール保持構造の押圧部は、着脱可能な態様で、載置台に装着されているとしてもよい。
【0025】
複数のインクジェットヘッドモジュールが列状をなして載置台に配置された構造において、各インクジェットヘッドモジュールのノズル周囲部の、インクジェットヘッドモジュールの並び方向における両側部分を載置台に押圧するよう、インクジェットヘッドモジュールごとに一対の押圧部並びに操作部が設けられているとしてもよい。
【0026】
前記一対の押圧部並びに操作部におけるそれぞれの押圧部は個別、又は、連動して、対応するインクジェットヘッドモジュールの周縁一部を押圧するとしてもよい。
【0027】
複数のインクジェットヘッドモジュールが列状をなして載置台に配置された構造において、各インクジェットヘッドモジュールの周縁一部の、インクジェットヘッドモジュールの並び方向における一方側部分を載置台に押圧するよう、インクジェットヘッドモジュールごとに押圧部並びに操作部が設けられているとしてもよい。
【0028】
前記インクジェットヘッドモジュールを載置台に弾性押圧して取り付けた状態において、インクジェットヘッドモジュールの載置台に対する取り付け位置を調整する位置調整機構を備えるとしてもよい。
【0029】
前記インクジェットヘッドモジュールの周縁一部から一対のピンが突出しており、位置調整機構は、一対のピンが挿入される一対の挿通部を有し、当該一対の挿通部のうち少なくとも一方は載置台においてインクジェットヘッドモジュールの並び方向に対して直交する方向に摺動自在に載置台に支持されているとしてもよい。
【発明の効果】
【0030】
インクジェットヘッドモジュールの載置台寄りの周縁一部の押圧付勢、非付勢はインクジェットヘッドモジュール側面外縁よりも外側に存在する操作部によって切り替えられるから、弾性付勢すべき箇所の上部空間が開放されていなくても、インクジェットヘッドモジュールにおいて、周縁一部を弾性付勢する作業を、効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本開示にかかるモジュール保持構造体を具備したインクジェット記録装置1の全体構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、第1実施形態にかかるインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100の構成を示す斜視図である。
図3(b)は、押圧部材1125の断面図である。
【
図4】
図4(a)は、X-Z平面における補強壁1010、歯状部1011の側面図である。
図4(b)は、インクジェットヘッドモジュール保持構造体1100が弾性付勢に切り替えられた状態を示す。
【
図5】インジェットヘッドモジュール保持構造体1100、1200が、インクジェットヘッドモジュール2100の両側を弾性付勢している状態を示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態におけるインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100の斜視図である。
【
図7】
図7(a)は、X-Z平面における第2実施形態の歯状部1011の側面図である。
図7(b)は、係止爪1131を長孔1141の上端に位置させて作業者が操作レバー1111を回すことで操作レバー1111をZ軸と並行な姿勢にした状態を示す。
図7(c)は、操作レバー1111がZ軸と並行な姿勢になっている状態で、長孔1141の上端から下端へと軸体1113をスライド移動させた状態を示す。
【
図8】第2実施形態におけるインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100の斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、第3実施形態にかかる歯状部1011のX-Z平面における側面図である。
図9(b)は、ロッド1152のうち、ロッド端部1154を除く部分を押圧レバー1151の筒部に収容した状態を示す。
図9(c)は、操作レバー1116がZ軸と並行な姿勢になり、押圧レバー1151がX軸と並行な姿勢になった状態を示す。
【
図10】
図10(a)~(d)は、押圧部材1125の変形例、
図10(e)は、ロックレバー1130の変形例を示す図である。
【
図11】インクジェットヘッドモジュール2100の底面に取り付けられるノズル保持板2105と、載置台1001におけるインクジェットヘッドモジュール2100の載置場所とを示す。
【
図12】操作レバー1111、1211をハンドルで連結して、インジェットヘッドモジュール保持構造体1100、1200を一括操作する構成例を示す。
