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特開2022-188586ボールねじメンテナンス管理システム及びボールねじメンテナンス管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022188586
(43)【公開日】2022-12-21
(54)【発明の名称】ボールねじメンテナンス管理システム及びボールねじメンテナンス管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20221214BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20221214BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021096741
(22)【出願日】2021-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】野口 謙治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】清広 直輝
(72)【発明者】
【氏名】浅利 勇紀
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AA05
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】ボールねじのメンテナンス時期を管理できるボールねじメンテナンス管理システム及びボールねじメンテナンス管理方法を提供すること。
【解決手段】本実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システムは、ボールねじと、ボールねじを駆動させるモータと、ボールねじの振動を検出する振動センサと、振動センサから取得されたボールねじの振動情報のうち、モータの定速回転領域における振動情報を用いて、ボールねじが摩耗状態にあるか否かを判定する第1の判定手段と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールねじと、
前記ボールねじを駆動させるモータと、
前記ボールねじの振動を検出する振動センサと、
前記振動センサから取得された前記ボールねじの振動情報のうち、前記モータの定速回転領域における振動情報を用いて、前記ボールねじが摩耗状態にあるか否かを判定する第1の判定手段と、を備える、
ボールねじメンテナンス管理システム。
【請求項2】
前記モータの電流値を検出する電流センサと、
前記電流センサから取得された前記モータの電流値を用いて、前記ボールねじが損傷状態にあるか否かを判定する第2の判定手段と、をさらに備える、
請求項1に記載のボールねじメンテナンス管理システム。
【請求項3】
前記第2の判定手段は、前記電流センサから取得された前記モータの電流値のうち、前記モータの定速回転領域における電流値を用いて、前記ボールねじが損傷状態にあるか否かを判定する、
請求項2に記載のボールねじメンテナンス管理システム。
【請求項4】
前記第1の判定手段または前記第2の判定手段による判定結果を報知する報知部をさらに備える、
請求項2または3に記載のボールねじメンテナンス管理システム。
【請求項5】
前記ボールねじが、ボールねじ軸と、前記ボールねじ軸に沿って移動する可動ナットとを有し、
前記振動センサが、前記可動ナットに設けられる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のボールねじメンテナンス管理システム。
【請求項6】
前記ボールねじが、ボールねじ軸と、前記ボールねじ軸に沿って移動する可動ナットとを有し、
前記ボールねじ軸を受ける軸受ベアリングをさらに備え、
前記振動センサが、前記軸受ベアリングに設けられる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のボールねじメンテナンス管理システム。
【請求項7】
コンピュータを用いて、ボールねじのメンテナンス時期を管理するボールねじメンテナンス管理方法であって、
振動センサから前記ボールねじの振動情報を取得し、
取得された前記ボールねじの振動情報のうち、前記ボールねじを駆動させるモータの定速回転領域における振動情報を用いて、前記ボールねじが摩耗状態にあるか否かを判定する、
ボールねじメンテナンス管理方法。
【請求項8】
電流センサから前記モータの電流値を取得し、
取得された前記モータの電流値を用いて、前記ボールねじが損傷状態にあるか否かを判定する、
請求項7に記載のボールねじメンテナンス管理方法。
【請求項9】
前記電流センサから取得された前記モータの電流値のうち、前記モータの定速回転領域における電流値を用いて、前記ボールねじが損傷状態にあるか否かを判定する、
請求項8に記載のボールねじメンテナンス管理方法。
【請求項10】
前記ボールねじが摩耗状態にあると判定された場合に、前記ボールねじの手配処理を自動的に実行する、
