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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188570
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】移動装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20221214BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221214BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G03B5/00 J
H04N5/225 100
H04N5/232 480
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096708
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】赤田 弘司
【テーマコード(参考)】
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2K005AA11
2K005BA52
2K005BA53
2K005BA54
2K005CA02
2K005CA14
2K005CA24
2K005CA40
2K005CA44
2K005CA45
2K005CA54
5C122EA41
5C122EA52
5C122EA54
5C122GE11
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】 小型で消費電力が低い移動装置を提供すること。
【解決手段】 移動部材と、移動部材と同時に直進移動するスライド部材と、スライド部材の直進移動を案内する軸部材と、スライド部材に直進移動の駆動力を与える駆動部と、一方の端部がスライド部材10に、他方の端部が移動部材1に取り付けられた弾性部材20は、移動部材1とスライド部材10を直進移動方向に付勢するとともに、スライド部材10と軸部材17に対して、直進移動方向に直交する方向の付勢力を発生する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部材(1)と、該移動部材と同時に直進移動するスライド部材(10)と、該スライド部材の直進移動を案内する軸部材(17)と、前記スライド部材に直進移動の駆動力を与える駆動部(2a)と、一方の端部が前記スライド部材に、他方の端部が前記移動部材に取り付けられ、前記移動部材と前記スライド部材を直進移動方向に付勢する弾性部材とを備え、前記弾性部材は、前記スライド部材と前記軸部材に対して、直進移動方向に直交する方向の付勢力を発生することを特徴とする移動装置。
【請求項2】
前記スライド部材に取り付けられていた前記弾性部材の位置は、第2連結部材(11)よりも前記ガイド部材側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
移動部材(1)と、該移動部材と同時に直進移動する3つのスライド部材(10)と、該スライド部材の直進移動を案内する3つの軸部材(17)と、前記スライド部材に直進移動の駆動力を与える3つの駆動部(2a)と、一方の端部が前記スライド部材に、他方の端部が前記移動部材に取り付けられ、前記移動部材と前記スライド部材を直進移動方向に付勢する3つの弾性部材とを備え、前記弾性部材は、前記スライド部材と前記軸部材に対して、直進移動方向に直交する方向の付勢力を発生することを特徴とする移動装置。
【請求項4】
前記スライド部材に取り付けられていた前記弾性部材の位置は、第2連結部材(11)よりも前記ガイド部材側に配置されていることを特徴とする請求項3の記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動部材の移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移動装置は、特開2009-265509号に記載されているように、レンズ枠に一体に形成された第1の傾斜面を有する従動部と、従動部とコイルバネとの間に配置されて、従動部の第1の傾斜面に当接する第2の傾斜面を有する第2の従動部により、レンズ枠のガタツキを防止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-265509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献に開示された従来技術では、レンズ枠の位置によってコイルバネの撓み量が変化するため、モータにかかる負荷が変化してしまう。そのため、設計においては、レンズ枠の移動範囲でコイルバネ力が最大となる時のモータにかかる負荷を想定して、モータの選定もしくはモータへの入力を決定しなければならない。このことは、装置の大型化や消費電力の増大につながってしまう。
