(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188541
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】誤り率測定装置および誤り率測定方法
(51)【国際特許分類】
H04L 1/00 20060101AFI20221214BHJP
G06F 11/34 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H04L1/00 C
G06F11/34 176
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096656
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】砂山 諒
【テーマコード(参考)】
5B042
5K014
【Fターム(参考)】
5B042MA08
5B042MC09
5K014GA02
5K014GA05
(57)【要約】
【課題】複数レーンのハンドシェイクによるステート遷移のログデータを同時に記録して表示する。
【解決手段】誤り率測定装置1は、被測定物WをLOOPBACKのステートに遷移させた状態でパターン発生器2から既知パターンのテスト信号を被測定物Wに送信し、テスト信号の送信に伴って被測定物Wから折り返して受信する入力データのビットエラーをエラー検出器3にて検出するものであり、被測定物WをLOOPBACKのステートに遷移させる際の被測定物Wとの間の所定の通信規格での複数レーンのハンドシェイクによる各レーンのステート遷移のログデータを記録するログ記録部19と、ログ記録部19に記録された各レーンのステート遷移のログデータを時系列順に表示する表示部21と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物(W)を信号パターン折り返しのステートに遷移させた状態でパターン発生器(2)から既知パターンのテスト信号を前記被測定物に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返して受信する入力データのビットエラーをエラー検出器(3)にて検出する誤り率測定装置(1)において、
前記被測定物を前記信号パターン折り返しのステートに遷移させる際の前記被測定物との間の所定の通信規格での複数レーンのハンドシェイクによる各レーンのステート遷移のログデータを記録するログ記録部(19)を備えたことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
前記ログデータは、自レーンが次のステートに進むためのステート遷移条件を満たして他レーンが前記ステート遷移条件を満たすことを待機している状態を示すログデータを含むことを特徴とする請求項1に記載の誤り率測定装置。
【請求項3】
前記ログ記録部(19)に記録された各レーンのステート遷移のログデータを時系列順に表示する表示部(21)を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の誤り率測定装置。
【請求項4】
前記通信規格がハイスピードシリアルバスの通信規格であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の誤り率測定装置。
【請求項5】
被測定物(W)を信号パターン折り返しのステートに遷移させた状態でパターン発生器(2)から既知パターンのテスト信号を前記被測定物に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返して受信する入力データのビットエラーをエラー検出器(3)にて検出する誤り率測定方法において、
前記被測定物を前記信号パターン折り返しのステートに遷移させる際の前記被測定物との間の所定の通信規格での複数レーンのハンドシェイクによる各レーンのステート遷移のログデータを前記エラー検出器に備えるログ記録部(19)が記録するステップを含むことを特徴とする誤り率測定方法。
【請求項6】
前記ログデータは、自レーンが次のステートに進むためのステート遷移条件を満たして他レーンが前記ステート遷移条件を満たすことを待機している状態を示すログデータを含むことを特徴とする請求項5に記載の誤り率測定方法。
【請求項7】
前記ログ記録部(19)に記録された各レーンのステート遷移のログデータを時系列順に表示部(21)に表示するステップを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の誤り率測定方法。
【請求項8】
