(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188540
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電子機器用筐体
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
H05K5/03 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096655
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】深江 友則
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 友彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360AD01
4E360BA02
4E360BB04
4E360BB22
4E360BC04
4E360CA02
4E360EA12
4E360EA18
4E360EC12
4E360ED02
4E360ED03
4E360GA53
(57)【要約】
【課題】シャーシをカバー8で覆った電子機器用筐体2において、カバーから把手20を取り外さずにカバーをフレームから取り外せるようにする。
【解決手段】カバーの側板8aの内面に固定された補強板15には、めねじ部材32及びナット部材33が取り付けられており、これらはカバーの内部に収納されるシャーシ4の係合部40に係合している。カバーの側板の外面には、止めねじ21で把手が固定されている。把手を持って筐体を持ち上げると、シャーシの荷重は、めねじ部材及びナット部材と、係合部40を介してカバー8に加わる。把手20はシャーシ4とは構造的に連結されていない。把手をカバーに取り付けたままで、カバーはシャーシから直ちに取り外せる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面板(3)と、
前記底面板に取り付けられ、電子部品(7)が実装されるフレーム(4)と、
前記フレームの正面に取り付けられる正面パネル(5)と、
前記フレームの背面に取り付けられる背面パネル(6)と、
前記フレームの両側面と上面を覆うカバー(8)と、
前記カバーの両側板(8a)の外面に設けられた把手(20)と、
前記カバーの両側板の内面と前記フレームの一方に設けられた突起部(32,33)と、
前記カバーの両側板の内面と前記フレームの他方に設けられた係合部(40)と、
を具備し、
前記突起部と前記係合部は、把手を持って前記カバーを持ち上げた際に、前記フレームの荷重が前記突起部と前記係合部を介して前記カバーに加わるように係合していることを特徴とする電子機器用筐体(2)。
【請求項2】
前記突起部(32,33)は、前記カバー(8)の両側板(8a)の各内面に設けられており、
前記係合部(40)は、前記フレーム(3,4)の外面であって前記突起部と対応する位置に設けられており、
前記突起部と前記係合部は、前記把手(20)を持って前記電子機器用筐体(2)を持ち上げた際に、前記フレームの荷重が前記係合部を介して前記突起部に加わるように係合していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用筐体(2)。
【請求項3】
前記係合部(40)は、前記正面パネル(5)又は前記背面パネル(6)に垂直な装着方向(X)に平行な横溝部(41)と、前記横溝部に連続しており上端で開口する縦溝部(42)を有していることを特徴とする請求項2に記載の電子機器用筐体(2)。
【請求項4】
前記突起部(32)には、前記縦溝部(42)及び前記横溝部(41)の溝幅よりも大きい外径の頭部(35)を有する係止部材(31)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電子機器用筐体(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装されたフレームを覆うカバーに把手が設けられている電子機器用筐体に係り、特にフレームの姿勢を変更することなく容易に組み立てることができるとともに、カバーから把手を取り外すことなくカバーをフレームから容易に取り外すことができる電子機器用筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来の電子機器の組み立て工程及び電子機器用筐体の構造を説明するための模式図である。組み立ては、作業台の上で作業員の人力によって行なわれるものとして説明する。
