(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188577
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ドラフト装置、エアジェット紡績機、ドラフト装置用サイドプレート及びドラフト装置用スプリングボックス
(51)【国際特許分類】
D01H 5/56 20060101AFI20221214BHJP
D01H 5/50 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
D01H5/56
D01H5/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096728
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】森 秀茂
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056BC06
4L056BC42
(57)【要約】
【課題】ドラフトローラのゲージ変更を容易に行うことができるドラフト装置、エアジェット紡績機、ドラフト装置用サイドプレート及びドラフト装置用スプリングボックスを提供する。
【解決手段】ドラフト装置6は、ドラフトクレードル40と、ドラフトクレードル40に取り付けられるスプリングボックス50と、ドラフトクレードル40にスプリングボックス50を固定するスプリングボックス固定ビス97と、スプリングボックス50に着脱可能に取り付けられ、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82をそれぞれ有する一対のサイドプレート80,80と、スプリングボックス50にサイドプレート80を固定する第1固定ビス107及び第2固定ビス106と、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82を通るように配置されるフロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bと、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフトクレードルと、
前記ドラフトクレードルに取り付けられるスプリングボックスと、
前記ドラフトクレードルに前記スプリングボックスを固定する第1固定部と、
前記スプリングボックスに着脱可能に取り付けられ、少なくとも1つのローラ軸孔をそれぞれ有する一対のサイドプレートと、
前記スプリングボックスに前記サイドプレートを固定する第2固定部と、
前記ローラ軸孔を通るように配置される少なくとも1つのドラフトローラと、を備えるドラフト装置。
【請求項2】
前記ドラフトローラとして、フロントトップローラと、前記フロントトップローラよりもドラフト方向において上流側に配置されるミドルトップローラと、を備え、
前記サイドプレートのそれぞれには、2つの前記ローラ軸孔である第1ローラ軸孔及び第2ローラ軸孔が形成されており、前記第1ローラ軸孔を通るように前記フロントトップローラが配置され、前記第2ローラ軸孔を通るように前記ミドルトップローラが配置される、請求項1に記載のドラフト装置。
【請求項3】
前記サイドプレートには、
前記第1ローラ軸孔の第1ローラ軸線よりも下流側に前記第2固定部のための第1孔部が形成され、
前記第2ローラ軸孔の第2ローラ軸線よりも下流側に前記第2固定部のための第2孔部が形成されている、請求項2に記載のドラフト装置。
【請求項4】
前記第1孔部と前記第1ローラ軸線との間の第1距離は、前記第2孔部と前記第2ローラ軸線との間の第2距離よりも短い、請求項3に記載のドラフト装置。
【請求項5】
前記サイドプレートは、前記ローラ軸孔の周りに形成された補強部を備えている、請求項1~4の何れか一項に記載のドラフト装置。
【請求項6】
前記サイドプレートは左右対称に配置されており、
前記補強部は、外側に突出するように前記サイドプレートに形成されている、請求項5に記載のドラフト装置。
【請求項7】
前記サイドプレートの前記補強部は逆U字状の突出部を有するように形成され、
前記スプリングボックスは、前記サイドプレートが取り付けられる一対の側方支持部を有し、
前記側方支持部のそれぞれには円弧状又は逆U字状の凹部が形成されている、請求項5又は6に記載のドラフト装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のドラフト装置と、
前記ドラフト装置よりも下流側に配置されるエアジェット紡績装置と、
前記エアジェット紡績装置よりも下流側に配置される巻取装置と、を備えるエアジェット紡績機。
【請求項9】
ドラフト装置のスプリングボックスに取り付けられるドラフト装置用サイドプレートであって、
前記スプリングボックスの側板部に固定される板状の本体部を備え、
前記本体部は、少なくとも1つのローラ軸孔と、前記ローラ軸孔の周縁部の軸方向における位置を前記側板部の位置に揃えるための段差部と、を有するドラフト装置用サイドプレート。
【請求項10】
前記ローラ軸孔の前記周縁部は前記本体部における補強部を構成する、請求項9に記載のドラフト装置用サイドプレート。
【請求項11】
ドラフト装置のスプリングボックスに取り付けられるドラフト装置用サイドプレートであって、
前記スプリングボックスの側板部に固定される板状の本体部を備え、
前記本体部は、少なくとも1つのローラ軸孔と、前記ローラ軸孔の周りに形成された補強部と、を有するドラフト装置用サイドプレート。
【請求項12】
前記本体部は、前記スプリングボックスの前記側板部に重ね合わされる平板部を有し、
前記補強部は、前記平板部から突出するリブ状に形成されている、請求項10又は11に記載のドラフト装置用サイドプレート。
【請求項13】
前記補強部は、前記スプリングボックスの前記側板部に重ね合わされる平板部に対して、2.4mm以上3.5mm以下突出している、請求項10~12の何れか一項に記載のドラフト装置用サイドプレート。
【請求項14】
前記補強部は逆U字状に形成されている、請求項10~13の何れか一項に記載のドラフト装置用サイドプレート。
【請求項15】
前記本体部には、2つの前記ローラ軸孔である第1ローラ軸孔及び第2ローラ軸孔が形成されており、
前記第1ローラ軸孔及び前記第2ローラ軸孔の何れか一方の上方にのみ、前記本体部に対して直角に折り曲げられた板状の補助補強部が形成されている、請求項9~14の何れか一項に記載のドラフト装置用サイドプレート。
【請求項16】
本体部と、
前記本体部に取り付けられる付勢部と、を備え、
前記本体部は、
前記付勢部が取り付けられると共に、ドラフト方向及び前記ドラフト方向に直交する軸方向に延在する平面部と、
前記平面部における前記軸方向の両端に設けられた一対の第1側板部と、
前記平面部における前記ドラフト方向の両端に設けられた一対の第2側板部と、を有し、
前記第1側板部は、前記ドラフト方向及び前記軸方向の両方に直交する上下方向において、前記第2側板部よりも短い、ドラフト装置用スプリングボックス。
【請求項17】
前記第1側板部には、前記平面部から離れる方向に向けて開放された円弧状又は逆U字状の凹部が形成されている、請求項16に記載のドラフト装置用スプリングボックス。
【請求項18】
前記凹部の深さは、前記本体部に支持されるドラフトローラの半径よりも小さい、請求項17に記載のドラフト装置用スプリングボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラフト装置、エアジェット紡績機、ドラフト装置用サイドプレート及びドラフト装置用スプリングボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機において、ドラフト装置のボトムローラに対してトップローラ(ドラフトローラ)を押圧するクレードルが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。クレードルには、フロントトップローラ、ミドルトップローラ、サードトップローラ及びバックトップローラを支持する4つの支持部が設けられる。これらの支持部の配置は、フロントトップローラ及びミドルトップローラの間のゲージ、或いはサードトップローラ及びバックトップローラの間のゲージが所定の間隔になるように設定されている。
【0003】
特許文献1には、バックトップローラを支持する支持構造体、及びサードトップローラを支持する支持構造体のそれぞれが、クレードルの長孔に固定される構成が記載されている。フロントトップローラ及びミドルトップローラを支持する支持構造体が、クレードルの長孔に固定される構成も記載されている。特許文献2には、クレードルのサイドプレートが、フロントトップローラ及びミドルトップローラを支持するフロント部と、サードトップローラ及びバックトップローラを支持するバック部とに分割された構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-168690号公報