前記通信規格がハイスピードシリアルバスの通信規格であることを特徴とする請求項5~7の何れかに記載の誤り率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物を信号パターン折り返しのステートに遷移させた状態で既知パターンをテスト信号として被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信する入力データのビット誤り率を測定する誤り率測定装置および誤り率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
誤り率測定装置は、例えば下記特許文献1に開示されるように、固定データを含む既知パターンのテスト信号を被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信した被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較してビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を測定する装置として従来から知られている。
【0003】
また、この種の誤り率測定装置としては、例えば下記特許文献2に開示されるように、リンク状態の遷移先、遷移の発生時刻、遷移のトリガ、エラー情報を含むログデータをリンク状態管理機構のリンク状態の遷移毎に記録する機能を備えたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-274474号公報
【特許文献2】特開2017-098615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、PCIe,USBを始めとするハイスピードシリアルバス(High Speed Serial Bus)の規格において、被測定物としてレシーバのテストを行う際には、レシーバをテスト専用の信号折り返しモード(LOOPBACK)に遷移させるハンドシェイクを実行した後、テスト用の既知パターンを入力し、折り返された信号の誤り率を確認する手法が一般的である。
【0006】
そして、ハイスピードシリアルバスのテストにおいて、誤り率測定装置に上記のハンドシェイクのログデータを出力できる機能があればデバッグ時に有用であり、ハンドシェイク中のどのステートで失敗したのかを明らかにすることができる。
【0007】
また、近年公表されたUSB3.2の規格においては、2レーンで通信を行うx2モードが新規に規定されている。この2レーンモードのハンドシェイクでは、レーン0とレーン1の各々でハンドシェイクを行う必要がある。その際、例えばレーン1(レーン0)で次のステートに進むためのステート遷移条件を満たしたとしてもレーン0(レーン1)がステート遷移条件を満たすまでは、レーン1(レーン0)も次のステートへ遷移しない、という動作が規格で定義されている。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2に開示される誤り率測定装置では、ステート遷移のタイムラインを表示する機能にとどまり、複数レーンのハンドシェイクによるステート遷移のログデータを同時に記録することができなかった。さらに、複数レーン間で互いに互いのステート遷移条件を満たしたか否かをログとして表示することはできなかった。このため、従来の誤り率測定装置では複数レーンのハンドシェイクにおける失敗原因の解析が難しいという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、複数レーンのハンドシェイクによるステート遷移のログデータを同時に記録したり表示することができる誤り率測定装置および誤り率測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された誤り率測定装置は、被測定物Wを信号パターン折り返しのステートに遷移させた状態でパターン発生器2から既知パターンのテスト信号を前記被測定物に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返して受信する入力データのビットエラーをエラー検出器3にて検出する誤り率測定装置1において、
前記被測定物を前記信号パターン折り返しのステートに遷移させる際の前記被測定物との間の所定の通信規格での複数レーンのハンドシェイクによる各レーンのステート遷移のログデータを記録するログ記録部19を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載された誤り率測定装置は、請求項1の誤り率測定装置において、
前記ログデータは、自レーンが次のステートに進むためのステート遷移条件を満たして他レーンが前記ステート遷移条件を満たすことを待機している状態を示すログデータを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載された誤り率測定装置は、請求項1または2の誤り率測定装置において、