【0003】
工程1)では、各種板金100を用いて電子部品104が実装・搭載されるシャーシ101を組み立てる。
【0004】
工程2)では、シャーシ101の正面に正面パネル102を取り付け、シャーシ101の背面に背面パネル103を取り付ける。
【0005】
工程3)では、プリント基板、モジュール、電源その他の各種部品(総称して電子部品104と称する。)をシャーシ101に組み込む。
【0006】
工程4)では、組み立て途中の電子機器の向きを変える。図示のように、正面パネル102を作業台に当接させた縦長の姿勢とする。
【0007】
工程5)では、電子機器の背面パネル103の側から、正面側と背面側が開放された四角筒状のカバー(巻胴)105を、シャーシ101等を外挿するように差し込む。
【0008】
工程6)では、カバー105の上面の四隅に足受け106を取り付け、カバー105の底面の四隅にも底面足107を取り付ける。また、背面パネルの四隅に脚部108を設ける。
【0009】
工程7)では、再び電子機器の向きを変える。図示のように、カバー105に取り付けた底面足107を作業台に当接させ、正面パネル102を前方に向けた最初の姿勢(工程2)に戻す。
【0010】
工程8)では、背面パネル103に、モデル名やシリアル番号等を記載した製品のラベルを貼付し、正面パネル102に化粧シート109を貼付する。
【0011】
図9は、
図8で説明した工程で製造可能な電子機器用筐体の斜視図であり、その構造は
図8で工程順に説明した通りである。なお、
図8の模式図を参照した製造工程の説明では、カバーの側面には、特に全体を持ち上げるための把手は設けられていなかった。しかしながら、実際には、
図9に示すように、電子機器用筐体のカバーの両側面にはそれぞれ把手20が取り付けられており、
図9ではカバーの手前側の側面に設けられた把手20を外した状態を示している。
【0012】
図9のA-A切断線における水平断面の一部を示した
図10と、
図10中の一部(ハ)の拡大断面図である
図11から理解されるように、この電子機器用筐体の把手20は、カバー105の側面の外側に配置されている。把手20の両端部には取り付け孔20aが設けられている。この取り付け孔20aに外側から止めねじ21を挿入し、さらにカバー105に設けた貫通孔105aを挿通させ、カバー105の内部に収納されているシャーシ101に設けられためねじ部101aに止めねじ21をねじ込んでいる。すなわち、把手20はカバー105と重ねられ、カバー105とともにシャーシ101に固定されている。
【0013】
下記特許文献1には、このような電子機器用筐体に使用可能な電子機器用把手の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上説明した従来の電子機器の製造工程又は電子機器用筐体の構造には、次のような問題があった。すなわち、工程5)で電子機器用筐体の本体となるカバー(巻胴)105を背面パネル103の側から差し込むように取り付ける作業を行なっていたが、そのために、前工程4)では正面パネル102が下方を向くように電子機器の姿勢を変える必要があった。電子機器は例えば数十キロもの重量があり、姿勢変更には相応の力が必要となるため、このような工程による電子機器の組み立てを行なえるのは、肉体的に力の強い作業者又は姿勢変更の為の機械を操作できる作業者に限られていた。また、この姿勢の変更に際しては、正面パネル102が作業台(又は地面)に直接接しないように電子機器を支える支持部品も必要であった。さらに、
図1から明らかなように、カバー105を組み立てる工程5)では、電子機器の奥行き方向の長さの2倍の高さの作業空間が必要であった。
【0016】
また、
図8~
図11を参照して説明した従来の電子機器又は電子機器用筐体の構造には、次のような問題もあった。すなわち、カバー105の外面に設けられている把手20を固定するための止めねじ21が、カバー105を貫通して、カバー105の内部にあるシャーシ101にねじ込まれているため、把手20をカバー105から外さないと、カバー105をシャーシ101から外すことができないという問題である。例えば、電子機器が故障し、筐体内のシャーシ101に取り付けられた電子部品104にアクセスしたい場合にも、直ちにカバー105をシャーシ101から外すことができず、まず把手20をカバー105から外し、その後に、電子機器の姿勢を変えたうえで、カバー105をシャーシ101から外す手順が必要であった。