【特許文献2】特開2009-001928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した紡績機では、クレードルにおけるトップローラの配置及びゲージが考慮されているものの、ゲージの変更をするためには各部材の調整又は分解等に手間を要する傾向にあり、ゲージの変更が容易であるとは言えなかった。例えば特許文献1では、ゲージ変更を行う場合、軸支持フレームと、ばね保持フレームと、ばねと、をクレードルから取り外し、取り外した複数の部材をクレードルに再度取り付ける必要があった。特許文献2では、ゲージ変更を行う場合に、サイドプレートのみの位置を調整するのではなく、クレードル内に設けられているばね等の付勢手段等も一旦クレードルから取り外して交換する必要があった。
【0006】
本発明は、ドラフトローラのゲージ変更を容易に行うことができるドラフト装置、エアジェット紡績機、ドラフト装置用サイドプレート及びドラフト装置用スプリングボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のドラフト装置は、ドラフトクレードルと、ドラフトクレードルに取り付けられるスプリングボックスと、ドラフトクレードルにスプリングボックスを固定する第1固定部と、スプリングボックスに着脱可能に取り付けられ、少なくとも1つのローラ軸孔をそれぞれ有する一対のサイドプレートと、スプリングボックスにサイドプレートを固定する第2固定部と、ローラ軸孔を通るように配置される少なくとも1つのドラフトローラと、を備える。
【0008】
このドラフト装置によれば、ドラフトクレードルに取り付けられるスプリングボックスに対して、ローラ軸孔を有するサイドプレートが着脱可能に取り付けられている。スプリングボックスは、第1固定部の固定を解除することにより、ドラフトクレードルから容易に取り外すことができる。サイドプレートは、第2固定部の固定を解除することにより、スプリングボックスから容易に取り外すことができる。よって、例えばドラフトクレードルにスプリングボックスが固定されている状態でサイドプレートのみをスプリングボックスから取り外すことで、サイドプレートを容易に交換することができる。ドラフトローラのゲージの変更を容易に行うことができる。このドラフト装置では、スプリングボックスによるドラフトローラの加圧が有効な範囲であれば、従来のように複数の部材をドラフトクレードルから取り外すことなく、サイドプレートのみを交換することにより、ゲージ変更を完了させることができる。
【0009】
ドラフト装置が、ドラフトローラとして、フロントトップローラと、フロントトップローラよりもドラフト方向において上流側に配置されるミドルトップローラと、を備え、サイドプレートのそれぞれには、2つのローラ軸孔である第1ローラ軸孔及び第2ローラ軸孔が形成されており、第1ローラ軸孔を通るようにフロントトップローラが配置され、第2ローラ軸孔を通るようにミドルトップローラが配置されてもよい。この構成によれば、フロントトップローラとミドルトップローラの間のゲージの変更をサイドプレートの交換により容易に行うことができる。
【0010】
ドラフト装置において、サイドプレートには、第1ローラ軸孔の第1ローラ軸線よりも下流側に第2固定部のための第1孔部が形成され、第2ローラ軸孔の第2ローラ軸線よりも下流側に第2固定部のための第2孔部が形成されていてもよい。第2固定部のための各孔部が、何れのローラ軸線よりも下流側に形成されるので、2つの孔部の間の距離が短くなり過ぎたり、孔部同士が干渉したりすることが回避され、孔部の位置の自由度が高められる。
【0011】
ドラフト装置において、第1孔部と第1ローラ軸線との間の第1距離は、第2孔部と第2ローラ軸線との間の第2距離よりも短くてもよい。スプリングボックスにサイドプレートを取り付けた際のフロントトップローラの位置決めを、フロントトップローラに近い位置で行うことにより、フロントトップローラの位置決め精度を向上することができる。
【0012】
ドラフト装置において、サイドプレートは、ローラ軸孔の周りに形成された補強部を備えてもよい。この構成によれば、サイドプレートの強度が向上する。ドラフトローラの回転方向における摺動に対してもサイドプレートの耐久性が高められている。
【0013】
ドラフト装置において、サイドプレートは左右対称に配置されており、補強部は、外側に突出するようにサイドプレートに形成されていてもよい。この構成によれば、スプリングボックスの左右両側において補強部が外側に突出するので、サイドプレートの強度が高められている。
【0014】
ドラフト装置において、サイドプレートの補強部は逆U字状の突出部を有するように形成され、スプリングボックスは、サイドプレートが取り付けられる一対の側方支持部を有し、側方支持部のそれぞれには円弧状又は逆U字状の凹部が形成されていてもよい。この構成によれば、補強部と凹部により、サイドプレートの位置決めを行うことができる。より具体的には、補強部と凹部の接触領域は、ねじとねじ孔等による位置決めよりも広範囲に及ぶため、サイドプレートの位置決めを精度良く行うことができる。
【0015】
本発明の一態様として、上記した何れかのドラフト装置と、ドラフト装置よりも下流側に配置されるエアジェット紡績装置と、エアジェット紡績装置よりも下流側に配置される巻取装置と、を備えるエアジェット紡績機が提供されてもよい。エアジェット紡績機において、ドラフトローラのゲージ変更を容易に行うことができる。したがって、例えば、ゲージ変更に伴う作業の時間を短縮することができるため、ゲージ変更に伴うエアジェット紡績機の生産性の低下を回避できる。
【0016】
本発明のドラフト装置用サイドプレートは、ドラフト装置のスプリングボックスに取り付けられるドラフト装置用サイドプレートであって、スプリングボックスの側板部に固定される板状の本体部を備え、本体部は、少なくとも1つのローラ軸孔と、ローラ軸孔の周縁部の軸方向における位置を側板部の位置に揃えるための段差部と、を有する。
【0017】
このドラフト装置用サイドプレートによれば、スプリングボックスからサイドプレートを容易に取り外すことができる。サイドプレートを容易に交換することができ、ドラフトローラのゲージ変更を容易に行うことができる。段差部により、ローラ軸孔の周縁部がスプリングボックスの側板部の位置に揃っているので、ドラフトローラを側板部基準で位置決めする場合と、サイドプレートのローラ軸孔基準で位置決めする場合とで、軸方向の壁面の位置は変わらない。よって、ドラフトローラの軸方向の位置決めも容易である。
【0018】
ドラフト装置用サイドプレートにおいて、ローラ軸孔の周縁部は本体部における補強部を構成してもよい。この構成によれば、サイドプレートの強度が向上する。ローラ軸孔にはドラフトローラが接触して摺動するが、ドラフトローラの摺動に対してもサイドプレートの耐久性が高められている。
【0019】
本発明のドラフト装置用サイドプレートは、ドラフト装置のスプリングボックスに取り付けられるドラフト装置用サイドプレートであって、スプリングボックスの側板部に固定される板状の本体部を備え、本体部は、少なくとも1つのローラ軸孔と、ローラ軸孔の周りに形成された補強部と、を有する。
【0020】
このドラフト装置用サイドプレートによれば、スプリングボックスからサイドプレートを容易に取り外すことができる。サイドプレートを容易に交換することができ、ドラフトローラのゲージ変更を容易に行うことができる。補強部により、サイドプレートの強度が向上する。ローラ軸孔にはドラフトローラが摺動するが、ドラフトローラの摺動に対してもサイドプレートの耐久性が高められている。
【0021】
ドラフト装置用サイドプレートにおいて、本体部は、スプリングボックスの側板部に重ね合わされる平板部を有し、補強部は、平板部から突出するリブ状に形成されていてもよい。この構成によれば、リブ状の補強部は、平板部と同等の厚みをもって形成され得る。すなわち、厚みを増大させる手法で補強部が形成されるのではない。サイドプレートによってドラフトローラをしっかりと支持しつつ、ドラフトローラ及びサイドプレートをドラフト装置に取り付けた際にもドラフトクレードル(ドラフト装置)が重くなり過ぎない。よって、操作性が低下しない。
【0022】
ドラフト装置用サイドプレートにおいて、補強部は、スプリングボックスの側板部に重ね合わされる平板部に対して、2.4mm以上3.5mm以下突出していてもよい。この構成によれば、サイドプレート全体を大型化することなく、ローラ軸孔の周囲の強度を向上することができる。
【0023】
ドラフト装置用サイドプレートにおいて、補強部は逆U字状に形成されていてもよい。この構成によれば、サイドプレートをスプリングボックスへ取り付ける際、サイドプレートを位置決めし易い。
【0024】
ドラフト装置用サイドプレートにおいて、本体部には、2つのローラ軸孔である第1ローラ軸孔及び第2ローラ軸孔が形成されており、第1ローラ軸孔及び第2ローラ軸孔の何れか一方の上方にのみ、本体部に対して直角に折り曲げられた板状の補助補強部が形成されていてもよい。近年、ドラフト速度(紡績速度)の高速化が顕著である。ドラフト速度の高速化に伴い、特にフロントローラの回転が高速化しており、フロントトップローラの安定した回転が課題となっている。フロントトップローラの回転が不安定になった場合、ドラフト品質(糸品質)が低下するおそれがある。本発明のサイドプレートは、補強部及び補助補強部が設けられているため、フロントトップローラを安定して回転させるための部品として、ドラフト装置の性能維持に寄与する。また、ドラフトローラの高速回転に伴い、たとえサイドプレートが摩耗したとしても、サイドプレートを容易に交換できる。