【
図13】
図13(a)は、反り返った状態の載置台1001に、インクジェットヘッドモジュールを取り付けた状態を示す。
図13(b)は、第1~第3実施形態にかかる押圧部材1126を用いて反り返った状態の載置台1001に、インクジェットヘッドモジュールを弾性押圧する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、インクジェットヘッドモジュール保持構造体及びインクジェットヘッドモジュール保持構造体を具備したインクジェット記録装置の実施形態について説明する。
【0033】
[1]インクジェット記録装置
本開示にかかるインクジェット記録装置の構成を
図1に示す。
図1は、本開示にかかるモジュール保持構造体を具備したインクジェット記録装置1の全体構成を示す図である。本図のX軸方向は、記録媒体の搬送方向、Z軸は高さ方向、Y軸は奥行き方向を示す。本図に示すインクジェット記録装置は、YMCK色の画像形成ユニットである画像形成ユニット32Y、M、C、Kを含む。画像形成ユニット32Y、M、C、Kのそれぞれは、8基(=4×2基)のインクジェットヘッドモジュールの配列と、各インクジェットヘッドモジュールに加熱したインクを供給するインク供給部とを含む。それぞれのインクジェットヘッドモジュールは、例えば、1024個のノズルを有し、1インチ当たり360ノズルの解像度により、記録媒体に所望の画像を形成する。記録媒体としては、種々の厚さの印刷用紙、セル、フィルムや布帛など種々のものが用いられ得る。
【0034】
図1に示すように媒体供給トレー11に載置された記録媒体のうち一番上のものを繰り出し、ローラー21、22の回転によるベルト23の周回移動、爪部24による一端把持を通じて、画像形成ドラム31に受け渡す。
【0035】
画像形成ユニット32Y、M、C、Kは、画像形成ドラム31の外周面から予め設定された距離だけ離隔した位置に、画像形成ドラム31の回転方向に沿って、所定の間隔で配置されている。画像形成ユニット32Y、M、C、Kにより画像が形成された後、ローラー41、42の回転によるベルト43の周回移動を経て、記録媒体Mは排出トレイ44に引き渡される。
【0036】
[2]画像形成ユニットの構成
画像形成ユニット32Y、M、C、Kは何れも、
図2に示す載置台1001を有する。
図2は、載置台1001を示す斜視図であり、本図においてY軸は、記録媒体の主走査方向、Z軸は高さ方向、X軸方向は記録媒体の搬送方向である。載置台1001は長尺形状であり、短尺方向の両側には長手方向の端縁に上方に90°に切り起こした立壁1006が形成されていて、長尺方向に沿って、補強壁1010が立設されている。補強壁1010の上には、上部構成部材1005が架設されている。上部構成部材1005は、櫛歯形状であり、短尺方向に突出した歯状部1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017、1018、1019を含む。上部構成部材1005における1つの歯状部と、長手方向の隣の歯状部とは所定の間隔が設けられており、4×2個のインクジェットヘッドモジュールのそれぞれが配されている。
【0037】
上部構成部材1005において、1つの歯状部は、それぞれのインクジェットヘッドモジュールの上部流路部材を支える役目をもつ。また、それぞれの歯状部の内部にはインクの連結路部材(不図示)が形成されており、例えば、
図2において載置台1001に載置されているインクジェットヘッドモジュール2400については、上部流路部材2415と、歯状部1014の連結路部材とを連通させることで、1のインクジェットヘッドモジュール2400と、その隣のインクジェットヘッドモジュールとのインクの受け渡しを行う。
【0038】
歯状部1014によって支えられることで、上部流路部材2415は、ヘッド本体部2401からY軸方向に延出する姿勢になっている。この際、ブラケット2411、2421もZ軸方向の下部からY軸方向に延出している。上部流路部材、ブラケットがY軸方向に延出しているため、インクジェットヘッドモジュールは、上部流路部材と、ブラケットとを包絡した直方体形状の空間2300を占有することになる。上部構成部材が延出しているとはいえ、歯状部1014と、ブラケット2411、2421とが対向している部分に押圧部材の移動を遮るものはない。そこで本実施形態では、載置台1001の立壁1006にインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100、1200、1300、1400を設け、インクジェットヘッドモジュールの外縁を包絡する空間の外側からの操作により、インクジェットヘッドモジュールの弾性押圧を実現することにしている。
