(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188578
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20221214BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20221214BHJP
【FI】
H01L23/12 Q
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096729
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】徳舛 彰
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA02
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770QA01
5H770QA08
(57)【要約】
【課題】材料や製造のコストアップを抑えつつも、沿面距離に頼らずに放電を抑制する。
【解決手段】第1導電部Aは、第1表層部A1と、基板49の内部において第1表層部A1とは異なる層を構成する第1内層部A2~A4とを有する。第2導電部Bは、第1表層部A1と沿面距離Gをおいて対峙する第2表層部B1と、基板49の内部において第2表層部B1とは異なる層を構成する第2内層部B2~B4とを有する。
電子機器40には、次に示す第1突出構成と第2突出構成との2つの突出構造のうちの少なくともいずれか一方の突出構成が設けられている。第1突出構成は、第1内層部A2~A4が、第1表層部A1よりも第2導電部側Dbに突出する導電突出部ρを有する構成である。第2突出構成は、第2内層部B2~B4が、第2表層部B1よりも第1導電部側Daに突出する導電突出部を有する構成である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体の基板(49)と、前記基板に搭載されている回路(41~46,48)とを有し、
前記回路は、所定の積層方向(Z)に複数の層を有する第1導電部(A)と、前記第1導電部よりも前記積層方向に交差する方向(Db)側において前記積層方向に複数の層を有し、前記第1導電部とは異なる電位になる第2導電部(B)とを有し、
前記第1導電部は、前記積層方向の端の層を構成する第1表層部(A1)と、前記基板の内部において前記第1表層部とは異なる層を構成する第1内層部(A2~A4)とを有し、
前記第2導電部は、前記積層方向の端の層を構成すると共に前記第1表層部と沿面距離(G)をおいて対峙する第2表層部(B1)と、前記基板の内部において前記第2表層部とは異なる層を構成する第2内層部(B2~B4)とを有する、電子機器(40)において、
前記積層方向に見た平面視で、前記第1内層部が、前記第1表層部よりも前記第2導電部側(Db)に突出する導電突出部(ρ)を有する第1突出構成と、
前記平面視で、前記第2内層部が、前記第2表層部よりも前記第1導電部側(Da)に突出する導電突出部(ρ)を有する第2突出構成と、
の2つの突出構成のうちの少なくともいずれか一方の突出構成が設けられている、電子機器。
【請求項2】
前記第1表層部と前記第2表層部とが前記沿面距離の間隔で対峙している対峙区間の全部のうちの半分以上の区間において、前記2つの突出構成のうちの少なくともいずれか一方の突出構成が設けられている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記対峙区間の全部において、前記2つの突出構成のうちの少なくともいずれか一方の突出構成が設けられている、請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1突出構成は、前記第1表層部に最も隣接する層の前記第1内層部(A2)が、前記導電突出部を有する構成であり、
前記第2突出構成は、前記第2表層部に最も隣接する層の前記第2内層部(B2)が、前記導電突出部を有する構成である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記回路は、インバータ(30)のスイッチ(31~36)を駆動する駆動回路(41~46)と、前記駆動回路を制御する制御回路(48)とを含み、
前記第1導電部は、前記駆動回路の一部であり、前記第2導電部は、前記制御回路の一部である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記回路は、インバータ(30)の複数のスイッチ(31~36)を駆動する複数の駆動回路(41~46)を含み、
前記第1導電部は、所定の前記駆動回路の一部であり、前記第2導電部は、前記所定の駆動回路とは別の前記駆動回路の一部である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1突出構成は、前記平面視で前記導電突出部が、前記第1表層部よりも前記第2導電部側に50μm以上突出する構成であり、