【0005】
そこで本発明の目的は、小型で消費電力が低く、高性能な移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の移動装置は、移動部材と、移動部材と同時に直進移動するスライド部材と、スライド部材の直進移動を案内する軸部材と、スライド部材に直進移動の駆動力を与える駆動部と、一方の端部がスライド部材に、他方の端部が移動部材に取り付けられ、移動部材とスライド部材を直進移動方向に付勢する弾性部材とを備え、弾性部材は、スライド部材と軸部材に対して、直進移動方向に直交する方向の付勢力を発生することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型で消費電力が低く、高性能な移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の振れ補正装置の分解斜視図である。
図2】本発明の振れ補正装置の移動部材の要部斜視図である。
図3】本発明の振れ補正装置の駆動ユニット図である。
図4】本発明の振れ補正装置のスライドユニット分解斜視図である。
図5】本発明の振れ補正装置のスライドユニット図である。
図6】本発明の振れ補正装置のスライドユニットとモータユニットの組立完成図である。
図7】本発明の振れ補正装置の駆動ユニットの組立完成図である。
図8】本発明の振れ補正装置の駆動方法の説明図である。
図9】本発明の振れ補正装置のスライド部材のガタ取り構造を示す図である。
図10】本発明の振れ補正装置のスライド部材のガタ取り状態を示す図である。
図11】本発明の振れ補正装置の制御ブロック図である。
図12】本発明の振れ補正装置のベアリングにかかる荷重を示す図である。
図13】本発明の振れ補正装置のベアリングにかかる荷重の割合を示す図である。
図14】本発明の振れ補正装置のベアリングのかかる荷重の大小関係を示す表である。
図15】本発明の振れ補正装置が搭載されたカメラ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
まず、本発明の移動装置(以下、振れ補正装置)を搭載した撮像装置の全体構成について説明する。
【0011】
[撮像装置の全体構成]
図15は、本発明の振れ補正装置を搭載した撮像装置の一実施形態としてのデジタル一眼レフカメラ本体(以下、カメラという)100および交換レンズ50の中央断面図である。
【0012】
交換レンズ50は、カメラ100側のマウント部210と交換レンズ50側のマウント部51によって、カメラ100に対して着脱可能に固定される。交換レンズ50がカメラ100に装着されると、カメラ100の接点部220と交換レンズ50の接点部52が電気的に接続される。
【0013】
光軸Oa方向からの被写体光が交換レンズ50のフォーカスレンズ53を透過し、カメラ100のメインミラー130に入射する。メインミラー130は、メインミラー保持枠131に保持され、回転軸部131aによってミラーアップ位置とミラーダウン位置との間を回動可能に軸支されている。
【0014】
メインミラー130はハーフミラーとなっており、メインミラー130を透過した光束は、サブミラー140により下方へ反射され、焦点検出ユニット150へと導かれる。
【0015】
サブミラー140は、サブミラー保持枠141に保持されている。サブミラー保持枠141は、ヒンジ軸(不図示)によってメインミラー保持枠131に対して回動可能に軸支されている。
【0016】
焦点検出ユニット150は、フォーカスレンズ53のデフォーカス量を検出し、フォーカスレンズ53が合焦状態となるフォーカスレンズ53の駆動量を算出する。交換レンズ50は、算出された駆動量を接点部220および52を介して受信する。交換レンズ50は、受信した駆動量に基づいてモータ(不図示)を制御し、フォーカスレンズ53を駆動することで焦点調節を行う。
【0017】
メインミラー130により反射された光束は、光学ファインダ160へと導かれる。光学ファインダ160は、ピント板170、ペンタプリズム180、接眼レンズ190で構成されている。メインミラー130によって光学ファインダ160へと導かれた光束は、ピント板170に被写体像を結像する。使用者は、ペンタプリズム180および接眼レンズ190を介してピント板170上の被写体像を観察可能である。
【0018】
