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特開2022-188520ステージ装置、露光装置、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188520
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ステージ装置、露光装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221214BHJP
   G01B 9/02 20220101ALI20221214BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G01B9/02
G03F7/20 521
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096623
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】小杉 祐司
【テーマコード(参考)】
2F064
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064DD04
2F064EE01
2F064FF01
2F064GG12
2F064HH01
2H197AA06
2H197AA09
2H197BA02
2H197BA09
2H197BA10
2H197BA11
2H197CA01
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA10
2H197CB16
2H197CC16
2H197CD12
2H197CD13
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD18
2H197CD35
2H197CD41
2H197CD43
2H197CD48
2H197DA06
2H197DC03
2H197DC04
2H197DC06
2H197EA06
2H197EA11
2H197GA01
2H197HA03
2H197HA05
2H197HA10
5F131AA02
5F131BA13
5F131CA01
5F131CA02
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA02
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EA25
5F131FA17
5F131FA32
5F131FA33
5F131FA37
5F131FA39
5F131KA03
5F131KA16
5F131KA22
5F131KA23
5F131KA24
5F131KA47
5F131KA63
5F131KA72
5F131KB12
5F131KB32
(57)【要約】
【課題】ステージの位置を高精度に計測することができるステージ装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るステージ装置は、第1の方向に垂直な第1の反射面を有し、第1の方向に駆動可能に構成されているステージと、第1の反射面に向けて第1の計測光を射出した後に第1の反射面によって反射された第1の計測光を受光することによって、ステージの第1の方向における位置を計測する第1の計測部と、第1の大気領域を伝搬する第2の計測光の波長を計測する第2の計測部と、所定の駆動条件でステージを第1の方向に沿って駆動させた際に生じる第1の大気領域における大気揺らぎに伴う第2の計測光の波長の時間変化を示す第1のテーブルに基づいて、第1の計測部の計測結果を補正する制御部とを備えることを特徴とする。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に垂直な第1の反射面を有し、前記第1の方向に駆動可能に構成されているステージと、
前記第1の反射面に向けて第1の計測光を射出した後に前記第1の反射面によって反射された前記第1の計測光を受光することによって、前記ステージの前記第1の方向における位置を計測する第1の計測部と、
第1の大気領域を伝搬する第2の計測光の波長を計測する第2の計測部と、
所定の駆動条件で前記ステージを前記第1の方向に沿って駆動させた際に生じる前記第1の大気領域における大気揺らぎに伴う前記第2の計測光の波長の時間変化を示す第1のテーブルに基づいて、前記第1の計測部の計測結果を補正する制御部と、
を備えることを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記所定の駆動条件で前記ステージを前記第1の方向に沿って駆動させながら前記第2の計測部によって前記第2の計測光の波長の時間変化を計測させ、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化をローパスフィルタに入力することによって第1の周波数領域における第1の成分を取得し、
該取得された第1の成分に前記第1のテーブルを合算することで、前記所定の駆動条件における前記第1の計測光の波長の時間変化を決定し、
該決定された第1の計測光の波長の時間変化に基づいて、前記第1の計測部の計測結果を補正することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記ステージ装置が設けられている空間の温度、湿度及び気圧を計測する第3の計測部を備え、
前記制御部は、
前記第3の計測部の計測結果に基づいて前記第1の大気領域における大気の屈折率の初期値を決定し、
前記所定の駆動条件で前記ステージを前記第1の方向に沿って駆動させながら前記第2の計測部によって前記第2の計測光の波長の時間変化を計測させ、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化をローパスフィルタ及びハイカットフィルタそれぞれに入力することによって、前記第1の周波数領域における前記第1の成分及び第2の周波数領域における第2の成分を取得し、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化から前記第1の成分及び前記第2の成分を除去することで、前記第1のテーブルを作成することを特徴とする請求項2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記所定の駆動条件で前記ステージを前記第1の方向に沿って駆動させながら前記第2の計測部によって前記第2の計測光の波長の時間変化を計測させ、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化をローパスフィルタに入力することによって第1の周波数領域における第1の成分を取得し、
該取得された第1の成分に前記第1のテーブルから取得される近似関数を合算することで、前記所定の駆動条件における前記第1の計測光の波長の時間変化を決定し、
該決定された第1の計測光の波長の時間変化に基づいて、前記第1の計測部の計測結果を補正することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項5】
前記ステージ装置が設けられている空間の温度、湿度及び気圧を計測する第3の計測部を備え、
前記制御部は、
前記第3の計測部の計測結果に基づいて前記第1の大気領域における大気の屈折率の初期値を決定し、
前記所定の駆動条件で前記ステージを前記第1の方向に沿って駆動させながら前記第2の計測部によって前記第2の計測光の波長の時間変化を計測させ、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化をローパスフィルタ及びハイカットフィルタそれぞれに入力することによって、前記第1の周波数領域における前記第1の成分及び第2の周波数領域における第2の成分を取得し、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化から前記第1の成分及び前記第2の成分を除去することで、前記第1のテーブルを作成し、
該作成された第1のテーブルに対してフィッティングを行うことで前記近似関数を取得することを特徴とする請求項4に記載のステージ装置。
【請求項6】
第1の方向に垂直な第1の反射面を有し、該第1の方向と該第1の方向に垂直な第2の方向とに平行な第1の断面内において駆動可能に構成されているステージと、
前記第1の反射面に向けて第1の計測光を射出した後に前記第1の反射面によって反射された前記第1の計測光を受光することによって、前記ステージの前記第1の方向における位置を計測する第1の計測部と、
第1の大気領域を伝搬する第2の計測光の波長を計測する第2の計測部と、
所定の駆動条件で前記ステージを前記第1の断面内において前記第1の方向及び前記第2の方向それぞれに非平行な第3の方向に沿って駆動させた際に取得される前記第1の計測部の計測結果を、第1の駆動条件で前記ステージを前記第2の方向に沿って駆動させた際に生じる前記第1の大気領域における大気揺らぎに伴う前記第2の計測光の波長の時間変化を示す第1のテーブルに基づいて補正する制御部と、
