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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188533
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】食器搬送コンベヤ
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/42 20060101AFI20221214BHJP
   A47L 15/00 20060101ALI20221214BHJP
   B65G 17/06 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
A47L15/42
A47L15/00 Z
B65G17/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096645
(22)【出願日】2021-06-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 企業への納品 納品日:令和2年10月1日 納品場所:株式会社第一食品本社工場
(71)【出願人】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 允
【テーマコード(参考)】
3F034
【Fターム(参考)】
3F034AA05
3F034BB06
(57)【要約】
【課題】搬送ベルトで搬送されている食器が、搬送ベルトの傾斜搬送部から浸漬槽側に落下してしまうことを抑えることができる食器搬送コンベヤを提供する。
【解決手段】食器搬送コンベヤ4は、一対のスプロケット51、52と、チェーンベルト6と、ベルト案内部8と、を備えている。チェーンベルト6は、搬送方向Pと直交する側面視において、食器洗浄装置9B側に向かって上側に傾斜した傾斜搬送部64を有している。ベルト案内部8は、傾斜搬送部64のうち、駆動スプロケット52に対する非係合部分61において、搬送方向Pの前方端62aを含む前方部分62Aの水平方向に対する傾斜角度が、前方部分62Aよりも後方側の後方部分62Bの水平方向に対する傾斜角度よりも、小さくなるように、チェーンベルト6を案内する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器が浸漬された浸漬槽から食器洗浄装置側に、食器を搬送する食器搬送コンベヤであって、
前記食器搬送コンベヤは、
前記浸漬槽および前記食器洗浄装置側に配置された一対のスプロケットと、
前記一対のスプロケットを渡すように巻き付いて、前記スプロケットに係合するループ状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを前記食器の搬送方向に沿って案内するベルト案内部と、を備えており、
前記搬送ベルトは、前記搬送方向と直交する側面視において、前記食器洗浄装置側に向かって上側に傾斜した傾斜搬送部を有しており、
前記ベルト案内部は、前記傾斜搬送部のうち、前記食器洗浄装置側の前記スプロケットに対する非係合部分において、前記搬送方向の前方端を含む前方部分の水平方向に対する傾斜角度が、前記前方部分よりも後方側の後方部分の水平方向に対する傾斜角度よりも、小さくなるように、前記搬送ベルトを案内することを特徴とする食器搬送コンベヤ。
【請求項2】
前記搬送ベルトは、前記搬送ベルトの幅方向に延在し、前記搬送方向に間隔を空けて配置された複数のロッドと、隣り合う前記ロッドに連接する複数のリンク部材と、を備えたチェーンベルトであり、
前記複数のリンク部材は、前記食器を係止する係止突起が形成された突起付きリンク部材を有し、
前記ベルト案内部は、前記前方部分を形成するリンク部材の傾斜角度が、前記後方部分を形成するリンク部材の傾斜角度よりも小さくなるように、前記チェーンベルトを案内することを特徴とする請求項1に記載の食器搬送コンベヤ。
【請求項3】
