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  • 特開-制御装置 図1
  • 特開-制御装置 図2
  • 特開-制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188516
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096615
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】大宮 裕司
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FG05
5H730XX03
5H730XX12
5H730XX23
5H730XX32
5H730XX48
5H730XX50
(57)【要約】
【課題】過電圧から回路を保護しつつ、コンバータの制御装置の動作を維持する。
【解決手段】制御装置(23)は、電力変換のためのパワー回路(21)と内部電源(22)とを有するコンバータ(20)において、内部電源からの電力供給を受けて、パワー回路を制御する。当該制御装置は、上位ECU(10)と通信する通信手段(233)と、コンバータの出力電圧を検出する検出手段(232)と、検出された出力電圧に基づいて過電圧が検出された場合に、所定のデューティで動作するようにパワー回路を制御する制御手段(231)と、を備える。過電圧が検出された場合、通信手段は、コンバータの状態を示す状態情報を上位ECUに送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換のためのパワー回路と内部電源とを有するコンバータにおいて、前記内部電源からの電力供給を受けて、前記パワー回路を制御する制御装置であって、
当該制御装置よりも上位の装置である上位ECUと通信する通信手段と、
前記コンバータの出力電圧を検出する検出手段と、
前記検出された出力電圧に基づいて過電圧が検出された場合に、所定のデューティで動作するように前記パワー回路を制御する制御手段と、
を備え、
前記検出された出力電圧に基づいて過電圧が検出された場合、前記通信手段は、前記コンバータの状態を示す状態情報を前記上位ECUに送信する
ことを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータの制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、車両用電源装置を構成する電圧変換装置の起動時に、スイッチング素子のデューティ比を変更して過電流から素子を保護する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
その他関連する技術として、特許文献2乃至4が挙げられる。特許文献2には、DCDCコンバータが第1低電圧を出力した後に上位ECU(Electronic Control Unit)から出力電圧指示がこなくなった場合、DCDCコンバータが第1低電圧より高い固定電圧を出力する技術が記載されている。特許文献3には、DCDC変換器において、二次巻線に誘起する電圧が所定範囲外であるときにスイッチング素子の駆動を停止して、二次側回路を高電圧から保護する技術が記載されている。特許文献4には、制御部が、制御デューティ比を固定した状態でコンバータ部の出力が一定になるように制御し、その状態で、該制御部に入力される電圧に基づいてDCリンク部の電圧を演算し、該演算した電圧と異常判定閾値とを比較して、DCリンク部の電圧を降圧する抵抗の短絡故障を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-204625号公報
【特許文献2】特開2019-103323号公報
【特許文献3】特開2009-201246号公報
【特許文献4】特開2012-095508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバータから出力される電力の供給を受けて、コンバータを制御する制御装置は、過電圧の発生に起因してコンバータが停止すると、その動作を停止してしまうという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、過電圧から回路を保護しつつ、その動作を維持することができる制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る制御装置は、電力変換のためのパワー回路と内部電源とを有するコンバータにおいて、前記内部電源からの電力供給を受けて、前記パワー回路を制御する制御装置であって、当該制御装置よりも上位の装置である上位ECUと通信する通信手段と、前記コンバータの出力電圧を検出する検出手段と、前記検出された出力電圧に基づいて過電圧が検出された場合に、所定のデューティで動作するように前記パワー回路を制御する制御手段と、を備え、前記検出された出力電圧に基づいて過電圧が検出された場合、前記通信手段は、前記コンバータの状態を示す状態情報を前記上位ECUに送信するというものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両の構成を示す図である。