を備えることを特徴とするステージ装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記所定の駆動条件で前記ステージを前記第3の方向に沿って駆動させながら前記第2の計測部によって前記第2の計測光の波長の時間変化を計測させ、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化をハイカットフィルタに入力することによって第2の周波数領域における第3の成分を取得し、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化に対して、前記第3の成分を除去した後、所定の係数が掛けられた前記第1のテーブルとの間で差を取ることで、前記所定の駆動条件における前記第1の計測光の波長の時間変化を決定し、
該決定された第1の計測光の波長の時間変化に基づいて、前記第1の計測部の計測結果を補正することを特徴とする請求項6に記載のステージ装置。
【請求項8】
前記ステージ装置が設けられている空間の温度、湿度及び気圧を計測する第3の計測部を備え、
前記制御部は、
前記第3の計測部の計測結果に基づいて前記第1の大気領域における大気の屈折率の初期値を決定し、
前記第1の駆動条件で前記ステージを前記第2の方向に沿って駆動させながら前記第2の計測部によって前記第2の計測光の波長の時間変化を計測させ、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化をローパスフィルタ及びハイカットフィルタそれぞれに入力することによって、第1の周波数領域における第4の成分及び前記第2の周波数領域における前記第3の成分を取得し、
該計測された第2の計測光の波長の時間変化から前記第3の成分及び前記第4の成分を除去することで、前記第1のテーブルを作成することを特徴とする請求項7に記載のステージ装置。
【請求項9】
前記ステージは、前記第2の方向に垂直な第2の反射面を有し、
前記ステージ装置は、
前記第2の反射面に向けて第3の計測光を射出した後に前記第2の反射面によって反射された前記第3の計測光を受光することによって、前記ステージの前記第2の方向における位置を計測する第4の計測部と、
第2の大気領域を伝搬する第4の計測光の波長を計測する第5の計測部と、
を備え、
前記制御部は、前記所定の駆動条件で前記ステージを前記第3の方向に沿って駆動させた際に取得される前記第4の計測部の計測結果を、第2の駆動条件で前記ステージを前記第1の方向に沿って駆動させた際に生じる前記第2の大気領域における大気揺らぎに伴う前記第4の計測光の波長の時間変化を示す第2のテーブルに基づいて補正することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項10】
前記制御部は、
前記所定の駆動条件で前記ステージを前記第3の方向に沿って駆動させながら前記第5の計測部によって前記第4の計測光の波長の時間変化を計測させ、
該計測された第4の計測光の波長の時間変化をハイカットフィルタに入力することによって第2の周波数領域における第5の成分を取得し、
該計測された第4の計測光の波長の時間変化に対して、前記第5の成分を除去した後、所定の係数が掛けられた前記第2のテーブルとの間で差を取ることで、前記所定の駆動条件における前記第3の計測光の波長の時間変化を決定し、
該決定された第3の計測光の波長の時間変化に基づいて、前記第4の計測部の計測結果を補正することを特徴とする請求項9に記載のステージ装置。
【請求項11】
前記ステージ装置が設けられている空間の温度、湿度及び気圧を計測する第3の計測部を備え、
前記制御部は、
前記第3の計測部の計測結果に基づいて前記第2の大気領域における大気の屈折率の初期値を決定し、
前記第2の駆動条件で前記ステージを前記第1の方向に沿って駆動させながら前記第5の計測部によって前記第4の計測光の波長の時間変化を計測させ、
該計測された第4の計測光の波長の時間変化をローパスフィルタ及びハイカットフィルタそれぞれに入力することによって、第1の周波数領域における第6の成分及び前記第2の周波数領域における前記第5の成分を取得し、
該計測された第4の計測光の波長の時間変化から前記第5の成分及び前記第6の成分を除去することで、前記第2のテーブルを作成することを特徴とする請求項10に記載のステージ装置。
【請求項12】
前記第1の大気領域は、前記第2の大気領域に比べて前記第1の計測光の光路に近接しており、
前記第2の大気領域は、前記第1の大気領域に比べて前記第3の計測光の光路に近接していることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項13】
前記第1の計測部は、前記第1の反射面によって反射された前記第1の計測光と参照光との間の干渉から前記第1の計測部と前記第1の反射面との間の距離を計測する干渉計であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項14】
前記第2の計測部は、前記第1の大気領域を伝搬する前記第2の計測光による所定の対象に対する計測結果と真空領域を伝搬する第5の計測光による前記所定の対象に対する計測結果とを互いに比較することによって、前記第2の計測光の波長を計測する波長コンペンセータであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項15】
前記ステージは、前記第1の方向に沿って駆動する第1のステージと、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って駆動する第2のステージとから構成されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のステージ装置。
【請求項16】
原版に形成されたパターンを基板に転写するように前記基板を露光する露光装置であって、
前記基板が載置される基板ステージを駆動させる請求項1乃至15のいずれか一項に記載のステージ装置を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項17】
前記基板ステージは、前記基板を露光する際に、前記第1の方向において走査移動を行うと共に、前記第1の方向に垂直な第2の方向においてステップ移動を行うことを特徴とする請求項16に記載の露光装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記基板ステージに載置される所定のロットの先頭にある前記基板に対してキャリブレーション処理が行われる際に、前記第1のテーブルを作成することを特徴とする請求項16または17に記載の露光装置。
【請求項19】
請求項16乃至18のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記基板を露光する工程と、
露光された前記基板を現像する工程と、
現像された前記基板から物品を製造する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項20】
第1の方向に垂直な第1の反射面を有し、前記第1の方向に駆動可能に構成されているステージと、前記第1の反射面に向けて第1の計測光を射出した後に前記第1の反射面によって反射された前記第1の計測光を受光することによって、前記ステージの前記第1の方向における位置を計測する第1の計測部と、第1の大気領域を伝搬する第2の計測光の波長を計測する第2の計測部とを備えるステージ装置を用いて前記ステージの駆動を制御する方法であって、
所定の駆動条件で前記ステージを前記第1の方向に沿って駆動させた際に生じる前記第1の大気領域における大気揺らぎに伴う前記第2の計測光の波長の時間変化を示す第1のテーブルに基づいて、前記第1の計測部の計測結果を補正するステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置、露光装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステージ上に設けられた反射面に向けて計測光を射出した後に当該反射面によって反射された当該計測光を受光することによって、当該ステージの位置を計測する干渉計を備えたステージ装置が知られている。
このとき、干渉計と反射面との間の計測光が進行する空間の環境、すなわち温度、湿度及び気圧等の変化に伴って当該空間の大気の屈折率が変動してしまうと、計測光の波長が変化することで、ステージの位置計測値に誤差が生じてしまう。
【0003】
特許文献1は、干渉計による計測光が進行する空間において補正光も進行させることによって当該空間における大気の屈折率の変動を検出することで、当該計測光の波長、ひいてはステージの位置計測値を補正することができるステージ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-65712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば露光装置に設けられている基板ステージは、高生産性を実現するために、互いに垂直な二つの方向それぞれにおけるステップ駆動及びスキャン駆動を共に実行する場合がある。
