(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188561
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】多相昇圧コンバータ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20221214BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 F
H02M3/155 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096693
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久嶋 肇
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB82
5H730BB88
5H730DD04
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD41
5H730FG05
5H730FG22
(57)【要約】
【課題】部品点数の低減や装置の小型化を図る。
【解決手段】第1昇圧コンバータは、入力電流を検出する電流センサを有し、制御装置は、第1、第2昇圧コンバータのうち第1昇圧コンバータだけまたは両方を駆動コンバータに設定し、駆動コンバータについて、入力電流と目標入力電流との差分が小さくなるように制御する。更に、制御装置は、駆動コンバータで同一となるように目標入力電流を設定し、駆動コンバータが第2昇圧コンバータを含むときには、第1昇圧コンバータの入力電流に基づいて第2昇圧コンバータの入力電流を推定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源および電気負荷に対して互いに並列に接続されると共に前記直流電源からの電力を昇圧して前記電気負荷に供給する第1、第2昇圧コンバータを有する多相昇圧コンバータと、
前記第1、第2昇圧コンバータを制御する制御装置と、
を備える多相昇圧コンバータ装置であって、
前記第1昇圧コンバータは、入力電流を検出する電流センサを有し、
前記制御装置は、前記第1、第2昇圧コンバータのうち前記第1昇圧コンバータだけまたは両方を駆動コンバータに設定し、前記駆動コンバータについて、入力電流と目標入力電流との差分が小さくなるように制御し、
更に、前記制御装置は、前記駆動コンバータが前記第2昇圧コンバータを含むときには、前記駆動コンバータで共通の前記目標入力電流を設定すると共に、前記第1昇圧コンバータの入力電流に基づいて前記第2昇圧コンバータの入力電流を推定する、
多相昇圧コンバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相昇圧コンバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の多相昇圧コンバータ装置としては、直流電源と電気負荷とに対して互いに並列に接続されると共に直流電源からの電力を昇圧して電気負荷に供給する複数の昇圧コンバータと、複数の昇圧コンバータのそれぞれのリアクトルに流れる電流をそれぞれ検出する複数の電流センサと、複数の電流センサにより検出される複数の昇圧コンバータのそれぞれの電流を用いて複数の昇圧コンバータを制御する制御装置と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の多相昇圧コンバータ装置では、複数の昇圧コンバータと同数の電流センサを設けており、部品点数が多いと共に装置の体格が大きくなっている。このため、部品点数の低減や装置の小型化を図ることが求められている。
【0005】
本発明の多相昇圧コンバータ装置は、部品点数の低減や装置の小型化を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多相昇圧コンバータ装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の多相昇圧コンバータ装置は、
直流電源および電気負荷に対して互いに並列に接続されると共に前記直流電源からの電力を昇圧して前記電気負荷に供給する第1、第2昇圧コンバータを有する多相昇圧コンバータと、
前記第1、第2昇圧コンバータを制御する制御装置と、
を備える多相昇圧コンバータ装置であって、
前記第1昇圧コンバータは、入力電流を検出する電流センサを有し、
前記制御装置は、前記第1、第2昇圧コンバータのうち前記第1昇圧コンバータだけまたは両方を駆動コンバータに設定し、前記駆動コンバータについて、入力電流と目標入力電流との差分が小さくなるように制御し、
更に、前記制御装置は、前記駆動コンバータが前記第2昇圧コンバータを含むときには、前記駆動コンバータで共通の前記目標入力電流を設定すると共に、前記第1昇圧コンバータの入力電流に基づいて前記第2昇圧コンバータの入力電流を推定する、
ことを要旨とする。
【0008】