前記係止突起は、前記リンク部材の前記搬送方向の前方側に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の食器搬送コンベヤ。
【請求項4】
前記ベルト案内部は、前記非係合部分を構成するリンク部材の傾斜角度が、前記搬送方向に進むに従って小さくなるように、前記チェーンベルトを案内することを特徴とする請求項2または3に記載の食器搬送コンベヤ。
【請求項5】
前記突起付きリンク部材の前記係止突起は、異なる形状を有することを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の食器搬送コンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器が浸漬された浸漬槽から食器洗浄装置側に、食器を搬送する食器搬送コンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浸漬槽に浸漬された食器を搬送する食器搬送用のコンベヤが提案されている。たとえば、特許文献1には、浸漬槽および食器洗浄装置側に配置された一対のスプロケットと、一対のスプロケットを渡すように巻き付いたループ状の搬送ベルトと、搬送ベルトを食器の搬送方向に沿って案内するベルト案内部と、を備えたコンベヤが提案されている。このコンベヤの搬送ベルトは、食器の搬送方向と直交する側面視において、前記食器洗浄装置側に向かって、一定の角度で上側に傾斜した傾斜搬送部を有している。このような傾斜搬送部を設けることにより、浸漬槽で浸漬された食器が、搬送ベルトの傾斜搬送部により、浸漬水から引き揚げられ、食器洗浄装置側に搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-134845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の食器搬送コンベヤで、傾斜搬送部のうち、スプロケットに係合しない非係合部分から、このスプロケットに係合する係合部分に食器が移動する際に、傾斜搬送部に沿って傾斜した姿勢の食器は、スプロケットの回転に合わせて水平な姿勢に変化しようとする。この姿勢の変化により、食器の搬送方向の後側の縁が、傾斜搬送部の搬送ベルトから浮き上がり(すなわち、搬送ベルトに対する食器の載置面積が減り)、不安定な状態となるため、食器の搬送状態によっては、傾斜搬送部から浸漬槽側に落下してしまう事態を招くことも想定される。なお、食器搬送コンベヤを省スペースで設置するように傾斜搬送部の傾斜を大きくすると、スプロケットの回転に合わせて、食器は、傾斜が大きい姿勢から水平な姿勢に変化しようとするため、食器の搬送方向の後側の縁が、より大きく浮き上がり、さらに不安定な状態を招くことも想定される。
【0005】
前記課題を鑑みて、その目的とするところは、搬送ベルトで搬送されている食器が、搬送ベルトの傾斜搬送部から、浸漬槽側に落下してしまうことを抑えることができる食器搬送コンベヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係る食器搬送コンベヤは、食器が浸漬された浸漬槽から食器洗浄装置側に、食器を搬送する食器搬送コンベヤであって、前記食器搬送コンベヤは、前記浸漬槽および前記食器洗浄装置側に配置された一対のスプロケットと、前記一対のスプロケットを渡すように巻き付いて、前記スプロケットに係合するループ状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトを前記食器の搬送方向に沿って案内するベルト案内部と、を備えており、前記搬送ベルトは、前記搬送方向と直交する側面視において、前記食器洗浄装置側に向かって上側に傾斜した傾斜搬送部を有しており、前記ベルト案内部は、前記傾斜搬送部のうち、前記食器洗浄装置側の前記スプロケットに対する非係合部分において、前記搬送方向の前方端を含む前方部分の水平方向に対する傾斜角度が、前記前方部分よりも後方側の後方部分の水平方向に対する傾斜角度よりも、小さくなるように、前記搬送ベルトを案内することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、搬送ベルトは、食器洗浄装置側に向かって上側に傾斜した傾斜搬送部を有することにより、浸漬槽に浸漬された食器を傾斜搬送部に載置した状態で、食器洗浄装置側まで搬送することができる。
