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特開2022-188565モータユニット及びモータユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188565
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】モータユニット及びモータユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20221214BHJP
   H02K 7/00 20060101ALI20221214BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K7/00 A
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096702
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯島 淳
(72)【発明者】
【氏名】小島 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 健司
(72)【発明者】
【氏名】秋月 賢一郎
【テーマコード(参考)】
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607BB04
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC09
5H607DD03
5H607DD07
5H607EE32
5H607HH01
5H607HH09
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611UA08
(57)【要約】
【課題】センサをマグネットの径方向外側に配置しつつ、モータ回転の誤検出を抑制できるモータユニットを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、駆動軸を有するモータと、駆動軸によって駆動軸の回転軸心周りに回転する出力ジョイントと、出力ジョイントの回転に伴って弾性変形する緩衝部材と、回転軸心を挟んで互いに対向するように配置されたN極及びS極を有すると共に、出力ジョイントと共に回転する環状のマグネットと、マグネットの径方向外側からマグネットの磁束を検出するセンサとを備えるモータユニットである。N極及びS極は、それぞれ、本体部と、N極とS極との境界を含む境界部と、を有する。境界部のマグネットの軸方向における厚みは、本体部の厚みよりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を有するモータと、
前記駆動軸によって前記駆動軸の回転軸心周りに回転するように構成された出力ジョイントと、
前記出力ジョイントの回転に伴って弾性変形するように構成された緩衝部材と、
前記駆動軸の回転軸心を挟んで互いに対向するように配置されたN極及びS極を有すると共に、前記出力ジョイントと共に前記駆動軸の回転軸心周りに回転するように構成された環状のマグネットと、
前記マグネットの径方向外側から前記マグネットの磁束を検出するように構成されたセンサと、
を備え、
前記N極及び前記S極は、それぞれ、
本体部と、
前記N極と前記S極との境界を含む境界部と、
を有し、
前記境界部の前記マグネットの軸方向における厚みは、前記本体部の前記軸方向における厚みよりも小さい、モータユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のモータユニットであって、
前記境界部は、径方向に前記マグネットを貫通する溝を有する、モータユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のモータユニットであって、
前記出力ジョイントに係合すると共に、前記出力ジョイントによって回転されるように構成された入力ジョイントをさらに備え、
前記緩衝部材は、前記出力ジョイントの回転力の少なくとも一部を前記入力ジョイントに伝達する伝達経路を構成する、モータユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータユニットであって、
車両用シートが備える駆動装置に用いられる、モータユニット。