前記第2突出構成は、前記平面視で前記導電突出部が、前記第2表層部よりも前記第1導電部側に50μm以上突出する構成である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第1突出構成は、前記平面視で前記導電突出部が、前記第1表層部よりも前記第2導電部側に前記沿面距離の1割以下の範囲内で突出する構成であり、
前記第2突出構成は、前記平面視で前記導電突出部が、前記第2表層部よりも前記第1導電部側に前記沿面距離の1割以下の範囲内で突出する構成である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第1突出構成は、所定の層の前記第1内層部(A2)が、前記第1表層部よりも前記第2導電部側に所定の第1突出長だけ突出する前記導電突出部を有し、当該所定の層とは異なる層の前記第1内層部(A3)が、前記第1表層部よりも前記第2導電部側に前記第1突出長とは異なる突出長だけ突出する前記導電突出部を有する構成であり、
前記第2突出構成は、所定の層の前記第2内層部(B2)が、前記第2表層部よりも前記第1導電部側に所定の第2突出長だけ突出する前記導電突出部を有し、当該所定の層とは異なる層の前記第2内層部(B3)が、前記第2表層部よりも前記第1導電部側に前記第2突出長とは異なる突出長だけ突出する前記導電突出部を有する構成である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記基板の内部における前記第1内層部よりも前記第2導電部側に、前記第1内層部及び前記第2内層部のいずれからも絶縁されている導電体の浮遊導電部(φ)を有する第1浮遊構成と、
前記基板の内部における前記第2内層部よりも前記第1導電部側に、前記第1内層部及び前記第2内層部のいずれからも絶縁されている導電体の浮遊導電部を有する第2浮遊構成と、
の2つの浮遊構成のうちの少なくともいずれか一方の浮遊構成が設けられている、請求項1~9のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項11】
絶縁体の基板(49)と、前記基板に搭載されている回路(41~46,48)とを有し、
前記回路は、所定の積層方向(Z)に複数の層を有する第1導電部(A)と、前記第1導電部よりも前記積層方向に交差する方向(Db)側において前記積層方向に複数の層を有し、前記第1導電部とは異なる電位になる第2導電部(B)とを有し、
前記第1導電部は、前記積層方向の端の層を構成する第1表層部(A1)と、前記基板の内部において前記第1表層部とは異なる層を構成する第1内層部(A2~A4)とを有し、
前記第2導電部は、前記積層方向の端の層を構成すると共に前記第1表層部と沿面距離(G)をおいて対峙する第2表層部(B1)と、前記基板の内部において前記第2表層部とは異なる層を構成する第2内層部(B2~B4)とを有する、電子機器(40)において、
前記基板の内部における前記第1内層部よりも前記第2導電部側に、前記第1内層部及び前記第2内層部のいずれからも絶縁されている導電体の浮遊導電部(φ)を有する第1浮遊構成と、
前記基板の内部における前記第2内層部よりも前記第1導電部側に、前記第1内層部及び前記第2内層部のいずれからも絶縁されている導電体の浮遊導電部を有する第2浮遊構成と、
の2つの浮遊構成のうちの少なくともいずれか一方の浮遊構成が設けられている、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体の基板とそれに搭載されている回路とを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような電子機器の中には、回路が、所定の第1導電部を有する共に、その隣に第1導電部とは異なる電位になる第2導電部を有するものがある。この場合には、第1導電部と第2導電部との間に、放電を防止するための沿面距離を確保する必要がある。しかしながら、基板の縮小化等の目的からは、このような沿面距離はなるべく小さく抑えたい。
【0003】
そのため、電子機器の中には、沿面距離に頼らずに放電を抑制するために、第1導電部及び第2導電部のうちの少なくとも一方を絶縁体の樹脂により封止しているものがある。そして、このような技術を示す文献としては、次の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術によれば、封止樹脂により放電空間を埋めることにより、沿面距離に頼らずに放電を抑制することができる。そのため、基板面積を小さくすることができる。
【0006】
