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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188535
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】故障診断システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/36 20060101AFI20221214BHJP
   G06F 11/34 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G06F11/36 196
G06F11/34 152
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096647
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】大橋 勉
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042MA08
5B042MA14
5B042MC40
(57)【要約】
【課題】データの抜け落ちや蓄積するデータ量の増大を招くことなく、設備の故障診断を精度良く、且つ、迅速に行うことができるようにした故障診断システムを提供する。
【解決手段】故障診断システム1は、故障診断の対象となる複数の設備2と、前記設備に関する設備データを収集するデータ収集部4と、前記データ収集部が収集した前記設備データを格納するデータ格納部5と、前記データ格納部に格納された前記設備データに対し所定の故障診断処理を実行する故障診断処理実行部6と、を備え、前記故障診断処理実行部は、前記データ格納部に格納された前記設備データを分割して複数の分割設備データを形成し、これら複数の前記分割設備データに対し前記故障診断処理を並列で実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障診断の対象となる複数の設備(2)と、
前記設備に関する設備データを収集するデータ収集部(4)と、
前記データ収集部が収集した前記設備データを格納するデータ格納部(5)と、
前記データ格納部に格納された前記設備データに対し所定の故障診断処理を実行する故障診断処理実行部(6)と、
を備え、
前記故障診断処理実行部は、前記データ格納部に格納された前記設備データを分割して複数の分割設備データを形成し、これら複数の前記分割設備データに対し前記故障診断処理を並列で実行する故障診断システム。
【請求項2】
前記故障診断処理実行部は、前記データ格納部に格納された前記設備データを前記設備ごとに分割する請求項1に記載の故障診断システム。
【請求項3】
前記故障診断処理実行部は、前記データ格納部に格納された前記設備データを前記設備の構成部品ごとに分割する請求項1に記載の故障診断システム。
【請求項4】
前記故障診断処理実行部は、前記故障診断処理において、前記分割設備データに含まれている複数の前記設備データのうち少なくとも2つの設備データを同時に参照する請求項1から3の何れか1項に記載の故障診断システム。
【請求項5】
前記故障診断処理実行部は、前記故障診断処理として、前記設備データが示す波形から特徴量を抽出し、その特徴量に基づいて、前記設備に故障が発生しているか否かを判定する請求項1から4の何れか1項に記載の故障診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の設備について故障診断を実行可能に構成される故障診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば設備の運転を管理するプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)が知られている。そして、そのPLCが生成するログデータを収集し、収集したログデータに基づいて、設備に故障が発生しているか否かを診断するシステムが考えられている。
【0003】
この種のシステムとして、例えば特許文献1には、工業プラントから任意のサンプリング周期で得られる時系列データを短周期データとして保存するとともに、その任意のサンプリング周期よりも長い周期に換算した長周期データを短周期データに対応付けて保存するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-48047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、設備の故障診断や故障予知を精度良く行う場合には、できるだけ多くのデータを収集して解析する必要がある。しかしながら、上述した従来のシステムでは、短周期データを長周期データに換算することに伴いデータが抜け落ちてしまう可能性があり、このような場合には、故障診断を精度良く行うことが難しくなる。また、上述した従来のシステムでは、短周期データだけでなく長周期データも保存する必要があり、蓄積するデータ量が増えてしまうという課題もある。