【0025】
本発明のドラフト装置用スプリングボックスは、本体部と、本体部に取り付けられる付勢部と、を備え、本体部は、付勢部が取り付けられると共に、ドラフト方向及びドラフト方向に直交する軸方向に直交するドラフト方向に延在する平面部と、平面部における軸方向の両端に設けられた一対の第1側板部と、平面部におけるドラフト方向の両端に設けられた一対の第2側板部と、を有し、第1側板部は、ドラフト方向及び軸方向の両方に直交する上下方向において、第2側板部よりも短い。
【0026】
このドラフト装置用スプリングボックスによれば、第1側板部に、ローラ軸孔を有するサイドプレートを着脱可能に取り付けることができる。第1側板部からサイドプレートを容易に取り外すことができる。よって、サイドプレートを容易に交換することができ、ドラフトローラのゲージ変更を容易に行うことができる。
【0027】
ドラフト装置用スプリングボックスにおいて、ドラフト装置用スプリングボックスの第1側板部には、下方に向けて開放された円弧状又は逆U字状の凹部が形成されていてもよい。この構成によれば、凹部にサイドプレートの例えば逆U字状の突出部を嵌め込むことより、サイドプレートの位置決めを行うことができる。
【0028】
ドラフト装置用スプリングボックスにおいて、第1側板部の凹部の深さは本体部に支持されるドラフトローラの半径よりも小さくてもよい。この構成によれば、サイドプレートを第1側板に嵌め込み易い。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ドラフトローラのゲージ変更を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエアジェット紡績機の正面図である。
【
図2】
図1に示すエアジェット紡績機の紡績ユニットの側面図である。
【
図6】ドラフト装置をドラフト方向下流側から見て示す分解斜視図である。
【
図7】スプリングボックス及び一対のサイドプレートを示す分解斜視図である。
【
図10】サイドプレートを斜め下方から見て示す斜視図である。
【
図12】第1ローラ軸孔の付近でXY平面に平行な面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
図1に示されるように、紡績機(エアジェット紡績機)1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。ある紡績ユニット2で糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、糸継台車3は、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2でパッケージPが満巻きになった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。第1エンドフレーム4には、紡績ユニット2で発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。
【0033】
第2エンドフレーム5には、紡績機1の各部に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して、空気を各部へと供給する空気供給部と、紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。第2エンドフレーム5には、機台制御装置100と、タッチパネル画面102と、入力キー104と、が設けられている。機台制御装置100は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。タッチパネル画面102は、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示することができる。オペレータがタッチパネル画面102に表示されるボタン又は入力キー104等を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
【0034】
図1及び
図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、エアジェット紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラ10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0035】
ドラフト装置6は、繊維束(スライバ)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、繊維束Sの走行方向において上流側から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有している。
【0036】
バックローラ対14は、駆動側のバックボトムローラ14a及び従動側のバックトップローラ14bを含む。バックボトムローラ14a及びバックトップローラ14bは、繊維束Sを走行させる走行経路を挟んで互いに対向する。サードローラ対15は、駆動側のサードボトムローラ15a及び従動側のサードトップローラ15bを含む。サードボトムローラ15a及びサードトップローラ15bは、繊維束Sを走行させる走行経路を挟んで互いに対向する。ミドルローラ対16は、駆動側のミドルボトムローラ16a及び従動側のミドルトップローラ16bを含む。ミドルボトムローラ16a及びミドルトップローラ16bは、繊維束Sを走行させる走行経路を挟んで互いに対向する。フロントローラ対17は、駆動側のフロントボトムローラ17a及び従動側のフロントトップローラ17bを含む。フロントボトムローラ17a及びフロントトップローラ17bは、繊維束Sを走行させる走行経路を挟んで互いに対向する。
【0037】
バックボトムローラ14a、サードボトムローラ15a、ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aは、紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより、下流側のローラほど速くなるように互いに異なる回転速度で回転させられる。ミドルボトムローラ16aに対しては、エプロンベルト18aが設けられている。ミドルトップローラ16bに対しては、エプロンベルト18bが設けられている。フロントボトムローラ17a及びミドルボトムローラ16aは、複数の紡績ユニット2に共通で設けられた、第2エンドフレーム5内の駆動モータにより駆動されてもよい。
【0038】
バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bは、ドラフトクレードル40に回転可能に支持されている。バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bのそれぞれは、バックボトムローラ14a、サードボトムローラ15a、ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aのそれぞれに所定圧力で接触させられて従動回転させられる。
【0039】
エアジェット紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Sに旋回空気流によって撚りを与えることで糸Yを生成する。エアジェット紡績装置7は、一定の速度で連続的に糸Yを紡出する。エアジェット紡績装置7は、詳細な説明及び図示は省略するが、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Sを、エアジェット紡績装置7の内部に形成される紡績室に案内する。旋回空気流発生ノズルは、繊維束Sが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Sを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、紡績された糸Yを紡績室からエアジェット紡績装置7の外部に案内する。
【0040】
糸監視装置8は、エアジェット紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置8は、糸切れ等も検出する。
【0041】
テンションセンサ9は、エアジェット紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、エアジェット紡績装置7への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッタにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0042】
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0043】