サブミラー140の後方にはシャッタ装置120が配置されている。シャッタ装置120の後方には、撮像素子ユニット30である、光学ローパスフィルター121、撮像素子ホルダー122、撮像素子123、カバー部材124、ゴム部材125が配置されている。撮影時には、光学ローパスフィルター121を透過した光束が、撮像素子123へと入射する。撮像素子123は、撮像素子ホルダー122によって保持されている。カバー部材124は、撮像素子123を保護している。ゴム部材125は、光学ローパスフィルター121を保持するとともに、光学ローパスフィルター121と撮像素子123の間を密閉する。駆動ユニット31は、撮像素子ユニット30(121~125)と連結されており、カメラ100の振れに応じて撮像素子ユニット30を駆動する。駆動ユニット31は、ビス(不図示)によってカメラ100の筐体に固定されている。
【0019】
表示モニタ260は、LCD等で構成されたモニタであり、撮影画像の表示や、カメラ100の各種設定状態の表示を行う。
【0020】
[本発明の振れ補正装置の機械的構成]
図1は、本発明の振れ補正装置の分解斜視図である。
【0021】
1は移動部材である。移動部材1には、貫通の長穴部1a~1c、貫通でない丸穴部1d~1f、突出部1g~1i、突出部1j~1m(図2に記載)が設けられている。2は移動部材を駆動するための駆動ユニットである。駆動ユニット2は図3に示すように、モータユニット2aとスライドユニット2bから構成されている。
【0022】
ここで、スライドユニット2bについて詳細に説明する。
【0023】
図4はスライドユニット2bの分解斜視図を示している。10はスライド部材であり、穴部10a、穴部10b、10c、穴部10d、10e、溝部10g、突出部10fが設けられている。11はベアリング(第2連結部材)である。12はストッパピンである。13は螺合部材ホルダーであり、軸部13a、13b、穴部13c、溝部13dが設けられている。14はねじりコイルバネである。15は螺合部材(第1連結部材)であり、軸部15aと突出片部15b、ネジ部15cが設けられている。16はバネ部材であり、4本の突出片部16aが設けられている。17、18は軸部材である。19は板金部材である。20は引っ張りコイルバネ(弾性部材)である。
【0024】
次に、スライドユニット2bの部品の相互関係を説明する。
【0025】
本実施形態においては、スライドユニット2bが3つあるが、3つとも同一の形状と材質の部品と構成からなっているため、同一の番号で説明する。
【0026】
螺合部材ホルダー13の軸部13bは、ねじりコイルバネ14の内径部に挿通される。螺合部材ホルダー13の軸部13a、13bはそれぞれスライド部材10の穴部10d、10eに嵌合する。その際に、ねじりコイルバネ14は、螺合部材ホルダー13の穴部10d、10eとスライド部材10の軸部13a、13bの嵌合ガタと、軸部材17とスライド部材10の穴部10b、10cの嵌合ガタと、後述の螺合部材15とモータユニット2aのネジ(リードスクリューまたは駆動軸)部23のガタを抑制するように働いている。これにより、目標位置に対して精度よく移動部材1を移動できるので、簡単な構造で振れ補正性能を向上させることができる。スライド部材10の穴部10b、10cは軸部材17が嵌合し、溝部10gは軸部18が嵌合する。
【0027】
また、軸部材17、18の両端部は板金部材19の穴部に圧入により固定される。軸部材12の先端部がベアリング11の内径部に嵌合し、スライド部材10の穴部10aに圧入されて、ベアリング11がスライド部材10に固定される。螺合部材15の軸部と突出片部15bが、螺合部材ホルダー13の穴部13cと溝部13dにそれぞれ嵌合する。
【0028】
その後バネ部材16の4本の突出片部16aのバネ力により、螺合部材ホルダー13と螺合部材15が当接した状態で保持される。引っ張りコイルバネ20の一方の端部20aがスライド部材10の突出部10fに取り付けられる。そして、他の端部20bはそれぞれ対応した突出部1j、1k、1mに取り付けられる。このように引っ張りコイルバネ20を取り付けることによって、そのバネ力が移動部材1の移動範囲の全域でモータの負荷にはならないため、余分な電力を消費せずにガタ取りができる利点がある。
【0029】
図5はスライドユニットが組み立てられた状態を示している。そして、図3に示すように、ネジ部23と軸部17、18はほぼ平行に配置される。また、螺合部材15のネジ部15cが、モータユニット2aのモータ本体部22より突き出したネジ(リードスクリューまたは駆動軸)部23に噛み合っている。これらの状態でモータ本体に通電することでネジ部が回転し、ネジのリードに従ってスライド部材10をネジ部23の軸方向へ移動させることができる。モータユニット2aにはその他に回転角度の検出のための、周方向に多極着磁されたマグネット24と、その磁束を検出するための磁気感応素子26(ホール素子等)、モータを後述のベース板金3に取り付けるためのモータ板金25、ネジ部23の先端を軸支する軸受部材27が設けられている。
【0030】