【0039】
[3]インクジェットヘッドモジュール保持構造体の構成
図3(a)、
図4(a)を用いてインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100について説明する。
図3(a)は、第1実施形態にかかるインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100の構成を示す斜視図である。これらに示すようにインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100は、操作部1110、押圧部1120を備える。尚、インクジェットヘッドモジュール保持構造体1200、1300、1400は、インクジェットヘッドモジュール保持構造体1100と同一構成であるから、説明を省略する。
【0040】
(3-1)操作部1110
操作部1110は、長尺形状の操作レバー1111、アングル軸受け1112、軸体1113、ロック部材(ロックレバー1130、係止爪1131からなる)を備える。
アングル軸受け1112は、載置台1001の立壁1006に取り付けられており(
図2参照)、アングル軸受け1112と、操作レバー1111の基端に形成された貫通孔(図示せず)とに軸体1113が挿通され、軸支されることで、操作レバー1111は揺動自在になっている。ロック部材については後で説明する。
【0041】
(3-2)押圧部1120
押圧部1120は、押圧レバー1121、ピン1122、押圧部材1125を含み、インクジェットヘッドモジュール2100の周縁の一部を押圧する。ここでインクジェットヘッドモジュールの周縁の一部とは、
図2に示すインクジェットヘッドモジュール2400のブラケット2111、2121のY軸方向における中央位置、又は、その周囲である(以下、モジュール周縁部2106と呼ぶ)。
【0042】
押圧レバー1121は、その基端が、操作レバー1111の基端に近い位置で固設されており、遊端側からはZ軸方向の下側に向けてピン1122が突出していて、ピン1122の先端に押圧部材1125が設けた構成になっている。押圧部材1125は、
図3(b)の断面図に示すように、円筒部1127の一方側端面を半球部1126で閉じ、他方端面を円盤体1128で閉じて、円盤体1128の開口1128Hによりピン1122を挿通した構成になっている。
【0043】
円筒部1127の内部はコイルバネ1124の収容空間になっている。ピン1122の先端は平板形状(平板1123)になっており、押圧部材1125は、コイルバネ1124の上端を平板1123で固定して、コイルバネ1124の弾性力を、押圧部材1125を突出させる方向に作用させている。円筒部1127の長さは、最大限に縮退したコイルバネ1124の長さと、ピン1122の長さとの和を上回る値に設定されている。コイルバネ1124の縮退時において、作業者が押圧レバー1121に印加した外力を直接、モジュール周縁部2106に作用させるためである。
【0044】
(3-3)ロック部材
ロック部材は、ロックレバー1130と、係止爪1131とで構成される。
【0045】
ロックレバー1130は、操作レバー1111の遊端近くから延出していて、その先端に係止爪1131が設けられてある。操作レバー1111の遊端側を切り欠いて薄肉部1114を構成し、薄肉部1114にロックレバー1130の基端を位置させており、薄肉部1114とロックレバー1130の基端とにピン1115が挿通されることでロックレバー1130は、
図3に実線で示す水平姿勢から上方に揺動自在になっている。
【0046】
係止爪1131は、歯状部1011のX軸方向の先端に設けられた被係止爪1021(
図2、
図4(a)参照)と係合するためのもので、作業者が操作レバー1111を回してZ軸方向と並行姿勢にした場合、係止爪1131と、歯状部1011の被係止爪1021とが係合状態になる。
【0047】
[4]作業者が行う作業
図4(a)、
図4(b)、
図5を用いて、作業者が行うべき作業について説明する。作業者が行うべき作業は、載置台1001に、インクジェットヘッドモジュール1100を載置させる内容のもので、インジェットヘッドモジュール保持構造体1110を用いた弾性付勢を含む。初期状態は、
図4(a)のインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100の通りであり、操作レバー1111は略水平に倒れている。
