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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188523
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】バケットエレベータ交換工法
(51)【国際特許分類】
   B65G 67/60 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
B65G67/60 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096629
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】村本 正之
【テーマコード(参考)】
3F077
【Fターム(参考)】
3F077AA04
3F077BA02
3F077BA06
3F077BB03
3F077BB08
3F077DA02
3F077DB04
(57)【要約】
【課題】アンローダの停止期間を短縮する。
【解決手段】バケットエレベータ交換工法は、連続式アンローダにおいてトップフレーム6に吊り下げ支持されるバケットエレベータの下部を既設品51から新設品52に交換するための工法であって、地上の第1位置において新設品を予め組み立てる第1ステップと、新設品の組立完了後、地上の第2位置にトップフレームと既設品を移動し、既設品をトップフレームから分離する第2ステップと、トップフレームを第2位置から第1位置に移動し、トップフレームを新設品に合体させる第3ステップとを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続式アンローダにおいてトップフレームに吊り下げ支持されるバケットエレベータの下部を既設品から新設品に交換するための工法であって、
地上の第1位置において前記新設品を予め組み立てる第1ステップと、
前記新設品の組立完了後、地上の第2位置に前記トップフレームと前記既設品を移動し、前記既設品を前記トップフレームから分離する第2ステップと、
前記トップフレームを前記第2位置から前記第1位置に移動し、前記トップフレームを前記新設品に合体させる第3ステップと、
を備えたことを特徴とするバケットエレベータ交換工法。
【請求項2】
前記アンローダは、前記バケットエレベータの重量とバランスを取るためのバラストタンクを備え、
前記第2ステップは、前記既設品を前記トップフレームから分離する前に、起重機船で前記バラストタンクを吊り上げることを含む
請求項1に記載のバケットエレベータ交換工法。
【請求項3】
前記第3ステップは、前記起重機船で前記バラストタンクを吊り上げつつ前記トップフレームを前記第2位置から前記第1位置に移動することを含む
請求項2に記載のバケットエレベータ交換工法。
【請求項4】
前記第3ステップは、前記トップフレームの移動と同期して前記起重機船のブームを下降または上昇させることを含む
請求項3に記載のバケットエレベータ交換工法。
【請求項5】
前記第3ステップは、前記起重機船のブームの下降と同期して前記バラストタンクを吊っているワイヤを巻き上げること、または、前記起重機船のブームの上昇と同期して前記ワイヤを巻き下げること、を含む
請求項4に記載のバケットエレベータ交換工法。
【請求項6】
前記第3ステップは、前記トップフレームの移動中、前記バラストタンクの真下に台船を位置させることを含む
請求項1~5のいずれか一項に記載のバケットエレベータ交換工法。
【請求項7】
前記アンローダは、岸壁に沿って走行可能な走行部を備え、
前記第3ステップにおいて、前記トップフレームの移動は、前記走行部の走行によって行われる
請求項1~6のいずれか一項に記載のバケットエレベータ交換工法。
【請求項8】
前記バケットエレベータの下部は、上方から順に接続される第1、第2および第3ケーシング部と、前記第3ケーシング部の下方に位置される伸縮フレーム部と、前記第3ケーシング部および前記伸縮フレーム部を連結する保持フレーム部とを備える
請求項1~7のいずれか一項に記載のバケットエレベータ交換工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、連続式アンローダにおけるバケットエレベータ交換工法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続式アンローダにおいて、例えば耐用年数の経過等に伴い、トップフレームに吊り下げ支持されるバケットエレベータの下部を既設品から新設品に交換し、バケットエレベータを更新することがある。
【0003】