【0006】
そこで、本開示は、データの抜け落ちや蓄積するデータ量の増大を招くことなく、設備の故障診断を精度良く、且つ、迅速に行うことができるようにした故障診断システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る故障診断システムは、故障診断の対象となる複数の設備2と、前記設備に関する設備データを収集するデータ収集部4と、前記データ収集部が収集した前記設備データを格納するデータ格納部5と、前記データ格納部に格納された前記設備データに対し所定の故障診断処理を実行する故障診断処理実行部6と、を備え、前記故障診断処理実行部は、前記データ格納部に格納された前記設備データを分割して複数の分割設備データを形成し、これら複数の前記分割設備データに対し前記故障診断処理を並列で実行する。
【0008】
本開示に係る故障診断システムによれば、複数の設備に関する設備データを換算などすることなくそのまま収集して格納し、その格納した設備データに基づいて故障診断を実行する。そのため、データの抜け落ちや蓄積するデータ量の増大を招くことなく、設備の故障診断を精度良く行うことができる。また、本開示に係る故障診断システムによれば、格納した設備データを分割して複数の分割設備データを形成し、これら複数の分割設備データに対し故障診断処理を並列で実行する。そのため、設備の故障診断を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る故障診断システムの構成例を概略的に示すブロック図
図2】本開示の一実施形態に係る設備ログファイルの一例を概略的に示す図
図3】本開示の一実施形態に係る故障診断制御の一例を概略的に示す図
図4】本開示の一実施形態に係る故障診断制御の一例を概略的に示すフローチャート
図5】本開示の一実施形態に係る故障診断処理の一例を概略的に示す図(その1)
図6】本開示の一実施形態に係る故障診断処理の一例を概略的に示す図(その2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る故障診断システムの一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に例示する故障診断システム1は、故障診断の対象となる複数の設備2[N]と、これら複数の設備2[N]の動作をそれぞれ管理する複数の設備管理用プログラマブル・ロジック・コントローラ3[N]と、これら複数の設備管理用プログラマブル・ロジック・コントローラ3[N]から設備ログデータを収集する設備ログデータ収集用プログラマブル・ロジック・コントローラ4と、設備ログデータ収集用プログラマブル・ロジック・コントローラ4が収集した設備ログデータを格納するストレージ5と、故障診断装置6と、を備えている。
【0011】
なお、プログラマブル・ロジック・コントローラは、「PLC(Programmable Logic Controller)」と称することができる。従って、以下、設備管理用プログラマブル・ロジック・コントローラ3[N]をPLC3[N]と称し、設備ログデータ収集用プログラマブル・ロジック・コントローラ4をPLC4と称する。また、設備2[N]およびPLC3[N]における数値「N」は、故障診断システム1が備える設備2[N]およびPLC3[N]の数を示す数値であり、1以上の任意の整数を設定することができる。
【0012】
PLC3[N]は、それぞれ、設備2[N]の動作を管理するものであり、その管理対象である設備2[N]に関する設備ログデータを生成する。設備ログデータは、設備2[N]に関する設備データの一例である。設備ログデータは、設備2[N]に関する例えば動作状態や環境状態などといった様々な状態を示すデータを含む。
【0013】
即ち、設備ログデータは、例えば、設備2[N]が備える図示しないモータの動作状態を示す波形データ、設備2[N]が備える図示しないモータが動作状態であるのか非動作状態であるのかを示すフラグデータ、設備2[N]が備える図示しないシリンダの動作状態を示す波形データ、設備2[N]が備える図示しないシリンダが動作状態であるのか非動作状態であるのかを示すフラグデータ、設備2[N]が備える図示しない真空計の真空度を示す真空度データ、設備2[N]が備える図示しない温度センサが検知する温度を示す温度データ、設備2[N]が備える図示しない湿度センサが検知する湿度を示す湿度データ、などを含む。その他、設備ログデータは、設備2[N]に関する様々なデータを含むことができる。
【0014】
PLC4は、データ収集部の一例であり、複数のPLC3[N]から設備ログデータを時系列で収集する。
【0015】
ストレージ5は、データ格納部の一例であり、例えば磁気ディスクや光ディスクなどといった周知の記憶媒体により構成されている。PLC4は、ストレージ5に、複数のPLC3[N]から収集した設備ログデータを時系列で格納する。即ち、PLC4は、設備2[N]に関する設備ログデータを複数のPLC3[N]から得られた順にストレージ5に格納していく。