3はベース板金であり、前述のスライドユニットとモータユニットがネジ4によって固定される。また、転動板6が、ベース板金の穴部3a~3cに嵌合し、接着、圧入、溶接等により固定される。スライドユニット2bとモータユニット2a、転動板6が取り付けられた状態を図6に示す。5は転動板であり、移動部材1の穴部1d~1fに、接着、圧入等により固定される。8は引っ張りコイルバネであり、その両端部が移動部材の突出部1g~1iとベース板金3の突出部3d~3fにそれぞれ取り付けられる。その際に、転動ボール(転動部)7が、上述の転動板5と6の間に挟まれて、移動部材1とベース板金3が光軸方向に一定の距離を保った状態で付勢されて保持される。この転動ボールの転がりにより、光軸に垂直な方向への移動部材1の移動が滑らかになる。
【0031】
また、移動部材1の長穴部1a~1cには、ベアリング11の外径部11aが挿通される。その際には、引っ張りコイルバネ20の一方の端部20aがスライド部材10の突出部10fに取り付けられ、他方の端部20bは移動部材1の突出部1j、1k、1mにそれぞれ取り付けられるので、ベアリング11の外径部11aの側面が移動部材1の長穴部1a~1cの側面部1a-1~1c-1にそれぞれ当接して付勢された状態で保持される。図5の状態から移動部材1、転動板5、転動ボール7、引っ張りコイルバネ8が組み立てられた状態を図7に示す。この状態はカメラにおいては水平姿勢の状態である。図7の状態の駆動ユニット31に撮像素子ユニット30がネジ等で固定される。その際に、モータの通電によって発生した磁気が撮像素子へ入り込まないように、磁気シールドシートが敷設される。
【0032】
本発明の振れ補正装置の機械的構成は以上の通りとなっている。
【0033】
[本発明の振れ補正装置の機械的特徴]
ここで、本発明の振れ補正装置の機械的構成における特徴について説明する。
【0034】
まず、ベアリング11と移動部材1の関係について述べる。
【0035】
本発明の振れ補正装置は、図7に示されているように、スライド部材10に取り付けられた3つのベアリング11が、移動部材1の長穴部1a~1cの側面部1a-1~1c-1に当接する構造になっている。つまり、撮像素子ユニット30が固定された移動部材1(磁気シールドシート9および転動板5を含む)は、3つのベアリング11により、支持されることになる。そして、3つのベアリング11は撮像素子ユニット30が固定された移動部材1の重心周りに略等分(120°間隔)に配置されている。また、長穴部1a~1cはその略長方形の長辺が、図7の方向から見てその重心からベアリング中心を結んだ線に略平行に設けられている。
【0036】
ところで、カメラの水平姿勢において、撮像素子の形状は左右方向に長く、上下方向に短い略長方形となっている。本発明の振れ補正装置は撮像素子ユニット30の光軸後方にモータユニット2aとスライドユニット2bが設けられている。また、ベアリング中心の3点を結ぶ略正方形のレイアウトを考えた場合、上下方向の長さが最も短くなって小型にできるのは、正三角形の性質上、1点のベアリングが真上か真下に配置される場合である。したがって、本実施形態においては、1点のベアリングが真上に配置されている。これらの構成により、光軸に垂直な方向が小型になるメリットがある。
【0037】
さらにモータユニット2aとスライドユニット2bとの配置関係を考えた場合、スライドユニット2bはモータユニット2aよりも、光軸に垂直な方向において外側に配置されるのが望ましい。なぜなら、3点のベアリングが光軸に垂直な方向に遠ざかるほど、モータの回転角度に対する回転(Roll)方向の移動量の敏感度が下がり、より精度の良い回転(Roll)駆動が実現できるからである。また、モータユニット2aがスライドユニット2bよりも光軸に垂直な方向において内側に配置されると、モータ22と撮像素子ユニット30側面までの距離が長くなることから、撮像素子側面へ到達するモータからの磁束が低減する。これにより、撮像素子に露光された撮影画像信号へのノイズの入り込みが低減され、撮影画像への悪影響を回避することができる。
【0038】
なお、撮像素子ユニット30が固定された移動部材1の重心は、光軸近傍にあるのが望ましい。上記の構成によれば、3つのベアリングの中心を結ぶ線で形成される三角形の範囲内に光軸および重心が配置されている。これにより、撮像素子ユニット30が固定された移動部材1の質量を3つのベアリングで分散して支持しつつ、効率よく駆動することができるようになる。
【0039】
また、3つの転動ボール7の配置においては、3つのベアリングの中心を結ぶ線で形成される三角形に対して、3つの転動ボール7を結ぶ線で形成される三角形がほぼ逆配置(実施形態では頂点が下)となるようにするのがスペース効率上望ましい。これは、三角形の性質上、底辺を除く2辺の外側には空いたスペースが確保できるからである。
【0040】