そのため、基板ステージの周囲の空間では、当該二つの方向それぞれにおける大気揺らぎが共に発生する。
【0006】
一方、特許文献1に開示されているステージ装置では、空間を進行する補正光によって、当該空間における温度、湿度及び気圧を含む環境の変動と、補正光の進行方向に平行な方向における大気揺らぎとに応じた大気の屈折率の変動を計測することができる。
そのため、当該ステージ装置を用いてそのような基板ステージの位置を計測しようとすると、当該空間において補正光の進行方向に垂直な方向における大気揺らぎも発生することで、計測される大気の屈折率の変動に誤差が含まれることとなる。
【0007】
そしてステージが互いに垂直な二つの方向それぞれに移動した際に、補正光によって取得された当該空間における大気の屈折率の変動を干渉計における計測光の波長の補正にそのまま用いると、当該干渉計による当該ステージの位置計測値にも誤差が含まれてしまう。
【0008】
そこで本発明は、ステージの位置を高精度に計測することができるステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るステージ装置は、第1の方向に垂直な第1の反射面を有し、第1の方向に駆動可能に構成されているステージと、第1の反射面に向けて第1の計測光を射出した後に第1の反射面によって反射された第1の計測光を受光することによって、ステージの第1の方向における位置を計測する第1の計測部と、第1の大気領域を伝搬する第2の計測光の波長を計測する第2の計測部と、所定の駆動条件でステージを第1の方向に沿って駆動させた際に生じる第1の大気領域における大気揺らぎに伴う第2の計測光の波長の時間変化を示す第1のテーブルに基づいて、第1の計測部の計測結果を補正する制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ステージの位置を高精度に計測することができるステージ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るステージ装置を備える露光装置の模式的XZ断面内投影図。
図2】第一実施形態に係るステージ装置の模式的構成図、及び波長コンペンセータの構成を説明するための模式図。
図3】波長コンペンセータによって取得される計測値の時間変化を示した図。
図4】第一実施形態に係るステージ装置においてテーブルを作成する処理を示すフローチャート、及びステージの移動量を算出する処理を示すフローチャート。
図5】第二実施形態に係るステージ装置においてテーブルを作成する処理を示すフローチャート、及びステージの移動量を算出する処理を示すフローチャート。
図6】第三実施形態に係るステージ装置の模式的構成図。
図7】第四実施形態に係るステージ装置を備える露光装置における露光処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本実施形態に係るステージ装置を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお以下に示す図面は、本実施形態を容易に理解できるようにするために、実際とは異なる縮尺で描かれている。
また、以下に説明する実施形態は、本実施形態の実現手段としての一例であり、本実施形態が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものである。
また以下では、基板ステージの基板載置面に垂直な方向をZ方向、基板載置面に平行な断面(第1の断面)内において互いに直交する二方向をX方向(第2の方向)及びY方向(第1の方向)とする。
【0013】
[第一実施形態]
干渉計を用いた位置測定装置は、高精度な位置決め制御が必要な分野で広く利用されている。
そのような位置測定装置では、干渉計はレーザーの波長を基準に位置計測を行っているが、位置計測空間の温度、湿度及び気圧に応じて大気の屈折率が変動することでレーザー、すなわち測長ビームの波長が変化すると、計測対象の位置計測値に誤差が生じてしまう。
【0014】
そのような誤差を低減するためには、レーザーの波長の変化に基づいて位置計測値を補正する必要がある。
干渉計において位置計測値を補正する方法としては、例えば以下のような方法がある。
【0015】
すなわち、位置計測空間の環境、すなわち温度、湿度及び気圧の少なくとも一つを検出するセンサを設け、当該センサによる検出値から位置計測空間における大気の屈折率の変化を算出する。
そして、算出された大気の屈折率の変化から位置計測値を補正することができる。
【0016】
また、真空空間と大気空間とのそれぞれにおいて測長ビームを進行させた後に同一の対象を計測することによって真空空間及び大気空間それぞれにおける測長ビームの波長を算出することで、大気空間における大気の屈折率の変化を求める。
そして、求められた大気の屈折率の変化から干渉計による位置計測値を補正する方法もある。
このように真空空間及び大気空間それぞれにおける測長ビームの波長の違いから大気空間における大気の屈折率の変化を求める計測装置は、波長コンペンセータ若しくは波長トラッカーと呼称される。
【0017】
上記のように、干渉計から出射し位置計測空間を進行する測長ビームの波長は、当該位置計測空間における温度、湿度及び気圧を含む環境の変動と、計測対象の移動に応じて発生する大気揺らぎとに応じた大気の屈折率の変動に応じて時間変化する。
そして波長コンペンセータは、大気空間における環境の変動と、測長ビームの進行方向に平行な方向における計測対象の移動に伴って発生する大気揺らぎとに応じた大気の屈折率の変動を計測することができる。
【0018】
一方、例えば露光装置に設けられている基板ステージは、高生産性を実現するために、互いに垂直な二つの方向それぞれにおけるステップ駆動及びスキャン駆動を共に実行する場合がある。
そのため、基板ステージの周囲の空間では、当該二つの方向それぞれにおける大気揺らぎが共に発生する。
【0019】
従って、基板ステージをそのように駆動させると、波長コンペンセータ内の大気空間において測長ビームの進行方向に垂直な方向における大気揺らぎも発生することで、計測される当該大気空間における大気の屈折率の変動に誤差が含まれることとなる。
【0020】
そしてステージが互いに垂直な二つの方向それぞれに移動した際に、波長コンペンセータによって取得された大気の屈折率の変動を、干渉計における計測光の波長の時間変化の補正にそのまま用いると、干渉計によるステージの位置計測値にも誤差が含まれてしまう。
また近年では、露光装置において生産性をさらに向上させるために基板ステージや原版ステージを高速度且つ高加速度で駆動するようになってきているため、位置計測空間における大気揺らぎも大きくなることから、上記の誤差も大きくなってしまう。
【0021】
そこで本実施形態では、ステージの位置計測値を高精度に補正することができるステージ装置を提供することを目的としている。
【0022】
図1は、本実施形態に係るステージ装置を備える露光装置1の模式的XZ断面内投影図を示している。
【0023】
図1に示されているように露光装置1は、ステップ・アンド・スキャン方式によってレチクル20(原版)に形成されているパターンをウエハ40(基板)に投影する投影型露光装置であり、サブミクロンやクオーターミクロン以下のリソグラフィ工程に好適である。
露光装置1は、照明装置10、レチクルステージ25、投影光学系30、ウエハステージ45、制御系60、アライメント検出系70及びフォーカスチルト検出系150を備えている。
【0024】
また露光装置1は、レチクルステージ25及びウエハステージ45それぞれのXY面内における位置を検出するための干渉計システムも備えている(図2参照)。
すなわち本実施形態に係るステージ装置は、レチクルステージ25又はウエハステージ45と当該干渉計システムとから構成される。
【0025】
照明装置10は、光源部12及び照明光学系14から構成されており、ウエハ40に転写するためのパターンが形成されているレチクル20を照明する。
光源部12は、レーザー光を出射するように構成されており、例えば、波長約248nmのKrFエキシマレーザーや波長約193nmのArFエキシマレーザー等の光源を使用することができる。
なお、光源部12に用いられる光源は、上記のようなエキシマレーザーに限らず、波長約157nmのF2レーザーや波長20nm以下のEUV(Extreme Ultra Violet)光を出射するものを使用してもよい。
【0026】
照明光学系14は、光源部12から出射した光束をレチクル20に導光する光学系であり、具体的には、光源部12から出射した光束を露光に最適なスリット形状を有する光束に成形した後、レチクル20に導光する。
照明光学系14は、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレーターや絞り等から構成される。
照明光学系14は、具体的には例えば、光源部12側からレチクルステージ25側へ順に、コンデンサーレンズ、ハエの目レンズ、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系が配置されている。
【0027】