【0017】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、電子部品が実装されたフレームをカバーで覆う構造の電子機器用筐体において、フレームの姿勢を変更することなく容易に組み立てることができるとともに、カバーから把手を取り外すことなくカバーをフレームから容易に取り外すことができる電子機器用筐体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載された電子機器用筐体2は、
底面板3と、
前記底面板3に取り付けられ、電子部品7が実装されるフレーム4と、
前記フレーム4の正面に取り付けられる正面パネル5と、
前記フレーム4の背面に取り付けられる背面パネル6と、
前記フレーム4の両側面と上面を覆うカバー8と、
前記カバー8の両側板8aの外面に設けられた把手20と、
前記カバー8の両側板8aの内面と前記フレーム4の一方に設けられた突起部32,33と、
前記カバー8の両側板8aの内面と前記フレーム4の他方に設けられた係合部40と、
を具備し、
前記突起部32,33と前記係合部40は、把手20を持って前記カバー8を持ち上げた際に、前記フレーム3,4の荷重が前記突起部32,33と前記係合部40を介して前記カバー8に加わるように係合していることを特徴としている。
【0019】
請求項2に記載された電子機器用筐体2は、請求項1に記載の電子機器用筐体2において、
前記突起部32,33は、前記カバー8の両側板8aの各内面に設けられており、
前記係合部40は、前記フレーム3,4の外面であって前記突起部32,33と対応する位置に設けられており、
前記突起部32,33と前記係合部40は、前記把手20を持って前記電子機器用筐体2を持ち上げた際に、前記フレーム3,4の荷重が前記係合部40を介して前記突起部32,33に加わるように係合していることを特徴としている。
【0020】
請求項3に記載された電子機器用筐体2は、請求項2に記載の電子機器用筐体2において、
前記係合部40は、前記正面パネル5又は前記背面パネル6に垂直な装着方向Xに平行な横溝部41と、前記横溝部41に連続しており上端で開口する縦溝部42を有していることを特徴としている。
【0021】
請求項4に記載された電子機器用筐体2は、請求項3に記載の電子機器用筐体2において、
前記突起部32には、前記縦溝部42及び前記横溝部41の溝幅よりも大きい外径の頭部35を有する係止部材31が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載された電子機器用筐体によれば、底面板を作業台の上に載置し、底面板の上にフレームを載置し、フレームの正面に正面パネルを取り付け、また背面に背面パネルを取り付け、電子部品をフレームに実装し、さらにフレームの両側面と上面を覆うようにカバーを被せて突起部と係合部を係合させることにより、姿勢を変える手間をかけることなく組み立てることができる。そして、カバーとフレームの係合構造により、把手を持って筐体を持ち上げた際には、フレームの荷重は突起部と係合部を介してカバーに加わり、フレームは突起部と係合部を介してカバーに吊り下げられた状態となる。また、カバーの把手は、フレームとは構造的に連結されていないので、カバーを外したい場合は、カバーの把手はカバーに取り付いた状態のままで、突起部と係合部の係合を解除してカバーをフレームから直ちに取り外すことができる。
【0023】
請求項2に記載された電子機器用筐体によれば、請求項1に記載された電子機器用筐体による効果において、特に、把手を持って電子機器用筐体を持ち上げた際に、フレームの荷重が、係合部を介してカバーの突起部に加わる。
【0024】
請求項3に記載された電子機器用筐体によれば、請求項2に記載された電子機器用筐体による効果に加え、カバーをフレームに取り付けるため、カバーを上方からフレームに向けて縦方向に下ろす際には、フレームの縦溝部と突起部の係合がガイドとなり、組み立てが容易となる。そして、カバーの突起部をフレームの縦溝部に挿入した後、カバーを装着方向に移動させることにより、突起部を横溝部に沿って移動させ、横溝部の奥端部に付き当てて位置決めすれば、カバーとフレームを正規の状態に位置決めでき、筐体の組み立て精度が高くなる。
【0025】