前記ログ記録部19に記録された各レーンのステート遷移のログデータを時系列順に表示する表示部21を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に記載された誤り率測定装置は、請求項1~3の何れかの誤り率測定装置において、
前記通信規格がハイスピードシリアルバスの通信規格であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に記載された誤り率測定方法は、被測定物Wを信号パターン折り返しのステートに遷移させた状態でパターン発生器2から既知パターンのテスト信号を前記被測定物に送信し、前記テスト信号の送信に伴って前記被測定物から折り返して受信する入力データのビットエラーをエラー検出器3にて検出する誤り率測定方法において、
前記被測定物を前記信号パターン折り返しのステートに遷移させる際の前記被測定物との間の所定の通信規格での複数レーンのハンドシェイクによる各レーンのステート遷移のログデータを前記エラー検出器に備えるログ記録部19が記録するステップを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に記載された誤り率測定方法は、請求項5の誤り率測定方法において、
前記ログデータは、自レーンが次のステートに進むためのステート遷移条件を満たして他レーンが前記ステート遷移条件を満たすことを待機している状態を示すログデータを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項7に記載された誤り率測定方法は、請求項5または6の誤り率測定方法において、
前記ログ記録部19に記録された各レーンのステート遷移のログデータを時系列順に表示部21に表示するステップを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項8に記載された誤り率測定方法は、請求項5~7の何れかの誤り率測定方法において、
前記通信規格がハイスピードシリアルバスの通信規格であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数レーンのハンドシェイクによるステート遷移のログデータを同時に記録したり表示することができ、複数レーンの規格をテストする際に、ユーザはハンドシェイク失敗の原因がどのレーンで生じたか、どのステートで生じたか、を容易に特定することができる。その結果、ユーザはあるステートでどのレーンに問題があるかを特定できるため、HSBデバイスのデバッグを極めて効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る誤り率測定装置のブロック構成図である。
【
図2】本発明に係る誤り率測定装置と被測定物との間で2レーンモードのハンドシェイクを行ってログを表示する方法を示すフローチャートである。
【
図3】本発明に係る誤り率測定装置と被測定物の2レーンモードのハンドシェイク成功時の遷移イメージの一例を示す図である。
【
図4】本発明に係る誤り率測定装置のレーン0におけるハンドシェイク成功時のログの表示例を示す図である。
【
図5】本発明に係る誤り率測定装置のレーン1におけるハンドシェイク成功時のログの表示例を示す図である。
【
図6】本発明に係る誤り率測定装置のレーン0におけるハンドシェイク失敗時のログの表示例を示す図である。
【
図7】本発明に係る誤り率測定装置のレーン1におけるハンドシェイク失敗時のログの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明は、例えばPCIe,USBなどのハイスピードシリアルバス(HSB)の規格において、リンク状態を管理するリンク状態管理機構としてリンク・トレーニング・ステータス・ステート・マシン(LTSSM:Link Training &Status State Machine)を搭載したデバイスを被測定物とし、被測定物を信号パターン折り返しのステート(LOOPBACK)に遷移させた状態の測定モード時に既知パターンのテスト信号を被測定物に送信し、このテスト信号の送信に伴って被測定物から折り返して受信する入力データのビット誤り率を測定する誤り率測定装置及び誤り率測定方法に関するものである。なお、LTSSMは、物理層の中に存在し、物理層が受信した信号を見て遷移するものである。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態の誤り率測定装置1は、パターン発生器2とエラー検出器3を備えて概略構成され、被測定物WのLTSSMのリンク状態をLOOPBACK(ループバック)のステートに遷移させるシーケンスを搭載し、被測定物Wに既知のパターン信号を入力してビット誤り率を測定する測定モードに先立ち、所定の通信規格(例えばPCIe,USBなどのHSB)の複数レーンに関して、ハンドシェイクによる各レーンのステート遷移のログデータ(他レーンのステート遷移条件満足待ちの状態のログデータを含む)を同時に記録および表示する機能を有する。