照明光学系14は、軸上光束及び軸外光束に関わらず光源部12から出射した光束をレチクル20に導光することができる。
また、照明光学系14に用いられるオプティカルインテグレーターは、ハエの目レンズや二組のシリンドリカルレンズアレイ(又はレンチキュラーレンズ)板を重ねることによって構成されるインテグレーターを含む。
しかしながら、これに限らず、オプティカルインテグレーターとして光学ロッドや回折素子を用いることもできる。
【0028】
レチクルステージ25は、不図示のレチクルチャックを介してレチクル20を保持するように構成されており、不図示のリニアモーター等で構成される移動機構に接続されている。
これにより、レチクルステージ25をX軸、Y軸及びZ軸に平行な並進方向に加えて、X軸、Y軸及びZ軸回りの回転方向に駆動制御することで、レチクル20及びレチクルチャックを当該並進方向及び当該回転方向に移動させることができる。
【0029】
投影光学系30は、物体面からの光束を像面に集光する機能を有しており、すなわちレチクル20に形成されているパターンによって回折された回折光をウエハ40上に集光する。
ウエハステージ45は、ウエハチャック46によってウエハ40を保持するように構成されており、不図示のリニアモーター等で構成される移動機構に接続されている。
これにより、ウエハステージ45をX軸、Y軸及びZ軸に平行な並進方向に加えて、X軸、Y軸及びZ軸回りの回転方向に駆動制御することで、ウエハ40及びウエハチャック46を当該並進方向及び当該回転方向に移動させることができる。
【0030】
なお、レチクルステージ25及びウエハステージ45はそれぞれ、互いに所定の速度比率になるように駆動され、それぞれの位置は、後述するように干渉計によって計測される。
またレチクルステージ25及び投影光学系30は、例えば床等に載置されたベースフレーム上にダンパを介して支持される不図示の鏡筒定盤上に設けられている。
そしてウエハステージ45は、例えば床等の上に除振機能を有するダンパを介して支持される不図示のステージ定盤上に設けられている。
【0031】
フォーカスチルト検出系150は、投光部152及び受光部154から構成されている。そして、投光部152から射出された光束が、ウエハ40によって反射された後に受光部154によって受光されることで、ウエハ40に対する投影光学系30のフォーカスやウエハ40のチルトを検出することができる。
【0032】
制御系60は、CPUやメモリ等から構成されており、照明装置10、レチクルステージ25、ウエハステージ45、アライメント検出系70及びフォーカスチルト検出系150に対して電気的に接続されることで、露光装置1全体の動作を統括して制御する。
アライメント検出系70は、ウエハ40のX軸及びY軸に平行な方向における位置ずれを検出すると共に、その光軸が投影光学系30の光軸からXY面内においてシフトするように構成されている。
すなわちアライメント検出系70は、非露光光を用いる所謂オフアクシス方式の光学系である。
【0033】
露光装置1で用いられるレチクル20は、例えば石英で形成されており、レチクル20上にはウエハ40に転写されるべき回路パターンが形成されている。
そしてレチクル20は、レチクルステージ25によって保持されており、レチクルステージ25が駆動されることで移動する。
【0034】
ウエハ40は、例えばシリコン基板上にフォトレジストが塗布された被処理体である。またウエハ40は、アライメント検出系70及びフォーカスチルト検出系150が位置検出を行うための被検出体でもある。
【0035】
以上のように、露光装置1では、光源部12から出射した露光光が照明光学系14によってレチクル20に導光される。
そして、レチクル20に形成されているパターンによって回折された回折光が、投影光学系30によってウエハ40上に導光されることで、当該パターンがウエハ40上に投影(転写)される。
【0036】
ここで露光装置1では、レチクルステージ25及びウエハステージ45は、レチクル20とウエハ40とが投影光学系30に関して互いに光学的に共役の関係になるように配置されている。
そして、レチクルステージ25及びウエハステージ45をパターンの縮小倍率比に応じた速度比になるようにそれぞれ走査することで、レチクル20に形成されているパターンがウエハ40上に転写される。
【0037】
なお上記では、ステップ・アンド・スキャン方式を採用している露光装置1について説明したが、以下に詳細に示す本実施形態に係るステージ装置は、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置にも適用することができる。
【0038】
次に、本実施形態に係るステージ装置について説明する。
【0039】
図2(a)は、本実施形態に係るステージ装置100の模式的構成図を示している。
【0040】
本実施形態に係るステージ装置100は、Yミラー33、Y干渉計34(第1の計測部)、Y光ピックアップ37、Y検出部38及びY波長コンペンセータ39(第2の計測部)を備えている。
また本実施形態に係るステージ装置100は、Yステージ41(ステージ、第1のステージ)、Xステージ42(第2のステージ)、制御部を備えている。また制御部は、信号処理部61、シーケンス制御部81及びY波長補正部82を有する。
【0041】
図2(a)に示されているように、例えばウエハステージ45であるステージ45は、Yステージ41及びXステージ42を有しており、具体的には、Yステージ41上にXステージ42が配置されている。
そして、Yステージ41がY方向に駆動可能に構成されていると共に、Xステージ42がX方向に駆動可能に構成されていることで、ステージ45は、XY断面内において駆動可能に構成されている。
【0042】
また、Yミラー33はYステージ41上に配置されており、Y方向に垂直な反射面(第1の反射面)を有している。Y干渉計34から射出されたY測長ビーム35(第1の計測光)がYミラー33の反射面に入射する。
そして、Yミラー33の反射面によって反射されたY測長ビーム35がY干渉計34において不図示の参照ビーム(参照光)と干渉することで、Y干渉ビーム36が生成される。また、Yミラー33はYステージ41に一体として構成されて、Yステージ41がY方向に垂直な反射面を有するように構成されてもよい。
【0043】
次に、Y干渉計34から射出されたY干渉ビーム36がY光ピックアップ37に入射することによってY干渉ビーム36が光電変換されることで、Y光ピックアップ37から干渉信号が出力される。
そして、不図示の測長ボードに設けられているY検出部38が、当該干渉信号とY干渉計34に設けられているレーザーヘッドからの基準信号との間の位相差を検出する。
これにより、Y干渉計34とYミラー33との間のY方向における距離Y、すなわちYステージ41のY方向における移動量ΔYに対応する位置計測値Δmを出力することができる。
【0044】
ここで、Y干渉計34から出射するY測長ビーム35の波長は、位置計測空間、すなわちY干渉計34とYミラー33との間の空間の環境、具体的には温度、湿度及び気圧等の変化に応じて変動する。
そのため、Y検出部38から出力される位置計測値Δmにおいては、Y測長ビーム35の波長の変動に応じて誤差が生じることとなる。
【0045】
そこで本実施形態に係るステージ装置100では、そのような位置計測値Δmの誤差を補正するようにY測長ビーム35の波長を補正するために、Y波長コンペンセータ39が設けられている。
【0046】
図2(b)は、Y波長コンペンセータ39の構成を説明するための模式図を示している。
【0047】
図2(b)に示されているように、Y波長コンペンセータ39内には、干渉計401及びミラー402が設けられている。
また、干渉計401とミラー402との間には、真空領域403と、大気領域404(第1の大気領域、第2の大気領域)とがそれぞれ、測長ビームの進行方向に垂直な方向に並ぶように設けられている。
【0048】
そしてY波長コンペンセータ39では、干渉計401から出射し、ミラー402によって反射された測長ビームが不図示の参照ビームと干渉することで、真空領域403及び大気領域404それぞれにおける測長ビームの波長λ及びλが測定される。
このとき、測長ビーム(第2の計測光、第4の計測光、第5の計測光)の真空領域403における波長λと大気領域404における波長λとの間の関係は、大気領域404における大気の屈折率nによって以下の式(1)のように表すことができる。
λ=λ/n ・・・(1)
【0049】
換言すると、Y波長コンペンセータ39では、大気領域404を伝搬する測長ビームによるミラー402(所定の対象)に対する計測結果と真空領域403を伝搬する測長ビームによるミラー402に対する計測結果とが互いに比較される。
【0050】
これにより、大気領域404における測長ビームの波長λを取得することで、大気領域404における大気の屈折率nを計測することができる。
そして本実施形態に係るステージ装置100では、Y波長コンペンセータ39によって取得された大気の屈折率nを用いて、Y干渉計34から出射するY測長ビーム35の波長の変動、ひいては位置計測値Δmの誤差を補正することができる。
【0051】