本発明の多相昇圧コンバータ装置では、第1昇圧コンバータは、入力電流を検出する電流センサを有し、制御装置は、第1、第2昇圧コンバータのうち第1昇圧コンバータだけまたは両方を駆動コンバータに設定し、駆動コンバータについて、入力電流と目標入力電流との差分が小さくなるように制御する。更に、制御装置は、駆動コンバータが第2昇圧コンバータを含むときには、駆動コンバータで共通の目標入力電流を設定すると共に、第1昇圧コンバータの入力電流に基づいて第2昇圧コンバータの入力電流を推定する、第1、第2昇圧コンバータを駆動コンバータに設定するときに、両者の目標入力電流を共通(同一)とすることにより、第1、第2昇圧コンバータの入力電流は、互いに比較的近い値になると想定される。このため、第1昇圧コンバータの入力電流に基づいて第2昇圧コンバータの入力電流を推定することが可能となる。この結果、第2昇圧コンバータについて電流センサを省略することができるから、部品点数の低減や装置の小型化を図ることができる。
【0009】
本発明の多相昇圧コンバータ装置において、前記第1昇圧コンバータの入力電流と前記電流センサの検出バラツキとに基づいて前記第2昇圧コンバータの入力電流を推定するものとしてもよい。こうすれば、第2昇圧コンバータの入力電流をより適切に推定することができる。
【0010】
本発明の多相昇圧コンバータ装置において、前記多相昇圧コンバータは、前記第1、第2昇圧コンバータのコンバータ組を複数有し、前記制御装置は、前記多相昇圧コンバータの要求入力電流の増加に伴って、前記コンバータ組内および前記コンバータ組間の優先順序に従って前記駆動コンバータの数を増加させ、且つ、前記コンバータ組間の前記優先順序をシステム起動ごとに切り替えるものとしてもよい。こうすれば、特定の昇圧コンバータだけ駆動頻度が高くなるのを抑制し、多相昇圧コンバータの寿命が短くなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例としての多相昇圧コンバータ装置を備える自動車10の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】ECU50により実行される多相昇圧コンバータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図3】昇圧コンバータ42uの入力電流ILuと、実入力電流ILuaと入力電流ILuとの誤差ΔILuと、の関係の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0013】
図1は、本発明の一実施例としての多相昇圧コンバータ装置を備える自動車10の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図示するように、モータ22と、インバータ24と、バッテリ26と、昇圧コンバータ28と、燃料電池38と、多相昇圧コンバータ40と、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)50とを備える。ここで、実施例の「多相昇圧コンバータ装置」としては、多相昇圧コンバータ40とECU50とが該当する。
【0014】
モータ22は、例えば同期発電電動機として構成されており、駆動輪12にデファレンシャルギヤ14を介して連結された駆動軸16に接続されている。インバータ24は、モータ22の駆動に用いられると共に高電圧側電力ライン30に接続されている。高電圧側電力ライン30には、コンデンサ30aが取り付けられている。モータ22は、ECU50によって、インバータ24の図示しない複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
【0015】
バッテリ26は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、第1低電圧側電力ライン32に接続されている。昇圧コンバータ28は、高電圧側電力ライン30と第1低電圧側電力ライン32とに接続されており、ECU50によって制御されることにより、第1低電圧側電力ライン32の電力を昇圧して高電圧側電力ライン30に供給したり、高電圧側電力ライン30の電力を降圧して第1低電圧側電力ライン32に供給したりする。
【0016】
燃料電池38は、固体高分子型の燃料電池として構成されており、水素タンクから供給されて燃料ポンプ(循環ポンプ)により循環される水素と、酸素ポンプ(エアコンプレッサ)により供給されて加湿器により加湿される空気中の酸素と、の電気化学反応により発電する。燃料電池38の出力端子は、第2低電圧側電力ライン34に接続されている。
【0017】