【0016】
故障診断装置6は、故障診断処理実行部の一例であり、例えばコンピュータなどといった周知の制御装置により構成されている。故障診断装置6は、ストレージ5に格納された設備ログデータに対し所定の故障診断処理を実行可能である。故障診断装置6は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成される演算処理部7を備えている。この場合、演算処理部7は、複数のコア8[M]を備えている。即ち、演算処理部7は、いわゆるマルチコアプロセッサとして故障診断装置6に搭載されている。
【0017】
なお、コア8[M]における数値「M」は、演算処理部7が備えるコア8[M]の数を示す数値であり、1以上の任意の整数を設定することができる。また、この場合、コア8[M]の数は、設備2[N]およびPLC3[N]の数よりも少ない構成となっている。
【0018】
次に、本開示に係る故障診断システム1による故障診断制御の一例について詳細に説明する。図2に例示するように、ストレージ5には、複数の設備2[N]に係る設備ログデータが時系列Tで格納されている。この場合、複数の設備2[N]に係る設備ログデータは、複数の設備2[N]ごとに配列されてはいるものの、全体としては1つの設備ログファイルFとして格納されている。
【0019】
また、設備ログデータは、設備2[N]が備える複数の構成部品ごとに対応付けられた複数のデータ格納ラインが配列されたデータ構造となっており、それぞれの構成部品について、その構成部品の動作状態などを示すデータが時系列Tで蓄積されるようになっている。即ち、例えば、設備2[1]のモータについての設備ログデータは、設備2[1]のモータに対応付けられているデータ格納ラインに時系列Tで順次蓄積され、設備2[2]のモータについての設備ログデータは、設備2[2]のモータに対応付けられているデータ格納ラインに時系列Tで順次蓄積されていく。
【0020】
そして、図3に例示するように、故障診断装置6は、この設備ログファイルFを分割して複数の分割設備データD[N]を形成する。この場合、故障診断装置6は、1つの設備ログファイルFを設備2[N]ごとに分割するように設定されている。そのため、形成される分割設備データD[N]の数は、故障診断システム1が備える設備2[N]の数、あるいは、PLC3[N]の数と同じとなる。なお、故障診断装置6は、設備ログファイルFを物理的に複数の別個のファイルに分割するのではなく、ソフトウェアによる分割処理により設備ログファイルFを仮想的に分割する。
【0021】
そして、故障診断装置6は、1つの設備ログファイルFから仮想的に形成した複数の分割設備データD[N]に対し、演算処理部7の複数のコア8[M]をそれぞれ割り当てる。この場合、コア8[M]の数は、設備2[N]の数、換言すれば、分割設備データD[N]の数よりも少ない。そのため、故障診断装置6は、分割設備データD[N]のうちの一部、この場合、分割設備データD[1]~D[M]にコア8[1]~8[M]を割り当てる。
【0022】
そして、故障診断装置6は、分割設備データD[1]~D[M]に対し、それぞれに割り当てたコア8[1]~8[M]によって所定の故障診断処理を並列で実行する。即ち、故障診断装置6は、複数の分割設備データD[1]~D[M]に対し、いわゆるマルチスレッドで故障診断処理を並行して実行する。
【0023】
そして、故障診断装置6は、分割設備データD[1]~D[M]に対する故障診断処理を完了すると、次に、分割設備データD[M+1]~D[2M]にコア8[1]~8[M]を割り当てて、これら分割設備データD[M+1]~D[2M]に対して故障診断処理を並列で実行する。このような処理を、故障診断装置6は、全ての分割設備データD[N]に対する故障診断処理が完了するまで繰り返す。
【0024】
次に、上述した故障診断制御の一例について、図4に例示するフローチャートを参照しながら説明する。即ち、故障診断装置6は、演算処理部7が備えるコア8[M]の数だけ故障診断処理用のスレッドを起動する(ステップS1)。そして、故障診断装置6は、その時点においてストレージ5に格納されている設備ログファイルFを読み込む(ステップS2)。そして、故障診断装置6は、読み込んだ設備ログファイルFを、ソフトウェアによる分割処理により複数の分割設備データD[N]に仮想的に分割する(ステップS3)。
【0025】
そして、故障診断装置6は、ステップS1において起動した複数のスレッド、換言すれば、演算処理部7が備える複数のコア8[M]に、ステップS3において形成した分割設備データD[N]をそれぞれ割り当てる(ステップS4)。そして、故障診断装置6は、スレッドを割り当てた分割設備データD[N]に対し故障診断処理を並列で実行する(ステップS5)。そして、故障診断装置6は、故障診断処理の結果を示す診断結果データを保存する(ステップS6)。なお、診断結果データは、例えばストレージ5に保存してもよいし、ストレージ5とは異なる図示しない記憶媒体に保存してもよい。