具体的には、複数のステージ駆動条件それぞれに応じてYステージ41をY方向において移動させる際に取得された大気の屈折率nの変化に対応する波長補正量ΔCがY波長コンペンセータ39からY波長補正部82に入力される。
そしてY波長補正部82は、入力されている種々のステージ駆動条件における波長補正量ΔCから各ステージ駆動条件におけるテーブルΔC’(第1のテーブル)を作成し、それを保存している。
【0052】
すなわち本実施形態に係るステージ装置100では、位置計測値Δmを取得した際のYステージ41の駆動条件に応じて、シーケンス制御部81が当該駆動条件をY波長補正部82に送信する。
そしてY波長補正部82は、受信した当該駆動条件に基づいて当該駆動条件に対応するテーブルΔC’を信号処理部61に出力する。
なお、ここでいうステージ駆動条件には、ステップ駆動やスキャン駆動等の駆動の種類、速度や加速度の大きさ、駆動プロファイル等の設定条件が含まれる。
【0053】
これにより信号処理部61は、Y干渉計34による位置計測値ΔmをY波長コンペンセータ39によるテーブルΔC’を用いて補正することで、Yステージ41のY方向における移動量ΔYを出力することができる。
【0054】
なお、Y波長コンペンセータ39の大気領域404、すなわちY干渉計34とYミラー33との間の空間における大気の屈折率nは、以下の式(2)に示されるエドレンの実験式によって表すことができる。
【数1】
【0055】
すなわちY干渉計34とYミラー33との間の空間において温度T、湿度H及び気圧Pの少なくとも一つが時間tに応じて変化すると、当該空間における大気の屈折率nひいてはY干渉計34から出射するY測長ビーム35の波長が時間に応じて変化することとなる。
【0056】
次に、本実施形態に係るステージ装置100においてY干渉計34とYミラー33との間の空間における大気の屈折率nの時間変化の位置計測値Δmに対する影響を補正する方法について説明する。
具体的には、Yステージ41がY方向に移動したときのY干渉計34とYミラー33との間の空間における大気の屈折率nの時間変化の位置計測値Δmに対する影響を補正するために、Y波長補正部82によってテーブルΔC’を取得する方法について説明する。
【0057】
上記のように、Y波長コンペンセータ39によって計測される大気領域404における大気の屈折率nは、大気領域404における大気の温度T、湿度H及び気圧Pの時間変動に応じて式(2)に従って時間変化する。
また、Yステージ41がY方向に駆動されることで大気領域404において生じる大気の揺らぎによっても、大気領域404における大気の屈折率nは時間変化する。
さらに、Y波長コンペンセータ39が大気領域404における大気の屈折率nを計測する際のノイズも重畳され、そのようなノイズはYステージ41の駆動の繁閑、すなわちYステージ41の移動によっても時間変化する。
【0058】
このとき、本実施形態に係るステージ装置100が設けられている空間に対しては空調が行われているとすると、大気領域404における大気の温度T及び湿度Hは十分長い時間において変化しないとみなすことができる。
そこで、Y波長コンペンセータ39によって計測される大気領域404での大気の屈折率nは、大気領域404における気圧P、すなわち大気圧の時間変動と、Yステージ41の駆動による大気揺らぎと、時間変動するノイズとに応じて時間変化するとみなす。
【0059】
図3(a)は、Yステージ41が所定の駆動を行ったときのY波長コンペンセータ39によって計測される大気領域404における大気の屈折率nに対応する計測値の時間変化501を示している。
【0060】
上記のように、図3(a)に示されている計測値の時間変化501には、大気領域404における大気圧の時間変動、Yステージ41の駆動による大気揺らぎ、及び時間変動するノイズによる成分が含まれる。
このとき、大気領域404における大気圧は、Yステージ41の駆動による大気揺らぎ、及び時間変動するノイズに比べて十分に低い周波数で時間変動すると考えることができる。
【0061】
そこで本実施形態に係るステージ装置100では、取得された計測値の時間変化501をローパスフィルタに入力することで、大気圧の時間変動による成分の分離を行う。
換言すると、本実施形態に係るステージ装置100では、計測値の時間変化501をローパスフィルタに入力することで、計測値の時間変化501のうち低周波領域に対応する第1の周波数領域における成分(第1の成分、第4の成分、第6の成分)を取得する。
【0062】
図3(b)は、そのようにして取得された大気圧の時間変動に伴う計測値の時間変化601を示している。
【0063】
そして本実施形態に係るステージ装置100では、時間変化501と時間変化601との間の差をとることで、残りの成分、すなわちYステージ41の駆動による大気揺らぎと時間変動するノイズとに伴う計測値の時間変化701を取得することができる。
【0064】
図3(c)は、そのようにして取得されたYステージ41の駆動による大気揺らぎと時間変動するノイズとに伴う計測値の時間変化701を示している。
【0065】
また、Y波長コンペンセータ39の計測において重畳されるノイズは、Yステージ41の駆動による大気揺らぎに比べて十分に高い周波数で時間変動すると考えることができる。
そこで本実施形態に係るステージ装置100では、次に、取得された計測値の時間変化701をハイカットフィルタに入力することで、時間変動するノイズによる成分を除去する。
換言すると、本実施形態に係るステージ装置100では、取得された計測値の時間変化701をハイカットフィルタに入力することで計測値の時間変化701のうち高周波領域に対応する第2の周波数領域の成分(第2の成分、第3の成分、第5の成分)を除去する。
【0066】
これにより、Yステージ41の駆動による大気揺らぎのみに伴う、計測値すなわち大気領域404における大気の屈折率nの時間変化を取得することができる。
本実施形態に係るステージ装置100では、このようにして取得された大気の屈折率nの時間tに対する依存性をYステージ41の所定の駆動条件におけるテーブルΔC’として作成し記憶する。
【0067】
図4(a)は、本実施形態に係るステージ装置100においてY波長補正部82によって種々のステージ駆動条件におけるテーブルΔC’を作成する処理を示すフローチャートである。
【0068】
まず、環境センサ90(第3の計測部)がY波長コンペンセータ39の大気領域404近傍の空間における大気の温度T、湿度H及び気圧Pを測定し、信号処理部61は、測定された温度T、湿度H及び気圧Pを記憶する(ステップS301)。
【0069】
次に、信号処理部61は、取得された温度T、湿度H及び気圧Pを式(2)に代入することで、大気領域404における大気の屈折率nを算出する。
そして、信号処理部61は、算出された値をY波長コンペンセータ39の大気領域404における大気の屈折率の初期値nとして決定する(ステップS302)。
【0070】
次に、シーケンス制御部81は、以降において所定のステージ駆動条件におけるテーブルΔC’を作成するために、当該ステージ駆動条件を設定する(ステップS303)。
ここで設定されるステージ駆動条件については、ステップ駆動やスキャン駆動等の駆動の種類、速度や加速度の大きさ、及び駆動プロファイル等が設定されると、Yステージ41のY方向における移動による大気揺らぎの影響を限定する上で好ましい。
【0071】
そして、シーケンス制御部81がステップS303において設定されたステージ駆動条件に基づいてYステージ41を駆動させながら、Y波長コンペンセータ39によって大気領域404における測長ビームの波長λの時間変化を計測する(ステップS304)。
次に、Y波長補正部82は、ステップS304において取得された計測値の時間変化をローパスフィルタに入力することで、ステップS304において取得された計測値の時間変化から大気圧の時間変動による成分を除去する(ステップS305)。
【0072】
次に、Y波長補正部82は、ステップS305において大気圧の時間変動による成分が除去された計測値の時間変化をハイカットフィルタに入力することで、時間変動するノイズによる成分を除去する。
これによりY波長補正部82は、Yステージ41を所定のステージ駆動条件で駆動させた際の大気領域404における大気揺らぎに伴う測長ビームの波長λ、すなわち大気の屈折率nの時間変化を示すテーブルΔC’を作成できる(ステップS306)。
【0073】
そして、シーケンス制御部81は、他のステージ駆動条件においてテーブルΔC’を作成するか判定を行う(ステップS307)。
もし他のステージ駆動条件においてテーブルΔC’を作成する場合には(ステップS307のYes)、ステップS303に戻る。
一方、全てのステージ駆動条件においてテーブルΔC’を作成した場合には(ステップS307のNo)、処理を終了する。
【0074】
図4(b)は、本実施形態に係るステージ装置100において信号処理部61によって所定のステージ駆動条件におけるYステージ41の移動量ΔYを算出する処理を示すフローチャートである。
【0075】
まず、シーケンス制御部81によって所定のステージ駆動条件におけるYステージ41の駆動が開始されると、Y波長コンペンセータ39によって大気領域404における測長ビームの波長λの時間変化を計測する(ステップS308)。