【0023】
なお、以下では、レーン0とレーン1で通信を行う2レーンモードが規定されたUSB3.2の規格に対応した場合を例にとって説明する。
【0024】
被測定物Wは、レーン0のリンク状態を管理するLTSSM(Wa)とレーン1のリンク状態を管理するLTSSM(Wb)を搭載しており、ビット誤り率の測定前の2レーンモードでのハンドシェイクを行うトレーニングモード時に、不図示のテスト治具を介して誤り率測定装置1と接続し、この接続を検知してLFPS信号の送信を開始する。
【0025】
パターン発生器2は、被測定物Wに送信するパターンを発生するもので、第1のパターン発生部11と第2のパターン発生部12を備える。
【0026】
第1のパターン発生部11は、レーン0に対応して設けられ、被測定物WのLTSSM(Wa)をLOOPBACKのステートに遷移させるためのトレーニングモード時に、後述する制御部22の制御により、LTSSM16aに基づくレーン0のトレーニングパターン信号を発生する。
【0027】
第1のパターン発生部11は、被測定物WがLOOPBACKのステートに遷移している状態で被測定物Wのジッタトレランステストを行う測定モード時に、後述する制御部22の制御により、被測定物Wに入力する既知パターンのレーン0のパターン信号(「0」、「1」のNRZ信号による疑似ランダム2値信号列からなり、規格で定められたパターンのCP(Compliance pattern))を発生する。
【0028】
第2のパターン発生部12は、レーン1に対応して設けられ、被測定物WのLTSSM(Wb)をLOOPBACKのステートに遷移させるためのトレーニングモード時に、後述する制御部22の制御により、LTSSM17aに基づくレーン1のトレーニングパターン信号を発生する。
【0029】
第2のパターン発生部12は、被測定物Wの測定モード時に、後述する制御部22の制御により、被測定物Wに入力する既知パターンのレーン1のパターン信号(レーン0のパターン信号と同様の規格で定められたパターンのCP)を発生する。
【0030】
エラー検出器3は、被測定物Wから送信されるパターン信号を検出するもので、第1のパターン検出部13、第2のパターン検出部14、エラー検出部15、第1のリンク状態管理部16、第2のリンク状態管理部17、時刻生成部18、ログ記録部19、記憶部20、表示部21、制御部22を備える。
【0031】
第1のパターン検出部13は、レーン0に対応して設けられ、トレーニングモード時に、パターン発生器2の第1のパターン発生部11から送信されるレーン0のトレーニングパターン信号によるハンドシェイクに伴い、被測定物WのLTSSM(Wa)のステートの遷移に応じて被測定物Wから送信されるレーン0のトレーニングパターン信号を検出する。
【0032】
第1のパターン検出部13は、測定モード時に、パターン発生器2の第1のパターン発生部11が発生するレーン0のパターン信号が被測定物Wに入力されたときに、これに伴って被測定物Wから折り返して入力されるレーン0のパターン信号を検出する。
【0033】
第2のパターン検出部14は、レーン1に対応して設けられ、トレーニングモード時に、パターン発生器2の第2のパターン発生部12から送信されるレーン1のトレーニングパターン信号によるハンドシェイクに伴い、被測定物WのLTSSM(Wb)のステートの遷移に応じて被測定物Wから送信されるレーン1のトレーニングパターン信号を検出する。
【0034】
第2のパターン検出部14は、測定モード時に、パターン発生器2の第2のパターン発生部12が発生するレーン1のパターン信号が被測定物Wに入力されたときに、これに伴って被測定物Wから折り返して入力されるレーン1のパターン信号を検出する。
【0035】
エラー検出部15は、被測定物WがLOOPBACKのステートに遷移している状態の測定モード時に、パターン発生器2の第1のパターン発生部11と第2のパターン発生部12が発生する既知パターンのテスト信号であるレーン0とレーン1のパターン信号と、このレーン0とレーン1のパターン信号の送信に伴って被測定物Wから折り返して第1のパターン検出部13と第2のパターン検出部14にて検出されるレーン0とレーン1のパターン信号とを比較してビットエラーを検出する。
【0036】
第1のリンク状態管理部16は、被測定物Wに搭載されたLTSSM(Wa)と同一又は同等の機構を有するLTSSM16aを備え、使用するI/Oインターフェースの規格(本例ではUSB3.2)に従って動作する。その際、レーン0で次のステートに進むためのステート遷移条件を満たしたとしてもレーン1がステート遷移条件を満たすまでは、レーン0も次のステートへ遷移しないように他レーンのステート遷移条件満足待ちの状態が定義されている。例えばPOLLING_ACTIVEからPOLLING_CONFIGURATIONへのステート遷移条件が「8回連続で正常なTS1OSまたはTS2OSを受信すること」と定義されている場合、レーン0とレーン1の両方がステート遷移条件を満たしたときに次のステートに進むことができる。また、POLLING_CONFIGURATIONからPOLLING_IDLEへの遷移条件が「8回連続で正常なTS2OSを受信し、かつ16回のTS2を受信すること」と定義されている場合、レーン0とレーン1の両方がステート遷移条件を満たしたときに次のステートに進むことができる。