請求項7~9のいずれか1項に記載のボールねじメンテナンス管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじメンテナンス管理システム及びボールねじメンテナンス管理方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじとは、回転運動を与えることで、ボールねじに取り付けられたナット部分をねじ軸に沿って移動させることができる駆動ユニットである。ボールねじは、例えば射出成形機等の様々な加工機の基幹部品として用いられている。
【0003】
基幹部品であるボールねじが故障すると、製造ラインの停止につながりかねない。また、射出成形機等の大型の加工機に用いられるボールねじは、製作に時間を要するため、ボールねじの交換時期を予測し、事前にボールねじの予備品を手配し準備することが必要であった。
【0004】
特許文献1には、ボールねじナットに取り付けられた振動センサで振動を検出し、振動データからボールねじ異常検出周波数帯の振動データを抽出し、正常データと比較することで異常を検出するボールねじ装置の異常検出装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-257014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ボールねじナットに取り付けられた振動センサは外乱を受けやすいため、特許文献1の方法では、外乱により生じるノイズによって誤判定が生じ正確な判断ができない恐れがあった。
他方、ボールねじを回転させるモータの電流値を測定することでボールねじの損傷状態を検知する方法では、早急に交換が必要な損傷状態でなければ、ボールねじの損傷状態を検知することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ボールねじのメンテナンス時期を管理できるボールねじメンテナンス管理システム及びボールねじメンテナンス管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るボールねじメンテナンス管理システムは、
ボールねじと、
前記ボールねじを駆動させるモータと、
前記ボールねじの振動を検出する振動センサと、
前記振動センサから取得された前記ボールねじの振動情報のうち、前記モータの定速回転領域における振動情報を用いて、前記ボールねじが摩耗状態にあるか否かを判定する第1の判定手段と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係るボールねじメンテナンス管理方法は、
コンピュータを用いて、ボールねじのメンテナンス時期を管理するボールねじメンテナンス管理方法であって、
振動センサから前記ボールねじの振動情報を取得し、
取得された前記ボールねじの振動情報のうち、前記ボールねじを駆動させるモータの定速回転領域における振動情報を用いて、前記ボールねじが摩耗状態にあるか否かを判定する、方法である。
【0010】
モータの回転が定速であるときには、モータの回転が加速又は減速している状態に比べて、外乱による振動のノイズが生じにくい。本発明の一態様に係るボールねじメンテナンス管理システムは、振動センサから取得されたボールねじの振動情報のうち、モータの定速回転領域における振動情報を用いて、ボールねじが摩耗状態にあるか否かを判定する。つまり、本発明の一態様に係るボールねじメンテナンス管理システムでは、モータの定速回転運動における振動情報を用いることで、外乱の影響を抑制し、微細な振動を検知することができ、ボールねじの摩耗状態、特に初期摩耗を正確かつ早期に検知することができる。本発明の一態様に係るボールねじメンテナンス管理システムによれば、ボールねじの損傷前の摩耗状態を判定することで、故障や不具合が生じることなく正常な状態が維持されるようボールねじのメンテナンス時期を管理できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によりボールねじのメンテナンス時期を管理できるボールねじメンテナンス管理システム及びボールねじメンテナンス管理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システムの構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システムの動作を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システムのサーバのハードウェア構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0014】
<第1の実施形態>
<メンテナンス管理システムの構成>