しかしながら、このように封止樹脂により導電体を封止する場合、封止樹脂が必要となるため、まず、材料費の面でコストアップに繋がる。さらに、製造工程において、流動状態の封止樹脂を溜めておくための凹部が必要となる。そのため、この凹部を設ける製造費の面でもコストアップに繋がる。さらに、この凹部に封止樹脂を流し込んでから固化させる工程が必要になる。そのため、この工程を行う製造費の面でもコストアップに繋がる。さらに、基板材料とは異なる樹脂で導電体を封止するため、経年劣化による樹脂剥離による絶縁性低下が懸念される。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、材料や製造のコストアップを抑え、且つ経年劣化による絶縁性低下の懸念を抑えつつも、沿面距離に頼らずに放電を抑制することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子機器は、絶縁体の基板と、前記基板に搭載されている回路とを有する。前記回路は、所定の積層方向に複数の層を有する第1導電部と、前記第1導電部よりも前記積層方向に交差する方向側において前記積層方向に複数の層を有し、前記第1導電部とは異なる電位になる第2導電部とを有する。
【0009】
前記第1導電部は、前記積層方向の端の層を構成する第1表層部と、前記基板の内部において前記第1表層部とは異なる層を構成する第1内層部とを有する。前記第2導電部は、前記積層方向の端の層を構成すると共に前記第1表層部と沿面距離をおいて対峙する第2表層部と、前記基板の内部において前記第2表層部とは異なる層を構成する第2内層部とを有する。
【0010】
前記電子機器には、次に示す第1突出構成と第2突出構成との2つの突出構成のうちの少なくともいずれか一方の突出構成が設けられている。前記第1突出構成は、前記積層方向に見た平面視で、前記第1内層部が、前記第1表層部よりも前記第2導電部側に突出する導電突出部を有する構成である。そして、前記第2突出構成は、前記平面視で、前記第2内層部が、前記第2表層部よりも前記第1導電部側に突出する導電突出部を有する構成である。
【0011】
本発明によれば、第1内層部及び第2内層部のうちの少なくとも一方が、他方に向けて突出する導電突出部を有する。その導電突出部により、第1表層部と第2表層部との間の電気力線を積層方向に分散させて、放電を抑制できること、すなわち放電開始電圧を高くできることを本発明者等は見出した。そのため、本発明によれば、沿面距離に頼らずに、導電突出部により放電を抑制できる。
【0012】
しかも、この構成によれば、封止樹脂等を用いることなく、回路構成のみで放電を抑制できるので、材料や製造のコストアップについても抑えることができる。しかも、導電体を封止樹脂等で封止する必要がないので、経年劣化による樹脂剥離による絶縁性低下の懸念もない。
【0013】
以上、本発明によれば、材料や製造のコストアップを抑え、且つ経年劣化による絶縁性低下の懸念を抑えつつも、沿面距離に頼らずに放電を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の電子機器及びその周辺を示す回路図
【
図3】
図2のIII-III線の断面を示す正面断面図
【
図4】比較例の電子機器とその電気力線とを示す正面断面図
【
図5】本実施形態の電子機器とその電気力線とを示す正面断面図
【
図6】導電突出部の突出長と放電開始電圧等との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の電子機器であるスイッチ駆動装置40及びその周辺を示す回路図である。車両には、メインバッテリ10とインバータ30とスイッチ駆動装置40と3相コイル50とが搭載されている。以下では、電気的に接続されていることを、単に「接続」されているという。
【0017】
メインバッテリ10は、複数のセル電池11の直列接続体を有する。各セル電池11は、リチウムイオン電池等である。メインバッテリ10の正極には、正極配線30pが接続され、メインバッテリ10の負極には、負極配線30nが接続されている。正極配線30pと負極配線30nとは、平滑コンデンサ20を介して接続されている。以下では、正極配線30pの電位を「正極電位Vp」といい、負極配線30nの電位を「負極電位Vn」という。
【0018】
インバータ30は、3つの上スイッチ31~33と3つの下スイッチ34~36とからなる計6つのスイッチ31~36を有する。3つの上スイッチ31~33は、U相上スイッチ31とV相上スイッチ32とW相上スイッチ33とからなる。他方、3つの下スイッチ34~36は、U相下スイッチ34とV相下スイッチ35とW相下スイッチ36とからなる。
【0019】
これら6つの各スイッチ31~36は、IGBTやMOSFETやバイポーラトランジスタ等の半導体スイッチ(図ではIGBT)であり、正極端子(図ではコレクタ端子)と、負極端子(図ではエミッタ端子)と、制御端子(図ではゲート端子)とを有する。
【0020】
