IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-二成分現像剤及び画像形成方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188529
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】二成分現像剤及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20221214BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20221214BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20221214BHJP
   G03G 9/10 20060101ALI20221214BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20221214BHJP
   G03G 9/113 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/09
G03G9/097 374
G03G9/10
G03G9/087 331
G03G9/113 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096640
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱森 隆成
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄也
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA06
2H500AA09
2H500AA14
2H500CA06
2H500CB05
2H500EA39B
2H500EA41E
2H500EA42D
2H500EA43E
2H500EA44C
2H500FA04
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、近赤外線の透過性を有し、画像濃度が高く、帯電性の環境条件耐性に優れた二成分現像剤及び画像形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明の二成分現像剤は、トナー母体粒子が、着色剤を含有し、前記着色剤が、顔料P1及び顔料P2を含有し、前記顔料P1及びP2を、それぞれ、メチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが、前記顔料P1については400nm以上、600nm未満の範囲内であり、前記顔料P2については600nm以上、700nm以下の範囲内であり、外添剤が、酸化チタンを含有し、前記酸化チタンの含有量が、トナー母体粒子の総質量に対して、0.01質量%以上、1.00質量%未満であり、キャリアの表面のX線光電子分光法で測定される鉄元素含有率が、特定式を満たすことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子と外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含む二成分現像剤であって、
前記トナー母体粒子が、着色剤を含有し、
前記着色剤が、顔料P1及び顔料P2を含有し、
前記顔料P1及びP2を、それぞれ、メチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが、前記顔料P1については400nm以上、600nm未満の範囲内であり、
前記顔料P2については600nm以上、700nm以下の範囲内であり、
前記外添剤が、酸化チタンを含有し、
前記酸化チタンの含有量が、トナー母体粒子の総質量に対して、0.01質量%以上、1.00質量%未満であり、
前記キャリアの表面のX線光電子分光法で測定される鉄元素含有率(atomic%)が、下記式(1)を満たす
式(1) 2≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦20
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
ことを特徴とする二成分現像剤。
【請求項2】
前記顔料P1が、顔料P1-2を含有し、
前記顔料P1-2のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが、460nm以上、530nm以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の二成分現像剤。
【請求項3】
前記顔料P1-2が、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown 41、及びC.I.Pigment Red 38からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含む
ことを特徴とする請求項2に記載の二成分現像剤。
【請求項4】
前記顔料P2が、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:5、C.I.Pigment Blue 15:6及びC.I.Pigment Blue 16からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含む
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【請求項5】
前記顔料P1が、顔料P1-3を含有し、
前記顔料P1-3のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmax(nm)が、530nm超、600nm未満の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【請求項6】
前記顔料P1-3が、C.I.Pigment Orange 34、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 38、C.I.Pigment Orange 43、C.I.Pigment Orange 62、C.I.Pigment Orange 68、C.I.Pigment Orange 70、C.I.Pigment Orange 72、C.I.Pigment Orange 74、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 48:4、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 147、C.I.Pigment Red 150、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Violet 23及びC.I.Pigment Violet 32からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の二成分現像剤。
【請求項7】
前記顔料P1が、顔料P1-1を含有し、
前記顔料P1-1のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmax(nm)が、400nm以上、460nm未満の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【請求項8】
前記顔料P1-1が、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Green 7及びC.I.Pigment Green 36からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含む
ことを特徴とする請求項7に記載の二成分現像剤。
【請求項9】
前記トナー母体粒子が、結晶性ポリエステルを含有する
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【請求項10】
前記キャリアが、少なくとも芯材の表面に樹脂層を有し、
前記樹脂層に含有される樹脂が、脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を有する樹脂を含有する
ことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【請求項11】
前記樹脂層に含有される樹脂における、前記脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量が、前記樹脂層に含有される樹脂の総質量に対して、50質量%以上である
ことを特徴とする請求項10に記載の二成分現像剤。
【請求項12】
二成分現像剤を用いる画像形成方法であって、
前記二成分現像剤として、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の二成分現像剤を用い、
前記二成分現像剤に含まれる前記静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程と、
付着させた前記静電荷像現像用トナーを前記記録媒体に定着させる工程と、を有する
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分現像剤及び画像形成方法に関する。より詳しくは、近赤外線の透過性を有し、画像濃度が高く、帯電性の環境条件耐性に優れた二成分現像剤及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の複写機やプリンターでは、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)と磁性粉体からなる静電荷像現像用キャリア(以下、単に「キャリア」ともいう。)で構成される二成分現像剤が高速現像に有利なことから主流となっている。
【0003】
中でもトナーについては、異なる色調の有機顔料を1つのトナー母体粒子中(トナー母体粒子については、詳しくは後述する。)に内添し、幅広い波長域の光を吸収するトナーの開発が進められており、中でも、可視光領域の光を吸収する反面、近赤外線領域の光を透過する(吸収しづらい)、という特性を有するトナーが注目されている。このようなトナーを用いることにより、見た目には黒色であるが、近赤外線のみに感度を有する検出器を用いると透明として検出される画像を形成できるため、この特性を生かし、一部のみに近赤外線への透過性を付与することにより、人の目には認識できない情報を埋め込んだ画像形成等が期待されている。
【0004】
例えば、特許文献1及び2で開示されているような、可視光を吸収する黒色トナーについては、その多くが、近赤外線をも吸収してしまうため、上記のような特性は有していなかった。
【0005】
また、上記のような異なる色調の顔料を一つのトナー母体粒子中に内添したトナーは、外添剤として酸化チタンを使用した場合、高温高湿環境条件下では、高比重の酸化チタンがトナーから移動しやすく、帯電性の環境条件耐性が不十分になりやすい。そのため、帯電性の環境条件耐性の更なる向上が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-297635号公報
【特許文献2】特開2009-79096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、近赤外線の透過性を有し、画像濃度が高く、帯電性の環境条件耐性に優れた二成分現像剤及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、トナー母体粒子と外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含む二成分現像剤において、トナー母体粒子に、可視光領域の光を吸収する着色剤を含有し、外添剤に酸化チタンを含有し、キャリア表面の鉄元素含有率を特定の範囲内とすることにより、近赤外線の透過性を有し、画像濃度が高く、帯電性の環境条件耐性に優れた二成分現像剤及び画像形成方法を提供できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.トナー母体粒子と外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含む二成分現像剤であって、前記トナー母体粒子が、着色剤を含有し、前記着色剤が、顔料P1及び顔料P2を含有し、前記顔料P1及びP2を、それぞれ、メチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが、前記顔料P1については400nm以上、600nm未満の範囲内であり、前記顔料P2については600nm以上、700nm以下の範囲内であり、前記外添剤が、酸化チタンを含有し、前記酸化チタンの含有量が、トナー母体粒子の総質量に対して、0.01質量%以上、1.00質量%未満であり、前記キャリアの表面のX線光電子分光法で測定される鉄元素含有率(atomic%)が、下記式(1)を満たす
式(1) 2≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦20
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
ことを特徴とする二成分現像剤。
【0010】
2.前記顔料P1が、顔料P1-2を含有し、前記顔料P1-2のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが、460nm以上、530nm以下の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の二成分現像剤。
【0011】
3.前記顔料P1-2が、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown 41、及びC.I.Pigment red 38からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含むことを特徴とする第2項に記載の二成分現像剤。
【0012】
4.前記顔料P2が、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:5、C.I.Pigment Blue 15:6及びC.I.Pigment Blue 16からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含むことを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【0013】
5.前記顔料P1が、顔料P1-3を含有し、前記顔料P1-3のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmax(nm)が、530nm超、600nm未満の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【0014】
6.前記顔料P1-3が、C.I.Pigment Orange 34、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 38、C.I.Pigment Orange 43、C.I.Pigment Orange 62、C.I.Pigment Orange 68、C.I.Pigment Orange 70、C.I.Pigment Orange 72、C.I.Pigment Orange 74、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 48:4、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 147、C.I.Pigment Red 150、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Violet 23及びC.I.Pigment Violet 32からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含むことを特徴とする第5項に記載の二成分現像剤。
【0015】
7.前記顔料P1が、顔料P1-1を含有し、前記顔料P1-1のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmax(nm)が、400nm以上、460nm未満の範囲内であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【0016】
8.前記顔料P1-1が、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Green 7及びC.I.Pigment Green 36からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含むことを特徴とする第7項に記載の二成分現像剤。
【0017】
9.前記トナー母体粒子が、結晶性ポリエステルを含有することを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【0018】
10.前記キャリアが、少なくとも芯材の表面に樹脂層を有し、前記樹脂層に含有される樹脂が、脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を有する樹脂を含有することを特徴とする第1項から第9項までのいずれか一項に記載の二成分現像剤。
【0019】
11.前記樹脂層に含有される樹脂における、前記脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量が、前記樹脂層に含有される樹脂の総質量に対して、50質量%以上であることを特徴とする第10項に記載の二成分現像剤。
【0020】
12.二成分現像剤を用いる画像形成方法であって、前記二成分現像剤として、第1項から第11項までのいずれか一項に記載の二成分現像剤を用い、前記二成分現像剤に含まれる前記静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程と、付着させた前記静電荷像現像用トナーを前記記録媒体に定着させる工程と、を有することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記手段により、近赤外線の透過性を有し、画像濃度が高く、帯電性の環境条件耐性に優れた二成分現像剤及び画像形成方法提供することができる。
【0022】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0023】
なお、本明細書において、「可視光領域」とは、光(電磁波)の波長が、400nm以上、800nm以下である領域のことをいい、「近赤外線領域」とは、光(電磁波)の波長が、800nm超、2500nm以下である領域のことをいう。
【0024】
近年、機能性を有する黒色トナーの開発が進められており、中でも、近赤外線を透過する機能を有する黒色トナーが注目されている。このようなトナーを用いることにより、人の目には認識できない情報を埋め込んだ画像等が形成できると期待されている。
【0025】
通常、黒色トナーには、黒色の着色剤が使用される。しかし、従来公知の黒色の着色剤は、可視光だけでなく、近赤外線をも吸収してしまうため、本目的には使用できない。他に黒色トナーを作製する方法としては、可視光領域に吸収極大波長を有する着色剤を複数組み合わせて、可視光領域全域の光を吸収させる方法がある。特に、可視光領域に吸収極大波長を有し、近赤外線領域の光を吸収しない(透過させる)着色剤を用いることで、本目的のトナーを得ることができる。
【0026】
また、可視光領域に吸収極大波長を有する着色剤を、多く用いることにより、可視光の吸収性は向上し、黒色の発色性が向上する。しかし、着色剤として用いられる顔料をトナーに高充填させると、トナー母体粒子(トナー母体粒子については後述する。)の表面が比較的硬くなるため、長期使用において、外添剤が離脱しやすく、帯電量が低下しやすい。
【0027】
このようなトナーの外添剤として、酸化チタンを用いることにより、トナーの流動性を向上させることができる。しかし、酸化チタンは、一般的に白色顔料として用いられることも多く、酸化チタンを含有させることにより、トナーの黒色の発色性(画像濃度)が低下してしまう。そのため、十分な発色性(画像濃度)を保持できる程度に、酸化チタンの含有量は制限される。
【0028】
また、酸化チタンは電気抵抗が低いため、トナー母体粒子の表面に外添することにより、トナーの抵抗を低下させることができるが、前述のとおり、酸化チタンの含有量は制限されるため、十分に抵抗を低下させることができず、依然として高抵抗なトナーとなる。トナー及びキャリアからなる二成分現像剤において、現像性を考慮すると、キャリアは低抵抗であることが好ましい。また、長期使用において、トナーから離脱した外添剤がキャリアに付着し、キャリアの抵抗が上昇してしまう場合がある。そのため、キャリアの表面は、低抵抗であり、外添剤が付着しづらい構成とする必要がある。
【0029】
通常、キャリアは、磁性を有する材料からなる芯材粒子の表面を、樹脂で被覆した形状をとる。芯材粒子が十分に樹脂で被覆されていると、トナーが飛散せず、安定した画像濃度が得られる。しかし、完全に樹脂で被覆されてしまうと、磁性を有する材料からなる芯材粒子が露出しないため、キャリアの抵抗は高くなる。そのため、キャリアは、芯材粒子が適度に露出するように樹脂で被覆する必要がある。
【0030】
上記式(1)は、キャリアの表面における鉄元素含有率の関係を表す。キャリア表面における主たる原子は、炭素、酸素及び鉄である。炭素は、主に樹脂に由来する。本発明においては、キャリア芯材としては、酸化鉄系材料を使用するため、鉄は、主に芯材に由来する。式(1)は、キャリア表面における主たる原子(炭素、酸素及び鉄)のうち鉄の占める割合を表しており、この割合を特定の範囲内とすることにより、キャリアの表面に、芯材粒子が適度に露出する。
【0031】
また、キャリア芯材粒子の表面の形状において、適度に凹凸を有することにより、一様に樹脂を被覆させることが難しくなるため、キャリア表面に、芯材粒子が適度に露出しやすくなる。さらに、このような形状とすることにより、トナーから離脱した外添剤が付着しづらくなり、所望のキャリアが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態に関する画像形成装置100の一例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の二成分現像剤は、トナー母体粒子と外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含む二成分現像剤であって、前記トナー母体粒子が、着色剤を含有し、前記着色剤が、顔料P1及び顔料P2を含有し、前記顔料P1及びP2を、それぞれ、メチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが、前記顔料P1については400nm以上、600nm未満の範囲内であり、前記顔料P2については600nm以上、700nm以下の範囲内であり、前記外添剤が、酸化チタンを含有し、前記酸化チタンの含有量が、トナー母体粒子の総質量に対して、0.01質量%以上、1.00質量%未満であり、前記キャリアの表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される鉄元素含有率(atomic%)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1) 2≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦20
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0034】
本発明の実施形態としては、黒色の発色性の観点から、顔料P1が、顔料P1-2を含有し、顔料P1-2のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが、460nm以上、530nm以下の範囲内であることが好ましく、さらに、顔料P1-2が、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown 41、及びC.I.Pigment Red 38からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含むことが好ましい。
【0035】
黒色の発色性の観点から、顔料P2が、C.I.Pigment Blue 15及びC.I.Pigment Blue 15:1等の前記顔料からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含むことが好ましい。
【0036】
黒色の発色性の観点から、顔料P1が、顔料P1-3を含有し、顔料P1-3のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmax(nm)が、530nm超、600nm未満の範囲内であることが好ましく、さらに、顔料P1-3が、C.I.Pigment Orange 34及びC.I.Pigment Orange 36等の前記顔料からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含むことが好ましい。
【0037】
黒色の発色性の観点から、顔料P1が、顔料P1-1を含有し、顔料P1-1のメチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmax(nm)が、400nm以上、460nm未満の範囲内であることが好ましく、さらに、顔料P1-1が、C.I.Pigment Yellow 74及びC.I.Pigment Yellow 120等の前記顔料からなる群から選択される少なくとも一種類の顔料を含むことが好ましい。
【0038】
低温定着性の観点から、トナー母体粒子が、結晶性ポリエステルを含有することが好ましい。
【0039】
帯電性の環境条件耐性の観点から、キャリアが、少なくとも芯材の表面に樹脂層を有し、樹脂層に含有される樹脂が、脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を有する樹脂を含有することが好ましく、さらに、樹脂層に含有される樹脂における、脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量が、樹脂層に含有される樹脂の総質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。
【0040】
本発明の画像形成方法は、本発明の二成分現像剤を用い、二成分現像剤に含まれる静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程と、付着させた前記静電荷像現像用トナーを記録媒体に定着させる工程と、を有することを特徴とする。
【0041】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0042】
≪本発明の二成分現像剤の概要≫
本発明の二成分現像剤は、トナー母体粒子と外添剤を有するトナー粒子を含む静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含む二成分現像剤であって、前記トナー母体粒子が、着色剤を含有し、前記着色剤が、顔料P1及び顔料P2を含有し、前記顔料P1及びP2を、それぞれ、メチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmaxが、前記顔料P1については400nm以上、600nm未満の範囲内であり、前記顔料P2については600nm以上、700nm以下の範囲内であり、前記外添剤が、酸化チタンを含有し、前記酸化チタンの含有量が、トナー母体粒子の総質量に対して、0.01質量%以上、1.00質量%未満であり、前記キャリアの表面のX線光電子分光法(XPS)で測定される鉄元素含有率(atomic%)が、下記式(1)を満たすことを特徴とする。