一般的に、この交換は次のように行われる。まず、バケットエレベータを地上に移動し、既設品をブロック毎に解体し、トップフレームから取り外す。その後、新設品をブロック毎にトップフレームに順次取り付ける。これによって交換が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58-130828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記交換工法によれば、既設品の取り外しから新設品の取り付けまで、比較的長期間を要し、その間、アンローダの稼動を停止しなければならない。アンローダの停止期間中、日割りの滞船料が発生するため、アンローダの停止期間が長引くと工事費が自ずと増加してしまう。
【0006】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、アンローダの停止期間を短縮することが可能なバケットエレベータ交換工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様によれば、
連続式アンローダにおいてトップフレームに吊り下げ支持されるバケットエレベータの下部を既設品から新設品に交換するための工法であって、
地上の第1位置において前記新設品を予め組み立てる第1ステップと、
前記新設品の組立完了後、地上の第2位置に前記トップフレームと前記既設品を移動し、前記既設品を前記トップフレームから分離する第2ステップと、
前記トップフレームを前記第2位置から前記第1位置に移動し、前記トップフレームを前記新設品に合体させる第3ステップと、
を備えたことを特徴とするバケットエレベータ交換工法が提供される。
【0008】
好ましくは、前記アンローダは、前記バケットエレベータの重量とバランスを取るためのバラストタンクを備え、
前記第2ステップは、前記既設品を前記トップフレームから分離する前に、起重機船で前記バラストタンクを吊り上げることを含む。
【0009】
好ましくは、前記第3ステップは、前記起重機船で前記バラストタンクを吊り上げつつ前記トップフレームを前記第2位置から前記第1位置に移動することを含む。
【0010】
好ましくは、前記第3ステップは、前記トップフレームの移動と同期して前記起重機船のブームを下降または上昇させることを含む。
【0011】
好ましくは、前記第3ステップは、前記起重機船のブームの下降と同期して前記バラストタンクを吊っているワイヤを巻き上げること、または、前記起重機船のブームの上昇と同期して前記ワイヤを巻き下げること、を含む。
【0012】
好ましくは、前記第3ステップは、前記トップフレームの移動中、前記バラストタンクの真下に台船を位置させることを含む。
【0013】
好ましくは、前記アンローダは、岸壁に沿って走行可能な走行部を備え、
前記第3ステップにおいて、前記トップフレームの移動は、前記走行部の走行によって行われる。
【0014】
好ましくは、前記バケットエレベータの下部は、上方から順に接続される第1、第2および第3ケーシング部と、前記第3ケーシング部の下方に位置される伸縮フレーム部と、前記第3ケーシング部および前記伸縮フレーム部を連結する保持フレーム部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、アンローダの停止期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アンローダを示す概略図である。
図2】第1ステップを説明するための図である。
図3】第1ステップを説明するための図である。
図4】第1ステップを説明するための図である。
図5】第1ステップを説明するための図である。
図6】第1ステップを説明するための図である。
図7】第2ステップを説明するための図である。
図8】第2ステップを説明するための図である。
図9】第2ステップを説明するための図である。
図10】第3ステップを説明するための図である。
図11】第3ステップを説明するための図である。
図12】第3ステップにおいてトップフレームが移動されるときの様子を示す図である。
図13】第3ステップにおいてトップフレームが移動されるときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0018】
図1に、連続式アンローダ1の全体を示す。便宜上、前後左右上下の各方向を図示する通り定義する。但しこれら各方向が説明の便宜上定められたものに過ぎない点に留意されたい。図中右側が前側で、これは海側である。図中左側が後側で、これは陸側である。
【0019】