【請求項5】
駆動軸を有するモータと、前記駆動軸によって前記駆動軸の回転軸心周りに回転するように構成された出力ジョイントと、前記出力ジョイントの回転に伴って弾性変形するように構成された緩衝部材と、前記駆動軸の回転軸心を挟んで互いに対向するように配置されたN極及びS極を有すると共に、前記出力ジョイントと共に前記駆動軸の回転軸心周りに回転するように構成された環状のマグネットと、前記マグネットの径方向外側から前記マグネットの磁束を検出するように構成されたセンサと、を備えるモータユニットの製造方法であって、
前記N極及び前記S極それぞれに対し、
本体部と、
前記N極と前記S極との境界を含むと共に、前記マグネットの軸方向における厚みが前記本体部の前記軸方向における厚みよりも小さい境界部と、
を形成する工程を有する、モータユニットの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のモータユニットの製造方法であって、
前記形成する工程では、前記マグネットの前記境界を含む部分を軸方向に切削することで前記境界部を形成する、モータユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータユニット及びモータユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シートには、シートの移動、変形等を行うための駆動装置が設けられる。これらの駆動装置は、動力源としてモータユニットを有する。モータユニットは、モータと、ジョイントを介してモータに連結された駆動伝達機構(例えばギア)とを有する。
【0003】
モータユニットは、モータの回転に対応したパルス信号を制御装置に伝達する。制御装置は、モータのパルス信号に基づいて、制御対象であるシートの位置、姿勢等の状態を把握する。パルス信号は、ジョイントと共に回転するマグネットの磁力変化を検知するセンサによって生成される。
【0004】
また、モータユニットには、モータ停止時にジョイントの回転をスムーズに停止させるための弾性体が緩衝部材として設けられる。緩衝部材が設けられたモータユニットでは、モータ停止時に緩衝部材の反力によってジョイントが微小ながら逆回転する。
【0005】
このジョイントの逆回転に伴ってマグネットが逆回転した際に、N極とS極との境界がセンサの検出領域を通過すると、モータは停止しているにも関わらず、センサが磁力の変化を検知してパルスを出力する。その結果、実際のモータの回転数と、パルス信号とに誤差が発生し得る。
【0006】
このようなモータ回転の誤検出を抑制するため、N極とS極との境界を含む部位とセンサとの距離を調整する技術が存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-46577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の技術では、センサがマグネットに対し回転軸心方向に重なる位置に配置される必要がある。そのため、モータユニット内においてセンサをマグネットの径方向外側に配置することはできない。
【0009】
本開示の一局面は、センサをマグネットの径方向外側に配置しつつ、モータ回転の誤検出を抑制できるモータユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、駆動軸(21)を有するモータ(2)と、駆動軸(21)によって駆動軸(21)の回転軸心周りに回転するように構成された出力ジョイント(3)と、出力ジョイント(3)の回転に伴って弾性変形するように構成された緩衝部材(5)と、駆動軸(21)の回転軸心を挟んで互いに対向するように配置されたN極(61)及びS極(62)を有すると共に、出力ジョイント(3)と共に駆動軸(21)の回転軸心周りに回転するように構成された環状のマグネット(6)と、マグネット(6)の径方向外側からマグネット(6)の磁束を検出するように構成されたセンサ(7)と、を備えるモータユニット(1)である。
【0011】
N極(61)及びS極(62)は、それぞれ、本体部(61A,62A)と、N極(61)とS極(62)との境界(63)を含む境界部(61B,62B)と、を有する。境界部(61B,62B)のマグネット(6)の軸方向における厚みは、本体部(61A,62A)の軸方向における厚みよりも小さい。
【0012】