式(1) 2≦{AFe/(A+A+AFe)}×100≦20
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
【0043】
本発明に係るトナーは、近赤外線を透過する機能を有する黒色トナーである。
上記トナーは、顔料を高充填させるため、高温高湿環境条件下において、帯電量が低下しやすいが、本発明に係るキャリアと併用して、二成分現像剤として使用することにより、帯電性の環境条件耐性が得られる。
【0044】
本発明に係る静電荷像現像用トナーのことを、単に、「トナー」ともいう。本発明のトナーは、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に付着される外添剤とを備えるトナー粒子を含む。
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。本発明に係る「トナー母体粒子」は、少なくとも着色剤を含有するものであり、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。
【0045】
<静電荷像現像用トナー>
[1 トナー母体粒子]
本発明に係るトナー母体粒子は、着色剤を含有し、さらに結着樹脂を含有することが好ましい。
【0046】
トナー母体粒子は、体積基準の平均粒子径が5~8μmの範囲内であることが好ましく、5.5~7μmの範囲内であることがより好ましい。トナー母体粒子の体積基準の平均粒子径を5μm以上とすることで、二種以上の顔料を十分にトナー母体粒子に内添させて発色性を良好とすることができ、かつ、トナーの転写効率を高めることができる。また、トナー母体粒子の体積基準の平均粒子径を8μm以下とすることで、形成される画像の解像度をより高めることができる。
【0047】
トナー母体粒子の体積基準の平均粒子径は、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、コールターマルチサイザー3)に、データ処理用ソフトSoftware V3.51を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定することができる。具体的には、0.02gの試料(トナー母体粒子)を、20mLの界面活性剤溶液(トナー粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加してなじませた後、1分間の超音波分散処理を行い、トナー母体粒子の分散液を調製する。この分散液を、サンプルスタンド内の電解液(ベックマン・コールター社製、ISOTONII)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。この濃度にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を100μmにし、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割して頻度値を算出し、これをもとに体積基準の平均粒子径を算出する。
【0048】
[1.1 着色剤]
本発明に係るトナーは、トナー母体粒子中に、着色剤を含有する。
【0049】
可視光領域におけるより幅広い波長の光を十分に吸収する観点から、着色剤は、可視光領域(400nm~700nm)を二分したときの短波長側領域(400nm以上、600nm未満の領域)に吸収極大波長λmaxを有する顔料P1、及び、二分したときの長波長側領域(600nm以上、700nm以下の領域)に吸収極大波長λmaxを有する顔料P2を組み合わせて用いられる。
【0050】
なお、本明細書において、顔料の吸収極大波長λmaxは、メチルエチルケトン100質量部に対して、顔料0.02質量部を混合し、得られた分散液を光路長10mmの分光光度計用石英セルに入れて、分光光度計で400-700nmの波長域で吸収スペクトルを測定したうち吸収極大となる値を吸収極大波長λmaxとした。
【0051】
さらに、顔料P1は、吸収極大波長λmaxが、400nm以上、460nm未満の範囲内である顔料P1-1、吸収極大波長λmaxが、460nm以上、530nm以下の範囲内である顔料P1-2、及び、吸収極大波長λmaxが、530nm超、600nm未満の範囲内である顔料P1-3に分けることができる。顔料P2と組み合わせることにより、可視光領域において、より幅広い波長の光を十分に吸収できる観点から、顔料P1は顔料P1-2を含むことが好ましい。
【0052】
同様の観点から、顔料P1-1の吸収極大波長λmaxが、410nm超、450nm未満の範囲内であることが好ましく、顔料P1-2の吸収極大波長λmaxが、480nm以上、510nm以下の範囲内であることが好ましく、顔料P1-3の吸収極大波長λmaxが、540nm超、590nm未満の範囲内であることが好ましく、顔料P2の吸収極大波長λmaxが、620nm以上、660nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0053】
顔料P1-2は、顔料P1が吸収極大波長を有し得る波長領域(400nm~600nm)のうち中央(460nm以上、530nm以下の範囲内)の波長領域に吸収極大波長λmaxを有する顔料である。顔料P1-2及び顔料P2を組み合わせることにより、可視光領域の光の吸収性をより高めることができる。また、顔料P1-2は、低抵抗な顔料であることが多く、トナーの過剰帯電による帯電性の低下を生じさせにくい。
【0054】
可視光領域において、より幅広い波長の光を十分に吸収できる観点から、顔料P1-2は、吸収スペクトルの長波長側における半値波長が550nm以上であることが好ましい。
【0055】
顔料P1-1としては、上記範囲内に吸収極大波長を有する顔料であれば特に限定されず、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、ベンズイミダゾリン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料及びペリノン顔料等が挙げられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 73、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 81、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 87、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 111、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 126、C.I.Pigment Yellow 127、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 173、C.I.Pigment Yellow 174、C.I.Pigment Yellow 175、C.I.Pigment Yellow 176、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 191、C.I.Pigment Yellow 194、C.I.Pigment Yellow 196、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Yellow 214、C.I.Pigment Yellow 217、C.I.Pigment Green 7及びC.I.Pigment Green 36等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
これらのうち、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 139、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 180、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Green 7及びC.I.Pigment Green 36が、良好な発色性及び耐光性が得られる観点から、好ましく用いられる。
【0057】
顔料P1-2としては、上記範囲内に吸収極大波長を有する顔料であれば特に限定されず、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、ナフトールAS顔料、ベンズイミダゾロン顔料等が挙げられる。具体的には、顔料P1-2は、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown 41、及びC.I.Pigment Red 38等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは、いずれにおいても、良好な発色性及び耐光性が得られる観点から、好ましく用いられる。
【0058】
顔料P1-3としては、上記範囲内に吸収極大波長を有する顔料であれば特に限定されず、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、β-ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、アンタントロン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、チオインジゴ顔料、トリアリールカルボニウム顔料及びジケトピロロピロール顔料等が挙げられる。具体的には、C.I.Pigment Orange 5、C.I.Pigment Orange 13、C.I.Pigment Orange 34、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 38、C.I.Pigment Orange 43、C.I.Pigment Orange 62、C.I.Pigment Orange 68、C.I.Pigment Orange 70、C.I.Pigment Orange 72、C.I.Pigment Orange 74、C.I.Pigment Red 2、C.I.Pigment Red 3、C.I.Pigment Red 4、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 9、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 14、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 48:2、C.I.Pigment Red 48:3、C.I.Pigment Red 48:4、C.I.Pigment Red 53:1、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 144、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 147、C.I.Pigment Red 149、C.I.Pigment Red 150、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 169、C.I.Pigment Red 170、C.I.Pigment Red 175、C.I.Pigment Red 176、C.I.Pigment Red 177、C.I.Pigment Red 179、C.I.Pigment Red 181、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 187、C.I.Pigment Red 188、C.I.Pigment Red 207、C.I.Pigment Red 208、C.I.Pigment Red 209、C.I.Pigment Red 210、C.I.Pigment Red 214、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 247、C.I.Pigment Red 253、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 256、C.I.Pigment Red 257、C.I.Pigment Red 262、C.I.Pigment Red 263、C.I.Pigment Red 266、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Red 274、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Violet 23、及びC.I.Pigment Violet 32等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
これらのうち、C.I.Pigment Orange 34、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 38、C.I.Pigment Orange 43、C.I.Pigment Orange 62、C.I.Pigment Orange 68、C.I.Pigment Orange 70、C.I.Pigment Orange 72、C.I.Pigment Orange 74、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 48:4、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 147、C.I.Pigment Red 150、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Violet 23、及びC.I.Pigment Violet 32が、良好な発色性及び耐光性が得られる観点から、好ましく用いられる。
【0060】
可視光領域において、より幅広い波長の光を十分に吸収できる観点から、顔料P1は、顔料P1-1~顔料P1-3のうち、いずれか二種以上を含むことが好ましく、すべての種類を含むことがより好ましい。また、より多くの種類の顔料をトナー母体粒子が含有することにより、帯電安定性向上し、記録媒体への定着性も向上する。さらに、いずれかの顔料が退色しても他の顔料が当該退色した顔料の波長域をカバーできるため、形成された画像の耐光性も向上する。そして、本発明者らの知見によれば、顔料の種類が多いほど、おそらくは結晶性樹脂(特に、結晶性ポリエステル樹脂)の分散性が高まり、トナー定着性が向上する。
【0061】
顔料P2としては、上記範囲内に吸収極大波長を有する顔料であれば特に限定されず、具体的には、C.I.C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:5、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 56、C.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 61、及びC.I.Pigment Blue 80等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
色相をより良好とし、導電性及び耐光性を向上し、かつ、近赤外線領域の光の透過性の低下を抑制させる観点から、顔料P2は、フタロシアニン顔料であることが好ましく、これらのうち、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:1、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:5、C.I.Pigment Blue 15:6又はC.I.Pigment Blue 16を用いることが好ましい。
【0063】
上記顔料の合計の含有量は、トナー母体粒子の総質量に対して、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましく、7~20質量%の範囲内であることが更に好ましい。顔料の合計の含有量が、1質量%以上であることにより、形成される画像の発色性をより良好にできる。また、顔料の合計の含有量が、30質量%以下であることにより、トナー母体粒子に十分な量の結着樹脂を含ませることができるため、トナー母体粒子が柔軟になり、画像の定着性が十分に得られ、かつ、酸化チタンの離脱が生じにくくなる。
【0064】
また、各顔料の含有量について、顔料P1-2及び顔料P2の合計の含有量が、顔料の合計の総質量に対して、60~100質量%の範囲内であることが好ましく、顔料P1-1の含有量が、顔料の合計の総質量に対して、0~40質量%の範囲内であることが好ましく、顔料P1-3の含有量が、顔料の合計の総質量に対して、0~40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0065】
さらに、顔料P1-2の含有量が、顔料P1-2及び顔料P2の合計の総質量に対して、31~69質量%の範囲内であることが好ましく、35~65質量%の範囲内であることがより好ましく、40~60質量%の範囲内であることが更に好ましい。顔料P2の含有量が、顔料P1-2及び顔料P2の合計の総質量に対して、31~69質量%の範囲内であることが好ましく、35~65質量%の範囲内であることがより好ましく、40~60質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0066】
カーボンブラックは、可視光領域の光を吸収する黒色の着色剤であるが、近赤外線領域の光の透過性を低下させやすい。また、導電性が高いためトナーの帯電性を不安定にさせたり、電荷を保持できずリークしてしまうため誘電正接(転写性)を低下させたりしやすい。このような観点から、トナー母体粒子は、カーボンブラックを実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、カーボンブラックの含有量が、トナー母体粒子と外添剤とを合計した総質量に対して1質量%未満であることを意味する。
【0067】
[1.2 結着樹脂]
本発明に係るトナーは、トナー母体粒子中に、結着樹脂を含有することが好ましい。
【0068】
「結着樹脂(「バインダー樹脂」ともいう。)」とは、トナー粒子中に含有される内添剤(ワックス、電荷制御剤、顔料等)及び外添剤(シリカ、酸化チタン等)を分散させるための媒体又はマトリクス(母体)として用いられ、かつトナー画像の定着処理の際に記録媒体(例えば用紙)に接着する機能を有する樹脂をいう。
【0069】
紙等の画像支持体(記録媒体)にトナーを熱で固着(定着)させる観点から、結着樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、上記機能を有する樹脂であれば特に限定されず、スチレン樹脂、ビニル樹脂(アクリル樹脂及びスチレン-アクリル樹脂など)、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
また、結着樹脂は、結晶性樹脂であってもよいし、非晶性樹脂であってもよい。
【0071】
[1.2.1 結晶性樹脂]
本発明において、「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量計(DSC)で測定した示差熱量曲線において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、具体的には、DSC測定において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことを意味する。なお、DSC測定は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製:Diamond DSC)を用い、この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。
【0072】
このような結晶性樹脂は、その高い結晶性から、融点温度の直前までは粘度が高く、融点温度付近で急激に粘度が低下する(シャープメルト性)。そのため、結着樹脂が、結晶性樹脂を含有することにより、高温環境下での保存性の高い(耐熱保管性)、かつ、定着性の高いトナーが得られる。
【0073】
結晶性樹脂の融点(Tm)は、低温定着性及び耐ホットオフセット性の観点から、55~90℃の範囲内であることが好ましく、70~85℃の範囲内であることがより好ましい。
結晶性樹脂の融点は、樹脂組成によって制御することができる。
【0074】
なお、融点(Tm)は、吸熱ピークのピークトップの温度であり、DSCにより測定することができる。
具体的には、試料をアルミニウム製パンKINTO.B0143013に封入し、熱分析装置ダイヤモンドDSC(パーキンエルマー社製)のサンプルホルダーにセットして、加熱、冷却、加熱の順に温度を変動させる。1回目の加熱時には室温(25℃)から、2回目の加熱時には0℃から、10℃/minの昇温速度でそれぞれ150℃まで昇温して150℃を5分間保持し、冷却時には、10℃/minの降温速度で150℃から0℃まで降温して0℃の温度を5分間保持する。2回目の加熱時に得られる吸熱曲線における吸熱ピークのピークトップの温度を融点として測定する。
【0075】
トナー母体粒子中の結晶性樹脂の含有量は、低温定着性及び耐熱保管性の観点から、トナー母体粒子の総質量に対して、1~40質量%の範囲内であることが好ましく、5~30質量%の範囲内であることがより好ましい。結晶性樹脂の含有量が、1質量%以上であれば、十分な低温定着性が得られ、40質量%以下であれば、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性、及び、耐熱保管性が十分に得られる。
【0076】
また、結晶性樹脂の含有量は、低温定着性及び耐熱性の観点から、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましく、7~15質量%の範囲内であることが更に好ましい。結晶性樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、十分な可塑効果が得られ、低温定着性がより顕著であり、20質量%以下であれば、耐熱性が向上し、トナーとしての熱的安定性や物理的なストレスに対する安定性、及び、耐熱保管性が十分に得られる。
【0077】
低温定着性及び光沢度安定性の観点から、結晶性樹脂の数平均分子量(Mn)が、3000~12500の範囲内であることが好ましく、4000~11000の範囲内であることがより好ましい。また、結晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)が、10000~100000の範囲内であることが好ましく、15000~80000の範囲内であることがより好ましく、20000~50000の範囲内であることが更に好ましい。
【0078】
Mw及びMnが、上記範囲内であると、シャープメルト性が発現しやすく、定着温度を制御しやすい。また、定着画像において十分な強度が得られる。さらに、トナーの製造において、乳化液撹拌中に結晶性樹脂が粉砕されず、トナーのガラス転移温度Tgが一定に保たれるため、トナーの熱的安定性が保たれる。Mw及びMnは、以下のようにゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布から求めることができる。
【0079】
(結晶性樹脂の分子量の測定方法)
試料を濃度0.1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン(THF)中に添加し、40℃まで加温して完全に溶解させた後、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料液(サンプル)を調製する。その後、下記条件にて測定を行った。詳しくは、GPC装置HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKgelSuperH3000」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒(溶離液)としてTHFを流速0.6mL/分で流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液100μLをGPC装置内に注入し、示差屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出する。そして、単分散のポリスチレン標準粒子の10点を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。また、データ解析においては、上記フィルター起因のピークが確認された場合には、当該ピークの手前まででベースラインを設定し解析したデータを試料の分子量とする。
【0080】
測定機種:東ソー株式会社製 GPC装置HLC-8220GPC
カラム:東ソー株式会社製 「TSKgelSuperH3000」
溶離液:THF
温度:カラム恒温槽 40.0℃
流速:0.6ml/min
濃度:0.1mg/mL(0.1wt/vol%)
検量線:東ソー株式会社製 標準ポリスチレン試料
注入量:100μL
溶解性:完全溶解(40℃加温)
前処理:0.2μmのフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)
【0081】
結晶性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。結晶性樹脂の種類は、特に限定されず、例として、結晶性ポリオレフィン樹脂、結晶性ポリジエン樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリアセタール樹脂、結晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリブチレンテレフタレート樹脂、結晶性ポリフェニレンサルファイド樹脂、結晶性ポリエーテルエーテルケトン樹脂、結晶性ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、低温定着性及び光沢度安定性の観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に融解して非晶性樹脂の可塑化剤として働くため、低温定着性を向上させることができる。
【0082】
また、低温定着性及び耐熱保管性の観点から、結着樹脂として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性樹脂を組み合わせて用いることが好ましく、結晶性ポリエステル樹脂とビニル樹脂とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0083】
〔結晶性ポリエステル〕
「結晶性ポリエステル(以下、「結晶性ポリエステル樹脂」ともいう。)」とは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、前述に記載の示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。
【0084】
また、結晶性ポリエステル樹脂は、熱定着時に融解して非晶性樹脂の可塑化剤として働くため、トナーの低温定着性を向上できる。また、結晶性ポリエステル樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
結晶性ポリエステル樹脂は、上記定義したとおりであれば特に限定されない。例えば、結晶性ポリエステル樹脂による主鎖に他成分を共重合させた構造の樹脂についても、当該樹脂が上記の明確な吸熱ピークを示すものであれば、本発明でいう結晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0086】