【0008】
ここで、ベルト案内部により、傾斜搬送部のうち、スプロケットとの非係合部分において、搬送方向の前方端を含む前方部分の水平方向に対する傾斜角度が、その後方部分の水平方向に対する傾斜角度よりも小さくなるように、搬送ベルトが案内される。これにより、搬送ベルトに載置された食器が、食器洗浄装置側のスプロケットに係合しない非係合部分から、このスプロケットに係合する係合部分に移動する際に、前方部分の食器の傾斜角度を後方部分の食器の傾斜角度よりも小さくした状態になるため、あらかじめ食器の姿勢を水平方向に近づけておくことができる。
【0009】
このような結果、スプロケットに係合する係合部分において、傾斜搬送部に沿って傾斜した姿勢の食器が、スプロケットの回転に合わせて水平な姿勢に変化する変化量を小さく抑えることができる。これにより、傾斜搬送部の搬送ベルトから浮き上がり量を抑え、食器は安定した姿勢で食器洗浄装置側まで搬送することができ、食器が傾斜搬送部から浸漬槽側に落下することを抑えることができる。
【0010】
ここで、搬送ベルトは、帯状のベルトであってもよいが、より好ましい態様としては、前記搬送ベルトは、前記搬送ベルトの幅方向に延在し、前記搬送方向に間隔を空けて配置された複数のロッドと、隣り合う前記ロッドに連接する複数のリンク部材と、を備えたチェーンベルトであり、前記複数のリンク部材は、前記食器を係止する係止突起が形成された突起付きリンク部材を有し、前記ベルト案内部は、前記前方部分を形成するリンク部材の傾斜角度が、前記後方部分を形成するリンク部材の傾斜角度よりも小さくなるように、前記チェーンベルトを案内する。
【0011】
この態様によれば、チェーンベルトのリンク部材のうち、突起付きリンク部材の係止突起に食器を係止した状態で、食器を搬送することができる。特に、本実施形態によれば、ベルト案内部により、前方部分を形成するリンク部材の傾斜角度が、後方部分を形成するリンク部材の傾斜角度よりも小さくなるように、チェーンベルトが案内される。これにより、スプロケットに係合する係合部分において、傾斜した姿勢の食器が、水平な姿勢に変化する変化量を抑えることができるため、食器の姿勢の変化に伴い、係止突起から脱離することを抑えることができるため、食器が傾斜搬送部から滑落することを抑えることができる。
【0012】
ここで、係止突起は、食器を係止できるのであれば、リンク部材のどの位置に形成されていても、特に限定されるものではないが、より好ましい態様としては、前記係止突起は、前記リンク部材の前記搬送方向の前方側に形成されている。
【0013】
この態様によれば、搬送方向の前側に連接されるリンク部材に載置された食器が、スプロケットに係合しない非係合部分から、このスプロケットに係合する係合部分に移動した際に、前側のリンク部材がスプロケットに係合することで、食器の姿勢が水平方向に変化し始めて、搬送方向の食器の後側の縁が浮き上がろうとする。しかしながら、この態様ではリンク部材の搬送方向の前方側に係止突起を形成したので、前側のリンク部材と連接部分から近い位置で食器の後側の縁を係止突起で係止することができる。このため、食器の縁の浮き上がり量が小さい範囲で、係止突起により食器の後ろ側縁を係止でき、食器を支持し易くなる。このようにリンク部材の搬送方向の前方側に、係止突起を設けると、搬送方向前側に連接されるリンク部材が係合部分に差し掛かり、支持している食器の姿勢が水平に変化しても、食器の縁が係止突起より高く浮き上がることはなく、係止突起が食器の縁に係止した状態のまま、食器を食器洗浄装置側に安定して搬送することができる。
【0014】
さらに好ましい態様としては、前記ベルト案内部は、前記非係合部分を構成するリンク部材の傾斜角度が、前記搬送方向に進むに従って小さくなるように、前記チェーンベルトを案内する。
【0015】