糸貯留装置11は、エアジェット紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yを貯留する。糸貯留装置11は、外周面に糸Yが巻かれることにより糸Yを貯留する糸貯留ローラを有している。糸貯留装置11は、エアジェット紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等にエアジェット紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流側の糸Yのテンションの変動がエアジェット紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。
【0044】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。これにより、各紡績ユニット2において、ボビンB又はパッケージPが巻取方向に回転させられる。各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25に設けられている。第2エンドフレーム5の駆動モータがシャフト25を巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0045】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸27aによって回動可能に支持されており、エアジェット紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、支軸28aによって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。糸継装置26は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。
【0046】
糸継台車3が糸継ぎ動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。このときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するようにクレードルアーム21がエアーシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ(図示省略)によってパッケージPが逆回転させられる。
【0047】
上記したように、本実施形態の紡績ユニット2(紡績機1)は、ドラフト装置6と、ドラフト装置6よりも下流側に配置されるエアジェット紡績装置7と、エアジェット紡績装置7よりも下流側に配置される巻取装置13と、を備える。以下、ドラフト装置6について、より詳細に説明する。
【0048】
ドラフト装置6において、複数のローラ対14,15,16及び17は、ケンス(図示省略)から供給された繊維束Sをドラフトしつつ上流側から下流側に走行させ、繊維束Fをエアジェット紡績装置7に供給する。以下、繊維束Sの走行経路に沿った方向を「ドラフト方向」という。ドラフト方向における上流側を単に「上流側」といい、ドラフト方向における下流側を単に「下流側」という。
【0049】
図3以降のいくつかの図において、説明の便宜のため、X軸、Y軸及びZ軸が示される。+Y軸方向はドラフト方向である。X軸方向は、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16b等(ドラフトローラ)の軸方向である。なお、本明細書において、「左右方向」は、X軸方向であり、ドラフト方向に直交する方向である。「上下方向」は、Z方向であり、ドラフト方向及び左右方向の両方に直交する方向である。X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する。
【0050】
各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aは、ベース45に回転可能に支持されている。
図3では、1つのベース45によって全てのボトムローラ14a,15a,16a及び17aを支持しているように図示されているが、ベース45は複数の部分から構成されていて、各部分が各ボトムローラを支持するように構成されていても良い。各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aは、下流側ほど速くなるように互いに異なる回転速度で駆動回転させられる。
【0051】
図1、
図3、
図4及び
図5に示されるように、ドラフト装置6は、ドラフトクレードル40と、ドラフトクレードル40に取り付けられるスプリングボックス50と、スプリングボックス50に着脱可能に取り付けられ、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82をそれぞれ有する一対のサイドプレート80,80と、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82を通るように配置されるフロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bと、を備える。すなわち、ドラフト装置6は、ドラフトローラとして、フロントトップローラ17bと、フロントトップローラ17bよりもドラフト方向において上流側に配置されるミドルトップローラ16bと、を備える。
【0052】
ドラフト装置6は、ドラフトクレードル40と、ドラフトクレードル40に対して着脱可能なスプリングボックス50と、スプリングボックス50に対して着脱可能な一対のサイドプレート80とを備えている。本実施形態のドラフトクレードル40では、各パーツの分解を容易に行うことができる。ドラフト装置6は、ドラフトクレードル40にスプリングボックス50を固定する例えば2つのスプリングボックス固定ビス97(第1固定部)を備える。例えば、スプリングボックス50の平面部54に形成された2つの貫通孔57(
図7参照)と、本体カバー41の取付板46に形成された2つの貫通孔46b(
図5参照)のそれぞれにスプリングボックス固定ビス97が挿入される。スプリングボックス固定ビス97とナット等を締結することにより、ドラフトクレードル40にスプリングボックス50が取り付けられ、固定される。スプリングボックス固定ビス97を取り外すことにより、ドラフトクレードル40からスプリングボックス50を容易に取り外すことができる。
【0053】
さらに、ドラフト装置6は、例えば、スプリングボックス50にサイドプレート80を固定する第2固定部として、第1固定ビス107及び第2固定ビス106(
図4及び
図5参照)を備える。第1固定ビス107及び第2固定ビス106を取り外すことにより、スプリングボックス50からサイドプレート80を容易に取り外すことができる。これにより、ドラフト装置6では、消耗品であるサイドプレート80の交換を容易に行うことができる。ドラフトクレードル40にスプリングボックス50が固定された状態でも、サイドプレート80を容易に取り外すことができる。サイドプレート80に関する構成は後に詳述する。なお、スプリングボックス50からサイドプレート80を取り外す前に、ミドルトップローラ16bとフロントトップローラ17b等をサイドプレート80から取り外しておく。
【0054】
フロントトップローラ17bの構成について、
図6を参照して説明する。
図6に示されるように、フロントトップローラ17bは、左右方向に延びる。フロントトップローラ17bは、フロントローラ軸体71と、フロントローラ軸体71の左右両端部に設けられた一対のゴムローラ71cとを有する。フロントローラ軸体71は、スプリングボックス50の下方に配置される中央の軸本体部71aと、軸本体部71aの左右の両端部に連続する一対の小径部71bとを含む。各小径部71bは、軸本体部71aの直径よりも小さい直径を有する。一対のゴムローラ71cは、サイドプレート80の外側に位置する。
【0055】
図1及び
図3に示されるように、ドラフトクレードル40は、隣り合う一対の紡績ユニット2のそれぞれが備えるドラフト装置6の各トップローラ14b,15b,16b及び17bを回転可能に支持する。例えば、2つの隣り合うゴムローラ71c(
図4参照)が1つのフロントローラ軸体71の軸方向両端にそれぞれ取り付けられている。2つの隣り合うゴムローラ61c(
図4参照)が1つのミドルローラ軸体61の軸方向両端にそれぞれ取り付けられている。フロントローラ軸体71は、スプリングボックス50の内側に設けられた板ばね59(
図5及び
図7参照)により保持される。ミドルローラ軸体61も、スプリングボックス50の内側に設けられた板ばね59(
図5参照)により保持される。バックトップローラ14bとサードトップローラ15bの各軸体も、スプリングボックス50の内側に設けられた板ばね58(
図5参照)により保持される。板ばねにより、各トップローラがスプリングボックス50から落下することが防止されている。
図3及び
図4に示されるように、ドラフトクレードル40は、本体カバー41と、本体カバー41から左右に張り出す取付板46とを有する。本体カバー41及び取付板46は板金によって構成されている。
【0056】