低温定着性及び光沢度安定性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000~12500の範囲内であることが好ましく、4000~11000の範囲内であることがより好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~100000の範囲内であることが好ましく、12000~80000の範囲内であることがより好ましく、14000~50000の範囲内であることが更に好ましい。上記範囲内であると、得られるトナーの融点が好適な範囲内であり、耐ブロッキング性に優れ、また、低温定着性にも優れる。数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、上記のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0087】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価(AV)は5~70mgKOH/gが好ましい。酸価は、JIS K2501:2003に記載の方法に準拠して測定できる。
【0088】
結着樹脂に含まれる結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂である場合、結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましく、7~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、低温定着性に優れ、20質量%以下であれば、耐熱性に優れる。
【0089】
結晶性ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分から生成される。多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2である。
【0090】
(多価カルボン酸)
「多価カルボン酸」とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。上記多価カルボン酸の例としては、ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、芳香族ジカルボン酸をさらに含んでいてもよい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖型であることが、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から好ましい。
【0091】
上記脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸、セバシン酸(デカン二酸)、n-ドデシルコハク酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸(テトラデカン二酸)、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、及びこれらの酸無水物が含まれる。中でも、低温定着性及び転写性の両立の観点から、炭素数が6~16の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、10~14の脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましい。
【0092】
上記芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸が含まれる。中でも、入手容易性及び乳化容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸又はt-ブチルイソフタル酸が好ましい。
【0093】
多価カルボン酸としては、上記以外にも、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、あるいは炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。
【0094】
多価カルボン酸は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
ジカルボン酸由来の構成単位に対する脂肪族ジカルボン酸由来の構成単位の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性の観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0096】
(多価アルコール)
「多価アルコール」とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。上記多価アルコール成分の例としては、ジオールが挙げられる。ジオールは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジオールは、脂肪族ジオールであることが好ましく、それ以外のジオールをさらに含んでいてもよい。脂肪族ジオールは、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、直鎖型であることが好ましい。
【0097】
脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール及び1,20-エイコサンジオールが挙げられる。中でも、低温定着性及び転写性の両立の観点から、炭素数が2~20の脂肪族ジオールであることが好ましく、炭素数が4~12の脂肪族ジオールであることがより好ましい。
【0098】
その他のジオールの例としては、二重結合を有するジオール、及び、スルホン酸基を有するジオール、が挙げられる。具体的には、二重結合を有するジオールの例としては、1,4-ブテンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,6-ジオール及び4-ブテン-1,8-ジオールが挙げられる。
【0099】
3価以上の多価アルコールの例としては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどが挙げられる。
【0100】
多価アルコールは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
ジオール由来の構成単位に対する脂肪族ジオール由来の構成単位の含有量は、低温定着性及び光沢度安定性の観点から、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0102】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーにおけるジオールとジカルボン酸との割合、すなわち、ジオールのヒドロキシ基[-OH]とジカルボン酸のカルボキシ基[-COOH]との当量比[-OH]/[-COOH]が、2.0/1.0~1.0/2.0の範囲内であることが好ましく、1.5/1.0~1.0/1.5の範囲内であることがより好ましく、1.3/1.0~1.0/1.3の範囲内であることが更に好ましい。
【0103】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーは、直鎖脂肪族モノマーを50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。直鎖脂肪族モノマーを用いた場合には、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性は高く、融点(吸熱ピークのピークトップの温度)も高くなることが多い。また、分岐型の脂肪族モノマーを用いた場合には、結晶性が低く、融点も低くなることが多い。したがって、モノマーとして、直鎖脂肪族モノマーを用いることが好ましい。
【0104】
結晶性ポリエステル樹脂は、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより合成できる。
【0105】
エステル化触媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及び、アミン化合物;が挙げられる。
【0106】
具体的には、スズ化合物の例としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、及びこれらの塩が挙げられる。チタン化合物の例としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;及び、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートが挙げられる。ゲルマニウム化合物の例としては、二酸化ゲルマニウムが挙げられ、アルミニウム化合物の例としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、及びトリブチルアルミネートが挙げられる。
【0107】
結晶性ポリエステル樹脂の重合温度は、150~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は、0.5~10時間の範囲内であることが好ましい。重合中は、必要に応じて、反応系内を減圧にしてもよい。
【0108】
結晶性ポリエステル樹脂の構造及び構成モノマーの選択によって、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度や融解熱量を制御できる。結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度を、定着に好ましい範囲に調整する観点から、結晶性ポリエステル樹脂は、以下に説明するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、上記結晶性ポリエステル樹脂の全量と置き換えられていてもよいし、一部と置き換えられていてもよい。
【0109】
〔ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂〕
本発明に係る結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂が好ましく、低温定着性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂の構造と非晶性樹脂の構造とを含むハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、非晶性樹脂の構造を含むため、非晶性樹脂との相溶性が高まり、結着樹脂中において、より微分散状態を保つことができ、かつ、結晶性ポリエステル樹脂の構造を含むため、定着時に結晶性樹脂のシャープメルト性がより発揮され、低温定着性が向上する。また、トナー母体粒子がコア・シェル構造を有する場合、コア部にハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含有させることが、トナー母体粒子表面に結晶性ポリエステル樹脂が露出しづらくなる観点から、好ましい。
【0110】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性重合セグメントとが化学的に結合している構造を有する樹脂である。結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を意味する。すなわち、前述した結晶性ポリエステル樹脂を構成する分子鎖と同じ化学構造の分子鎖を意味する。また、非晶性重合セグメントとは、非晶性樹脂に由来する部分を意味する。すなわち、後述する非晶性樹脂を構成する分子鎖と同じ化学構造の分子鎖を意味する。
【0111】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~50000の範囲内であることが好ましい。Mwを50000以下とすることにより、十分な低温定着性が得られる。一方、Mwを20000以上とすることにより、トナー保管時において、当該ハイブリッド樹脂と非晶性樹脂との相溶が過剰に進行することが抑制され、トナー同士の融着による画像不良を抑制できる。当該重量平均分子量の測定は、前述した結晶性樹脂の分子量の測定方法を適用できる。
【0112】
同様の理由から、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000~12500の範囲内であることが好ましく、4000~11000の範囲内であることがより好ましい。
【0113】
結晶性樹脂が、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を含む場合、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましく、7~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、2質量%以上であれば、低温定着性に優れ、20質量%以下であれば、耐熱性に優れる。
【0114】
化学的結合の構造については、特に限定されず、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよいが、結晶性ポリエステル重合セグメントが、非晶性重合セグメントを主鎖として、グラフト化されている構造であることが好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖として非晶性重合セグメントを有し、側鎖として結晶性ポリエステル重合セグメントを有するグラフト共重合体であることが好ましい。
【0115】
以下、このような構造を有するハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂について説明する。
【0116】
(結晶性ポリエステル重合セグメント)
「結晶性ポリエステル重合セグメント」とは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分をいう。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖をいう。
【0117】
結晶性ポリエステル重合セグメントは、前述した結晶性ポリエステル樹脂と同義であり、多価カルボン酸と、多価アルコールとの重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分である。結晶性ポリエステル重合セグメントは、多価カルボン酸及び多価アルコールから、前述した結晶性ポリエステル樹脂と同様に合成され得る。なお、結晶性ポリエステル重合セグメントを構成する多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分については、前述の結晶性ポリエステル樹脂で説明した「多価カルボン酸」と「多価アルコール」項目の内容と同様であるため、説明を省略する。
【0118】
結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して、80~98質量%の範囲内であることが好ましく、90~95質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(あるいはトナー粒子)中の各セグメントの構成成分及びその含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定、メチル化反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)などの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
【0119】
結晶性ポリエステル重合セグメントは、非晶性重合セグメントとの化学的な結合部位を当該セグメント中に導入する観点から、不飽和結合を有するモノマーを含むことが好ましい。不飽和結合を有するモノマーは、例えば、二重結合を有する多価カルボン酸及び多価アルコールであり、その例としては、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸などの多価カルボン酸;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,6-ジオール及び4-ブテン-1,8-ジオールなどの多価アルコールが挙げられる。結晶性ポリエステル重合セグメントにおける、不飽和結合を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は、結晶性ポリエステル重合セグメントの総質量に対して、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0120】
なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの官能基が導入されていてもよい。上記官能基の導入は、結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、非晶性重合セグメント中であってもよい。
【0121】
(非晶性重合セグメント)
「非晶性重合セグメント」とは、非晶性樹脂に由来する部分をいう。すなわち、非晶性樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖をいう。非晶性重合セグメントは、本発明に係る結着樹脂に非晶性樹脂が含まれる場合に、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂との相溶性を高める。このため、ハイブリッド結晶性樹脂が、非晶性樹脂中に取り込まれやすくなり、トナーの帯電均一性がより一層向上する。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂(あるいはトナー粒子)中の非晶性重合セグメントの構成成分及びその含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定、メチル化反応熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法(Py-GC/MS)などの公知の分析方法を利用することにより特定することができる。
【0122】
また、非晶性重合セグメントは、同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する重合セグメントである。非晶性重合セグメントは、非晶性樹脂と同様に、DSCの1回目の昇温過程におけるガラス転移温度(Tg)が、30~80℃の範囲内であることが好ましく、40~65℃の範囲内であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度(Tg)は、非晶性樹脂のTgと同様の方法で測定することができる。
【0123】
非晶性重合セグメントは、結着樹脂に含まれる非晶性樹脂(例えば、ビニル樹脂など)と同種の樹脂で構成されることが、結着樹脂との相溶性を高め、トナーの帯電均一性を高める観点から好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂と非晶性樹脂との相溶性がより向上する。「同種の樹脂」とは、繰り返し単位中に特徴的な化学結合を有する樹脂同士のことを意味する。
【0124】
「特徴的な化学結合」とは、物質・材料研究機構(NIMS)物質・材料データベース(http://polymer.nims.go.jp/PoLyInfo/guide/jp/term_polymer.html)に記載の「ポリマー分類」に従う。すなわち、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリジエン、ポリエステル、ポリハロオレフィン、ポリイミド、ポリイミン、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリフェニレン、ポリホスファゼン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリビニル及びその他のポリマーの計22種によって分類されたポリマーを構成する化学結合を「特徴的な化学結合」という。
【0125】
また、樹脂が共重合体である場合における「同種の樹脂」とは、共重合体を構成する複数のモノマー種の化学構造において、上記化学結合を有するモノマー種を構成単位としている場合、特徴的な化学結合を共通に有する樹脂同士を意味する。したがって、樹脂自体の示す特性が互いに異なる場合や、共重合体中を構成するモノマー種のモル成分比が互いに異なる場合であっても、特徴的な化学結合を共通に有していれば同種の樹脂とみなす。
【0126】
例えば、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は重合セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート及びメタクリル酸によって形成される樹脂(又は重合セグメント)とは、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有しているため、これらは同種の樹脂である。更に例示すると、スチレン、ブチルアクリレート及びアクリル酸によって形成される樹脂(又は重合セグメント)と、スチレン、ブチルアクリレート、アクリル酸、テレフタル酸及びフマル酸によって形成される樹脂(又は重合セグメント)とは、互いに共通する化学結合として、少なくともポリアクリルを構成する化学結合を有している。従って、これらは同種の樹脂である。
【0127】
結晶性ポリエステル重合セグメントとの化学的な結合部位を非晶性重合セグメントに導入する観点から、非晶性重合セグメントは、後述の両性化合物をモノマーに含有することが、好ましい。両性化合物に由来する構成単位の含有量は、非晶性重合セグメントの総質量に対して、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0128】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与する観点から、非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがより好ましく、5~10質量%の範囲内であることがさらに好ましく、7~9質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0129】
非晶性重合セグメントを構成する樹脂成分は、特に限定されないが、例えば、ビニル重合セグメント、ウレタン重合セグメント、ウレア重合セグメントなどが挙げられる。中でも、熱可塑性の観点から、ビニル重合セグメントであることが好ましい。
【0130】
また、ビニル重合セグメントを用いる場合、結着樹脂中の非晶性樹脂としては、ビニル樹脂を用いることが好ましく、さらに、結着樹脂中において、ビニル樹脂が最も多い割合で含有されることが好ましい。これにより、ビニル重合セグメントとビニル樹脂との相溶性が高まり、結着樹脂中において、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂が、より微分散状態を保つことができ、定着時には、結晶性樹脂のシャープメルト性がより発揮されやすい。ビニル重合セグメントは、ビニル樹脂と同様にして合成され得る。
【0131】
ビニル重合セグメントとしては、ビニル化合物を重合したものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル重合セグメント、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント、エチレン-酢酸ビニル重合セグメントなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
上記のビニル重合セグメントの中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント(単に、「スチレン-アクリル重合セグメント」ともいう。)が好ましい。したがって、以下では、非晶性重合セグメントとしてのスチレン-アクリル重合セグメントについて説明する。
【0133】
(スチレン-アクリル重合セグメント)
スチレン-アクリル重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、を付加重合させて形成されるものである。ここでいうスチレン単量体は、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造を含むものである。また、ここでいう(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル化合物や、メタクリル酸エステル化合物の他に、アクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体等の構造中に公知の側鎖や官能基を有するエステル化合物を含むものである。
【0134】
以下に、スチレン-アクリル重合セグメントの形成が可能なスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例を示すが、本発明で使用されるスチレン-アクリル重合セグメントの形成に使用可能なものは以下に限定されない。
【0135】
(スチレン単量体)
スチレン単量体の具体例としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等が挙げられる。これらスチレン単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
((メタ)アクリル酸エステル単量体)
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェニルアクリレート等のアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらのうち、長鎖アクリル酸エステル単量体を使用することが好ましい。具体的には、メチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0137】
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」とを総称したもので、例えば、「(メタ)アクリル酸メチル」は「アクリル酸メチル」と「メタクリル酸メチル」とを総称したものである。
【0138】
これらのアクリル酸エステル単量体又はメタクリル酸エステル単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。すなわち、スチレン単量体と二種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と二種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、あるいは、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成することのいずれも可能である。
【0139】
スチレン-アクリル重合セグメント中のスチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、可塑性の観点から、スチレン-アクリル重合セグメントの総質量に対し、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、同様の観点から、スチレン-アクリル重合セグメント中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、スチレン-アクリル重合セグメントの総質量に対し、10~60質量%の範囲内であることが好ましい。
【0140】
さらに、スチレン-アクリル重合セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体の他、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに化学的に結合するための化合物が付加重合されてなることが好ましい。具体的には、上記結晶性ポリエステル重合セグメントに含まれる、多価アルコール成分由来のヒドロキシ基[-OH]又は多価カルボン酸成分由来のカルボキシ基[-COOH]とエステル結合する化合物を用いることが好ましい。したがって、スチレン-アクリル重合セグメントは、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、カルボキシ基[-COOH]又はヒドロキシ基[-OH]を有する化合物をさらに重合してなることが好ましい。
【0141】