以上の構成により、モータユニット2aに通電して3点のベアリング11を駆動してその位置(座標)を変化させると、3点のベアリングの位置に応じて移動部材1の位置が一意に定まる。
【0041】
ここで、ベアリング位置と移動部材の位置についての詳細を、図8の模式図を用いて説明する(図1と同一機能の部分は図1と同一の番号で説明する)。図8(a)に示すように、撮像素子ユニット30が固定された移動部材1が、水平(Yaw)右方向にMxだけ移動(点線から実線へ移動)する場合には、ベアリングAをmA(=Mx)、ベアリングBをmB(=-Mx・SINθ)、ベアリングCをmC(=-Mx・SINθ)だけそれぞれ移動させる。
【0042】
また、図8(b)に示すように、撮像素子ユニット30が固定された移動部材1が、上(Pitch)方向にMYだけ移動(点線から実線へ移動)する場合には、ベアリングAは移動させず、ベアリングBをmB(=MY・COSθ)、ベアリングCをmC(=-MY・COSθ)だけそれぞれ移動させる。また、図8(c)に示すように、撮像素子ユニット30が固定された移動部材1が、回転(Roll)方向にMR°だけ時計回りに移動(点線から実線へ移動)する場合には、ベアリングAをmA(≒2・π・L・MR/360)、ベアリングBをmB(≒2・π・L・MR/360)、ベアリングCをmC(≒2・π・L・MR/360)だけ移動させる。それぞれ上述と逆方向に移動する場合も同様である。
【0043】
ここで、撮像素子ユニット30が固定された移動部材1が3点のベアリングで支持されることは前述したが、各ベアリングにはどれだけの荷重(駆動に要する力)がかかるかを説明する。
【0044】
図12は、各ベアリングにかかる荷重を説明するための概念図である。各ベアリングを上から反時計周りにA、B、Cと定める。そして、図12は移動部材1がθだけ時計回りに回転した状態を示している。そして、各ベアリングに一定の力Gが重力方向へ働いている時の各駆動軸(ネジ部23)方向の分力を示している。それぞれの分力は、ベアリングAではG・COS(90°-θ)、ベアリングBではG・COS(30°-θ)、ベアリングCではG・COS(30°+θ)となる。これらの力が少なくとも駆動する際には必要になる。これらの力を、θを0~180°の範囲で変化させ、撮像素子ユニット30と移動部材1の質量を100%として各ベアリングの駆動に要する力の割合をグラフに示すと、図13のようになる。つまり、各ベアリングにはθの値によって、最小で0%、最大で50%の駆動力があればよいことがわかる。つまり、3つのベアリングで支持する構造だと、撮像素子ユニット30と移動部材1の質量が分散されることになる。これは、各駆動部を小型にでき、装置全体の光軸方向の厚みを薄くすることができる効果がある。
【0045】
なお、上記の必要な駆動力は、撮像素子ユニット30と移動部材1の質量を支える程度の必要な力であるが、振れ補正の諸々の周波数で駆動する際の加速力もさらに付加される。しかし、この力は、撮像素子ユニット30と移動部材1の質量を支える程度の必要な力に比べると非常に小さいため、本実施形態ではその力を省略して説明した。
【0046】
次に、スライド部材10と軸部材17との関係について述べる。
【0047】
図9はスライド部材10が引っ張りコイルバネ20によって右方向に引っ張られ、ベアリング11が移動部材1の長穴部の側面部1a-1に当接している状態を示している(ただし説明の都合上、軸部材18は不図示にしている)。この状態において、スライド部材10の穴部10b、10cと軸部材17に着目すると、図10の模式図に示すように、引っ張りコイルバネ20のバネ力によって、スライド部材10はF2の力を受けている。また、引っ張りコイルバネ20のバネ力によって、ベアリング11が長穴部1aの側面部1a-1に付勢されて当接しているため、スライド部材10に取り付けられているベアリング11はF1の力を受けている。
【0048】
そして、F1とF2が同一直線上にないため、スライド部材10にはモーメントが発生する。そうすると、図10に示すようにスライド部材が若干斜めになり、穴部10b、10cと軸部材17とがガタ寄せされた状態で保持される。つまり、ベアリング11と側面部1a-1の当接位置と、引っ張りコイルバネ20の端部20aの取り付け位置をずらすことによって、ベアリング11と長穴部1aとのガタと、スライド部材10の穴部10b、10cと軸部材17のガタを同時に抑制することができる。また、ベアリング11をボールベアリング等で構成した場合には、内輪と外輪に生じるガタも抑制することができる。本実施形態では、ベアリング11と側面部1a-1の当接位置と軸部の間に引っ張りコイルバネ20の端部20aの取り付け位置を設けている。
【0049】