多相昇圧コンバータ40は、4相(U相、V相、W相、X相)の昇圧コンバータ42u,42v,42w,42xを備える。昇圧コンバータ42u,42v,42w,42xは、何れも同一の定格として構成されており、第2低電圧側電力ライン34と高電圧側電力ライン30とに対して互いに並列に接続されている。昇圧コンバータ42u,42v,42w,42xは、それぞれ、リアクトルLu,Lv,Lw,Lxと、ダイオードDu,Dv,Dw,Dxと、還流ダイオードが並列に接続されたスイッチング素子Su,Sv,Sw,Sxと、電流センサ44u,44wとを有する。リアクトルLu,Lv,Lw,Lxの一方端子は、何れも第2低電圧側電力ライン34の正極側ラインに接続されている。ダイオードDu,Dv,Dw,Dxのアノードは、それぞれリアクトルLu,Lv,Lw,Lxの他方の端子に接続されており、ダイオードDu,Dv,Dw,Dxのカソードは、何れも高電圧側電力ライン30の正極側ラインに接続されている。スイッチング素子Su,Sv,Sw,Sxの一方の端子は、それぞれリアクトルLu,Lv,Lw,Lxの他方の端子に接続されており、スイッチング素子Su,Sv,Sw,Sxの他方の端子は、高電圧側電力ライン30および第2低電圧側電力ライン34の負極側ラインに接続されている。昇圧コンバータ42u,42v,42w,42xは、それぞれ、ECU50によってスイッチング素子Su,Sv,Sw,Sxのオン時間とオフ時間との和に対するオン時間の割合(デューティ)を調節することにより、第2低電圧側電力ライン34の電力を昇圧して高電圧側電力ライン30に供給する。電流センサ44u,44wは、それぞれ昇圧コンバータ42u,42wのリアクトルLu,Lwに直列に取り付けられている。
【0018】
ECU50は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。ECU50には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。ECU50に入力される信号としては、例えば、モータ22の回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置センサからの回転位置θmや、モータ22の各相の相電流を検出する図示しない電流センサからの相電流Iv,Iw、バッテリ26の電圧を検出する図示しない電圧センサからの電圧Vb、バッテリ26の入出力電流を検出する図示しない電流センサからの電流Ibを挙げることができる。高電圧側電力ライン30の電圧を検出する電圧センサ30vからの電圧VHや、燃料電池38の出力電圧を検出する電圧センサ38vからの電圧Vfや、燃料電池38の出力電流を検出する電流センサ38iからの電流If、電流センサ44u,44wからの昇圧コンバータ42u,42wの入力電流ILu,ILwも挙げることができる。スタートスイッチ60からのイグニッション信号や、シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP、アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ67からの車速Vも挙げることができる。
【0019】
ECU50からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。ECU50から出力される信号としては、例えば、インバータ24への制御信号や、昇圧コンバータ28への制御信号、昇圧コンバータ42u,42v,42w,42xのスイッチング素子Su,Sv,Sw,Sxへの制御信号を挙げることができる。ECU50は、回転位置センサからのモータ22の回転子の回転位置θmに基づいてモータ22の回転数Nmを演算したり、電流センサからのバッテリ26の電流Ibに基づいてバッテリ26の蓄電割合SOCを演算したりしている。
【0020】
こうして構成された実施例の自動車10では、ECU50は、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて走行に要求される要求トルクTd*を設定し、バッテリ26の蓄電割合SOCが目標割合SOC*を中心とする制御範囲(例えば、目標割合SOC*プラスマイナス10~20%程度の範囲)内となると共に要求トルクTd*により走行するように、モータ22(インバータ24)と昇圧コンバータ28と燃料電池38と多相昇圧コンバータ40とを制御する。
【0021】
ここで、多相昇圧コンバータ40の制御について説明する。ECU50は、要求トルクTd*やバッテリ26の蓄電割合SOCに基づいて多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagを設定し、設定した要求入力電流ILtagが大きいほど、優先順序に従って昇圧コンバータ42u~42xのうち駆動する昇圧コンバータ(以下、「駆動コンバータ」という)の数を増加させる。ここで、優先順序は、以下のように設定される。前提として、多相昇圧コンバータ40の4相の昇圧コンバータ42u~42xを、昇圧コンバータ42u(電流センサ44uあり)および昇圧コンバータ42v(電流センサなし)の第1組と、昇圧コンバータ42w(電流センサ44wあり)および昇圧コンバータ42x(電流センサなし)の第2組とに組分けする。そして、各組内の優先順序について、電流センサありの昇圧コンバータ、電流センサなしの昇圧コンバータの順序とすると共に、各組間の優先順序について、トリップごとに(システム起動ごとに)、第1組、第2組の順序と第2組、第1組の順序とで切り替える。これにより、第1組と第2組とで駆動頻度のバラツキが大きくなる(特定の昇圧コンバータだけ駆動頻度が高くなる)のを抑制し、多相昇圧コンバータ40の寿命が短くなるのを抑制することができる。
【0022】
