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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188539
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】チューブ組付装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/10 20060101AFI20221214BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H02K15/10
H02K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096652
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】石塚 照雄
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博之
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615PP01
5H615PP15
5H615RR02
5H615SS31
(57)【要約】
【課題】巻線体から導出される複数のリード線の外周に絶縁チューブを組付けるものにあって、リード線の切断等の作業の自動化率を高め、作業効率を良好とする。
【解決手段】実施形態に係るチューブ組付装置は、リード線が所定位置で保持されるクランプ機構を有し巻線体が搭載される専用パレットと、前記専用パレットに搭載された状態の前記巻線体を複数の作業位置間を移送する移送機構と、前記巻線体のカット作業位置で前記リード線の切断作業を行うと共に直線状に矯正する矯正作業を行う切断矯正機構と、前記巻線体の挿入作業位置で前記リード線に対する絶縁チューブの挿入を行うチューブ挿入機構とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線体から導出される複数のリード線の外周に、絶縁チューブを組付けるチューブ組付装置であって、
前記リード線が所定位置で保持されるクランプ機構を有し前記巻線体が搭載される専用パレットと、
前記専用パレットに搭載された状態の前記巻線体を複数の作業位置間を移送する移送機構と、
前記巻線体のカット作業位置で前記リード線の切断作業を行うと共に直線状に矯正する矯正作業を行う切断矯正機構と、
前記巻線体の挿入作業位置で前記リード線に対する前記絶縁チューブの挿入を行うチューブ挿入機構とを備えるチューブ組付装置。
【請求項2】
前記切断矯正機構は、前記クランプ機構の近傍で前記リード線を把持する把持ツールと、前記リード線を所定位置で切断する切断ツールとを含み、それら両ツールの協働により切断作業を行う請求項1記載のチューブ組付装置。
【請求項3】
前記把持ツールは、前記リード線を把持する力が可変に構成され、前記切断矯正機構は、該把持ツールにより該リード線を比較的弱い力で把持しながら滑らせるように相対移動させることにより矯正作業を行う請求項2記載のチューブ組付装置。
【請求項4】
前記チューブ挿入機構は、矯正されたリード線を把持する把持ツールと、前記リード線に対し先端から前記絶縁チューブをコイルエンド部分まで挿入する挿入ツールとを含み、それら両ツールの協働によりチューブの挿入作業を行う請求項1から3のいずれか一項に記載のチューブ組付装置。
【請求項5】
前記チューブ挿入機構には、前記リード線の外径が、前記絶縁チューブの内径よりも小さい所定径になるように絞るガイド部が設けられている請求項4記載のチューブ組付装置。
【請求項6】
前記チューブ挿入機構においては、前記把持ツールと前記挿入ツールとがそれぞれ別のロボットに取付けられて移動されながら挿入作業を行う請求項4又は5記載のチューブ組付装置。
【請求項7】
前記チューブ挿入機構に対し、前記絶縁チューブをエア圧送方式により供給するチューブ供給機構を備える請求項1から6のいずれか一項に記載のチューブ組付装置。
【請求項8】