図2】電圧の時間変化の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る制御回路の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
コンバータの制御装置に係る実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態では、コンバータの制御装置として、DC/DCコンバータ20の制御回路23を一例として挙げる。
【0010】
図1において、車両1は、ECU(Electronic Control Unit)10、DC/DCコンバータ20、リレー回路30及びバッテリ40を備えて構成されている。ECU10は、例えばDC/DCコンバータ20を管轄するように構成されている。ECU10は、DC/DCコンバータ20に限らず、電源系統全体を管轄するように構成されていてもよい。ECU10は、車両1全体を統括制御可能に構成されていてもよい。
【0011】
DC/DCコンバータ20は、パワー回路21、内部電源22及び制御回路23を有する。パワー回路21は、電力変換のための回路であり、スイッチング素子(図示せず)等を含んで構成されている。内部電源22は、制御回路23に電力を供給するための電源である。制御回路23は、パワー回路21の動作を制御可能に構成されている。
【0012】
ここで、制御回路23は、スイッチ(SW)駆動部231、電圧検出部232及び通信部233を有する。スイッチ駆動部231は、パワー回路21に係るスイッチング制御を行う。電圧検出部232は、DC/DCコンバータ20の端子t1側(ここでは、低電圧側)の電圧をモニタする。通信部233は、例えばCAN(Controller Area Network)等の所定の通信規格で、ECU10と通信可能に構成されている。
【0013】
バッテリ40は、例えば鉛バッテリ等の低電圧バッテリである。バッテリ40は、リレー回路30を介して、DC/DCコンバータ20に電気的に接続されている。また、車両1に搭載された電子機器R1及びR2も、リレー回路30を介して、DC/DCコンバータ20に電気的に接続されている。尚、リレー回路30は、その内部にヒューズ31を有する。
【0014】
制御回路23では、例えば電子機器R1及びR2等に適切に電力が供給されるように、通信部233により受信されたECU10の指令に応じて、スイッチ駆動部231がパワー回路21に係るスイッチング制御を行う。また、通信部233は、例えば電圧検出部232により検出された電圧等、DC/DCコンバータ20の動作状態に係る情報をECU10に送信する。
【0015】
上述の如く構成された車両1の走行中に、例えば振動等に起因して、端子t1と端子t2との間の電気接続部品の接触不良が生じることがある。例えば図2(a)の時刻t1に、該接触不良が生じ、端子t1と端子t2との電気的な接続が断たれたとする。すると、図2(a)に示すように、電圧検出部232がモニタしている電圧が急激に大きくなる(即ち、過電圧が生じる)。このとき、過電圧からDC/DCコンバータ20を保護するために、パワー回路21のスイッチング制御が中止されると次のような問題が生じる。
【0016】
図1に示すように、内部電源22は、パワー回路21の端子t1側に電気的に接続されている。このため、パワー回路21のスイッチング制御が中止されると、内部電源22に電力が供給されなくなる(図2(a)の時刻t2参照)。すると、内部電源22の喪失に起因して制御回路23に電力が供給されなくなり、制御回路23とECU10との間の通信が途絶えてしまう。このとき、ECU10は、制御回路23と通信ができなくなったため、DC/DCコンバータ20に故障が発生したと診断し、診断結果をログに記録する。この結果、例えばECU10のログを確認した整備士が、DC/DCコンバータ20が故障していると誤解してしまう可能性がある。言い換えれば、端子t1と端子t2との間の電気接続部品の接触不良が見逃されてしまう可能性がある。
【0017】
上記問題点に鑑みて、制御回路23のスイッチ制御部231は、DC/DCコンバータ20に過電圧が発生した場合に、一定のデューティ比で、パワー回路21に係るスイッチング制御を行うように構成されている。
【0018】