ドラフトクレードル40の上流側端部には、回動軸43が設けられている。回動軸43は、各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aに各トップローラ14b,15b,16b及び17bが接触する接触位置と、各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aから各トップローラ14b,15b,16b及び17bが離間する離間位置との間で、ドラフトクレードル40を回動可能に支持している。ドラフトクレードル40の下流側端部には、オペレータがドラフトクレードル40の回動操作を行う際に用いられるハンドル44が設けられている。ドラフトクレードル40が接触位置に回動させられると、ハンドル44の下端部に設けられたフック(図示せず)が、ベース45の下流側端部に設けられた固定ローラ(図示せず)に係合し、各トップローラ14b,15b,16b及び17bが各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aに所定圧力で接触する状態が保持される。
【0057】
ドラフト装置6では、異なる回転速度で回転するバックローラ対14、サードローラ対15、ミドルローラ対16及びフロントローラ対17により、繊維束Sがドラフトされ、繊維束Fとなってエアジェット紡績装置7へ送られる。ドラフトを適切に行うため、ドラフト装置6では、バックローラ対14、サードローラ対15、ミドルローラ対16及びフロントローラ対17のドラフト方向における間隔(すなわちゲージ)が適切に設定される必要がある。ドラフトローラのゲージは、紡績する繊維の種類及び/又はその他の条件に応じて異なり得る。
【0058】
ドラフト装置6では、ベース45において、バックボトムローラ14a及びサードボトムローラ15aの位置は、ドラフト方向に沿って調整可能である。ドラフトクレードル40において、バックトップローラ14b及びサードトップローラ15bの位置は、ドラフト方向に沿って調整可能である。これにより、例えばドラフトする繊維束Sの繊維長に応じて、隣り合うローラ対14,15間の距離、及び隣り合うローラ対15,16間の距離を調整することができる。ドラフトクレードル40において、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bの位置及び間隔は、サイドプレート80の種類を変更(交換)することにより、ドラフト方向に沿って調整可能である。
【0059】
続いて、
図4~
図7を参照して、ドラフトクレードル40に取り付けられるスプリングボックス50について説明する。
図7に示されるように、スプリングボックス50は、サイドプレート80を介してフロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bを支持する本体部51と、本体部51上に取り付けられ、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bを下方(図中の-Z軸方向)に付勢する付勢部52と、を備える。本体部51は、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bの軸方向及びドラフト方向に延在する平面部54を有している。本体部51は、全体として、軸方向及びドラフト方向に延在する直方体のような形状を有している。本体部51上の軸方向における中央において、付勢部52が上方に突出している。
【0060】
図4及び
図5に示されるように、本体カバー41内に付勢部52が収容され、取付板46に平面部54を固定することで、スプリングボックス50は、ドラフトクレードル40の内部に固定されている。本体部51及び付勢部52の筐体52aを含むスプリングボックス50の主要部分は、板金によって構成されている。
【0061】
図7に示されるように、付勢部52は、ドラフト方向に延在する筐体52aと、筐体52a内に収容されてドラフト方向に配列された複数の押圧ばね52bとを有する。各押圧ばね52bは例えば圧縮コイルばねであり、各押圧ばね52bには、押圧軸体52cが挿通されている。各押圧軸体52cの下部には、円形の受け板52fが固着されており、押圧ばね52bの下端が受け板52fを押圧している。各押圧軸体52cの下端部は、平面部54に形成された貫通孔52eを通っており、フロントローラ軸体71の軸方向中央部(
図6に示される軸本体部71aの中央部)及びミドルローラ軸体61の軸方向中央部に当接する。これにより、フロントトップローラ17b又はミドルトップローラ16bに対して押圧力が付与される。付勢部52は、各押圧軸体52cを介して、フロントトップローラ17b又はミドルトップローラ16bを下方に(フロントボトムローラ17a又はミドルボトムローラ16aに向けて)付勢するように構成されている。
【0062】
フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bに対する押圧力は、筐体52a上に露出するように設けられた調整部52hを回すことにより調整可能である。調整部52hは、ドラフトクレードル40にスプリングボックス50が取り付けられたままの状態で、本体カバー41(
図4参照)の外部からオペレータの手によって操作可能である。
【0063】
図4及び
図5に示されるように、ドラフトクレードル40には、上記したスプリングボックス50の他にも、サードトップローラ15b及びバックトップローラ14bをそれぞれ支持する2つのスプリングボックス90が取り付けられている。各スプリングボックス90の軸方向の両端には、一対のサイドプレート91が着脱可能に取り付けられている。一対のサイドプレート91にサードトップローラ15bが支持される。他の一対のサイドプレート91にバックトップローラ14bが支持される。
図4に示されるように、サードトップローラ15bを支持するスプリングボックス90は、スプリングボックス固定ビス95によって取付板46に固定されている。バックトップローラ14bを支持するスプリングボックス90は、スプリングボックス固定ビス94によって取付板46に固定されている。スプリングボックス固定ビス95,94は、ドラフト方向に延びるように形成された長孔46aに挿入され、各スプリングボックス固定ビス95,94とナット等を締結することにより、ドラフトクレードル40の取付板46に2つのスプリングボックス90が取り付けられ、固定される。スプリングボックス固定ビス95,94を長孔46a内で移動させることで、上記したバックトップローラ14b及びサードトップローラ15bのドラフト方向の位置調整が可能である。
【0064】
スプリングボックス50は2つのローラ軸体71,61を支持しており、各スプリングボックス90は1つのローラ軸体を支持しているという相違点はあるものの、各スプリングボックス90は、スプリングボックス50と略同様の構成を有している。すなわち、各スプリングボックス90は、本体カバー41に収容される付勢部92を有しており、サードトップローラ15b又はバックトップローラ14bを下方に付勢するように構成されている。
【0065】
続いて、
図5~
図11を参照して、スプリングボックス50に対するサイドプレート80の取付構造とサイドプレート80の構成について詳細に説明する。
図7に示されるように、スプリングボックス50は、平面部54における軸方向の両端に設けられた一対の第1側板部(側方支持部)55と、平面部54におけるドラフト方向の両端に設けられた一対の第2側板部56とを有する。1枚の板金を折り曲げ加工することにより、平面部54に連続するように、各第1側板部55及び各第2側板部56が形成されている。各第1側板部55及び各第2側板部56は、平面部54に対して垂直に折り曲げられている。
【0066】
図6及び
図7に示されるように、スプリングボックス50は、左右対称に形成されている。本体部51において、一対の第1側板部55は、YZ平面に平行な中央面に関して面対称をなしている。一対のサイドプレート80も、左右対称に配置されている。一対のサイドプレート80は、YZ平面に平行な中央面に関して面対称をなしている。一対のサイドプレート80は、対称な形状を有することを除いては、材質、大きさ及び形状において全て同一である。以下の説明においては、1つのサイドプレート80の構造についてのみ説明し、これによって両方のサイドプレート80の構造が理解され得る。なお、
図7及び
図8では、一対のサイドプレート80が示されているが、
図9~
図12では、
図7に示される奥側(左側)(
図6に示される左側)のサイドプレート80のみが示されている。
【0067】
図7、
図8及び
図9に示されるように、サイドプレート80は、スプリングボックス50の第1側板部55に固定される板状の本体部80Mを備えている。本体部80Mは、板金によって構成されている。本体部80Mは、ドラフトローラが通される2つのローラ軸孔である第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82を有する。
【0068】