次に、Y波長補正部82は、ステップS308において取得された計測値の時間変化をローパスフィルタに入力することで、ステップS308において取得された計測値の時間変化から大気圧の時間変動による成分を取得する。
そして信号処理部61は、取得された大気圧の時間変動による成分に当該所定のステージ駆動条件に対応するテーブルΔC’を合算することで、当該所定のステージ駆動条件におけるY測長ビーム35の波長λの時間変化を決定する(ステップS309)。
【0076】
また、信号処理部61は、Yステージ41が当該所定のステージ駆動条件で駆動している際のY干渉計34による位置計測値Δmを取得する。
そして、信号処理部61は、取得された位置計測値ΔmをステップS309において決定された測長ビームの波長λaの時間変化を用いて補正することで、Yステージ41の移動量ΔYを算出する(ステップS310)。
【0077】
そして、干渉計401のユニット状態がチェックされる(ステップS311)。
もし干渉計401が正常に稼働していれば(ステップS311のYes)、繰り返し位置計測を行う、すなわち位置計測を継続するために、ステップS308に戻る。
一方、干渉計401のユニット状態において故障等の不具合が発生している場合には(ステップS311のNo)、処理を終了する。
【0078】
以上のように本実施形態に係るステージ装置100では、Yステージ41を所定の駆動条件で駆動させた際の測長ビームが進行する大気領域の大気揺らぎに伴う測長ビームの波長λ、すなわち大気の屈折率nの時間変化を示すテーブルΔC’を予め作成しておく。
そして、Yステージ41を当該所定の駆動条件で駆動させた際のY干渉計34による位置計測値Δmを作成されたテーブルΔC’を用いて補正することで、Yステージ41のY方向における移動量ΔYを精度良く求めることができる。
これにより、Yステージ41の位置を高精度に計測することができる。
【0079】
なお上記では、ウエハステージ45を構成するYステージ41のY方向における駆動について示したが、これに限らずXステージ42のX方向における駆動についても同様に適用することができる。
またウエハステージ45に限らず、レチクルステージ25のY方向における駆動及びX方向における駆動についても同様に適用することができる。
また上記では、フィルタとしてローパスフィルタ及びハイカットフィルタを用いているが、代わりにバンドパスフィルタを用いても構わない。
【0080】
また本実施形態に係るステージ装置100は、上記の露光装置1に限らず、インプリント装置や描画装置等のパターン形成装置に用いることもできる。
ここで、インプリント装置とは、基板上に供給されたインプリント材とモールド材とを互いに接触させた後、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることによって、モールドのパターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
また描画装置とは、荷電粒子線(電子線)やレーザビームで基板に描画を行うことによって基板上にパターン(潜像パターン)を形成する装置である。
【0081】
[第二実施形態]
図5(a)は、第二実施形態に係るステージ装置においてY波長補正部82によって種々のステージ駆動条件におけるテーブルΔC’を作成する処理を示すフローチャートである。
なお本実施形態に係るステージ装置は、第一実施形態に係るステージ装置100と同様の構成であるため、同一の部材には同一の符番を付して説明を省略する。
【0082】
まず、環境センサ90がY波長コンペンセータ39の大気領域404近傍の空間における大気の温度T、湿度H及び気圧Pを測定し、信号処理部61は、測定された温度T、湿度H及び気圧Pを記憶する(ステップS801)。
【0083】
次に、信号処理部61は、取得された温度T、湿度H及び気圧Pを式(2)に代入することで、大気領域404における大気の屈折率nを算出する。
そして、信号処理部61は、算出された値をY波長コンペンセータ39の大気領域404における大気の屈折率の初期値nとして決定する(ステップS802)。
【0084】
次に、シーケンス制御部81は、以降において所定のステージ駆動条件におけるテーブルΔC’を作成するために、当該ステージ駆動条件を設定する(ステップS803)。
ここで設定されるステージ駆動条件については、ステップ駆動やスキャン駆動等の駆動の種類、速度や加速度の大きさ、及び駆動プロファイル等が設定されると、Yステージ41のY方向における移動による大気揺らぎの影響を限定する上で好ましい。
【0085】
そしてシーケンス制御部81によってステップS803において設定されたステージ駆動条件に基づいてYステージ41を駆動させながら、Y波長コンペンセータ39によって大気領域404での測長ビームの波長λの時間変化を計測する(ステップS804)。
次に、Y波長補正部82は、ステップS804において取得された計測値の時間変化をローパスフィルタに入力することで、ステップS804において取得された計測値の時間変化から大気圧の時間変動による成分を除去する(ステップS805)。
【0086】
次に、Y波長補正部82は、ステップS805において大気圧の時間変動による成分が除去された計測値の時間変化をハイカットフィルタに入力することで、時間変動するノイズによる成分を除去する。
これによりY波長補正部82は、Yステージ41を所定のステージ駆動条件で駆動させた際の大気領域404における大気揺らぎに伴う測長ビームの波長λ、すなわち大気の屈折率nの時間変化を示すテーブルΔC’を作成できる(ステップS806)。
【0087】
そして本実施形態に係るステージ装置では、Y波長補正部82が、ステップS806において取得されたテーブルΔC’における大気の屈折率nの時間tに対する依存性を時間tに関する関数でフィッティングする。これにより、近似関数n(t)が求められ記憶される(ステップS807)。
【0088】
そして、シーケンス制御部81は、他のステージ駆動条件においてテーブルΔC’を作成し近似関数n(t)を求めるか判定を行う(ステップS808)。
もし他のステージ駆動条件においてテーブルΔC’を作成し近似関数n(t)を求める場合には(ステップS808のYes)、ステップS803に戻る。
一方、全てのステージ駆動条件においてテーブルΔC’を作成し近似関数n(t)を求めた場合には(ステップS808のNo)、処理を終了する。
【0089】
図5(b)は、本実施形態に係るステージ装置において信号処理部61によって所定のステージ駆動条件におけるYステージ41の移動量ΔYを算出する処理を示すフローチャートである。
【0090】
まず、シーケンス制御部81によって所定のステージ駆動条件によるYステージ41の駆動が開始されると、Y波長コンペンセータ39によって大気領域404における測長ビームの波長λの時間変化を計測する(ステップS809)。
次に、Y波長補正部82は、ステップS809において取得された計測値の時間変化をローパスフィルタに入力することで、ステップS809において取得された計測値の時間変化から大気圧の時間変動による成分を取得する。
そして信号処理部61は、取得された大気圧の時間変動による成分に当該所定のステージ駆動条件に対応する近似関数n(t)を合算することで、当該所定のステージ駆動条件におけるY測長ビーム35の波長λの時間変化を決定する(ステップS810)。
【0091】
また、信号処理部61は、Yステージ41が当該所定のステージ駆動条件で駆動している際のY干渉計34による位置計測値Δmを取得する。
そして、信号処理部61は、取得された位置計測値ΔmをステップS810において決定された測長ビームの波長λの時間変化を用いて補正することで、Yステージ41の移動量ΔYを算出する(ステップS811)。
【0092】
そして、干渉計401のユニット状態がチェックされる(ステップS812)。
もし干渉計401が正常に稼働していれば(ステップS812のYes)、繰り返し位置計測を行うために、ステップS809に戻る。
一方、干渉計401のユニット状態において故障等の不具合が発生している場合には(ステップS812のNo)、処理を終了する。
【0093】
以上のように本実施形態に係るステージ装置では、Yステージ41を所定の駆動条件で駆動させた際の測長ビームが進行する大気領域における大気揺らぎに伴う測長ビームの波長λ、すなわち大気の屈折率nの時間変化を示す近似関数n(t)を予め作成しておく。
そして、Yステージ41を当該所定の駆動条件で駆動させた際のY干渉計34による位置計測値Δmを作成された近似関数n(t)を用いて補正することで、Yステージ41のY方向における移動量ΔYを精度良く求めることができる。
これにより、Yステージ41の位置を高精度に計測することができる。
【0094】
本実施形態に係るステージ装置では、テーブルΔC’をそのまま用いる代わりに、テーブルΔC’から近似関数n(t)を求めて用いている。
これにより、ステージ駆動条件としてステージの移動速度や露光の際のレイアウトに伴う駆動プロファイルが変更されても、テーブルを新たに取得することなく所定のステージ駆動条件におけるY測長ビーム35の波長λの時間変化を決定することができる。
【0095】