このような構成によれば、境界部(61B,62B)の磁力が本体部(61A,62A)よりも小さくされる。その結果、モータ(2)の停止時における緩衝部材(5)の反力によって出力ジョイント(3)及びマグネット(6)が微小回転し、センサ(7)の検出領域がN極(61)とS極(62)との境界(63)を跨いだ場合に、境界部(61B,62B)によってセンサ(7)が検出する磁力の変化が低減される。そのため、センサ(7)をマグネット(6)の径方向外側に配置しつつ、センサ(7)によるモータ回転の誤検出を抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、境界部(61B,62B)は、径方向にマグネット(6)を貫通する溝(61C,62C)を有してもよい。このような構成によれば、境界部(61B,62B)を有するマグネット(6)の制作が容易となる。
【0014】
本開示の一態様は、出力ジョイント(3)に係合すると共に、出力ジョイント(3)によって回転されるように構成された入力ジョイント(4)をさらに備えてもよい。緩衝部材(5)は、出力ジョイント(3)の回転力の少なくとも一部を入力ジョイント(4)に伝達する伝達経路を構成してもよい。このような構成によれば、緩衝部材(5)の反力に伴う回転の誤検出を抑制しつつ、駆動力の伝達効率を高めることができる。
【0015】
本開示の一態様は、車両用シート(100)が備える駆動装置(102)に用いられてもよい。このような構成によれば、モータ(2)の回転数に基づいてシートの位置、姿勢等を的確に制御できる。
【0016】
本開示の別の一態様は、駆動軸(21)を有するモータ(2)と、駆動軸(21)によって駆動軸(21)の回転軸心周りに回転するように構成された出力ジョイント(3)と、出力ジョイント(3)の回転に伴って弾性変形するように構成された緩衝部材(5)と、駆動軸(21)の回転軸心を挟んで互いに対向するように配置されたN極(61)及びS極(62)を有すると共に、出力ジョイント(3)と共に駆動軸(21)の回転軸心周りに回転するように構成された環状のマグネット(6)と、マグネット(6)の径方向外側からマグネット(6)の磁束を検出するように構成されたセンサ(7)と、を備えるモータユニット(1)の製造方法である。
【0017】
モータユニットの製造方法は、N極(61)及びS極(62)それぞれに対し、本体部(61A,62A)と、N極(61)とS極(62)との境界(63)を含むと共に、マグネット(6)の軸方向における厚みが本体部(61A,62A)の軸方向における厚みよりも小さい境界部(61B,62B)と、を形成する工程を有する。
【0018】
このような構成によれば、センサ(7)をマグネット(6)の径方向外側に配置しつつ、センサ(7)によるモータ回転の誤検出が抑制されたモータユニット(1)を得ることができる。
【0019】
本開示の一態様では、形成する工程では、マグネット(6)の境界(63)を含む部分を軸方向に切削することで境界部(61B,62B)を形成してもよい。このような構成によれば、一般的な円環状のマグネットを用いて、境界部(61B,62B)を有するマグネット(6)を形成することができる。
【0020】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態における車両用シートの模式図である。
図2図2は、図1の駆動装置のモータユニットの模式図である。
図3図3は、図2の出力ジョイント、入力ジョイント及び緩衝部材を示す模式的な分解斜視図である。
図4図4A及び図4Bは、図3の出力ジョイント、入力ジョイント及び緩衝部材の配置を示す模式的な断面図である。
図5図5Aは、図2のマグネットの模式的な平面図であり、図5Bは、図2のマグネットの模式的な側面図である。
図6図6A及び図6Bは、図5Bとは異なる実施形態におけるマグネットの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す車両用シート100は、シート本体101と、駆動装置102とを備える。車両用シート100は、車両に設置される。
【0023】
駆動装置102は、シート本体101の移動、変形等を行う。駆動装置102は、例えば、シート本体101のリクライニング装置、スライド装置、リフト装置、チルト装置、ヘッドレスト調整装置等として用いられる。
【0024】