【0026】
そして、故障診断装置6は、全ての分割設備データD[N]について故障診断処理を完了したか否かを確認する(ステップS7)。故障診断装置6は、全ての分割設備データD[N]について故障診断処理を完了していない場合には(ステップS7:NO)、ステップS4~S6の処理を繰り返す。そして、故障診断装置6は、全ての分割設備データD[N]について故障診断処理を完了すると(ステップS7:YES)、この故障診断制御を終了する。
【0027】
次に、上述した故障診断制御における故障診断処理の一例について、さらに詳細に説明する。即ち、故障診断装置6は、故障診断処理において、分割設備データD[N]に含まれている複数の設備ログデータのうち少なくとも2つの設備ログデータを同時に参照するように設定されている。
【0028】
具体的な一例を示すと、故障診断装置6は、図5に例示する波形データR1とフラグデータR2を同時に参照する。ここで、波形データR1は、設備2[N]が備える図示しないモータの動作状態を示す波形データ、この場合、モータに供給されている電流値を示す設備ログデータである。モータが動作状態である場合には、波形データR1は振幅が激しい波形を示す。一方、モータが動作状態ではない場合には、波形データR1は微弱な波形を示す。即ち、モータには、動作状態ではない場合においても微弱な電流が流れるようになっている。
【0029】
フラグデータR2は、モータが動作状態であるのか非動作状態であるのかを示す設備ログデータである。フラグデータR2において数値「1」が示されている部分は、モータが動作状態であることを示している。一方、フラグデータR2において数値「0」が示されている部分は、モータが動作状態ではないこと、つまり、非動作状態であることを示している。
【0030】
故障診断装置6は、波形データR1とフラグデータR2を同時に参照し、波形データR1のうち、フラグデータR2において数値「1」が示されている部分に対応する部分、つまり、モータが動作状態である場合に対応する部分のデータを抽出する。
【0031】
そして、故障診断装置6は、抽出したデータが示す波形から特徴量を抽出する。特徴量とは、対象とするデータが示す波形のうち特徴的な形状を示している部分を、所定の手法により数値に換算したものである。なお、対象とするデータが示す波形のうち特徴的な形状とは、例えば、波形のピーク部分、急激に上昇している部分、急激に低下している部分、振幅が激しい部分などである。また、特徴的な形状を数値に換算する手法は、例えば、波形のピークが大きいほど大きな値に換算する、波形が急激に上昇しているほど大きな値に換算する、波形の振幅が大きいほど大きな値に換算する、など適宜の手法を設定して実施することができる。そして、故障診断装置6は、波形から抽出した特徴量に基づいて、設備2[N]に故障あるいは故障の兆候が発生しているか否かを判定する。
【0032】
即ち、図6に例示するように、故障診断装置6は、波形から抽出した複数の特徴量P[Y]と所定の閾値Kと比較する。そして、故障診断装置6は、閾値Kよりも大きい特徴量P[X]が存在する場合には、その特徴量P[X]が抽出された波形データR1の部分が得られた時点において、設備2[N]のモータに何らかの故障あるいは故障の兆候が発生したと判定する。そして、故障診断装置6は、設備2[N]に故障あるいは故障の兆候が発生したと判定した場合には、その旨を示す情報を診断結果データに含めて保存する。
【0033】
なお、特徴量P[Y]の数は、分析対象である設備ログデータの波形の形状に応じて増減する。よって、特徴量P[Y]の数は、例えば設備2[N],PLC3[N],コア8[M]の数とは無関係である。但し、故障診断装置6は、設備2[N],PLC3[N],コア8[M]の数に関連付けて、設備ログデータから抽出する特徴量P[Y]の数の最大値や最小値を決定するようにしてもよい。また、所定の閾値Kは、例えば、設備2[N]の機能や特性、分析対象とする設備ログデータの種類などに応じて適宜変更して設定することができる。
【0034】
以上に例示した本開示に係る故障診断システム1によれば、複数の設備2[N]に関する設備ログデータを換算などの処理をすることなくそのまま収集して設備ログファイルFとして格納し、その格納した設備ログファイルFに基づいて故障診断を実行する。そのため、データの抜け落ちを招くことがなく、また、換算したデータを蓄積する必要もないので、蓄積するデータ量の増大を招くこともない。従って、従来のシステムに比べ、設備2[N]の故障診断を精度良く行うことができる。
【0035】
また、故障診断システム1によれば、ストレージ5に格納された設備ログファイルFをソフトウェアによる処理により仮想的に分割して複数の分割設備データD[N]を形成し、これら複数の分割設備データD[N]に対し故障診断処理を並列で実行する。そのため、従来のシステムに比べ、複数の設備2[N]の故障診断を迅速に行うことができる。
【0036】