この態様によれば、ベルト案内部により、非係合部分を構成するリンク部材の傾斜角度は、搬送方向に進むに従って小さくなるように、チェーンベルトが案内されるので、搬送方向に進むに従って、食器の傾斜角度を小さくすることができる。これにより、食器は姿勢を、傾斜した姿勢から水平な姿勢に、少しずつ変化させることができるため、チェーンベルトから食器が浮き上がるのを小さく抑えることができる。
【0016】
さらに、好ましい態様としては、前記突起付きリンク部材の前記係止突起は、異なる形状を有する。異なる形状の係止突起を設けることにより、異なる形状の食器であっても、係止突起により係止して、これを搬送し易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、搬送ベルトで搬送されている食器が、搬送ベルトの傾斜搬送部から、浸漬槽側に落下してしまうことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る食器搬送コンベヤを含む食器洗浄システムの部分的拡大平面図である。
図2図1に示す食器搬送コンベヤの模式的斜視図である。
図3図2に示す食器搬送コンベヤの模式的側面図である。
図4図2に示すチェーンベルトの支持状態を説明するための図である。
図5】(a)は、図2に示す食器搬送コンベヤのチェーンベルトの一部の上面図、(b)は、(a)に示すチェーンベルトの側面図、(c)は、(b)に示すチェーンベルトのリンク部材の側面図である。
図6図5(a)に示すベルト案内部の模式的側面図である。
図7】駆動スプロケット近傍のチェーンベルトの状態を示した拡大側面図である。
図8】(a)は、図7に示すチェーンベルトと食器の関係を示した図であり、(b)は、これまでのチェーンベルトと食器の関係を示した図である。
図9】(a)は、変形例に係る食器搬送コンベヤのチェーンベルトの一部の上面図、(b)は、(a)に示すチェーンベルトの側面図である。
図10図6に示すベルト案内部の変形例に係る側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係る食器搬送コンベヤを、図1図10を参照しながら、説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る食器搬送コンベヤは、食器洗浄システム1に含まれるものである。具体的には、食器洗浄システム1は、食器荒洗浄装置2と、浸漬槽3と、食器搬送コンベヤ4と、接続コンベヤ9Aと、食器洗浄装置9Bと、を備えている。
【0021】
食器荒洗浄装置2は、浸漬槽3に浸漬する前の食器の残飯を洗い落としながら、食器を搬送する装置であり、食器荒洗浄装置2を通過した食器は、浸漬槽3に投入される。浸漬槽3は、食器を浸漬する浸漬水を収容する槽本体31と、槽本体31に洗浄水を噴射する複数のノズル32と、循環ポンプ33と、を備えている。
【0022】
後述するように、槽本体31には、食器搬送コンベヤ4の一部が浸漬されており、食器搬送コンベヤ4の下部には、循環ポンプ33が配置されている。複数のノズル32、32、…は、配管を介して循環ポンプ33に接続されており、各ノズル32には、循環ポンプ33で吸込んだ槽本体31内の浸漬水が、供給される。複数のノズル32、32、…は、浸漬槽3の浸漬水に、食器搬送コンベヤ4に向かう水流が形成されるように、配置されている。
【0023】
図2および図3に示すように、浸漬槽3には、食器搬送コンベヤ4が浸漬された区域を区画し、食器搬送コンベヤ4に向かう食器を一時的にせき止めるせき止め板34が、着脱自在に配置されている。本実施形態では、せき止め板34には、食器の大きさよりも小さい大きさの複数の貫通孔が形成されている。これにより、たとえば、食器搬送コンベヤの下部に集まった残飯回収カゴ38の残飯を、回収する際に、せき止め板34を設置し、食器搬送コンベヤ4に向かう食器を、せき止め板34でせき止めるとともに、貫通孔から食器搬送コンベヤ4側に浸漬水を通すことができる。
【0024】
図1および図3に示すように、食器搬送コンベヤ4の一部が浸漬している槽本体31の区域には、ストレーナ35が配置されており、ストレーナ35は、配管33aを介して、循環ポンプ33に接続されている。後述する食器搬送コンベヤ4の搬送方向Pの後方側および側方側には、通水孔が形成されたカバー36、37が取り付けられている。後方側のカバー36の下方には、複数の残飯回収カゴ38が配置されている。