図4(a)、(b)では載置台1001、上部構成部材1011を、X軸方向と平行としている。これは一例であり、載置台1001、上部構成部材1011は、同じ所定の角度でX軸に対し傾斜をなす場合もある。後述する
図7、
図9も同様である。
【0048】
この状態は、操作レバー1111をはじめ係止爪1131、押圧部材1125も同じであり、これらは何れも載置台1001よりも外側に存在している。
図4(a)に示すようにインクジェットヘッドモジュール2100を傾けて斜め上から載置台1001に載置し、その後、インクジェットヘッドモジュール2100を直立姿勢にする。作業者が操作レバー1111を時計周りro1に回すと、それに伴い押圧レバー1121が回動して、押圧部材1125がインクジェットヘッドモジュール2100の外縁を包絡する直方体形状の空間内に進入する。このとき操作レバー1111の基端が
図5に示すようにインクジェットヘッドモジュール2100のブラケット2111と、Y軸方向において略同一位置の立壁1006の一部に取着してあるので、押圧部材1125は、上記した包絡空間内であって、かつ、上部流路部材2115とブラケット2111、2121とが上下対向している空間内に進入し、そのまま押圧レバー1121の回動に伴って回動しモジュール周縁部2106に当接する。
【0049】
操作レバー1111を更に時計周りro1に回動すると、押圧部材1125内のコイルバネ1124が圧縮され、その反力によってブラケット2111、2121が載置台1001に弾性押圧される。Z軸方向に並行になるまで操作レバー1111を回動すると、コイルバネ1124が最大に圧縮される。このとき押圧部材1125の上端面を固定する円盤体1128が押圧レバー1121の下面に当接している。と同時にロックレバー1130の係合爪1131が歯状部1011先端の被係止爪1021にまで進んでいて双方が係合状態に転じる。この結果、係止爪1131、被係止爪1021の係合状態を解除しない限りコイルバネ1124の圧縮に伴うブラケット2111への押圧力が維持されることになる。
【0050】
以上でインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100を用いた弾性付勢は完了する。
図5に示すように同様の作業を、インクジェットヘッドモジュール保持構造体1200についても行えば、インクジェットヘッドモジュール2100は、両側から弾性付勢され、インクジェットヘッドモジュール2100は、載置台1001に保持された状態になる。
【0051】
インクジェット記録装置による印刷が開始され、加熱されたインクが、インクジェットヘッドモジュール2100に供給されて、インクジェットヘッドモジュール2100が熱膨張したとしても、係止爪1131によりロックされた押圧部材1125は、押圧レバー1121による押圧時のコイルバネ1124の長さに応じた弾性力をモジュール周縁部2106に印加し続けるから、載置台1001に載置された状態のインクジェットヘッドモジュール2100の姿勢を安定させることができる。
【0052】
操作レバー1111は、アングル軸受け1112内に形成された貫通孔と、操作レバー1111の基端に形成された貫通孔とに軸体1113が挿通されることで、揺動自在な態様で、載置台1001に軸支されている。そのため、アングル軸受け1112から軸体1113を抜き取り、載置台1001からインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100を取り去って、インクジェットヘッドモジュール保持構造体1100を載置台1001から分離してもよい。
【0053】
[5]まとめ
以上のように本実施形態によれば、押圧部材1125によるインクジェットヘッドモジュール2100の弾性付勢、非付勢の切り替えは、載置台1001においてインクジェットヘッドモジュールが占有する空間の外側に位置する操作レバー1111に対する操作でなされるから、載置台1001の上部が流路部材により占有されていたとしても、支障なく、押圧部材1125による弾性付勢、非付勢の切り替えが可能になり、弾性付勢のために作業者はネジ締めを行う必要はない。載置台1001からのインクジェットヘッドモジュールの取り付け、取り外しが簡易に行えるので、ノズル吐出面のメンテナンスを高頻度に行うことができ、インクジェット記録装置による印刷品位を高めることができる。
【0054】
[6]第2実施形態
第1実施形態では、操作レバー1111の揺動によって、押圧部材1125による弾性押圧と、ロックレバー1130による係止とを行った。これに対して第2実施形態は、操作レバー1111の揺動と、スライド移動とによって、押圧部材1125による弾性押圧と、ロックレバー1130による係止とを実現する。
図6、