図1を参照して、第1の実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システム100の構成について説明する。図1は、ボールねじメンテナンス管理システム100の構成を示す図である。なお、図1に示した右手系xyz直交座標は、ボールねじ1を有する装置(以下、ボールねじ装置とも呼ぶ)の構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正方向が鉛直上向き、xy平面が水平面である。
【0015】
ボールねじメンテナンス管理システム100が管理するボールねじ装置は、ボールねじ1、軸受ベアリング2、軸受ベアリング3、モータ4、振動センサ5、電流センサ6、駆動ロット7、カップリング8、ベースフレーム9を有する。なお、ボールねじ装置は、動作に必要な他の構成要素を含んでいてもよい。
【0016】
制御盤20は、アンプ21、アンプ22、ロガー23、記録媒体24を備える。ボールねじ装置の振動センサ5及び電流センサ6は、制御盤20のアンプ21及びアンプ22にそれぞれ接続されている。なお、制御盤20は、動作に必要な他の構成要素を含んでいてもよい。
【0017】
サーバ30は、第1の判定手段31及び第2の判定手段32を備える。第1の判定手段31は、ロガー23及びアンプ21を介して振動センサ5に接続されている。また、第2の判定手段32は、ロガー23及びアンプ22を介して電流センサ6に接続されている。なお、サーバ30は、動作に必要な他の構成要素を含んでいてもよい。また、サーバ30は、外部のネットワーク(不図示)に接続されていてもよい。
【0018】
以下、第1の実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システム100のボールねじ装置、制御盤20及びサーバ30の構成について詳細に説明する。
【0019】
ボールねじ1は、ボールねじ軸11と、ボールねじ軸11に沿って移動する可動ナット12とを有する。図1では、ボールねじ軸11は、x軸方向に延伸して設けられている。可動ナット12は、ボールねじ軸11に螺合されており、ボールねじ軸11が回転すると、ボールねじ軸11に沿ってx軸正方向側及びx軸負方向側に移動する。ボールねじ軸11の両端に設けられた軸受ベアリング2及び軸受ベアリング3の間が、可動ナット12の可動領域となる。
【0020】
軸受ベアリング2及び軸受ベアリング3は、ボールねじ軸11を受ける。図1に示すように、軸受ベアリング2は、ボールねじ軸11のモータ4側(x軸負方向側)の端部に設けられた軸受ベアリングである。軸受ベアリング2は、ベースフレーム9に固定されており、軸受ベアリング2の貫通孔にボールねじ軸11が嵌入されている。
【0021】
軸受ベアリング3は、駆動ロット7側(x軸正方向側)の端部に設けられた軸受ベアリングである。軸受ベアリング3は、ベースフレーム9に固定されており、軸受ベアリング3の貫通孔にボールねじ軸11が嵌入されている。
すなわち、ボールねじ軸11は、両端に設けられた軸受ベアリング2及び軸受ベアリング3を介して、ベースフレーム9に回転可能に支持されている。
【0022】
モータ4は、ボールねじ1を駆動させるモータである。具体的には、モータ4は、ボールねじ軸11を回転駆動し、可動ナット12をボールねじ軸11に沿って移動させる。モータ4は、例えばサーボモータである。モータ4は、カップリング8を介してボールねじ1に連結されている。モータ4の回転運動は、カップリング8を介してボールねじ1に伝達される。モータ4の回転方向が変更されると、可動ナット12の移動方向がx軸正方向側又はx軸負方向側に変更される。
【0023】
振動センサ5は、ボールねじ1の振動を検出するセンサである。振動センサ5は、ボールねじ装置の任意の位置に設けることができる。振動センサ5は、振動の検出精度を高める点から、ボールねじ1に直接連結された可動ナット12、軸受ベアリング2又は軸受ベアリング3に設けられることが好ましい。中でも、外乱の影響を抑制する点から、振動センサ5はモータ4から離れた軸受ベアリング3に設けられることがさらに好ましい。図1では、例として振動センサ5は、軸受ベアリング3上に設けられている。
【0024】
振動センサ5は、制御盤20のアンプ21に接続されている。振動センサ5によって検出された振動は、アンプ21で増幅及びフィルタリングされ、ロガー23を介して記録媒体24に記録されるとともに、サーバ30の第1の判定手段31によって取得される。
【0025】
電流センサ6は、モータ4の電流値を検出するセンサである。なお、図1では、電流センサ6はモータ4に接して設けられているが、モータ4の電流値を検出することが可能な任意の位置に設けられてもよく、例えば制御盤20とモータ4との接続線や制御盤20の内部等に設けられてもよい。
【0026】
電流センサ6は、制御盤20のアンプ22に接続されている。電流センサ6によって検出されたモータ4の電流値は、アンプ22で増幅及びフィルタリングされ、ロガー23を介して記録媒体24に記録されるとともに、サーバ30の第2の判定手段32によって取得される。
【0027】