また、故障診断システム1によれば、故障診断装置6は、ストレージ5に格納された設備ログファイルFをソフトウェアによる処理により「設備2[N]ごと」に仮想的に分割する。この構成例によれば、複数の設備2[N]にそれぞれ対応付けられた複数の分割設備データD[N]に対し故障診断処理を並列で実行することができ、設備2[N]ごとの故障診断を迅速に行うことができる。
【0037】
また、故障診断システム1によれば、故障診断装置6は、故障診断処理において、分割設備データD[N]に含まれている複数の設備ログデータのうち2つの設備ログデータを同時に参照する。この構成例によれば、上述した通り、例えば、設備2[N]が備えるモータの電流値のうち動作状態であるときに得られた電流値のみを抽出して分析することができる。これにより、膨大な量の設備ログデータのうち所定の条件を満たす設備ログデータに絞って故障診断処理を行うことができ、故障診断処理を一層効率良く、且つ、一層迅速に行うことができる。
【0038】
なお、故障診断装置6は、故障診断処理において、分割設備データD[N]に含まれている複数の設備ログデータのうち少なくとも2つの設備ログデータを同時に参照するようにしてもよく、従って、例えば、複数の設備ログデータのうち3つ以上の複数の設備ログデータを同時に参照するようにしてもよい。また、故障診断装置6が同時に参照する設備ログデータは、モータの動作状態を示す波形データR1やモータが動作状態であるのか非動作状態であるのかを示すフラグデータR2に限られるものではなく、設備ログデータに含まれるデータあるいは含まれ得るデータであれば、種々のデータを適宜選択することができる。
【0039】
また、故障診断システム1によれば、故障診断装置6は、故障診断処理として、設備ログデータが示す波形から特徴量を抽出し、その特徴量に基づいて、設備2[N]に故障あるいは故障の兆候が発生しているか否かを判定する。この構成例によれば、設備ログデータの波形が示す特徴的な形状に基づいて、設備2[N]に故障あるいは故障の兆候が発生しているか否かを精度良く判定することが可能となる。
【0040】
なお、本開示は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や拡張を行うことができる。例えば、演算処理部7が備えるコア8[M]の数は、設備2[N]およびPLC3[N]の数と同じとしてもよいし、設備2[N]およびPLC3[N]の数よりも多くしてもよい。この構成例によれば、図4に例示するフローチャートにおけるステップS7の処理を不要とすることができる。つまり、この構成例によれば、複数の分割設備データD[N]に対する複数のコア8[M]の割り当てを1回行うことにより、全ての分割設備データD[N]について故障診断処理を並列で行うことができ、故障診断処理を一層迅速に完結させることができる。
【0041】
また、故障診断装置6は、ストレージ5に格納された設備ログファイルFを「設備2[N]が備える構成部品ごと」に分割するように設定してもよい。即ち、故障診断装置6は、例えば、設備ログファイルFに含まれている全てのモータに係る設備ログデータと、設備ログファイルFに含まれている全てのシリンダに係る設備ログデータと、設備ログファイルFに含まれている全ての真空計に係る設備ログデータと、設備ログファイルFに含まれている全ての温度センサに係る設備ログデータと、設備ログファイルFに含まれている全ての湿度センサに係る設備ログデータと、に分割して分割設備データを形成するように設定してもよい。
【0042】
この構成例によれば、設備2[N]が備える構成部品のうち「どの部品」に故障あるいは故障の兆候が発生しているのかを判定することが可能となる。そして、構成部品に故障あるいは故障の兆候が発見された設備2[N]について、その設備2[N]から得られた設備ログデータに対し改めて故障診断処理を行うことにより、故障あるいは故障の兆候が発生している構成部品、もしくは、故障あるいは故障の兆候が疑われる構成部品を精度良く、且つ、確実に特定することができる。
【0043】
また、設備ログファイルFの分割方法は、「設備2[N]ごと」に分割する方法や「設備2[N]の構成部品ごと」に分割する方法に限られるものではなく、例えば、診断対象である設備2[N]の機能や特性などに応じて種々の基準に基づく分割方法を採用することができる。
【0044】
なお、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0045】
また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【符号の説明】
【0046】
図面中、1は故障診断システム、2は設備、3は設備管理用プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)、4は設備ログデータ収集用プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC,データ収集部)、5はストレージ(データ格納部)、6は故障診断装置(故障診断処理実行部)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6