図7(a)を用いて第2実施形態にかかるインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100を説明する。第2実施形態における操作レバー1111は、基端に長孔1141が形成されていて、長孔1141と、アングル軸受け1112とに軸体1113が挿通した構成になっている。
【0055】
操作レバー1111の遊端側には、係合レバー1142が設けられている。係止爪レバー1142の基端はピン1115を用いて操作レバー1111に軸着されている。長孔1141の長さ及び係合レバー1142の長さはそれぞれ次の関係を保つよう設定されている。即ち、
図7(a)に示す初期状態から操作レバー1111をZ軸方向と並行となる姿勢まで回動した後、操作レバー1111を押し下げる(
図7(b))。アングル軸受け1112が長孔1141内でその上端に達すると、係合レバー1142の係止爪が歯状部1011の延出端の下面に係合する(
図7(c))。作業者がそのまま操作レバー1111から手を放すと、押圧部材1125のコイルバネ1124の弾性復元力によって係合状態が維持される。
【0056】
長孔1141及び係合レバー1142の長さが、上記のような関係を保つよう設定されていれば、第1実施形態と同様に操作レバー1111を、インクジェットヘッドモジュール2100の包絡空間の外側で操作するだけで押圧作業を遂行することができる。
【0057】
[7]第3実施形態
第1実施形態では、ロック部材(
図3に示したロックレバー1130、係止爪1131)と、押圧レバーとを操作レバー1111の別々の位置に設けていた。これに対し第3実施形態は、押圧レバーを筒状とするとともに、操作レバーに貫通孔を設け、当該押圧レバーの貫通孔と、操作レバーの貫通孔とで、ロック部材を支持する。
図8の斜視図を用いて第3実施形態にかかるインクジェットヘッドモジュール保持構造体1100を説明する。
【0058】
第3実施形態ではロック部材としてロッド状部材(ロッド1152)を用いている。第3実施形態における押圧レバー1151は筒体であり、操作レバー1116には、押圧レバー1151の貫通孔1151Hと連通する貫通孔1116Hが形成されている。ロック部材としてのロッド1152は、貫通孔1151H、貫通孔1116Hに挿通されている。
【0059】
ロッド1152のうち貫通孔1151Hよりも外側(Z軸正方向)には、フランジ状ストッパー1155が設けられている。
【0060】
同様に、ロッド1152の貫通孔1116Hより突出した側(Z軸負方向)に、ストッパリング1156が設けられている。そして、前記フランジ状ストッパ1155と、操作レバー1116の上面1116Sとの間に、ロッド1152に外装された状態で、コイルバネ1153が設けられている。
【0061】
コイルバネ1153は圧縮スプリングであり、弾性復元力をフランジ状ストッパー1155に作用させてロッド1152を上方に押し上げている。フランジ状ストッパー1155よりも上方のロッド端部1154は、後述するように補強壁1010の係止孔(
図9(a)の係止孔1025)に係合する係合部として機能する。この構成のインジェットヘッドモジュール保持構造体を用いて、インクジェットヘッドを保持する作業を、
図9(a)~(c)を用いて説明する。最初、インジェットヘッドモジュール保持構造体1100は、
図9(a)に示すように、操作レバー1116が垂直壁1010と並行に垂下している姿勢であったとする。この時作業者が、操作レバー1116を把持して回動する。ロッド端部1154が押圧レバー1152から大きく突出した状態であると、ロッド1152が歯状部1011と接触してしまうので、作業者は、
図9(b)に示すように後端1157を把持して押圧レバー1152を手前に引き、押圧レバー1151からのロッド1152の突出長を短くする。この状態で歯状部1011との接触を避けつつ、押圧レバー1152を回動する。
【0062】
ロッド1152がX軸と並行姿勢になったときに作業者がそのまま操作レバー1111から手を放すと、コイルバネ1153の付勢力でロッド1152のロッド端部1154が係止孔1025に達して、
図9(c)に示すようにロッド端部1154が係止孔1025と係合する。押圧部材1125のコイルバネ1124の弾性復元力によって係合状態が維持される。
【0063】
[8]変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが本発明は上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり以下の変形例が考えられる。
【0064】
(1)第1から第3実施形態のインジェットヘッドモジュール保持構造体1100は、