駆動ロット7は、xy平面上に物品を配置可能な部材である。駆動ロット7の形状は任意の形状とすることができる。駆動ロット7は、当該駆動ロット7のx軸負方向側の端部が連結部10を介して可動ナット12のx軸正方向側端面に固定されている。また、駆動ロット7と可動ナット12とは、複数の連結部10を介して固定されてもよい。なお、駆動ロット7と可動ナット12との固定方法は、これらに限られず、両者が一体として移動できるように固定されていればよい。図1では、ボールねじ軸11と区別するため、駆動ロット7と可動ナット12との連結部10を斜線で示している。また、駆動ロット7及び連結部10は、軸受ベアリング3と干渉しないように構成される。
【0028】
駆動ロット7は、可動ナット12に固定されているため、モータ4がボールねじ1を駆動させると、可動ナット12と同じ方向に駆動ロット7も移動する。つまり、可動ナット12がx軸正方向側に移動するとき、駆動ロット7も合わせてx軸正方向側に移動する。同様に、可動ナット12がx軸負方向側に移動するとき、駆動ロット7も合わせてx軸負方向側に移動する。可動ナット12と駆動ロット7とは、一体として等しい距離を移動する。
【0029】
ベースフレーム9は、軸受ベアリング2、軸受ベアリング3、及びモータ4を支持するフレームである。ベースフレーム9の形状は、軸受ベアリング2、軸受ベアリング3、及びモータ4を支持可能な形状であればよく、例えばxy平面に平行な板状の部材である。ベースフレーム9上に、軸受ベアリング2、軸受ベアリング3、及びモータ4が載置され、固定されている。ベースフレーム9は、他の連結部材を介して、軸受ベアリング2、軸受ベアリング3、及びモータ4と連結されてもよい。なお、駆動ロット7とベースフレーム9とは連結されているが、図1において両者の連結部分については省略している。
【0030】
制御盤20は、アンプ21、アンプ22、ロガー23、記録媒体24を備える。アンプ21は、振動センサ5に接続され、振動センサ5から取得された振動を増幅及びフィルタリングする機器である。アンプ22は、電流センサ6に接続され、電流センサ6から取得されたモータ4の電流値を増幅及びフィルタリングする機器である。
【0031】
ロガー23は、アンプ21、アンプ22に接続され、振動センサ5及び電流センサ6により計測・収集したデータ(振動情報及び電流値情報)を保存する装置である。記録媒体24は、ロガー23のデータを記録する媒体である。なお、記録媒体24がサーバ30に接続されてもよい。例えば、第1の判定手段31は、記録媒体24から振動情報を取得し、判定を行なってもよい。また、第2の判定手段は、記録媒体24から電流値情報を取得し、判定を行なってもよい。
【0032】
サーバ30は、第1の判定手段31及び第2の判定手段32を備える。サーバ30は、例えば第1の判定手段31及び第2の判定手段32の処理を実行するコンピュータ装置である。なお、第1の判定手段31及び第2の判定手段32は、制御盤20内に構成されてもよい。また、第1の判定手段31及び第2の判定手段32に係る処理は、外部のネットワークに接続されている他のコンピュータ装置で実行されてもよく、第1の判定手段31の処理及び第2の判定手段32の処理が、それぞれ別のコンピュータ装置によって実行されてもよい。
【0033】
第1の判定手段31は、振動センサ5から取得されたボールねじ1の振動情報のうち、モータ4の定速回転領域における振動情報を用いて、ボールねじ1が摩耗状態にあるか否かを判定する。ボールねじ1の振動は、ボールねじ1の摩耗が進むにつれて大きくなる。例えば、第1の判定手段31は、振動センサ5から取得されたボールねじ1の振動情報について周波数解析を実行し、モータ4の定速回転領域における振動が閾値以上であるときに、ボールねじ1が摩耗状態であると判定してもよい。なお、モータ4の回転運動が定速回転領域にあるとき、可動ナット12はボールねじ軸11上を定速で移動している。
【0034】
第2の判定手段32は、電流センサ6から取得されたモータ4の電流値を用いて、ボールねじ1が損傷状態にあるか否かを判定する。モータ4に係る負荷は、ボールねじ1の損傷が進むにつれて大きくなる。つまり、モータ4の電流値が大きくなる。例えば、第2の判定手段32は、電流センサ6から取得されたモータ4の電流値が閾値以上であるときに、ボールねじ1が損傷状態にあると判定してもよい。また、判定の精度を高める点から、第2の判定手段32は、電流センサ6から取得されたモータ4の電流値のうち、モータ4の定速回転領域における電流値を用いて、ボールねじ1が損傷状態にあるか否かを判定することが好ましい。
【0035】
本実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システム100は、モータ4の定速回転領域における振動情報を用いることで、外乱の影響を抑制し、微細な振動を検知でき、ボールねじ1の摩耗状態、特に初期摩耗を正確かつ早期に検知することができる。ボールねじメンテナンス管理システム100は、ボールねじ1の摩耗状態を判定することによって、事前にボールねじの予備品を手配し準備するための手配時期を管理することができる。つまり、ボールねじメンテナンス管理システム100は、ボールねじ1のメンテナンス時期を管理することができる。