【0025】
食器搬送コンベヤ4は、食器が浸漬された浸漬槽3から、接続コンベヤ9Aを介して、食器洗浄装置9Bに、食器をかき上げて搬送する装置である。食器搬送コンベヤ4は、一対のスプロケットとして、浸漬槽3に配置された従動スプロケット51と、食器洗浄装置9B側に配置された駆動スプロケット52と、を備えている。駆動スプロケット52は、伝達ベルト53を介して、モータ54に連結されている。
【0026】
食器搬送コンベヤ4は、一対のスプロケット51、52を渡すように巻き付いて、スプロケット51、52に係合するループ状のチェーンベルト(搬送ベルト)6と、チェーンベルト6を食器の搬送方向Pに沿って案内するベルト案内部8と、をさらに備えている。
【0027】
チェーンベルト6は、始端部6aの位置で従動スプロケット51に巻き付いて、これに係合しており、終端部6bの位置で駆動スプロケット52に巻き付いて、これに係合している。これにより、食器搬送コンベヤ4の終端部6bでは、ループ状のチェーンベルト6は、始端部6aから終端部6bまで移動し、その下側では、チェーンベルト6は、終端部6bで折り返し、終端部6bから始端部6aまで移動する。
【0028】
本実施形態では、チェーンベルト6は、これらのスプロケット51、52に巻き付いて、係合する係合部分61A、61Bと、これらのスプロケット51、52に係合せず、後述するベルト案内部8に案内される非係合部分62と、を有する。
【0029】
チェーンベルト6は、食器の搬送方向Pと直交する側面視において、食器を水平方向に搬送する水平搬送部63と、水平搬送部63に連続し、食器洗浄装置9B側に向かって上側に傾斜した傾斜搬送部64を有している。チェーンベルト6の水平搬送部63および傾斜搬送部64は、ベルト案内部8により形成される。
【0030】
チェーンベルト6は、従動スプロケット51および駆動スプロケット52に巻き付いた網目状のベルトである。チェーンベルト6は、図5(a)~(c)に示すように、複数のロッド71、71、…と、複数のリンク部材72、72…とにより構成されている。各ロッド71は、食器搬送コンベヤ4の幅方向(搬送方向Pに直交する方向)に延在しており、複数のロッド71、71、…は、食器搬送コンベヤ4の搬送方向Pに等間隔に配置されている。
【0031】
各リンク部材72の搬送方向Pの両側には、ロッド71を挿入するリンク孔76、76が形成されており、リンク部材72は、ロッド71に遊嵌している。これにより、リンク部材72は、隣接する一対のロッド71、71に対して回動自在に連接される。
【0032】
リンク部材72の部分のうち、食器が載置される載置部78には、食器搬送コンベヤ4の搬送方向Pの前方側において、載置部78に載置された食器を係止する係止突起74が形成されている。係止突起74は山状の係止突起であり、係止突起74には、食器搬送コンベヤ4の搬送方向Pの前方側において、一対のリンク孔76、76の中心同士を結ぶ仮想線L1に対して、傾斜した傾斜部75が形成されている。仮想線L1に対する傾斜部75の傾斜角度αは、30~80°の範囲にあることが好ましい。さらに、載置部78は、チェーンベルト6が駆動スプロケット52に巻き付いたときに、駆動スプロケット52の外周と同心円状の円弧を描くように、形成されている。
【0033】
図5に示すように、ロッド71の両端には、回転自在にローラ73、73が取り付けられており、ローラ73、73は、ベルト案内部8に、転動自在に当接されている。これにより、ベルト案内部8の形状に応じて、チェーンベルト6は、水平搬送部63と、傾斜搬送部64とを形成することができる。
【0034】
図6および図7に示すように、ベルト案内部8は、傾斜搬送部64のうち、食器洗浄装置9B側の駆動スプロケット52に対する非係合部分62において、搬送方向Pの前方端62aを含む前方部分62Aが水平方向に対して傾斜する傾斜角度θ1が、前方部分62Aよりも後方側の後方部分62Bが水平方向に対して傾斜する傾斜角度θ2よりも、小さくなるように、チェーンベルト6を案内している。