【0037】
第1のリンク状態管理部16は、被測定物Wとの間で通信される信号により、被測定物WのLTSSM(Wa)と同じようにレーン0のリンク状態のステートが遷移し、被測定物WにおけるLTSSM(Wa)の現在のリンク状態を認識することができる。これにより、レーン0に関して、LTSSM値、リンク速度、ループバックの有無、LTSSMの遷移パターン、レーンを識別するためのレーン番号、リンク番号、パターン信号の発生時間や発生回数、エンファシス量、受け側のイコライザーの調整値などの各種情報を得ることができる。
【0038】
第2のリンク状態管理部17は、被測定物Wに搭載されたLTSSM(Wb)と同一又は同等の機構を有するLTSSM17aを備え、第1のリンク状態管理部16と同様に、使用するI/Oインターフェースの規格(本例ではUSB3.2)に従って動作する。その際、第1のリンク状態管理部16と同様に、レーン1で次のステートに進むためのステート遷移条件を満たしたとしてもレーン0がステート遷移条件を満たすまでは、レーン1も次のステートへ遷移しないように他レーンのステート遷移条件待ちの状態が定義されている。
【0039】
第2のリンク状態管理部17は、第1のリンク状態管理部16と同様に、被測定物Wとの間で通信される信号により、被測定物WのLTSSM(Wb)と同じようにレーン1のリンク状態のステートが遷移し、被測定物WにおけるLTSSM(Wa)の現在のリンク状態を認識することができる。これにより、レーン1に関して、第1のリンク状態管理部16と同様の各種情報を得ることができる。
【0040】
なお、第1のリンク状態管理部16と第2のリンク状態管理部17は、互いに相手レーンのリンク状態を認識しており、リンク状態に応じた各種情報のやり取りが行われる。
【0041】
時刻生成部18は、現在時刻を生成し、生成した時刻情報をログ記録部18に出力する。
【0042】
ログ記録部19は、時刻生成部18にて生成する時刻情報を元にして、被測定物WのLTSSM(Wa,Wb)をLOOPBACKのステートに遷移させるための通信規格:USB3.2での2レーンモードのハンドシェイクにより第1のリンク状態管理部16と第2のリンク状態管理部17が管理するLTSSM値やリンク速度を含むレーン0とレーン1の各レーンのログ情報、測定モード時にエラー検出部15が検出したビット誤り率の測定結果を含むログ情報を記録する。
【0043】
なお、LTSSM16a,17aの遷移中にログ記録部19に記録されるログ情報としては、例えばLTSSM値、リンク速度、ループバックの有無、LTSSMの遷移パターン、レーン番号、リンク番号、パターン信号の発生時間や発生回数、エンファシス量、受け側のイコライザーの調整値などがある。
【0044】
記憶部20は、制御部22の制御により、ログ記録部19が記録したログ情報を格納する。例えばリンク状態の遷移先、遷移の発生時刻、遷移のトリガ、エラー情報などがLTSSM16a,17aの遷移に応じて各レーン(レーン0、レーン1)ごとにログ情報として記憶部20に格納される。
【0045】
表示部21は、制御部22の制御により、ログ記録部19が記録したログ情報または記憶部20に格納されたログ情報を
図4~
図7に示す表示形態で表示画面21aに表示する。また、表示部21は、不図示の操作部の操作に基づく制御部22の制御により、誤り率測定に関わる設定画面やエラー検出部15にて検出してログ記録部19に記録されたエラー情報を含む測定結果などを表示する。
【0046】
制御部22は、被測定物Wとの間の2レーンモードでのハンドシェイクやビット誤り率の測定を行うにあたって、パターン発生器2とエラー検出器3の各部を統括制御する。
【0047】
具体的に、制御部22は、トレーニングモード時に、第1のリンク状態管理部16のLTSSM16aと第2のリンク状態管理部17のLTSSM17aの現在のリンク状態に応じて次に発生すべきレーン0とレーン1のトレーニングパターン信号を発生するように第1のパターン発生部11と第2のパターン発生部12に指示を行う。
【0048】
また、制御部22は、測定モード時に、レーン0とレーン1のパターン信号を発生するように第1のパターン発生部11と第2のパターン発生部12に指示を行う。
【0049】
さらに、制御部22は、ログ記録部19に記録されたログ情報の記憶部20への書き込みや記憶部20に記憶されたログ情報の読み出しの制御、表示部21の表示画面21aへのログ情報の表示の制御などを行う。