アンローダ1は、岸壁2に沿った左右方向に地上を走行可能な走行部3と、走行部3に鉛直軸C1回りに回転可能に設けられた回転塔部4と、回転塔部4に回動軸C2回りに回動可能に設けられ俯仰可能なブーム5と、ブーム5の先端部に回動軸C3回りに回動可能に設けられたトップフレーム6と、回転塔部4に回動軸C4回りに回動可能に設けられ、先端部がトップフレーム6に回動軸C5回りに回動可能に接続されたバランシングレバー7と、バランシングレバー7の基端部に固定されたバラストタンク(またはカウンターウェイト)9とを備える。トップフレーム6にはバケットエレベータ8が設けられる。バラストタンク9は、回動軸C4を基準としてバケットエレベータ8の反対側に位置され、バケットエレベータ8の重量とバランスを取るよう機能する。
【0020】
回転塔部4、ブーム5、トップフレーム6およびバランシングレバー7は平行リンクを構成し、これによりトップフレーム6の姿勢がブーム5の俯仰角度に拘わらず一定に保たれる。これらに走行部3を加えたものをブーム装置という。
【0021】
バケットエレベータ8は、トップフレーム6の位置からその上方に位置する部分すなわち上部8Aと、トップフレーム6より下方に位置する部分すなわち下部8Bとに概ね大別される。本実施形態では、このバケットエレベータ8の下部8Bが、例えば耐用年数の経過等により、既設品から新設品に交換され、すなわち更新される。本実施形態はこの際の交換工法ないし更新工法に関する。
【0022】
バケットエレベータ8の下部8Bは複数、本実施形態では5つのブロックに分割可能である。すなわち、バケットエレベータ8の下部8Bは、上方から順に接続される第1、第2および第3ケーシング部11,12,13と、第3ケーシング部13の下方に位置される伸縮フレーム部14と、第3ケーシング部13および伸縮フレーム部14を連結する保持フレーム部15とを備える。
【0023】
第1~第3ケーシング部11~13は、上下方向に同軸かつ直列に接続される円筒状ケーシングと、その付属物とをそれぞれ含む。第1ケーシング部11の上端部がトップフレーム6に挿入され、接続される。
【0024】
伸縮フレーム部14は、バケットチェーン16と組み合わされてバラ物である荷を掻き取るための掻取部17を形成する。伸縮フレーム部14は、下端スプロケット18と、下端スプロケット18に対し水平方向に近接離反可能な可動スプロケット19とを有する。バケットエレベータ8の上部8Aに上端スプロケット20が設けられる。これら下端スプロケット18、可動スプロケット19および上端スプロケット20にバケットチェーン16が巻き掛けられる。バケットチェーン16は、無端チェーン21と、これに取り付けられた複数のバケット22により構成される。バケットチェーン16は、第1~第3ケーシング部11~13内を通過される。掻取部17と上端スプロケット20の間に、掻き取った荷を上昇させるエレベータ部23が形成される。
【0025】
保持フレーム部15は、詳細は図示省略するが、第3ケーシング部13に昇降可能に設けられた昇降フレームと、第3ケーシング部13および昇降フレームを連結する油圧シリンダと、昇降フレームおよび伸縮フレーム部14を連結する油圧シリンダとを備える。保持フレーム部15は、第3ケーシング部13に対し伸縮フレーム部14を昇降可能に支持する。
【0026】
このアンローダ1において、掻取部17により掻き取られた荷は、エレベータ部23により第1~第3ケーシング部11~13内を上昇され、ブーム5内に設けられたベルトコンベヤに払い出される。そして回転塔部4および走行部3内に設けられたシュート、ベルトコンベヤ等を通じた後、機外の地上コンベヤに払い出される。
【0027】
次に、本実施形態におけるバケットエレベータ下部8Bの交換工法について説明する。工法は、次のステップを備える。
(1)地上の第1位置において新設品を予め組み立てる第1ステップ。
(2)新設品の組立完了後、地上の第2位置にトップフレーム6と既設品を移動し、既設品をトップフレーム6から分離する第2ステップ。
(3)トップフレーム6を第2位置から第1位置に移動し、トップフレーム6を新設品に合体させる第3ステップ。
【0028】
まず、図2図6を参照して第1ステップを説明する。この第1ステップの間、アンローダ1が停止されず稼動されている点が特徴的である。
【0029】
図2において、(A)は平面図、(B)はb位置の断面図である。バケットエレベータ下部8Bの既設品51が取り付けられたアンローダ1が稼動中であり、アンローダ1による荷役作業が行われている。符号24は走行部3が走行されるレール、符号25は地上コンベヤを示す。
【0030】
アンローダ1より後方の陸地すなわち後背地26において、新設品52(図6参照)を配置するための第1位置P1が右側に設定され、既設品51を配置するための第2位置P2が左側に設定される。これらは左右方向に所定距離離間され、岸壁2の壁面2Aから等距離にある。第2位置P2より左側の作業位置においてアンローダ1が荷役作業を行っている。
【0031】