次に、こうして構成された実施例の自動車10の動作、特に、多相昇圧コンバータ40の制御について説明する。
図2は、ECU50により実行される多相昇圧コンバータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、繰り返し実行される。また、このルーチンは、各組間の優先順序を第1組、第2組の順序としたときのフローチャートである。各組間の優先順序を第2組、第1組の順序としたときについては、これと同様に考えることができる。
【0023】
図2の制御ルーチンが実行されると、ECU50は、最初に、昇圧コンバータ42u,42wの入力電流ILu,ILwや多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagなどのデータを入力する(ステップS100)。ここで、昇圧コンバータ42u,42wの入力電流ILu,ILwは、電流センサ44u,44wにより検出された値が入力される。多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagは、上述したように、要求トルクTd*やバッテリ26の蓄電割合SOCに基づいて設定された値が入力される。
【0024】
こうしてデータを入力すると、入力した多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagを閾値IL1~IL3(IL1<IL2<IL3)と比較する(ステップS110~S130)。ここで、閾値IL1~IL3は、多相昇圧コンバータ40の昇圧コンバータ42u~42xのうち少なくとも1つの駆動コンバータを設定するのに用いられる閾値である。
【0025】
ステップS110で多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagが閾値IL1以下であるときには、昇圧コンバータ42u~42xのうちの1つを駆動コンバータに設定すると判定し、優先順位に従って昇圧コンバータ42uを駆動コンバータに設定し(ステップS140)、多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagを昇圧コンバータ42uの目標入力電流IL*に設定する(ステップS142)。
【0026】
続いて、式(1)に示すように、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuと目標入力電流IL*との差分が小さくなるようにフィードバック制御により昇圧コンバータ42uのスイッチング素子Suのデューティ指令Dtu*を設定し(ステップS146)、設定したデューティ指令Dtu*を用いてスイッチング素子Suのスイッチング制御を行なって(ステップS148)、本ルーチンを終了する。
【0027】
Dtu*=PI(ILu, IL*) (1)
【0028】
ステップS110,S120で多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagが閾値IL1よりも大きく且つ閾値IL2以下であるときには、昇圧コンバータ42u~42xのうちの2つを駆動コンバータに設定すると判定し、優先順位に従って昇圧コンバータ42u,42vを駆動コンバータに設定し(ステップS150)、多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagを値2(駆動コンバータの数)で除して、昇圧コンバータ42u,42vの共通(同一)の目標入力電流IL*を設定する(ステップS152)。
【0029】
続いて、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuに基づいて昇圧コンバータ42vの入力電流ILvを推定する(ステップS154)。ここで、昇圧コンバータ42vの入力電流ILvの推定方法については後述する。そして、式(1)および式(2)に示すように、昇圧コンバータ42u,42vの入力電流ILu,ILvと目標入力電流IL*との差分がそれぞれ小さくなるようにフィードバック制御により昇圧コンバータ42u,42vのスイッチング素子Su,Svのデューティ指令Dtu*,Dtv*を設定し(ステップS156)、設定したデューティ指令Dtu*,Dtv*を用いてスイッチング素子Su,Svのスイッチング制御をそれぞれ行なって(ステップS158)、本ルーチンを終了する。
【0030】
Dtv*=PI(ILv, IL*) (2)
【0031】
ステップS110~S130で多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagが閾値IL2よりも大きく且つ閾値IL3以下であるときには、昇圧コンバータ42u~42xのうちの3つを駆動コンバータに設定すると判定し、優先順位に従って昇圧コンバータ42u~42wを駆動コンバータに設定し(ステップS160)、多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagを値3(駆動コンバータの数)で除して、昇圧コンバータ42u~42wの共通の目標入力電流IL*を設定する(ステップS162)。
【0032】