前記チューブ供給機構は、長さや内径の異なる複数種類の絶縁チューブを備え、必要な絶縁チューブを供給する請求項7記載のチューブ組付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、巻線体から導出される複数のリード線の外周に、絶縁チューブを組付けるチューブ組付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばモータのステータを製造するにあたっては、ステータコアに巻線を挿入し、成形した後、巻線から導出されているリード線を所定長さで切断し、各リード線に対する絶縁チューブを組付ける作業が行われる。前記リード線は、エナメル線からなる複数本の素線を束ねて構成される。例えば特許文献1には、ステータのリード線に自動で絶縁チューブを組付ける組付装置が開示されている。この組付装置は、リード線を挟むように交互に千鳥状に配置された3個のローラを有する把持部材を備え、それら3個のローラによりリード線を挟持しながら把持部材を移動させ、絶縁チューブの挿入を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4713288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の組付装置では、次のような問題点があった。即ち、ステータコアに対する巻線挿入作業の直後の状態では、リード線が不揃いの方向を向いている等形状は不安定であり、上記組付装置にセットするにあたっては、リード線のカットや、リード線の直線矯正といった作業を行っておく必要があった。リード線のカットや矯正には、作業者の手による事前作業が必要となり、自動化率が低いものとなっていた。尚、把持部材が、3個のローラによりリード線を挟持する構成のため、ローラが邪魔になり、絶縁チューブをリード線の奥部のコイルエンド部分まで挿入するのが難しい事情もあった。
【0005】
そこで、巻線体から導出される複数のリード線の外周に、絶縁チューブを組付けるものにあって、リード線の切断等の作業の自動化率を高めることができ、作業効率を良好とすることが可能なチューブ組付装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るチューブ組付装置は、巻線体から導出される複数のリード線の外周に、絶縁チューブを組付けるものであって、前記リード線が所定位置で保持されるクランプ機構を有し前記巻線体が搭載される専用パレットと、前記専用パレットに搭載された状態の前記巻線体を複数の作業位置間を移送する移送機構と、前記巻線体のカット作業位置で前記リード線の切断作業を行うと共に直線状に矯正する矯正作業を行う切断矯正機構と、前記巻線体の挿入作業位置で前記リード線に対する前記絶縁チューブの挿入を行うチューブ挿入機構とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態を示すもので、チューブ組付装置の全体構成を概略的に示す平面図
図2】チューブ組付装置の全体構成を概略的に示す斜視図
図3】ステータが専用パレットに移載された状態を示す斜視図
図4】ロボットの様子を示す斜視図
図5】把持ツールを示す斜視図
図6】カッタユニットを有する把持ツールを示す斜視図
図7】チューブ挿入ユニットを示す斜視図
図8】リード線に対する絶縁チューブの挿入の工程の第1工程~第4工程を順に示す図
図9】リード線に対する絶縁チューブの挿入の工程の第5工程~第8工程を順に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、巻線体としての三相交流モータのステータに適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、巻線体としてのステータ1の構成について、簡単に述べる。図3に示すように。このステータ1は、全体としてリング状をなし、内周部に複数個例えば24個のスロットを有するステータコア2に、三相の巻線3を装着して構成されている。ステータ1には、前記巻線3から導出された形態の複数本のリード線4が設けられる。このとき、リード線4は、例えばエナメル線からなる素線を束ねた束線からなり、この場合、2本ずつが繋がった形態の6本の電力線と、6本の中性線が存在しており、そのうち電力線に関しては、切断後2本ずつがまとめられて3本とされる。
【0009】
図1及び図2に示すように、上記したステータ1は、巻線ライン10において巻線3が組付けられ、その後、本実施形態に係るチューブ組付装置としてのチューブ組付ライン11に送られる。そして、チューブ組付ライン11において、前記各リード線4に対する絶縁チューブ5(図8図9参照)の挿入作業が行われる。その後、ステータ1は、次の組立ライン12に送られて、次の組立て作業が行われる。巻線ライン10、チューブ組付ライン11、次の組立ライン12は、モータの製造ラインの一部分を構成する。