第1位置P1と第2位置P2に、一対の浮き上がり防止用ウェイト27と、一対の転倒防止用ウェイト28とがそれぞれ配置される。浮き上がり防止用ウェイト27は、バケットエレベータ下部8Bからトップフレーム6を分離したときにトップフレーム6の浮き上がりを防止するためのウェイトである。転倒防止用ウェイト28は、連結された第1~第3ケーシング部11~13の転倒を防止するためのウェイトである。
【0032】
後背地26に、作業用クレーン(例えばラフタークレーン)29が適宜配置される。
【0033】
次に図3に示すように、第1位置P1と第2位置P2に、ケーシング部受け架台30と足場31がそれぞれ配置される。ケーシング部受け架台30は、第1~第3ケーシング部11~13(直接的には第3ケーシング部13)を支持するための架台である。足場31は、組立解体作業中に作業員が乗る足場である。
【0034】
また第1位置P1では、バケットチェーン16の組み立てが行われる。
【0035】
次に図4に示すように、新設品52を構成する各ブロック、すなわち、第1、第2および第3ケーシング部11,12,13と、伸縮フレーム部14と、保持フレーム部15とが、第1位置P1付近に搬入される。そして第1位置P1の受け架台30に向かって順次移送される。
【0036】
図示例では、第3ケーシング部13が搬入位置P3から受け架台30上に既に移送された状態を示す。第3ケーシング部13は、起立状態で受け架台30に支持される。一方、残りのブロックは搬入位置P3に置かれたままである。符号P4で示すのは、受け架台30により近い仮置き位置である。クレーン29の数が2台に増加され、これらクレーン29を使って各ブロックが搬入位置P3から仮置き位置P4へ、仮置き位置P4から受け架台30へと順次移送される。
【0037】
こうした移送と並行して、図5に示すように、搬入位置P3では、第1ケーシング部11と第2ケーシング部12が互いに溶接等で組み付けられる。そしてこれら一体化された第1および第2ケーシング部11,12が、クレーン29で吊り上げられ、起立状態で第3ケーシング部13に載せられた後、第3ケーシング部13に溶接等で組み付けられる。
【0038】
このように、第1ケーシング部11と第2ケーシング部12を予め組み付けるため、受け架台30上でのケーシング部組付作業を1回で済ますことができる。また、一体化された第1および第2ケーシング部11,12を第3ケーシング部13に載せた状態で溶接するため、第1および第2ケーシング部11,12を必要に応じて下からジャッキ等で支えながら溶接でき、溶接精度を向上することができる。
【0039】
こうして第1および第2ケーシング部11,12が組み付けられると、ケーシング部の高さが高くなって不安定となるため、一体化された第1~第3ケーシング部11~13と転倒防止用ウェイト28がワイヤ32で連結され、ケーシング部の転倒が防止される。また、ケーシング部の高さ増加に合わせて足場31の高さも増加される。
【0040】
次に図6に示すように、伸縮フレーム部14と保持フレーム部15が第3ケーシング部13に組み付けられる。このとき、まず保持フレーム部15が第3ケーシング部13に組み付けられ、次に伸縮フレーム部14が保持フレーム部15に組み付けられる。これにより伸縮フレーム部14は、保持フレーム部15を介して第3ケーシング部13にぶら下がるように組み付けられる。以上により新設品52の組み立てが完了し、第1ステップが終了する。
【0041】
次に、図7図9を参照して第2ステップを説明する。この第2ステップの間は、アンローダ1が実質的に停止される。なお図7図9(B)では便宜上、ケーシング部受け架台30と足場31が略示されている。
【0042】
図7に示すように、アンローダ1は走行部3の走行によって第2位置P2と等しい前後位置に移動される。またアンローダ1は、ブーム5が前後方向に平行となり、トップフレーム6が前向きとなる姿勢にされる。これによりバラストタンク9は第2位置P2上で空中に静止した状態となる。
【0043】
この状態で、バラストタンク9に、後の玉掛のための足場(図示せず)が、クレーン29とスカイバスケット35を用いて設置される。なおスカイバスケット35とは、クレーンのアーム先端に人が乗れるゴンドラを取り付けたものである。
【0044】
次に図8に示すように、アンローダ1の位置と姿勢が変更され、既設品51と、これが取り付けられたトップフレーム6とが第2位置P2に移動される。
【0045】
このとき、アンローダ1は図7の位置より左側に走行移動され、ブーム5は鉛直軸C1回りに回転され、トップフレーム6が右斜め後向き(バラストタンク9が左斜め前向き)となる姿勢に変更される。既設品51は、第1ステップで既に設置された第2位置P2のケーシング部受け架台30に据え付けられる。そして既設品51の第1~第3ケーシング部11~13が転倒防止用ウェイト28に図示しないワイヤで連結され、ケーシング部の転倒が防止される。
【0046】