図2に示すインクジェットヘッドモジュール2100のうち、下部から両側に突き出たブラケット2111、2112を弾性付勢するとしたが限られない。インクジェットヘッドモジュール2100の底面において、ノズル保持板2105のうちブラケットと重複していない部分を、押圧部材1125で弾性付勢するとしてもよい。
【0065】
(2)梃子の原理の利用により、モジュール周縁部2106を押圧する際の作業者の負担を軽減してもよい。ここで、梃子の原理の利用にあたって、支点は軸体1113の軸心、作用点は押圧部材1125による押圧点となる。この際、支点から力点までの距離を長く確保すれば、操作レバー1111を回転させようとする力(モーメント)は大きなものになる。そこで、操作レバー1111の遊端1114に、力点となる把持部を設け、当該把持部を作業者に把持され、操作レバー1111を回動させる。こうして操作レバー1111に作用するモーメントを大きくすることで、モジュール周縁部2106を強い力で押下することが望ましい。
【0066】
(3)
図4(a)に示した係止爪1131が、被係止爪1021と係合した場合、コイルバネ1124の弾性復元力が大きいと、コイルバネ1124が操作レバー1111を回転させようとするモーメントが大きくなり、係止爪1131の荷重が大きくなる。軸体1113の軸心から押圧部材1125までの直線距離よりも、軸体1113の軸心から係止爪1131までの直線距離を長くし、操作レバー1111の回動時にロックレバー1130にかかる荷重を軽減することが望ましい。こうした荷重軽減により、係止爪1131の高寿命化を図るのが望ましい。
【0067】
(4)
図10(a)に示すように、押圧レバー1121に有底の円形孔を形成して、当該有底円形孔を、コイルバネ1124の固定ばね受けとし、押圧部材1125を付勢してもよい。また、押圧部材1125の先端形状は半球形状に限られない。
図10(b)に示すように筒形状であってもよい。また
図10(c)に示すように、ばねで付勢された球状部材を押圧部材1125としてもよい。
図10(c)では、円筒1127にコイルバネ1191と、可動ばね受け1192と、球状部材1193を収容し、球の球面の一部をカバー1194から露出させている。カバー1194から露出した球面は、押圧レバー1121から露出する。操作レバー1111に対して作業者から外力を受け、モジュール周縁部2106を押圧する。作業者からの外力を受けつづけると、球状部材1193は円筒1127に埋入し、円筒1127が直接、モジュール周縁部2106を押圧する。
【0068】
(5)第1実施形態によるロックレバー1130は自重により揺動して被係止爪1021と係合するとしたが、自重によるロックレバー1130の揺動では係止爪1131が、被係止爪1021に確実に係合しない可能性がある。そこで、
図10(e)に示すように操作レバー1111と、ロックレバー1130とをコイルバネで1133で連結する。コイルバネ1133の弾性復元力により付勢されるから、係止爪1131を、被係止爪1021に確実に係合することができる。
【0069】
(6)特許文献1に記載された位置調整機構を載置台1001に設けて、載置台にインクジェットヘッドモジュールが載置された状態での載置位置を調整してもよい。
図11に、特許文献1に記載された位置調整機構を示す。
図11は斜視図であり、インクジェットヘッドモジュール2100の底面に取り付けられるノズル保持板2105と、載置台1001におけるインクジェットヘッドモジュール2100の載置場所とを示している。本図において位置調整機構は、丸孔1031と、Y軸方向に延伸した長孔1032が形成された調整版1033と、調整ねじ1035とで構成される。調整ねじ1035のネジ頭は目盛りが設けられていて、当該目盛りに併せてネジ頭を回転させることで、調整版1033がX軸方向に変位し、長孔1032に挿通した片側のピン2109が移動する。調整ネジ1035を回す際の移動量は微小なのでピン2109の移動は、直進移動に近似される。調整ネジ1035の回転によりピン2109が直線移動するので、長尺方向に対するインクジェットヘッドモジュール2100の角度が変化させ、インクジェットヘッドモジュール2100の位置調整が可能になる。
【0070】
(7)
図12に示すように操作レバー1111、1211を1つのハンドル1119で連結して、ハンドル1119を回す操作により、操作レバー1111の揺動と、操作レバー1211の揺動とを連動させてもよい。この場合、ハンドル1119を回す操作を一回行えば、操作レバー1111と、操作レバー1211とが揺動するので、操作レバー1111と、操作レバー1211を回動するよりも、インクジェットヘッドモジュール2100の弾性押圧にかかる作業者の手間は少なくなる。