【0010】
図1及び図2は、本実施形態のチューブ組付ライン11の全体構成を模式的に示している。ここで、チューブ組付ライン11には、図で左端部の後部に、前記巻線ライン10からステータ1が搬入される搬入ステージ13が設けられている。これと共に、図で左端部の前部に、絶縁チューブ5の組付けが終了したステータ1が次の組立ライン12に向けて搬出される搬出ステージ14が設けられている。巻線ライン10から搬出されたステータ1は、図示しない移載ユニットにより搬入ステージ13に搬入されて、後述する専用パレット15に移載される。その後、ステータ1は専用パレット15に保持された状態で搬送されながら作業が行われる。作業が終わったステータ1は、搬出ステージ14で専用パレット15から取外されて搬出される。
【0011】
チューブ組付ライン11には、前記搬入ステージ13から図で右方に延びて、ステータ1を保持した専用パレット15を図で右方に搬送する後部搬送路16が設けられている。後部搬送路16の右端部には、その専用パレット15を図で前方に搬送するバッファ17が設けられ、バッファ17の前端部から図で左方に延びて前記搬出ステージ14に向けてステータ1を保持した専用パレット15を搬送する前部搬送路18が設けられている。詳しく図示はしないが、前記搬入ステージ13部分には、ステータ1を専用パレット15に移載する移載ユニット19が設けられている。また、後部搬送路16、バッファ17、前部搬送路18上を、ステータ1を保持した専用パレット15を移送するための移送機構20が設けられている。
【0012】
そして、前記前部搬送路18に沿って、ステータ1が停止されて作業が行われる複数の作業位置が設けられる。本実施形態では、作業位置として、図で右から順に第1~第5の5つの作業ステージ21~25が並んで設けられている。前記ステータ1は、これら第1~第5の作業ステージ21~25を順に送られるようになっている。図2に示すように、前記バッファ17の右側には、チューブ供給機構26が設けられている。
【0013】
詳しい説明は省略するが、このチューブ供給機構26は、ロボット55等を備え、後述するチューブ挿入機構に対し、絶縁チューブ5をエア圧送方式により搬送管を通して供給するように構成されている。このとき、チューブ供給機構26には、長さや内径の異なる複数種類の絶縁チューブ5が備えられ、後述する各チューブ挿入ユニットに対し、必要な絶縁チューブ5を供給する。この場合、絶縁チューブ5の長さは、各リード線4の長さに応じたものとなる。また、リード線4の太さに合わせて、径の比較的大きい電力線用の絶縁チューブ5と、それより径の小さい中性線用の絶縁チューブ5とが供給される。
【0014】
前記第1の作業ステージ21は、前記ステータ1のリード線4のうち、中性線の切断及び矯正の作業を行う作業位置であり、その後部に、第1の切断矯正機構27が設けられている。前記第2の作業ステージ22は、前記ステータ1のリード線4のうち、電力線の切断及び矯正の作業を行う作業位置であり、その後部に、第2の切断矯正機構28が設けられている。従って、第1の作業ステージ21及び第2の作業ステージ22が、それぞれカット作業位置となる。
【0015】
前記第3の作業ステージ23は、前記ステータ1のリード線4の中性線のうち所定の3本について、絶縁チューブ5の挿入作業を行う作業位置であり、その後部には、第1のチューブ挿入機構29が設けられている。前記第4の作業ステージ24は、前記ステータ1のリード線4の中性線のうち残りの3本について、絶縁チューブ5の挿入作業を行う作業位置であり、その後部には、第2のチューブ挿入機構30が設けられている。前記第5の作業ステージ25は、前記ステータ1のリード線4のうち電力線について、絶縁チューブ5の挿入作業を行う作業位置であり、その後部には、第3のチューブ挿入機構31が設けられている。従って、第3~第5の作業ステージ23~25が、それぞれ挿入作業位置となる。
【0016】
