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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188584
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】振動発生装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20221214BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
H04R17/00 330B
B06B1/06 Z
H04R17/00 330F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096739
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳行
(72)【発明者】
【氏名】岸本 純明
【テーマコード(参考)】
5D019
5D107
【Fターム(参考)】
5D019BB13
5D019GG12
5D107CC01
5D107DE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1つの圧電アクチュエータにより新たな触感を提示することが可能な振動発生装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】振動発生装置100は、触覚拡張機能を有する板状部材である触覚拡張部材103と、圧電アクチュエータ104と、を具備する。触覚拡張部材103は、第1の主面と、第1の主面とは反対側の第2の主面を有する基部と、第1の主面から突出する複数の突起であって、複数の突起の頂点が所定の平面上に位置する複数の突起112と、を備える。圧電アクチュエータ104は、第2の主面に接合されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する基部と、前記第1の主面から突出する複数の突起であって、前記複数の突起の頂点が所定の平面上に位置する複数の突起とを備える板状部材と、
前記第2の主面に接合された圧電アクチュエータと
を具備する振動発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動発生装置であって、
周波数が1Hz以上250Hz以下である低周数領域の信号波を変調波とし、周波数が20kHz以上100kHz以下である高周波領域の正弦波を前記変調波によって振幅変調してなる波形を有する駆動信号を前記圧電アクチュエータに出力する駆動部をさらに具備する
振動発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の振動発生装置であって、
前記駆動部は、前記正弦波の電圧ゲインを-10dB以上0dB以下とし、前記変調波の電圧ゲインを-6dB以上0dB以下とする
振動発生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の振動発生装置であって、
前記駆動部は、前記正弦波の電圧ゲインを-10dBとし、前記変調波の電圧ゲインを0dBとする
振動発生装置。
【請求項5】
第1の主面と、前記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する基部と、前記第1の主面から突出する複数の突起であって、前記複数の突起の頂点が所定の平面上に位置する複数の突起とを備える板状部材と、前記第2の主面に接合された圧電アクチュエータとを備える振動発生装置と、
前記複数の突起が接合された振動体と
を具備する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動による触覚提示に係る振動発生装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザに触覚を提示する触覚機能デバイスには様々なアクチュエータが用いられている。例えば、通知機能には偏心モータやリニア共振アクチュータ等の電磁式アクチュエータが用いられている。また、フォースフィードバック機能にはこれらの電磁式アクチュエータに加え、圧電式アクチュエータも用いられている。
【0003】