【0071】
(8)第1、第2実施形態では、歯状部1011に被係止部を設けて、係止爪1131を歯状部1011の高さで係止させるとしたがこれに限られない。上部構成部材よりも更に上で、被係止部を設けて当該上部の被係止部において、操作レバーと係止してもよい。上部構成部材をより高くしてより上で、より上部の箇所で操作レバーと係止してもよい。
【0072】
インクジェットヘッドモジュール2100の両側のうち一方側を、本開示のインクジェットヘッドモジュール保持構造体で押さえつつ、他方側を板バネ、又は、ネジ締めで押さえつけてもよい。弾性部材はコイルバネとしたがこれに限られない。板バネ、巻きバネであってもよい。またバネだけでなく、スポンジであってもよい。力量をかせげるものならどれでもよい。エアクッション、油圧、空圧、シリンダでもよい。
【0073】
(9)インクジェットヘッドモジュールの基板を所定の押圧力で押し付ける部材であれば第1実施形態から第3実施形態に開示した以外の押圧であってもよい。揺動と、並進(垂直移動)との組み合わせとすることができる。また、操作レバー1111に対する外力印加により、インクジェットヘッドモジュールのモジュール周縁部2106を弾性押圧する機構であれば、他の機構を利用してもよい。例えば、クランプ機構を採用してもよい。
【0074】
(10)インクジェットヘッドモジュール2100のインクジェットヘッドによるインクの吐出は、どのような手法でなされてよい。例えば、通電により吐出圧力を発生する圧電素子や発熱素子によりインクに圧力をかけて吐出させるもの、静電気力により振動板を変形させてインクを吐出させるものや、静電吐出方式によりインクを吐出させるものなどがある。またインクジェットヘッドモジュール2100は、ハーモニカチップであり、インクの複数の循環流路が合流するフィルタユニットを有するとしていてもよい。
【0075】
(11)操作レバー1111、押圧部1120は、一体成形してもよい。また一体成形に限らず別体構成になっていてもよい。この場合、位置決め位置に力を伝達させる必要がある。また倍力機構を通じて押圧部材、操作レバー1111を連結してもよい。
【0076】
(12)インクジェット記録装置が行う印刷方式は、載置台1001であるヘッドキャリッジを副走査方向に往復運動をさせ、何回かのパスによって画像を完成させる方式(スキャン方式)と、載置台1001を固定したまま、搬送している用紙に1回のパスで画像を完成させる方式(シングルパス方式)の何れであってもよい。
【0077】
(13)
図13(a)に示すように、撓みや加工精度などで載置台1001が反りかえっている場合がある。尚、分かり易くするため、
図13(a)では、載置台1001の反りの大きさを極端に大きく示しているが、実際には目視では反っているかどうか判別がつかない程度の小さいものである。このような反りが生じている場合で、上記第1~第3実施形態において、
図13(b)に示すように押圧部材1125を用いてモジュール保持板2105がたわむことのない範囲の押圧力でモジュール周縁部2106を押圧することで、インクジェットヘッドモジュール保持板2105の平面性を維持したままインクジェットヘッドモジュール1100を載置台1001に保持させることができる。これに対し、
図13(a)のようにネジ2131、2132の螺子止めにより堅固に固定すると、モジュール保持板210が載置台1001の形状にならって反ってしまうが、このような反りの発生は、押圧部材1125を用いることで防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本開示は、載置台へのインクジェットヘッドモジュールの取り付け、載置台からインクジェットヘッドモジュールの取り外しが容易になり、OA機器、情報機器の産業分野を始め、小売業、賃貸業、不動産業、広告業、運輸業、出版業等、様々な業種の産業分野で利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0079】
1001 載置台
1005 上部構成部材
1006 立壁
1010 補強壁
1011 歯状部
1021 被係止爪
1025 係止孔
1031 丸穴
1032 長孔
1033 スライド片
1100 インクジェットヘッドモジュール保持構造体
1110 操作部
1111 操作レバー
1113 軸体
1114 薄肉部
1115 ピン
1116 操作レバー
1120 押圧部
1121 押圧レバー
1124 コイルバネ
1125 押圧部材
1130 ロックレバー
1131 係止爪
1141 長孔
1142 係止爪レバー
1200 インクジェットヘッドモジュール保持構造体