これにて、チューブ組付ライン11においては、搬入ステージ13においてステータ1が専用パレット15に移載され、第1~第5の作業ステージ21~25を順に送られながら、各リード線4に対する切断及び矯正の作業並びに絶縁チューブ5の挿入の作業が実行される。このとき、図示はしないが、チューブ組付ライン11には、コンピュータを主体として構成される制御装置が設けられている。この制御装置は、予め入力された作業プログラムや教示データ、並びに各種センサ信号などに基づいて、各機構のアクチュエータやロボットなどライン全体を制御し、自動で作業を実行させるように構成されている。
【0017】
さて、図3図9も参照して、上記したチューブ組付ライン11の各機構における要部の構成について以下述べる。まず、図3は、前記専用パレット15の構成を示し、この専用パレット15は、ベースプレート32、ワーク回転テーブル33、保持用プレート34、クランプ機構35等を備えている。そのうち前記ベースプレート32は、四角形板状をなし、前記移送機構20により、搬入ステージ13から搬出ステージ14まで搬送路16~18を送られる。また、図示しない位置決めピンなどによって、所定位置即ち前部搬送路18の各作業ステージ21~25に停止されるようになっている。
【0018】
前記ワーク回転テーブル33は、前記ベースプレート32上に回転可能に設けられ、このワーク回転テーブル33上には、前記ステータ1が軸方向を上下方向として、所定の回転位置で載置状に保持されるようになっている。このワーク回転テーブル33は、専用パレット15が各作業ステージ21~25即ち各作業位置に停止された状態で、設備側に設けられた図示しない回転駆動機構に着脱可能に連結され、この回転駆動機構によって、ステータ1を作業に応じた所定回転角度に回転させるように構成されている。
【0019】
このとき、ワーク回転テーブル33の上部には、前記ステータ1のコイルエンドの高さに合わせて、前記保持用プレート34が、ステータ1の周囲を囲むように半円形のリング状に設けられている。そして、この保持用プレート34に、前記クランプ機構35が設けられている。このクランプ機構35は、保持用プレート34の半円形部分に位置して、ステータ1の巻線3の上部コイルエンド部から導出されている複数本のリード線4を、放射方向に延びた状態で間隔を置いて保持するように構成されている。このとき、クランプ機構35によるリード線4の保持及び保持の解放は、設備側に設けられた図示しない保持解除機構により行われる。
【0020】
これにより、搬入ステージ13に搬入されたステータ1は、ここで専用パレット15に搭載される。このとき、ステータ1のステータコア2に対する巻線3の挿入作業の直後の状態では、リード線4の形状は不安定であったとしても、ここで、クランプ機構35によりリード線4が所定位置、即ち外周に放射方向に引出された状態に保持されるようになる。以降の各工程においては、移送機構20により、ステータ1を専用パレット15と共に移動させることにより、専用パレット15に対するリード線4の保持位置を所定位置に維持した状態で、各作業位置に移動させることができる。
【0021】
次に、各作業ステージ21~25に設けられる切断矯正機構27、28、並びに、チューブ挿入機構29~31について述べる。本実施形態では、前記2つの切断矯正機構27、28は、共に同等の構成を備えており、夫々、2台のロボット36、37を備えて構成される。また、前記3つのチューブ挿入機構29~31についても、全て同等の構成を備えており、やはり夫々、2台のロボット36、37を備えて構成される。図4は、それらのうち第1の切断矯正機構27を代表させて示しており、左右に並んで、ロボット36、37を備えている。
【0022】
前記ロボット36、37は、共に、例えば周知構成を備える6軸型の多関節型ロボットから構成されている。そして、そのうち一方のロボット36のアームの先端には、図5にも示すように、前記クランプ機構35の近傍で前記リード線4を把持する把持ツール38が取付けられている。他方のロボット37のアームの先端には、図6にも示すように、前記リード線4を所定位置で切断する切断ツール39が取付けられている。
【0023】
前記把持ツール38は、図5に示すように、フレーム38aの基端部に前記ロボット36に取付けられる取付部38bを備えると共に、先端部に一対の把持爪40を備えている。前記フレーム38a内には、前記把持爪40を開閉駆動するためのモータ等を駆動源とした駆動機構41が設けられている。このとき、駆動機構41は、把持爪40の移動ストロークや把持力の制御が可能に構成されている。これにて、把持ツール38により、前記リード線4を把持したりまとめたりする動作が行われる。
【0024】