このようにすれば、引っ張りコイルバネ20のスペースを光軸方向へ別に設けなくてよくなるため、スライドユニット2bの高さ(光軸方向の距離)が低く抑えられて小型にできる。なお、3つのスライドユニット2bのうちの1つを代表として説明したが、他の2つも同様の構成となっている。このように、実現可能な簡単な構成で装置の移動機構部のガタを抑制することができる。そして、ガタが抑制されるとモータの回転角度に応じて忠実に移動部材10を移動させることができるようになるため、振れ補正の性能が向上する。
【0050】
[本発明の振れ補正装置の電気的構成]
ここで、本発明の振れ補正装置の電気的構成について説明する。
【0051】
図11は電気的構成を示すブロック図である。カメラ100内に設けられたヨー方向、ピッチ方向、ロール方向のジャイロセンサ311~313の出力が、それぞれの方向の撮像素子の目標位置算出部321~323に入力されて、撮像素子の目標位置が算出される。その算出結果が制御部331に入力され、制御部331よりモータへの駆動指令信号に変換されて出力され、モータドライバ341に入力される。そして、モータドライバ341からの出力信号を受けた各モータ351~353が回転し、時々刻々変化する撮像素子の目標位置に従って振れ補正機構部(駆動ユニット31に相当)371を駆動する。その際には、磁気感応素子(例えばホール素子)361~363により常にモータの回転状態を検出し、撮像素子の目標位置に沿った回転が行われるようにフィードバック制御が行われる。
【0052】
また、振れ補正機構部371には姿勢検出部(姿勢検出手段)381があり、その検出信号が制御部に入力されて、姿勢に応じた駆動指令がモータドライバ341に入力されるようになっている。なお、姿勢検出部は振れ補正機構部でなく、カメラ内に設けてもよい。その際には、カメラ内のマイコンからの姿勢信号が制御部331へ入力されて、姿勢に応じた駆動指令がモータドライバ341に入力されるようになる。
【0053】
[本発明の振れ補正装置の消費電力低減方法]
図13では、各ベアリングには最小で0%、最大で50%の駆動力があればよいことを説明した。これは、各駆動部を小型にでき、装置全体の光軸方向の厚みを薄くすることができる効果があることを述べたが、消費電力を削減できる効果もある。例えば、図13の0~180°を12分割(「1」~「12」)する。そして、「1」の領域を見ると、ベアリングAは0~15%、ベアリングBは50%、ベアリングCは35~50%となっている。このことより、ベアリングAの駆動力は非常に弱くてもよい、つまり、モータへの入力(例えば駆動電圧に相当する信号)を小さくできる。一方でベアリングBとベアリングCは通常の駆動力が必要となる。次に「2」の領域を見ると、ベアリングAは15~25%、ベアリングBは50%、ベアリングCは25~35%となっている。このことより、ベアリングAとBの駆動力はやや弱くてもよく、モータへの入力をやや小さくできる。次に「3」の領域を見ると、ベアリングAは25~35%、ベアリングBは50%、ベアリングCは15~25%となっている。このことより、ベアリングAとBの駆動力はやや弱くてもよく、モータへの入力をやや小さくできる。以上のようにして「1」~「12」の領域の必要な駆動力をまとめた表が図14である。●は通常の駆動力、▼は通常よりやや弱い駆動力、▼▼は通常より非常に弱い駆動力を表している。「通常より非常に弱い駆動力」では、モータへの入力は非常に小さくてすむ。「通常よりやや弱い駆動力」では、モータへの入力はやや小さくてすむ。そこで、本発明の振れ補正装置の姿勢(θ)を検出するように構成すれば、その姿勢に応じて各ベアリングを駆動するモータの入力を調節することで、消費電力を低減させることができる。
【0054】
さらに、ベアリングを重力に従って(Aでは+方向、Bでは-方向、Cでは+方向)駆動する場合は、重力によって駆動力が助けられるので、さらにモータへの入力を減らすことができ、より消費電力を低減させることができる。具体的には、重力方向と駆動方向がなす角度が、0°以上90°未満であれば、モータへの入力を減らして消費電力を低減できる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、上述のように移動部材に撮像素子ユニットが取り付けられたカメラ内の装置だけでなく、ステージ状の移動部材を目標位置に移動させるような移動装置であっても適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 移動部材
1a、1b、1c 長穴部
1a-1、1b-2、1c-3 面部
2a モータユニット(駆動部)
2b スライドユニット
7 転動ボール(転動部)
10 スライド部材
11 ベアリング(第2連結部材)
15 螺合部材(第1連結部材)
17 軸部材
20 引っ張りコイルバネ(弾性部材)
Oa 光軸
381 姿勢検出部(姿勢検出手段)
図1
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