このような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0142】
スチレン-アクリル重合セグメント中の上記化合物に由来する構成単位の含有量は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントとの化学的な結合部位をスチレン-アクリル重合セグメントに導入する観点から、スチレン-アクリル重合セグメントの総質量に対し、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0143】
スチレン-アクリル重合セグメントの形成方法は、特に限定されず、公知の油溶性あるいは水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法が挙げられる。油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤がある。
【0144】
(アゾ系又はジアゾ系重合開始剤)
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0145】
(過酸化物系重合開始剤)
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジン等が挙げられる。
【0146】
また、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は、水溶性ラジカル重合開始剤が使用できる。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等が挙げられる。
【0147】
(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法)
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記結晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性重合セグメントとを化学結合させた構造の重合体を形成することが可能な方法であれば、特に限定されない。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す第1から第3までの製造方法によって製造することができる。
【0148】
(第1の製造方法)
第1の製造方法は、予め合成された非晶性重合セグメントの存在下で、結晶性ポリエステル重合セグメントを合成する重合反応を行って、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0149】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させて、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0150】
(第3の製造方法)
第3の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で、非晶性重合セグメントを合成する重合反応を行って、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を製造する方法である。
【0151】
上記第1から第3までの製造方法の中でも、第1の製造方法は、非晶性重合鎖(非晶性樹脂鎖)に結晶性ポリエステル重合鎖(結晶性ポリエステル樹脂鎖)をグラフト化した構造のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂を合成しやすいことや、生産工程を簡素化できるため好ましい。第1の製造方法は、非晶性重合セグメントを予め形成してから結晶性ポリエステル重合セグメントを結合させるため、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向が均一になりやすい。したがって、本発明のトナーに適したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂合成しやすい観点から好ましい。
【0152】
[1.2.2 非晶性樹脂]
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂として、結晶性樹脂の他に非晶性樹脂を含むことが好ましい。非晶性樹脂とは、前述の「結晶性」を有さない樹脂であり、トナー母体粒子中に非晶性樹脂を含むことにより、加熱定着の際、結晶性樹脂と非晶性樹脂とが相溶し、トナーの低温定着性が向上する。
【0153】
すなわち、「非晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)を行ったときに、得られる吸熱曲線において、融点を有さず(即ち、昇温時の前述の明確な吸熱ピークがなく)、比較的高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂である。
【0154】
本発明において、非晶性樹脂のTgは、35~80℃の範囲内であることが好ましく、45~65℃の範囲内であることがより好ましい。
【0155】
低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱性の両立の観点から、トナー母体粒子がコア・シェル構造を有することが好ましく、当該コア・シェル構造のコア部に、3層構造の離型剤(ワックス)含有非晶性樹脂(例えば、離型剤含有非晶性ビニル樹脂)の粒子が含まれる場合、当該粒子の最外層を構成する非晶性樹脂のTgは、55~65℃の範囲内であることが好ましい。
【0156】
上記ガラス転移温度は、ASTMD3418-82に規定された方法(DSC法)にしたがって測定することができる。測定には、DSC-7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラ(パーキンエルマー社製)などを用いることができる。
【0157】
非晶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、可塑性の観点から、20000~150000の範囲内であることが好ましく、25000~130000の範囲内であることがより好ましい。また、非晶性樹脂の数平均分子量(Mn)は、可塑性の観点から、5000~150000の範囲内であることが好ましく、8000~70000の範囲内であることがより好ましい。非晶性樹脂の分子量は、前述の結晶性樹脂の分子量の測定方法と同様にして測定できる。
【0158】
非晶性樹脂と結晶性樹脂との質量比(非晶性樹脂/結晶性樹脂)は98/2~80/20の範囲内であることが好ましく、より好ましくは95/5~80/20の範囲内である。質量比が上記範囲内であることにより、トナー母体粒子の表面に結晶性樹脂が露出せず、又は、露出してもその量が極めて少なく、かつ、低温定着性を図ることができるだけの量の結晶性樹脂をトナー粒子に導入することができる。
【0159】
非晶性樹脂は、上記の結晶性樹脂と共に結着樹脂として用いられ、トナー母体粒子を構成することが好ましい。非晶性樹脂が含まれることにより、適度な定着画像強度、及び画像光沢が得られると共に、温湿度の変動環境下においても良好な帯電特性を付与できる。
【0160】
また、本発明に係るトナー母体粒子は、コア・シェル構造を有する場合、トナー母体粒子中の分散状態の制御性や帯電特性の観点から、非晶性ビニル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とがコア部を構成することが好ましく、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂がシェル層を構成することが好ましい。
【0161】
非晶性樹脂は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。非晶性樹脂の例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂及びスチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂などの非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。非晶性樹脂は、熱可塑性の観点から、非晶性ビニル樹脂(単に、ビニル樹脂ともいう)を含むのが好ましい。これらの非晶性樹脂は、公知の合成法又は市販品によって入手できる。
【0162】
以下、ビニル樹脂について説明する。
【0163】
(ビニル樹脂)
本発明に係る結着樹脂は、ビニル樹脂が主成分であることが好ましい。ビニル樹脂を主成分とすることにより、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相溶・非相溶の調整がしやすく、結着樹脂中、特に主成分のビニル樹脂中で、結晶性ポリエステル樹脂がより微分散状態を保つことができるため、定着時に、結晶性ポリエステル樹脂のシャープメルト性がより発揮される。
【0164】
ビニル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。ビニル樹脂を主成分(結着樹脂の総質量に対して50質量%以上)とすることで、結晶性樹脂との相溶性を調整しやすく、低温定着性と耐熱性を両立できる。なお、ビニル樹脂の含有量の上限は、特に限定されないが、結着樹脂の総質量に対して、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、93質量%以下がさらに好ましい。
【0165】
本発明に係る結着樹脂は、ビニル樹脂を主成分とし、さらに非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。非晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、さらに、結晶性樹脂との相溶性を調整しやすいためである。
【0166】
また、トナー母体粒子がコア・シェル構造を有する場合、非晶性ポリエステル樹脂は、ビニル樹脂よりも耐熱性が優れているため、非晶性ポリエステル樹脂を用いたシェル層を設けることにより、トナーの耐熱性及び低温定着性を両立できる。このような観点から、非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、2~20質量%の範囲内であることが好ましく、3~18質量%の範囲内であることがより好ましく、4~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0167】
本発明において、ビニル樹脂は、例えば、ビニル化合物の重合体であり、その例としては、アクリル酸エステル樹脂、スチレン-アクリル酸エステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、熱定着時の可塑性の観点から、スチレン-アクリル酸エステル樹脂(スチレン-アクリル樹脂)が好ましい。なお、スチレン-アクリル樹脂で用いられるスチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体は、前述した「スチレン単量体」、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」の項目で説明した内容と同様のものを用いてもよい。
【0168】
スチレン-アクリル樹脂は、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成される。スチレン単量体は、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他に、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有するスチレン誘導体を含む。
【0169】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、CH(R)=CHCOOR(Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数が1~24のアルキル基を表す)で表されるアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの他に、これらのエステルの構造中に公知の側鎖や官能基を有するアクリル酸エステル誘導体やメタクリル酸エステル誘導体を含む。
【0170】
スチレン単量体の例には、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン及びp-n-ドデシルスチレンが含まれる。
【0171】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート及びフェニルアクリレートなどのアクリル酸エステル単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル単量体;が含まれる。
【0172】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、「アクリル酸エステル単量体」と「メタクリル酸エステル単量体」との総称であり、それらの一方又は両方を意味する。たとえば、「(メタ)アクリル酸メチル」は、「アクリル酸メチル」及び「メタクリル酸メチル」の一方又は両方を意味する。
【0173】
上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、スチレン単量体と二種以上のアクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、スチレン単量体と二種以上のメタクリル酸エステル単量体とを用いて共重合体を形成すること、及び、スチレン単量体とアクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体とを併用して共重合体を形成すること、のいずれも可能である。
【0174】
可塑性の観点から、スチレン単量体に由来する構成単位の含有量は、非晶性樹脂の総質量に対して、40~90質量%の範囲内であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位の含有量は、非晶性樹脂の総質量に対して、10~60質量%の範囲内であることが好ましい。
【0175】
非晶性樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の他の単量体に由来する構成単位を更に含有していてもよい。他の単量体は、多価アルコール由来のヒドロキシ基[-OH]又は多価カルボン酸由来のカルボキシ基[-COOH]とエステル結合する化合物であることが好ましい。すなわち、非晶性樹脂は、上記スチレン単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体に対して付加重合可能であり、かつ、両性化合物(カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する化合物)がさらに重合してなる重合体であることが好ましい。
【0176】
本発明における「両性化合物」とは、結晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントを結合するモノマーであり、分子内に結晶性ポリエステル重合セグメントと反応し得るヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基、第2級アミノ基等の置換基と、非晶性重合セグメントと反応し得るエチレン性不飽和基と、を有するモノマーである。中でも、ヒドロキシ基又はカルボキシ基と、エチレン性不飽和基とを有するビニルカルボン酸が好ましい。
【0177】
上記両性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等などのカルボキシ基を有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基を有する化合物;が挙げられる。
【0178】
上記両性化合物に由来する構成単位の含有量は、非晶性樹脂の総質量に対して、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0179】
上記スチレン-アクリル樹脂は、公知の油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用して単量体を重合する方法によって合成することができる。油溶性の重合開始剤の例としては、アゾ系又はジアゾ系重合開始剤、及び、過酸化物系重合開始剤、が挙げられる。具体的には、前述のスチレン-アクリル重合セグメントの形成方法と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0180】
非晶性ビニル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~150000の範囲内であることが好ましく、また、数平均分子量(Mn)は、5000~150000の範囲内であることが、低温定着性及び耐ホットオフセット性の両立の観点から、好ましい。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、前述の結晶性樹脂の場合と同様にして測定できる。
【0181】
非晶性ビニル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性及び耐ホットオフセット性の両立の観点から、35~80℃の範囲内であることが好ましい。なお、ガラス転移温度は、前述の非晶性樹脂の場合と同様にして測定することができる。
【0182】
(ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂)
本発明に係る結着樹脂は、非晶性ビニル樹脂との併用時に適度な相溶性が得られ、トナー母体粒子の形状制御性や定着画像強度の観点から、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を含むことで、相溶・非相溶及び結晶化が調整しやすくなる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、一部が変性された変性非晶性ポリエステル樹脂ともいえる。
【0183】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000~50000の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であることにより、相溶・非相溶及び結晶化を、より調整しやすい。また、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、3000~12500の範囲内であることが好ましい。分子量は、前述の結晶性樹脂の場合と同様にして測定できる。
【0184】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、好ましくは非晶性ビニル重合セグメントとが化学的に結合した樹脂である。
【0185】
非晶性ポリエステル重合セグメントとは、非晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性ポリエステル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。また、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントとは、非晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分を示す。非晶性ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂としては、例えば、スチレン-アクリル樹脂などのビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂などが挙げられる。非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0186】
したがって、好適な非晶性ビニル重合セグメントとは、非晶性ビニル樹脂に由来する部分を指す。すなわち、非晶性ビニル樹脂を構成するものと同じ化学構造の分子鎖を指す。
【0187】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントとを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であることが好ましい。グラフト共重合体とすることにより、低温定着性、耐ホットオフセット性及び離型分離性を両立できる。
【0188】
さらに、上記観点から、非晶性ポリエステル重合セグメントが、非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントを主鎖として、グラフト化されている構造であることが好ましい。すなわち、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、主鎖として非晶性ポリエステル以外の非晶性重合セグメント、特に非晶性ビニル重合セグメントを有し、側鎖として非晶性ポリエステル重合セグメントを有するグラフト共重合体であることが好ましい。
【0189】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の総質量に対して、3~20質量%の範囲内であることが好ましく、5~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0190】
(非晶性ポリエステル重合セグメント)
非晶性ポリエステル重合セグメントは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂に由来する部分であって、DSCにおいて、明確な吸熱ピークが認められない重合セグメントをいう。
【0191】
非晶性ポリエステル重合セグメントは、上記定義したとおりであれば、特に限定されない。例えば、非晶性ポリエステル重合セグメントによる主鎖に他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性ポリエステル重合セグメントを他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂は、上記のように、明確な吸熱ピークが認められないものであれば、本発明において、非晶性ポリエステル重合セグメントを有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0192】
(多価カルボン酸成分)
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などのジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などが挙げられる。これら多価カルボン酸は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0193】
これらの中でも、本発明の効果を得やすいという観点から、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸や、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、コハク酸、トリメリット酸を用いることが好ましい。
【0194】
(多価アルコール成分)
また、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオールなどが挙げられる。これら多価アルコール成分は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0195】
これらの中でも、本発明の効果を得やすいという観点から、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコールが好ましい。
【0196】
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[-OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[-COOH]との当量比[-OH]/[-COOH]において、1.5/1~1/1.5の範囲内であることが好ましく、1.2/1~1/1.2の範囲内であることがより好ましい。多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との使用比率が、上記範囲内であることにより、非晶性ポリエステル樹脂の酸価及び分子量を制御することがより容易である。
【0197】
非晶性ポリエステル重合セグメントの形成方法は、特に限定されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより当該重合セグメントを形成することができる。
【0198】
非晶性ポリエステル重合セグメントの製造の際に使用可能な触媒としては、上記(結晶性樹脂)の項で説明した触媒と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0199】
重合温度は、特に限定されないが、150~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間は、特に限定されないが、0.5~10時間の範囲内であることが好ましい。重合中は、必要に応じて、反応系内を減圧にしてもよい。
【0200】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の非晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して50~99.9質量%の範囲内であることが好ましく、70~95質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、耐熱性及び低温定着性を両立できる。なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の各重合セグメントの構成成分及び含有量は、例えば、NMR測定、メチル化反応Py-GC/MS測定により特定することができる。
【0201】
なお、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂には、さらにスルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。上記置換基の導入は、非晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、以下で詳説する非晶性ビニル重合セグメント中であってもよい。
【0202】
(非晶性重合セグメント)
本発明においては、非晶性ポリエステル重合セグメント以外の非晶性重合セグメントを、単に「非晶性重合セグメント」ともいう。非晶性重合セグメント(特に、非晶性ビニル重合セグメント)は、結着樹脂中に非晶性ビニル樹脂が含まれる場合に、当該非晶性ビニル樹脂とハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂との相溶性を制御することができる。
【0203】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中(さらには、トナー中)に、非晶性重合セグメントを含有することは、例えば、NMR測定、メチル化反応Py-GC/MS測定を用いて化学構造を特定することによって確認することができる。
【0204】
また、非晶性重合セグメントは、当該非晶性重合セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について示差走査熱量測定(DSC)を行った時に、融点を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有する。なお、当該非晶性重合セグメントと同じ化学構造及び分子量を有する樹脂について、ガラス転移温度(Tg)が、35~80℃の範囲内であることが好ましく、45~65℃の範囲内であることがより好ましい。
【0205】