一方、トップフレーム6が浮き上がり防止用ウェイト27に図示しないワイヤ、チェーンブロック等により連結される。これによりトップフレーム6は下方から拘束され浮き上がりが防止される。
【0047】
次に図9に示すように、海上に位置するバラストタンク9が起重機船36によって吊り上げられる。このとき、起重機船36のブーム39から垂れ下げられたワイヤ37がバラストタンク9に連結される。図7のステップで設置された足場に乗って、作業員がワイヤ37をバラストタンク9に玉掛けする。ワイヤ37が巻き上げられるとバラストタンク9は上向きに引っ張られ、これによりトップフレーム6の浮き上がりが二重に防止される。
【0048】
またここでは、バラストタンク9の真下に台船38が位置される。その理由は後に理解される。
【0049】
次に、既設品51がトップフレーム6から切り離され、分離される。このとき、トップフレーム6と浮き上がり防止用ウェイト27の連結が解除される。こうしてもバラストタンク9が起重機船36によって既に吊り上げられているので、トップフレーム6の浮き上がりが防止され、安全性を確保することができる。
【0050】
次いで、アーム5が上昇され、トップフレーム6が上昇される。これによりトップフレーム6が既設品51から抜き外される。アーム5の上昇と同期して、起重機船36のワイヤ37が巻き下げられ、バラストタンク9が下降される。以上により既設品51の分離が完了し、第2ステップが終了する。
【0051】
次に、図10図11を参照して第3ステップを説明する。この第3ステップの間もアンローダ1が実質的に停止される。なお図10(B)でもケーシング部受け架台30と足場31が略示されている。
【0052】
図10に示すように、アンローダ1は、図9に示した姿勢を保ったまま、第1位置P1に移動される。この移動は走行部3の走行によって行われる。トップフレーム6は、第1位置P1に既に設置されている新設品52と略同軸となるよう位置合わせされる。
【0053】
次いで、アーム5が下降され、トップフレーム6が下降される。これによりトップフレーム6が新設品52に嵌合される。アーム5の下降と同期して、起重機船36のワイヤ37が巻き上げられ、バラストタンク9が上昇される。
【0054】
次に、トップフレーム6が浮き上がり防止用ウェイト27に図示しないワイヤ、チェーンブロック等により連結される。これによりトップフレーム6の浮き上がりが防止されるので、起重機船36によるバラストタンク9の吊り上げが終了される。このとき、トップフレーム6と浮き上がり防止用ウェイト27を連結するワイヤ、チェーンブロック等が緊張され、トップフレーム6が下方に引っ張られる。また、起重機船36のワイヤ37が若干巻き下げられて弛緩され、バラストタンク9が玉外しされる。
【0055】
この後、図11に示すように、トップフレーム6と新設品52を完全に合体するための合体作業が行われる。この合体作業が終われば合体が終了し、アンローダ1は実質的に稼動可能となる。またこれと並行して、第2位置にある既設品51の解体撤去作業が行われる。以上で第3ステップが終了する。
【0056】
図12および図13には、第3ステップにおいてトップフレーム6が第2位置P2から第1位置P1に移動されるときの様子を示す。このとき起重機船36は、バラストタンク9を吊り上げつつ、第2位置Pc2から第1位置Pc1に移動される。またトップフレーム6の移動と同期して、起重機船36のブーム39は下降される。また起重機船36のブーム39の下降と同期して、バラストタンク9を吊っている起重機船36のワイヤ37は巻き上げられる。一方、台船38は一定の位置に保持される。
【0057】
トップフレーム6が第2位置P2にある初期状態において、起重機船36はバラストタンク9の左側の海上に位置され、ブーム39が右側に所定の傾斜角θ2となるよう傾斜される(倒される)。ブーム39の先端から垂れ下げられたワイヤ37がバラストタンク9を所定高さに吊っている。起重機船36は岸壁2にほぼ横付けされ、より正確に言うと、右側ほど岸壁2に近づくよう僅かに斜めの状態で岸壁2に横付けされる。
【0058】
一方、台船38は、その左端部の真上にバラストタンク9が位置するよう海上に位置される。台船38は、岸壁2に平行に横付けされ、起重機船36よりも右側に位置されると共に岸壁2に接近される。
【0059】
次に、トップフレーム6が第2位置P2から第1位置P1に移動されたとき、起重機船36は比較的短い距離だけ右側に移動される。起重機船36の移動距離Lcはトップフレーム6の移動距離Ltより短い。なおトップフレーム6の移動距離Ltは走行部3の移動距離に等しい。アンローダ1は、鉛直軸C1回りのブーム5の角度位置を一定としたまま、岸壁2の長手方向(左右方向)に並進移動される。
【0060】