例えば図2(b)の時刻t1に、端子t1と端子t2との間の電気接続部品の接触不良が生じ、端子t1と端子t2との電気的な接続が断たれたとする。この結果、図2(b)に示すように、電圧検出部232がモニタしている電圧が急激に大きくなる(即ち、過電圧が生じる)。このとき、制御回路23のスイッチ制御部231は、一定のデューティ比で、パワー回路21に係るスイッチング制御を行う。すると、図2(b)に示すように、電圧検出部232がモニタしている電圧は変動するものの、制御回路23への電力供給は維持されることになる。
【0019】
このため、端子t1と端子t2との電気的な接続が断たれた場合であっても、制御回路23とECU10との間の通信を維持することができる。このとき、制御回路23の通信部233は、DC/DCコンバータ20の動作状態に係る情報として、例えば断線発生を示す情報をECU10に送信してもよい。従って、ECU10が、DC/DCコンバータ20に故障が発生したと誤診断することを防止することができる。尚、例えば図2(b)の時刻t3に、端子t1と端子t2との間の電気接続部品の接触不良が解消されると、ECU10の指令に応じたスイッチング制御が行われることになる。
【0020】
次に、制御回路23の動作について図3のフローチャートを参照して説明を加える。図3において、制御回路23は、電圧検出部232によりモニタされている電圧に基づいて、DC/DCコンバータ20に過電圧が発生したか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101の処理において、制御回路23は、電圧検出部232によりモニタされている電圧が閾電圧より大きい場合に、過電圧が発生したと判定してよい。
【0021】
上記「閾電圧」は、一定のデューティ比でのスイッチング制御を実施するか否かを決定する値であり、予め固定値として、又は、何らかの物理量若しくはパラメータに応じて可変値として設定されてよい。「閾電圧」は、例えばDC/DCコンバータ20の仕様に基づく許容電圧範囲の上限値として、又は、該上限値より所定値だけ低い値として設定されてよい。
【0022】
ステップS101の処理において、過電圧が発生していないと判定された場合(ステップS101:No)、図3に示す動作は終了される。その後、所定時間(例えば、数十ミリ秒から数百ミリ秒)が経過した後に、ステップS101の処理が実施されてよい。つまり、図3に示す動作は、所定時間に応じた周期で繰り返し行われてよい。
【0023】
ステップS101の処理において、過電圧が発生したと判定された場合(ステップS101:Yes)、制御回路23のスイッチ制御部231は、一定のデューティ比で、パワー回路21に係るスイッチング制御を行う(ステップS102)。
【0024】
(技術的効果)
制御回路23によれば、DC/DCコンバータ20に過電圧が発生した場合であっても、スイッチ制御部231により、一定のデューティ比で、パワー回路21に係るスイッチング制御が行われる。この結果、制御回路23への電力供給を維持することができる。加えて、一定のデューティ比で、パワー回路21に係るスイッチング制御が行われることにより、DC/DCコンバータ20の端子t1側の実効電圧を低下させることができる。従って、制御回路23によれば、過電圧から回路を保護しつつ、その動作を維持することができる。
【0025】
以上に説明した実施形態から導き出される発明の態様を以下に説明する。
【0026】
発明の一態様に係る制御装置は、電力変換のためのパワー回路と内部電源とを有するコンバータにおいて、前記内部電源からの電力供給を受けて、前記パワー回路を制御する制御装置であって、当該制御装置よりも上位の装置である上位ECUと通信する通信手段と、前記コンバータの出力電圧を検出する検出手段と、前記検出された出力電圧に基づいて過電圧が検出された場合に、所定のデューティで動作するように前記パワー回路を制御する制御手段と、を備え、前記検出された出力電圧に基づいて過電圧が検出された場合、前記通信手段は、前記コンバータの状態を示す状態情報を前記上位ECUに送信するというものである。
【0027】
上述の実施形態においては、「制御回路23」が「制御装置」の一例に相当し、「ECU10」が「上位ECU」の一例に相当し、「スイッチ制御部231」が「制御手段」の一例に相当し、「電圧検出部232」が「検出手段」の一例に相当し、「通信部233」が「通信手段」の一例に相当する。
【0028】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1…車両、10…ECU、20…DC/DCコンバータ、21…パワー回路、22…内部電源、23…制御回路、30…リレー回路、40…バッテリ、231…スイッチ制御部、232…電圧検出部、233…通信部
図1
図2
図3