近年、触感技術は高度化が進んでおり、低周波領域(100~250Hz)でのフォースフィードバック機能では、駆動信号の複合加算や変調等により、触感表現の幅が拡張されている。また、高周波領域(20~40kHz程度)では、ザラザラ感やツルツル感等の触感も提示可能な技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-314369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、高周波領域での触覚提示は原理的に、1対の圧電アクチュエータをパネル両端に配置し、パネルにおいて定在波を形成することで指先への浮揚感を発生させるものである。したがって、1つのパネルには少なくとも2つの圧電アクチュエータを設ける必要がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、1つの圧電アクチュエータにより新たな触感を提示することが可能な振動発生装置及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る振動発生装置は、板状部材と、圧電アクチュエータとを具備する。
上記板状部材は、第1の主面と、上記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する基部と、上記第1の主面から突出する複数の突起であって、上記複数の突起の頂点が所定の平面上に位置する複数の突起とを備える。
上記圧電アクチュエータは、上記第2の主面に接合されている。
【0008】
上記振動発生装置は、周波数が1Hz以上250Hz以下である低周数領域の信号波を変調波とし、周波数が20kHz以上100kHz以下である高周波領域の正弦波を上記変調波によって振幅変調してなる波形を有する駆動信号を上記圧電アクチュエータに出力する駆動部をさらに具備してもよい。
【0009】
上記駆動部は、上記正弦波の電圧ゲインを-10dB以上0dB以下とし、上記変調波の電圧ゲインを-6dB以上0dB以下としてもよい。
【0010】
上記駆動部は、上記正弦波の電圧ゲインを-10dBとし、上記変調波の電圧ゲインを0dBとしてもよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電子機器は、振動発生装置と、振動体とを具備する。
上記振動発生装置は、第1の主面と、上記第1の主面とは反対型の第2の主面を有する基部と、上記第1の主面から突出する複数の突起であって、上記複数の突起の頂点が所定の平面上に位置する複数の突起とを備える板状部材と、上記第2の主面に接合された圧電アクチュエータとを備える。
上記振動体は、上記複数の突起が接合されている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、1つの圧電アクチュエータにより新たな触感を提示することが可能な振動発生装置及び電子機器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る振動発生装置の模式図である。
図2】上記振動発生装置が備える振動発生機構の触覚拡張部材の側面図である。
図3】上記触覚拡張部材の斜視図である。
図4】上記触覚拡張部材の斜視図である。
図5】上記触覚拡張部材の側面図である。
図6】上記触覚拡張部材の平面図である
図7】上記振動発生機構の斜視図である。
図8】上記振動発生機構の断面図である。
図9】上記振動発生装置が備える駆動部が発生させる高周波波形である。
図10】上記駆動部が発生させる低周波波形である。
図11】上記駆部が発生させる振幅変調波波形である。
図12図11の振幅変調波を拡大した波形である。
図13】上記駆動部が発生させる振幅変調波波形(電圧波形のみ)である。
図14図13の振幅変調波を拡大した波形である。
図15】振幅変調波の振幅を示す模式図である。
図16】本発明の実施形態に係る、振動体に接合された振動発生機構の斜視図である。
図17】上記振動体に接合された振動発生機構の斜視図である。
図18】本発明の変形例に係る触覚拡張部材の平面図である。
図19】上記触覚拡張部材の側面図である。
図20】本発明の変形例に係る触覚拡張部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る振動発生装置について説明する。
【0015】
[振動発生装置の構成]
図1は本実施形態に係る振動発生装置100の模式図である。同図に示すように、振動発生装置100は、振動発生機構101及び駆動部102を備える。振動発生機構101は触覚拡張部材103及び圧電アクチュエータ104を備える。
【0016】
触覚拡張部材103は、圧電アクチュエータ104によって振動を生じ、触覚を拡張する板状部材である。図2は触覚拡張部材103の側面図であり、図3及び図4は触覚拡張部材103の斜視図である。図2に示すように、触覚拡張部材103は基部111、突起112及び支持部113を備える。基部111は、平板状部分であり、第1主面111a及び第2主面111bを備える。第1主面111aと第2主面111bは互いに反対側の主面である。以下、第1主面111a及び第2主面111bに平行な平面をX-Y平面とする。図3は第1主面111a側から見た触覚拡張部材103の斜視図であり、図4は第2主面111b側から見た触覚拡張部材103の斜視図である。
【0017】