請求項4に記載された電子機器用筐体によれば、請求項3に記載された電子機器用筐体による効果に加え、カバーをフレームに取り付けた後、把手を持って電子機器用筐体を持ち上げた際には、フレームの重量により、カバーの両側面には外側に開く方向の力が加わるが、この力を係止部材が受けるため、カバーの外側への開きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態の電子機器の組み立て工程を説明する模式図である。
【
図2】実施形態の電子機器用筐体の外観斜視図である。
【
図3】
図2のA-A切断線における水平断面の一部を示した図である。
【
図5】実施形態の電子機器用筐体のカバーの側板の内側を示す斜視図である。
【
図7】実施形態の電子機器用筐体のフレームを示す図であって、分図(a)は平面図の一部、分図(b)は側面図、分図(c)は分図(a)の一部の拡大図、分図(d)は分図(b)の一部の拡大図である。
【
図8】従来の電子機器の組み立て工程を説明する模式図である。
【
図9】
図8で説明した工程で製造可能な電子機器用筐体の斜視図である。
【
図10】
図9のA-A切断線における水平断面の一部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態の電子機器1(以下、単に機器1とも称する。)と、電子機器用筐体2(以下、単に筐体2とも称する。)について
図1~
図7を参照して説明する。なお、以下の説明において、電子機器用筐体2とは、例えば、各種板金等を用いて組み立てられ、電気・電子部品等が実装・搭載されるシャーシ4を収納する箱状の外装体を指す概念であり、また電子機器1とは、前記電子機器用筐体2に前記シャーシ4を収納して組み立てた最終製品を示す概念である。
【0028】
図1は、実施形態の電子機器1の組み立て工程及び電子機器用筐体2の構造の概要を説明するための模式図である。組み立ては、作業台の上で作業員の人力によって行なわれるものとして説明する。
【0029】
工程1)では、底面板3を作業台の上に載置する。底面板3の下面の四隅には底面足3aが取り付けられている。
【0030】
工程2)では、板金を組み立てたシャーシ4を底面板3の上面に載置する。
【0031】
工程3)では、シャーシ4の正面に正面パネル5を取り付け、シャーシ4の背面に背面パネル6を取り付ける。
【0032】
工程4)では、シャーシ4に、プリント基板、モジュール、電源その他の電子部品7を取り付け、又は組み込む。
【0033】
工程5)では、シャーシ4の両側面と上面を覆う断面略コ字形のカバー8を、上方からシャーシ4に被せ、正面パネル5又は背面パネル6に垂直な装着方向Xに沿ってカバー8を移動させることにより、カバー8をフレームとしてのシャーシ4に取り付け、固定する。カバー8とシャーシ4の固定構造(後述する突起部と係合部)については、工程の説明の後で詳述する。
【0034】
工程6)では、背面パネル6の四隅に脚部9を取り付ける。
【0035】
工程7)では、背面パネル6に、モデル名やシリアル番号等を記載した図示しない製品のラベルを貼付する。
【0036】
工程8)では、正面パネル5に化粧シート10を貼付し、電子機器1及び電子機器用筐体2が完成する。
【0037】
以上説明したように、実施形態の筐体2は、底面板3を作業台の上に載置し、底面板3の上にシャーシ4を載置し、シャーシ4の正面に正面パネル5を取り付け、また背面に背面パネル6を取り付け、電子部品7をシャーシ4に実装し、さらにシャーシ4の両側面と上面を覆うようにカバー8を被せて積み上げるように順に組み立てることができる。すなわち、機器1及び筐体2の組み立て工程の途中で筐体2の姿勢を変える必要がなく、力の強い作業者又は姿勢変更の為の機械を操作できる作業者でなくても、組み立てを行なうことができる。また、横置きの機器1を縦置きにするために機器1の奥行き方向の長さの2倍の高さの作業空間が必要であった従来とは大きく異なり、組み立ての作業空間は、電子機器1又は電子機器用筐体2として使用する姿勢での高さが確保できれば十分である。
【0038】
図2は、
図1に示した工程で製造された電子機器用筐体2の斜視図であり、その構造の大略は
図1で工程順に説明した通りである。ただし、
図1の模式図では、カバー8の側面には、全体を持ち上げるための把手は示していなかった。しかしながら、実際には、
図2に示すように、電子機器用筐体2のカバー8の側面の外面の上方には、カバー8の長手方向に平行な把手20が止めねじ21で固定されている。
図2は把手20及び止めねじ21がカバー8から外された状態を示している。
図2には表れていないが、この把手20は、カバー8の反対側の側面にも設けられている。