駆動装置102は、例えばエレクトロニックコントロールユニット(ECU)等の制御装置によって駆動が制御される。また、駆動装置102は、駆動結果等のフィードバック信号を制御装置に出力する。駆動装置102は、図2に示すモータユニット1を備える。
【0025】
<モータユニット>
モータユニット1は、モータ2と、出力ジョイント3と、入力ジョイント4と、緩衝部材5と、マグネット6と、センサ7と、基板8と、ギア9とを備える。
【0026】
(モータ)
モータ2は、駆動軸21を有する。モータ2は、電力によって駆動軸21を第1方向及び第1方向とは反対側の第2方向とに軸回転させる。
【0027】
(出力ジョイント)
出力ジョイント3は、駆動軸21によって、駆動軸21の回転軸心P周りに回転するように構成されている。図3に示すように、出力ジョイント3は、基部31と、軸挿通部32と、複数の出力係合部33A,33B,33Cと、複数の凸部34A,34B,34Cとを有する。
【0028】
基部31は、円盤状の部位である。基部31の厚み方向は、駆動軸21の回転軸心Pと平行である。基部31の中心軸は、回転軸心Pと一致している。
【0029】
軸挿通部32は、駆動軸21が挿通される円筒状の部位である。軸挿通部32は、基部31を厚み方向に貫通している。駆動軸21は、軸挿通部32に固定されることで、基部31及び軸挿通部32に回転力を伝達する。
【0030】
第1出力係合部33A、第2出力係合部33B及び第3出力係合部33Cは、それぞれ、基部31から回転軸心Pと平行な方向に(具体的には入力ジョイント4に向かって)突出している。
【0031】
第1出力係合部33A、第2出力係合部33B及び第3出力係合部33Cは、軸挿通部32よりも基部31の径方向外側において、基部31の周方向に沿って等間隔で配置されている。
【0032】
第1凸部34Aは、第1出力係合部33Aから回転軸心Pに向かって突出している。第2凸部34Bは、第2出力係合部33Bから回転軸心Pに向かって突出している。第3凸部34Cは、第3出力係合部33Cから回転軸心Pに向かって突出している。
【0033】
(入力ジョイント)
入力ジョイント4は、出力ジョイント3に係合すると共に、出力ジョイント3によって回転されるように構成されている。入力ジョイント4は、基部41と、軸挿通孔42と、複数の入力係合部43A,43B,43Cとを有する。
【0034】
基部41は、円盤状の部位である。基部41の厚み方向は、駆動軸21の回転軸心Pと平行である。基部41の中心軸は、回転軸心Pと一致している。
【0035】
軸挿通孔42は、ギア9の軸が挿通される非円形の孔である。軸挿通孔42は、基部41を厚み方向に貫通している。軸挿通孔42に挿通されたギア9の軸には、基部41から回転力が伝達される。
【0036】
第1入力係合部43A、第2入力係合部43B及び第3入力係合部43Cは、それぞれ、基部41から回転軸心Pと平行な方向に(具体的には出力ジョイント3に向かって)突出している。
【0037】
第1入力係合部43A、第2入力係合部43B及び第3入力係合部43Cは、軸挿通孔42よりも基部41の径方向外側において、基部41の周方向に沿って等間隔で配置されている。
【0038】
(緩衝部材)
緩衝部材5は、出力ジョイント3の回転に伴って弾性変形するように構成されている。緩衝部材5は、例えばゴム等の弾性体で構成される。緩衝部材5は、本体51と、複数のフィン52とを有する。
【0039】
本体51は、円筒状の部位である。本体51には、駆動軸21又はギア9の軸が挿通される。複数のフィン52は、本体51の外周面から、本体51の径方向外側に突出している。複数のフィン52は、本体51の周方向に沿って等間隔で配置されている。
【0040】
緩衝部材5は、回転軸心Pと平行な方向において、出力ジョイント3の基部31と、入力ジョイント4の基部41とに挟まれている。本体51の中心軸は、回転軸心Pと一致している。
【0041】
(ジョイントの係合)
図4Aに示すように、入力ジョイント4は、複数の入力係合部43A,43B,43Cがそれぞれ複数の出力係合部33A,33B,33Cの間に配置されるように、出力ジョイント3に係合している。
【0042】
具体的には、出力ジョイント3の回転方向(つまり出力ジョイント3の周方向)において、第1出力係合部33Aと第2出力係合部33Bとの間に第2入力係合部43Bが配置されている。また、第2出力係合部33Bと第3出力係合部33Cとの間に第3入力係合部43Cが配置されている。さらに、第3出力係合部33Cと第1出力係合部33Aとの間に第1入力係合部43Aが配置されている。