突起112は第1主面111aから突出する突起である。図2及び図3に示すように触覚拡張部材103は複数の突起112を有する。各突起112は円柱形状を有する。図5は触覚拡張部材103の一部の側面図であり、図6は触覚拡張部材103の一部の平面図である。これらの図に示すように、複数の突起112は、第1主面111aからの高さHが等しく、頂点が平面S上に位置する。平面Sは第1主面111aに平行な平面(X-Y平面)である。突起112の数、高さH、幅W及び間隔Pは特に限定されないが、高さHは1mm以上、幅Wは1mm以上が好ましい。
【0018】
支持部113は基部111の長手方向(X方向)の両端部に1つずつが設けられ、触覚拡張部材103の固定に用いられる。支持部113には貫通孔113aが設けられており、貫通孔113aにネジ等の固定用部材が挿通される。なお、貫通孔113aは必ずしも設けられなくてもよい。支持部113は、図2に示すように基部111に対して第2主面111b側に屈曲して設けられ、圧電アクチュエータ104の振動用の空間を形成する。
【0019】
触覚拡張部材103の材料は特に限定されないが、ヤング率が50MPa以上300MPa以下の硬い樹脂材料が好適であり、例えばポリフェニレンサルファイドを用いることができる。また、圧電アクチュエータ104と触覚拡張部材103を絶縁することで、触覚拡張部材103の材料として金属材料を用いることもできる。
【0020】
圧電アクチュエータ104は、触覚拡張部材103に接合され、振動を生じる。図7は振動発生機構101の斜視図であり、図8は振動発生機構101の断面図である。これらの図に示すように圧電アクチュエータ104は触覚拡張部材103の第2主面111bに接合されている。この接合は例えば接着剤による接着とすることができる。圧電アクチュエータ104は、正極、負極及び圧電材料層を備え、正極と負極の間に電圧を印加すると、逆圧電効果により圧電材料層に変形が生じ、振動が発生する。圧電アクチュエータ104は正極と負極を、圧電材料層を介して交互に積層した積層構造を有するものであってもよく、他の構造を有するものであってもよい。
【0021】
駆動部102は、駆動信号を圧電アクチュエータ104に出力する。駆動部102は、圧電アクチュエータ104の正極及び負極に接続され、正極と負極の間に後述する電圧波形を駆動信号として出力する。駆動部102は例えばアンプである。
【0022】
振動発生装置100は以上のような構成を有する。振動発生装置100は、スマートフォンや触覚機能デバイス等の各種電子機器に搭載することが可能である。
【0023】
[駆動信号について]
駆動部102から圧電アクチュエータ104に出力される駆動信号の波形について説明する。なお、低周波領域の信号波については、以下の説明において便宜上正弦波としているが、これに限定されるものではない。
【0024】
図9は、周波数が20kHz以上100kHz以下である高周波領域の正弦波である電圧波形と電流波形を示す。駆動部102から圧電アクチュエータ104に図9に示す電圧波形を駆動信号として印加すると、図9に示す電流波形を有する電流が流れる。20kHz以上100kHz以下の高周波領域の振動は、浮遊現象を生じさせる振動である。
【0025】
図10は、周波数が1Hz以上250Hz以下である低周波領域の正弦波である電圧波形と電流波形を示す。駆動部102から圧電アクチュエータ104に図10示す電圧波形を駆動信号として印加すると、図10に示す電流波形を有する電流が流れる。1Hz以上250Hz以下の低周波領域の振動は、人の皮膚の受容器であるマイスナー小体及びパチニ小体等が敏感に感じることが可能な振動である。
【0026】
図11は、低周波領域の正弦波(信号波)を変調波とし、この変調波によって高周波領域の正弦波を振幅変調した振幅変調波の波形を有する電圧波形と電流波形を示す。図12図11の拡大図である。駆動部102から圧電アクチュエータ104に図11に示す電圧波形を駆動信号として印加すると、図11に示す電流波形を有する電流が流れる。
【0027】
図13図11の電圧波形のみを示し、図14図12の電圧波形のみを示す。図13及び図14においてW1で示す波長の小さい波が高周波領域の正弦波であり、W2で示す波長の大きい波が低周波領域の正弦波である。以下、高周波領域の正弦波を高周波W1とし、低周波領域の正弦波を低周波W2とする。
【0028】
図13及び図14に示す波形では、低周波W2は、高周波W1の振幅の変化によって形成されており、即ち図13及び図14に示す波形は高周波W1を搬送波、低周波W2を変調波とする振幅変調波である。なお、高周波W1は20kHz以上100kHz以下の周波数を有し、低周波W2は1Hz以上250Hz以下の周波数を有する。
【0029】
高周波W1の電圧ゲインは-10dB以上0dB以下が好適であり、低周波W2の電圧ゲインは-6dB以上0dB以下が好適である。図15は、振幅変調波の波形と電圧ゲインの関係を示す模式図である。同図に示すように、振幅変調波の「ピーク」の振幅を振幅aとし、「谷底」の振幅を振幅bとすると、変調度mは以下の(式1)で表される。下記(式1)で示すように、振幅aに対して振幅bが小さいほど変調度mが大きくなる。