3つの各上スイッチ31~33の正極端子には、正極配線30pが接続されている。そして、3つの各下スイッチ34~36の負極端子とには、負極配線30nが接続されている。
【0021】
3相コイル50は、U相コイル51とV相コイル52とW相コイル53との3つのコイル51~53を有する。これらの3つのコイル51~53は、本実施形態ではスター結線されている。つまり、U相コイル51の一端とV相コイル52の一端とW相コイル53の一端とが中性点Cで互いに接続されている。ただし、これに代えて、例えばデルタ結線等がなされていてもよい。
【0022】
U相コイル51における中性点Cとは反対側の端は、U相配線30uを介して、U相上スイッチ31の負極端子とU相下スイッチ34の正極端子とに接続されている。V相コイル52における中性点Cとは反対側の端は、V相配線30vを介して、V相上スイッチ32の負極端子とV相下スイッチ35の正極端子とに接続されている。W相コイル53における中性点Cとは反対側の端は、W相配線30wを介して、W相上スイッチ33の負極端子とW相下スイッチ36の正極端子とに接続されている。
【0023】
以下では、U相配線30uの電位を「U相電位Vu」といい、V相配線30vの電位を「V相電位Vv」といい、W相配線30wの電位を「W相電位Vw」という。
【0024】
スイッチ駆動装置40は、3つの上駆動回路41~43と3つの下駆動回路44~46とからなる計6つの駆動回路41~46を有する。3つの上駆動回路41~43は、U相上駆動回路41とV相上駆動回路42とW相上駆動回路43とからなる。他方、3つの下駆動回路44~46は、U相下駆動回路44とV相下駆動回路45とW相下駆動回路46とからなる。
【0025】
6つの各駆動回路41~46は、それぞれ、負極側の端子である基準電位端子と、正極側の端子である出力端子とを有する。U相上駆動回路41は、基準電位端子がU相配線30uに接続され、出力端子がU相上スイッチ31の制御端子に接続されている。V相上駆動回路42は、基準電位端子がV相配線30vに接続され、出力端子がV相上スイッチ32の制御端子に接続されている。W相上駆動回路43は、基準電位端子がW相配線30wに接続され、出力端子がW相上スイッチ33の制御端子に接続されている。以上より、U相上駆動回路41の基準電位はU相電位Vuであり、V相上駆動回路42の基準電位はV相電位Vvであり、W相上駆動回路43の基準電位は、W相電位Vwである。
【0026】
U相下駆動回路44は、基準電位端子が負極配線30nに接続され、出力端子がU相下スイッチ34の制御端子に接続されている。V相下駆動回路45は、基準電位端子が負極配線30nに接続され、出力端子がV相下スイッチ35の制御端子に接続されている。W相下駆動回路46は、基準電位端子が負極配線30nに接続され、出力端子がW相下スイッチ36の制御端子に接続されている。以上より、3つの各下駆動回路44~46の基準電位は、いずれも負極電位Vnである。
【0027】
スイッチ駆動装置40は、これら6つの駆動回路41~46を制御する制御回路48を有する。制御回路48は、補機バッテリ19から給電される。制御回路48は、6つの駆動回路41~46を介して、6つのスイッチ31~36をそれぞれDUTY制御することにより、3相コイル50に3相交流電流が流れるように制御する。そのようなDUTY制御自体については、公知のものでよいため、その詳細な説明は省略する。
【0028】
そのDUTY制御では、U相上スイッチ31をONにするタイミングでU相下スイッチ34をOFFにし、U相上スイッチ31をOFFにするタイミングでU相下スイッチ34をONにする。以下では、U相上スイッチ31がONでU相下スイッチ34がOFFの状態を「U相ON状態」といい、「U相上スイッチ31がOFFでU相下スイッチ34がONの状態を「U相OFF状態」という。
【0029】
同様に、V相上スイッチ32がONでV相下スイッチ35がOFFの状態を「V相ON状態」といい、V相上スイッチ32がOFFでV相下スイッチ35がONの状態を「V相OFF状態」という。同様に、W相上スイッチ33がONでW相下スイッチ36がOFFの状態を「W相ON状態」といい、W相上スイッチ33がOFFでW相下スイッチ36がONの状態を「W相OFF状態」という。
【0030】
前述の回路構成より、U相電位Vuは、U相ON状態の時には正極電位Vpになり、U相OFF状態の時には負極電位Vnになる。同様に、V相電位Vvは、V相ON状態の時には正極電位Vpになり、V相OFF状態の時には負極電位Vnになる。同様に、W相電位Vwは、W相ON状態の時には正極電位Vpになり、W相OFF状態の時には負極電位Vnになる。
【0031】
そして、U相ON状態からU相OFF状態に切り替わるタイミングと、V相ON状態からV相OFF状態に切り替わるタイミングと、W相ON状態からW相OFF状態に切り替わるタイミングとは、互いに異なる。そのため、3つの各上駆動回路41~43の基準電位(Vu,Vv,Vw)は、他の2つ各上駆動回路の基準電位とそれぞれ一部の期間において異なる電位になる。