上記ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中において、非晶性ポリエステル重合セグメントの一部を非晶性重合セグメントに置き換え、非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントが結合した構造を有することが、好ましい。例えば、非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントが結合した重合体による主鎖に、他成分を共重合させた構造を有する樹脂や、非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントを結合した重合体を、他成分からなる主鎖に共重合させた構造を有する樹脂は、本発明において、非晶性重合セグメントを有するハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂に該当する。
【0206】
非晶性重合セグメントとしては、特に限定されず、例えば、ビニル化合物を重合したもの、ポリオール成分とイソシアネート成分とを重合したもの、尿素とホルムアルデヒドとを重合したもの等が挙げられる。中でも、ビニル化合物を重合して得られる非晶性ビニル重合セグメントであることが好ましく、例えば、アクリル酸エステル重合セグメント、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント、エチレン-酢酸ビニル重合セグメントなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0207】
上記のビニル重合セグメントの中でも、熱定着時の可塑性を考慮すると、スチレン-アクリル酸エステル重合セグメント(スチレン-アクリル重合セグメント)が好ましい。また、非晶性ビニル樹脂の好適な形態は、スチレン-アクリル樹脂であることから、非晶性ビニル重合セグメントもスチレン-アクリル重合セグメントであることが好ましい。このような形態とすることにより、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂と非晶性ビニル樹脂との相溶性がより向上し、トナー母体粒子の形状を制御しやすい。
【0208】
スチレン-アクリル重合セグメントの形成に用いられる単量体や形成方法は、上記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の項で説明した「スチレン-アクリル重合セグメント」項目の内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0209】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂中の非晶性重合セグメントの含有量は、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の総質量に対して、0.1~50質量%の範囲内であることが好ましく、5~30質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、結着樹脂中の非晶性樹脂との相溶性がより高くなり、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱性を両立できる。
【0210】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、上記非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとを結合した重合体を形成することができる方法であれば、特に限定されない。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0211】
(1)非晶性重合セグメントを予め重合しておき、当該非晶性重合セグメントの存在下で非晶性ポリエステル重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0212】
(2)非晶性ポリエステル重合セグメントと非晶性重合セグメントとをそれぞれ形成しておき、これらを結合させてハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0213】
(3)非晶性ポリエステル重合セグメントを予め形成しておき、当該非晶性ポリエステル重合セグメントの存在下で非晶性重合セグメントを形成する重合反応を行ってハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を製造する方法。
【0214】
上記(1)~(3)の形成方法の中でも、(1)の方法は、非晶性重合セグメントに非晶性ポリエステル重合セグメントがグラフト化した構造であるハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を形成し易いことや、生産工程を簡素化できる観点から、好ましい。
【0215】
さらに、トナー母体粒子中には、必要に応じて、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの内添剤が含有されていてもよい。
【0216】
[1.3 その他の成分]
本発明に係るトナー母体粒子は、結着樹脂及び着色剤の他に、必要に応じて、離型剤(ワックス)、荷電制御剤等を含有してもよい。離型剤を含有することにより、定着部材などからのトナーの離型性を高めることができる。また、荷電制御剤を含有することにより、トナー母体粒子の帯電性を調整することができる。
【0217】
〔離型剤〕
離型剤としては、特に制限されず、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスなどを含む炭化水素ワックス、ジステアリルケトンなどを含むジアルキルケトンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、及びジステアリルマレエートなどを含むエステルワックス、並びに、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどを含むアミドワックス等が挙げられる。これらは、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0218】
離型剤の含有量は、トナー母体粒子の総質量に対して、2~30質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましい。離型剤の含有量が、2質量%以上であることにより、定着部材からのトナーの離型性が十分に得られ、離型剤の含有量が、30質量%以下であることにより、トナー母体粒子に十分な量の結着樹脂を含ませることができ、画像の定着性が十分に得られる。
【0219】
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤としては、特に制限されず、ニグロシン染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第四級アンモニウム塩化合物、アゾ金属錯体、サリチル酸金属塩又はその金属錯体等が挙げられる。
【0220】
帯電量の観点から、荷電制御剤の含有量は、結着樹脂の総質量に対して0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.5~5質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0221】
[1.4 トナー母体粒子の構造]
また、本発明に係るトナー母体粒子の構造は、前述したトナー母体粒子のみの単層構造であってもよいし、前述したトナー母体粒子をコア粒子として、当該コア粒子とその表面を被覆するシェル層とを備えるコア・シェル構造のような多層構造であってもよい。シェル層は、コア粒子の全表面を被覆していなくてもよく、部分的にコア粒子が露出していてもよい。コア・シェル構造の断面は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)などの公知の観察手段によって、確認することができる。
【0222】
コア・シェル構造の場合は、コア粒子とシェル層でガラス転移点、融点、硬度などの特性を異ならせることができ、目的に応じたトナー母体粒子の設計が可能である。例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤などを含有し、ガラス転移点が比較的低いコア粒子の表面に、ガラス転移点が比較的高い樹脂を凝集、融着させて、シェル層を形成することができる。
【0223】
また、本発明のトナーは、カブリの抑制などの観点から、離型剤が、トナー粒子表面に露出しない状態で、かつ、トナー粒子の表面近傍に存在していることが好ましい。例えば、トナー母体粒子がビニル樹脂を含み、且つ離型剤がエステルワックスを含む場合、離型剤はビニル樹脂近傍に存在することとなるため、ビニル樹脂もまた、トナー粒子の表面近傍に存在していることが好ましい。すなわち、トナーは、少なくとも二層(内側層及び外表層)以上の積層構造を有するトナー母体粒子を含み、外側層(表面層)が、ビニル樹脂と、エステルワックスを含む離型剤とを含んでいることが好ましい。外側層は、主成分としての非晶性ポリエステル樹脂をさらに含んでいてもよい。また、本発明の効果をさらに高めるため、上記ビニル樹脂のドメインが、非晶性ポリエステル樹脂のマトリクス中に分散されていることが好ましい。
【0224】
トナー母体粒子の平均円形度は、0.935~0.995の範囲内であることが好ましく、0.945~0.990の範囲内であることがより好ましく、0.955~0.980の範囲内であることが更に好ましい。上記範囲内であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくく、帯電量が安定し、高画質な画像が得られる。なお、平均円形度は、例えば、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて測定することができる。
【0225】
具体的な測定方法としては、トナー母体粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行って分散させた後、「FPIA-2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数4000個の適正濃度で測定を行う。円形度は下記式で計算される。
円形度=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、平均円形度は、各粒子の円形度を合計し、測定した全粒子数で割った算術平均値である。
【0226】
[2 外添剤]
「外添剤」とは、トナー粒子の帯電性能、流動性、クリーニング性等を向上させる観点から添加されるものであり、トナー母体粒子の表面に付着する。
【0227】
[2.1 酸化チタン]
本発明に係るトナーは、外添剤として酸化チタンを含有する。酸化チタンを外添することにより、トナーの流動性が得られる。また、酸化チタンは低抵抗であるため、トナー母体粒子の表面に外添することにより、トナーの抵抗を低下させる。
【0228】
酸化チタンの含有量は、トナー母体粒子の総質量に対して、0.01質量%以上、1.00質量%未満の範囲内であることを特徴とする。酸化チタンの含有量が、0.01質量%未満であると、トナーの流動性が十分に得られない。また、酸化チタンの含有量が、1.00質量%以上であると、酸化チタンが、白色顔料として機能し、トナーの黒色の発色性(画像濃度)が低下してしまう。
【0229】
また、酸化チタンは、密度が大きいためトナー母体粒子表面から離脱しやすいが、トナー母体粒子の総質量に対して、1.00質量%未満であることにより、酸化チタンがキャリアへ移行することによる帯電性の低下を抑制できる。また、高カバレッジでの連続印字においても、優れた帯電安定性が得られる。加えて、過度な流動性によるクリーニング性の悪化も抑制できる。
【0230】
酸化チタンとしては、形状等の特に制限はなく、個数平均粒子径が、10~50nmの範囲内であることが好ましく、20~40nmの範囲内であることがより好ましい。酸化チタンの個数平均粒子径が上記範囲内であることにより、酸化チタンのトナー母体粒子への埋没が生じにくくなるとともに、キャリアとの間に十分な接触点が得られ、さらにはキャリアへの移行も抑制されると考えられる。
【0231】
酸化チタンは、トナー母体粒子の表面上に存在し、キャリアへと移行しないことが、現像剤の帯電性を維持する上で重要である。酸化チタンの個数平均粒子径が、50nm以下であることにより、大粒子径の粒子を外添剤として併用した際に、大粒子径の粒子が、スペーサーとしての役割を果たすため、酸化チタンがトナー母体粒子から離脱しづらくなる。したがって、連続印字時における優れた帯電立ち上がり性、及び、長期使用における帯電安定性が得られる。
【0232】
酸化チタンの個数平均粒子径は、以下の方法で測定することができる。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率40000倍でトナーの画像の撮影を行う。次いで、酸化チタンを確定したSEM画像を二値化処理し、粒子径を測定する。測定した100個の一次粒子の粒子径と個数を元に個数粒度分布を求める。
【0233】
酸化チタンの種類は、特に制限されず、表面改質処理剤による表面改質処理を施した疎水性酸化チタンが好ましい。疎水性酸化チタンは、水分吸着量を低減できるため、帯電環境、例えば、高温高湿環境下における帯電量の低下を抑制できる。
【0234】
表面改質処理剤としては、一般的なシランカップリング剤、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いることができる。
【0235】
シランカップリング剤としては、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤等が挙げられる。具体的には、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O-(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N-ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0236】
シリコーンオイルの具体例としては、例えば、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物や、直鎖状又は分岐状のオルガノシロキサンが挙げられる。
【0237】
また、側鎖、又は片末端や両末端や側鎖片末端や側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い、少なくとも末端を変性したシリコーンオイルを用いてもよい。変性基の種類としては、アルコキシ、カルボキシ、カルビノール、高級脂肪酸変性、フェノール、エポキシ、メタクリル、アミノなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、例えば、アミノ/アルコキシ変性など数種の変性基を有するシリコーンオイルであってもよい。また、ジメチルシリコーンオイルとこれら変性シリコーンオイルと、更には他の表面改質処理剤とを、混合処理若しくは併用処理してもよい。
【0238】
表面改質処理方法としては、例えば、気相中で浮遊させられた粒子に対して、改質処理剤又は改質処理剤を含む溶液を噴霧するスプレードライ法等による乾式法、処理剤を含有する溶液中に粒子を浸漬し、乾燥する湿式法、処理剤と粒子を混合機により混合する混合法などが挙げられる。
【0239】
酸化チタンの市販品としては、「CR-50-2」、「CR-58」(いずれも銘柄名、石原産業株式会社製)等が挙げられる。
【0240】
[2.2 その他外添剤]
本発明に係る外添剤は、酸化チタンの他に、従来公知の外添剤を併用することができる。
従来公知の外添剤としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、酸化ホウ素粒子、チタン酸ストロンチウム粒子等の無機材料を主成分とする粒子が挙げられる。これらの無機材料を主成分とする粒子は、必要に応じて、シランカップリング剤やシリコーンオイルなどの表面改質処理剤によって疎水化処理されていてもよい。これらの粒子径は、20~500nmの範囲内であることが好ましく、70~300nmの範囲内であることがより好ましい。
【0241】
また、従来公知の外添剤としては、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体などを含む有機材料を主成分とする粒子を含んでいてもよい。これらの粒子径は、10~1000nmの範囲内であることが好ましい。
【0242】
さらに、高級脂肪酸の金属塩などの滑剤を含んでいてもよい。高級脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸及びリシノール酸等が挙げられる。金属塩を構成する金属の例には、亜鉛、マンガン、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム及びカルシウム等が挙げられる。
【0243】
これらの外添剤の含有量は、酸化チタンと合計した外添剤の含有量が、トナー母体粒子の総質量に対して、0.05~5.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0244】
[3 トナーの製造方法]
(トナー母体粒子の製造方法)
トナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。
【0245】
これらの中でも、粒子径の均一性、形状の制御性、コア・シェル構造形成の容易性の観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。以下、乳化凝集法について説明する。
【0246】
<乳化凝集法>
乳化凝集法は、界面活性剤や分散安定剤によって分散された樹脂の粒子(以下、「樹脂粒子」ともいう。)の分散液を、着色剤の粒子などのトナー粒子構成成分の分散液と混合し、凝集剤を添加することによって所望のトナーの粒子径となるまで凝集させ、その後又は凝集と同時に、樹脂粒子間の融着を行い、形状制御を行うことにより、トナー粒子を形成する方法である。
【0247】
樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる二層以上の構成とする複数層で形成された複合粒子とすることもできる。
【0248】
樹脂粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、転相乳化法などにより製造、又はいくつかの製法を組み合わせて製造することができる。樹脂粒子に内添剤を含有させる場合には、中でもミニエマルション重合法を用いることが好ましい。
【0249】
トナー母体粒子中に内添剤を含有させる場合は、樹脂粒子に内添剤を含有してもよく、また、別途内添剤のみを含む内添剤粒子の分散液を調製し、当該内添剤粒子を、樹脂粒子を凝集させる際に、共に凝集させてもよい。
【0250】
また、乳化凝集法によって、コア・シェル構造を有するトナー母体粒子を得ることもできる。具体的には、先ず、コア部用の結着樹脂粒子と着色剤とを凝集(、融着)させて粒状のコア部を作製し、次いで、コア部の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加して、コア部表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア部表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0251】
本発明に係る結着樹脂は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を含むことが好ましい。
乳化凝集法によりトナー母体粒子を製造する場合、実施形態としては、結着樹脂粒子分散液として結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液及び着色剤分散液を調製する工程(以下、調製工程ともいう。)(1)と、結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液及び着色剤分散液を混合して凝集・融着させる工程(以下、凝集・融着工程ともいう。)(2)と、を含むことが好ましい。
【0252】
以下、各工程について詳述する。
【0253】
(1)調製工程
工程(1)は、より詳細には下記結晶性樹脂粒子分散液調製工程、非晶性樹脂粒子分散液調製工程及び着色剤分散液調製工程があり、また、必要に応じて、離型剤分散液調製工程などを含む。
【0254】
(1-1)結晶性樹脂粒子分散液調製工程及び非晶性樹脂粒子分散液調製工程
結晶性樹脂粒子分散液調製工程は、トナー母体粒子を構成する結晶性樹脂を合成し、この結晶性樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させて結晶性樹脂粒子の分散液を調製する工程である。また、非晶性樹脂粒子分散液調製工程は、トナー母体粒子を構成する非晶性樹脂を合成し、この非晶性樹脂を水系媒体中に粒子状に分散させて非晶性樹脂粒子の分散液を調製する工程である。
【0255】
結晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、当該結晶性樹脂を有機溶媒(溶剤)中に溶解又は分散させて油相液を調製し、油相液を転相乳化などによって水系媒体中に分散させて、所望の粒子径に制御された状態の油滴を形成させた後、有機溶媒を除去する方法が挙げられる。非晶性樹脂を水系媒体中に分散させる方法についても、同様である。
【0256】
油相液の調製に使用される有機溶媒(溶剤)としては、油滴の形成後の除去処理が容易である観点から、沸点が低く、かつ、水への溶解性が低いものが好ましく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0257】
有機溶媒(溶剤)の使用量(二種以上使用する場合はその合計使用量)は、樹脂の総質量に対して、1~300質量%の範囲内であることが好ましく、10~200質量%の範囲内であることがより好ましく、25~100質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0258】
安定して乳化し、かつ、乳化を円滑に進める観点から、油相液中のカルボキシ基がプロトン(H)イオンを解離していることが好ましく、解離を促進するために、油相液中に、アンモニア、水酸化ナトリウム等を添加することが好ましい。
【0259】
水系媒体の使用量は、油相液の総質量に対して、50~2,000質量%の範囲内であることが好ましく、100~1,000質量%の範囲内であることがより好ましい。水系媒体の使用量が上記範囲内であることにより、水系媒体中において油相液を所望の粒子径に乳化分散させることができる。
【0260】
水系媒体中には、分散安定剤が溶解されていてもよく、また、油滴の分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0261】
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなどの無機化合物を挙げることができる。得られるトナー母体粒子中から分散安定剤を除去する観点から、リン酸三カルシウムのように酸やアルカリに可溶性のものを使用することが好ましく、また、環境面の観点から、酵素により分解可能なものを使用することが好ましい。
【0262】
界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられ、また、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
【0263】
また、分散安定性の観点から、樹脂粒子は、粒子径が0.5~3μmの範囲内であることが好ましく、具体的には、粒子径が1μm及び3μmのポリメタクリル酸メチル樹脂粒子、粒子径が0.5μm及び2μmのポリスチレン樹脂粒子、粒子径が1μmのポリスチレン-アクリロニトリル樹脂粒子などが挙げられる。
【0264】
このような油相液の乳化分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、乳化分散を行うための分散機は、特に限定されず、例としては、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
【0265】
油滴の形成後における有機溶媒の除去は、結晶性樹脂粒子が水系媒体中に分散された状態の分散液全体を、撹拌状態で徐々に昇温し、一定の温度域において強い撹拌を与えた後、脱溶媒を行うなどの操作により行うことができる。あるいは、エバポレータ等の装置を用いて減圧しながら除去することができる。非晶性樹脂微粒子についても、上記した結晶性樹脂粒子と同様にして、油滴の形成後に有機溶媒を除去することができる。
【0266】
このようにして得られる結晶性樹脂粒子分散液又は非晶性樹脂粒子分散液における結晶性樹脂粒子(油滴)又は非晶性樹脂粒子(油滴)の平均粒子径は、60~1000nmの範囲内であることが好ましく、80~500nmの範囲内であることがより好ましい。なお、樹脂粒子、着色剤粒子、離型剤等の平均粒子径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA-150」(日機装株式会社製))で測定することができる。なお、これらの樹脂粒子(油滴)の平均粒子径は、乳化分散時の機械的エネルギーの大きさにより制御することができる。
【0267】
結晶性樹脂粒子分散液又は非晶性樹脂粒子分散液における結晶性樹脂粒子又は非晶性樹脂粒子の含有量は、分散液の総質量に対して、10~50質量%の範囲内であることが好ましく、15~40質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、粒度分布の広がりを抑制し、トナー特性を向上させることができる。
【0268】
(1-2)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤(本発明においては、顔料を含む)を水系媒体中に粒子状に分散させて顔料粒子の分散液を調製する工程である。
【0269】
当該水系媒体は上記(1-1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、上記(1-1)で示した界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0270】
顔料の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機は、特に限定されず、上記で挙げたように、例として、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、又は高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられる。
【0271】
分散性の観点から、顔料粒子分散液における顔料粒子の合計の含有量は、分散液の総質量に対して、5~40質量%の範囲内であることが好ましく、10~30質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0272】
(1-3)離型剤粒子分散液調製工程
この離型剤粒子分散液調製工程は、トナー母体粒子中に離型剤を含有するものを所望する場合に、必要に応じて行う工程であって、離型剤を水系媒体中に粒子状に分散させて離型剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0273】
当該水系媒体は上記(1-1)で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性の観点から、上記(1-1)で示した界面活性剤や樹脂粒子などが添加されていてもよい。
【0274】