【0030】
m=(a-b)/(a+b) (式1)
【0031】
図13においても、低周波W2の電圧ゲインを高くすると、図13中に白矢印で示すように、低周波W2の「谷底」が深くなり、低周波W2の電圧ゲインを0dBとすると、「谷底」の振幅は最小となる。また、低周波W2の電圧ゲインを低くし、-6dBに近づけると、低周波W2の「谷底」は浅くなり、振幅は大きくなる。さらに、低周波W2の電圧ゲインを低くし、-10dBに近づけると、低周波W2の「谷底」の振幅bは「ピーク」の振幅と同等となり、「谷」が形成されなくなる。
【0032】
本実施形態において、高周波W1及び低周波W2の電圧ゲインは、「谷」が形成される範囲に調整される。具体的には高周波W1の電圧ゲインは-10dB以上0dB以下が好適であり、低周波W2の電圧ゲインは-6dB以上0dB以下が好適である。また、高周波W1の電圧ゲインは-10dBがより好適であり、低周波W2の電圧ゲインは0dBがより好適である。
【0033】
駆動部102が、図13に示す振幅変調波の電圧波形を有する駆動信号を圧電アクチュエータ104に出力すると、圧電アクチュエータ104が振動し、それによって触覚拡張部材103が振動する。この振幅変調波は、浮遊現象を生じさせる高周波W1を、人の皮膚の受容器であるマイスナー小体及びパチニ小体等が敏感に感じることが可能な低周波W2によって振幅変調したものであるため、ユーザが指を突起112に接触させるとユーザの指に繊細な触覚をリアルに提示することができる。また、指を突起112に接触させたまま指を動かすと触覚を増大させることができる。
【0034】
さらに、高周波W1が振幅変調されていることにより、振幅変調されていない場合に比べて波形全体の電流平均が小さくなり、消費電力及び発熱を小さくすることが可能である。特に高周波W1の電圧ゲインを-10dB以上0dB以下、低周波W2の電圧ゲインを-6dB以上0dB以下とすると「谷」(図13中、白矢印)が形成されるため、消費電力及び発熱を小さくすることができる。さらに、高周波W1の電圧ゲインを-10dB、低周波W2の電圧ゲインを0dBとすると「谷」が最も深くなり、消費電力及び発熱を最小とすることが可能である。
【0035】
[振動体への接合について]
振動発生機構101は、単独で用いられてもよいが、振動体に接合され、振動体を振動させてもよい。図16は振動体151に接合された振動発生機構101を示す斜視図であり、図17は振動体151に接合された振動発生機構101を示す断面図である。これらの図に示すように、振動発生機構101は、触覚拡張部材103の突起112の先端が振動体151に接合されてもよい。この接合は例えば接着剤による接着とすることができる。振動体151はガラス又はプラスチック等の材料からなる板状の部材とすることができ、例えば、ディスプレイパネルや電子機器の筐体等である。振動体151の形状やサイズは特に限定されない。
【0036】
この構成では、駆動部102が、図13に示す振幅変調波の電圧波形を有する駆動信号を圧電アクチュエータ104に出力すると、振動発生機構101によって振動体151に高周波W1による定在波が形成され、浮揚現象が発生する。さらに、低周波W2によって振動体151にマイスナー小体及びパチニ小体等の受容体を刺激する振動が発生する。
【0037】
これにより、ユーザが指を振動体151に接触させると低周波W2が敏感に指に触感を提示し、指を振動体151に押圧すると浮揚現象によるスクィーズ効果を受けると共に、強い低周波数の振動を受けるという、これまでにない触感を感じることができる。また、図9に示すような高周波領域の正弦波を駆動信号とすると、ユーザの指と振動体151の間で異音が発生することがあるが、図13に示す振幅変調波の場合にはこのような異音の発生を防止することが可能である。
【0038】
なお、図16では振動体151に2つの振動発生機構101が接合されているが、振動体151に接合される振動発生機構101の数は1または3つ以上であってもよい。
【0039】
[変形例]
触覚拡張部材103は複数の突起112を有するが、突起112の形状は述のものに限られない。図18は他の形状を有する触覚拡張部材103の平面図であり、図19はこの触覚拡張部材103の側面図である。これらの図に示すように突起112は、四角柱形状を有し、より高密度に設けられてもよい。また、図20は先端が半球状形状を有する突起112の模式図である。同図に示すように突起112の先端は平坦形状に限られず、半球状形状であってもよい。この他にも突起112の形状は特に限定されず、複数の突起112の先端が平面S上に位置する形状であればよい。
【符号の説明】
【0040】
100…振動発生装置
101…振動発生機構
102…駆動部
103…触覚拡張部材
104…圧電アクチュエータ
111…基部
112…突起
113…支持部
151…振動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20