【0032】
他方、制御回路48の負極側の端子である基準電位端子は、車両のボディに接続されている。以下では、そのボディの電位を「グランド電位Vg」という。よって、制御回路48の基準電位はグランド電位Vgである。このグランド電位Vgよりも、正極電位Vpの方が高く、負極電位Vnの方が低い。それらのことから、この制御回路48の基準電位(Vg)は、6つの駆動回路41~46のいずれの基準電位(Vu,Vv,Vw,Vn)とも異なっている。そのため、この制御回路48は、カプラやトランス等の絶縁素子48iを介して、6つの各駆動回路41~46と接続されている。
【0033】
図2は、スイッチ駆動装置40を示す平面図である。6つの各駆動回路41~46及び制御回路48は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁体の基板49に搭載されている。以下では、図に合わせて、基板49の厚さ方向を「上下Z」といい、上下Zに直交する所定の方向を「左右X」といい、それら上下Z及び左右Xの両方に直交する方向を「前後Y」という。ただし、本実施形態は、以下で言う、上下Zと左右Xと前後Yとを、互いに直交し合う任意の3方向にして実施できる。
【0034】
この
図2は、スイッチ駆動装置40を上から下にみた平面図である。以下では、このように上から下に見た平面視を、単に「平面視」という。3つの上駆動回路41~43は、左右Xに並設されている。具体的には、U相上駆動回路41の右にV相上駆動回路42が設けられ、そのV相上駆動回路42の右にW相駆動回路が設けられている。そして、U相上駆動回路41の前にU相下駆動回路44が設けられ、V相上駆動回路42の前にV相下駆動回路45が設けられ、W相上駆動回路43の前にW相下駆動回路46が設けられている。制御回路48は、平面視で6つの駆動回路41~46を前後Y及び左右Xから取り囲むように設置されている。
【0035】
6つの各駆動回路41~46は、平面視でそれぞれ自身の外縁部が自身の基準電位(Vu,Vv,Vw,Vn)になっている。そして、制御回路48は、平面視で自身の内縁部、すなわち、6つの各駆動回路41~46と対峙する部分が、自身の基準電位(Vg)になっている。
【0036】
以上のことから、制御回路48(Vg)と6つの各駆動回路41~46(Vu,Vv,Vw,Wn)との間と、3つの上駆動回路41~43(Vu,Vv,Vw)と3つの下駆動回路44~46(Vn)との間と、3つの上駆動回路41~43(Vu,Vv,Vw)どうしの間とには、沿面距離Gが確保されている。その沿面距離Gは、4mm程度である。
【0037】
なお、3つの下駆動回路44~46(Vn)どうしの間には、沿面距離Gが確保されていない。3つの各下駆動回路44~46は、いずれも基準電位が負極電位Vnであり、基準電位が互いに等しいからである。
【0038】
以下では、このように平面視で回路どうしが沿面距離Gの間隔で対峙している区間を「対峙区間」という。より具体的には、この対峙区間は、沿面距離Gに直交する方向の長さ区間である。
【0039】
図3は、
図2のIII-III線の断面を示す断面図である。以下では、沿面距離Gをおいて対峙している2つの互いに電位の異なる導電体の一方を「第1導電部A」といい、他方を「第2導電部B」という。よって、この
図3の場合には、第1導電部Aは、U相上駆動回路41の外縁部にある導電体であり、第2導電部Bは、制御回路48の内縁部に導電体である。
【0040】
また以下では、第1導電部Aの電位を「第1電位Va」といい、第2導電部Bの電位を「第2電位Vb」という。よって、この
図3の場合には、第1電位VaはU相電位Vuであり、第2電位Vbはグランド電位Vgである。また以下では、第1導電部Aから第2導電部Bに向かう方向を「第2方向Db」といい、第2導電部Bから第1導電部Aに向かう方向を「第1方向Da」という。よって、この
図3の場合には、第2方向Dbは左方向であり、第1方向Daは右方向である。
【0041】
第1導電部A及び第2導電部Bは、それぞれ上下Zに複数の層を有しており、それらの上下Zの層どうしは互いに接続されている。なお、それらの接続は、例えば、スルーホールにより行われていてもよいし、ビルドアップにより行われていてもよい。
【0042】
以下では、第1導電部Aにおける最も上の層を「第1表層部A1」といい、第1導電部Aにおける上から2番目の以降の層を「第1内層部A2~A4」という。そして、第2導電部Bにおける最も上の層を「第2表層部B1」といい、第2導電部Bにおける上から2番目の以降の層を「第2内層部B2~B4」という。第1表層部A1及び第2表層部B1は、基板49の上面に設置されており、第1内層部A2~A4及び第2内層部B2~B4は、基板49の内部に設置されている。なお、
図3では、第1内層部A2~A4として、上から2層目(A2)、3層目(A3)、4層目(A4)のみを示しているが、第1内層部A2~A4は何層であってもよい。同様に、第2内層部B2~B4も何層であってもよい。