第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82は、下方に開放された逆U字状をなしている。第1ローラ軸孔81にはフロントトップローラ17bのフロントローラ軸体71が配置され、第2ローラ軸孔82にはミドルトップローラ16bのミドルローラ軸体61が配置される。すなわち、フロントトップローラ17bのフロントローラ軸体71は、一対のサイドプレート80の第1ローラ軸孔81を通るように配置される。フロントローラ軸体71の小径部71bが、第1ローラ軸孔81を通る。ミドルトップローラ16bのミドルローラ軸体61は、一対のサイドプレート80の第2ローラ軸孔82を通るように配置される。ミドルローラ軸体61の小径部が、第2ローラ軸孔82を通る。本体部80Mは、さらに、台形状の切欠き83を有する。切欠き83は、第1ローラ軸孔81と第2ローラ軸孔82の間に配置されて、エプロンベルト18bのエプロンベルト支持体18cを受け入れる。
【0069】
本体部80Mは、スプリングボックス50の第1側板部55に重ね合わされる長方形状の平板部80aを有する。平板部80aに、上記の第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82が形成される。
【0070】
第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82において、上の円弧部(+Z方向における端部領域に位置する円弧部)の半径は、フロントトップローラ17bのフロントローラ軸体71及びミドルトップローラ16bのミドルローラ軸体61の半径に適合するように設定されている。円弧部に続く下の平行部の幅(ドラフト方向の距離)は、フロントローラ軸体71及びミドルローラ軸体61の直径に適合するように設定されている。上記した第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82における、円弧部の半径及び平行部の幅は、フロントローラ軸体71の小径部71bをちょうど収容できるように調整されている。軸本体部71aと小径部71bとの間の一対の段差部71eが、サイドプレート80の平板部80aによって軸方向の移動を規制される。これにより、フロントローラ軸体71の軸方向の位置決めが行われる。第2ローラ軸孔82及びミドルローラ軸体61についても、同様である。
【0071】
第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82に支持されたフロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bは、回転しながら、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82の周面に摺動する。フロントトップローラ17bの小径部71bが、第1ローラ軸孔81の周面に摺動する。ミドルトップローラ16bの小径部が、第2ローラ軸孔82の周面に摺動する。そのため、サイドプレート80は経時的に摩耗し得る部品であり、所定期間後に交換を要する。
【0072】
本体部80Mは、第1ローラ軸孔81の周りにおいて、平板部80aから突出するリブ状に形成された第1補強部84と、第2ローラ軸孔82の周りにおいて平板部80aから突出するリブ状に形成された第2補強部85とを有する。第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82は、例えば絞り加工等によって形成され得る。
【0073】
第1補強部84及び第2補強部85は、各サイドプレート80の強度を高めている。サイドプレート80がスプリングボックス50に取り付けられた状態で、第1補強部84及び第2補強部85は外側に突出する。「外側」は、左右方向における本体部51の外側すなわち付勢部52から遠い側を意味する。
図9に示されるように、平板部80aの表面80aaは、YZ平面に沿って延びる平坦面をなしている。
図10に示されるように、平板部80aの裏面80abは、YZ平面に沿って延びる平坦面をなしている。第1補強部84及び第2補強部85のそれぞれは、平板部80aと同一の厚みを有したまま、軸方向外側に突出する。第1補強部84及び第2補強部85のそれぞれは、逆U字状の突出部を有するように形成されている。これにより、第1ローラ軸孔81及び第2補強部85の周りにおいて、逆U字状の第1段差部84s及び第2段差部85sが形成されている。
【0074】
図11に示されるように、第1補強部84は、スプリングボックス50の第1側板部55に重ね合わされる平板部80aに対して、例えば2.4mm以上3.5mm以下突出している。第2補強部85は、スプリングボックス50の第1側板部55に重ね合わされる平板部80aに対して、例えば2.4mm以上3.5mm以下突出している。これらの数値は、
図11に示される突出長Tに相当する。突出長Tは、平板部80aの裏面80abと第1補強部84の第1リブ表面84a(又は第2補強部85の第2リブ表面85a)との間の距離である。
【0075】
図9及び
図10に示されるように、ミドルトップローラ16bを支持する第2ローラ軸孔82の上方にのみ、平板部80a(本体部80M)に対して直角に折り曲げられた第1補助補強部88が形成されている。第1補助補強部88は、XY平面に平行に延在しており、第2ローラ軸孔82及び切欠き83の上方にわたって形成されている。サイドプレート80に関して「上方」とは、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82の開放された側とは反対側である。
【0076】
また、平板部80aのドラフト方向の両端には、平板部80aに対して直角に折り曲げられた一対の第2補助補強部89が形成されている。上記の第1補助補強部88と一対の第2補助補強部89とは、いずれも平板部80aの内側に突出する。第1補強部84及び第2補強部85の突出方向と、第1補助補強部88及び第2補助補強部89の突出方向は、いずれも軸方向に平行であるが、互いに逆向きである。
【0077】
図8に示されるように、サイドプレート80の平板部80aには、第1ローラ軸孔81の中心軸線(第1ローラ軸線。第1ローラ軸孔81に配置されるフロントトップローラ17bの回転軸線)よりも下流側(図示右側)に、第1固定ビス107(
図4及び
図5参照)のための第1孔部87が形成されている。平板部80aには、第2ローラ軸孔82の中心軸線(第2ローラ軸線。第2ローラ軸孔82に配置されるミドルトップローラ16bの回転軸線)よりも下流側(図示右側)に、第2固定ビス106(
図4及び
図5参照)のための第2孔部86が形成されている。
【0078】
第1孔部87は、平板部80aの上部であって下流側の隅部に形成されている。第2孔部86は、平板部80aの上部であって第1ローラ軸孔81と第2ローラ軸孔82の中間部(切欠き83の上方)に形成されている。
図8から明らかに読み取れるように、第1ローラ軸孔81の中心軸線と第1孔部87との間の第1距離は、第2ローラ軸孔82の中心軸線と第2孔部86との間の第2距離よりも短い。フロントトップローラ17bの回転速度は、ミドルトップローラ16bの回転速度よりも格段に大きいので、フロントトップローラ17bを適切に支持するべく、第1孔部87の位置すなわち第1固定ビス107による固定位置が、第1ローラ軸孔81に近接している。
【0079】
図7に戻り、スプリングボックス50の第1側板部55について説明する。第1側板部55には、上記した一対のサイドプレート80が取り付けられるため、第1側板部55の上下方向の長さは制限されている。言い換えれば、第1側板部55の大きさは、サイドプレート80を保持するのに必要とされる最小の強度等を考慮して、決定される。これにより、スプリングボックス50の軽量化が図られている。例えば、第1側板部55は、上下方向(図中のZ方向)において、第2側板部56よりも短い。
【0080】
第1側板部55には、下方に向けて開放された第1凹部64及び第2凹部65が形成されている。第1凹部64及び第2凹部65のそれぞれは、下方に向けて開放された円弧状をなしている。第1凹部64及び第2凹部65の深さは、それぞれ、フロントローラ軸体71のゴムローラ71cの半径及びミドルローラ軸体61のゴムローラ61c(
図4参照)の半径よりも小さい。サイドプレート80が取り付けられる第1側板部55に第1凹部64及び第2凹部65が形成されることで、サイドプレート80の第1補強部84及び第2補強部85が第1凹部64及び第2凹部65にそれぞれフィットし、サイドプレート80の取り付け安定性が向上している。
【0081】
第1側板部55には、サイドプレート80の第1孔部87に対応して第1貫通孔67が形成されており、第2孔部86に対応して第2貫通孔66が形成されている。サイドプレート80の平板部80aは、第1側板部55の裏面55b(すなわち第1側板部55の内面側)(
図12参照)に重ね合わされる。第1孔部87が第1貫通孔67に対して軸方向に一直線に整列した状態で、第1固定ビス107が挿入され、第2孔部86が第2貫通孔66に対して軸方向に一直線に整列した状態で、第2固定ビス106が挿入され、サイドプレート80がスプリングボックス50に固定される。第1貫通孔67及び第2貫通孔66の内部に、例えば雌ねじが形成されており、第1固定ビス107及び第2固定ビス106のそれぞれが、第1貫通孔67及び第2貫通孔66に螺入されることでサイドプレート80が締結及び固定されてもよい。第1固定ビス107及び第2固定ビス106のそれぞれが外側からねじ込まれることで、サイドプレート80を容易に取り付けることができる。