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機は、特に限定されず、上記で挙げたように、例として、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波ホモジナイザーなどの超音波分散機、高圧衝撃式分散機アルティマイザー、又は高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。離型剤粒子を分散させるにあたり、必要に応じて加熱を行ってもよい。
【0275】
離型剤粒子分散液における離型剤粒子の含有量は、分散液の総質量に対して、10~50質量%の範囲内であることが好ましく、15~40質量%の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、耐ホットオフセット性及び分離性確保の効果が得られる。
【0276】
(2)凝集・融着工程
結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液、及び顔料粒子分散液、また、必要に応じて、離型剤粒子分散液などの他の成分を添加し、混合する。次いで、pH調整による粒子表面の反発力と、電解質体からなる凝集剤による凝集力との、バランスを取りながら、緩慢に凝集させる。そして、平均粒子径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行い、トナー粒子を形成する。この凝集・融着工程も必要に応じ機械的エネルギーや加熱手段を利用して行うことができる。
【0277】
凝集工程では、まず、得られた各分散液を混合して混合液とし、非晶性樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱して凝集させ、凝集粒子を形成する。凝集粒子の形成は、撹拌下、混合液のpHを酸性にすることによってなされる。pHは、2~7の範囲内であることが好ましく、2~6の範囲内であることがより好ましく、2~5の範囲内であることがさらに好ましい。
【0278】
また、凝集工程においては、凝集剤を用いることが好ましい。凝集剤は、特に限定されないが、分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、二価以上の金属を含む錯体を好適に用いることができる。
【0279】
無機金属塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硝酸カルシウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリシリカ鉄、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩及びポリ塩化アルミニウムが好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方がより好ましい。
【0280】
トナー母体粒子中の2価以上の金属イオンの含有量は、主に本工程における混合液のpH、種類等を調整することにより制御することができる。
【0281】
凝集粒子が所望の粒子径になったところで、結晶性樹脂粒子及び/又は非晶性樹脂粒子を追添加することで、コア凝集粒子の表面を結晶性樹脂及び/又は非晶性樹脂で被覆した構成のトナー(コア・シェル構造を有する粒子)を作製することができる。追添加する場合、追添加前に凝集剤を添加する、又は、pH調整を行う等の操作を行ってもよい。
【0282】
凝集の際には加熱、昇温することが好ましい。この際、加熱、昇温によって、融着温度以上になった場合には、融着工程も同時に進行することとなる。昇温速度としては0.1~5℃/分の範囲内で行うことが好ましい。また、加熱温度(ピーク温度)は40~100℃の範囲内で行うことが好ましい。
【0283】
凝集粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、4.5~7μmの範囲内であることが好ましい。凝集粒子が所望の粒子径になったところで、凝集停止剤を添加し、反応系内の各種の粒子の凝集作用を抑制して、停止させる(以下、凝集停止工程ともいう。)ことにより、粒子径を制御できる。凝集停止剤とは、凝集作用が促進されるpH環境から脱する方向に、pH調整することができる塩基化合物のことをいう。凝集停止工程においては、反応系のpHを5~9に調整することが好ましい。
【0284】
凝集停止剤(塩基化合物)としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩、グルコナール、グルコン酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトロトリアセテート(NTA)塩、GLDA(市販のL-グルタミン酸-N,N-二酢酸)、フミン酸及びフルビン酸、マルトール及びエチルマルトール、ペンタ酢酸及びテトラ酢酸、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸四ナトリウム等のカルボキシ基及びヒドロキシ基の両方の官能基を有する公知の化合物若しくはその塩又は水溶性ポリマー類(高分子電解質)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。凝集停止工程においては、凝集工程に準じて撹拌を行ってもよい。
【0285】
融着工程は、上記凝集停止工程を経た後、又は、凝集工程と同時に、反応系を所期の融着温度に加温することにより、凝集粒子を構成する各粒子を融着させて凝集粒子を融合し、融合粒子を形成させる工程である。
【0286】
融着工程における融着温度は、結晶性樹脂の融点以上であることが好ましく、融着温度は、結晶性樹脂の融点より0~20℃高い温度であることが好ましい。加熱の時間は、融着がされる程度に行えばよく、0.5~10時間程度行えばよい。
【0287】
凝集・融着工程においては、系内の各粒子を安定して分散させるために、水系媒体中に、上記(1-1)結晶性樹脂粒子分散液調製工程/非晶性樹脂粒子分散液調製工程等で用いられる界面活性剤と同義の界面活性剤を添加してもよい。
【0288】
凝集・融着工程における非晶性樹脂粒子/結晶性樹脂粒子の添加割合(質量比)は、好ましくは1~100である。上記範囲内であることにより、耐ホットオフセット性及び低温定着性に優れる。
【0289】
なお、トナー母体粒子中に他の内添剤を導入する場合は、内添剤のみを含む内添剤粒子分散液を調製し、凝集・融着工程において、結晶性樹脂粒子分散液、非晶性樹脂粒子分散液及び顔料分散液と共に、当該内添剤粒子分散液を混合する方法が好ましい。
【0290】
融着後に冷却し、融合粒子を得る。冷却速度は好ましくは1~20℃/分である。
【0291】
乳化凝集法によりトナーを得る場合、上記凝集・融着工程の後、トナーの円形度を制御するための円形度制御工程(3)を有することが好ましい。
【0292】
(3)円形度制御工程
円形度制御処理としては、具体的には、凝集・融着工程で得られた粒子を加熱する加熱処理が挙げられる。加熱温度及び保持時間を調整することにより円形度を制御することができる。加熱温度を高くする、又は、保持時間を長くすることにより、円形度を1に近づけることができる。
【0293】
円形度制御処理における加熱温度としては、70~95℃の範囲内であることが好ましい。加温中に円形度測定装置にて2μm以上の粒子径の粒子の円形度を測定し、所望の円形度であるかどうかを適宜判断することによって、円形度の制御が可能である。
【0294】
(4)濾過・洗浄工程
得られたトナー母体粒子の分散液を冷却し、水等の溶媒を用いて、分散液からトナー母体粒子を固液分離して、トナー母体粒子を濾別する濾過処理、及び、濾別されたトナー母体粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理を行う。
【0295】
具体的な固液分離及び洗浄の方法は、特に限定されず、例としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられる。濾過・洗浄工程において、適宜、pH調整や粉砕などを、一回若しくは繰り返し行ってもよい。
【0296】
(5)乾燥工程
洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥させる。乾燥工程で使用される乾燥機は、特に限定されないが、例としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられる。なお、乾燥処理されたトナー母体粒子中の、カールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0297】
また、乾燥処理されたトナー母体粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。解砕処理装置は、特に限定されず、例としては、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置が挙げられる。
【0298】
(外添剤添加工程)
本発明に係るトナーは、上記製造方法で得られるトナー母体粒子に、外添剤を添加し、トナー母体粒子表面に付着させることにより、得られる。
乾燥処理されたトナー母体粒子と、外添剤を混合する装置は、特に限定されず、例としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機、サンプルミルなどの種々の公知の混合装置を挙げることができる。また、トナーの粒度分布を適当な範囲とするため、必要に応じ篩分級を行ってもよい。
【0299】
<キャリア>
本発明に係るキャリアは、芯材(以下、「芯材粒子」ともいう。)及び芯材の表面を被覆する樹脂を含む。「被覆」とは、芯材を樹脂が一部被覆している状態も含む。なお、被覆する樹脂により構成される層を「樹脂層」といい、被覆に用いられる樹脂を「被覆用樹脂」ともいう。
【0300】
芯材粒子が樹脂で被覆されていると、トナーが飛散せず、安定した画像濃度が得られる。しかし、芯材粒子が完全に樹脂で被覆されると、磁性を有する材料からなる芯材粒子が露出しないため、キャリアの抵抗は高くなる。よって、キャリアは、芯材粒子が適度に露出するように樹脂で被覆される必要がある。
【0301】
なお、芯材粒子の材料が酸化鉄系以外の場合についても同様に、芯材粒子の材料に含まれる主たる元素において、下記に示す元素含有率を特定の範囲内とすることにより、キャリアの表面に、芯材粒子が適度に露出し、同様の効果が得られると考えられる。
【0302】
以下に示す式(2)は、キャリア表面における主たる元素(炭素、酸素及び鉄)のうち鉄の占める割合(「鉄元素含有率」又は「鉄量率」ともいう。)を表しており、この割合を特定の範囲内とすることにより、キャリアの表面に、芯材粒子が適度に露出する。
【0303】
式(2) 鉄元素含有率(atomic%)=AFe/(A+A+AFe
(ただし、AFe、A及びAは、それぞれ、キャリア表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を表す。)
【0304】
本発明においては、上記式(1)で示すように、式(2)で表される鉄元素含有率が、2~20atomic%の範囲内であることを特徴とする。鉄元素含有率が、2atomic%未満であると、芯材の露出が不十分であるため、キャリアの抵抗が高くなり、本発明に係るトナーと併せて現像剤として用いた際に、長期使用において帯電量が低下しやすい。また、20atomic%超であると、樹脂の被覆が不十分であるため、キャリアの抵抗が非常に低くなり、現像剤として用いた際にトナーが飛散してしまい、安定した画像濃度が得られない。
【0305】
式(2)で表される鉄元素含有率は、以下の方法で測定できる。
X線光電子分光測定(XPS測定)による表面元素組成分析において、炭素についてはC1sスペクトルを、鉄についてはFe2p3/2スペクトルを、酸素についてはO1sスペクトルを測定する。これらの各々の元素のスペクトルに基づいて、それぞれ、「A」、「A」及び「AFe」と表されるキャリア表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(atomic%)を求め、式(2)より算出する。
なお、XPS測定装置としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック製、K-Alphaを使用し、測定は、X線源としてAlモノクロマチックX線を用い、加速電圧を7kV、エミッション電流を6mVに設定して行った。
XPSの測定はサンプルを測定室に導入してから測定室の真空道が9.0×10-8mbarに到達してからX線を立ち上げて測定を実施する。
スポット径:400μm
Scan回数:15回
PASS Energy:50eV
解析方法:Smart法
【0306】
キャリアの体積平均粒子径は、15~28μmの範囲内であることが好ましく、20~25μmの範囲内であることがより好ましい。なお、キャリアの体積平均粒子径は、次の方法で測定することができる。
【0307】
キャリアの体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置「HEROS KA」(日本レーザー株式会社製)を用いて、湿式法にて測定することができる。具体的には、まず、焦点位置200mmの光学系を選択し、測定時間を5秒に設定する。そして、測定用の試料粒子を0.2質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に加え、超音波洗浄機「US-1」(asone社製)を用いて3分間分散させて測定用試料分散液を作製し、これを「HEROS KA」に数滴供給し、試料濃度ゲージが測定可能領域に達した時点で測定を開始する。得られた粒度分布を粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から累積分布を作成し、累積50%となる粒子径を体積平均粒子径(D50)とした。
【0308】
以下、キャリアを構成する芯材粒子及び被覆用樹脂について説明する。
【0309】
[1 芯材粒子]
本発明においては、芯材粒子に、酸化鉄系材料(フェライト)を用いる。
なお、芯材粒子としては、酸化鉄の他に、銅、ニッケル、コバルトなどの磁性金属、又は磁性金属酸化物などが一般的に用いられ、これらの材料についても、キャリアの表面に、芯材粒子を適度に露出させることにより、本発明と同様の効果が得られると考えられる。
【0310】
フェライトは、一般式:(MO)(Feで表される化合物であり、フェライトを構成するFeのモル比yが、30~95モル%の範囲内であることが好ましい。モル比yが上記範囲内であることにより、フェライトは所望の磁化を得やすく、キャリア同士が付着しづらい。
【0311】
一般式中のMは金属原子であり、Mとしては、例えば、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、リチウム(Li)等が挙げられる。これら金属原子は、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、残留磁化が低く好適な磁気特性が得られるという観点から、マンガン、マグネシウム、ストロンチウム、リチウム、銅、亜鉛が好ましく、マンガン、マグネシウム、ストロンチウムがより好ましい。
【0312】
すなわち、本発明に係る芯材粒子は、マンガン又はマグネシウムの少なくとも一方を含むフェライトであることが好ましく、マンガン及びマグネシウムの双方を含むフェライトであることがより好ましい。マンガン及びマグネシウムの双方を含むフェライトにおいて、平均磁化を所望の範囲に制御しやすい観点から、MnOの含有量が、フェライトの全モル数に対して、20~40モル%の範囲内であることが好ましく、また、7~30モル%の範囲内であることがより好ましい。
【0313】
芯材粒子は市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0314】
トナーとの摩擦帯電性能の観点から、芯材粒子の体積平均粒子径は、10~50μmの範囲内であることが好ましく、20~40μmの範囲内であることがより好ましい。なお、体積平均粒子径は、前述の方法で測定できる。
【0315】
芯材粒子の表面の形状は、特に制限されないが、キャリア表面において適度に芯材を露出させる観点から、適度に凹凸を有していていることが好ましい。芯材粒子の表面の凹凸具合は、形状係数(SF-1)の値により判断できる。
【0316】
形状係数(SF-1)とは、下記式により算出される値である。形状係数が100の場合、粒子の形状が真球であることを意味し、値が大きくなるにつれ、粒子の表面が大きな凹凸を有していることを意味する。
SF-1=(キャリア芯材粒子の最大長)/(キャリア芯材粒子の投影面積)×(π/4)×100
【0317】
芯材粒子における形状係数は、焼成温度及び材料(特に、前述のMで表される金属原子の種類・配合組成)等を適宜選択することにより、所望の値が得られる。焼成温度は、1000~2000℃の範囲内であることが好ましく、1000~1500℃の範囲内であることがより好ましい。
芯材粒子における形状係数は、110~150の範囲内であることが好ましく、120~140の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、芯材粒子の表面が適度に凹凸を有するため、樹脂を被覆させたキャリアにおいて、式(2)で表される鉄元素含有率を上記範囲内に調整することができる。なお、形状係数を大きくすることにより、芯材粒子の凹凸が大きくなるため芯材粒子が露出しやすくなり、式(2)で表される鉄元素含有率の値も大きくなる。
【0318】
芯材粒子の形状係数は、以下の方法で測定した。キャリア芯材を、走査型電子顕微鏡により、150倍にてランダムに100個以上の粒子の写真を撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ)を用いて、芯材粒子の最大長及び投影面積を測定した。「最大長」とは、粒子の像における差渡し長さの最大値のことをいう。なお、形状係数は、芯材粒子100個における、上記式によって算出される形状係数SF-1の平均値によって算出される値とした。
【0319】
[2 被覆用樹脂]
被覆用樹脂に含まれる構成単位としては、脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含むことが好ましい。脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を含むことにより、樹脂の疎水性が高まり、キャリアの水分吸着量が低減される。このため、環境差によるキャリアの帯電性の差異を小さくでき、特に、高温高湿環境下における帯電量の低下を抑制できる。また、脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構成単位を含む樹脂は、適度な機械的強度を有し、被覆材として適度に摩耗されることにより、キャリア表面に新たな樹脂層が露出しリフレッシュされるという利点も有する。
【0320】
脂環式(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、上記効果がより得られやすいことから、脂環式(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素原子数3~8個のシクロアルキル環を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチルであることがより好ましく、機械的強度及び帯電量の環境安定性の観点から、メタクリル酸シクロヘキシルが更に好ましい。脂環式(メタ)アクリル酸エステルは、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0321】
重合成分としては、脂環式(メタ)アクリル酸エステルの他、脂環式(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体を用いてもよい。他の単量体の例としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-クロロスチレン、3,4-ジクロロスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、pn-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン等のスチレン化合物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル化合物;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル化合物;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル化合物;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン化合物;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物;ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸又はメタクリル酸誘導体が挙げられる。これら他の単量体は、一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0322】
中でも、機械的強度及び帯電量の環境安定性等の観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの鎖式(メタ)アクリル酸エステル又はスチレンを用いることが好ましく、鎖式(メタ)アクリル酸エステルを用いることがより好ましい。鎖式(メタ)アクリル酸エステルのアルキル基の炭素数は1~8であることが好ましい。脂環式(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体は、キャリアがリフレッシュされやすく、かつ現像機内でのストレス耐性に優れるため好ましい。
【0323】
脂環式(メタ)アクリル酸エステルと、鎖式(メタ)アクリル酸エステルとの含有質量比は、特に制限されず、脂環式(メタ)アクリル酸エステル:鎖式(メタ)アクリル酸エステル=10:90~90:10(質量比)であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましい。
【0324】
被覆用樹脂の製造方法としては、特に制限されず、従来公知の重合法を適宜利用することができる。例えば、粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、溶液重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、その他の公知の方法等が挙げられる。特に、粒子径の制御の観点から、乳化重合法で合成することが好ましい。
【0325】
乳化重合法で用いる上記単量体以外の重合開始剤、界面活性剤、さらに必要に応じて用いる連鎖移動剤等や、重合温度等の重合条件に関しては、特に制限されず、従来公知の重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤等を用いることができ、重合温度等の重合条件も従来公知の重合条件を適宜利用して調整することができる。
【0326】
被覆用樹脂(上記単量体を重合した重合体)の重量平均分子量は、特に制限されず、20万~80万の範囲内であることが好ましく、30万~70万の範囲内であることがより好ましい。被覆用樹脂の重量平均分子量が20万以上であることにより、芯材粒子の表面に形成される樹脂層の減耗が促進され過ぎることがなく、キャリア同士が付着しづらい。また、被覆用樹脂の重量平均分子量が80万以下であることにより、トナー粒子からキャリア表面への外添剤の移行による帯電量低下を引き起こしづらく、長期使用における帯電量の低下を抑制することができる。
【0327】
被覆用樹脂の重量平均分子量の測定方法は、前述のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定方法を用いることができる。
【0328】
[3 キャリアの製造方法]
(芯材粒子の製造方法)
本発明に係るキャリアの芯材粒子は、例えば、以下の方法で製造できる。原材料を適量秤量した後、ボールミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1~20時間粉砕混合する。このようにして得られた粉砕物を、加圧成型機等を用いてペレット化した後700~1200℃で仮焼成する。
【0329】
加圧成型機を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化しても良い。仮焼成後、更にボールミル又は振動ミル等で粉砕した後、水及び必要に応じ分散剤、バインダー等を添加し、粘度調整後、造粒し、酸素濃度を制御し、1300~1500℃で1~24時間保持し、本焼成を行う(キャリア芯材形状係数(SF-1)を110~150の範囲内にするためには従来よりも高めの温度設定となる)。仮焼成後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕しても良い。
【0330】
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的かつ均一に分散させるためには、使用するメディアに1mm以下の粒子径を持つ微粒なビーズを使用することが好ましい。また、使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
【0331】
このようにして得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法など用いて所望の粒子径に粒度調整する。
【0332】
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化皮膜処理を施し、電気抵抗の調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば、300~700℃で熱処理を行うことができる。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm~5μmの範囲内であることが好ましい。0.1nm以上であることにより、酸化被膜層の効果が十分に得られ、5μm以下であることにより、所望の磁化及び抵抗が得られる。また、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行っても良い。なお、芯材粒子の残留磁化が、15emu/g(A・m/kg)以下であることが好ましい。
【0333】
(樹脂層の形成方法)
本発明に係るキャリアは、芯材粒子に樹脂層を形成することにより得られる。
樹脂層の具体的な形成方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、湿式コート法、乾式コート法が挙げられる。以下に各方法について述べるが、乾式コート法は本発明に適用するのに特に望ましい方法であり、より詳細に記載する。ただし、被覆方法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0334】
湿式コート法としては、下記のものがある。
(1)流動層式スプレーコート法
例えば、被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液を、流動層を用いて芯材粒子の表面にスプレーにより塗布し、次いで乾燥して樹脂層を形成する方法。
【0335】
(2)浸漬式コート法
被覆用樹脂を溶剤に溶解した塗布液中に、芯材粒子を浸漬して塗布処理し、次いで乾燥して樹脂層を形成する方法。
【0336】
(3)重合法
反応性化合物を溶剤に溶解した塗布液中に、芯材粒子を浸漬して塗布処理する。次いで熱等を加えて重合反応を行うことで樹脂層を形成する方法。
【0337】
(4)乾式コート法
被覆しようとする芯材粒子の表面に、被覆用樹脂粒子を被着させる。その後、機械的衝撃力を加えて、上記キャリアの表面に被着した樹脂粒子を溶融又は軟化させることで固着させ、樹脂層を形成する方法。
【0338】
具体的には、キャリア芯材粒子、樹脂粒子及び低抵抗微粒子等の混合物を、非加熱下又は加熱下で、機械的衝撃力が付与できる高速撹拌混合機を用いて高速撹拌する。これにより、上記混合物に衝撃力を繰り返して付与し、芯材粒子の表面に、樹脂粒子などを溶解又は軟化させて固着させ、樹脂層を有するキャリアを作製する。
【0339】