【0035】
具体的には、本実施形態では、ベルト案内部8は、前方部分62Aを形成するリンク部材72の傾斜角度θ1が、後方部分62Bを形成するリンク部材72の傾斜角度θ2よりも小さくなるように、チェーンベルト6を案内する。ここで、リンク部材72の傾斜角度は、リンク部材72の一対のリンク孔76、76の中心同士を結ぶ仮想線L1と水平線とがなす角度である。ここで、食器を搬送することができるのであれば、傾斜角度θ1、θ2の大きさは、特に限定されるものではない。
【0036】
傾斜角度θ1、θ2の大きさの関係を満たすことを前提として、傾斜角度θ1は、20°~30°の範囲にあることが好ましく、傾斜角度θ2は、省スペースに設置するためにも、30°~40°の範囲にあることが好ましく、たとえば、傾斜角度θ1と傾斜角度θ2との角度差は、10°~20°の範囲内にあることが好ましい。
【0037】
具体的には、図4に示すよう、ベルト案内部8は、チェーンベルト6の幅方向の両端に設けられたローラ73を支持するアングルまたはチャンネル等からなるレール部材81で構成されている。図6に示すように、ベルト案内部8のレール部材81は、チェーンベルト6の水平搬送部63のローラ73を支持する水平支持部83と、チェーンベルト6の傾斜搬送部64のローラ73を支持する傾斜支持部84とを有している。
【0038】
傾斜支持部84は、前方部分62Aのチェーンベルト6のローラ73を支持する前方支持部82Aと、後方部分62Bのチェーンベルト6のローラ73を支持する後方支持部82Bとを有している。前方支持部82Aの水平方向に対する傾斜角度θ1は、後方支持部82Bの水平方向に対する傾斜角度θ2よりも、小さくなっている。これにより、前方部分62Aの傾斜角度θ1を、後方部分62Bの傾斜角度θ2よりも、小さくすることができる。
【0039】
本実施形態によれば、チェーンベルト6は、食器洗浄装置9側に向かって上側に傾斜した傾斜搬送部64を有することにより、浸漬槽3に浸漬された食器を傾斜搬送部64に載置した状態で、食器洗浄装置9B側(具体的には、接続コンベヤ9A)まで搬送することができる。
【0040】
食器搬送コンベヤ4を搬送された食器は、浸漬槽3に取付けられた排出シュート39から、接続コンベヤ9Aに排出されて、食器洗浄装置9Bまで、搬送される。食器洗浄装置9Bに搬入された食器は、食器洗浄装置9B内において、コンベヤ(図示せず)に搬送されながら、上下から洗浄水が吹き付けられ、洗浄される。
【0041】
ここで、本実施形態では、ベルト案内部8により、図7に示すように、傾斜搬送部64のうち、駆動スプロケット52に対する非係合部分62において、前方部分62Aを形成するリンク部材72の傾斜角度θ1が、後方部分62Bを形成するリンク部材72の傾斜角度θ2よりも小さくなるように、チェーンベルト6が案内される。
【0042】
これにより、図8(a)に示すように、チェーンベルト6に載置された食器が、駆動スプロケット52に係合しない非係合部分62において、後方部分62Bから前方部分62Aに移動する際に、前方部分62Aの食器D2の傾斜角度を後方部分62Bの食器D1の傾斜角度よりも小さくし、食器Dの姿勢を水平方向に近づけることができる。
【0043】
このような結果、図8(b)に示すこれまでのものに比べて、図8(a)に示すよう駆動スプロケット52に係合する係合部分61Bにおいて、傾斜した姿勢の食器D2が、水平な姿勢(食器D3の姿勢)に変化する変化量を抑えることができる。このため、食器D2の姿勢から食器D3の姿勢への変化に伴い、チェーンベルト6からの食器D3の搬送方向Pの後側の縁の浮き上がり量を小さく抑え、係止突起74から食器D3の縁が脱離することを抑えることができる。これにより、食器D3が傾斜搬送部64から滑落することを抑えることができ、食器D3を係止突起74で係止して押せる状態のまま、スプロケット52から食器洗浄装置9Bに向けて搬送することができる。
【0044】