続いて、ステップS154の処理と同様に昇圧コンバータ42uの入力電流ILuに基づいて昇圧コンバータ42vの入力電流ILvを推定する(ステップS164)。そして、式(1)~式(3)に示すように、昇圧コンバータ42u~42wの入力電流ILu~ILwと目標入力電流IL*との差分がそれぞれ小さくなるようにフィードバック制御により昇圧コンバータ42u~42wのスイッチング素子Su~Swのデューティ指令Dtu*~Dtw*を設定し(ステップS166)、設定したデューティ指令Dtu*~Dtw*を用いてスイッチング素子Su~Swのスイッチング制御をそれぞれ行なって(ステップS168)、本ルーチンを終了する。
【0033】
Dtw*=PI(ILw, IL*) (3)
【0034】
ステップS110~S130で多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagが閾値IL3よりも大きいときには、昇圧コンバータ42u~42xのうちの4つ(全て)を駆動コンバータに設定すると判定し、昇圧コンバータ42u~42xを駆動コンバータに設定し(ステップS170)、多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagを値4(駆動コンバータの数)で除して、昇圧コンバータ42u~42xの共通の目標入力電流IL*を設定する(ステップS172)。
【0035】
続いて、ステップS154の処理と同様に、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuに基づいて昇圧コンバータ42vの入力電流ILvを推定すると共に昇圧コンバータ42wの入力電流ILwに基づいて昇圧コンバータ42xの入力電流ILxを推定する(ステップS174)。そして、式(1)~式(4)に示すように、昇圧コンバータ42u~42xの入力電流ILu~ILxと目標入力電流IL*との差分がそれぞれ小さくなるようにフィードバック制御により昇圧コンバータ42u~42xのスイッチング素子Su~Sxのデューティ指令Dtu*~Dtx*を設定し(ステップS176)、設定したデューティ指令Dtu*~Dtx*を用いてスイッチング素子Su~Sxのスイッチング制御をそれぞれ行なって(ステップS178)、本ルーチンを終了する。
【0036】
Dtx*=PI(ILx, IL*) (4)
【0037】
ここで、昇圧コンバータ42vの入力電流ILvの推定方法について説明する。実施例では、上述したように、駆動コンバータの数が2以上であるときに、駆動コンバータについて共通の目標入力電流IL*を設定するものとした。したがって、少なくとも昇圧コンバータ42u,42vを駆動するときに、昇圧コンバータ42u,42vの実入力電流ILua,ILvaは、互いに比較的近い値になると想定される。また、電流センサ44uにより検出される昇圧コンバータ42uの入力電流ILuは、一般に、昇圧コンバータ42uの実入力電流ILuaに対する電流センサ44uの検出バラツキなどを含んだ値となっている。
図3は、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuと、実入力電流ILuaと入力電流ILuとの誤差ΔILu(=ILua-ILu)と、の関係の一例を示す説明図である。図中、「ΔILumax」および「ΔILumin」は、誤差ΔILuの最大値および最小値であり、発明者らは、解析や実験により、誤差ΔILuの最大値ΔILumaxおよび最小値ΔILuminを、式(5)および式(6)に示すように、入力電流ILuを変数とした一次関数で近似するものとした。式(5)および式(6)において、値a1,a2,b1,b2は、何れも正の値である。式(5)および式(6)から、誤差ΔILuの最大バラツキΔILuvrは、式(7)のように表わすことができる。以上のことを踏まえて、実施例では、昇圧コンバータ42vの入力電流ILu(検出値)を用いて、式(8)により昇圧コンバータ42vの入力電流ILvを推定するものとした。このようにして、昇圧コンバータ42vの入力電流ILvを推定することができる。なお、式(8)から解るように、昇圧コンバータ42vの入力電流ILvは、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuよりも大きい値となる。これは、昇圧コンバータ42vの入力電流ILvを実入力電流ILvaに比して大きい側になりやすくすることにより、実入力電流ILvaを過度に大きくしようとするのを抑制するためである(式(2)参照)。昇圧コンバータ42vの入力電流ILvの推定方法について説明した。同様に、少なくとも昇圧コンバータ42w,42xを駆動するときには、昇圧コンバータ42vの入力電流ILw(検出値)を用いてリアクトルLxの入力電流ILxを推定することができる。これらにより、昇圧コンバータ42v,42xについて電流センサを省略することができる。即ち、昇圧コンバータ42u~42xの全てについて電流センサを設ける場合に比して、電流センサの数を低減することができる。この結果、部品点数の低減や装置(例えば、多相昇圧コンバータ)の小型化を図ることができる。
【0038】
ILumax=a1・ILu+b1 (5)