前記切断ツール39は、図6に示すように、前記把持ツール38に、前記フレーム38aの側面に位置してカッタユニット42を装着した構成とされている。前記カッタユニット42は、切断刃43及びその切断刃43を往復駆動して切断動作を実行させる駆動機構44を備えて構成されている。これにて、他方のロボット37に設けられた切断ツール39は、把持ツール38によって把持したリード線4をカッタユニット42により切断するように構成されている。
【0025】
このように切断矯正機構27、28においては、2台のロボット36、37及びそれらが備える把持ツール38、切断ツール39の協働により、専用パレット15のクランプ機構35により保持された各リード線4に対し、所定の位置を把持し且つテンションを付与した状態で、所定位置で切断する切断作業を自動で実行するように構成されている。また、これと共に、切断矯正機構27、28においては、切断されたリード線4をまとめて外周方向に直線的に延びるようにいわば癖をつける矯正の作業が併せて実行される。この矯正作業は、例えば、リード線4を束ね、把持爪40によって比較的弱い力で把持しながら、把持爪40をステータ1の外周方向に直線的に滑らせることにより実行される。
【0026】
このとき、第1の切断矯正機構27においては、第1の作業ステージ21のカット作業位置に搬送されたステータ1に対し、リード線4のうち中性線に対する所定長さでの切断及び矯正の作業が実行される。次いで、第2の切断矯正機構28においては、第2の作業ステージ22のカット作業位置に搬送されたステータ1に対し、リード線4のうち電力線に対する所定長さでの切断及び矯正の作業が実行される。尚この場合、各作業位置においてステータ1の各リード線4がクランプ機構35に保持されている位置、つまりロボット36、37の目標となる把持位置等が予め教示されるようになっている。
【0027】
また、前記第1~第3の3つのチューブ挿入機構29~31についても、全て同等の構成を備えており、やはり夫々、2台のロボット36、37を備えて構成される。この場合、一方のロボット36には、矯正後のリード線4を把持する把持ツール38が取付けられる。これに対し、他方のロボット37のアームの先端には、図7及び図8図9にも示すように、前記リード線4に対し先端から絶縁チューブ5をコイルエンド部分まで挿入する挿入ツール45が設けられる。
【0028】
前記挿入ツール45は、図7に示すように、前記把持ツール38に、前記フレーム38aの側面に位置してチューブ挿入ユニット46を装着した構成とされている。チューブ挿入ユニット46は、以下のように構成されている。即ち、図7図9に示すように、チューブ挿入ユニット46は、前記フレーム38aに固定されるベース47、ベース47に取付けられ図で上下方向に長い円筒部48、この円筒部48の下部に設けられた挿入ガイド49を備えて構成される。
【0029】
図8図9に示すように、前記円筒部48は、図で上下方向に貫通する中空部を有し、その上端部には、搬送管50が接続されている。詳しく図示はしないが、前記搬送管50は前記チューブ供給機構26に接続され、必要な絶縁チューブ5が、エア圧送方式により搬送管50を通して円筒部48の中空部内に供給されるようになっている。また、円筒部48のやや下部寄り部位には、供給された絶縁チューブ5を把持するためのチューブグリッパ51が開閉動作可能に設けられている。
【0030】
前記挿入ガイド49は、前記円筒部48の下部に、上昇位置と下降位置との間で上下動可能に設けられている。図8の第1工程~第3工程が挿入ガイド49の上昇位置を示し、図8の第4工程及び図9の各工程が挿入ガイド49の下降位置を示している。この挿入ガイド49は、前記リード線4を上方にガイドするガイド部52や、そのガイド部52の上端部分に位置して前記絶縁チューブ5の下端を保持するチューブ先端グリッパ53等を備えて構成される。
【0031】
前記ガイド部52は、図8で下面側に、リード線4の先端部が下方から挿入される径大な入口部を有し、上方に向けて窄まるテーパ面を介して、上端部に前記円筒部48の下端開口に位置する薄肉状の筒部52a(図8の第1工程参照)を有している。この筒部52aは、前記絶縁チューブ5の先端部の内周側に相対的に挿入されるもので、前記チューブ先端グリッパ53の内周側に位置されている。また、リード線4がガイド部52を下方から上方に向けて通されることにより、リード線4の外径が、前記絶縁チューブ5の内径よりも小さい所定径になるように絞られ、筒部52aを通って円筒部48に挿入されるようになっている。尚、前記円筒部48等の内径については、供給される絶縁チューブ5の外径に応じたものとなり、ガイド部52上端の筒部52aの内径も、リード線4の外径言い換えれば絶縁チューブ5の内径に応じた寸法とされる。