特に、本実施形態では、係止突起74を、リンク部材72の搬送方向Pの前方側に形成することにより、食器D3の姿勢変更に対する係止突起74からの離脱をさらに防止することができる。つまり、搬送方向Pの前側に連接されるリンク部材72に載置された食器Dが、駆動スプロケット52に係合しない非係合部分62から、この駆動スプロケット52に係合する係合部分61Bに移動する際には、食器D3を載置したリンク部材72がロッド71を介して駆動スプロケット52と共に回動するため、食器D3の姿勢も水平方向に変化し始めて、食器D3の搬送方向Pの後側の縁が浮き上がろうとする。このとき当該リンク部材72に連接する、リンク部材72の搬送方向の前方側に係止突起74があることで、後方側に係止突起にある場合より、浮き上がり量を小さくすることができ、食器Dをリンク部材72に支持し易くなる。このようにリンク部材72の搬送方向Pの前方側に係止突起74を設けた場合、搬送方向Pの前側のリンク部材72が係合部分61Bに差し掛かり、食器D3の姿勢が水平に変化しても、食器D3の搬送方向Pの後側の縁が係止突起74より高く浮き上がることはなく、係止突起74が食器D3の縁に係止した状態のまま、食器D3を安定して搬送することができる。
【0045】
このように、本実施形態では、前方部分62Aの傾斜角度を小さくすることにより、食器Dの滑落を抑えつつ、後方部分62Bの傾斜角度を大きくすることができる。これにより、後方部分62Bの傾斜角度の増加に伴う食器搬送コンベヤ4のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
本実施形態では、リンク部材72は、すべて、係止突起74が形成された突起付きリンク部材であるが、たとえば、これらの一部のリンク部材72が、係止突起74を有さなくてもよい。
【0047】
さらに、図9(a)および(b)に示すように、リンク部材(突起付きリンク部材)72の係止突起74は、異なる形状を有してもよく、たとえば、係止突起が、山状の係止突起74Aと、矩形状に突出した係止突起74Bと、で構成されていてもよく、これらの突起の幅および高さ等が異なってもよい。例えば、本実施形態に係る矩形状の係止突起74Bは、その一例として、山状の係止突起74Aに比べて、高さが高く、チェーンベルト6の幅方向の厚みも厚くてもよい。このようにして、異なる形状の係止突起74を設けることにより、異なる形状の食器であっても、異なる形状のいずれかの係止突起74に係止して易く、これを搬送し易くなる。
【0048】
さらに、図9(b)に示すように、係止突起74が形成されたリンク部材72A、72Bと連接される、前方側のリンク部材72Cの載置部78Cは、弧状ではなく、リンク孔76、76を結ぶ仮想線L1と平行な平坦面であり、弧状の載置部78Aの頂部よりも仮想線L1に対して近い位置に形成されていることが好ましい。これにより、前方側に、弧状の載置部78Aを有したリンク部材72Aを連接した場合に比べて、係止突起74A、74Bの突起の高さ全体を係止面として有効に機能させることができ、より深く食器Dを係止することができる。
【0049】
なお、上に示す実施形態では、リンク部材72の傾斜角度を、傾斜角度θ1、θ2の2段階としたが、たとえば、図10に示すように、非係合部分62を構成するリンク部材72の傾斜角度が、搬送方向Pに進むに従って小さくなるように、ベルト案内部8の傾斜支持部84が、チェーンベルト6を案内してもよい。これにより、食器は姿勢を、傾斜した姿勢から水平な姿勢に、少しずつ変化させることができるため、チェーンベルト6から食器が浮き上がり難くなる。
【0050】
以上、本発明のいくつか実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0051】
3:浸漬槽、4:食器搬送コンベヤ、9B:食器洗浄装置、51:従動スプロケット、52:駆動スプロケット、6:チェーンベルト、8:ベルト案内部、61A,61B:係合部分、62:非係合部分、62A:前方部分、62B:後方部分、64:傾斜搬送部、71:ロッド、72,72A,72B:リンク部材(突起付きリンク部材)、74,74A,74B:係止突起、D,D1~D3:食器
図1
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図10