【0043】
各第1内層部A2~A4は、第1表層部A1よりも第2方向Dbに突出する導電突出部ρを有する。以下では、導電突出部ρにおける第1表層部A1よりも第2方向Dbに突出している長さを「突出長ρL」という。本実施形態では、各第1内層部A2~A4が有する導電突出部ρの突出長ρLは、互いに同じである。その突出長ρLは50μm以上であり、かつ、沿面距離Gの1割以下である。つまり、ここでは、沿面距離Gは前述のとおり4mm程度であるので、突出長ρLは、50μm~400μm程度である。
【0044】
以下では、このように、第1内層部A2~A4が導電突出部ρを有する構成を「第1突出構成」という。
【0045】
なお、この
図3では、前述の通り、第1導電部AがU相上駆動回路41の外縁部であり、第2導電部Bが制御回路48の内縁部であるが、それ以外の対峙区間においても、第1導電部A及び第2導電部Bを適宜該当するものに置き換えて、同様である。つまり、U相上駆動回路41の外縁部(Vu)と、V相上駆動回路42の外縁部(Vv)と、W相上駆動回路43の外縁部(Vw)と、3つの下駆動回路44~46の外縁部(Vn)と、制御回路48の内縁部(Vg)との計5つ(Vu,Vv,Vw,Vn,Vg)のうちから、任意の2つを選んだ組合せにおいても、この
図3に示す場合と同様である。ただし、U相上駆動回路41の外縁部(Vu)と、W相上駆動回路43の外縁部(Vw)とは、対峙していないので除く。それらの任意の組合せでは、2つのうちのいずれか一方が第1導電部Aとなり、他方が第2導電部Bとなる。つまり、例えば、V相上駆動回路42が第1導電部AでW相上駆動回路43が第2導電部Bである組合せや、また例えば、V相上駆動回路42が第1導電部AでV相下駆動回路45が第2導電部Bである組合せにおいても、
図3に示す場合と同様である。
【0046】
そして、
図2に示すように、いずれの組合せにおいても、全対峙区間に第1突出構成が設けられている。つまり、例えば、U相上駆動回路41の外縁部を第1導電部Aとし、制御回路48の内縁部を第2導電部Bとした場合、U相上駆動回路41の外縁部と制御回路48の内縁部との全対峙区間に第1突出構成が設けられている。つまり、U相上駆動回路41の左辺及び後辺と、制御回路48の内縁部との全対峙区間に、導電突出部ρが設けられている。
【0047】
以上に示した第1突出構成における導電突出部ρの機能について、以下に説明する。
【0048】
図4は、本実施形態の状態から仮に導電突出部ρをなくした場合の比較例を示す正面断面図である。以下では、第1表層部A1の上面における第2方向Db側のエッジを「第1エッジAe」といい、第2表層部B1の上面における第1方向Da側のエッジを「第2エッジBe」という。
【0049】
第1表層部A1では第1エッジAeに電界集中が発生することにより、第1エッジAeから電気力線Leが第2方向Dbに対して上側に斜めをなす方向で放出されて、放物線を描くようにして第2エッジBeに到達する。
【0050】
なぜなら、電気力線Leは、等電位線Lvに対して直角をなす方向に放出される。その点、例えば第1表層部A1の上面では、等電位線Lvが第1表層部A1の上面に沿って延び、第1表層部A1の第2方向Db側の端面では、等電位線Lvが上下Zに延びている。そのため、第1エッジAeでは、それらの中間方向に直交する方向に電気力線Leが放出される。つまり、第1エッジAeでは、第2方向Dbに対して上側に斜めをなす方向に電気力線Leが放出される。それにより、前述の通り、第1エッジAeから電気力線Leが放物線を描くようにして第2エッジBeに到達する。そして、これらのエッジAe,Beでは、電界集中により電気力線Leが密になっていることから、これらのエッジAe,Be間で放電が開始されることになる。
【0051】
その点、本実施形態では、
図5に示すように、第1内層部A2~A4が導電突出部ρを有する。そのことから、第1表層部A1の第2方向Db側では、等電位線Lvが上下Zに延びるのではなく、上下Zに対して第2方向Db側に斜めをなす方向に延びている。そのことから、比較例に比べて、第1エッジAeにおける等電位線Lvと直交する方向の角度、つまり電気力線Leの放出角度が上昇する。
【0052】
そのことから、電気力線Leが比較例の場合に比べて上下Zに分散し易くなる。つまり、所定量の電気力線Leの上下幅Wが、比較例での当該上下幅Wよりも大きくなる。それにより、電気力線Leの密度が低下して、放電が発生し難くなる。つまり、放電開始電圧が高くなる。
【0053】
図6は、本発明者等が実際に行ったシミュレーション結果を示すグラフである。
図6は、横軸に導電突出部ρの突出長ρLを示し、縦軸に放電開始電圧と第1エッジAeの電界強度とを示している。この
図6からは、突出長ρLを長くするに従い第1エッジAeでの電界強度が小さくなっていき、それに伴い、放電開始電圧が大きくなっていくこと、すなわち放電が発生し難くなっていくことが確認できる。