【0043】
入力係合部43A,43B,43Cはそれぞれ、出力係合部33A,33B,33Cに対し、出力ジョイント3の径方向内側の位置(つまり、回転軸心Pに近い位置)まで延伸している。
【0044】
緩衝部材5の複数のフィン52は、出力ジョイント3の周方向において、入力係合部43A,43B,43Cのいずれかと、凸部34A,34B,34Cのいずれかとの間に配置されている。
【0045】
複数のフィン52は、出力ジョイント3の径方向において、出力係合部33A,33B,33Cのいずれかと重なる位置に配置されている。つまり、フィン52は、出力ジョイント3の径方向において出力係合部33A,33B,33Cの内側に位置する。
【0046】
図4Bに示すように、モータ2の駆動によって駆動軸21が第1方向D1に回転すると、出力ジョイント3も第1方向D1に回転する。その結果、出力係合部33A,33B,33Cがそれぞれ、隣接する入力係合部43A,43B,43Cに接触する。これにより、出力ジョイント3の回転力が入力ジョイント4に伝達され、入力ジョイント4が第1方向に回転する。
【0047】
また、緩衝部材5の複数のフィン52の一部は、入力係合部43A,43B,43Cと凸部34A,34B,34Cとによって、出力ジョイント3の周方向に圧縮される。出力ジョイント3の回転力の一部は、凸部34A,34B,34Cからフィン52を介して入力ジョイント4に伝達される。つまり、緩衝部材5は、出力ジョイント3の回転力の少なくとも一部を入力ジョイント4に伝達する伝達経路を構成している。
【0048】
駆動軸21の回転が停止すると、フィン52の復元力(つまり膨張力)によって凸部34A,34B,34Cは、第1方向D1とは反対方向の第2方向D2に押し戻される。その結果、出力係合部33A,33B,33Cが入力係合部43A,43B,43Cから離れ、回転力の伝達経路が遮断される。
【0049】
駆動軸21が第2方向D2に回転してその後停止する場合も、同様の駆動伝達が出力ジョイント3、入力ジョイント4及び緩衝部材5の間で行われる。
【0050】
(マグネット)
図2に示すように、マグネット6は、出力ジョイント3に固定されている。マグネット6は、出力ジョイント3と共に駆動軸21の回転軸心P周りに回転するように構成されている。
【0051】
図5Aに示すように、マグネット6は円環状である。マグネット6は、駆動軸21の回転軸心Pを挟んで互いに対向するように配置されたN極61及びS極62を有する。N極61及びS極62はそれぞれ、円環を2分割した半環形状である。
【0052】
N極61とS極62とは、マグネット6の周方向における2か所で互いに隣接している。つまり、マグネット6は、N極61とS極62とを区画する2つの境界63を有する。境界63は、マグネット6の軸方向及び径方向の双方と平行な面で構成される。
【0053】
N極61は、N極本体部61Aと、2つのN極境界部61Bとを有する。N極本体部61Aは、マグネット6の周方向におけるN極61の中央に設けられている。2つのN極境界部61Bは、N極61のマグネット6の周方向における両端部に1つずつ設けられている。つまり、N極本体部61Aは、2つのN極境界部61Bによってマグネット6の周方向に挟まれている。
【0054】
2つのN極境界部61Bは、それぞれ、N極61とS極62との境界63を含んでいる。図5Bに示すように、N極境界部61Bは、径方向にマグネット6を貫通するN極溝61Cを有する。
【0055】
N極溝61Cは、N極境界部61Bの外周面から内周面まで到達している。N極溝61Cのマグネット6の軸方向における幅は一定である。N極溝61Cは、マグネット6の径方向と軸方向との双方に平行な底面61Dを有する。N極本体部61AとN極境界部61Bとの境界面は、底面61Dを含む。
【0056】
N極境界部61Bは、マグネット6の軸方向においてN極溝61Cによって2つの領域に分割されている。また、N極61とS極62との境界63もN極溝61Cによって分割されている。
【0057】
N極境界部61Bのマグネット6の軸方向における厚み(つまり、N極溝61Cを挟んだ2つの領域の厚みT12A,T12Bの和)は、N極本体部61Aのマグネット6の軸方向における厚みT11よりも小さい。そのため、N極境界部61Bは、N極本体部61Aよりもマグネット6の径方向外側から測定される磁力が小さい。なお、N極境界部61Bの厚みは、N極本体部61Aの厚みからN極溝61Cの幅を減じたものである。