【0032】
また、このガイド部52は、前記筒部52aを含めて図で左右に二つ割り状とされた2部品から構成され、図示しない駆動機構により、それら各部品が突き合わされる第1の閉塞位置と、その第1の閉塞位置から若干量だけ左右に開いた第2の閉塞位置と、左右に離間する開放位置との間で開閉可能とされている。図8の第1、第2工程はガイド部52の第1の閉塞位置を示し、図8の第3、第4工程はガイド部52の第2の閉塞位置を示し、図9の各工程はガイド部52の開放位置を示している。詳しく図示はしないが、このチューブ挿入ユニット46には、前記チューブグリッパ51の開閉動作の駆動源となるエアシリンダ54が設けられていると共に、前記チューブ先端グリッパ53の開閉の駆動源となるエアシリンダや、前記ガイド部52の開閉の駆動源となるエアシリンダ、前記絶縁チューブ5検出用のセンサなども設けられている。
【0033】
このとき、本実施形態では、第1のチューブ挿入機構29においては、第3の作業ステージ23の挿入作業位置に搬送されたステータ1に対し、リード線4のうち中性線の3本に対する絶縁チューブ5の挿入作業が実行される。次の第2のチューブ挿入機構30においては、第4の作業ステージ24の挿入作業位置に搬送されたステータ1に対し、リード線4のうち中性線の残りの3本に対する絶縁チューブ5の挿入作業が実行される。更に、第3のチューブ挿入機構31においては、第5の作業ステージ25の挿入作業位置に搬送されたステータ1に対し、リード線4のうち電力線の3本に対する絶縁チューブ5の挿入作業が実行される。チューブ挿入作業の詳細については、次の作用説明にて述べる。
【0034】
次に、上記構成のチューブ組付ライン11の作用について述べる。チューブ組付ライン11に設けられた制御装置は、上記した各機構を制御することにより、以下のようにして、ステータ1のリード線4に対する絶縁チューブ5の組付作業を実行する。即ち、図1図2に示すように、まず、巻線ライン10から供給されたステータ1は、搬入ステージ13において専用パレット15に移載される。この後、ステータ1を保持した専用パレット15は、後部搬送路16、バッファ17を介して前部搬送路18を、第1~第5の作業ステージ21~25の順に送られる。
【0035】
このとき、巻線ライン10から搬入ステージ13に供給されるステータ1は、ステータコア2に対する巻線3の挿入作業の直後の状態で、リード線4の形状つまり導出方向等が不安定である事情がある。ところが、図3に示すように、専用パレット15に保持された状態で、クランプ機構35により各リード線4を所定位置、即ち整列状で外周方向つまり放射方向に引出した状態に保持することができる。従って、以降の工程において、移送機構20により、ステータ1を専用パレット15と共に移動させることにより、専用パレット15に対するステータ1のリード線4の保持位置を一定に固定した状態で、各作業位置に移動させることができる。
【0036】
上記したように、第1の作業ステージ21では、第1の切断矯正機構27により、スタータ1のリード線4のうち中性線に対する切断作業が行われると共に、直線状に矯正する矯正作業が行われる。これら切断作業及び矯正作業は、把持ツール38を有するロボット36と、切断ツール39を有するロボット37との協働により行われる。この場合、リード線4にテンションをかけながら確実に切断作業を行うことができ、また、把持ツール38の把持爪40によりリード線4を比較的弱い力で把持しながら滑らせるように相対移動させることにより、容易に矯正作業を行うことができる。
【0037】
第1の作業ステージ21における作業が終了すると、専用パレット15は、次の第2の作業ステージ22に送られる。第2の作業ステージ22では、第2の切断矯正機構28により、スタータ1のリード線4のうち電力線に対して、所定長さに切断する切断作業が行われると共に、切断後のリード線4をまとめた状態で直線状に矯正する矯正作業が行われる。このとき、第1及び第2の作業ステージ21及び22においては、共にステータ1のリード線4は、専用パレット15に対して所定の位置に保持されているので、容易に切断及び矯正の作業の自動化を図ることができる。
【0038】