【0039】
なお
図2では、
図1において模式的に示したシャーシ4の一部と電子部品7等は省略している。また背面パネル6は枠体6aのみを示してパネル部材は省略している。
【0040】
図3は、
図2のA-A切断線における水平断面の一部を示しており、
図4は、
図3中の一部(イ)を拡大して示している。これらの図に示すように、把手20は、カバー4の側板8aの外面に接して配置されている。把手20には、取り付け孔20aが貫通して設けられている。また、
図4及び
図5に示すように、カバー8の側板8aの内面には、細長い矩形の補強板15が配置されており、カバー8と補強板15は、両者を貫通して設けられた締結手段である5本のリベット16によって一体化されている。なお、
図5においては、最も奥にある1本のリベット16は図示の関係上表れていない。)また、リベット16は一例であり、カバー8と補強板15の締結は他の手段で行ってもよい。
【0041】
図4に示すように、把手20をカバー8に固定するには、止めねじ21を、把手20の取り付け孔に外側から挿入し、さらにカバー8の側板8aと補強板15の貫通孔を挿通させ、補強板15の内面に固定されたナット部材33にねじ込んで一体化する。前述した通り、カバー8の側板8aの内側を示す
図5から理解されるように、カバー8の内側の補強板15はリベット16によってカバー8に固定されカバー8の一部となっているのに対して、把手20は止めねじ21とナット部材33によってカバー8の外側から直接固定された構造となっている。すなわち、
図4に示すように、把手20の止めねじ21は、カバー8の内部にあるシャーシ4には触れておらず、把手20にはシャーシ4との固定・連結関係はない。
【0042】
図4、
図5及び
図3中の一部(ロ)を拡大した
図6に示すように、カバー8の側板8aの内面に固定された補強板15には、カバー8をシャーシ4に取り付けるためのカバー8側の構造として、その長手方向に沿って、6個の突起部が設けられている。6個の突起部は、補強板15の長手方向の両端に設けられた前述した2個のナット部材33と、2個のナット部材33,33の間に前記長手方向に沿って略等間隔で設けられた4個の筒状のめねじ部材32を含む。なお、
図5において、最も手前側の1本のめねじ部材32は、後述する係止部材31に隠れているため表れていない。
図6は、
図5に示した4個のめねじ部材32のうち、補強板15の長手方向の両端に近い位置に設けられた2個のめねじ部材32の一方を拡大して示した断面図である。
【0043】
図6に示すように、このめねじ部材32には、おねじが形成された軸部34と、軸部34の先端に一体に固定され、めねじ部材32よりも大径の円盤状の頭部35とを有する係止部材31が、軸部34をめねじにねじ込むことによって取り付けられている。
【0044】
図7は、実施形態の電子機器用筐体2のシャーシ4を示す図である。
図7(a),(b)に示すように、シャーシ4の側面の上縁には、カバー8をシャーシ4に取り付けるためのシャーシ4側の構造として、カバー8側に設けられた4個のめねじ部材32及び2個のナット部材33と対応する6カ所の位置に、合計6個の係合部40が設けられている。
図7(c),(d)に拡大して示すように、係合部40はフレームを構成する板金に形成された溝であり、正面パネル又は背面パネルに垂直な装着方向(X)に平行な横溝部41と、横溝部41に連続しており、上端で開口する縦溝部42を有している。そして、横溝部41の溝幅は、前述しためねじ部材32及びナット部材33が挿入できる程度に設定され、縦溝部42の溝幅は、対応するめねじ部材32及びナット部材33を縦方向の移動で容易に挿入できる程度に設定されている。また、係止部材31の頭部35の外径は、縦溝部42及び横溝部41の溝幅よりも大きい。従って、めねじ部材32が横溝部41に正規の状態で挿入されれば、カバー8が外側に開く方向(
図6においてカバー8が下側に向けて移動する方向)に移動するような力を受けても、頭部35がシャーシ4の内面側に係止して抜け止めとなる。このため、カバー8をシャーシ4に取り付けた後、把手20を持って電子機器用筐体2を持ち上げた際には、電子機器用筐体2の重量により、カバー8の両側板8aには外側に開く方向の力が加わるが、この力を係止部材31の頭部35が受けるため、カバー8の外側への開きを防止することができる。
【0045】
次に、
図1の行程5)において先に簡単に説明した動作、すなわちカバー8をシャーシ4に被せた後、前記装着方向Xにずらして両者を互いに固定する動作について、