【0058】
N極境界部61Bのマグネット6の径方向における厚みは、N極本体部61Aのマグネット6の径方向における厚みと等しい。つまり、N極61の外径及び内径は、周方向に沿って一定である。
【0059】
図5Aに示すように、S極62は、S極本体部62Aと、2つのS極境界部62Bとを有する。S極62は、境界63を含む仮想面に対し、N極61と対称形状を有する。つまり、マグネット6は、2回対称の形状を有する。
【0060】
2つのS極境界部62Bは、それぞれ、N極61とS極62との境界63を含んでいる。2つのS極境界部62Bは、それぞれ、2つのN極境界部61Bのいずれかと隣接している。
【0061】
図5Bに示すように、S極境界部62Bは、径方向にマグネット6を貫通するS極溝62Cを有する。S極溝62Cは、マグネット6の径方向と軸方向との双方に平行な底面62Dを有する。S極本体部62AとS極境界部62Bとの境界面は、底面62Dを含む。
【0062】
S極溝62Cの幅は、N極溝61Cの幅と等しい。S極溝62Cは、N極溝61Cと共に、N極61とS極62との境界63を含む位置で径方向にマグネット6を貫通する貫通孔を構成している。
【0063】
S極境界部62Bのマグネット6の軸方向における厚み(つまり、S極溝62Cを挟んだ2つの領域の厚みT22A,T22Bの和)は、S極本体部62Aのマグネット6の軸方向における厚みT21よりも小さい。そのため、S極境界部62Bは、S極本体部62Aよりもマグネット6の径方向外側から測定される磁力が小さい。
【0064】
S極境界部62Bのマグネット6の径方向における厚みは、S極本体部62Aのマグネット6の径方向における厚みと等しい。つまり、S極62の外径及び内径は、周方向に沿って一定である。
【0065】
(センサ及び基板)
図2に示すセンサ7は、マグネット6の径方向外側からマグネット6の磁束を検出するように構成されている。
【0066】
センサ7は、基板8に電気的に接続されている。基板8は、センサ7が検出した磁束の変化が閾値を超えた場合に、回転方向に対応したパルス信号を制御装置(図示省略)に出力する。
【0067】
モータ2の駆動によってマグネット6が出力ジョイント3と共に回転すると、センサ7の検知エリアをマグネット6のN極61とS極62とが交互に通過する。基板8は、検知エリアに存在する磁極がN極61からS極62へ切り替わる際の磁力の変化に基づいて、パルス信号を生成する。
【0068】
モータ2の停止時にマグネット6のN極本体部61A又はS極本体部62Aが検知エリア内に存在する状態で、出力ジョイント3及びマグネット6が微小回転した場合、センサ7が検出する磁力の変化は小さく抑えられる。そのため、基板8によってパルス信号は生成されない。
【0069】
また、モータ2の停止時にマグネット6の境界63が検知エリア内に存在する状態で、出力ジョイント3及びマグネット6が微小回転した場合、境界63の近傍に配置されたN極境界部61B及びS極境界部62Bの磁力が小さいため、センサ7が検出する磁力の変化は小さく抑えられる。そのため、この場合もパルス信号は生成されない。
【0070】
(ギア)
ギア9は、入力ジョイント4に連結されている。ギア9は、入力ジョイント4から回転力が伝達される従動軸を有する。ギア9は、モータ2の回転力の加減速、運動方向の変換等を行う。
【0071】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)N極境界部61B及びS極境界部62Bの磁力がN極本体部61A及びS極本体部62Aよりも小さくされる。その結果、モータ2の停止時における緩衝部材5の反力によって出力ジョイント3及びマグネット6が微小回転し、センサ7の検出領域がN極61とS極62との境界63を跨いだ場合に、N極境界部61B及びS極境界部62Bによってセンサ7が検出する磁力の変化が低減される。そのため、センサ7をマグネット6の径方向外側に配置しつつ、センサ7によるモータ回転の誤検出を抑制できる。
【0072】
(1b)N極溝61C及びS極溝62Cを設けることで、N極境界部61B及びS極境界部62Bを有するマグネット6の制作が容易となる。
【0073】
(1c)緩衝部材5が出力ジョイント3の回転力を入力ジョイント4に伝達する伝達経路を構成することで、緩衝部材5の反力に伴う回転の誤検出を抑制しつつ、駆動力の伝達効率を高めることができる。
【0074】