ステータ1のリード線4に対する切断及び矯正の作業が終了すると、専用パレット15は、次の第3の作業ステージ23に送られる。第3の作業ステージ23では、第1のチューブ挿入機構29により、ステータ1のリード線4のうち3本の中性線に対する、絶縁チューブ5の挿入作業が実行される。チューブ挿入の作業は、把持ツール38を有するロボット36と、挿入ツール45を有するロボット37との協働により行われる。図8及び図9は、このチューブ挿入作業の各工程を順に示している。
【0039】
即ち、第1工程から第4工程までを示す図8において、第1工程では、挿入ツール45のチューブ挿入ユニット46に対し、必要な絶縁チューブ5が、前記チューブ供給機構26からエア圧送方式により圧送され、搬送管50を通して円筒部48に供給される。この時点では、チューブグリッパ51及びチューブ先端グリッパ53は開いた状態にあり、また、挿入ガイド49は円筒部48に近い上昇位置にあり、ガイド部52は第1の閉塞位置にあって閉塞状態とされている。
【0040】
絶縁チューブ5の先端が図示しないセンサにより検出されると、次の第2工程において、チューブ先端グリッパ53が閉塞され、絶縁チューブ5の先端部が筒部52aとチューブ先端グリッパ53との間に挟まれてその位置に保持される。これと共に、チューブグリッパ51が閉塞されて絶縁チューブ5が固定される。一方、挿入対象となるリード線4が、図示しない把持ツール38により把持されて、ガイド部52に対し図で下方から挿入され、上方に押し込まれていく。このとき、リード線4は、既に所定長さに切断され、直線矯正されているので、ガイド部52に対する挿入作業を容易に行うことができる。
【0041】
第3工程では、チューブ先端グリッパ53が開放位置に移動されると共に、ガイド部52が第2閉塞位置に位置されて絶縁チューブ5の先端が若干量だけ広げられ、リード線4の挿入抵抗を減らした状態で、リード線4が上方に更に差込まれていく。この場合、ガイド部52においては、リード線4の外径が、前記絶縁チューブ5の内径よりも小さい所定径になるように絞られるので、絶縁チューブ5に対し、確実かつスムーズに挿入作業を行うことができる。次の第4工程では、挿入ガイド49が、円筒部48に対し下降した下降位置にスライド変位され、挿入ガイド49が巻線3側に更に押し込まれる。
【0042】
次いで、図9は、第5工程から第8工程までを示しており、第5工程においては、ガイド部52が開放状態に変位される。これにて、リード線4を絶縁チューブ5に挿入する際の抵抗がより小さくなるので、第6工程にて、リード線4が更に奥方まで挿入されていくようになり、リード線4の奥部のコイルエンド付近まで絶縁チューブ5を挿入することが可能となる。絶縁チューブ5に対するリード線4の挿入が完了すると、第7工程にて、チューブグリッパ51が開放される。最後の第8工程にて、チューブ挿入ツール46がステータ1から後退して、絶縁チューブ5の挿入作業作業が完了する。
【0043】
第3の作業ステージ23におけるチューブ挿入作業が終了すると、専用パレット15は、次の第4の作業ステージ24に送られる。第4の作業ステージ24では、第2のチューブ挿入機構30により、ステータ1のリード線4のうち、残りの3本の中性線に対する絶縁チューブ5の挿入作業が、上記と同様にして行われる。第4の作業ステージ24におけるチューブ挿入作業が終了すると、専用パレット15は、次の第5の作業ステージ25に送られ、第3のチューブ挿入機構31により、ステータ1のリード線4のうち電力線に対する絶縁チューブ5の挿入作業が、上記と同様にして行われる。
【0044】
以上のような作業が、第1~第5の全ての作業ステージ21~25で並行して順次行われる。このとき、各作業ステージ21~25における作業時間は、ほぼ同等、例えば90秒とされ、各機構における無駄な停止時間がなく、効率的な作業が行われる。チューブ挿入作業が完了した専用パレット15は、搬出ステージ14に送られ、ここでステータ1のみが次の組立ライン12に送られ、専用パレット15は回収されて搬入ステージ13に送られる。
【0045】
このような本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。即ち、ステータ1の搬送に、クランプ機構35を有する専用パレット15を用いる構成としたので、専用パレット15に対す~ステータ1のリード線4の保持位置を所定位置に固定した状態で、各作業ステージ21~25に移送することができる。そして、切断矯正機構27、28により、容易にリード線4の切断及び矯正の作業の自動化を図ることができる。さらに、チューブ挿入機構29~31により、既に切断され、直線矯正されているリード線4に対する、絶縁チューブ5の挿入作業を自動で容易に行うことができる。