起重機船36のブーム39は、より小さい傾斜角θ1となるまで、右側すなわち第1位置P1側に向かって下降される(倒される)。そしてこの下降分を打ち消すように、起重機船36のワイヤ37が巻き上げられる。これによりバラストタンク9の高さは一定に保持される。
【0061】
一方、バラストタンク9の位置は、台船38の右端部の真上に移動される。バラストタンク9の移動中、バラストタンク9の真下には常に台船38が位置され、そうなるように台船38の初期位置が設定されている。
【0062】
次に、本実施形態の利点を説明する。
【0063】
本実施形態においては、新設品52を予め組み立てておき、その後、アンローダ1のトップフレーム6から既設品51を分離し、トップフレーム6に新設品52を合体する。そのため、新設品52の組立中にアンローダ1を稼動させて荷役作業を行うことができる。また、トップフレーム6から既設品51全体を一括で分離するため、既設品51を各ブロック毎に分けて解体する場合よりも分離を短時間で行うことができる。そのため、アンローダの停止期間を短縮することが可能となり、余計な滞船料の発生を防いで工事費を削減することが可能となる。また工期全体も短縮することができ、これによっても工事費を削減することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態においては、既設品51をトップフレーム6から分離する前に、起重機船36でバラストタンク9を吊り上げる。そのため、既設品51をトップフレーム6から分離した直後にバラストタンク9の重さでトップフレーム6が浮き上がることを防止でき、工事の効率および安全性を高められる。
【0065】
また、本実施形態においては、起重機船36でバラストタンク9を吊り上げながらトップフレーム6を第2位置P2から第1位置P1に移動する。そのため、起重機船36を有効利用して、移動中におけるトップフレーム6の浮き上がりを確実に防止することができる。
【0066】
本実施形態においては、トップフレーム6の移動と同期して起重機船36のブーム39を下降させるので、トップフレーム6の移動距離Ltに比べ、起重機船36の移動距離Lcを短くすることができ、作業の効率化を図ることができる。
【0067】
本実施形態においては、ブーム39の下降と同期してワイヤ37を巻き上げるので、バラストタンク9の高さを一定に保持することができる。
【0068】
本実施形態においては、トップフレーム6の移動中に台船38に乗った人がアンローダ1等の状態を監視しつつ作業が行われる。トップフレーム6の移動中、これと同期してブーム39が下降され、ワイヤ37が巻き上げられるが、こうした同期が上手く行われないとアンローダ1のブーム5が回転するなどの不具合が起きることがある。
【0069】
本実施形態では、トップフレーム6の移動中、バラストタンク9の真下に台船38が常時位置される。そのため、台船38上の作業員が最も見易い位置からアンローダ1等の状態を常に監視できる。そのため作業の正確性を増すことができる。
【0070】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は様々考えられる。
【0071】
(1)前記実施形態では、第3ステップにおいて、トップフレーム6の移動と同期して起重機船36のブーム39を下降させ、ワイヤ37を巻き上げた。しかし、起重機船36が逆側、すなわちアンローダ1の右側に位置されているような場合には、ブーム39とワイヤ37の動作を逆にしてもよい。すなわち、トップフレーム6の移動と同期して起重機船36のブーム39を上昇させ、ワイヤ37を巻き下げてもよい。
【0072】
(2)前記実施形態では、走行部3の走行方向、すなわち、岸壁2の長手方向もしくは左右方向に離間させて第1位置P1と第2位置P2を設定したが、別の設定方法も可能である。例えば、アンローダ1の鉛直軸C4回りの回転方向に離間させて第1位置P1と第2位置P2を設定してもよい。
【0073】
(3)バケットエレベータ8の下部8Bは必ずしも前述の5ブロックに分割されなくてもよく、その分割数および分割方法は任意である。
【0074】
(4)前記実施形態ではバラストタンク9を直接吊り上げたが、バランシングレバー7を吊り上げることにより間接的にバラストタンク9を吊り上げてもよい。
【0075】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 アンローダ
2 岸壁
3 走行部
6 トップフレーム
8 バケットエレベータ
8B 下部
9 バラストタンク
11 第1ケーシング部
12 第2ケーシング部
13 第3ケーシング部
14 伸縮フレーム部
15 保持フレーム部
36 起重機船
37 ワイヤ
38 台船
39 ブーム
51 既設品
52 新設品
P1 第1位置
P2 第2位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図13