【0082】
本実施形態のドラフト装置6によれば、ドラフトクレードル40に取り付けられるスプリングボックス50に対して、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82を有するサイドプレート80が着脱可能に取り付けられている。スプリングボックス50は、スプリングボックス固定ビス97の固定を解除することにより、ドラフトクレードル40から容易に取り外すことができる。サイドプレート80は、第1固定ビス107及び第2固定ビス106の固定を解除することにより、スプリングボックス50から容易に取り外すことができる。サイドプレート80を取り外す際、スプリングボックス50をドラフトクレードル40から取り外す必要はない。よって、サイドプレート80を容易に交換することができ、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bのゲージの変更を容易に行うことができる。経時的に摩耗し易いローラ軸孔を有する部品(すなわちサイドプレート80)を容易に交換することができる。このドラフト装置6では、スプリングボックス50によるフロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16b(ドラフトローラ)の加圧が有効な範囲であれば、従来のように複数の部材をドラフトクレードル40から取り外すことなく、サイドプレート80のみを交換することにより、ゲージ変更を完了させることができる。
【0083】
また、特に、近年は、ドラフト装置6においてドラフトする繊維束Sの種類及び/又はドラフト比のバリエーションの数等も増加傾向にある。また、ドラフト速度の高速化に伴うドラフト装置6の生産性の向上から、ドラフト装置6での仕掛け替えに伴うフロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16b(ドラフトローラ)のゲージ変更の頻度も高くなっている。これらの近年の要求に対応するために、本実施形態のドラフト装置6では、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16b(ドラフトローラ)のゲージ変更を容易に行うことができるようになっている。これにより、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16b(ドラフトローラ)の細やかな位置設定を行うことにより、ドラフト装置6によるドラフト精度を向上できる。
【0084】
サイドプレート80が第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82を有する構成によれば、フロントトップローラ17bとミドルトップローラ16bの間のゲージの変更をサイドプレート80の交換により容易に行うことができる。
【0085】
第1固定ビス107のための第1孔部87がフロントトップローラ17bのローラ軸線(第1ローラ軸線)よりも下流側に形成され、第2固定ビス106のための第2孔部86がミドルトップローラ16bのローラ軸線(第2ローラ軸線)よりも下流側に形成されている。これにより、2つの孔部の間の距離が短くなり過ぎたり、孔部同士が干渉したりすることが回避され、第1孔部87及び第2孔部86の位置の自由度が高められる。
【0086】
第1孔部87と第1ローラ軸線との間の第1距離は、第2孔部86と第2ローラ軸線との間の第2距離よりも短い。スプリングボックス50にサイドプレート80を取り付けた際のフロントトップローラ17bの位置決めを、フロントトップローラ17bに近い位置で行うことにより、フロントトップローラ17bの位置決め精度を向上することができる。
【0087】
サイドプレート80は、第1ローラ軸孔81の周りに形成された第1補強部84を備えている。サイドプレート80は、第2ローラ軸孔82の周りに形成された第2補強部85を備えている。これにより、サイドプレート80の強度が向上する。第1ローラ軸孔81にはフロントトップローラ17bが接触して回転方向において摺動し、第2ローラ軸孔82にはミドルトップローラ16bが接触して回転方向において摺動するが、これらの摺動に対しても耐久性が高められる。
【0088】
一対のサイドプレート80は左右対称に配置されており、第1補強部84及び第2補強部85が外側に突出するように配置されている。この構成によれば、スプリングボックス50の左右両側において第1補強部84及び第2補強部85が外側に突出するので、サイドプレート80の強度が高められている。
【0089】
第1補強部84及び第2補強部85は逆U字状の突出部を有するように形成されている。スプリングボックス50の第1側板部55のそれぞれには円弧状の第1凹部64及び第2凹部65が形成されている。この構成によれば、第1補強部84及び第2補強部85と第1凹部64及び第2凹部65により、サイドプレート80の位置決めを行うことができる。第1補強部84と第1凹部64の接触領域、及び、第2補強部85と第2凹部65の接触領域は、何れも、ねじとねじ孔等による位置決めよりも広範囲に及ぶため、サイドプレート80の位置決めを精度良く行うことができる。
【0090】
上記実施形態によれば、紡績ユニット2(紡績機1)において、ドラフトローラのゲージ変更を容易に行うことができる。したがって、例えば、ゲージ変更に伴う作業の時間を短縮することができるため、ゲージ変更に伴う紡績ユニット2(紡績機1)の生産性の低下を回避できる。また、上記のように、ドラフト装置6において細やかなゲージ変更を行うことができるため、紡績ユニット2(紡績機1)で生成される糸の品質を良化させることができる。
【0091】
本実施形態のサイドプレート80によれば、スプリングボックス50からサイドプレート80を容易に取り外すことができる。サイドプレート80を容易に交換することができ、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bの間のゲージの変更を容易に行うことができる。また、
図12に示されるように、第1段差部84s及び第2段差部85sにより、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82の周縁部が第1側板部55の位置に揃っている。すなわち、下方から見て、第2リブ表面85aが第1側板部55の表面55aに一致しており、第2リブ裏面85bが第1側板部55の裏面55bに一致している。
図12には図示されないが、第1リブ表面84aも第1側板部55の表面55aに一致しており、第1リブ裏面84b(
図11参照)が第1側板部55の裏面55bに一致している。フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bを第1側板部55基準で位置決めする場合と、サイドプレート80の第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82基準で位置決めする場合とで、軸方向の壁面の位置は変わらない。よって、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bの軸方向の位置決めも容易である。
【0092】
第1補強部84及び第2補強部85により、サイドプレート80の強度が向上する。第1ローラ軸孔81にはフロントトップローラ17bが接触して回転方向において摺動し、第2ローラ軸孔82にはミドルトップローラ16bが接触して回転方向において摺動するが、これらの摺動に対しても耐久性が高められる。
【0093】
リブ状に形成された第1補強部84及び第2補強部85は、平板部80aと同等の厚みをもって形成される。すなわち、厚みを増大させる手法で補強部が形成されるのではない。サイドプレート80によってフロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bをしっかりと支持することができる。サイドプレート80、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bをドラフト装置6に取り付けた際にもドラフトクレードル40(ドラフト装置6)が重くなり過ぎない。よって、操作性が低下しない。
【0094】
サイドプレート80において、第1ローラ軸孔81は、スプリングボックス50の第1側板部55に重ね合わされる平板部80aに対して、2.4mm以上3.5mm以下突出している。第2ローラ軸孔82は、スプリングボックス50の第1側板部55に重ね合わされる平板部80aに対して、2.4mm以上3.5mm以下突出している。よって、サイドプレート80全体を大型化することなく、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82の周囲の強度を向上することができる。
【0095】
第1補強部84及び第2補強部85は逆U字状に形成されるので、スプリングボックス50への取付けの際、サイドプレート80を位置決めし易い。