具体的には、例えば所定のステージ駆動条件が別のステージ駆動条件に対してステージの移動速度の大きさを変更しただけの場合には、当該別のステージ駆動条件において取得された近似関数n(t)において時間tに関する係数を変化させる。
これにより、当該所定のステージ駆動条件における近似関数n(t)を取得することができる。
このように本実施形態に係るステージ装置では、近似関数n(t)を用いることによって処理を簡素化できることでスループットを向上させることができる。
【0096】
[第三実施形態]
図6は、第三実施形態に係るステージ装置300の模式的構成図を示している。
【0097】
本実施形態に係るステージ装置300は、Yミラー33、Y干渉計34(第1の計測部)、Y光ピックアップ37、Y検出部38、及びY波長コンペンセータ39(第2の計測部)を備えている。
また本実施形態に係るステージ装置300は、Xミラー53、X干渉計54(第4の計測部)、X光ピックアップ57、X検出部58、及びX波長コンペンセータ59(第5の計測部)を備えている。
また本実施形態に係るステージ装置300は、ステージ45、制御部を備えている。また制御部は、信号処理部61、シーケンス制御部81、Y波長補正部82及びX波長補正部83を有する。
【0098】
図6に示されているように、例えばウエハステージ45であるステージ45は、不図示のYステージ及びXステージを有しており、具体的には、Yステージ上にXステージが載置されている。
また、Yミラー33はYステージ上に配置されており、Y方向に垂直な反射面(第1の反射面)を有している。Y干渉計34から射出されたY測長ビーム35(第1の計測光)がYミラー33の反射面に入射する。
そして、Yミラー33の反射面によって反射されたY測長ビーム35がY干渉計34において不図示の参照ビームと干渉することで、Y干渉ビーム36が生成される。また、Yミラー33はYステージに一体として構成されて、YステージがY方向に垂直な反射面を有するように構成されてもよい。
【0099】
次に、Y干渉計34から射出されたY干渉ビーム36がY光ピックアップ37に入射することによってY干渉ビーム36が光電変換されることで、Y光ピックアップ37から干渉信号が出力される。
そして、不図示の測長ボードに設けられているY検出部38が、当該干渉信号とY干渉計34に設けられているレーザーヘッドからの基準信号との間の位相差を検出する。
これにより、Y干渉計34とYミラー33との間のY方向における距離Y、すなわちYステージのY方向における移動量ΔYに対応する位置計測値Δmを出力することができる。
【0100】
同様に、Xミラー53はXステージ上に配置されており、X方向に垂直な反射面(第2の反射面)を有している。X干渉計54から射出されたX測長ビーム55(第3の計測光)がXミラー53の反射面に入射する。
そして、Xミラー53の反射面によって反射されたX測長ビーム55がX干渉計54において不図示の参照ビームと干渉することで、X干渉ビーム56が生成される。また、Xミラー53はXステージに一体として構成されて、XステージがX方向に垂直な反射面を有するように構成されてもよい。
【0101】
次に、X干渉計54から射出されたX干渉ビーム56がX光ピックアップ57に入射することによってX干渉ビーム56が光電変換されることで、X光ピックアップ57から干渉信号が出力される。
そして、不図示の測長ボードに設けられているX検出部58が、当該干渉信号とX干渉計54に設けられているレーザーヘッドからの基準信号との間の位相差を検出する。
これにより、X干渉計54とXミラー53との間のX方向における距離X、すなわちXステージのX方向における移動量ΔXに対応する位置計測値Δmを出力することができる。
【0102】
またY波長コンペンセータ39は、X波長コンペンセータ59に比べて、Y干渉計34とYミラー33との間のY測長ビーム35の光路に近接している。
またX波長コンペンセータ59は、Y波長コンペンセータ39に比べて、X干渉計54とXミラー53との間のX測長ビーム55の光路に近接している。
【0103】
次に、Y波長コンペンセータ39から取得される波長補正量ΔCに基づいて位置計測値Δmを補正すると共に、X波長コンペンセータ59から取得される波長補正量ΔCに基づいて位置計測値Δmを補正する処理を考える。
このとき、波長補正量ΔCを取得する際のステージ駆動条件としては、XステージのX方向に沿った駆動及びYステージのY方向に沿った駆動それぞれだけに限らず、双方が共に行われる場合があることに注意する必要がある。
【0104】
例えばY波長コンペンセータ39においては、第一及び第二実施形態に係るステージ装置に示したように、YステージのY方向に沿った駆動が発生する場合には、大気の屈折率nに対応する計測値の時間変化に対して当該駆動による大気揺らぎが影響を与える。
しかしながら本実施形態に係るステージ装置300のように、XステージのX方向に沿った駆動及びYステージのY方向に沿った駆動が共に行われると、駆動双方による大気揺らぎによって、Y波長コンペンセータ39の大気領域404において乱流等が発生する。
【0105】
そして、大気領域404においてそのような乱流等が発生すると、大気の屈折率nに対応する計測値、すなわち波長補正量ΔCにおいて大きい誤差が発生してしまう。
そのため、Y波長コンペンセータ39において計測された値に基づいて波長補正量ΔCを取得し、取得された波長補正量ΔCをそのまま用いて位置計測値Δmを補正しようとすると、算出されるYステージの移動量ΔYに大きな誤差が発生することとなる。
そのような大きい誤差の発生は、X波長コンペンセータ59において取得された波長補正量ΔCをそのまま用いて位置計測値Δmを補正することで、Xステージの移動量ΔXを算出する場合にも同様に起こる。
【0106】
そこで本実施形態に係るステージ装置300では、第一及び第二実施形態に係るステージ装置と同様に、YステージをY方向に沿って駆動させた際のテーブルΔC’、及びXステージをX方向に沿って駆動させた際のテーブルΔC’を予め作成しておく。
そして、XステージのX方向に沿った駆動及びYステージのY方向に沿った駆動双方が共に行われた際には、テーブルΔC’及びΔC’を用いてYステージの移動量ΔY及びXステージの移動量ΔXを算出する。
【0107】
具体的には、Yステージを静止させたままXステージをX方向に沿ってステップ駆動させた際(第1の駆動条件)のテーブルΔC(第1のテーブル)を、ステップS301乃至S306に従ってX波長コンペンセータ59及びY波長コンペンセータ39が作成する。
また、Xステージを静止させたままYステージをY方向に沿ってステップ駆動させた際のテーブルΔC(1)を、ステップS301乃至S306に従ってX波長コンペンセータ59及びY波長コンペンセータ39が作成する。
【0108】
また、Xステージを静止させたままYステージをY方向に沿ってスキャン駆動させた際(第2の駆動条件)のテーブルΔC(2)(第2のテーブル)を、ステップS301乃至S306に従ってX波長コンペンセータ59及びY波長コンペンセータ39が作成する。
このように、複数のステージ駆動条件においてX波長コンペンセータ59及びY波長コンペンセータ39それぞれによって取得されたテーブルΔC、ΔC(1)及びΔC(2)が、Y波長補正部82及びX波長補正部83に記憶される。
【0109】
そして、例えばXステージがX方向に沿ってステップ移動すると共に、YステージがY方向に沿ってスキャン移動(走査移動)するステージ駆動条件を考える。
換言すると、ステージ45がXY断面内においてX方向及びY方向それぞれに非平行な方向(第3の方向)に駆動するステージ駆動条件(所定の駆動条件)を考える。
この場合、まずYステージの移動量ΔYを算出する際には、Y波長コンペンセータ39によって大気領域404におけるY測長ビーム35の波長λaYの時間変化を計測することで、波長補正量ΔCを取得する。
【0110】
次に、取得された波長補正量ΔCをハイカットフィルタに入力することで、取得された波長補正量ΔCから時間変動するノイズを除去する。
換言すると、取得された波長補正量ΔCをハイカットフィルタに入力することで、波長補正量ΔCのうち高周波領域に対応する第2の周波数領域における成分(第3の成分)を除去する。
そして時間変動するノイズが除去された波長補正量ΔCに対して、XステージをX方向に沿ってステップ駆動させた際にY波長コンペンセータ39によって取得されたテーブルΔCに所定の係数を掛けた後に差を取る。
【0111】
これにより、上記ステージ駆動条件におけるテーブルΔC’を取得し、テーブルΔC’に対応する、Y干渉計34から出射するY測長ビーム35の波長λaYの時間変化を決定することができる。
なお、ここで用いられる所定の係数は、Y波長コンペンセータ39の大気領域404におけるXステージのX方向に沿ったステップ駆動に伴う大気揺らぎの発生の度合いから決定される。
すなわち、例えばXステージのX方向に沿ったステップ駆動における速度や加速度の大きさ、及び駆動プロファイル等を含む、XステージのX方向に沿ったステップ駆動における駆動条件から決定される。
【0112】
そして、ステージ45を構成するXステージ及びYステージ双方を上記ステージ駆動条件で駆動している際のY干渉計34による位置計測値Δmを取得する。