【0054】
より詳しくは、突出長ρLが概ね50μmになるまでは、突出長ρLを長くするほど放電開始電圧が高くなることが確認され、それ以降は略横ばいであることが確認された。そのことから、本実施形態では、前述の通り、突出長ρLを50μm以上にして、導電突出部ρによる効果を最大限得られるようにしている。
【0055】
以下に本実施形態の効果をまとめる。
【0056】
第1内層部A2~A4が、第1表層部A1よりも第2方向Dbに突出する導電突出部ρを有する。その導電突出部ρにより、第1表層部A1から第2表層部B1への電気力線Leの方向を変えて、当該電気力線Leを上下Zに分散させることができる。それにより、沿面距離Gに頼らずに、導電突出部ρにより放電を抑制できる、すなわち、放電開始電圧を高くできる。そのため、例えば、沿面距離Gは従来のままで放電開始電圧を高くすることや、放電開始電圧は従来のままで沿面距離Gを小さくすることができる。
【0057】
しかも、この第1突出構成によれば、封止樹脂等を用いることなく、回路構成のみで放電を抑制できるので、材料や製造のコストアップについても抑えることができる。しかも、導電体を封止樹脂等で封止する必要がないので、経年劣化による樹脂剥離による絶縁性低下の懸念もない。
【0058】
しかも本実施形態によれば、前述の通り、いずれの組合せにおいても、全対峙区間に第1突出構成が設けられている。そのため、対峙区間の一部の区間にのみ第1突出構成が設けられる場合に比べて、より強固に放電を抑制できる。
【0059】
しかも本実施形態によれば、第1表層部A1に最も隣接する上から2層目の第1内層部A2が導電突出部ρを有する。その上から2層目(A2)は、第1表層部A1の電気力線Leに最も影響を及ぼすので、効率的に放電を抑制できる。
【0060】
しかも本実施形態では、導電突出部ρの突出長ρLを50μm以上にしている。なぜなら前述のシミュレーション解析の通り、突出長ρLが概ね50μmになるまでは、突出長ρLを長くするほど放電開始電圧が高くなるからである。そのため、導電突出部ρによる効果を最大限得ることができる。
【0061】
しかも本実施形態では、導電突出部ρの突出長ρLを、沿面距離Gの1割以下にしている。そのため、第1内層部A2~A4と第2表層部B1との間で放電が発生し易くなるといった心配もない。
【0062】
[他の実施形態]
以上に示した実施形態は、例えば次のように変更して実施できる。
【0063】
第1実施形態では、第1内層部A2~A4に導電突出部ρを設けている。これに加えて、
図7に示す変更例1のように、第2内層部B2~B4に、第2表層部B1よりも第1方向Daに突出する導電突出部ρを設けてもよい。以下では、このように第2内層部B2~B4が導電突出部ρを有する構成を「第2突出構成」という。
【0064】
つまり、この
図7に示す変更例1のように、所定の対峙区間において、第1突出構成と第2突出構成との両方の突出構成が設けられていてもよい。また、
図8に示す変更例2のように、所定の対峙区間において、第1突出構成が設けられずに、第2突出構成のみが設けられていてもよい。
【0065】
なお、これらの場合には、いずれの組合せにおいても、全対峙区間に第1突出構成及び第2突出構成のうちの少なくともいずれか一方の突出構成が設けられていることが好ましい。より強固に放電を抑制できるからである。
【0066】
ただし、これに代えて、一部の対峙区間にのみ、少なくともいずれか一方の突出構成を設けるようにしてもよい。具体的には、例えば、
図9に示す変更例3のように、放電が発生し易い部分がピンポイントで分かっている場合等には、その部分にのみ、導電突出部ρを設けるようにしてもよい。
【0067】
また例えば、
図10に示す変更例4のように、制御回路48の内縁部と6つの各駆動回路41~46の外縁部との間の対峙区間において特に放電が発生し易い場合等には、当該組合せの対峙区間にのみ、導電突出部ρを設けるようにしてもよい。また例えば、
図11に示す変更例5のように、前後Yに対峙する対峙区間において特に放電が発生し易い場合等には、当該対峙区間にのみ、導電突出部ρを設けるようにしてもよい。また例えば、
図12に示す変更例6のように、導電突出部ρの設置面積を抑えたい場合等には、沿面距離Gの長さ方向に直交する方向に沿って導電突出部ρを断続的に設置してもよい。
【0068】
ただし、これらの場合のいずれの組合せにおいても、全対峙区間のうちの半分以上の区間において、第1突出構成及び第2突出構成のうちの少なくともいずれか一方の突出構成を有することが好ましい。半分以上であれば、充分に放電を抑制し易くなるからである。
【0069】
第1実施形態では、2層目以降の各第1内層部A2~A4に導電突出部ρが設けられている。これに代えて、