【0046】
この結果、本実施形態によれば、ステータ1から導出される複数のリード線4の外周に、絶縁チューブ5を組付けるものにあって、リード線4の切断等の作業の自動化率を高めることができ、作業効率を良好とすることが可能となるという優れた効果を得ることができる。このとき、本実施形態では、絶縁チューブ5を、巻線3のコイルエンド付近のリード線4の奥部まで挿入することが可能となった。
【0047】
特に本実施形態では、切断矯正機構27、28を、クランプ機構35の近傍でリード線4を把持する把持ツール38と、リード線4を所定位置で切断する切断ツール39とを含み、それら両ツール38、39の協働により切断作業を行うように構成した。これにより、把持ツール38と切断ツール39との協働により、リード線4にテンションをかけながら確実に切断作業を行うことができる。しかも、リード線4を把持する力が可変に構成された把持ツール38により、矯正専用のツールを設けることなく、切断作業と併せて簡単な構成でリード線4の矯正を行うことができるようになった。
【0048】
また、本実施形態では、チューブ挿入機構29~31を、把持ツール38と、リード線4に対し先端から絶縁チューブ5をコイルエンド部分まで挿入する挿入ツール45とを備える構成とした。これにより、把持ツール38と挿入ツール45との協働により、絶縁チューブ5のコイルエンド付近まで挿入作業を自動で確実に行うことができる。しかも、挿入ツール45にガイド部52を設けたので、ガイド部52によってリード線4の外径を絶縁チューブ5の内径よりも小さく絞った状態で、確実かつスムーズに挿入作業を行うことができる。特に、チューブ挿入機構29~31においては、2台のロボット36、37を用いて挿入作業を行う構成としたので、作業を受けるステータ1の相対的な位置や向きなどに制限が少ない状態で、良好に挿入作業を行うことが可能となる。
【0049】
更に本実施形態では、チューブ挿入機構29~31に対し、絶縁チューブ5をエア圧送方式により供給するチューブ供給機構26を設けたので、チューブ供給機構26から、チューブ挿入機構29~31に対し、必要な絶縁チューブ5を自在に供給することができ、作業性を高めることができる。このとき、チューブ供給機構26から、長さや内径の異なる複数種類の絶縁チューブ5の中から、必要な絶縁チューブ5を供給することができるので、複数種類の絶縁チューブ5に関する組付作業を自動で容易に行うことができ、利便性を高め、より効率的な作業を行うことができる。
【0050】
尚、上記実施形態においては、巻線体として、モータのステータを具体例としてあげたが、例えば発電機のコイル、変圧器や変成機のコイル等の様々な巻線体に適用することが可能である。また上記実施形態では、切断矯正機構やチューブ挿入機構に関して、2台の6軸型のロボットを備える構成としたが、例えば2台のうち一方のロボットを水平多関節形ロボットから構成したり、1台のロボットから構成したりする等の様々な変更が可能である。その他、専用パレットや搬送路の構成、チューブ供給機構の構成等についても種々変更することが可能である。作業ステージの構成や組合わせ等についても、様々な追加や変更が可能であることは勿論である。
【0051】
以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
図面中、1はステータ(巻線体)、3は巻線、4はリード線、5は絶縁チューブ、11はチューブ組付ライン(チューブ組付装置)、13は搬入ステージ、14は搬出ステージ、15は専用パレット、16は後部搬送路、17はバッファ、18は前部搬送路、20は移送機構、21~25は作業ステージ(作業位置)、26はチューブ供給機構、27、28は切断矯正機構、29~31はチューブ挿入機構、35はクランプ機構、36、37はロボット、40は把持爪、42はカッタユニット、45は挿入ツール、46はチューブ挿入ユニット、48は円筒部、49は挿入ガイド、50は搬送管、51はチューブグリッパ、52はガイド部、53はチューブ先端グリッパを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9