(1d)モータユニット1が駆動装置102に用いられることで、モータ2の回転数に基づいて車両用シート100の位置、姿勢等を的確に制御できる。
【0075】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
本実施形態のモータユニットの製造方法は、マグネット制作工程と、組み立て工程とを備える。本実施形態のモータユニットの製造方法により、第1実施形態のモータユニット1が得られる。
【0076】
(マグネット制作工程)
本工程では、マグネット6のN極61及びS極62それぞれに対し、N極本体部61A又はS極本体部62Aと、N極境界部61B又はS極境界部62Bとを形成する。
【0077】
具体的には、マグネット6の2つの境界63を含む部分をそれぞれ軸方向に切削し、N極溝61C及びS極溝62Cを形成することでN極境界部61B及びS極境界部62Bを形成する。これにより、一般的な円環状のマグネットを用いて、N極境界部61B及びS極境界部62Bを有するマグネット6を制作することができる。
【0078】
また、N極境界部61B及びS極境界部62Bのマグネット6の軸方向における厚みがN極本体部61A及びS極本体部62Aの軸方向における厚みよりも小さい形状を有するマグネット6を、例えば金型を用いて成形してもよい。これにより、N極境界部61B及びS極境界部62Bを有するマグネット6の制作工数を低減できる。
【0079】
なお、N極61及びS極62は、環状の磁性素材に対する着磁によって、同時に形成されてもよい。また、半環形状のN極61とS極62とを着磁によって個別に形成し、得られたN極61とS極62とを接合してマグネット6を形成してもよい。さらに、境界部61B,62Bを形成する切削加工は、着磁前に行われてもよい。
【0080】
(組み立て工程)
本工程では、マグネット制作工程で得たマグネット6を出力ジョイント3に組み付ける。さらに、出力ジョイント3、マグネット6及び他の部品を用いて、モータユニット1を組み立てる。
【0081】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)センサ7をマグネット6の径方向外側に配置しつつ、センサ7によるモータ回転の誤検出が抑制されたモータユニット1を得ることができる。
【0082】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0083】
(3a)上記実施形態のモータユニットにおいて、N極溝及びS極溝は、必ずしも径方向にマグネットを貫通しなくてもよい。また、N極溝及びS極溝の底面は、N極とS極との境界と平行であってもよい。
【0084】
さらに、図6Aに示すように、N極溝61C及びS極溝62Cは、N極境界部61B又はS極境界部62Bのマグネット6の軸方向における表面まで到達してもよい。また、図6Bに示すように、N極境界部61B及びS極境界部62Bは、マグネット6の軸方向に並んで配置された複数のN極溝61C又は複数のS極溝62Cを有してもよい。
【0085】
(3b)上記実施形態のモータユニットにおいて、N極とS極とは必ずしも対称形状でなくてもよい。例えば、N極境界部の周方向の長さ又は径方向の厚みは、隣接するS極境界部の周方向の長さ又は径方向の厚みと異なっていてもよい。
【0086】
(3c)上記実施形態のモータユニットにおいて、緩衝部材は必ずしも出力ジョイントの回転力を入力ジョイントに伝達する伝達経路を構成しなくてもよい。
【0087】
(3d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0088】
1…モータユニット、2…モータ、3…出力ジョイント、4…入力ジョイント、
5…緩衝部材、6…マグネット、7…センサ、8…基板、9…ギア、21…駆動軸、
31…基部、32…軸挿通部、33A,33B,33C…出力係合部、
34A,34B,34C…凸部、41…基部、42…軸挿通孔、
43A,43B,43C…入力係合部、51…本体、52…フィン、61…N極、
61A…N極本体部、61B…N極境界部、61C…N極溝、61D…底面、
62…S極、62A…S極本体部、62B…S極境界部、62C…S極溝、
62D…底面、63…境界、100…車両用シート、101…シート本体、
102…駆動装置。
図1
図2
図3
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図5
図6