【0050】
次に、上記のように構成される誤り率測定装置1と被測定物Wとの間で2レーンモードのハンドシェイクを行ってログデータを表示する方法について
図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0051】
誤り率測定装置1の信号出力部のインターフェースと被測定物Wの信号受信部のインターフェースが異なるため、インターフェースを一致させるための変換に使用されるテスト治具を介して誤り率測定装置1と被測定物Wとの間を接続する(
図2のST1)。
【0052】
被測定物Wは、テスト治具を介して誤り率測定装置1との間の接続を検知すると、トレーニングパターン信号としてLFPS信号の送信を開始する(
図2のST2)。
【0053】
誤り率測定装置1は、被測定物Wから送信されるLFPS信号の受信をトリガとしてPOLLING_LFPSステートに遷移し、トレーニングパターン信号としてLFPS信号の送信を開始する(
図2のST3)。
【0054】
被測定物Wは、誤り率測定装置1から送信されるLFPS信号の受信をトリガとして次のステートに遷移し、次のステートに対応するトレーニングパターン信号を送信する(
図2のST4)。
【0055】
そして、被測定物Wと誤り率測定装置1は、2レーンモードのハンドシェイクにより、レーン0とレーン1において互いに各ステートで定義されたトレーニングパターン信号を送信してステートが遷移し、被測定物WのLTSSM(Wa,Wb)が最終的にテストを行うためのLOOPBACK_ACTIVEステートに遷移する(
図2のST5)。
【0056】
具体的に、誤り率測定装置1と被測定物Wの2レーンハンドシェイクが成功した場合、被測定物Wは、
図3に示すように、LFPS SCD1/SCD2→LBPM CAP/RDY→END OF LBPM→TSEQ→TS1→TS2→LOOPBACKの順に、各ステートで定義されたパターン(ステートと1:1で紐付くパターン)を送信してステート遷移する。また、誤り率測定装置1は、被測定物Wのステート遷移に伴い、
図3に示すように、各ステートで定義されたパターンを送信してステート遷移する。
【0057】
そして、被測定物Wおよび誤り率測定装置1の2レーンハンドシェイクによりLOOPBACK_ACTIVEステートに遷移すると、誤り率測定装置1が自身のレーン0とレーン1それぞれのステート遷移のログデータを表示部21の表示画面21aに表示する(
図2のST6)。
【0058】
具体的に、誤り率測定装置1のレーン0とレーン1による2レーンモードのハンドシェイクが成功した場合は、
図4および
図5に示す表示形態でレーン0とレーン1それぞれのステート遷移のログデータを時系列順に配置して表示画面21aに表示する。その際、表示画面21aには、ステート遷移のログデータに加え、自レーンがステート遷移条件を満たして他レーンがステート遷移条件を満たすことを待機している状態を示すログデータ(
図4の斜線で囲む「POLLING_CONFIGURATION(Waiting for other lane)」、
図5の斜線で囲む「POLLING_ACTIVE(Waiting for other lane)」、「POLLING_IDLE(Waiting for other lane)」)も表示される。
【0059】
図4および
図5のステート遷移のログデータによれば、最初に低速信号によるレーン0のハンドシェイクにより、INITIAL→DETECT_ACTIVE→POLLING_LFPS_SCD1→POLLING_LFPS_PLUS→POLLING_LFPS_ENDSCD→POLLING_PORT_MATCH→POLLING_PORT_CONFIG_READY→POLLING_PORT_ENDLBPMの順にステートが遷移する。
【0060】
続いて、高速信号によるレーン0およびレーン1のハンドシェイクを行い、レーン0がPOLLING_RXEQのステートに遷移した後、レーン1がPOLLING_RXEQのステートに遷移する。その後、レーン1がPOLLING_ACTIVEのステートに遷移した後、レーン0がPOLLING_ACTIVEのステートに遷移する。
【0061】
そして、レーン1のPOLLING_ACTIVEでのハンドシェイクが完了すると、レーン0のPOLLING_ACTIVEでのハンドシェイクが完了するまで待機する。続いて、レーン0のPOLLING_ACTIVEでのハンドシェイクが完了すると、レーン1がPOLLING_CONFIGURATIONのステートに遷移した後、レーン0がPOLLING_CONFIGURATIONのステートに遷移する。
【0062】
その後、レーン0のPOLLING_CONFIGURATIONでのハンドシェイクが完了すると、レーン1のPOLLING_CONFIGURATIONでのハンドシェイクが完了するまで待機する。