乾式コートの条件としては、加熱する場合には、80~130℃が好ましく、衝撃力を発生させる風速としては、加熱中は10m/s以上が好ましく、冷却時にはキャリア同士の凝集を抑制するため5m/s以下が好ましい。衝撃力を付与する時間としては、20~60分が好ましい。
【0340】
<二成分現像剤>
本発明の二成分現像剤は、静電荷像現像用トナーと、キャリアとを含む。トナー及びキャリアの合計の総質量に対するトナーの比率は、特に制限されないが、トナーの帯電性や初期及び連続印字後の高画質性の観点から、8~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0341】
二成分現像剤は、トナー及びキャリアを、混合装置を用いて混合することで製造できる。混合装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機等が挙げられる。
【0342】
≪画像形成装置≫
本発明の二成分現像剤が、好適に用いられる画像形成装置について説明する。例えば、画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4種類のカラー現像装置と、1つの電子写真感光体と、により構成される4サイクル方式の画像形成装置であってもよいし、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの4種類のカラー現像装置と、それぞれの色ごとに設けられた4つの電子写真感光体と、により構成されるタンデム方式の画像形成装置であってもよい。
【0343】
図1は、本実施形態に関する画像形成装置100の一例を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置100は、画像読取部110、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50及び定着装置60を有する。
【0344】
画像形成部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット41Y、41M、41C及び41Kを有する。これらは、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略することがある。画像形成部40は、さらに、中間転写ユニット42及び二次転写ユニット43を有する。これらは、転写装置に相当する。
【0345】
本実施形態では、Kのトナーとして本発明に係るトナーを使用する。また、Kの現像剤として本発明の二成分現像剤を使用する。
【0346】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、電子写真感光体(像担持体)413、帯電装置414、及びドラムクリーニング装置415を有する。帯電装置414は、例えばコロナ帯電器である。帯電装置414は、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を電子写真感光体413に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置411は、例えば、光源としての半導体レーザーと、形成すべき画像に応じたレーザー光を電子写真感光体413に向けて照射する光偏向装置(ポリゴンモータ)とを含む。電子写真感光体413は、光導電性を有する負帯電型の有機感光体である。電子写真感光体413は、帯電装置414により帯電される。
【0347】
現像装置412は、二成分現像方式の現像装置である。現像装置412は、例えば、二成分現像剤を収容する現像容器と、現像容器の開口部に回転自在に配置されている現像ローラー(磁性ローラー)と、二成分現像剤が連通可能に現像容器内を仕切る隔壁と、現像容器における開口部側の二成分現像剤を現像ローラーに向けて搬送するための搬送ローラーと、現像容器内の二成分現像剤を撹拌するための撹拌ローラーと、を有する。現像容器には、例えば、二成分現像剤が収容されている。
【0348】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト(中間転写体)421、中間転写ベルト421を電子写真感光体413に圧接させる一次転写ローラー422、バックアップローラー423Aを含む複数の支持ローラー423、及びベルトクリーニング装置426を有する。中間転写ベルト421は、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つの駆動ローラーが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0349】
ベルトクリーニング装置426は、弾性部材426aを有する。弾性部材426aは、二次転写した後の中間転写ベルト421に当接して、中間転写ベルト421の表面上の付着物を除去する。弾性部材426aは、弾性体で構成されており、クリーニングブレード、ブラシなどが含まれる。
【0350】
二次転写ユニット43は、無端状の二次転写ベルト432、及び二次転写ローラー431Aを含む複数の支持ローラー431を有する。二次転写ベルト432は、二次転写ローラー431A及び支持ローラー431によってループ状に張架される。
【0351】
定着装置60は、例えば、定着ローラー62と、定着ローラー62の外周面を覆い、用紙S上のトナー画像を構成するトナーを加熱、融解するための無端状の発熱ベルト10と、用紙Sを定着ローラー62及び発熱ベルト10に向けて押圧する加圧ローラー63と、を有する。用紙Sは、記録媒体に相当する。
【0352】
画像形成装置100は、さらに、画像読取部110、画像処理部30及び用紙搬送部50を有する。画像読取部110は、給紙装置111及びスキャナー112を有する。用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52、及び搬送経路部53を有する。給紙部51を構成する三つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量やサイズなどに基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53aなどの複数の搬送ローラー対を有する。
【0353】
≪画像形成方法≫
本発明の画像形成方法は、本発明の二成分現像剤を用い、二成分現像剤に含まれる静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程と、付着させた静電荷像現像用トナーを記録媒体に定着させる工程と、を有することを特徴とする。以下、本発明の画像形成方法について、画像形成装置100を用いて説明する。
【0354】
スキャナー112は、コンタクトガラス上の原稿Dを光学的に走査して読み取る。原稿Dからの反射光がCCDセンサー112aにより読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部30において所定の画像処理が施され、露光装置411に送られる。
【0355】
電子写真感光体413は一定の周速度で回転する。帯電装置414は、電子写真感光体413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411では、ポリゴンモータのポリゴンミラーが高速で回転し、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光が、電子写真感光体413の軸方向に沿って展開し、当該軸方向に沿って電子写真感光体413の外周面に照射される。こうして電子写真感光体413の表面には、静電荷像が形成される。
【0356】
現像装置412では、現像容器内の二成分現像剤の撹拌、搬送によってトナー粒子が帯電し、二成分現像剤は現像ローラーに搬送され、現像ローラーの表面で磁性ブラシを形成する。帯電したトナー粒子は、磁性ブラシから電子写真感光体413における静電荷像の部分に静電的に付着する。こうして、電子写真感光体413の表面の静電荷像が可視化され、電子写真感光体413の表面に、静電荷像に応じたトナー画像が形成される。なお、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
【0357】
電子写真感光体413の表面のトナー画像は、中間転写ユニット42によって中間転写ベルト421に転写される。転写後に電子写真感光体413の表面に残存する転写残トナーは、電子写真感光体413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置415によって除去される。
【0358】
一次転写ローラー422によって中間転写ベルト421が電子写真感光体413に圧接することにより、電子写真感光体413と中間転写ベルト421とによって、一次転写ニップが電子写真感光体ごとに形成される。当該一次転写ニップにおいて、各色のトナー画像が中間転写ベルト421に順次重なって転写される。
【0359】
一方、二次転写ローラー431Aは、中間転写ベルト421及び二次転写ベルト432を介して、バックアップローラー423Aに圧接される。それにより、中間転写ベルト421と二次転写ベルト432とによって、二次転写ニップが形成される。当該二次転写ニップを用紙Sが通過する。用紙Sは、用紙搬送部50によって二次転写ニップへ搬送される。用紙Sの傾きの補正及び搬送のタイミングの調整は、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により行われる。
【0360】
二次転写ニップに用紙Sが搬送されると、二次転写ローラー431Aへ転写バイアスが印加される。この転写バイアスの印加によって、中間転写ベルト421に担持されているトナー画像が用紙Sに転写される(静電荷像現像用トナーを記録媒体に付着させる工程)。トナー画像が転写された用紙Sは、二次転写ベルト432によって、定着装置60に向けて搬送される。
【0361】
二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーなどの付着物は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置426によって除去される。このとき、中間転写ベルトとして前述の中間転写体を使用するため、経時的に動摩擦力を低減させることができる。
【0362】
定着装置60は、発熱ベルト10と加圧ローラー63とによって、定着ニップを形成し、搬送されてきた用紙Sを定着ニップ部で加熱、加圧する。こうしてトナー画像が用紙Sに定着する(静電荷像現像用トナーを記録媒体に定着させる工程)。トナー像が定着された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
【実施例0363】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0364】
実施例1
≪現像剤の作製≫
[トナーの作製]
〔トナー母体粒子の作製〕
<顔料粒子分散液(1)の調製>
Pigment Brown 25(PBr25): 40質量部
Pigment Blue 15:3(PB15:3): 25質量部
Pigment Violet 23(PV23): 10質量部
Pigment Yellow 155(PY155): 25質量部
アニオン性界面活性剤: 15質量部
イオン交換水: 400質量部
【0365】
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)により10分間予備分散した後、高圧衝撃式分散機(株式会社スギノマシン製、アルティマイザー)を用い、圧力245MPaで30分間分散処理を行い、これらの顔料を含む粒子の水系分散液を得た。得られた分散液にイオン交換水を添加して、固形分が15質量%となるように調整することにより、顔料粒子分散液(1)を調製した。顔料粒子分散液(1)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
なお、上記アニオン性界面活性剤は、第一工業製薬株式会社製、ネオゲンRK(「ネオゲン」は同社の登録商標)を使用した。
【0366】
<顔料粒子分散液(2)の調製>
Pigment Brown 25の代わりにPigment Brown 23(PBr23)を用いた以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(2)を調製した。顔料粒子分散液(2)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0367】
<顔料粒子分散液(3)の調製>
Pigment Yellow 155の代わりにPigment Yellow 180(PY180)を用いた以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(3)を調製した。顔料粒子分散液(3)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0368】
<顔料粒子分散液(4)の調製>
各有機顔料の配合比を以下のように変更した以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(4)を調製した。顔料粒子分散液(4)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
Pigment Brown 25(PBr25): 60質量部
Pigment Blue 15:3(PB15:3): 40質量部
Pigment Violet 23(PV23): 0質量部
Pigment Yellow 155(PY155): 0質量部
【0369】
<顔料粒子分散液(5)の調製>
各有機顔料の配合比を以下のように変更した以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(5)を調製した。顔料粒子分散液(5)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
Pigment Brown 25(PBr25): 0質量部
Pigment Blue 15:3(PB15:3): 85質量部
Pigment Violet 23(PV23): 0質量部
Pigment Yellow 155(PY155): 15質量部
【0370】
<顔料粒子分散液(6)の調製>
各有機顔料の配合比を以下のように変更した以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(6)を調製した。顔料粒子分散液(6)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
Pigment Brown 25(PBr25): 0質量部
Pigment Blue 15:3(PB15:3): 30質量部
Pigment Violet 23(PV23): 70質量部
Pigment Yellow 155(PY155): 0質量部
【0371】
<顔料粒子分散液(7)の調製>
各有機顔料の代わりにカーボンブラック(CB)(キャボット社製、リーガル330(「リーガル」は同社の登録商標))を100質量部添加した以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(7)を調製した。顔料粒子分散液(7)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0372】
<顔料粒子分散液(8)の調製>
各有機顔料の配合比を以下のように変更した以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(8)を調製した。顔料粒子分散液(8)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
Pigment Brown 25(PBr25): 55質量部
Pigment Blue 15:3(PB15:3): 0質量部
Pigment Violet 23(PV23): 20質量部
Pigment Yellow 155(PY155): 25質量部
【0373】
<顔料粒子分散液(9)の調製>
各有機顔料の配合比を以下のように変更した以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(9)を調製した。顔料粒子分散液(9)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。カーボンブラック(CB)は、キャボット社製、リーガル330(「リーガル」は同社の登録商標)を使用した。
Pigment Brown 25(PBr25): 40質量部
Pigment Blue 15:3(PB15:3): 21質量部
Pigment Violet 23(PV23): 10質量部
Pigment Yellow 155(PY155): 20質量部
カーボンブラック(CB): 9質量部
【0374】
<顔料粒子分散液(10)の調製>
Pigment Yellow 155の代わりにPigment Orange 43(PO43)を用いた以外は顔料粒子分散液(2)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(10)を調製した。顔料粒子分散液(10)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0375】
<顔料粒子分散液(11)の調製>
Pigment Blue 15:3の代わりにPigment Blue 15:4(PB15:4)を用いた以外は顔料粒子分散液(2)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(11)を調製した。顔料粒子分散液(11)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0376】
<顔料粒子分散液(12)の調製>
Pigment Brown 25の代わりにPigment Brown 41(PBr41)を用いた以外は顔料粒子分散液(1)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(12)を調製した。顔料粒子分散液(12)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0377】
<顔料粒子分散液(13)の調製>
Pigment Violet 23の代わりにPigment Violet 19(PV19)を用いた以外は顔料粒子分散液(2)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(13)を調製した。顔料粒子分散液(13)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0378】
<顔料粒子分散液(14)の調製>
Pigment Violet 23の代わりにPigment Red 122(PR122)を用いた以外は顔料粒子分散液(2)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(14)を調製した。顔料粒子分散液(14)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0379】
<顔料粒子分散液(15)の調製>
Pigment Violet 23の代わりにPigment Red 254(PR254)を用いた以外は顔料粒子分散液(2)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(15)を調製した。顔料粒子分散液(15)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0380】
<顔料粒子分散液(16)の調製>
Pigment Yellow 155の代わりにPigment Yellow 74(PY74)を用いた以外は顔料粒子分散液(2)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(16)を調製した。顔料粒子分散液(16)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0381】
<顔料粒子分散液(17)の調製>
Pigment Yellow 155の代わりにPigment Yellow 185(PY185)を用いた以外は顔料粒子分散液(2)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(17)を調製した。顔料粒子分散液(17)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。
【0382】
<顔料粒子分散液(18)の調製>
各有機顔料の配合比を以下のように変更した以外は顔料粒子分散液(2)の調製と同様にして、顔料粒子分散液(18)を調製した。顔料粒子分散液(18)中の顔料粒子の体積基準の平均粒子径は、150nmであった。なお、P1-3に該当する顔料は二種類使用し、合計で10質量部とした。
Pigment Brown 23(PBr23): 40質量部
Pigment Blue 15:3(PB15:3): 25質量部
Pigment Red 122(PR122): 5質量部
Pigment Violet 19(PV19): 5質量部
Pigment Yellow 155(PY155): 25質量部
【0383】
なお、顔料粒子分散液の調製に用いた各顔料の、メチルエチルケトンに分散させたときの吸収極大波長λmax(nm)は、以下に示す通りである。
【0384】
〈P1-1〉
Pigment Yellow 74(PY74): 402nm
Pigment Yellow 155(PY155): 405nm
Pigment Yellow 180(PY180): 420nm
Pigment Yellow 185(PY185): 402nm
〈P1-2〉
Pigment Brown 23(PBr23): 490nm
Pigment Brown 25(PBr25): 490nm
Pigment Brown 41(PBr41): 490nm
〈P1-3〉
Pigment Violet 19(PV19): 570nm
Pigment Violet 23(PV23): 570nm
Pigment Red 122(PR122): 575nm
Pigment Red 254(PR254): 580nm
Pigment Orange 43(PO43): 540nm
〈P2〉
Pigment Blue 15:3(PB15:3): 630nm
Pigment Blue 15:4(PB15:4): 630nm
【0385】
<非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)の調製>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物: 40モル部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物:60モル部
テレフタル酸ジメチル: 60モル部
フマル酸ジメチル: 15モル部
ドデセニルコハク酸無水物: 20モル部
トリメリット酸無水物: 5モル部
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、上記モノマーのうちフマル酸ジメチル及びトリメリット酸無水物以外のモノマーと、上記モノマーの合計100質量部に対して0.25質量部となる量のジオクチル酸スズとを投入した。窒素ガス気流下、235℃で6時間反応させた後、200℃に降温して、上記量のフマル酸ジメチル及びトリメリット酸無水物を加え、1時間反応させた。温度を220℃まで5時間かけて昇温し、10kPaの圧力下で所望の分子量になるまで重合させ、淡黄色透明な非晶性ポリエステル樹脂(A1)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(A1)は、重量平均分子量が35,000、数平均分子量が8,000、ガラス転移温度(Tg)が56℃であった。
【0386】
非晶性ポリエステル樹脂(A1): 200質量部
メチルエチルケトン: 100質量部
イソプロピルアルコール: 35質量部
アンモニア水溶液(10質量%): 7質量部
次いで、上記成分をセパラブルフラスコに入れ、十分に混合、溶解した後、40℃で加熱撹拌しながら、イオン交換水を、送液ポンプを用いて送液速度8g/分で滴下し、送液量が580質量部になったところで滴下を止めた。その後減圧下で溶剤除去を行い、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を得た。上記分散液にイオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)を調製した。非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1)中の非晶性ポリエステル樹脂(A1)の体積基準の平均粒子径は、156nmであった。
【0387】
<スチレン・アクリル樹脂粒子分散液(b1)の調製>
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、5質量部のアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製、ダウファックス2A1、「ダウファックス」は同社の登録商標)と、2500質量部のイオン交換水とを仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を75℃に昇温させた。次いで、18質量部の過硫酸カリウム(KPS)を342質量部のイオン交換水に溶解させた溶液を添加し、液温を75℃とした。
【0388】
スチレン: 903質量部
n-ブチルアクリレート: 282質量部
アクリル酸: 12質量部
1,10-デカンジオールジアクリレート: 3質量部
ドデカンチオール: 8質量部
さらに、上記モノマーの混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃において2時間にわたって加熱、撹拌することによって重合させ、非晶性ビニル樹脂分散液を得た。上記分散液にイオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、スチレン・アクリル樹脂(B1)粒子の分散液(b1)を調製した。スチレン・アクリル樹脂(B1)の体積基準の平均粒子径は、160nmであり、重量平均分子量(Mw)が38,000、数平均分子量(Mn)が15,000、ガラス転移温度(Tg)が52℃であった。
【0389】
<結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)の調製>
ドデカン二酸: 50モル部
1,6-ヘキサンジオール: 50モル部
撹拌器、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマーを入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した。次いで、100質量部の上記モノマーに対して0.25質量部となる量のチタンテトラブトキサイド(Ti(O-n-Bu))を投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間撹拌し反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間撹拌し反応させて、結晶性ポリエステル樹脂(C1)を得た。結晶性ポリエステル樹脂(C1)は、重量平均分子量が25,000、数平均分子量が8,500、融点が71.8℃であった。
【0390】
結晶性ポリエステル樹脂(C1): 200質量部
メチルエチルケトン: 120質量部
イソプロピルアルコール: 30質量部