そして、取得された位置計測値Δmを上記のように取得されたテーブルΔC’を用いて補正することで、Yステージの移動量ΔYを算出することができる。
【0113】
同様に、Xステージの移動量ΔXを算出する際には、X波長コンペンセータ59によって大気領域404におけるX測長ビーム55の波長λaXの時間変化を計測することで、波長補正量ΔCを取得する。
【0114】
次に、取得された波長補正量ΔCをハイカットフィルタに入力することで、取得された波長補正量ΔCから時間変動するノイズを除去する。
換言すると、取得された波長補正量ΔCをハイカットフィルタに入力することで、波長補正量ΔCのうち高周波領域に対応する第2の周波数領域における成分(第5の成分)を除去する。
そして時間変動するノイズが除去された波長補正量ΔCに対して、YステージをY方向に沿ってスキャン駆動させた際にX波長コンペンセータ59によって取得されたテーブルΔC(2)に所定の係数を掛けた後に差を取る。
【0115】
これにより、上記ステージ駆動条件におけるテーブルΔC’を取得し、テーブルΔC’に対応する、X干渉計54から出射するX測長ビーム55の波長λaXの時間変化を決定することができる。
なお、ここで用いられる所定の係数は、X波長コンペンセータ59の大気領域404におけるYステージのY方向に沿ったスキャン駆動に伴う大気揺らぎの発生の度合いから決定される。
すなわち、例えばYステージのY方向に沿ったスキャン駆動における速度や加速度の大きさ、及び駆動プロファイル等を含む、YステージのY方向に沿ったスキャン駆動における駆動条件から決定される。
【0116】
そして、ステージ45を構成するXステージ及びYステージ双方を上記ステージ駆動条件で駆動している際のX干渉計54による位置計測値Δmを取得する。
そして、取得された位置計測値Δmを上記のように取得されたテーブルΔC’を用いて補正することで、Xステージの移動量ΔXを算出することができる。
【0117】
以上のように、本実施形態に係るステージ装置300では、ステージ45を所定の駆動条件で駆動させた際の測長ビームが進行する大気領域における大気揺らぎに伴う測長ビームの波長λ、すなわち大気の屈折率nの時間変化を示すテーブルを予め作成しておく。
そして、ステージを当該所定の駆動条件で駆動させた際の干渉計による位置計測値を作成されたテーブルを用いて補正することで、ステージ45の移動量を精度良く求めることができる。
これにより、ステージ45の位置を高精度に計測することができる。
【0118】
具体的には、Xステージを静止させたままYステージをY方向に沿って駆動させた際のテーブルΔC、及びYステージを静止させたままXステージをX方向に沿って駆動させた際のテーブルΔCを取得する。
そしてXステージのX方向に沿った駆動及びYステージのY方向に沿った駆動双方が共に行われた際には、テーブルΔC及びΔCを用いて波長補正量ΔCに含まれる誤差を除去することで、Yステージの移動量ΔY及びXステージの移動量ΔXを算出する。
これにより、XステージのX方向に沿った駆動及びYステージのY方向に沿った駆動双方が共に行われた場合であっても、ステージ45を構成するXステージ及びYステージそれぞれの位置を高精度に計測することができる。
【0119】
[第四実施形態]
図7は、第四実施形態に係るステージ装置を備える露光装置1によって露光を行う際の当該ステージ装置による処理を示すフローチャートである。
なお本実施形態に係るステージ装置は、第一乃至第三実施形態のいずれかに係るステージ装置と同様の構成であるため、同一の部材には同一の符番を付して説明を省略する。
【0120】
通常の生産ラインでは、所定のロットを構成する、それぞれレジストが塗布された複数のウエハ40が不図示のインライン搬送装置によって露光装置1に順に搬入され、露光装置1によって同一プロセスのウエハ露光処理がロット単位で大量に実行される。
【0121】
図7に示されているように、本実施形態に係るステージ装置を備える露光装置1では、所定のウエハ40がウエハステージ45上に搬入されると(ステップS1001)、搬入されたウエハ40が所定のロットの先頭ウエハであるか判定する(ステップS1002)。
【0122】
もし搬入されたウエハ40が所定のロットの先頭ウエハである場合には(ステップS1002のYes)、当該ウエハ40に対してアライメントオフセット及びフォーカスオフセットを含むキャリブレーション処理が実施される。
なお近年では、ロットの先頭のウエハ40に対するキャリブレーション処理では、ロットを構成する全てのウエハ40に対する高い重ね合わせ精度や露光フォーカス精度を実現するために、ウエハ40における全ショット領域を測定する傾向にある。
【0123】
また上記キャリブレーション処理を行っている間に、第一乃至第三実施形態のいずれかに係るステージ装置と同様に、当該ロットを構成するウエハ40の各々を露光する際のステージ駆動条件に応じて干渉計による計測値を補正するためのテーブルを作成する。
そして、作成されたテーブルを記憶し(ステップS1003)、ステップS1004に移行する。
一方、搬入されたウエハ40が所定のロットの先頭ウエハではない場合には(ステップS1002のNo)、ステップS1003を実施せずにステップS1004に移行する。
【0124】
次に、搬入されたウエハ40に対してアライメント計測を行うことで露光位置を高精度に調整(補正)する(ステップS1004)。
このとき、第一乃至第三実施形態のいずれかに係るステージ装置と同様に、ステップS1003で作成されたテーブル、及び波長コンペンセータによる計測値を用いて干渉計による計測値を補正することで、Xステージ及びYステージの移動量を高精度に算出する。
【0125】
そして、アライメント処理が終了したウエハ40をレチクル20と同期させながらそれぞれ走査し、ショット領域毎に露光を行うことで、レチクル20に形成されている回路パターンをウエハ40に転写する(ステップS1005)。
このとき、露光が行われるショット領域の位置、及び露光の際のステージの駆動プロファイル等を含むステージ駆動条件に対応するテーブル、及び波長コンペンセータによる計測値を用いて、干渉計による計測値が補正される。
【0126】
そして、当該ウエハ40内の全てのショット領域に対して露光が行われた後、当該ウエハ40が露光装置1の外部に搬出される(ステップS1006)。
ここで、露光が行われたウエハ40は、一般的にはインライン搬送装置によって現像処理装置へ搬送される。
【0127】
次に、当該ロットの全てのウエハ40に対して露光が行われたか判定する(ステップS1007)。
もし当該ロットの全てのウエハ40に対して露光が行われた場合には(ステップS1007のYes)、処理を終了する。
一方、当該ロットの全てのウエハ40に対して露光が行われていない場合には(ステップS1007のNo)、ステップS1001に戻り、当該ロットの残りのウエハ40に対して順次露光処理を行う。
【0128】
以上のように、本実施形態に係るステージ装置では、ステージを所定の駆動条件で駆動させた際の測長ビームが進行する大気領域における大気揺らぎに伴う測長ビームの波長λ、すなわち大気の屈折率nの時間変化を示すテーブルを予め作成しておく。
そして、ステージを当該所定の駆動条件で駆動させた際の干渉計による位置計測値を作成されたテーブルを用いて補正することで、ステージの移動量を精度良く求めることができる。
これにより、ステージの位置を高精度に計測することができる。
【0129】
また本実施形態に係るステージ装置は、テーブルを作成する処理が、露光装置1においてロットの先頭のウエハ40に対するアライメントオフセット及びフォーカスオフセットを含むキャリブレーション処理と同時に実施されるように、構成されている。
これにより、ロットのウエハ40の各々に対して露光処理を行う際のスループットを向上させることができる。
【0130】
[物品の製造方法]
次に、本実施形態に係る物品の製造方法について説明する。
【0131】
半導体IC素子、液晶表示素子及びMEMS等の物品を製造する方法は、第一乃至第四実施形態のいずれかに係るステージ装置を備える露光装置1を用いて、感光剤が塗布されたウエハやガラス基板等の基板を露光する工程を含む。
また、上記方法は、露光された基板(感光剤)を現像する工程と、現像された基板を加工処理する他の周知の工程とを含む。
なお、ここでいう他の周知の工程には、エッチング、感光剤剥離、ダイシング、ボンディング及びパッケージング等が含まれる。
本実施形態に係る物品の製造方法によれば、従来よりも高品位の物品を製造することができる。
【0132】
以上、好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0133】
33 Yミラー(第1の反射面)
34 Y干渉計(第1の計測部)
35 Y測長ビーム(第1の計測光)
39 Y波長コンペンセータ(第2の計測部)
41 Yステージ(ステージ)
61 信号処理部(制御部)
81 シーケンス制御部(制御部)
82 Y波長補正部(制御部)
100 ステージ装置
404 大気領域(第1の大気領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7