【0096】
サイドプレート80には、直角に折り曲げられた板状の第1補助補強部88が形成されている。近年、ドラフト速度(紡績速度)の高速化が顕著である。ドラフト速度の高速化に伴い、特にフロントトップローラ17bの回転が高速化しており、フロントトップローラ17bの安定した回転が課題となっている。フロントトップローラ17bの回転が不安定になった場合、ドラフト品質(糸品質)が低下するおそれがある。本実施形態のサイドプレート80は、フロントトップローラ17bを安定して回転させるための部品として、ドラフト装置6の性能維持に寄与する。たとえサイドプレート80が摩耗したとしても、サイドプレート80を容易に交換できる。
【0097】
本実施形態のスプリングボックス50によれば、第1側板部55に、第1ローラ軸孔81及び第2ローラ軸孔82を有するサイドプレート80を着脱可能に取り付けることができる。第1側板部55からサイドプレート80を容易に取り外すことができる。よって、サイドプレート80を容易に交換することができ、フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16bの間のゲージの変更を容易に行うことができる。
【0098】
第1凹部64及び第2凹部65にサイドプレート80の突出部を嵌め込むことより、サイドプレート80の位置決めを行うことができる。
【0099】
第1凹部64の深さはフロントトップローラ17bの半径よりも小さく、第2凹部65の深さはミドルトップローラ16bの半径よりも小さい。この構成によれば、サイドプレート80を第1側板部55に嵌め込み易い。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。
【0101】
エアジェット紡績装置は、上記の構成に代えて、互いに反対方向に繊維束に撚りを与える一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。
【0102】
紡績ユニット2では、糸貯留装置11がエアジェット紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラとでエアジェット紡績装置7から糸Yが引き出されてもよい。デリベリローラとニップローラとでエアジェット紡績装置7から糸Yを引き出す場合、糸貯留装置11の代わりに、吸引空気流を用いたスラックチューブ及び/又は機械的なコンペンセータ等を設けてもよい。
【0103】
ドラフトクレードル40には、トップローラを清掃する清掃装置等が取り付けられていてもよい。フロントローラ軸体71は、
図6に示すような段差部を有しておらず、外径が一定のローラであってもよい。
【0104】
上記実施形態では、機台高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていた。しかし、下側で供給された糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
【0105】
上記実施形態では、ドラフト装置6が、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を備える形態を一例に説明した。しかし、バックローラ対14よりも上流側にローラ対が1つ以上設けられていてもよい。その場合には、ドラフトクレードル40が、例えば、上流側のローラ対を含む全てのローラ対のトップローラを支持する。
【0106】
上記実施形態では、ドラフト装置6のボトムローラの少なくとも一つ及びトラバースガイド23が、第2エンドフレーム5からの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動される形態を一例に説明した。しかし、紡績ユニット2の各部(例えば、ドラフト装置、紡績装置、巻取装置等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
【0107】
上記実施形態では、エアジェット紡績装置7が糸Yを連続的に一定速度で紡出する形態を一例に説明した。しかし、エアジェット紡績装置7が糸Yを連続的に紡出する速度は一定でなくてもよい。
【0108】
上記実施形態では、糸継装置26により2つの糸端を接続する形態を一例に説明した。しかし、糸継装置26によって糸端を接続する構成に代えて、パッケージPからの糸Yをエアジェット紡績装置7に挿入し、ドラフト装置6のドラフト動作とエアジェット紡績装置7の紡績動作を開始することにより、エアジェット紡績装置7からの糸YとパッケージPの糸Yとを接続(ピーシング)してもよい。何れの場合においても、糸継台車3を省略し、各紡績ユニット2が糸継ぎに必要な装置を備えていてもよい。
【0109】
上記実施形態では、糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8よりも下流側に配置されている形態を一例に説明した。しかし、テンションセンサ9が糸監視装置8の上流側に配置されてもよい。ユニットコントローラ10は、1つの紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12、テンションセンサ9及び糸監視装置8は、省略されてもよい。糸Yにワックスを付与しない場合には、ワキシング装置12を省略せずに、ワキシング装置12からワックスのみを取り外してもよい。
【0110】
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージの場合、糸Yのトラバースにより糸Yの弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置11で吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【0111】
上記実施形態では、スプリングボックス及びサイドプレートが2つのドラフトローラ(フロントトップローラ17b及びミドルトップローラ16b)を支持する形態を一例に説明した。しかし、スプリングボックス及びサイドプレートが1つのみのドラフトローラを支持してもよい。その場合に、フロントトップローラ17bのみがスプリングボックス及びサイドプレートに支持されてもよい。
【0112】
サイドプレートの補強部は、平板部から突出するリブ状に形成される場合に限られず、板厚を厚くすることによって形成されてもよい。サイドプレートの補強部が、平板部とは異なる部材(別部材)から形成されてもよい。
【0113】
上記実施形態では、一対のサイドプレートが左右対称である形態を一例に説明した。しかし、左右対称ではなく、同一形状の一対のサイドプレートが採用されてもよい。その場合、左右のサイドプレートとして共通のパーツが用いられることで、パーツの種類が削減される。なお、サイドプレートが共通化される場合、サイドプレートに表裏の区別がないことが望ましい。
【0114】
上記実施形態では、スプリングボックス50の第1側板部55に円弧状の第1凹部64及び第2凹部65が形成される形態を一例に説明した。しかし、第1凹部64の深さが、フロントトップローラ17bのゴムローラ71cの半径よりも大きい、且つ/或いは第2凹部65の深さが、ミドルトップローラ16bのゴムローラの半径より大きくてもよい。第1凹部64及び第2凹部65が、円弧に連続する平行な縁部を含む逆U字状をなしてもよい。この場合でも、第1凹部64に第1補強部84が嵌まり込み、第2凹部65に第2補強部85が嵌まり込む。
【0115】
段差部は、逆U字状の補強部として形成される形態に限られず、側板部の下端縁に沿って(下端に平行に)直線状に形成されて平板部から突出する形態であってもよい。その場合に、段差部が、一直線のリブ状に形成されてもよい。
【0116】
サイドプレートがドラフト方向において隣接配置された2つのドラフトローラを支持する形態において、補助補強部は、第2軸孔の上方にのみ形成されてもよいし、第1軸孔及び第2軸孔の上方にわたって形成されてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1…紡績機(エアジェット紡績機)、6…ドラフト装置、7…エアジェット紡績装置、13…巻取装置、14…バックローラ対、15…サードローラ対、16…ミドルローラ対、16b…ミドルトップローラ(ドラフトローラ)、17…フロントローラ対、17b…フロントトップローラ(ドラフトローラ)、40…ドラフトクレードル、50…スプリングボックス(ドラフト装置用スプリングボックス)、51…本体部、52…付勢部、54…平面部、55…第1側板部(側方支持部)、56…第2側板部、64…第1凹部、65…第2凹部、80…サイドプレート(ドラフト装置用サイドプレート)、80a…平板部、80aa…表面、80ab…裏面、80M…本体部、81…第1ローラ軸孔、82…第2ローラ軸孔、84…第1補強部、84s…第1段差部、85…第2補強部、85s…第2段差部、88…第1補助補強部、89…第2補助補強部、97…スプリングボックス固定ビス(第1固定部)、106…第2固定ビス(第2固定部)、107…第1固定ビス(第2固定部)、S…スライバ(繊維束)、F…繊維束、Y…糸、P…パッケージ。