次に、上記成分をセパラブルフラスコに入れ、60℃で充分混合、溶解した後、8質量部の10質量%アンモニア水溶液を滴下した。加熱温度を67℃に下げ、撹拌しながら、イオン交換水を、送液ポンプを用いて送液速度8g/分で滴下し、送液量が580質量部になったところで、イオン交換水の滴下を止めた。その後、減圧下で溶媒除去を行い、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を得た。上記分散液にイオン交換水を加えて固形分量が25質量%となるように調整し、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)を調製した。結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1)の中の結晶性ポリエステル樹脂(C1)の体積基準の平均粒子径は、198nmであった。
【0391】
<離型剤粒子分散液(W1)の調製>
パラフィンワックス: 270質量部
アニオン性界面活性剤: 13.5質量部
(有効成分60%、パラフィンワックスに対して3%)
イオン交換水: 21.6質量部
上記成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、分散液を得た。イオン交換水を加えて固形分量が20%になるように調整し、離型剤粒子分散液(W1)を調製した。離型剤粒子分散液(W1)中の粒子の体積基準の平均粒子径は215nmであった。
なお、上記パラフィンワックスは、日本精蝋株式会社製、HNP0190(融解温度:85℃)を、上記アニオン性界面活性剤は、第一工業製薬株式会社製、ネオゲンRKを使用した。
【0392】
<トナー母体粒子(1)の作製>
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1): 1280質量部
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1): 160質量部
離型剤粒子分散液(W1): 200質量部
顔料粒子分散液(1): 335質量部
アニオン性界面活性剤: 40質量部
イオン交換水: 1500質量部
温度計、pH計及び撹拌器を備えた4リットルの反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0質量%硝酸水溶液を添加してpHを3.0に調整した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて3,000rpmで分散しながら、100質量部の2.0質量%硫酸アルミニウム(凝集剤)水溶液を30分かけて添加した。滴下終了後、10分間撹拌し、原料と凝集剤を十分に混合した。
【0393】
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1): 160質量部
アニオン性界面活性剤: 15質量部
その後、反応容器に撹拌器及びマントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌されるように撹拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとに粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、コールターマルチサイザー3(アパーチャー径100μm))にて粒子径を測定した。体積基準の平均粒子径が5.9μmになったところで温度を保持し、予め混合しておいた上記の材料の混合液を20分間かけて投入した。なお、上記2回投入したアニオン性界面活性剤は、いずれも、ダウ・ケミカル社製、ダウファックス2A1(20%水溶液)を使用した。
【0394】
次いで、50℃に30分間保持した後、反応容器に、8質量部の20質量%EDTA(エチレンジアミン四酢酸)水溶液を添加した後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料分散液のpHを9.0に制御した。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で85℃まで昇温し、85℃で保持した。
【0395】
その後、粒度計(マルバーン社製、FPIA-3000)を使用して測定した形状係数が0.970になった時点で降温速度10℃/分で冷却し、トナー母体粒子分散液(1)を得た。
【0396】
そして、トナー母体粒子分散液(1)を濾過して得られた固形分を、イオン交換水で充分洗浄した。次いで、40℃にて乾燥して、トナー母体粒子(1)を得た。得られたトナー母体粒子(1)の体積基準の平均粒子径は6.0μm、粒度計(マルバーン社製、FPIA-3000)を使用して測定した平均円形度は0.972であった。
【0397】
<トナー母体粒子(2)の作製>
スチレン・アクリル樹脂粒子分散液(b1): 1280質量部
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(c1): 160質量部
離型剤粒子分散液(W1): 200質量部
顔料粒子分散液(1): 335質量部
アニオン性界面活性剤: 40質量部
イオン交換水: 1500質量部
温度計、pH計及び撹拌器を備えた4リットルの反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0質量%硝酸水溶液を添加してpHを3.0に調整した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて3,000rpmで分散しながら、100質量部の2.0質量%硫酸アルミニウム(凝集剤)水溶液を30分かけて添加した。滴下終了後、10分間撹拌し、原料と凝集剤を十分に混合した。
【0398】
非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(a1): 160質量部
アニオン性界面活性剤: 15質量部
その後、反応容器に撹拌器及びマントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌されるように撹拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとに粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、コールターマルチサイザー3(アパーチャー径100μm))にて粒子径を測定した。体積基準の平均粒子径が5.9μmになったところで温度を保持し、予め混合しておいた上記の材料の混合液を20分間かけて投入した。なお、上記2回投入したアニオン性界面活性剤は、いずれも、ダウ・ケミカル社製、ダウファックス2A1(20%水溶液)を使用した。
【0399】
次いで、50℃に30分間保持した後、反応容器に、8質量部の20質量%EDTA(エチレンジアミン四酢酸)水溶液を添加した後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料分散液のpHを9.0に制御した。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で85℃まで昇温し、85℃で保持した。
【0400】
その後、粒度計(マルバーン社製、FPIA-3000)を使用して測定した形状係数が0.970になった時点で降温速度10℃/分で冷却し、トナー母体粒子分散液(2)を得た。
【0401】
そして、トナー母体粒子分散液(2)を濾過して得られた固形分を、イオン交換水で充分洗浄した。次いで、40℃にて乾燥して、トナー母体粒子(2)を得た。得られたトナー母体粒子(2)の体積基準の平均粒子径は6.0μm、粒度計(マルバーン社製、FPIA-3000)を使用して測定した平均円形度は0.972であった。
【0402】
<トナー母体粒子(3)の作製>
スチレン・アクリル樹脂粒子分散液(b1): 1600質量部
離型剤粒子分散液(W1): 200質量部
顔料粒子分散液(1): 335質量部
アニオン性界面活性剤: 40質量部
イオン交換水: 1500質量部
温度計、pH計及び撹拌器を備えた4リットルの反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0質量%硝酸水溶液を添加してpHを3.0に調整した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて3,000rpmで分散しながら、100質量部の2.0質量%硫酸アルミニウム(凝集剤)水溶液を30分かけて添加した。滴下終了後、10分間撹拌し、原料と凝集剤を十分に混合した。
【0403】
その後、反応容器に撹拌器及びマントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌されるように撹拌器の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてからは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとに粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、コールターマルチサイザー3(アパーチャー径100μm))にて粒子径を測定した。体積基準の平均粒子径が6.0μmになったところで温度を保持し、次いで、50℃に30分間保持した後、反応容器に、8質量部の20質量%EDTA(エチレンジアミン四酢酸)水溶液を添加した後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料分散液のpHを9.0に制御した。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。粒度計(マルバーン社製、FPIA-3000)を使用して測定した形状係数が0.970になった時点で降温速度10℃/分で冷却し、トナー母体粒子分散液(3)を得た。
【0404】
そして、トナー母体粒子分散液(3)を濾過して得られた固形分を、イオン交換水で充分洗浄した。次いで、40℃にて乾燥して、トナー母体粒子(3)を得た。得られたトナー母体粒子(3)の体積基準の平均粒子径は6.0μm、粒度計(マルバーン社製、FPIA-3000)を使用して測定した平均円形度は0.972であった。
【0405】
<トナー母体粒子(4)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(2)を用いた以外はトナー母体粒子(1)の作製と同様にして、トナー母体粒子(4)を得た。
【0406】
<トナー母体粒子(5)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(3)を用いた以外はトナー母体粒子(1)の作製と同様にして、トナー母体粒子(5)を得た。
【0407】
<トナー母体粒子(6)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(4)を用いた以外はトナー母体粒子(1)の作製と同様にして、トナー母体粒子(6)を得た。
【0408】
<トナー母体粒子(7)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(5)を用いた以外はトナー母体粒子(1)の作製と同様にして、トナー母体粒子(7)を得た。
【0409】
<トナー母体粒子(8)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(6)を用いた以外はトナー母体粒子(1)の作製と同様にして、トナー母体粒子(8)を得た。
【0410】
<トナー母体粒子(9)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(7)を用いた以外はトナー母体粒子(1)の作製と同様にして、トナー母体粒子(9)を得た。
【0411】
<トナー母体粒子(10)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(8)を用いた以外はトナー母体粒子(1)の作製と同様にして、トナー母体粒子(10)を得た。
【0412】
<トナー母体粒子(11)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(9)を用いた以外はトナー母体粒子(1)の作製と同様にして、トナー母体粒子(11)を得た。
【0413】
<トナー母体粒子(12)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(10)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(12)を得た。
【0414】
<トナー母体粒子(13)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(11)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(13)を得た。
【0415】
<トナー母体粒子(14)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(12)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(14)を得た。
【0416】
<トナー母体粒子(15)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(13)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(15)を得た。
【0417】
<トナー母体粒子(16)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(14)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(16)を得た。
【0418】
<トナー母体粒子(17)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(15)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(17)を得た。
【0419】
<トナー母体粒子(18)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(16)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(18)を得た。
【0420】
<トナー母体粒子(19)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(17)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(19)を得た。
【0421】
<トナー母体粒子(20)の作製>
顔料粒子分散液(1)の代わりに顔料粒子分散液(18)を用いた以外はトナー母体粒子(2)の作製と同様にして、トナー母体粒子(20)を得た。
【0422】
〔外添剤の作製〕
<酸化チタン微粒子の作製>
個数平均一次粒子径30nmのアナターゼ型酸化チタンに対して、水系湿式中で、疎水化剤であるイソブチルトリメトキシシランにより表面改質処理を施し、疎水性酸化チタンを得た。得られた疎水性酸化チタンを酸化チタン微粒子として使用した。
【0423】
〔トナーの作製〕
<トナー(1)の作製>
トナー母体粒子(1): 100質量部
酸化チタン: 0.5質量部
シリカ(個数平均粒子径:20nm): 3.5質量部
上記の材料をヘンシェルミキサーにて20分混合し、トナー(1)を得た。
なお、シリカ粒子の個数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製、JEM-7401F)を用いて、5万倍に拡大したSEM写真をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置(ニレコ社製、LUZEX AP)にて、当該SEM写真画像のシリカ粒子について二値化処理し、シリカ粒子100個における水平方向のフェレ径を算出し、その平均値を個数平均粒子径とした。
【0424】
<トナー(2)~(24)の作製>
トナー母体粒子の種類及び酸化チタンの含有量が、表I及び表IIに示すとおりになるように、適宜変更し、トナー(2)~(24)を得た。なお、トナー(23)においては、酸化チタンを添加しなかった。
【0425】
下記表I及び表IIにおける顔料、カーボンブラック及び酸化チタンの含有量は、トナー母体粒子の総質量に対しての含有量を表す。
【0426】
【表1】
【0427】
【表2】
【0428】
[キャリアの作製]
〔キャリア芯材の作製〕
<キャリア芯材(1)の作製>
MnO: 35.0モル%
MgO: 14.5モル%
Fe: 50.0モル%
SrO: 0.5モル%
上記の材料を、水と混合した後、湿式メディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。
【0429】
得られたスラリースプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。この粒子を粒度調整した後、950℃で2時間加熱し、ロータリーキルンで仮焼成を行った。直径0.3cmのステンレスビーズを用いて乾式ボールミルで1時間粉砕したのち、固形分に対して0.8質量%となるようバインダーとしてのポリビニルアルコール(PVA)を添加し、さらに水及びポリカルボン酸系分散剤を添加し、直径0.5cmのジルコニアビーズを用いて30時間粉砕した。得られた粉末をスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1300℃、15時間保持し、本焼成を行った。
【0430】
焼成後の粉末を解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、キャリア芯材(1)を得た。キャリア芯材(1)の体積平均粒子径は30μm、形状係数(SF-1)は125であった。
【0431】
なお、上記キャリア芯材の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー株式会社製、HELOS KA)を用いて、湿式法にて測定して得られた値である。具体的には、まず、焦点位置200mmの光学系を選択し、測定時間を5秒に設定した。そして、測定用のキャリア芯材を0.2質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に加え、超音波洗浄機(asone社製、US-1)を用いて3分間分散させて測定用試料分散液を作製し、これを上記レーザー回折式粒度分布測定装置に数滴供給し、試料濃度ゲージが測定可能領域に達した時点で測定を開始した。得られた粒度分布を粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から累積分布を作成し、これをもとに体積平均粒子径を算出した。
【0432】
また、上記キャリア芯材の形状係数は、以下の方法で測定した。キャリア芯材を、走査型電子顕微鏡により、150倍にてランダムに100個以上の粒子の写真を撮影し、スキャナーにより取り込んだ写真画像を、画像処理解析装置LUZEX AP((株)ニレコ)を用いて、芯材粒子の最大長及び投影面積を測定した。「最大長」とは、粒子の像における差渡し長さの最大値のことをいう。なお、形状係数は、芯材粒子100個における、上記式によって算出される形状係数SF-1の平均値によって算出される値とした。
SF-1=(キャリア芯材粒子の最大長)/(キャリア芯材粒子の投影面積)×(π/4)×100
【0433】
<キャリア芯材(2)の作製>
キャリア芯材(1)における本焼成温度を1100℃に変更した以外はキャリア芯材(1)の作製と同様にして、キャリア芯材(2)を得た。キャリア芯材(2)の体積平均粒子径は30μm、SF-1は105であった。
【0434】
<キャリア芯材(3)の作製>
キャリア芯材(1)における本焼成温度を1500℃に変更した以外はキャリア芯材(1)の作製と同様にして、キャリア芯材(3)を得た。キャリア芯材(3)の体積平均粒子径は30μm、SF-1は145であった。
【0435】
〔被覆用樹脂の作製〕
0.3質量%のベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液中に、質量比(共重合比)が50:50となる量のメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)及びメタクリル酸メチル(MMA)を添加し、単量体総量の0.5質量%にあたる量の過硫酸カリウムを添加して乳化重合を行い、スプレードライで乾燥することで、被覆用樹脂を作製した。被覆用樹脂の重量平均分子量は500,000であった。
【0436】
〔キャリアの作製〕
<キャリア(1)の作製>
水平撹拌羽根付き高速撹拌混合機に、100質量部のキャリア芯材(1)と、3.5質量部の上記被覆用樹脂とを投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃で50分混合して機械的衝撃力(メカノケミカル法)の作用でキャリア芯材の表面に被覆用樹脂を被覆させた後、室温まで冷却して、キャリア(1)を得た。上記式(2)で表される鉄元素含有率の値は、12であった。
【0437】
<キャリア(2)の作製>
キャリア芯材(1)をキャリア芯材(2)に変更した以外はキャリア(1)の作製と同様にして、キャリア(2)を得た。上記式(2)で表される鉄元素含有率の値は、2であった。
【0438】
<キャリア(3)の作製>
キャリア芯材(1)をキャリア芯材(3)に変更した以外はキャリア(1)の作製と同様にして、キャリア(3)を得た。上記式(2)で表される鉄元素含有率の値は、20であった。
【0439】
<キャリア(4)の作製>
被覆用樹脂を、3.5質量部のメタクリル酸メチル(MMA)に変更した以外はキャリア(1)の作製と同様にして、キャリア(4)を得た。上記式(2)で表される鉄元素含有率の値は、12であった。
【0440】
<キャリア(5)の作製>
キャリア芯材(1)をキャリア芯材(2)に変更し、かつ、被覆用樹脂の添加量を4.0質量部に変更した以外はキャリア(1)の作製と同様にして、キャリア(5)を得た。上記式(2)で表される鉄元素含有率の値は、1.5であった。
【0441】
<キャリア(6)の作製>
キャリア芯材(1)をキャリア芯材(3)に変更し、かつ、被覆用樹脂の添加量を3.0質量部に変更した以外はキャリア(1)の作製と同様にして、キャリア(6)を得た。上記式(2)で表される鉄元素含有率の値は、22であった。
【0442】
なお、上記式(2)で表される鉄元素含有率は、以下の方法により算出した。X線光電子分光測定(XPS測定)による表面元素組成分析において、炭素についてはC1sスペクトルを、鉄についてはFe2p3/2スペクトルを、酸素についてはO1sスペクトルを測定した。そして、これらの各々の原子のスペクトルに基づいて、それぞれ、「A」、「A」及び「AFe」と表されるキャリア表面の単位面積におけるFe、C及びOの含有量(原子個数)を求め、上記式(2)より算出した。
XPS測定装置としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック製、K-Alphaを使用し、測定は、X線源としてAlモノクロマチックX線を用い、加速電圧を7kV、エミッション電流を6mVに設定して行った。
XPSの測定はサンプルを測定室に導入してから測定室の真空道が9.0×10-8mbarに到達してからX線を立ち上げて測定を実施する。
スポット径:400μm
Scan回数:15回
PASS Energy:50eV
解析方法:Smart法
【0443】
[現像剤の作製]
<現像剤(1)~(29)の作製>
トナーの濃度が9質量%となるように、表IIIに記載の組合せで、トナー及びキャリアを、V型混合機(株式会社徳寿工作所製)を用いて25℃で30分間混合して、現像剤(1)~(29)を得た。
【0444】
≪評価≫
以下の評価を行った。なお、画像出力には、bizhub PRESS C1100(コニカミノルタ(株)製)の定着用ヒートローラーの表面温度を80~180℃の範囲で変更できるように改造した評価装置を使用した。この評価装置に、各トナーと各現像剤とをそれぞれトナーカートリッジと現像機とに充填し、評価用の画像形成装置とした。
【0445】
(近赤外線の透過性)
A4サイズのOKトップコート+(127.9g/m)(王子製紙株式会社製)に、トナーの付着量を4.5g/mとしたベタ画像(2cm×2cm)を形成し、HITACHI U-4100分光光度計によりフィルター紙を基準として反射スペクトルを測定し、波長800~1000nmの範囲内での反射率を測定した。反射率が高いことは、この近赤外線領域(波長800~1000nm)では光吸収作用を殆ど有しない、すなわち近赤外線を高効率で透過することを意味している。得られた反射率から、以下の基準で、各トナーの近赤外線の透過性を評価した。
◎:反射率が、90%以上
〇:反射率が、85%以上、90%未満
△:反射率が、80%以上、85%未満
×:反射率が、80%未満
【0446】
(画像濃度)
A4サイズのOKトップコート+(127.9g/m)(王子製紙株式会社製)に、トナーの付着量を4.5g/mとしたベタ画像(2cm×2cm)を形成し、当該画像のベタ部の反射濃度を、反射濃度計(マクベス社製、RD-918)を用いて測定した。得られた反射濃度(画像濃度)から、以下の基準で、各トナーの画像濃度を評価した。
◎:画像濃度が、1.50以上である
〇:画像濃度が、1.40以上1.50未満である
△:画像濃度が、1.30以上1.40未満である
×:画像濃度が、1.30未満である
【0447】
(帯電性の環境条件耐性)
高温高湿(HH)(30℃、85%RH)環境条件下及び低温低湿(LL)(10℃、20%RH)環境条件下のそれぞれで、A4サイズの上質紙(65g/m)上に印字率5%の帯状ベタ画像を形成し、各環境下で10万枚印刷した後のトナーの帯電量を測定した。帯電量は、現像器内の二成分現像剤をサンプリングし、ブローオフ帯電量測定装置「TB-200」(東芝ケミカル株式会社製)を用いて測定した。なお、LLとHH環境下での帯電量差が小さい方が、帯電性の環境条件耐性が優れていることを意味している。
◎:トナーの帯電量の環境差Δが、8μC/g未満
〇:トナーの帯電量の環境差Δが、8μC/g以上、12μC/g未満
△:トナーの帯電量の環境差Δが、12μC/g以上、15μC/g未満
×:トナーの帯電量の環境差Δが、15μC/g以上
【0448】
(低温定着性)
常温常湿(NN)(20℃、50%RH)環境条件下において、A4サイズのOKトップコート+(127.9g/m)(王子製紙社製)を用いて、トナーの低温定着性の評価を行った。トナー付着量10g/mのベタ画像を定着させる定着実験を、定着下ローラーの温度を定着上ベルトよりも20℃低く設定し、定着上ベルトの表面温度が80℃から5℃刻みで増加するように変更しながら140℃まで繰り返し行った。
◎:定着温度が、120℃未満
〇:定着温度が、120℃以上、135℃未満
△:定着温度が、135℃以上、150℃未満
×:定着温度が、150℃以上
【0449】
評価結果を、表IIIに示す。ただし、「※樹脂」は、被覆用樹脂の総質量に対する、脂環式(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量を表す。
【0450】
【表3】
【0451】
上記結果より、本発明の二成分現像剤は、近赤外線の透過性を有し、画像濃度が高く、帯電性の環境条件耐性に優れていることがわかる。また、顔料を適宜選択することにより、近赤外線の透過性が向上することがわかる。さらに、トナー母体粒子が結晶性ポリエステルを含有することにより、低温定着性が向上する。
【符号の説明】
【0452】
10 発熱ベルト
30 画像処理部
40 画像形成部
41Y、41M、41C、41K 画像形成ユニット
42 中間転写ユニット
43 二次転写ユニット
50 用紙搬送部
51 給紙部
51a、51b、51c 給紙トレイユニット
52 排紙部
52a 排紙ローラー
53 搬送経路部
53a レジストローラー対
60 定着装置
62 定着ローラー
63 加圧ローラー
100 画像形成装置
110 画像読取部
111 給紙装置
112 スキャナー
112a CCDセンサー
411 露光装置
412 現像装置
413 電子写真感光体
414 帯電装置
415 ドラムクリーニング装置
421 中間転写ベルト
422 一次転写ローラー
423、431 支持ローラー
423A バックアップローラー
426 ベルトクリーニング装置
426a 弾性部材
431A 二次転写ローラー
432 二次転写ベルト
D 原稿
S 用紙
図1