図5~
図7を参照してより詳細に説明する。
【0046】
図5に示すカバー8を、
図7に示すシャーシ4に対して、正規の取り付け位置よりも装着方向Xの奥側(
図7(a),(b)においてシャーシ4の右方)に少しずらした位置で、上方から被せる。これによって、カバー8の側板8aの内面にあるめねじ部材32及びナット部材33は、シャーシ4の側面の上縁にある各係合部40の縦溝部42に挿入される。めねじ部材32及びナット部材33は、縦溝部42の溝幅に比して相対的に細径なので挿入は容易である。
【0047】
シャーシ4に対してカバー8を装着方向Xに移動させると、カバー8の側板8aにあるめねじ部材32及びナット部材33は、シャーシ4の側面にある各係合部40の横溝部41に沿って移動する。めねじ部材32及びナット部材33の外径は、横溝部41に挿入できる程度に設定されているので、移動は容易であり、かつ安定している。また、外径の大きい頭部35が、溝幅の小さい横溝部41から抜けることはないので、カバー8の取り付け作業中にカバー8がシャーシ4から外れることはなく、筐体2の組み立て作業は安定している。そして、軸部34が横溝部41の奥に突き当たって停止した位置が、カバー8とシャーシ4の正規の取り付け位置となる。
【0048】
このような突起部(めねじ部材32及びナット部材33)と係合部40の係合構造によれば、カバー8とシャーシ4を正規の状態に容易に位置決めでき、筐体2の組み立て精度が高い。また、カバー8とシャーシ4の固定の強度は、電子機器1として通常に使用する限り、問題のないレベルであり、カバー8がシャーシ4から簡単に外れてしまうようなことはない。しかし、筐体2内にアクセスする必要がある場合には、カバー8を装着方向Xについて装着時とは反対に移動させれば、めねじ部材32及びナット部材33と係合部40の係合を解除することは容易である。なお、めねじ部材32及びナット部材33と溝状の係合部40で実現した両者の正規の位置関係および固定状態は、念の為、補助的に設けた他の固定構造によって補強してもよい。
【0049】
また、カバー8とシャーシ4は、カバー8に設けられためねじ部材32及びナット部材33と、シャーシ4に設けられた係合部40が係合することで、一体に連結された状態となっている。従って、カバー8の側板8aにある把手20を持って筐体2(又は電子機器1)を持ち上げると、電子機器1の重量の大部分を占めるシャーシ4の荷重は、めねじ部材32及びナット部材33と係合部40を介してカバー8に加わる。すなわち、シャーシ4の荷重は、係合部40を介してカバー8のめねじ部材32及びナット部材33に加わり、シャーシ4は係合部40とめねじ部材32及びナット部材33によってカバー8から吊り下げられた態様となる。従って、この状態で把手20を手で持って電子機器用筐体2を持ち上げると、電子機器用筐体2の重量により、カバー8の両側板8a面には外側に開く方向の力が加わる。しかしながら、この力は係止部材31の頭部35が受けるため、カバー8が変形して外側へ開いてしまうことはない。
【0050】
さらにまた、カバー8の把手20は、シャーシ4とは構造的に連結されていないので、内部の電子部品7の点検等のためにカバー8を外したい場合は、把手20をカバー8に取り付けた状態のままで、突起部31~33と係合部40の係合を解除してカバー8をシャーシ4から直ちに取り外すことができる。
【0051】
以上説明した実施形態では、カバー8に突起部としてめねじ部材32及びナット部材33を設け、シャーシ4に係合部40を設けることとしたが、これとは逆に、カバー8に係合部を設け、シャーシ4に突起部を設けることとしてもよい。ただし、カバー8に係合部を設ける場合は、カバー8を貫通する孔部又は溝部を形成するのではなく、突起部が係止可能な凹部又は溝構造を備えた係合部をカバー8の側板8aの内面に固定する構造が好ましい。このようにすれば、電子機器1の筐体2の内部をカバー8によって確実に遮蔽する構造とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…電子機器(機器)
2…電子機器用筐体(筐体)
3…底面板
4…フレームとしてのシャーシ
5…正面パネル
6…背面パネル
7…電子機器
8…カバー
8a…カバーの側板
15…補強板
16…リベット
15…補強板
20…把手
20a…取り付け孔
21…止めねじ
31…係止部材
32…突起部としてのめねじ部材
33…突起部としてのナット部材
34…軸部
35…頭部
40…係合部
41…横溝部
42…縦溝部
X…装着方向