図13に示す比較例7のように、第1表層部A1に最も隣接する層である上から2層目の第1内層部A2にのみ、導電突出部ρを設けてもよい。前述の通り、上から2層目は、第1表層部A1と第2表層部B1との間の電気力線Leに最も影響を及ぼすので、この比較例7によれば、より小さい導電突出部ρの総設置面積でより効率的に放電を抑制できる。
【0070】
また、これと同様に、第2突出構成において、第2表層部B1に最も隣接する層である上から2層目の第2内層部B2にのみ、導電突出部ρを設けてもよい。
【0071】
第1実施形態では、第1内層部A2~A4の各層における導電突出部ρの突出長ρLが、互いに同じになっている。これに代えて、
図14に示す比較例8のように、突出長ρLが互いに異なっていてもよい。つまり、例えば、第1突出構成は、上から2層目の第1内層部A2が、所定の突出長ρLの導電突出部ρを有し、上から3層目の第1内層部A3が、2層目とは異なる突出長ρLの導電突出部ρを有する等の構成であってもよい。これと同様に、第2突出構成において、第2内層部B2~B4の各層における導電突出部ρの突出長ρLが、互いに異なっていてもよい。
【0072】
第1実施形態では、第1内層部A2~A4から第2方向Dbに突出する導電突出部ρが設けられている。これに代えて、
図15に示す比較例9のように、基板49の内部における第1内層部A2~A4よりも第2方向Dbに、第1内層部A2~A4及び第2内層部B2~B4のいずれからも絶縁された導電体の浮遊導電部φを設けてもよい。以下では、このように、基板49の内部における第1内層部A2~A4よりも第2方向Dbに浮遊導電部φを有する構成を、「第1浮遊構成」という。つまり、
図15に示す変更例9のように、スイッチ駆動装置40が、第1浮遊構成を有していてもよい。
【0073】
さらに、
図15に示す変更例9の状態から、さらに基板49の内部における第2内層部B2~B4よりも第1方向Daに、第1内層部A2~A4及び第2内層部B2~B4のいずれからも絶縁された浮遊導電部φを設けてもよい。以下では、このように、基板49の内部における第2内層部B2~B4よりも第1方向Daに浮遊導電部φを有する構成を、「第2浮遊構成」という。つまり、スイッチ駆動装置40が、第1浮遊構成に加えて第2浮遊構成を有していてもよい。
【0074】
さらに、スイッチ駆動装置40が、第1浮遊構成を有さずに、第2浮遊構成のみを有していてもよい。なお、本発明者は、このような浮遊導電部φによっても、放電開始電圧を上昇させることができることを、シミュレーション解析により確認した。
【0075】
以下では、第1実施形態及び変更例1~8並びに例示したそれらの変更形態を「第1実施形態等」といい、変更例9及び例示したその変更形態を「変更例9等」という。第1実施形態等及び変更例9等は、さらに次のように変更して実施できる。
【0076】
第1実施形態等では、上面での放電に対して第1突出構成や第2突出構成を設けている。これに加えて又は代えて、下面での放電に対して第1突出構成や第2突出構成を設けてもよい。また、変更例9等では、上面での放電に対して第1浮遊構成や第2浮遊構成を設けている。これに加えて又は代えて、下面での放電に対して第1浮遊構成や第2浮遊構成を設けてもよい。
【0077】
変更例9等では、第1突出構成に代えて第1浮遊構成を設けたり、第2突出構成に代えて第2浮遊構成を設けたりしている。これに代えて、第1突出構成に加えて第1浮遊構成を設けたり、第2突出構成に加えて第2浮遊構成を設けたりしてもよい。
【0078】
第1実施形態等や変更例9等では、第1表層部A1及び第2表層部B1は、基板49の上面に設置されているが、基板49の内部やその他の絶縁体の内側に設置されていてもよい。具体的には、例えば第1表層部A1及び第2表層部B1が、基板49の表面に設置さると共に、それら第1表層部A1及び第2表層部B1が、基板49の材料とは異なる絶縁体材料(ソルダレジスト等)で被覆されている場合を例示する。これらの場合であっても、第1表層部A1と第2表層部B1との間では、放物線上に延びる電気力線Leの大部分が基板49の外(空気等の気体)を通過することになるので、第1内層部A2~A4と第2内層部B2~B4との間に比べて、放電が発生し易くなる。そのため、これらの場合であっても、突出構成や浮遊構成により放電を抑制するメリットは有る。
【0079】
第1実施形態等や変更例9等では、実施の対象となる電子機器が、スイッチ駆動装置40である。これに代えて、実施の対象となる電子機器を、第1導電部Aとそれとは異なる電位になる第2導電部Bとを有する任意の電子機器にしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
30…インバータ、40…スイッチ駆動装置、41~46…駆動回路、48…制御回路、49…基板、A…第1導電部、A1…第1表層部、A2~A4…第1内層部、B…第2導電部、B1…第2表層部、B2~B4…第2内層部、Da…第1方向、Db…第2方向、G…沿面距離、ρ…導電突出部。