【0063】
そして、レーン1のPOLLING_CONFIGURATIONでのハンドシェイクが完了すると、レーン0およびレーン1がPOLLING_IDLEのステートに遷移する。続いて、レーン1のPOLLING_IDLEでのハンドシェイクが完了した後、レーン0のPOLLING_IDLEでのハンドシェイクが完了するまで待機する。そして、レーン0のPOLLING_IDLEでのハンドシェイクが完了すると、レーン0およびレーン1がLOOPBACK_ACTIVEのステートに遷移し、2レーンモードのハンドシェイクが成功する。
【0064】
これに対し、誤り率測定装置1のレーン0とレーン1による2レーンモードのハンドシェイクが失敗した場合は、
図6および
図7に示す表示形態でレーン0とレーン1それぞれのステート遷移のログデータを時系列順に配置して表示画面21aに表示する。その際、表示画面21aには、ステート遷移のログデータに加え、自レーンがステート遷移条件を満たして他レーンがステート遷移条件を満たすことを待機している状態を示すログデータ(
図7の斜線で囲む「POLLING_ACTIVE(Waiting for other lane)」)も表示される。
【0065】
図6および
図7のステート遷移のログデータによれば、
図4と同様に、最初に低速信号によるレーン0のハンドシェイクにより、INITIAL→DETECT_ACTIVE→POLLING_LFPS_SCD1→POLLING_LFPS_PLUS→POLLING_LFPS_ENDSCD→POLLING_PORT_MATCH→POLLING_PORT_CONFIG_READY→POLLING_PORT_ENDLBPMの順にステートが遷移する。
【0066】
その後、高速信号によるレーン0およびレーン1のハンドシェイクを行い、レーン0がPOLLING_RXEQのステートが遷移した後、レーン1がPOLLING_RXEQのステートに遷移する。続いて、レーン1がPOLLING_ACTIVEのステートが遷移した後、レーン0がPOLLING_ACTIVEのステートに遷移する。
【0067】
そして、レーン1のPOLLING_ACTIVEでのハンドシェイクが完了した後、レーン0のPOLLING_ACTIVEでのハンドシェイクが完了するまで待機する。その後、レーン0のPOLLING_ACTIVEでのハンドシェイクが完了する前にタイムアウトしてINITIALのステートに遷移し、2レーンハンドシェイクが失敗に終わる。
【0068】
なお、
図4~
図7において、Time[ns]は経過時間、Delta Timeはステートの滞在時間、Stateはステートの名称、Speed[GT/s]は信号名または速度を示している。また、
図4~
図7ではレーン0とレーン1のステート遷移のログデータを別々に図示しているが、
図4および
図5に示す2レーンハンドシェイク成功時のレーン0とレーン1のステート遷移のログデータは時系列順に表示部21の1つの表示画面21aに一緒に表示され、
図6および
図7に示す2レーンハンドシェイク失敗時のレーン0とレーン1のステート遷移のログデータは時系列順に表示部21の1つの表示画面21aに一緒に表示される。
【0069】
このように、本実施の形態によれば、所定の通信規格(PCIe,USBなどのHSB)での複数のレーンの各々のハンドシェイクのログデータを同時に記録し、この同時に記録したステート遷移のログデータを表示する機能を有する。また、各レーンのステート遷移のログデータに加え、他レーンのステート遷移条件満足待ちの状態(自レーンが次のステートに進むためのステート遷移条件を満たして他レーンがステート遷移条件を満たすことを待機している状態)を定義し、この他レーンのステート遷移条件満足待ちの状態を含めたログデータを表示する機能を有する。
【0070】
これにより、複数レーンの規格をテストする際に、ユーザはハンドシェイク失敗の原因がどのレーンで生じたか、どのステートで生じたか、を容易に特定することができる。その結果、ユーザはあるステートでどのレーンに問題があるか(例えば、ステートによっては長時間待機しているレーンではない方のレーンに問題がある)を特定できるため、HSBデバイスのデバッグを極めて効率的に行うことが可能となる。
【0071】
以上、本発明に係る誤り率測定装置および誤り率測定方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
1 誤り率測定装置
2 パターン発生器
11 第1のパターン発生部
12 第2のパターン発生部
3 エラー検出器
13 第1のパターン検出部
14 第2のパターン検出部
15 エラー検出部
16 第1のリンク状態管理部
16a LTSSM
17 第1のリンク状態管理部
17a LTSSM
18 時刻生成部
19 ログ記録部
20 記憶部
21 表示部
21a 表示画面
22 制御部
W 被測定物
Wa,Wb LTSSM