【0036】
さらに、ボールねじメンテナンス管理システム100は、電流センサ6から取得されたモータ4の電流値を用いて、ボールねじ1が損傷状態にあるか否かを判定することもできる。これにより、ボールねじメンテナンス管理システム100は、ボールねじ1の損傷が進行し、モータ4に負荷がかかり始めた時期を検知することで、ボールねじ1の交換時期を管理することができる。つまり、ボールねじメンテナンス管理システム100は、手配時期の管理を可能にするだけでなく、ボールねじ1の交換時期を合わせて、ボールねじ1のメンテナンス時期を管理することができる。ボールねじメンテナンス管理システム100によれば、これまでは、まだ使用できる状態であった高価なボールねじ1を寿命限界まで使い切ることができる。
【0037】
なお、ボールねじメンテナンス管理システム100において、第1の判定手段31または第2の判定手段32による判定結果を報知する報知部(不図示)をさらに設けてもよい。これにより、ボールねじメンテナンス管理システム100のユーザに、第1の判定手段31または第2の判定手段32による判定結果を報知することができる。
【0038】
報知部は、例えば制御盤20、サーバ30、またはサーバ30とネットワークを介して接続された端末(不図示)等に設けることができる。例えば、報知部は、第1の判定手段31または第2の判定手段32による判定結果に応じて、アラームを出力してもよい。また、報知部は、制御盤20、サーバ30または前記端末に判定結果のメッセージを送信してもよい。例えば、報知部は、第1の判定手段31によって、ボールねじ1が摩耗状態にあると判定された場合、ボールねじ1が手配時期となったことを報知してもよい。同様に、報知部は、第2の判定手段32によって、ボールねじ1が損傷状態にあると判定された場合、ボールねじ1が交換時期となったことを報知してもよい。
これにより、ボールねじメンテナンス管理システム100のユーザは、ボールねじ1のメンテナンス時期を容易に把握することができる。
【0039】
また、報知部は、第1の判定手段31の判定結果におけるアラームと、第2の判定手段32による判定結果におけるアラームと、を異なるアラームとしてもよい。これにより、ボールねじメンテナンス管理システム100のユーザは、アラームの違いに基づいてボールねじの手配時期及び交換時期を容易に把握することができる。
【0040】
<メンテナンス管理方法>
次に、図2を用いて、第1の実施形態に係るボールねじメンテナンス管理方法について説明する。図2は、第1の実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システム100の動作を示すフローチャートである。
【0041】
モータ4、振動センサ5、電流センサ6等を始めとする電力の供給が必要な装置に動力を供給する(ステップS1)。次に、振動センサ5による振動の測定及び電流センサ6によるモータ4の電流値の測定を開始する(ステップS2)。
【0042】
振動及び電流値の測定の開始後に、例えば、制御盤20の図示しないモータ制御装置からモータ4に回転指令を出す。モータ4は、回転開始の指令に基づき回転を開始する(ステップS3)。モータ4の回転開始後から、振動センサ5によってボールねじ1の振動が検出され、電流センサ6によってモータ4の電流値が検出される。
【0043】
モータ4は、加速回転の指令に基づき、回転を加速する(ステップS4)。モータ4が加速回転領域にあるとき、可動ナット12及び可動ナット12に固定されている駆動ロット7は加速運動をしている。その後、モータ4は、定速回転の指令に基づき、定速で回転する(ステップS5)。モータ4が定速回転領域にあるとき、可動ナット12及び可動ナット12に固定されている駆動ロット7は定速運動をしている。
【0044】
第1の判定手段31は、振動センサ5から取得されたボールねじ1の振動情報のうち、モータ4の定速回転領域における振動情報を用いて、ボールねじ1が摩耗状態にあるか否かを判定する(ステップS6)。
【0045】
第1の判定手段31は、ボールねじ1の振動が閾値以上である場合(ステップS6YES)、ボールねじ1が摩耗状態にあると判定する。この場合、報知部はボールねじ1が手配時期であることを示すアラームを出力する(ステップS7)。一方、第1の判定手段31は、ボールねじ1の振動が閾値以上でない場合(ステップS6NO)、ボールねじ1が摩耗状態にないと判定する。この場合、第1の判定手段31は、振動による判定を継続する。
【0046】
また、ボールねじメンテナンス管理システム100は、ボールねじ1が摩耗状態にあると判定された場合に、ボールねじ1の手配処理・発注処理を自動的に実行してもよい。例えば、サーバ30に、発注管理部(不図示)を設け、当該発注管理部は、第1の判定手段31によってボールねじ1が摩耗状態にあると判定された場合に、自動的にボールねじ1の手配処理及び発注処理を実行してもよい。具体的には、発注管理部は、メンテナンス対象であるボールねじ1について、予め登録された事業者の情報処理装置に対して、ボールねじ1の発注要求のメッセージを送信してもよい。また、発注管理部は、発注済のボールねじ1の配送状況や到着日等を管理してもよい。これにより、ボールねじメンテナンス管理システム100は、ボールねじ1のメンテナンスに係る管理業務を低減することができる。