ILumin=-a2・ILu-b2 (6)
ILuvr=(a1+a2)・ILu+(b1+b2) (7)
ILv=(1+(a1+a2))・ILu+(b1+b2) (8)
【0039】
以上説明した実施例の自動車10が備える多相昇圧コンバータ装置では、昇圧コンバータ42u~42xのうち少なくとも昇圧コンバータ42u,42vを駆動コンバータに設定するときには、多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagを値2で除して昇圧コンバータ42u,42vの共通の目標入力電流IL*を設定し、昇圧コンバータ42u,42vの入力電流ILu,ILvと目標入力電流IL*との差分がそれぞれ小さくなるように昇圧コンバータ42u,42vを制御する。このときに、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuについては、電流センサ44uにより検出し、昇圧コンバータ42vの入力電流ILvについては、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuに基づいて推定する。同様に、少なくとも昇圧コンバータ42w,42xを駆動コンバータに設定するときには、昇圧コンバータ42wの入力電流ILwについては、電流センサ44wにより検出し、昇圧コンバータ42xの入力電流ILxについては、昇圧コンバータ42wの入力電流ILwに基づいて推定する。これらにより、昇圧コンバータ42v,42xについて電流センサを省略することができる。即ち、昇圧コンバータ42u~42xの全てについて電流センサを設ける場合に比して、電流センサの数を低減することができる。この結果、部品点数の低減や装置(例えば、多相昇圧コンバータ)の小型化を図ることができる。
【0040】
実施例の多相昇圧コンバータ装置では、少なくとも昇圧コンバータ42u,42vを駆動コンバータに設定するときには、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuに基づいて上述の式(8)により昇圧コンバータ42vの入力電流ILvを推定するものとした。しかし、このときには、昇圧コンバータ42uの入力電流ILuに基づいて式(9)により昇圧コンバータ42vの入力電流ILvを推定するものとしてもよい。
【0041】
ILv=(1+a1)・ILu+b1 (9)
【0042】
実施例の多相昇圧コンバータ装置では、多相昇圧コンバータ40の要求入力電流ILtagが大きいほど優先順序に従って駆動コンバータの数を増加させる際の、各組間の優先順序を、トリップごとに、第1組(昇圧コンバータ42u,42vの組)、第2組(昇圧コンバータ42w,42xの組)の順序と第2組、第1組の順序とで切り替えるものとした。しかし、各組間の優先順序を所定時間ごとや所定走行距離ごとに切り替えるものとしてもよい。また、各組間の優先順序を切り替えないものとしてもよい。
【0043】
実施例の多相昇圧コンバータ装置では、多相昇圧コンバータ40は、4相の昇圧コンバータ42u~42xを備え、昇圧コンバータ42u~42xのうち昇圧コンバータ42u,42wが電流センサ44u,44wを有すると共に昇圧コンバータ42v,42xが電流センサを有しないものとした。しかし、多相昇圧コンバータ40は、2相の昇圧コンバータを備え、そのうちの1つの昇圧コンバータが電流センサを有すると共に残りの1つの昇圧コンバータが電流センサを有しないものとしてもよい。また、多相昇圧コンバータ40は、6相の昇圧コンバータを備え、そのうちの3つの昇圧コンバータが電流センサを有すると共に残りの3つの昇圧コンバータが電流センサを有しないものとしてもよい。
【0044】
実施例の多相昇圧コンバータ装置では、多相昇圧コンバータ40の入力側の第2低電圧側電力ライン34に燃料電池38が接続されるものとした。しかし、第2低電圧側電力ライン34にバッテリが接続されるものとしてもよい。
【0045】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、昇圧コンバータ42u~42xおよび電流センサ44u,44xを有する多相昇圧コンバータ40が「多相昇圧コンバータ」に相当し、ECU50が「制御装置」に相当する。
【0046】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 自動車、12 駆動輪、14 デファレンシャルギヤ、16 駆動軸、22 モータ、24 インバータ、26 バッテリ、28 昇圧コンバータ、30 高電圧側電力ライン、30a コンデンサ、30v 電圧センサ、32 第1低電圧側電力ライン、34 第2低電圧側電力ライン、38 燃料電池、38i 電流センサ、38v 電圧センサ、40 多相昇圧コンバータ、42u,42v,42w,42x 昇圧コンバータ、44u,44w 電流センサ、50 ECU、60 スタートスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、67 車速センサ、Du,Dv,Dw,Dx ダイオード、Lu,Lv,Lw,Lx リアクトル、Su,Sv,Sw,Sx スイッチング素子。