【0047】
第2の判定手段32は、電流センサ6から取得されたモータ4の電流値を用いて、ボールねじ1が損傷状態にあるか否かを判定する。図2に示すように、第2の判定手段32は、好ましくは、判定の精度を高める点から、電流センサ6から取得されたモータ4の電流値のうち、モータ4の定速運動領域における電流値を用いて、ボールねじ1が損傷状態にあるか否かを判定する(ステップS8)。
【0048】
第2の判定手段32は、モータ4の電流値が閾値以上である場合(ステップS8YES)、ボールねじ1が損傷状態にあると判定する。この場合、報知部はボールねじ1が交換時期であることを示すアラームを出力する(ステップS9)。一方、第2の判定手段32は、モータ4の電流値が閾値以上でない場合(ステップS8NO)、ボールねじ1が損傷状態にないと判定する。この場合、第2の判定手段32は、電流値による判定を継続する。
【0049】
モータ4は、減速回転の指令に基づき、回転を減速する(ステップS10)。モータ4が減速回転領域にあるとき、可動ナット12及び可動ナット12に固定されている駆動ロット7は減速運動をしている。その後、モータ4は、回転停止の指令に基づき回転を停止する(ステップS11)。モータ4が回転を停止したとき、可動ナット12及び可動ナット12に固定されている駆動ロット7も運動を停止する。
【0050】
ステップS1~ステップS11は、ボールねじ装置の動作の度に繰り返し実行されてもよい。これにより、本実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システム100は、ボールねじ1が摩耗状態にあるか否かの判定、及び損傷状態にあるか否かの判定を継続して行うことができる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システム100は、振動センサ5を用いた摩耗状態の判定を行うことで、ボールねじ1の手配時期を管理することができる。これにより、ボールねじ1の故障に備えて予め予備品を保有する必要がなくなり、ボールねじ1の予備品を減少させることができる。また、ボールねじ1の故障による製造ラインの停止を抑制することができる。さらに、ボールねじメンテナンス管理システム100は、電流センサ6を用いた損傷状態の判定を行なうことで、ボールねじ1の交換時期を管理することができる。本実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システム100によれば、ボールねじ1の手配時期及び交換時期を含むメンテナンス時期を管理することができる。
【0052】
図3を用いて、第1の実施形態に係るボールねじメンテナンス管理システム100のサーバ30のハードウェア構成例を説明する。なお、制御盤20もサーバ30と同様のハードウェア構成を有していてもよい。図3においてサーバ30は、プロセッサ101と、メモリ102とを有している。プロセッサ101は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ101は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ102は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ102は、プロセッサ101から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ101は、図示されていない入出力インタフェースを介してメモリ102にアクセスしてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態における各装置は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。上述の実施形態における各装置の機能(処理)を、コンピュータにより実現してもよい。例えば、メモリ102に実施形態における動作を行うためのプログラムを格納し、各機能を、メモリ102に格納されたプログラムをプロセッサ101で実行することにより実現してもよい。
【0054】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ボールねじ
2 軸受ベアリング
3 軸受ベアリング
4 モータ
5 振動センサ
6 電流センサ
7 駆動ロット
8 カップリング
9 ベースフレーム
10 連結部
11 ボールねじ軸
12 可動ナット
20 制御盤
21 アンプ
22 アンプ
23 ロガー
24 記録媒体
30 サーバ
31 第1の判定手段
32 第2の判定手段
100 ボールねじメンテナンス管理システム
101 プロセッサ
102 メモリ
図1
図2
図3